説明

土木用厚織シート

【課題】 土木工事において、例えば防波堤や堤防などの尖角状物を有する敷設面に用いても、シートに裂傷を生じにくく、また敷設面が凹凸であったり、軟弱であるために沈下、変動が生じる場合でも、長期間経過したのちも、埋め立て土砂により裂傷を生じにくい土木用厚織シートを提供する。
【解決手段】 引張破断時の伸長度が60%以上である繊維からなる経糸12および緯糸11からなる厚織物において、三層に配列された緯糸11間を、経糸12が順次往復して土木用厚織シートを構成する。土木用厚織シートどうしを、高伸度糸により縫製するか、または高伸長度の連結用ベルト部を用いて、連結する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土木工事において、例えば防波堤や堤防などの施工の際の吸出し防止、洗堀防止などに使用される土木用厚織シートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば防波堤の施工の際の海面埋め立て作業において、吸出し防止を目的として、海底に敷設する土木用シートとして用いることのできる多重織物が提案されている(実公昭56−13381号公報)。しかし、このような従来の多重織物からなる土木用シートは、これを構成する繊維が、通常のポリエステルまたはポリプロピレンなどの合成繊維であるため、引張破断時の伸長度は10〜30%程度に過ぎず、シート全体の伸長度も充分ではない。このため、敷設面に岩石や割石などのような尖角状物があった場合、該尖角状物の先端部に当接する部分よりシートに裂傷を生じるという問題がある。また、敷設面が凹凸であったり、軟弱であるために沈下、変動が生じる場合に、長期間経過時に埋め立て土砂により裂傷が起こり、耐久性に劣るという問題が指摘されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような従来技術を背景になされたもので、例えば防波堤や堤防などの施工の際の吸出し防止、洗堀防止などのために使用する際、尖角状物を有する敷設面に用いても裂傷を生じにくく、また敷設面が凹凸であったり、軟弱であるために沈下、変動が生じる場合にも、長期間経過しても埋め立て土砂により裂傷を生じにくい土木用シートを提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、多重織からなる厚織物において、経糸および/または緯糸が、引張破断時の伸長度が60%以上である繊維(以下「高伸度糸」ともいう)から構成されていることを特徴とする土木用厚織シートを提供するものである。また、本発明は、土木用厚織シートが2枚以上連結されてなるシートであって、その連結が、土木用厚織シートの経糸方向端部および/または緯糸方向端部を、引張破断時の伸長度が60%以上である糸で縫製することによりなされている土木用厚織シートを提供するものである。さらに、本発明は、経糸方向端部および/または緯糸方向端部のうち少なくとも一方の端部に、少なくとも経方向の伸長度が60%以上である連結用ベルト部が設けられている土木用厚織シートを提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の土木用厚織シートを、例えば防波堤や堤防などの施工の際の吸出し防止、洗堀防止などのために使用する際、尖角状物を有する敷設面に用いても、シートの優れた伸びによって変形に追随し、シートに裂傷を生じにくく、また敷設面が凹凸であったり、軟弱であるために沈下、変動が生じる場合にも、シートの優れた伸びによって変形に追随し、敷設面に対するフィット性に優れるため、長期間経過しても、埋め立て土砂により裂傷を生じにくい。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0007】図1は本発明の実施例1の土木用厚織シートの経方向の拡大断面図であり、図2は本発明の実施例2の土木用厚織シートの経方向の拡大断面図である。また、図3は本発明の実施例4の土木用厚織シートの正面図であり、図4は本発明の実施例5の一部正面図である。図5は本発明の土木用厚織シートについて行った衝撃試験の模式図である。
【0008】実施例1実施例1を図1に基づいて説明する。本実施例の土木用厚織シート10は、三層に配列された緯糸11間を、経糸12が順次往復して、三重織組織とされている。この経糸12および緯糸11は、繊度が2,200deのポリエステル繊維フィラメント糸であり、引張強度が3gf/de、引張破断時の伸長度が130%の糸である。本実施例の土木用厚織シートの特性を表1に示す。
【0009】本発明の土木用厚織シートを構成する経糸12および緯糸11の素材は、前記ポリエステル繊維フィラメント糸のほか、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの合成繊維からなるフィラメント糸、スパン糸およびそのタスラン糸などの加工糸などであってもよい。特に、ポリエステル部分配向糸(POY)が好ましい。POYは、ポリエステルを紡糸速度2,200〜2,600m/分で溶融紡糸して得られるものであり、紡糸したのち、延伸し、熱セットすることにより、本発明に好適に用いられる糸となる。このときの延伸倍率は、1.1〜1.5が好ましく、熱セットは、通常150〜250℃で行うのがよい。
【0010】また、経糸12および緯糸11の繊度は、前記に限定されるものではなく、通常は、500〜20,000de、好ましくは1,000〜15,000de程度がよく、かつ繊維密度を、50,000〜500,000de/inch、好ましくは100,000〜300,000de/inch程度とすることが、シートに適度な重量、厚さ、強度、フィルター効果を付与できる上で望ましい。さらに、経糸12および緯糸11の引張強度は、好ましくは2〜10gf/deである。引張強度が2gf/de未満であると、シートの強度を大きくするために、糸を太くするか糸密度を大きくする必要があり、その結果、製織された土木用厚織シートを海面埋め立て作業において吸出し防止などのために用いたときなどに、土砂のフィルター効果に劣るものとなる。
【0011】経糸12または緯糸11の引張破断時の伸長度は60%以上であることが必要であり、100〜180%であることが好ましい。引張破断時の伸長度が60%未満であると、製織された土木用厚織シートの引裂強度を効率よく得られず、これらによって構成される土木用厚織シートの伸長度は、後記の条件を満たし得ないため、尖角状物などによる凹凸のある敷設面に用いたときに変形に追随しづらくなり、敷設面に対するフィット性にも劣るものとなる。本実施例のように経糸12および緯糸11の両方に、引張破断時の伸長度が60%以上の高伸度糸を使用することが好ましいが、経糸または緯糸のいずれか一方に使用するだけでもよい。
【0012】本実施例では、土木用厚織シートは、図1に示す構造の三重織組織としたが、これに限定されるものではなく、その他の構造の三重織組織、または二重織以上の多重織でもよいが、好ましくは三重織以上の多重織組織のものが、土木用厚織シートとしてのフィルター効果に優れる。また、本実施例では、経、緯ともに、46.2本/inchに製織されているが、この糸密度に限定されるものではない。
【0013】このようにして製織された土木用厚織シート10の特性を表1に示す。土木用厚織シートの引張強度は、施工現場にもよるが、好ましくは150kgf/3cm以上、さらに好ましくは300〜1,000kgf/3cmである。引張強度が150kgf/3cm未満であると、波力や埋め立て土砂や敷設面形状による衝撃や集中荷重によって、裂傷を生じ易い。
【0014】また、土木用厚織シートの経方向および/または緯方向の伸長度は、施工現場にもよるが、好ましくは60%以上がよく、さらに好ましくは100〜200%がよい。伸長度が60%未満であると、敷設面に岩石や割石などのような尖角状物があった場合、シートの伸びが足りないために敷設面の変形に追随できず、シートに裂傷を生じ易く、また敷設面が凹凸であったり、軟弱であるために敷設面が沈下または変動するような場合に、シートが敷設面の変形に追随できず、敷設面のフィット性にも劣るため、長期間経過時に埋め立て土砂により裂傷を生じやすい。
【0015】さらに、土木用厚織シートの引裂強度は、施工現場にもよるが、好ましくは200kgf以上がよく、特に300〜1,000kgfがより好ましい。引裂強度が200kgf未満であると、敷設面に岩石や割石などのような尖角状物があった場合、シートに裂傷を生じ易く、また敷設面が凹凸であったり、軟弱であるために敷設面が沈下、または変動するような場合に、長期間経過時に埋め立て土砂により裂傷を生じやすい。ここで、引裂強度は、シートを構成する経糸および緯糸の引張破断時の伸長度を大きくすることにより、効率的に得ることができる。
【0016】さらに、土木用厚織シートの透水係数は、好ましくは1.0×10-3cm/sec以上、より好ましくは1.0×10-1〜1.0×10-2cm/secである。透水係数が1.0×10-3cm/sec未満であると、海底に敷設したときのフィルター効果が得られにくい。以上のように、施工現場の条件に従って、土木用厚織シートの特性を適宜選択して実施する。
【0017】本発明の他の実施例、および比較例を挙げて、以下に説明する。
【0018】実施例2実施例2を図2に基づいて説明する。本実施例の土木用厚織シートは、引張強度が3gf/de、引張破断時の伸長度が130%、繊度が6,600deのポリエステル繊維フィラメント を経糸21および緯糸22に使用して、図2に示す組織をもって、糸密度を経29.4本/inch、緯28.4本/inchに製織したものである。実施例2のその他の構成および作用効果は、実施例1と同様であるので省略する。本実施例の土木用厚織シートの特性を表2に示す。
【0019】実施例3本実施例の土木用厚織シートは、図1に示す構造の三重織組織であり、引張強度が3gf/de、引張破断時の伸長度が130%、繊度が6,600deのポリエステル繊維フィラメント糸を経糸および緯糸に使用して、糸密度を経30.1本/inch、緯27.0本/inchに製織したものである。実施例3のその他の構成および作用効果は、実施例1と同様であるので省略する。本実施例の土木用厚織シートの特性を表3に示す。
【0020】比較例1本比較例の土木用厚織シートは、図2に示す構造の三重織組織であり、引張強度が6gf/de、引張破断時の伸長度が15%、繊度が3,400deのポリエステル繊維タスラン加工糸を経糸および緯糸に使用して、糸密度を縦29.2本/inch、緯34.4本/inchに製織したものである。本比較例の土木用厚織シートの特性を表4に示す。
【0021】実施例4実施例1の土木用厚織シートと同様の土木用厚織シート40、同50、同60を用意し、土木用厚織シート40の緯糸方向端部41と、土木用厚織シート50の緯糸方向端部51を100mm幅に重ね合わせ、その重ね合わせた部分を、ミシン糸Yで6本針環縫い(縫い目ピッチ15目/100mm、針間距離10mm)して連結した。また、土木用厚織シート50の他方の緯糸方向端部51′と、土木用厚織シート60の緯糸方向端部61を同様に重ね合わせ、その重ね合わせた部分をミシン糸Yで同様に縫製して連結し、1枚の幅広の土木用厚織シート70を得た。本実施例の土木用厚織シートの正面図を図3に示す。なお、土木用厚織シートは、引張破断時の伸長度が60%以上のものであれば、実施例1の土木用厚織シートに限られない。
【0022】使用したミシン糸Yは、実施例1の土木用厚織シートに用いた経糸および緯糸と同様のものであり、繊度が5,000de、引張強度が3gf/de、引張破断時の伸長度が130%のポリエステル繊維フィラメント糸である。土木用厚織シートと土木用厚織シートの連結に用いる糸としては、引張破断時の伸長度は60%以上であればよく、好ましくは100〜180%である。引張破断時の伸長度が、60%未満であると、本発明の土木用厚織シートが伸長するときに、糸に負荷がかかり破断し易くなるとともに、連結部付近において土木用厚織シートが伸長する妨げとなる。
【0023】土木用厚織シートと土木用厚織シートを連結するための縫製糸として、本実施例では、ポリエステル繊維フィラメント糸を用いたが、本発明の土木用厚織シートを構成する経糸12または緯糸11の素材と同様のものを用いることができ、ポリエステル繊維フィラメント糸のほか、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの合成繊維からなるフィラメント糸、スパン糸およびそのタスラン糸などの加工糸などであってもよく、特に、ポリエステル部分配向糸(POY)が好ましい。
【0024】本実施例では、重ね合わせ部を6本針環縫いして土木用厚織シートを連結したが、これに限られず、6本針以外の環縫いでも、あるいは 本縫いなどでもよい。また、縫い目のピッチは、10〜20目/100mmであることが好ましく、10目/100mm未満であると、連結強度に劣り、一方、20目/100mmを超えると、ミシン針によりシートは傷つけられ易くなり、シートの強度が減少するおそれがある。針間距離、シートの重ね合わせ幅は、本実施例に限らず適宜選択することができる。
【0025】本実施例では3枚の土木用厚織シートを緯糸方向端部で連結し幅広化したが、これに限られず、施工する場所の広さ、形状などを考慮して、経糸方向端部で連結し長尺化してもよく、また2枚あるいは4枚以上を連結してもよい。
【0026】以上のように、土木用厚織シートどうしを、高伸度糸で縫製して連結した場合には、土木用厚織シートが伸長しても、土木用厚織シートの伸長に追随して、縫製糸も伸長するため、縫製糸に余計な負荷がかからず、縫製糸だけ先に切断されてしまうことがないことから、土木用厚織シートの強度が向上する。
【0027】比較例2ミシン糸として、引張強度が5gf/de、引張破断時の伸長度が15%、繊度が3,000deのポリエステル繊維フィラメント糸を用いたこと以外は、実施例4と同様に土木用厚織シートを作成した。この土木用厚織シートを、後述する衝撃試験に供した。
【0028】実施例5経糸として、繊度2,200de、糸強度2.5gf/de、伸度130%、密度46本/inchのポリエステルフィラメント糸を用い、緯糸として、繊度1,500de、糸強度8gf/de、伸度15%、密度83本/inchを用いて、図1に示す三重織で、幅100mm、強度1tf/100mm、伸度130%の連結用ベルト部80を作成した。製織後、ベルトの経糸方向に100mm間隔で、径10mmロープ孔を設けた。この連結用ベルト部80の緯糸方向端部81を、実施例4により得られた土木用厚織シート70の緯糸方向端部71に80mm幅で重ね合わせ、その重ね合わせた部分を、実施例4と同様に縫製して、土木用厚織シート70と連結用ベルト部80を連結して、一枚の土木用厚織シートとした。得られた土木用厚織シートを図4に示す。
【0029】連結用ベルト部80としては、その引張破断時の伸長度が60%以上であることが必要であり、特に100〜200%が好ましい。引張破断時の伸長度が60%未満であると、土木用厚織シートが伸長する際に、連結用ベルト部に負荷がかかり破断し易くなるとともに、土木用厚織シートの伸長を妨げる恐れがある。
【0030】本実施例では、連結用ベルト部80は、図1に示す三重織組織としたが、これに限られず、その他の構造の三重織組織、または一重織、二重織以上の多重織でもよい。また、本実施例では、経方向のみ伸長度が60%以上の連結用ベルト部80を用いたが、経方向および緯方向の伸長度が60%以上の連結用ベルト部を用いてもよい。
【0031】本実施例の土木用厚織シートに付設した連結用ベルト部80には、製織の段階ではロープ孔を設けずに製織後、カッター刃によって、ロープ孔を設けたが、これに限定されず、例えば熱や超音波振動などによってロープ孔を設けたり、また製織の過程で織組織でロープ孔を設けるなどしてもよい。
【0032】連結用ベルト部80が付設された土木用厚織シート70を、同様に連結用ベルト部80′が付設された他の土木用厚織シート70′と連結する方法は、例えば、該連結用ベルト部80と該連結用ベルト部80′を隣接させ、連結用ベルト部80のロープ孔81と、連結用ベルト部80′のロープ孔81′に交互にロープを通したり、連結用ベルト部80のロープ孔と、連結用ベルト部80′のロープ孔81′にらせん状に交互にロープを通したり、対になるロープ孔どうしを1対づつロープを通して結ぶ方法、またロープに限らず、紐などを用いて連結するなど、その方法は適宜選択することができる。
【0033】本実施例では、連結用ベルト部の緯糸方向端部を、土木用厚織シートの緯糸方向端部に付設したが、これに限定されず、連結用ベルト部の緯糸方向端部を、土木用厚織シートの経糸方向端部に付設してもよい。また、本実施例は、高伸度糸により複数の土木用厚織シートが連結されてなる土木用厚織シートに連結用ベルト部を付設したものであるが、一枚の土木用厚織シートに連結用ベルト部を付設してもよい。
【0034】このように、土木用厚織シートどうしの連結用ベルト部として、伸長度の高いものを用いると、この連結用ベルト部どうしをロープなどで連結したのちも、土木用厚織シートの伸長に追随して、連結用ベルト部も伸長し、連結用ベルト部に大きな負荷がかからないため、連結用ベルト部の裂断が生じることがなく、結果的に土木用厚織シートの強度が向上する。
【0035】比較例3比較例1と同様の経糸および緯糸を用いて、同様の糸密度に製織した連結用ベルト部を用いたこと以外は、実施例5と同様に土木用厚織シートを作成した。この土木用厚織シートを、後述する衝撃試験に供した。
【0036】試験例本発明の効果を実証するために、本発明の実施例1〜3、および比較例1について、以下のような衝撃試験を行った。試験の模式図を図5に示す。陸地盤31上において、径5〜10cmの割ガラ32を約10cm厚にまき出し、その上に実施例1〜3および比較例1の土木用厚織シート30を各々敷設した。次いで、陸地盤31より、約1.5mの高さから、前記と同様の割ガラ32を落下させ、約20cm厚にまき出した。次いで、その上を重機33(機械重量2.45トンのホイルローダー)で20往復転圧した。そののち、土木用厚織シート30を傷付けないように手作業で取り出し、実施例1〜3および比較例1〜2の土木用厚織シートの縦方向引張強度試験を行い、試験前の引張強度と比較して、引張強度保持率を計算した。その結果を、表5に示す。
【0037】表5によると、比較例1の土木用厚織シートは、衝撃試験により引張強度が著しく低下したのに対し、実施例1〜3の各土木用厚織シートは、引張強度の変化が少なく、引張強度保持率に顕著に優れていることが分かった。
【0038】次いで、比較例2〜3の土木用厚織シートについても同様に衝撃試験を行った。その結果、比較例2の土木用厚織シートには、シートの連結部でミシン糸の切断が数カ所発生し、シートどうしが引き離された箇所が認められた。これは、土木用厚織シートどうしを、引張破断時の伸長度の低い糸で縫製したために、土木用厚織シートが伸長する際、縫製糸が土木用厚織シートの伸長に追随できなかったことが原因と見られる。また、比較例3の土木用厚織シートには、連結用ベルト部の経糸の切断が数カ所発生し、付設された連結用ベルト部がシートから引き離された箇所が認められた。これは、連結用ベルト部として伸長度の低いものを用いたために、土木用厚織シートが伸長する際、連結用ベルト部にかかる負荷が原因と考えられる。このように、比較例2〜3の各土木用厚織シートは、土木用シートとしての適性に欠けることが分かった。
【0039】
【表1】


【0040】
【表2】


【0041】
【表3】


【0042】
【表4】


【0043】
【表5】


【0044】本発明によれば、例えば防波堤や堤防などの施工の際の吸出し防止、洗堀防止などに使用する際、尖角状物を有する敷設面に用いても、シートに裂傷を生じにくく、また、敷設面が凹凸であったり、軟弱であるために沈下、変動が生じる場合にも、長期経過しても、埋め立て土砂により裂傷を生じにくい土木用厚織シートを得ることができる。また、本発明の土木用厚織シートを、引張破断時の伸長度が60%以上の糸で縫製して連結した場合には、土木用厚織シートの伸長に追随して、縫製糸も伸長するため、縫製糸に余計な負荷がかからず、縫製糸だけ先に切断されてしまうことがない。さらに、本発明の土木用厚織シートに、伸長度が60%以上の連結用ベルト部を付設した場合には、この連結用ベルト部どうしをロープなどで連結した土木用厚織シートは、土木用厚織シートの伸長に追随して、連結用ベルト部も伸長し、連結用ベルト部に大きな負荷がかからないため、連結用ベルト部の裂断が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1および実施例3の土木用厚織シートの経方向の拡大断面図である。
【図2】実施例2および比較例1の土木用厚織シートの経方向の拡大断面図である。
【図3】実施例4の土木用厚織シートの正面図である。
【図4】実施例5の土木用厚織シートの一部正面図である。
【図5】実施例および比較例に対して実施した、衝撃試験の模式図である。
【符号の説明】
10,20,30,40,50,60,70 土木用厚織シート
11,21 緯糸
12,22 経糸
31 陸地盤
32 割ガラ
33 重機
80 連結用ベルト部
Y ミシン糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】 多重織からなる厚織物において、経糸および/または緯糸が、引張破断時の伸長度が60%以上である繊維から構成されていることを特徴とする土木用厚織シート。
【請求項2】 土木用厚織シートを2枚以上連結してなるシートであって、その連結が、土木用厚織シートの経糸方向端部および/または緯糸方向端部を、引張破断時の伸長度が60%以上である糸で縫製することによりなされている請求項1記載の土木用厚織シート。
【請求項3】 経糸方向端部および/または緯糸方向端部のうち少なくとも一方の端部に、少なくとも経方向の伸長度が60%以上である連結用ベルト部が設けられている請求項1〜2いずれか1項記載の土木用厚織シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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