説明

園芸作物の処理

【課題】園芸作物植物を処理する方法を提供する。
【解決手段】園芸作物植物を処理する方法であって、前記植物を液体組成物と1回以上接触させる工程を含む方法が提供され、ここにおいて、前記液体組成物は、1以上のシクロプロペンを含み、前記接触は前記植物の生殖成長段階の間に行われる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
作物植物は、それらを組成物と接触させることにより処理されることが多い。このような処理の1つの可能な利点は、作物収穫高の改善である。例えば、米国特許出願公開2006/0160704号は、少なくとも1種のシクロプロペンを含有し、かつシクロプロペンではない少なくとも1種の植物成長調節剤を含有する組成物で非カンキツ類植物を処理することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】米国特許出願公開2006/0160704号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ある特定の作物植物をこの特定の作物植物に適当な発達上の段階(単数または複数)で液体組成物で処理することを含む方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一の態様において、園芸作物植物を処理する方法であって、前記植物を液体組成物と1回以上接触させる工程を含む方法が提供され、前記液体組成物は、1種以上のシクロプロペンを含み、前記接触は前記植物の生殖成長段階の間に行われる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の実施は、1以上のシクロプロペンの使用を含む。本明細書において用いられる場合、「シクロプロペン」とは式:
【0006】
【化1】

【0007】
を有する任意の化合物を意味し、式中、各R、R、RおよびRは独立して、Hおよび式:
−(L)−Z
の化学基からなる群から選択され、式中、nは0〜12の整数である。各Lは二価の基である。適当なL基は、たとえば、H、B、C、N、O、P、S、Si、またはその混合物から選択される1以上の原子を含有する基を包含する。L基内の原子は、単結合、二重結合、三重結合、またはその組み合わせにより互いに結合することができる。各L基は、直鎖状、分枝状、環状、またはその組み合わせであってよい。任意の1つのR基(すなわち、R、R、RおよびRの任意の1つ)において、ヘテロ原子(すなわち、HでもCでもない原子)の合計数は0〜6である。独立して、任意の1つのR基において、非水素原子の合計数は50以下である。各Zは一価の基である。各Zは独立して、水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、クロレート、ブロメート、イオデート、イソシアナト、イソシアニド、イソチオシアナト、ペンタフルオロチオ、および化学基G(ここにおいて、Gは3〜14員環系である)からなる群から選択される。
【0008】
、R、RおよびR基は独立して、適当な基から選択される。R、R、RおよびR基は互いに同じであってもよいし、あるいはこれらのうちの任意の数が他のものと異なっていてもよい。R、R、RおよびR基の1以上としての使用に好適な基には、たとえば、脂肪族基、脂肪族オキシ基、アルキルホスホナト基、脂環式基、シクロアルキルスルホニル基、シクロアルキルアミノ基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シリル基、他の基、ならびにその混合物および組み合わせが含まれる。R、R、RおよびRの1以上としての使用に好適な基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。独立して、R、R、RおよびRの1以上としての使用に好適な基は、シクロプロペン環に直接結合することもできるし、あるいは介在基、たとえば、ヘテロ原子含有基によりシクロプロペン環と結合することもできる。
【0009】
好適なR、R、RおよびR基には、たとえば、脂肪族基がある。幾つかの好適な脂肪族基としては、たとえば、アルキル、アルケニル、およびアルキニル基が挙げられる。好適な脂肪族基は、直鎖状、分枝状、環状、またはその組み合わせであってよい。独立して、好適な脂肪族基は置換されていてもよいし、あるいは置換されていなくてもよい。
【0010】
本明細書において用いられる場合、目的の化学基の1以上の水素原子が置換基により置換されているならば、目的の化学基は「置換されている」といわれる。このような置換された基は、たとえば、これに限定されないが、目的の化学基の置換されていない形態を調製し、次いで置換を行うことを含む任意の方法により調製されることが意図される。好適な置換基としては、たとえば、アルキル、アルケニル、アセチルアミノ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシイミノ、カルボキシ、ハロ、ハロアルコキシ、ヒドロキシ、アルキルスルホニル、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ジアルキルアミノ、およびその組み合わせが挙げられる。さらなる好適な置換基は、もし存在するならば、単独または別の好適な置換基との組み合わせで存在することができ、
−(L)−Z
であり、式中、mは0〜8であり、LおよびZは本明細書において前記定義のとおりである。1より多くの置換基が目的の1つの化学基上に存在するならば、各置換基は異なる水素原子を置換していてもよく、あるいは1つの置換基は別の置換基と結合し、これが目的の化学基と結合するか、あるいはその組み合わせであってよい。
【0011】
好適なR、R、RおよびR基には、たとえば、置換および非置換脂肪族オキシ基、たとえば、アルケノキシ、アルコキシ、アルキノキシおよびアルコキシカルボニルオキシがある。
【0012】
好適なR、R、RおよびR基には、たとえば、置換および非置換アルキルホスホナト、置換および非置換アルキルホスファト、置換および非置換アルキルアミノ、置換および非置換アルキルスルホニル、置換および非置換アルキルカルボニル、ならびに置換および非置換アルキルアミノスルホニル、たとえば、アルキルホスホナト、ジアルキルホスファト、ジアルキルチオホスファト、ジアルキルアミノ、アルキルカルボニル、およびジアルキルアミノスルホニルがある。
【0013】
好適なR、R、RおよびR基には、たとえば、置換および非置換シクロアルキルスルホニル基およびシクロアルキルアミノ基、たとえば、ジシクロアルキルアミノスルホニルおよびジシクロアルキルアミノがある。
【0014】
好適なR、R、RおよびR基には、たとえば、置換及び非置換ヘテロサイクリル基(すなわち、少なくとも1個のヘテロ原子を環中に有する芳香族または非芳香族環式基)がある。
【0015】
好適なR、R、RおよびR基には、たとえば、介在するオキシ基、アミノ基、カルボニル基、またはスルホニル基によりシクロプロペン化合物に結合する置換および非置換ヘテロサイクリル基があり;かかるR、R、RおよびR基の例は、ヘテロサイクリルオキシ、ヘテロサイクリルカルボニル、ジヘテロサイクリルアミノ、およびジヘテロサイクリルアミノスルホニルである。
【0016】
好適なR、R、RおよびR基には、たとえば、置換および非置換アリール基がある。好適な置換基は前述のものである。幾つかの具体例において、少なくとも1つの置換基が、アルケニル、アルキル、アルキニル、アセチルアミノ、アルコキシアルコキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルカルボニルオキシ、カルボキシ、アリールアミノ、ハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、トリアルキルシリル、ジアルキルアミノ、アルキルスルホニル、スルホニルアルキル、アルキルチオ、チオアルキル、アリールアミノスルホニル、およびハロアルキルチオの1以上である、1以上の置換アリール基が使用される。
【0017】
好適なR、R、RおよびR基には、たとえば、介在するオキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルホニル基、チオアルキル基、またはアミノスルホニル基によりシクロプロペン化合物に結合する置換および非置換ヘテロ環式基があり;かかるR、R、RおよびR基の例は、ジヘテロアリールアミノ、ヘテロアリールチオアルキル、およびジヘテロアリールアミノスルホニルである。
【0018】
好適なR、R、RおよびR基には、例えば、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、クロラト、ブロマト、イオダト、イソシアナト、イソシアニド、イソチオシアナト、ペンタフルオロチオ;アセトキシ、カルボエトキシ、シアナト、ニトラト、ニトリト、パークロラト、アレニル;ブチルメルカプト、ジエチルホスホナト、ジメチルフェニルシリル、イソキノリル、メルカプト、ナフチル、フェノキシ、フェニル、ピペリジノ、ピリジル、キノリル、トリエチルシリル、トリメチルシリル;およびその置換類似体がある。
【0019】
本明細書において用いられる場合、化学基Gは3〜14員環系である。化学基Gとして好適な環系は、置換されていても、あるいは置換されていなくてもよく;これらは芳香族(たとえば、フェニルおよびナフチルを包含する)または脂肪族(不飽和脂肪族;部分的に飽和した脂肪族、または飽和脂肪族を包含する)であり;これらは炭素環式または複素環式であってよい。ヘテロ環式G基のうち、いくつかの好適なヘテロ原子は、たとえば、窒素、硫黄、酸素、およびその組み合わせである。化学基Gとして好適な環系は、単環式、二環式、三環式、多環式、スピロ、または縮合環であり;二環式、三環式、または縮合環である好適な化学基G環系において、一つの化学基G中の様々な環はすべて同じ種類であってもよいし、2以上の種類のものであってもよい(たとえば、芳香族環は脂肪族環と縮合してもよい)。
【0020】
いくつかの実施態様において、Gは飽和または不飽和3員環を含有する環系、たとえば、置換または非置換シクロプロパン、シクロプロペン、エポキシド、またはアジリジン環である。
【0021】
いくつかの実施態様において、Gは4員複素環を含有する環系であり;このような実施態様のいくつかにおいて、複素環はちょうど1個のヘテロ原子を含有する。独立して、いくつかの実施態様において、Gは5以上の要素を有する複素環を含有する環系であり;かかる実施態様のいくつかにおいて、複素環は1〜4個のヘテロ原子を含有する。独立して、いくつかの実施態様において、Gにおける環は非置換であり;他の実施態様において、環系は1〜5個の置換基を含有し;Gが置換基を含有する実施態様のいくつかにおいて、各置換基は独立して、前記の置換基から選択される。Gが炭素環系である実施態様も好適である。
【0022】
いくつかの実施態様において、各Gは独立して置換または非置換フェニル、ピリジル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、ピロリル、フリル、チオフェニル、トリアゾリル、ピラゾリル、1,3−ジオキソラニル、またはモルホリニルである。これらの具体例には、たとえば、Gが非置換または置換フェニル、シクロペンチル、シクロヘプチル、またはシクロヘキシルである具体例が含まれる。これらの具体例のいくつかにおいて、Gはシクロペンチル、シクロヘプチル、シクロヘキシル、フェニル、または置換フェニルである。Gが置換フェニルである具体例には、たとえば、1、2、または3個の置換基がある具体例が含まれる。独立して、Gが置換フェニルである具体例には、たとえば、置換基が独立してメチル、メトキシ、及びハロから選択される具体例が含まれる。
【0023】
およびRが結合して1つの基になっている実施態様も意図され、この基は二重結合によりシクロプロペン環の3位の炭素原子に結合する。このような化合物のいくつかは米国特許出願公開2005/0288189号に記載されている。
【0024】
いくつかの実施態様において、1以上のR、R、RおよびRが水素である1以上のシクロプロペンが用いられる。いくつかの実施態様において、RもしくはRは、またはRとRとの両方は水素である。独立して、いくつかの実施態様において、RもしくはRは、またはRとRとの両方は水素である。いくつかの実施態様において、R、RおよびRは水素である。
【0025】
いくつかの実施態様において、1以上のR、R、RおよびRは二重結合を有さない構造である。独立して、いくつかの実施態様において、1以上のR、R、RおよびRは三重結合を有さない構造である。独立して、いくつかの実施態様において、1以上のR、R、RおよびRはハロゲン原子置換基を有さない構造である。独立して、いくつかの実施態様において、1以上のR、R、RおよびRの1以上はイオン性である置換基を有さない構造である。
【0026】
いくつかの実施態様において、R、R、RおよびRの1以上は水素または(C−C10)アルキルである。いくつかの実施態様において、R、R、RおよびRのそれぞれは水素または(C−C)アルキルである。いくつかの実施態様において、R、R、RおよびRのそれぞれは水素または(C−C)アルキルである。いくつかの実施態様において、R、R、RおよびRのそれぞれは水素またはメチルである。幾つかの実施態様において、Rは(C−C)アルキルであり、R、RおよびRのそれぞれは水素である。幾つかの実施態様において、Rはメチルであり、R、RおよびRのそれぞれは水素であり、シクロプロペンは本発明においては「1−MCP」と称する。
【0027】
いくつかの実施態様において、50℃以下;または25℃以下;または15℃以下の1気圧での沸点を有するシクロプロペンが使用される。独立して、いくつかの実施態様において、−100℃以上;−50℃以上;または−25℃以上;または0℃以上の1気圧での沸点を有するシクロプロペンが使用される。
【0028】
本発明に適用可能なシクロプロペンは、任意の方法により調製することができる。シクロプロペンの調製のいくつかの好適な方法は、米国特許第5,518,988号および第6,017,849号に開示されているプロセスである。
【0029】
幾つかの実施態様では、本発明の1つまたはそれ以上の組成物は少なくとも1つのイオン性錯化試薬を含む。イオン性錯化試薬はシクロプロペンと相互作用し、水中において安定な錯体を形成する。幾つかの適切なイオン性錯化試薬は、例えばリチウムイオンを含む。幾つかの実施態様では、イオン性錯化試薬は全く使用されない。
【0030】
幾つかの実施態様では、本発明の組成物は分子封入剤を全く含んでいない。他の実施態様では、本発明の1つまたはそれ以上の組成物は少なくとも1つの分子封入剤を含む。
【0031】
分子封入剤が使用される場合、適切な分子封入剤は、例えば有機および無機の分子封入剤を含む。適切な有機分子封入剤は、例えば置換されたシクロデキストリン、置換されていないシクロデキストリン、およびクラウンエーテルを含む。適切な無機分子封入剤は、例えばゼオライトなどを含む。適切な分子封入剤の混合物も適している。本発明の幾つかの実施態様では、封入剤は、アルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン、ガンマ−シクロデキストリン、またはこれらの混合物である。本発明の幾つかの実施態様では、特にシクロプロペンが1−メチルシクロプロペンである場合、封入剤はアルファ−シクロデキストリンである。好ましい封入剤は、使用されるシクロプロペン(単数または複数)の構造に依存して変わるであろう。任意のシクロデキストリンもしくはシクロデキストリンの混合物、シクロデキストリンポリマー、修飾シクロデキストリン、またはこれらの混合物も本発明に従って使用することができる。これらのシクロデキストリンは、たとえば、Wacker Biochem Inc., Adrian, MIまたはCerestar USA,Hammond,IN、ならびに他の売り主から入手可能である。
【0032】
分子封入剤が存在する幾つかの実施態様において、少なくとも1つの分子封入剤が1つまたはそれ以上のシクロプロペンを封入する。分子封入剤の分子中に封入されたシクロプロペンまたは置換シクロプロペン分子は、ここでは、「シクロプロペン分子封入剤複合体」として知られている。これらのシクロプロペン分子封入剤複合体は任意の手段により調製することができる。一つの調製方法では、例えば、このような複合体は、シクロプロペンを分子封入剤の溶液またはスラリーと接触させ、次いで、例えば米国特許第6,017,849号に開示されているプロセスを用いて、この複合体を単離することにより調製される。例えば、1−MCPが分子封入剤に封入される複合体を調製する一つの方法においては、1−MCPガスをアルファ−シクロデキストリンの水中溶液中に吹き込み、この溶液から、先ず、複合体が沈殿し、次いで、濾過により単離される。幾つかの実施態様では、複合体は、前述の方法により生成され、単離後、乾燥され、後に有用な組成物に添加するため、固体の形態、例えば粉末として保存される。
【0033】
幾つかの実施態様では、1つまたはそれ以上の分子封入剤および1つまたはそれ以上のシクロプロペンの両者が共に組成物中に存在する;このような実施態様のうちの幾つかでは、分子封入剤の量は、分子封入剤のモル数のシクロプロペンのモル数に対する比により有用に特徴付けることができる。幾つかの実施態様では、分子封入剤のモル数のシクロプロペンのモル数に対する比は0.1以上;または0.2以上;または0.5以上;または0.9以上である。独立して、このような実施態様のうちの幾つかでは、分子封入剤のモル数のシクロプロペンのモル数に対する比は2以下;または1.5以下である。
【0034】
幾つかの実施態様において、本発明は器官離脱剤(abscission agent)を有さない。
【0035】
本発明の実施は、1つまたはそれ以上の液体組成物を要件とする。液体組成物は25℃において液体である。幾つかの実施態様では、液体組成物は、本組成物が植物を処理するために使用される温度において液体である。植物は屋外で処理されることが多いため、植物は1℃から45℃までの範囲の温度で処理することができ;適切な液体組成物はこの全温度範囲にわたって液体である必要はないが、適切な液体組成物は、1℃から45℃までの少なくともある温度において液体である。
【0036】
液体組成物が1つより多くの物質を含んでいる場合、この液体組成物は溶液もしくは分散液、またはその組合せであってよい。もし、液体組成物において、1つの物質が別の物質中に分散液の形態で分散している場合には、この分散液は任意のタイプであってよく、例えばスラリー、懸濁液、ラテックス、エマルション、ミニエマルション、マイクロエマルション、またはその任意の組合せを含む。
【0037】
組成物中のシクロプロペンの量は、組成物のタイプおよび意図される使用方法に依存して広範囲に変わり得る。幾つかの実施態様では、シクロプロペンの量は、この組成物の合計重量に基づき、4重量%以下;または1重量%以下;または0.5重量%以下;または0.05重量%以下である。独立して、幾つかの実施態様では、シクロプロペンの量は、組成物の合計重量に基づき、0.000001重量%以上;または0.00001重量%以上;または0.0001重量%以上;または0.001重量%以上である。
【0038】
水を含有する本発明の組成物を使用する本発明の実施態様においては、シクロプロペンの量は、パーツ・パー・ミリオン(即ち、この組成物中における1,000,000重量部の水あたりのシクロプロペンの重量部数、「ppm」)またはパーツ・パー・ビリオン(即ち、この組成物中における1,000,000,000重量部の水あたりのシクロプロペンの重量部数、「ppb」)として特徴付けることができる。幾つかの実施態様では、シクロプロペンの量は1ppb以上;または10ppb以上;または100ppb以上である。独立して、幾つかの実施態様では、シクロプロペンの量は10,000ppm以下;または1,000ppm以下である。
【0039】
幾つかの実施態様では、一部もしくはすべてのシクロプロペンが1以上の封入剤中に封入されている本発明の液体組成物が使用される。
【0040】
幾つかの実施態様では、本発明の組成物は金属錯化剤を全く含んでいない。幾つかの実施態様では、本発明の1以上の組成物は1以上の金属錯化剤を含んでいる。
【0041】
1つもしくはそれ以上の金属錯化剤が1つもしくはそれ以上の液体組成物中に含まれていてよい。金属錯化剤は、金属原子と配位結合を形成することができる化合物である。幾つかの金属錯化剤はキレート化剤である。本明細書で使用する場合、「キレート化剤」は、そのそれぞれの分子が、1個の金属原子と2またはそれ以上の配位結合を形成することができる化合物である。幾つかの金属錯化剤は、金属原子との配位結合に関与する電子供与体原子を含有するので、金属錯化剤は金属原子と配位結合を形成する。適切なキレート化剤は、例えば有機および無機のキレート化剤を含む。中でもとりわけ適切な無機キレート化剤は、例えば、リン酸塩、例えばピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムおよびヘキサメタリン酸などである。中でもとりわけ適切な有機キレート化剤は、大環状構造および非大環状構造を有するキレート化剤である。中でもとりわけ適切な大環状有機キレート化剤は、例えばポルフィン化合物、環状ポリエーテル(クラウンエーテルとも呼ばれている)、および窒素原子と酸素原子の両方を有する大環状化合物である。
【0042】
非大環状構造を有する幾つかの適切な有機キレート化剤は、例えばアミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、芳香族ヘテロ環式塩基、フェノール、アミノフェノール類、オキシム類、Shiff塩基、イオウ化合物、および前述のものの混合物である。幾つかの実施態様では、このキレート化剤は、1つもしくはそれ以上のアミノカルボン酸、1つもしくはそれ以上のヒドロキシカルボン酸、1つもしくはそれ以上のオキシム、または前述のものの混合物を含む。幾つかの適切なアミノカルボン酸は、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、N−ジヒドロキシエチルグリシン(2−HxG)、エチレンビス(ヒドロキシフェニルグリシン)(EHPG)、および前述のものの混合物を含む。幾つかの適切なヒドロキシカルボン酸は、例えば酒石酸、クエン酸、グルコン酸、5−スルホスリチル酸、および前述のものの混合物を含む。幾つかの適切なオキシムは、例えばジメチルグリオキシム、サリチルアルドキシム、および前述のものの混合物を含む。幾つかの実施態様ではEDTAが使用される。
【0043】
幾つかの追加の適切なキレート化剤はポリマーである。幾つかの適切なポリマーキレート化剤は、例えばポリエチレンイミン、ポリメタクリロイルアセトン、ポリ(アクリル酸)およびポリ(メタクリル酸)を含む。ポリ(アクリル酸)が幾つかの実施態様において使用される。
【0044】
キレート化剤ではない幾つかの適切な金属錯化剤は、例えば、アルカリ炭酸塩、例えば炭酸ナトリウムなどである。
【0045】
金属錯化剤は中性の形態、または1つもしくはそれ以上の塩の形態で存在していてよい。適切な金属錯化剤の混合物も適している。
【0046】
本発明の幾つかの実施態様では、本組成物は水を全く含まない。幾つかの他の実施態様において、本発明の組成物は水を含有する。
【0047】
独立して、水を含む液体組成物が使用され、液体組成物が1以上の金属錯化剤を含有する実施態様においては、金属錯化剤の量は、この液体組成物中における金属錯化剤のモル濃度(即ち、液体組成物1リットル当たりの金属錯化剤のモル数)により有用に特徴付けることができる。このような液体組成物のうちの幾つかにおいては、金属錯化剤の濃度は0.00001mM(即ち、ミリモル)以上;または0.0001mM以上;または0.001mM以上;または0.01mM以上;または0.1mM以上である。独立して、本発明の液体組成物が水を含む幾つかの実施態様では、金属錯化剤の濃度は100mM以下;または10mM以下;または1mM以下である。
【0048】
本発明の幾つかの実施態様では、本発明の組成物中に1以上のアジュバントも含まれている。アジュバントの使用は、本発明の実施において任意であると考えられている。アジュバントは単独または任意の組み合わせにおいて用いることができる。1つより多くのアジュバントが使用される場合、1以上のアジュバントの任意の組合せを使用できることが意図されている。幾つかの適切なアジュバントは、界面活性剤、アルコール、油、エキステンダー、顔料、充填剤、結合剤、可塑剤、潤滑剤、湿潤剤、展着剤、分散剤、固着剤、接着剤、消泡剤、増粘剤、輸送剤および乳化剤である。
【0049】
幾つかの実施態様では、アルコール、油、およびその混合物から選択される少なくとも1つのアジュバントを含有する本発明の組成物が使用され;このような組成物は、1以上の界面活性剤をさらに含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0050】
本発明の幾つかの実施態様では、1以上の界面活性剤が使用される。適切な界面活性剤は、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびその混合物を含む。幾つかの実施態様において、1以上のアニオン性界面活性剤が使用される。好適な界面活性剤の混合物も好適である。
【0051】
1以上の界面活性剤を含む1以上の液体組成物が使用される実施態様においては、幾つかの液体組成物は、この液体組成物の合計重量に基づき、重量で0.025%以上;または0.05%以上;または0.1%以上の量の界面活性剤を含んでいる。独立して、幾つかの液体組成物は、この液体組成物の合計重量に基づき、75%重量以下;または50重量%以下;または20重量%以下;または5重量%以下;または2重量%以下;または1重量%以下;または0.5重量%以下;または0.3重量%以下の量の界面活性剤を使用する。
【0052】
幾つかの実施態様において、組成物中に油は含まれない。
【0053】
独立して、いくつかの実施態様においては、1以上の油が使用される。本明細書において用いられる場合、「油」は25℃、1気圧で液体であり、1気圧で30℃以上の沸点を有する化合物である。本明細書において用いられる場合、「油」は水を含まず、界面活性剤(本明細書においてすでに記載したとおり)を含まず、アルコール(本明細書において後述する)を含まない。ある油は炭化水素油であり、他の油は非炭化水素油である。炭化水素油は、6個以上の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状のアルカン化合物である。本明細書において用いられる場合、「非炭化水素」とは、水素でも炭素でもない少なくとも1個の原子を含有する任意の化合物を意味する。
【0054】
液体組成物が使用される幾つかの実施態様では、1以上の炭化水素油が組成物中に含まれる。幾つかの適切な炭化水素油は、例えばヘキサン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ディーゼル油、精製パラフィン油(例えば、Sun Companyから入手可能なUltrafine(商標)スプレーオイルなど)、およびその混合物を含む。
【0055】
幾つかの実施態様において、1以上の非炭化水素油が組成物中に含まれる。幾つかの実施態様において、非炭化水素油は50℃以上;または75℃以上;または100℃以上の沸点を有する。独立して、幾つかの実施態様において、非炭化水素油は100以上;または200以上;または500以上の分子量を有する。
【0056】
幾つかの好適な非炭化水素油は、たとえば、脂肪非炭化水素油である。「脂肪」とは、本明細書において、脂肪酸の1以上の残基を含有する任意の化合物を意味する。脂肪酸は少なくとも4個の炭素原子の鎖長を有する長鎖カルボン酸である。典型的な脂肪酸は、4〜18個の炭素原子の鎖長を有するが、さらに長い鎖を有するものもある。好適な脂肪非炭化水素油の幾つかは、たとえば、脂肪酸のエステルである。このようなエステルは、たとえば、脂肪酸のグリセリド、たとえばトリグリセリドである。脂肪酸の好適なトリグリセリドの一例は、大豆油である。好適な脂肪非炭化水素油は、合成であっても、天然であっても、または天然油の修飾物であっても、またはその混合物であってもよい。好適な脂肪非炭化水素油には、脂肪酸の自己乳化性エステルがある。
【0057】
好適な非炭化水素油のもう一つ別のグループはシリコーン油である。シリコーン油は、部分的または完全に−Si−O−結合から構成される主鎖を有するオリゴマーまたはポリマーである。シリコーン油は、たとえば、ポリジメチルシロキサン油を包含する。
【0058】
好適な油の混合物、たとえば、複数の炭化水素油の混合物、複数の非炭化水素油の混合物、および1以上の炭化水素油の1以上の非炭化水素油との混合物も好適である。
【0059】
幾つかの実施態様は、組成物の合計重量に基づき、0.25重量%以上;または0.5重量%以上;または1重量%以上の量の油を使用する。独立して、幾つかの実施態様は、組成物の合計重量に基づき、90重量%以下;または50重量%以下;または10重量%以下;または5重量%以下;または4重量%以下;または3重量%以下の量の油を使用する。
【0060】
幾つかの液体組成物においては、1以上のアルコールが使用される。適切なアルコールは、例えばアルキルアルコールおよび他のアルコールを含む。本明細書で使用する場合、アルキルアルコールは一つのヒドロキシル基を有するアルキル化合物であり;このアルキル基は直鎖状、分枝状、環状、またはその組合せであってよく;このアルコールは第一級、第二級または第三級であってよい。幾つかの実施態様では、2個以上の炭素原子を有するアルキル基を有するアルキルアルコールが使用される。幾つかの実施態様では、エタノール、イソプロパノール、またはその混合物が使用される。幾つかの実施態様では、20個以下の炭素原子;または10個以下の炭素原子;または6個以下の炭素原子;または3個以下の炭素原子を有するアルキル基を有する1以上のアルキルアルコールが使用される。
【0061】
アルコールを使用する液体組成物の中で、幾つかの液体組成物は、この液体組成物の合計重量に基づき、0.25重量%以上;または0.5重量%以上;または1重量%以上の量のアルコールを使用する。アルコールを使用する液体組成物の中で、幾つかの液体組成物は、この液体組成物の合計重量に基づき、90重量%以下;または50重量%以下;または10重量%以下;または5重量%以下;または4重量%以下;または3重量%以下の量のアルコールを使用する。
【0062】
本発明の成分は、任意の手段により任意の順番で混ぜ合わされてよい。
【0063】
本発明の実施において、本発明の液体組成物(単数または複数)が植物と接触するのを可能にする任意の方法を用いることができる。本明細書において用いられる場合、植物を本発明の液体組成物と接触させることは、ここでは、植物を「処理する」という。幾つかの接触方法の例は、例えば噴霧、発泡、雲霧、注液、刷毛塗り、浸漬、類似の方法、およびその組合せである。幾つかの実施態様では、噴霧もしくは浸漬、またはこれら両方が使用される。幾つかの実施態様では噴霧が使用される。
【0064】
幾つかの植物は、1以上の植物の部分が有用な産物であると考えられるときには、このような部分を取得する目的で育てられる。このような植物は本明細書においては「作物植物」と称する。このような有用な植物の部分の取得は収穫と呼ばれる。本発明の実施において、有用な植物の部分を産する植物は、これらの有用な植物の部分を収穫する前に、本発明の組成物で処理される。このような実施態様では、使用される各組成物は、使用され得る他の任意の組成物とは独立して、この植物の全体またはこの植物のある部分と接触させられてよい。組成物が植物の一部と接触させられる場合、この部分は、収穫することが意図されている有用な植物の部分を含んでいてよく、またはこの有用な植物の部分を含んでいなくてもよい。
【0065】
本発明の組成物は植物と接触させるために使用される。処理を実施する際、本発明の組成物は、この植物全体と接触させられてよく、または1つもしくはそれ以上の植物の部分と接触させられてもよいことが意図されている。植物の部分は、植物の任意の部分を含み、例えば花、芽、観賞用の花、種子、切り枝、根、球根、果実、野菜、葉、および前述のものの組合せなどを含む。
【0066】
幾つかの実施態様において、本発明の液体組成物は、農地で成長する作物植物上に噴霧される。このような噴霧操作は、1つの成長期の間に作物植物の特定の群に対して1回または1回より多く行うことができる。幾つかの実施態様において、1回の噴霧操作において使用されるシクロプロペンの量は、0.1グラム/ヘクタール(g/ha)以上;または0.5g/ha以上;または1g/ha以上である。独立して、幾つかの実施態様において、1回の噴霧操作において使用されるシクロプロペンの量は、500g/ha以下;または300g/ha以下;または100g/ha以下;または50g/ha以下である。
【0067】
多くの作物植物の成長及び発達のプロセスは、特定の発達段階により説明することができる。たとえば、多くの作物植物は栄養成長段階と、それに続く生殖成長段階を経て成長する。ある作物植物は、その生殖成長段階後の熟成段階を経て発達する。本発明の実施において、1以上の生殖成長段階の間に作物植物を本発明の組成物と1回以上接触させる。いくつかの実施態様において、任意の生殖成長段階の前に1回以上、任意の熟成段階の間に1回以上、またはその組み合わせで作物植物を任意に本発明の組成物とさらに接触させてもよい。
【0068】
幾つかの作物植物は栄養成長および生殖成長プロセスを同時に経て発達する。かかる作物植物を1以上の本発明の組成物と発芽後であるが収穫前に1回以上接触させることが意図される。
【0069】
幾つかの実施態様において、園芸作物植物を本発明の液体組成物と接触させると、その結果、作物収穫高が改善されることが意図される。ある特定の作物植物に関して、作物収穫高において最大の改善を達成するためには、本発明の組成物との接触を行うために最適の段階(単数または複数)があると考えられる。かかる最適段階(単数または複数)は、作物植物のそれぞれの種類によって異なる場合があり、かかる最適段階(単数または複数)は、場合によっては、特定の成長条件に依存し得る。
【0070】
幾つかの実施態様において、作物植物のグループを発達の所望の段階で接触させることが意図される。このような場合において、かかる接触は、所望の発生段階に達した植物の数の、グループ中の植物の合計数に対する比が少なくとも0.1、または少なくとも0.5、または少なくとも0.75、または少なくとも0.9であるとき(すなわち、発達の所望の段階に達した植物の部分が少なくとも10%、または50%、または75%、または90%である時)に行われ得ることが意図される。
【0071】
適切な処理は、農地、庭、建物(例えば温室など)、または他の場所に植えられた植物に対して行うことができる。適切な処理は、屋外の土地、1以上の容器(例えば植木鉢、プランター、花瓶など)、区切られた苗床もしくは隆起した苗床、または他の場所に植えられた植物に対して行うことができる。処理が建物の中で行われる幾つかの実施態様において、建物は気密性でないことが意図される。幾つかの実施態様において、処理は建物の外部で行われる。
【0072】
本発明の実施において、処理される植物は園芸作物を産する任意の植物である。園芸作物は農耕(agronomic)作物でもなく、林業産物でもない農産物である。農耕作物は、草木性農作物、たとえば、穀物、飼料、油科種子、及び繊維作物である。林業産物は森林樹および林産物である。園芸作物植物は、通常、食用または観賞目的で栽培される、比較的集中的に管理された植物である。幾つかの典型的な園芸作物は、果物、野菜、スパイス、ハーブ、および装飾用に育てた植物である。
【0073】
幾つかの実施態様において、果物、野菜、スパイス、ハーブ、あるいは装飾用に育てた植物または植物の部分を産する作物植物が処理される。幾つかの実施態様において、果物または野菜を産する作物植物が処理される。幾つかの実施態様において、野菜を産する作物植物が処理される。
【0074】
野菜を産する作物植物を含む態様において、好適な植物は、たとえば、キャベツ、アーティーチョーク、アスパラガス、レタス、ほうれん草、カッサバの葉、トマト、カリフラワー、カボチャ、キュウリおよびガーキン、ナス、チリおよびコショウ、グリーンオニオン、ドライオニオン、ニンニク、ニラネギ、他のネギ属野菜、グリーンビーンズ、グリーンピース、グリーンブロードビーンズ、サヤエンドウ、ニンジン、オクラ、グリーンコーン、マッシュルーム、スイカ、カンタロープメロン、他のメロン、タケノコ、テンサイ、フダンソウ、ケーパー、カルドン、セロリ、チャービル、カラシナ、フェンネル、セイヨウワサビ、マージョラム、オイスタープラント、パセリ、パースニップ、ラディッシュ、ルバーブ、ルタバガ、サボリ、フタナミソウ、スイバ、ウォータークレス、および他の野菜を産する植物を包含する。
【0075】
幾つかの実施態様は、ナス科植物またはウリ科植物の処理を要件とする。ナス科植物としては、例えば、Lycopersicon esculentum(たとえば、トマト植物);トウガラシ植物(たとえば、ピーマン、パプリカ、およびチリペッパー植物);およびナス属植物(Solanum melongena)(たとえば、ナス(eggplant)、ナス(aubergine)、またはナス(brinjal)植物)が挙げられる。ウリ科植物としては、たとえば、Citrullus lanatus(スイカ)植物、Cucumis sativus(キュウリ)植物、Cucumis melo(あらゆる種類のメロン)植物、Cucumis anguria(バーガーキン)植物、Cucurbita(5種のほうれん草およびカボチャ)植物、Cucurbita pepo(サマースカッシュ、カボチャ、スカロップ、ストレートネック、ズッキーニ、黄色ゴード)植物、Cucurbita maxima(ハバード)植物、Cucurbita mixta(冬カボチャ)植物、およびCucurbita moschata(バターナットスカッシュ、バナナスカッシュ、およびエイコーンスカッシュ)植物が挙げられる。
【0076】
幾つかの実施態様は、トマト植物、ピーマン植物、スイカ植物、カンタロープ植物、またはマスクメロン植物の処理を要件とする。
【0077】
トマト植物の処理を要件とする実施態様において、適当なトマト植物としては、例えば、加工用トマト植物および生食用トマト植物が挙げられる。トマト植物は、少なくとも1回処理され、少なくとも1回の処理は任意の生殖成長段階の間の任意の時点で行われる。幾つかの実施態様において、トマト植物は次の時点の1以上で処理される:第一開花期間の開始から第一開花期間の開始後7日までの期間中に1回以上;および収穫予定日の28日前から収穫までの期間中に1回以上。幾つかの実施態様において、トマト植物は、次の時点の1以上で処理される:第一開花期間の開始時;第一開花期間の開始後7日;収穫予定日の28日前、収穫予定日の21日前、収穫予定日の14日前、およびその任意の組み合わせ。
【0078】
トマト植物の処理を要件とする実施態様において、好適な処理率は、たとえば、5g/ha以上;または10g/ha以上;または20g/ha以上を包含する。独立して、トマト植物の処理を要件とする実施態様において、好適な処理率は、たとえば、100g/ha以下;または60g/ha以下;または30g/ha以下である。
【0079】
ピーマン植物の処理を要件とする実施態様において、ピーマン植物は少なくとも1回処理され、少なくとも1回の処理は任意の生殖成長段階中の任意の時点で行われる。幾つかの実施態様において、ピーマン植物は第一開花期間の開始時に処理される。
【0080】
ピーマン植物の処理を要件とする実施態様において、好適な処理率は、たとえば、5g/ha以上;または10g/ha以上;または20g/ha以上を包含する。独立して、ピーマン植物の処理を要件とする実施態様において、適当な処理率は、たとえば、100g/ha以下;または60g/ha以下;または30g/ha以下を包含する。
【0081】
スイカの処理を要件とする実施態様において、スイカ植物は少なくとも1回処理され、少なくとも1回の処理が任意の生殖成長段階の間の任意の時点で行われる。スイカ植物の処理のタイミングは、「DAF」;(すなわち、開花後の日数)として有効に記載することができ、これは、開花の開始後の日数を意味する。幾つかの実施態様において、スイカ植物は1〜14DAFで1回以上処理される。幾つかの実施態様において、スイカ植物は次のタイミングのいずれか1つまたは任意の組み合わせで処理される;1DAF、7DAF、および14DAF。
【0082】
スイカ植物の処理を要件とする実施態様において、適当な処理率は、たとえば、1g/ha以上;または2g/ha以上;または5g/ha以上を包含する。独立して、スイカ植物の処理を要件とする幾つかの実施態様において、適当な処理率は、たとえば、100g/ha以下;または60g/ha以下;または30g/ha以下である。
【0083】
カンタロープ植物の処理を要件とする幾つかの実施態様において、カンタロープ植物は、少なくとも1回処理され、少なくとも1回の処理は任意の生殖成長段階中の任意の時点で行われる。いくつかの実施態様において、カンタロープ植物は、芽形成から開花後10日までの期間で1回以上処理される。幾つかの実施態様において、カンタロープ植物は芽形成後であるが、開花前に処理される。幾つかの実施態様において、カンタロープ植物は開花後10日で処理される。
【0084】
カンタロープ植物の処理を要件とする実施態様において、適当な処理率は、たとえば、5g/ha以上;または10g/ha以上;または20g/ha以上を包含する。独立して、カンタロープ植物の処理を要件とする幾つかの実施態様において、適当な処理率は、たとえば、100g/ha以下;または60g/ha以下;または30g/ha以下を包含する。
【0085】
カンタロープ植物以外のメロン植物の処理を要件とする実施態様において、意図される処理のタイミングおよび処理率は、カンタロープ植物について前述のものと同じである。
【0086】
果物を産する作物植物を要件とする実施態様において、適当な植物としては、たとえば、バナナおよびプランテーン;柑橘類;ナシ状果;石果;ベリー類;ブドウ;トロピカルフルーツ;雑(miscellaneous)フルーツ;および他の果物を産する作物植物が挙げられる。柑橘系果物としては、たとえば、オレンジ、タンジェリン、マンダリン、クレメンタイン、温州ミカン、レモン、ライム、グレープフルーツ、ポメロウ、ベルガモット、シトロン、チノット、キンカン、および他の柑橘系果物が挙げられる。ナシ状果としては、たとえば、リンゴ、西洋ナシ、マルメロ、および他のナシ状果が挙げられる。石果としては、たとえば、アンズ、サクランボ、モモ、ネクタリン、プラム、および他の石果が挙げられる。ベリー類はとしては、たとえば、イチゴ、ラズベリー、スグリ、カランツ、ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ローガンベリー、マルベリー、マートルベリー、ハックルベリー、デングルベリー、および他のベリー類が挙げられる。トロピカルフルーツとしては、たとえば、イチジク、カキ、キウイ、マンゴ、アボカド、パイナップル、ナツメヤシ、カシューアップル、パパイヤ、パンノキ、スターフルーツ、チェリモヤ、ドリアン、フェイジョア、グアバ、モンビン、ジャックフルーツ、ロンガン、マンメア、マンゴスチン、ナランジロ、パッションフルーツ、ランブータン、サポーテ、サポジラ、スターアップル、および他のトロピカルフルーツが挙げられる。雑フルーツとしては、たとえば、アザロール、ババコ、エルダーベリー、ナツメ、ライチ、ビワ、セイヨウカリン、ポポー、ザクロ、ウチワサボテン、ローズヒップ、ナナカマド、サービスアップル、タマリンド、およびツリーストロベリーが挙げられる。
【0087】
本発明の幾つかの実施態様において、植物のグループは同時に、あるいは逐次的に処理される。かかる植物のグループの一つの特徴は、作物収穫高であり、これは所定の植物のグループから集められる有用な植物の部分の量(本明細書においては「作物量」と呼ぶ)として定義される。作物収穫高の有用な定義の一つにおいて、特定の植物のグループは、土地のある面積を占めるグループである(この定義は、植物が農地において連続したグループで成長している場合によく用いられる)。作物収穫高のもう一つ別の有用な定義において、特定の植物のグループは特定の数の個々に特定された植物である(この定義は、任意の植物のグループ、たとえば、農地、植木鉢、温室、またはその組み合わせにおける植物のグループに関して用いることができる)。
【0088】
作物量は様々な方法で定義することができる。本発明の実施において、作物量は、たとえば、次の方法のいずれかにより測定することができる:収穫された植物の部分の重量、体積、または数、あるいはバイオマス。作物量が作物における特定の構成要素(たとえば、固体、糖、デンプン、またはタンパク質)の収穫における量として測定される方法も意図される。さらに、作物量が、ある特徴(たとえば、赤さ、これはトマトの作物量を測定するために用いられる場合がある)の量として測定される方法も意図される。さらに、作物量が収穫された植物部分の特定の部分の量として測定される方法も意図される。
【0089】
幾つかの実施態様において、作物収穫高は、土地の単位面積あたりの作物の量として定義される。すなわち、作物が収穫された土地の面積を測定し、作物量を土地の面積で割って、作物収穫高を計算する。たとえば、収穫された植物部分の重量として測定された作物量から、これを面積あたりの重量(たとえば、キログラム/ヘクタール)として報告される作物収穫高が得られる。
【0090】
幾つかの実施態様において、作物量に寄与する収穫された植物の部分は、これらの植物の部分が植物の部分のタイプにとって適切な最低品質基準を満たしていることが意図されている。即ち、ある植物から植物の部分が収穫された時、作物量は、例えば、これらの植物から収穫された、許容可能な品質を有する植物の部分の重量である。許容可能な品質は、目的の植物の部分の収穫者または取扱者が用いる任意の通常の判定基準により決定されてよい。植物の部分の許容可能な品質に関するこのような判定基準は、例えば大きさ、重さ、硬さ、磨きに対する抵抗力、香り、糖/デンプンのバランス、色、美しさ、可食性、美的魅力、全体的な外観、販売適合性、他の品質基準、または前述のものの任意の組合せのうちの1つまたはそれ以上であってよい。また、植物の部分がその品質(上述のいずれかの判定基準により判定された品質)を維持する時間の長さも、単独で、または前述のいずれかの判定基準と組み合わせて、品質の判定基準として意図されている。
【0091】
作物量のいくつかの例(限定するものではない)は、たとえば、収穫された作物の合計重量;収穫された植物部分の合計数;それぞれが植物部分の種類についての最低重量を満たすかまたは多少超過する、収穫された植物部分の重量(または数);あるいはそれぞれが植物部分の種類についての最低品質基準(たとえば、色または香りまたは質感または他の基準または基準の組み合わせ)を満たすかまたは超過する、収穫された植物部分の重量(または数);食べられる収穫された植物部分の重量(または数);あるいは販売できる収穫された植物部分の重量(または数)である。それぞれの場合において、前記定義のように、作物収穫高は、作物を育てた土地の単位面積あたりの作物量である。
【0092】
本発明の幾つかの実施態様において、本発明の方法での植物群の処理は、本発明の方法で処理されなかったならば、植物群から得られるであろう作物収量と比較して、植物の群の作物収量を増大させる。作物収量における増加は、広範囲におよぶ様々な方法の任意のもので得ることができる。たとえば、作物収量を増大させることができる一つの方法は、それぞれの植物がより多くの数の有用な植物部分を産生できることである。もう一つ別の例として、作物収量を増大させることができる一つの方法は、それぞれの有用な植物部分がより重い重量を有しうることである。第三の例として、より多くの数の潜在的に有用な植物部分が許容できる品質についての最低基準を満たす場合に、作物収量は増大し得る。作物収量を増加させる他の方法も、本発明の実施から得られうる。任意の方法の組み合わせにより起こる作物収量の増大も意図される。
【0093】
本発明の幾つかの実施態様を実施することによりもたらされるものと意図されている別の利益は、作物の全般的な品質が改善され得ることである。即ち、本発明の方法により生産された作物は、この作物に対する適切な品質判定基準により判定したときに、本発明の方法を用いることなく生産された比較用作物よりも高い全般的または平均的品質レベルを呈することができる。幾つかのケースにおいては、このような高品質の作物は、販売するときに、一層高い価格を要求することができる。
【実施例】
【0094】
以下の実施例では、次の物質を使用した:
粉末1=Rohm and Haas Co.からAFXRD−038として入手可能な3.8%1−MCPを含有する粉末。
粉末2=Rohm and Haas Co.からAFXRD−020として入手可能な2.0%1−MCPを含有する粉末。
アジュバント1=Helena Chemicalから入手可能なDyne−Amic(商標)スプレーオイル。
【0095】
以下の実施例において、「UTC」と表示されたサンプルは未処理対照であり、比較例である。残りの実施例は、本発明を表す。
【0096】
以下の実施例において、このような手順を使用した:
必要な水の全体積の約2/3でスプレータンクを満たした。調製されるスプレーの意図される処理率および合計体積に従って粉末1または粉末2の量を秤量した。適当な量を計算し、0.38%v/vの合計スプレー体積を得た。アジュバント1をスプレータンクに添加し、混合物が乳白色に変わるまで撹拌した。粉末1または粉末2をスプレー容器に添加し、穏やかに(激しくなく)撹拌した。残りの水を添加し、すべての粉末を確実に湿らせ、(もし堆積しているならば)タンクの側壁から洗い流した。スプレータンクを次に2〜5分間、渦を形成させるかまたは撹拌して、良好な混合を保証した。その後、5から60分の間、植物に混合物をスプレーした。
【0097】
フラットファンノズルを使用し、100〜500マイクロメートルの液滴サイズを生じさせた。混合物の噴霧速度は187〜373リットル/ヘクタール(20〜40ガロン/エーカー)であった。二酸化炭素パワードバックパック噴霧器を使用した。噴霧は午前10時より前に行った。
【0098】
以下の実施例において、次の略語を使用する:haはヘクタール、mTは、メートルトン、AIは1−MCP、wtは重量。
【0099】
実施例1
AB2品種トマトの処理
AB2品種トマトをフロリダ州ゲーンズビルで育てた。処理は、前記のように噴霧することにより行い、噴霧液体の濃度を調節して25g/ha(9.4oz/エーカー)の1−MCPにした。処理は、次のタイミングで行った。bloom1=第一開花期間の開始
bloom2=第一開花期間の開始後7日
day28=収穫予定日の28日前
day21=収穫予定日の21日前
day14=収穫予定日の14日前
結果は次の通りであった:
重量は果実の収量であり、mT/ha(トン/エーカー)で記載する。
°ブリックスは可溶性固形分(合計可溶性固形分または可溶性固形分含量とも呼ぶ)であり、トマトの品質の尺度である。°ブリックス収量は、土地の単位面積あたりの個体の重量、すなわち、mT/ha(トン/エーカー)として記載する。
遅れは収穫の遅れであり、緑熟(%)として記載する。
数は、果実収量であり、1ヘクタールあたりの1000個の果実数(1000/エーカー)として記載する。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

処理されたトマトは重量およびブリックスにおいてUTCトマトを超える改善を示した。
【0104】
実施例2
410品種トマトの処理
410品種トマトを実施例1と同様に育て、処理した。結果は次の通りであった;
【0105】
【表5】

処理されたトマトは重量および数においてUTCトマトを超える改善を示した。
【0106】
実施例3
生食用FL47品種トマト
FL47品種トマトをフロリダで育て、前記のようにして処理した。収量をmT/ヘクタール(Cwt/エーカー、すなわち、1エーカーあたり100ポンドの群の数)として記載する。結果は次のとおりであった:
【0107】
【表6】

【0108】
【表7】

【0109】
【表8】

処理されたトマトはUTCトマトを超える改善された収量を示した。
【0110】
実施例4
ピーマン
Lady Bell種のピーマンをオハイオ州ホストリアで、小区画で成長させ、前記実施例においてと同様に処理し、第一開花期間の開始時に1回処理した。処理率はg/ha(oz/エーカー)で報告される。結果を合計果実(全区画で育てたピーマンの合計数)、植物あたりの果実(区画全体にわたる平均)、および全植物(全区画で育てた植物の合計数)として記載する。「NS」は液体組成物が界面活性剤を有さないことを意味する。結果は次の通りであった:
【0111】
【表9】

処理されたピーマン植物は、UTCピーマン植物を超える改善を示した。
【0112】
実施例5
スイカ
スイカ(様々な三倍体品種SS7187)植物を前記実施例1と同様に処理した。処理率を1ヘクタールあたりの1−MCPのグラム数で記載する。タイミングはDAF(開花後の日数)で記載する。市場性のあるメロンは4.54kg以上の重量を有する収穫されたメロンである。淘汰したのは、4.54kg未満の重量を有する収穫されたメロン、または5cmより大きな直径を有する未収穫のメロンである。次の結果が報告される:
数(25)=収穫前、25DAFで評価された、植物あたり5cmより大きな直径を有する果実の数。「着果」とも呼ぶ。
数(合計)=5cmより大きな直径を有する、42〜56日の収穫された果実および未収穫の果実
数(市場性)=植物あたりの市場性のあるメロンの数
数(淘汰)=植物あたりの淘汰した数
サイズ=果実の平均サイズ(kg)
収量=市場性のあるメロンの重量(メートルトン/ヘクタール)
結果は次の通りであった:
【0113】
【表10】

【0114】
表5.1にまとめたデータの統計的分析から、1DAFでの処理は、UTCよりもスイカの数および収量の両方において有意な増加をもたらしたことが示された。
【0115】
【表11】

【0116】
表5.2にまとめたデータの統計的分析から次のことがわかった。25g/haでの処理の結果、UTCよりも着果において有意な増加が得られた。処理された植物は、UTCよりも市場性のある果実の数の有意な増加を示した。処理された植物はUTCよりも収量において有意な増加を示した。処理された植物とUTC間の果実サイズの差は有意ではなかった。
【0117】
実施例6
カンタロープ
カンタロープ植物を実施例1と同様に処理した。処理のタイミングは「Before」(開花前)または「Blossom10」(開花後10日)であった。第一着花(Set)の平均を測定した。結果は次の通りであった:
【0118】
【表12】

【0119】
開花前の処理はUTCを超える改善された着花をもたらした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
園芸作物植物を1回以上液体組成物と接触させる工程を含む園芸作物植物を処理する方法であって、前記液体組成物が1種以上のシクロプロペンを含み、前記接触が前記植物の生殖成長段階の間に行われ、および前記植物が、ナス科植物およびウリ科植物からなる群から選択される、園芸作物植物を処理する方法。
【請求項2】
園芸作物植物を1回以上液体組成物と接触させる工程を含む園芸作物植物を処理する方法であって、前記液体組成物が1種以上のシクロプロペンを含み、前記接触が前記植物の生殖成長段階の間に行われ、および前記植物が、スイカ植物、カンタロープ植物、ピーマン植物、およびトマト植物からなる群から選択される、園芸作物植物を処理する方法。
【請求項3】
園芸作物植物を1回以上液体組成物と接触させる工程を含む園芸作物植物を処理する方法であって、前記液体組成物が1種以上のシクロプロペンを含み、前記接触が前記植物の生殖成長段階の間に行われ、および前記植物がトマト植物であり、および接触工程の1以上が
(a)第一開花期間の開始から第一開花期間の開始後7日までの期間に1回以上、
(b)収穫予定日の28日前から収穫までの期間に1回以上、および
(c)その任意の組み合わせ:
からなる群から選択される時点で行われる、園芸作物植物を処理する方法。
【請求項4】
園芸作物植物を1回以上液体組成物と接触させる工程を含む園芸作物植物を処理する方法であって、前記液体組成物が1種以上のシクロプロペンを含み、前記接触が前記植物の生殖成長段階の間に行われ、前記植物がピーマン植物であり、および接触工程の1以上が第一開花期間の開始時に行われる、園芸作物植物を処理する方法。
【請求項5】
園芸作物植物を1回以上液体組成物と接触させる工程を含む園芸作物植物を処理する方法であって、前記液体組成物が1種以上のシクロプロペンを含み、前記接触が前記植物の生殖成長段階の間に行われ、前記植物がスイカ植物であり、および接触工程の1以上が開花後1〜14日の時点に行われる、園芸作物植物を処理する方法。
【請求項6】
園芸作物植物を1回以上液体組成物と接触させる工程を含む園芸作物植物を処理する方法であって、前記液体組成物が1種以上のシクロプロペンを含み、前記接触が前記植物の生殖成長段階の間に行われ、前記植物がカンタロープ植物であり、および接触工程の1以上が芽形成から開花後10日までの期間に行われる、園芸作物植物を処理する方法。

【公開番号】特開2010−241842(P2010−241842A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−169284(P2010−169284)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【分割の表示】特願2007−127783(P2007−127783)の分割
【原出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】