説明

土嚢用袋体、土嚢及び土嚢構造体の施工方法

【課題】 土砂等を容易に詰め込むことができ、且つ、積み上げた時も崩れにくい土嚢用袋体及び土嚢を提供する。
【解決手段】 相対する一方端部側に凸部を形成するとともに他方端部側に凹部を形成した底面部と、底面部の外周縁の全域に亘って連設されて土嚢充填空間部を構成する外周壁部とから構成され、土嚢充填空間部に土嚢充填物3を充填して土嚢1を形成する土嚢用袋体2であって、外周壁部の凸部と凹部との連設部位は、土嚢が受ける外圧力及び土嚢充填物からの内圧力に対して、垂直な抗力を隣り合って組み合わされた土嚢の組み合わせ面に生じさせる傾斜面を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土嚢用袋体、土嚢及び土嚢構造体の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土嚢は、土嚢用袋体の内部に土等の土嚢充填物を充填することによって形成され、緊急を要する堤防の決壊を防止したり道路脇の土留め等の用途に、多数個が並べて設置される。土嚢は、従来、一辺部を開放し他の3片を縫合した麻布等からなる土嚢用袋体の内部に、開放部分から土等の充填物を詰め込むことによって全体が略俵型に形成されたものが用いられていた。かかる従来の土嚢は、多数個を互いに並べかつ積み上げて土嚢構造体を構成する。土嚢構造体は、多数個の土嚢を堤防等の補強する斜面に対して緩い勾配となるように積み上げることによって安定性が保持されるようにする。土嚢構造体は、土嚢充填物からの内圧力によって隣接する土嚢との間に生じる静止摩擦力によって積み上げ状態が保持されるが、より大きな外部圧力が加わることによって崩壊してしまうといった問題があった。
【0003】
特許文献1には、上述した俵型土嚢の問題点を解決するために、外周部に凹部が形成された土嚢に対して凹部と組み合わされる凸部が外周部に形成された土嚢とにより、組み合わせ強度の向上が図られるようにした土嚢構造が開示されている
【特許文献1】特開昭49−111437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した先願の凹凸形状の土嚢では、凹型と凸型との2種類を用意しなければならず、しかも外周部に凹部と凸部とが形成されるようにするために土嚢用袋体の構造が複雑となってコスト高となってしまう。また、凹凸形状の土嚢においては、土嚢用袋体に形成した外周部に凹部や凸部を形成する部位にも土嚢充填物が確実に充填されるように土嚢充填物を詰め込まなければならないために土嚢充填物の充填作業が面倒で効率が悪く、また凹型と凸型とを順序よく組み合わせなければならないといった問題がある。したがって、凹凸形状の土嚢は、緊急を要する災害発生を防止する現場で到底使用することができないといった問題がある。
【0005】
凹凸形状の土嚢は、多数個を積み上げて土嚢構造体を形成した場合に、外圧力に対してそれぞれの凸部内に充填された充填物が変形に抵抗する力、つまりせん断抵抗力が生じることにより、隣接する土嚢との組み合わせ状態を保持して崩れにくい構造としたものにすぎない。したがって、凹凸形状の土嚢は、より大きな外圧力が加えられると、土嚢構造体を崩壊させるといった問題があった。さらに、この凹凸形状の土嚢は、土嚢用袋体内に土嚢充填物を充填したとしても、土嚢を積み上げた時に、隣接する土嚢からの外圧力により凹凸形状が変形して組み合わせによる強度の向上作用が奏し得ない事態も生じる。
【0006】
本発明は、上述した従来の土嚢の問題点を解決し、俵型土嚢と同等のコストと取り扱いが可能であり、多数個を並べて積み上げた土嚢構造体も大きな結合力によって組み合わせ状態が保持される土嚢用袋体、土嚢及び土嚢構造体の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成する本発明に係る土嚢用袋体は、相対する一方端部側に凸部を形成するとともに他方端部側に凹部を形成した底面部と、上記底面部の外周縁の全域に亘って連設されて上記底面部に対して立ち上げることによって上記底面部と対向する天井部位を開口部として内部に土嚢充填空間部を構成する外周壁部とから構成され、上記土嚢充填空間部に土嚢充填物を充填して土嚢を形成する土嚢用袋体であって、土嚢充填空間部に土嚢充填物を充填して形成された多数個の上記土嚢が互いに並べて設置された状態において、上記底面部の上記凸部と上記凹部から連設された上記外周壁部の連設部位が、上記土嚢が受ける外圧力及び上記土嚢充填物からの内圧力に対して垂直な抗力を隣り合って組み合わされた土嚢の組み合わせ面に生じさせる傾斜面を構成することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る土嚢は、相対する一方端部側に凸部を形成するとともに他方端部側に凹部を形成した底面部と、上記底面部の外周縁の全域に亘って連設されて上記底面部に対して立ち上げることによって上記底面部と対向する天井部位を開口部として内部に土嚢充填空間部を構成する外周壁部とからなる土嚢用袋体と、上記土嚢用袋体の上記開口部から上記土嚢充填空間部内に充填される土嚢充填物とから構成され、互いに並べて設置した状態において、上記底面部の上記凸部と上記凹部から連設された上記外周壁部の連設部位が、外圧力及び上記土嚢充填物からの内圧力に対して、隣り合って組み合わされた土嚢の組み合わせ面に垂直な抗力を生じさせる傾斜面を構成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る土嚢構造体の施工方法は、多数個の土嚢を並べて設置した土嚢構造体を形成する土嚢構造体の施工方法において、相対する一方端部側に凸部を形成するとともに他方端部側に凹部を形成した底面部と、上記底面部の外周縁の全域に亘って連設されて上記底面部に対して立ち上げることによって上記底面部と対向する天井部位を開口部として内部に土嚢充填空間部を構成する外周壁部とからなる土嚢用袋体と、上記土嚢用袋体の上記外周壁部と略同一形状で、上記底面部に対して立ち上げられた上記外周壁部を内周壁に沿って略一体化させる剛体枠とが用いられ、上記土嚢用袋体の上記外周壁部を上記底面部に対して立ち上げ、上記外周壁部に沿わせるようにして上記剛体枠の枠内に装填する土嚢袋体装填工程と、上記土嚢用袋体の上記土嚢充填空間部に上記土嚢充填物を充填して、上記剛体枠と略一体化された枠付土嚢を形成する枠付土嚢形成工程と、上記枠付土嚢を設置する工程と、既設の上記枠付土嚢に並べて第2の枠付土嚢を設置する工程と、上記既設の枠付土嚢から上記剛体枠を取り外す工程と、上記第2の枠付土嚢に並べて第3の枠付土嚢を設置する工程とを有し、上記枠付土嚢の設置工程と上記既設の枠付土嚢から上記剛体枠を取り外す工程を繰り返すことにより、上記底面部の上記凸部と上記凹部から連設された上記外周壁部の連設部位において、外圧力及び上記土嚢充填物からの内圧力に対して、隣り合って組み合わされた土嚢の組み合わせ面に垂直な抗力が生じる各土嚢を設置して土嚢構造体を施工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全体が比較的簡易な形状でコストの抑制が図られ、土嚢充填空間部に対して土嚢充填物を俵型土嚢と同様にして行うことが可能であることから緊急対応が必要な現場でも有効に活用することが可能である。本発明によれば、多数個の土壌を組み合わせた状態で外周壁部に外圧力及び上記土嚢充填物からの内圧力に対して垂直な抗力を隣り合って組み合わされた土嚢の組み合わせ面に生じさせる傾斜面が構成されることで、各土嚢がより強固な組み合わせ状態に保持されるようになり、強固な土嚢構造体を構成することが可能となる。
【0011】
また、本発明によれば、剛体枠を用いて枠付土嚢を形成し、この枠付土嚢を既設の枠付土嚢に並べて設置した後に既設の枠付土嚢から剛体枠を取り外すことにより、所定形状を保持された土嚢が互いに密着した状態で設置された土嚢構造体の施工が可能となる。したがって本発明によれば、各土嚢をより強固に組み合わせて、強固な土嚢構造体を効率よく施工することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態として示した土嚢用袋体2及び土嚢構造体4、6について図面を参照して詳細に説明する。土嚢用袋体2は、図1に示すように、土3が充填されて土嚢1を形成する。土嚢用袋体2は、例えば麻又は合成樹脂繊維を編んだ布体から形成されて内部が中空になっている。なお、土嚢用袋体2は、引っ張り力に対して強度が強く、摩擦係数が大きい表面の布体から形成されていれば、いかなるものを用いるようにしてもよい。
【0013】
土嚢用袋体2は、図2に示すように、底面部11と、外周壁部12と、被覆部13とからなる。さらに、土嚢用袋体2は、底面部11に対して外周壁部12を立ち上げることによって内部に土3を充填する中空部14を構成する。
【0014】
底面部11は、長方形状において、その長手方向の一端部に、長方形の外側に設けた頂点を介して結ばれる二等辺三角形状からなる凸部11aと、凸部11aに相対して長方形状の内側に設けられた頂点を介して結ばれる二等辺三角形状からなる凹部11bとからなる形状である、すなわち略矢羽根形状である。
【0015】
外周壁部12は、底面部11の外周線に沿って全域に亘って縫合された土嚢用袋体2の一部であり、中空部14に土3が充填されることで底面部11に対して立ち上げた状態になる。また、外周壁部12は、凸壁面21、22と、凹壁面23、24と、平行に対峙する側壁面25、25との各面から構成される多角面形状である。凸壁面21と凸壁面22とは、それぞれ図2に示すように、外周壁部12の一部であり、底面部11の凸部11aの外周から立設した傾斜面である。さらに、凸壁面部31は、図1に示すように、底面部11における凸部11aを外周壁部12に沿って立ち上げられた二等辺三角柱形状である。同様に、凸壁面23と凸壁面24とは、それぞれ図2に示すように、外周壁部12の一部であり、底面部11の凹部11bの外周から立設した傾斜面である。さらに、凹壁面部32は、図1に示すように、底面部11における凸部11bを外周壁部12に沿って立ち上げられた二等辺三角柱形状である。
【0016】
また、凸壁面部31は、図1に示すように、凸壁面21、22の2つの面から構成される部位である。同様に、凹壁面部32は、図1に示すように、凹壁面23、24の2つの面から構成される部位である。また、凸壁面部31と凹壁面部32は、互いに略同一形状の二等辺三角形柱形状である。したがって、土嚢用袋体2の凸壁面部31は、他の土嚢用袋体2の凹壁面部32と隙間なく係合することができる。
【0017】
側壁面25には、その相対する2面の上端部に土嚢用袋体2内に土3が充填されて形成された土嚢1を持ち運びやすくする取手16が設けられている。
【0018】
被覆部13は、外周壁部12上部の外周線に沿って全域に亘って縫合された土嚢用袋体2の一部であり、外周壁部12と共に土3を充填するため底面部11に対して立ち上げた際に、その上部に開口部15を形成する。また、被覆部13は、その外周に沿って縄13aが設けられている。被覆部13は、開口部15から中空部14へ土が外周壁部12の上端まで充填されると、この縄13aを絞って結ぶことにより、袋体2の開口部15を閉じる。
【0019】
以上のように、土嚢用袋体2は、中空部14に土3が充填されることで、その一端部の凸壁面部31と他端部の凹壁面部32とが略同一形状の二等辺三角柱形状からなる矢羽根形状の土嚢1を形成する。
【0020】
このように、土嚢用袋体2の開口部15は、外周壁部12と被覆部13とを底面部11に対して立ち上げることによって形成されるので、従来の俵形状の土嚢と同様に、容易に土3を充填することができる。
【0021】
なお、外周壁部12は、凸壁面部31と、凹壁面部32からなる三角柱形状を保持するために、凸壁面21と凸壁面22との接合部の上端と凹壁面23と凹壁面24との接合部の上端とを直線で結ぶ縄と、凸壁面21と側壁面25との接合部の上端と凸壁面22と側壁面部25との接合部の上端とを直線で結ぶ縄を取り付けるようにしてもよい。また、土嚢用袋体2は被覆部13を設けずに、中空部14に土3を充填して形成された土嚢1上面が開口した状態で使用するようにしてもよい。また、土嚢用袋体2は、持ち運びやすさを要求しなければ、取手16がない状態で使用するようにしてもよい。
【0022】
また、凸壁面部31と凹壁面部32を形成する傾斜面は、複数の土嚢1が積み上げられた土嚢構造体において、土嚢1が受ける外圧力及び土嚢用袋体2内に充填された土3からの内圧力に対して、垂直な抗力を隣り合って組み合わされた土嚢との組み合わせ面に生じさせる。さらに土嚢1の凸壁面部31と凹壁面部32は二等辺三角柱形状であるので、複数の土嚢1を組み合わせて土嚢構造体を作成した際に、隣接する土嚢1との面に均等な力を作用する。このような力の作用によって得られる効果は、複数の土嚢1を組み合わせた土嚢構造体4、6の実施例により以下で示すことにする。
【0023】
なお、土嚢は、土嚢が受けた外圧力及び内圧力に対して、垂直な抗力を隣接する土嚢との組み合わせ面に生じさせる傾斜面を形成して隙間なく係合できる凸壁面部と凹壁面部から構成されていれば、その凸壁面部と凹壁面部の形状が二等辺三角柱に限定されるものではない。
【0024】
ところで、土嚢は、複数の土嚢を堤防や道路脇などの斜面に沿って積み上げることにより、緊急を要する堤防の決壊防止や、道路脇の土留めなどの役割を果たす。そこで、複数の土嚢1からなる構造物が堤防の斜面に対して積み上げて土留めを構成する実施例を用いて、この構造物が有する特有の効果を以下に示すことにする。
【0025】
まず、第1の実施形態の土嚢構造体4について説明する。第1の実施時形態の土嚢構造体4は、図3に示すように、各土嚢1の凸壁面部31が、隣接する土嚢1の凹壁面部32と隙間なく係合されてなる。また、土嚢構造体4は、側壁面25と堤防5の斜面とが密接するように配置されるものとする。
【0026】
次に、土嚢構造体4の各土嚢1に作用する力に着目して、土嚢構造体4が有する効果について説明する。隣接して設置された2つの土嚢1を便宜上、図4に示すように、凸壁面部31が係合されているものを土嚢1aとし、凹壁面部32が係合されているものを土嚢1bとする。
【0027】
土嚢1a、1bは、図4に示すように、土嚢1a、1bの側壁面25に対して、堤防5の斜面から土圧力Pを受ける。ここで、土嚢1aにおいて、この土圧力Pと土嚢用袋体2内に充填された土3からの内圧力は、凸壁面22に対する接線方向の力P1と、法線方向の力P2とに分かれる。法線方向の力P2は、土嚢1aの凸壁面22と土嚢1bの凹壁面24とが互いに押し付け合う面に対して垂直な抗力として作用し、この垂直抗力によって土嚢1aの凸壁面22と土嚢1bの凹壁面24との係合面に、土嚢1の重量による摩擦力に加えてより大きな摩擦力F1が発生する。同様に、土嚢1bに加わる土圧力Pと土嚢用袋体2内に充填された土3からの内圧力も、凹壁面23に対する法線方向の力により、土嚢1aの凸壁面21と土嚢1bの凸壁面23との間に摩擦力が生じるが、係合する部分が二等辺三角形状なので、摩擦力F1と同様な力となる。よって、この摩擦力F1は、隣接する土嚢1同士が互いに均等な結合する力として作用する。したがって、土嚢構造体4は、従来の俵形状の土嚢からなる土嚢構造体よりも崩落しにくい。
【0028】
土嚢構造体6は、図5に示すように、各土嚢1に形成されている凹壁面部32が、堤防5の補強面と密接して配置されるものとする。密接して配置された2つの土嚢1において、便宜上、斜面下方向から上方向へ見て、右側の側壁面25が密接しているものを土嚢1c、左側の側壁面25が密接しているものを土嚢1dとする。土嚢1c、1dは、それぞれの土嚢の凹壁面部32に堤防5の斜面下方向への土圧力Pを受ける。
【0029】
隣接する土嚢1c、1dに加わる力に着目して土嚢構造体5が有する効果について説明する。土嚢1cが受ける土圧力Pと土嚢用袋体2内に充填された土3からの内圧力は、図6に示すように、凹壁面23に対して接線方向の力P3と法線方向の力P4とに分かれる。さらに、凹壁面23に対して法線方向の力P4は、土嚢1dに接した側壁面25に対する法線方向の力P4Vと、接線方向の力P4Hとに分かれる。ここで、法線方向の力P4Vは、土嚢1cの側壁面25と土嚢1dの側壁面25とを押し付け合う力として作用し、この押し付け合う力によって土嚢1cと土嚢1dとの側壁面25の間に土嚢1の重量による摩擦力に加えてより大きな摩擦力F2が発生する。同様に、土嚢1dは土圧力Pによって側壁面25に摩擦力が発生する。この摩擦力は、土圧力Pを受ける凹壁面部32が二等辺三角柱形状であり、土圧力Pに対して法線方向に分解される力がほぼ力P4Vとなるため、摩擦力F2と同等のものとなる。このように土圧力Pと土嚢用袋体2内に充填された土3からの内圧力はその一部が分解されて、隣接する土嚢1の接合面に対して互いに摩擦力F2が略均等に作用する、したがって、この摩擦力F2は、隣接する土嚢1同士を互いに均等な力で結合する力として作用する。
【0030】
よって、矢羽根形状の土嚢1からなる土嚢構造体4、6は、隣接する土嚢1において土圧力Pの一部が結合力として作用されるので、従来の俵形状の土嚢からなる土嚢構造体に比べて、隣接する土嚢1の接合面に大きな結合力が生じるため崩れにくい。さらに、矢羽根形状の土嚢1からなる土嚢構造体4、6は、特許文献1に記載されている凹凸形状の土嚢を組み合わせた構造物に比べて、容易に土嚢用袋体2内に土3を充填することができる。また、矢羽根形状の土嚢1を組み合わせた構造物は、特許文献1に記載されている凹凸形状の土嚢からなる構造物と比べて、凹凸形状が潰れにくく隣接した土嚢との接合面に作用する結合力も大きいので崩れにくい構造を有している。
【0031】
ところで、このような土嚢構造体4、及び土嚢構造体6は、崩れにくい構造を実現するために、隣接する土嚢1が互いに密着して設置されることが好ましい。土嚢用袋体2に土3を単に充填して複数の土嚢1を形成した土嚢1は、土3の流動性とともに土嚢用袋体2内部の圧力により、均一な矢羽根形状を形成することが、特に大型の土嚢の場合に難しい。よって、このような均一な矢羽根形状を形成しない土嚢1では、隣接する土嚢1が密着して設置される土嚢構造体を形成することが、特に大型の土嚢の場合に難しい。
【0032】
そこで、土嚢1は、土3を土嚢用袋体2に充填する際に、図7に示すような、剛性枠7を用いて形成される。剛性枠7は、図7に示すように、土嚢1の外周壁部12と略同一の矢羽根形状の壁面を構成し、土嚢1の底面部12及び被覆部13に該当する部分が中空となっている金属製の枠体である。すなわち、剛体枠7は、矩形の枠体を基本形状とし、長手方向の一方側面部を二等辺三角形の凸枠壁面部41と、この凸枠壁面部41と相対する他方側面部を二等辺三角形の凹枠壁面部42とした、これらの凸枠壁面部41と凹枠壁面部42とを互いに平行に対峙する側面部43、43で連設して形成される。また、剛性枠7の側面部は、土嚢用袋体2に土3を充填した土嚢1の外周壁部12の寸法よりも若干小さい大きさとなっている。土嚢1は、土嚢用袋体2が外周壁部12に沿って剛性枠7に装填され、土嚢用袋体2内に土3が充填されることにより、均一な矢羽根形状が容易に形成される。また、剛性枠7は、その内側に形成された土嚢1をクレーンで吊り上げられて移送するための縄を設けることができる。
【0033】
なお、剛性枠7は、金属製に限らず、土嚢用袋体2に土3を充填した際に、土嚢用袋体2と略一体化して土嚢1を形成できる強度を維持できる枠体であれば、いかなる材質からなるものを用いるようにしてもよい。
【0034】
次に、剛性枠7を用いて形成された土嚢1からなる土嚢構造体の施工方法について、図8を用いて説明する。まず、土嚢1が設置場所以外の作業場所で形成され、所定の設置場所に移送されて、所望とする箇所に土嚢構造体が設置される施工工程について図8(A)を用いて説明する。
【0035】
工程A1において、土嚢1は、設置場所以外の作業場所で、剛性枠7に土嚢用袋体2の外周壁部12が装填され、土嚢用袋体2に土3が充填されることで、剛性枠7に装填した状態で形成される。ここで、剛性枠7に装填した状態で形成される土嚢1を以下、枠付土嚢と呼ぶことにする。このように、剛性枠7を合計2つ用いて、2つ枠付土嚢が形成される。
【0036】
工程A2において、枠付土嚢は、縄で固定されて縄がクレーンに吊り上げられて所定の場所に移送され設置される。その後、もう一つの枠付土嚢も、同様にクレーンによって、土嚢構造体4又は土嚢構造体6を形成するように、既設の枠付土嚢と互いに隣接して設置される。
【0037】
工程A3において、2つの枠付土嚢のうち、先に設置された剛性枠7が、クレーンによって吊り上げられて、枠付土嚢から剛性枠7が外される。ここで、剛性枠7が外された土嚢1は、剛性枠7の枠の大きさが土嚢1の外周壁部12よりも小さいので、土嚢用袋体2内の内圧により外周壁部12が膨張し、外周壁部12が隣接する剛性枠7と密着した状態となる。
【0038】
工程A4において、新たに土嚢を組み合わせて土嚢構造体の形成を行うか否かを判断する。ここで、土嚢構造体の形成を終了するには、工程A5に進み、終了しない場合には、工程A6に進む。
【0039】
工程A5において、剛性枠7は、クレーンによって吊り上げられて、枠付土嚢から剛性枠7が外され、全ての互いに隣接する土嚢1と密着した状態となり、土嚢構造体の形成作業が完了する。
【0040】
工程A6において、新たな枠付土嚢は、新たな土嚢用袋体2が工程A3で土嚢1から外された剛性枠7に装填され、土嚢用袋体2に土3が充填されることで形成される。
【0041】
工程A7において、作業場所で形成された枠付土嚢は、縄で固定されて、縄がクレーンなどの輸送機器に吊り上げられて既設の枠付土嚢と、土嚢構造体4又は土嚢構造体6を形成するように隣接して設置される。
【0042】
工程A7が終了すると、工程A3に戻り、繰り返し工程A6と工程A7とが繰り返されることによって、土嚢構造体が形成される。
【0043】
このように、剛性枠7は、土嚢1を所定の形状に保持するとともに、所定個数の土嚢を設置することによって、土嚢構造体4、及び土嚢構造体6を構成する際に隣接する土嚢1と密着して設置することを可能とする。
【0044】
次に、剛性枠7を用いた他の施工方法として、図8Bに土嚢1を所定の設置場所で形成する施工工程について説明する。
【0045】
工程B1において、2つの剛性枠7は、土嚢構造体4又は土嚢構造体6を形成する場所に互いに隣接して設置される。
【0046】
工程B2において、2つの枠付土嚢1が、工程B1によって設置された2つの剛性枠7に土嚢用袋体2の外周壁部12が装入されるとともに土3が土嚢用袋体2に充填されて形成される。
【0047】
工程B3において、2つの枠付土嚢が形成されると、2つの剛性枠7うち1つの剛性枠7が、クレーンなど輸送機器によって吊り上げられて、土嚢1から外される。ここで、剛性枠7が外された土嚢1は、その外周壁部12が隣接する枠付土嚢と密着した状態となる。
【0048】
工程B4において、新たに土嚢を組み合わせて土嚢構造体の形成を行うか否かを判断する。ここで、土嚢構造体の形成を終了するには、工程B5に進み、終了しない場合には、工程B6に進む。
【0049】
工程B5において、剛性枠7は、クレーンによって吊り上げられて、土嚢1から剛性枠7が外され、全ての互いに隣接する土嚢1と密着した状態となり作業が完了する。
【0050】
工程B6において、クレーンなどの輸送機器によって外された剛性枠7は、もう一つの枠付土嚢と隣接して、土嚢構造体4又は土嚢構造体6を形成するように配置される。
【0051】
工程B7において、枠付土嚢は、土嚢用袋体2が工程B6によって設置された剛性枠7に装填するとともに、土3が土嚢用袋体2に充填されて形成される。
【0052】
工程B8において、先に形成された枠付土嚢を装填した剛性枠7は、クレーンなどの輸送機器によって吊り上げられる。
【0053】
土嚢構造体は、工程B8が終了すると、工程B4に戻り、繰り返し工程B6から工程B8とが繰り返されることによって形成される。
【0054】
このように、剛性枠7は、所定形状を保持された土嚢が互いに密着した状態で設置された土嚢構造体の施工を可能とする。また、剛性枠7は、各土嚢をより強固に組み合わせて、強固な土嚢構造体を効率よく施工することを可能とする。
【0055】
なお、上述した施工方法は、剛性枠7を2つ用いて土嚢構造体を形成したものであるが、これは土嚢1が所定の形状を維持して隣接する他の土嚢1と密着して設置することが可能となる剛性枠7が最低限必要な個数であり、3つ以上の剛性枠7を用いて施工を行うようにしてもよい。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る矢羽根形状の土嚢1は、土嚢用袋体2に容易に土3を充填することができ、且つ、複数の土嚢1を組み合わせた構造物も崩れにくいといった作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】土嚢を示した斜視図である。
【図2】土嚢袋体を示した斜視図である。
【図3】第一の実施形態による堤防に複数の土嚢を積層した構造物を示した斜視図である。
【図4】第一の実施形態の土嚢構造体において、図3に示すX−Xの水平方向の断面図における2つの隣接した土嚢に加わる力関係を模式的に示した図である。
【図5】第二の実施形態による堤防に複数の土嚢を積層した構造物を示した斜視図である。
【図6】第二の実施形態の土嚢構造体において、図5に示すY−Yの水平方向の断面図における2つの隣接した土嚢に加わる力関係を模式的に示した図である。
【図7】土嚢用袋体に装入される剛性枠を示した図である。
【図8】剛性枠7を用いて形成された土嚢1からなる土嚢構造体の施工方法を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 土嚢、2 袋体、3 土、4、6 土嚢構造体、5 堤防、7 剛性枠、11 底面部、12 外周壁部、13 被覆部、14 中空部、15 開口部、16 取手、21、22 凸壁面、23、24 凹壁面、25 側壁面、31 凸壁面部、32 凹壁面部、41 凸枠壁面部、42 凹枠壁面部、43 側面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する一方端部側に凸部を形成するとともに他方端部側に凹部を形成した底面部と、上記底面部の外周縁の全域に亘って連設されて上記底面部に対して立ち上げることによって上記底面部と対向する天井部位を開口部として内部に土嚢充填空間部を構成する外周壁部とから構成され、上記土嚢充填空間部に土嚢充填物を充填して土嚢を形成する土嚢用袋体であって、
土嚢充填空間部に土嚢充填物を充填して形成された多数個の上記土嚢を互いに並べて設置された状態において、上記底面部の上記凸部と上記凹部から連設された上記外周壁部の連設部位が、上記土嚢が受ける外圧力及び上記土嚢充填物からの内圧力に対して垂直な抗力を隣り合って組み合わされた土嚢の組み合わせ面に生じさせる傾斜面を構成することを特徴とする土嚢用袋体。
【請求項2】
相対する一方端部側に凸部を形成するとともに他方端部側に凹部を形成した底面部と、上記底面部の外周縁の全域に亘って連設されて上記底面部に対して立ち上げることによって上記底面部と対向する天井部位を開口部として内部に土嚢充填空間部を構成する外周壁部とからなる土嚢用袋体と、
上記土嚢用袋体の上記開口部から上記土嚢充填空間部内に充填される土嚢充填物とから構成され、
互いに並べて設置した状態において、上記底面部の上記凸部と上記凹部から連設された上記外周壁部の連設部位が、外圧力及び上記土嚢充填物からの内圧力に対して、隣り合って組み合わされた土嚢の組み合わせ面に垂直な抗力を生じさせる傾斜面を構成することを特徴とする土嚢。
【請求項3】
多数個の土嚢を並べて設置した土嚢構造体を形成する土嚢構造体の施工方法において、
相対する一方端部側に凸部を形成するとともに他方端部側に凹部を形成した底面部と、上記底面部の外周縁の全域に亘って連設されて上記底面部に対して立ち上げることによって上記底面部と対向する天井部位を開口部として内部に土嚢充填空間部を構成する外周壁部とからなる土嚢用袋体と、
上記土嚢用袋体の上記外周壁部と略同一形状で、上記底面部に対して立ち上げられた上記外周壁部を内周壁に沿って略一体化させる剛体枠とが用いられ、
上記土嚢用袋体の上記外周壁部を上記底面部に対して立ち上げ、上記外周壁部に沿わせるようにして上記剛体枠の枠内に装填する土嚢袋体装填工程と、
上記土嚢用袋体の上記土嚢充填空間部に上記土嚢充填物を充填して、上記剛体枠と略一体化された枠付土嚢を形成する枠付土嚢形成工程と、
上記枠付土嚢を設置する工程と、
既設の上記枠付土嚢に並べて第2の枠付土嚢を設置する工程と、
上記既設の枠付土嚢から上記剛体枠を取り外す工程と、
上記第2の枠付土嚢に並べて第3の枠付土嚢を設置する工程とを有し、上記枠付土嚢の設置工程と上記既設の枠付土嚢から上記剛体枠を取り外す工程を繰り返すことにより、
上記底面部の上記凸部と上記凹部から連設された上記外周壁部の連設部位において、外圧力及び上記土嚢充填物からの内圧力に対して、隣り合って組み合わされた土嚢の組み合わせ面に垂直な抗力が生じる各土嚢を設置して土嚢構造体を施工することを特徴とする土嚢構造体の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−100322(P2007−100322A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288364(P2005−288364)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(504461323)
【出願人】(503295699)
【出願人】(504461345)
【出願人】(504461356)
【出願人】(504461389)
【Fターム(参考)】