説明

園芸植物の表示札とその着脱方法

【課題】植物の苗を育成するための育成ポットに取り付け、着脱時間を短縮し、及び植物の苗に影響を及ぼさない園芸植物の表示札の提供。
【解決手段】育成ポット2に形成された表示札の取り付け個所には表示札1が差し込まれる切り込み5が設けられ、この表示札は植物の情報を表示する表示部1aと育成ポットの切り込みに差し込まれる差し込み部1bとで構成されており、更に、この差し込み部の側縁には相対向する位置に育成ポットの切り込みに係止する切欠部6と、この切欠部よりも表示部に向けて表示札の差し込み部の先端を複数個に分割する切断部7が形成されている。この表示札を育成ポットの内側から切り込みに差し込んだときには、差し込み部の先端の切断部が重なる向きに動きながら切り込みに係止し、また、表示札を取り外すときには、差し込み部の先端の切断部を重なる向きに動かしながら表示札を引き抜くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植物の苗を育成するための育成ポットに取り付ける植物のための表示札に関する。
【背景技術】
【0002】
園芸植物は育成ポットに培養土をいれて、植物の種蒔きや幼い苗の植え付けをして、その植物が苗として販売できるまで育成することが行われている。そして、この育成ポットには、植物の苗が育って出荷するときまでに、その植物の表示札を育成ポットに差し込んで、その植物の苗を育てた育成ポットごと市場に出荷して販売されている。このとき使われる従来の園芸植物の表示札は、そのまま育成ポットに差し込む単純なものであるから、出荷時の搬送時などでこの育成ポットの扱いが乱雑であると、折角差し込んだ表示札が抜け落ちて紛失して、その園芸ポットの植物が何なのかわからなくなってしまうことがあり、特に植物は苗の状態では細かな種類の判断ができず、重大な欠点となっていた。また、このような表示札の紛失を防ぐために、育成ポットにこの表示札をホッチキス留めで取り付けられることがあり、現在ではこの方法が主流となっている。
【0003】
このようなホッチキス留めは確実に表示札の紛失を防ぐことができるが、この作業効率は悪く、このため、特許文献1に記載するように、育成ポットに差し込まれる表示札の差し込み部の側面には、相対向する位置に切欠部を形成し、また、育成ポットはその側面などに切り込みによる取付け部を形成し、表示札の差し込み部の先がこの取付け部に差し込まれ、この取付け部と差し込み部の切欠部とが係止することで、園芸ポットの荷扱いの途中で、表示札の脱落を防ぐ提案がある。
【0004】
【特許文献1】特開平2004−49032号公報
【特許文献2】特開平2004−254642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記表示札の切欠部が育成ポットの取付け部に確実に係止するためには、表示札の切欠部よりも先の差し込み部の幅は、育成ポットの取付け部の幅よりも大きくしなければならず、表示札を差し込むためにはその表示札や育成ポットの一部を変形しなければ係止することができない。このため、特許文献2のように表示札の差し込み部の先端に折り目を付けておき、表示札を断面V字形に折り曲げた状態で、育成ポットの取付け部に差し込むことが行われている。
【0006】
ところで、育成ポットは植物名の表示をしない状態で育成したり、簡単な名前ラベルをつけた状態で育成して、出荷前には販売促進ができる大型の表示札を付ける作業が行われるものであり、取り付けられた表示札の紛失を防ぐために、育成ポットに表示札をホッチキス留めで取り付ける時には、片手で表示札を支えながらホッチキス留めを行うから、作業効率が悪く作業時間が長くなってしまうものである。また、特許文献2のように表示札を断面V字形に折り曲げることで、育成ポットの取付け部に表示札の切欠部をはめ込む時には、育成ポットの壁面と培養土との間に、断面V字形に折り曲げた表示札を差し込むための大きな隙間を作らなければならず、このとき根張りが進行した植物の根鉢をくずして植物の苗の根を切断して弱らせてしまうことがあり、また、表示札を断面V字形に折り曲げ作業は面倒で、この方法でも作業時間が長くなってしまうものであった。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の被い園芸植物の表示札は、
植物の苗と培養土が入れられた育成ポットに差し込まれる前記植物のための表示札であって、その表示札は前記植物の情報を表示する表示部と、前記育成ポットに差し込まれる差し込み部とで構成され、その差し込み部の側縁には相対向する位置に切欠部が形成されており、前記育成ポットには前記表示札の差し込み部が差し込まれる取付け部が設けられ、前記差し込み部の前記切欠部がこの取付け部に係止するとともに、前記取付け部に差し込まれる前記表示札の差し込み部の端から、前記切欠部よりも表示部に向けて先端を複数個に分割する切断部が形成され、前記表示札の分割された先端は、前記育成ポットに差し込んだときに先端の切断部が重なる向きに移動して前記取付け部に係止することことを特徴とする。
【0008】
このようにこの発明の表示札の差し込み部はその先端から表示部に向かって切断部が形成され、少なくともその先は2本に分割しているから、その先端の切断部が重なる方向に移動可能になるものである。このため、表示札が育成ポットの取付け部に差し込まれるときには、差し込み部の分割端は育成ポットの側面に沿って移動させることができるから、表示札を取り付けるために、従来のようにホッチキスを使ったり、あらかじめ表示札の先を断面V字形に折り曲げする必要はなく、また、この取り付け作業は普通の差込動作によって、そのまま表示札を育成ポットの取付け部に差し込むことによって固定されるから、取り付けが簡単になって作業効率は格段に向上し、作業時間は大幅な短縮が可能になった。
【0009】
また、育成ポットの植物が育った培養土と育成ポットの内壁との間に大きな隙間を作る必要はなくなったから、培養土と接する育成ポットの内壁に沿って表示札を差し込むことによって表示札の取り付けができるようになり、育成ポットに植えられた育成中の植物に対して表示札を取り付けても、表示札の差し込み時に培養土は崩されないから、差し込まれた表示札の差し込み部はこの育成ポットの培養土によって均一に育成ポットの内側面に押し付けられている。このため、表示札は差し込み部の先端を分割する切断部が形成されていても、差し込み部の動きは培養土によって止められており、表示札に外部から力が与えられても切欠部と育成ポットの取付け部との係止部分は動くことができず、係止が外れることはない。
【0010】
また、前記表示札の差し込み部には、前記育成ポットの取付け部に係止する両切欠部間の差し込み部の幅よりも、その先端の幅を連続的に狭くする挿入部を形成したから、前記切断部が育成ポットの壁面に沿って移動しなければならない時までに、既に前記差し込み部の先の挿入部は育成ポットの取付け部に挿入されており、その後、更に表示札をこの取付け部に押し込めば、挿入部の両端が取付け部の端に押し付けられながら前記差し込み部の端が切断部を重なる向きに移動するものである。このため、育成ポットの側壁の取付け部から突き出した差し込み部の先端の一部を、人が手を添えて切断部が重なる方向に移動させなくとも、表示札を取付け部に押し込む動作だけでこの取付け部と前記切欠部とが係止できるようになった。
【0011】
また、表示札を取付け部に押し込む動作によって、挿入部は前記取付け部の幅を広げる方向に力がかかるから、スリット状の切り込みで形成した取付け部の途中ではこのスリット状の隙間を広げないようにする力が働くようになり、表示札の差し込み部が切断部からV字形に折れ曲がるのを防止しており、育成ポットの側壁と培養土との間には隙間ができず、表示札の取り付けによる植物へのダメージを最小にすることができた。
【0012】
また、前記育成ポットに差し込まれる前記表示札の差し込み部の両側面に対向して形成した切欠部と、前記差し込み部の先端を分割する切断部は、それぞれ所定の幅を持ったスリット状に形成している。このため、表示札は外周を加工する簡単な打ち抜き金型を使って打ち抜き加工によって成形することができ、打ち抜きと切れ目や孔の抜き落としを行う金型と比べて安価に製作でき、また、打ち抜き加工費も安価であり、製品である表示札は低コストで製造できるようになった。更に、切り屑は表示札の外周に一体となって回収されるから、製品である表示札に切り屑が混じるようなことはなく、打ち抜いた表示札は特別な点検もせずにそのまま使用することができる。
【0013】
更に、この発明の園芸植物の表示札は育成ポットへの取り付けだけに特徴があるのではなく、この園芸植物の表示札の構成は表示札を着脱する方法としても優れている。
即ち、植物の苗と培養土が入れられた育成ポットに形成された表示札の取り付け個所に形成した取付け部を使って、その育成ポットに前記植物のための表示札を取り付け取り外す方法であって、前記表示札には、前記植物の情報を表示する表示部と、前記育成ポットに差し込まれる差し込み部と、この差し込み部の側面の対向する位置に形成されて前記育成ポットの取付け部に係止する切欠部と、少なくともこの切欠部よりも先端側の差し込み部の幅を連続して狭くする挿入部と、その挿入部の先端から前記切欠部よりも表示部に向けて差し込み部の先端を複数個に分割する切断部とが形成されており、前記表示札は前記育成ポットの容器内側から前記取付け部を経て容器外側に向けて差し込まれ、前記挿入部の分割された先端が重なる向きに移動して前記切欠部が取付け部に係止すると共に、前記育成ポットの取付け部から露出している挿入部を分割された先端が重なる方向に育成ポットの壁面に沿って移動しながら、前記表示札を育成ポットの上方に抜き取ることができる。
【0014】
先に説明したようにこの発明の表示札の差し込み部にはその端から表示部に向けて切断部を形成しており、表示札の分割された先端はこの切断部分が重なる方向に移動して育成ポットの取付け部に係止するものであり、一方、この表示札の差し込み部の端は、育成ポットの容器の内側から容器の外側に向けて差し込まれており、育成ポットの取付け部に表示部の差し込み部の端が係止した状態では差し込み部の端が育成ポットの外側に位置している。このため、従来のホッチキス留めの表示札ではホッチキスの針を取り外すときに怪我をしたり直物の根鉢を崩すトラブルがあり、また、従来の係止構造をもった植物の表示札にあっては、表示札の取り替え時に抜き取ろうとすると、育成ポット及び育成ポットの植物の根鉢を崩してしまうトラブルが発生していたが、この発明では、育成ポットの側壁から露出している差し込み部の端を図1の矢印A方向に押して、表示札の分割された先端の切断部分が重なる方向に移動すれば、育成ポットの中の植物の根鉢を崩すことなく表示札を取り外すことができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本願発明のとなる表示札1を育成ポット2に取り付けた状態を示す斜視図であり、図2はこの表示札1と育成ポット2の正面図である。この育成ポット2には培養土3と、この培養土3に植え付けられた植物4の苗とが入れられている。この育成ポット2はその植物4の育成に使われるものであり、多数の育成ポット2を並べて培養土3を入れ、植物4の種まきや幼い苗を植え付けて育てたものである。そして、この育成ポット2で植物4を育てている場所が、複数種の植物4の苗を一緒に育てているときには、この苗を区別するために簡単な植物名がわかるラベルをつけるときがある。そして、このように育成ポット2に植え付けられて育てられた植物4の苗を店頭で販売するために、育成時のラベルがあれば取り外してから、その植物の特徴がよくわかる美麗な表示札1を育成ポット2に差し込んで、店頭に並べられる。
【0016】
この表示札1はその上部に植物の名前や、花が咲いたときの状態や、その育て方などを記載した表示部1aがあり、この表示部1aから下方に伸びる差し込み部1bが形成されている。この表示札1は差し込み部1bを育成ポット2の培養土3に差し込んだ状態で育成場所から出荷されて販売されるが、この表示札1は育成ポット2から抜けて紛失することがあり、この問題を解決するためにこの育成ポットの側壁に直接表示札をホッチキス留めすることが行われており、このホッチキス留めの作業は両手を使うかなり面倒な作業であるから生産効率が悪い。また、別の方法として、育成ポット2の取り付け個所にあたる側壁部には、取付け部5を構成するほぼ水平の切り込み5が設けられ、一方、表示札1の差し込み部1bの側縁には相対向するように切欠部6が設けられ、この相対向する切欠部6の間の差し込み部1bの幅は取付け部5の幅と同じとなるように設定している。このため、表示札1が育成ポット2に取り付けられた状態では、育成ポット2の取付け部5に差し込み部1bの切欠部6が係止しており、育成ポット2を搬送する途中などで表示札1が抜け落ちることはない。
【0017】
このように育成ポット2の取付け部5(切り込み部5)に差し込み部1bの切欠部6を係止させるには、この差し込み部1bの端を折り曲げや湾曲させてその横幅を切り込み部5の幅よりも狭くしなければならないが、図に示す実施例の表示札1は差し込み部1bの端から、この差し込み部1bに設けた切欠部6よりも表示部1aに向けて先端を分割する切断部7が形成されている。このため、差し込み部1bの端は切断部7の切断された端面が接近し更に重なる方向に移動できるようになっており、この移動は差し込み部1bの端がほぼ同一平面状を移動するから、差し込み部1bの端を折り曲げや湾曲させたときのように、差し込み部1bの厚みを増加させる必要はなくなったものであり、表示札1を育成ポット2に差し込むときに、育成ポット2の側面に沿って差し込まれる差し込み部1bは、折り曲げや湾曲しなくてもよいから、植物4の根鉢を構成している培養土3を崩すようなことはない。
【0018】
また、図に示す実施例では、差し込み部1bの切欠部6よりも先端側には、表示札1の切欠部6と育成ポット2の切り込み5とを係止するときの取り付け作業を簡単にするために、切り込み5の横幅よりも差し込み部1bの端の幅を狭くする挿入部8が形成されており、この挿入部8は切欠部6近くの差し込み部1bの横幅がその先端に行くほど連続して狭くなる形状となっている。
【0019】
このため、表示札1の差し込み部1bが培養土3を崩さないように、育成ポット2の側面に沿って差し込まれるときに、差し込み部1bが変形しない状態で挿入部8は育成ポット2の切り込み5に差し込まれ、更に表示札1を押し込めば、挿入部8は育成ポット2の切り込み5の両端を押し広げる力を加えつつ、切断部7で分割された差し込み部1bの端は、切断部7の切断された端面が接近し更に重なる方向に移動してその横幅を狭める。やがて、切欠部6が育成ポット2の切り込み5に位置するまで差し込まれると、切断部7が重なる方向に移動していた差し込み部1bの端は最初の状態に復帰するから、切欠部6が切り込み5に係止することができる。この間の操作は表示札1を差し込む動作だけであり、差し込み部1bの端を人が手で狭める操作や、あらかじめ差し込み部1bを折り曲げや湾曲させておく必要がなく、取り付け作業は大幅な時間短縮が可能となった。また、この時の差し込み部1bの端の動きは育成ポット2の側面に沿った動きであるから、育成ポット2の植物の根鉢を崩す恐れはない。
【0020】
この種の表示札1は所定の面積からなる紙や合成樹脂を素材とする薄板に表示部1aが印刷された後、その外形を打ち抜き金型を使って打ち抜き加工によって切り取られて製造されており、実施例である図2に示す表示札1は、育成ポット2に係止するための切欠部6や、差し込み部1bの端を分断する切断部7の形状として、それぞれ所定の幅を持ったスリット状に形成している。このため、この実施例の表示札1は外周を加工する簡単な打ち抜き金型を使う打ち抜き加工によって成形することができ、打ち抜きと孔の抜き落とし加工ができる複雑な金型を使わなくとも良くなり、金型費及び打ち抜き加工費が節減できるようになった。また、打ち抜き加工によって多数の表示札1が作られた残りの切り屑は、孔の抜き加工したときのような細片の切り屑はなく一体となって回収されるから、非常に取り扱いやすいものである。
【0021】
このように、切断部7によって分断された差し込み部1bの端が育成ポット2の切り込み5に差し込まれるときに、切断部7の端面が接近して、やがて重なるように移動するが、この移動は切断部7の上端を中心として差し込み部1bが回動するように行われるから、差し込み部1bの外縁が引っ張られてひねられて、この切断部7よりも上方の表示部1aが前方もしくは後方に少し倒れるように動くことでよりスムーズに行われる。この前方もしくは後方に倒れるような動きによって育成ポット2の根張りした培養土3を崩さないためには、切断部7の上縁は培養土3の外まで届いていることが好ましい。
【0022】
また、この表示部1aが前方もしくは後方に少し倒れるように動く動作をより少なくして、育成ポット2の植物4や培養土3に与える影響を少なくするためには、図3に示す実施例のように切断部7を二つにして、切断部7の上端と差し込み部1bの側端との距離を近くすることは効果がある。この時の切断部7の形状は図3(a)のように切れ目で構成されずに、図3(b)のようなスリット状に形成してあってもその働きに大きな違いはない。
【0023】
即ち、この実施例のように切断部7を2箇所形成したときには、育成ポット2に差し込まれた挿入部8のうちで、二つの切断部7の中央の差し込み部1bは移動することなくそのまま差し込まれ、分断された両端の幅の狭い差し込み部1bだけが移動するから、切断部7の上端から差し込み部1bの側端の間に加えられるひねりは弱く、表示部1aが前方もしくは後方に倒れるように動く動作も少なくなる。また、このようにひねりが加えられる部分の寸法が狭いから、強度がある合成樹脂製の表示札1であっても、少ない力で確実に表示札1の挿入部8を切り込み5に押し込むことができるようになった。
【0024】
また、他の実施例である図4に示すように、育成ポット2の切り込み5として、平行に同じ寸法で2箇所設けるときには、表示札1は育成ポット2の内側から差し込んで、その先端を育成ポット2の外側に出すのではなく、上側の切り込み5から育成ポット2の内側に差し込み、更にその先は下側の切り込み5から育成ポット2の外側に出るように差し込むことができる。この取り付け方法を実現するためには、平行な2箇所の切り込み5に係止する大きさの切欠部6が必要であり、また、挿入部8は切り込み5の横幅よりも狭い部分の長さが2箇所の切り込み5を配置する間隔よりも長いことが必要である。この構造であれば表示札1を育成ポット2に取り付けるときに、挿入部8が2箇所の切り込み5に挿入されて先端が片側の切り込み5から飛び出し、その後の挿入作業によって切断部7によって分断された差し込み部1bの端が重なるように移動するが、この動きによって植物4の培養土3の状態を崩す恐れはほとんどなく、植物4に与える影響を少なくすることができる。
【0025】
また、図5に示す実施例は切断部7の形状を直線の切れ目でなく、波形に形成しているが、このような波形の時には、外部から表示札1に加えられた力が分断された差し込み部1bの端を重ねるような力となっても、波形の端の一部は差し込み部1bの表面と裏面とに向かうものが出てくるので、人の手で重なりを誘導しないときには分断された差し込み部1bの端がうまく重ならず、外部条件に対して表示札1は非常に抜けにくくなる。
【0026】
上記の説明のように、この表示札1の構造によれば、表示札1は育成ポット2に簡単に取り付けでき、また、育成ポット2に完全に固定されて抜けなくなってしまうが、この固定された表示札1に簡単な操作を行うことで取り外しができる特徴がある。
即ち、表示札1が育成ポット2に取り付けられた状態では、図1や図4に示すように表示札1の差し込み部1bの端は育成ポット2の外側に露出しているから、この露出している挿入部8の先を取扱者は手で図1の矢印Aの方向に動かして、この分割された差し込み部1bの切断部7の端面を接近させ、さらに重なるように移動することによって、切欠部6よりも挿入部8側の差し込み部1bの横幅を、育成ポット2の切り込み5の横幅よりも狭くすることができ、表示札1はそのまま育成ポット2の上方に抜き取ることができる。このときも表示札1は育成ポット2の側壁に沿って抜き取られるから、育成ポット2の植物の苗に与える影響はほとんどない。
【0027】
育成ポット2で苗や種から育成された植物4は、時期がくれば大量に出荷されるから、この大量の出荷にともなう表示札1の差込作業が手作業で行われる現況において、人為的なミスで、表示札1の付け間違いが起こることはやむを得ないことである。このため、間違えて取り付けられた表示札1の取替えの必要性が時々発生しており、また、従来では育成ポット2に表示札1が差し込まれて、出荷待ちや出荷されてしまった表示札1の内容を、より購入者にアピールできる内容の新しい表示札1に変更したい要求もある。しかし、このような表示札1の取替えは、植物4の苗に与える影響を心配して細心の注意をはらって行わなければならなかったが、この表示札1であれば育成ポット2に植えられた植物4の苗に影響を与えずに、極めて簡単に表示札1の取替えができるようになり、生産者にも販売者にも取り扱いやすい園芸植物の表示札を提供できるようになった。
【0028】
また、この表示札1を取り付けた育成ポット2を購入した消費者においては、購入後、この表示札1を取り外すことが行われ、この取り外しの際に断面V字形に折り曲げて取り付ける従来の表示札では、無理に引っ張って、表示札1や育成ポット2を壊したり、植物4の培養土3を崩してしまうことがあった。また、ホッチキス留めの表示札にあっては、ホッチキスの針を外すときに怪我をする心配があったが、この表示札1であれば少し手を沿えるだけで簡単に取り外すことができ、非常に取り扱い易くなったものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の表示札を育成ポットに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す実施例の表示札と育成ポットの正面図である。
【図3】他の実施例の表示札の正面図である。
【図4】他の実施例の表示札と育成ポットの取り付けた状態を示す正面図である。
【図5】他の実施例の表示札の正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 表示札
1a 表示部
1b 差し込み部
2 育成ポット
3 培養土
4 植物
5 取付け部(切り込み)
6 切欠部
7 切断部
8 挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の苗と培養土が入れられた育成ポットに差し込まれる前記植物のための表示札であって、
その表示札は前記植物の情報を表示する表示部と、前記育成ポットに差し込まれる差し込み部とで構成され、その差し込み部の側縁には相対向する位置に切欠部が形成されており、
前記育成ポットには前記表示札の差し込み部が差し込まれる取付け部が設けられ、前記差し込み部の前記切欠部がこの取付け部に係止するとともに、
前記取付け部に差し込まれる前記表示札の差し込み部の端から、前記切欠部よりも表示部に向けて先端を複数個に分割する切断部が形成され、
前記表示札の分割された先端は、前記育成ポットに差し込んだときに先端の切断部が重なる向きに移動して前記取付け部に係止することことを特徴とする園芸植物の表示札。
【請求項2】
前記表示札の差し込み部には、前記育成ポットの取付け部に係止する両切欠部間の差し込み部の幅よりも、その先端の幅を連続的に狭くする挿入部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の園芸植物の表示札。
【請求項3】
前記育成ポットに差し込まれる前記表示札の差し込み部の両側面に対向して形成した切欠部と、前記差し込み部の先端を分割する切断部は、それぞれ所定の幅を持ったスリット状に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の園芸植物の表示札。
【請求項4】
植物の苗と培養土が入れられた育成ポットに形成された表示札の取り付け個所に形成した取付け部を使って、その育成ポットに前記植物のための表示札を取り付け取り外す方法であって、
前記表示札には、前記植物の情報を表示する表示部と、前記育成ポットに差し込まれる差し込み部と、この差し込み部の側面の対向する位置に形成されて前記育成ポットの取付け部に係止する切欠部と、少なくともこの切欠部よりも先端側の差し込み部の幅を連続して狭くする挿入部と、その挿入部の先端から前記切欠部よりも表示部に向けて差し込み部の先端を複数個に分割する切断部とが形成されており、
前記表示札は前記育成ポットの容器内側から前記取付け部を経て容器外側に向けて差し込まれ、前記挿入部の分割された先端が重なる向きに移動して前記切欠部が取付け部に係止すると共に、
前記育成ポットの取付け部から露出している挿入部を分割された先端が重なる方向に育成ポットの壁面に沿って移動しながら、前記表示札を育成ポットの上方に抜き取ることを特徴とする園芸植物の表示札の着脱方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の苗と培養土が入れられた育成ポットに差し込まれる前記植物のための表示札であって、
その表示札は前記植物の情報を表示する表示部と、前記育成ポットに差し込まれる差し込み部とで構成され、その差し込み部の側縁には相対向する位置に切欠部が形成されており、
前記育成ポットには前記表示札の差し込み部が差し込まれる取付け部が設けられ、前記差し込み部の前記切欠部がこの取付け部の端に係止するものとし
前記取付け部に差し込まれる前記表示札の差し込み部の端から、前記切欠部よりも表示部に向けて先端を複数個に分割する切断部が形成され、
前記表示札の分割された差し込み部の先端は、前記育成ポットの取付け部に差し込んだときに先端の切断された端面が接近し更に重なる方向に移動して前記切欠部が前記取付け部に係止し、
前記差し込み部が前記培養土によって育成ポットの内側面に押し付けられて係止外れが止められていることを特徴とする園芸植物の表示札。
【請求項2】
前記表示札の差し込み部には、前記育成ポットの取付け部に係止する両切欠部間の差し込み部の幅よりも、その先端の幅を連続的に狭くする挿入部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の園芸植物の表示札。
【請求項3】
前記育成ポットに差し込まれる前記表示札の差し込み部の両側面に対向して形成した切欠部と、前記差し込み部の先端を分割する切断部は、それぞれ所定の幅を持ったスリット状に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の園芸植物の表示札。
【請求項4】
前記表示札の差し込み部の端を分割する切断部は、波形の切断線によって構成されており、
この波形の切断線によって、切断部の端面が接近しても端が重ならず、前記表示札の抜け方向の動きが止められていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の園芸植物の表示札。
【請求項5】
植物の苗と培養土が入れられた育成ポットに形成された表示札の取り付け個所に形成した取付け部を使って、その育成ポットに前記植物のための表示札を取り付け取り外す方法であって、
前記表示札には、前記植物の情報を表示する表示部と、前記育成ポットに差し込まれる差し込み部とを備え、この差し込み部はその側面の対向する位置に形成されて前記育成ポットの取付け部に係止する切欠部と、少なくともこの切欠部よりも先端側の差し込み部の幅を連続して狭くする挿入部と、その挿入部の先端から前記切欠部よりも表示部に向けて差し込み部の先端を複数個に分割する切断部とが形成されており、
前記表示札は前記育成ポットの容器内側から前記取付け部を経て容器外側に向けて差し込む時に、前記挿入部の分割された先端は切断された端面接近し更に重なる方向に移動しながら、前記切欠部が取付け部に係止すると共に、
前記育成ポット内の差し込み部が前記培養土によって育成ポットの内側面に押し付けられて係止外れが止められ、前記表示札の抜き取り時に、前記育成ポットの取付け部から露出している挿入部分割された先端を、育成ポットの壁面に沿って切断部の切断された端面が接近し更に重なる方向に移動する操作によって、前記表示札を育成ポットの上方に抜き取ることを特徴とする園芸植物の表示札の着脱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−246834(P2006−246834A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70650(P2005−70650)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【特許番号】特許第3754062号(P3754062)
【特許公報発行日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(501350512)有限会社サンパック (1)
【Fターム(参考)】