説明

圧力袋体フィードバックを備えるCPR補助装置

【課題】胸腔全体に力を一様に働かせる圧迫ベルトを使用した犠牲者の自動圧迫のための蘇生装置を提供する。
【解決手段】患者80の胸部の周囲に延びるようにベルト64であって、繰出し部分と巻取り部分によって特徴づけられるベルトと、作動可能にベルトに接続され、スプール上でベルトを巻いたり緩めたりし、それによって、ベルトの巻取りおよび繰出し部分の長さに影響を及ぼすスプール68と、スプールに接続され、スプールを回転させるように作動させることができ、患者の胸部の周囲にベルトを締め付けることができるモータと、モータを制御するコントローラと、圧力検知手段であって、ベルトが締め付けられるときベルトと患者の間に配置され、ベルトが胸部にかけた圧力を検知し、ベルトが胸部にかけた圧力に呼応する信号を送信できる圧力検知手段とを備え、コントローラは、ベルトがかけた圧力に一致する信号に呼応してモータの動作を制御する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急医療装置及び方法、並びに心停止患者の蘇生に関する。
【背景技術】
【0002】
心肺機能蘇生法(CPR)は、良く知られた価値ある救急方法である。CPRは心臓発作、感電、胸の怪我及び他の多くの原因の後に心停止した人を蘇生させるために使用される。心停止中、心臓は血液の拍出を停止し、心停止した人は、まもなく脳への血液供給の不足から脳障害を受ける。したがって、CPRには、身体に血液を拍出する心臓及び胸腔を圧搾するために、繰り返し胸部を圧迫することが必要とされる。多くの場合、患者は呼吸していない。口移し式人工呼吸又はバッグバルブマスクが、胸部圧迫により身体に血液が拍出されている間、肺に空気を供給するために使用される。
【0003】
なお、特に心停止直後に使用される場合、CPR及び胸部圧迫により心停止患者を救うことが可能である。胸部圧迫には、毎分80〜100回患者の胸骨を繰り返し下方に押すことが必要とされる。CPR及び閉胸部圧迫は、心停止患者がどこで傷ついても使用できる。それは、病院から離れた現場で、病の訓練を受けた局外者あるいは高度に訓練された医療補助員及び救急隊員によって行えばよい。
【0004】
救急準備者が胸部圧迫をうまく行う場合、身体中の血液流量は正常な血液流量の約25〜30%である。これは脳障害を防ぐのに十分な血液流量である。しかしながら、胸部圧迫が長時間必要となる場合、心臓及び胸郭を適切に圧迫し続けるのは不可能ではないにしても困難である。経験を積んだ医療補助員さえ、数分以上、適切に胸部圧迫し続けることは不可能である。(Hightowerらの時間経過による胸部圧迫の質の減少、地中海300エルグ アン岬26(1995年9月)参照)したがって、CPRに長時間必要とされる場合、患者が持ちこたえたり蘇生することは殆どない。同時に、胸部圧迫が十分に維持できれば、心停止患者が延長された時間に耐え得ることははっきりしている。延長されたCPRの努力(45〜90分)に関する時々の報告書には、患者が結局冠状動脈のバイパス手術によって救われたことが記載されている。(Tovarらの成功した心筋血管再生及び神経蘇生、テキサス州、ハートJ(Texas Heart J)271(1995)参照)
【0005】
よりよい血液流量を提供し、かつ局外者の蘇生努力の有効性を増加させるために、基礎的なCPRの手順の変形例が提案され、使用されている。後述する装置及び方法に関して、様々な機械的装置、あるいは胸腔の繰り返し圧迫がCPRの主な操作活動での使用のために提案されている。
【0006】
Barkolowの心肺蘇生器マッサージパッド、米国特許第4,570,615号(1986年2月18日)に示された装置、市販のサンプ装置(Thumper device)、及びその種の他の装置は、連続的な閉胸部圧迫を提供する。Barkolow及び他のものは、胸腔に配置されると共に、ビーム配列によって支持されるピストンを備える。ピストンは、患者の胸骨に配置され、空気圧で胸部を下方に繰り返し押圧する。患者はまず装置を取り付けられなければならず、ピストンの高さ及びストローク長さは、胸部圧迫中の遅延を導くために、使用前に患者のために調整しなれけばならない。他のアナログの装置が、胸骨でのピストン動作をマニュアルとするために提供される。Everetteの外部心臓圧迫装置、米国特許第5,257,619号(1993年11月2日)は、例えば、患者の上方に支持されたピポッドアームに載置された簡易な胸部パッドを提供し、この胸部パッドはピボットアームに押し下げることにより胸部を圧迫するのに使用され得る。これらの装置はマニュアル胸部圧迫ほど臨床的に成功しない。(Taylorらの外部心臓圧迫、機械的及び手動技術のランダム比較 240 JAMA 644(1978年8月)参照)。
【0007】
胸部機械的圧迫用の他の装置は、胸のまわりのベストか革ひもによって胸骨に固定される圧迫ピストンを備える。Woudenbergの心肺蘇生器、米国特許第4,664,098号(1987年5月12日)は動力が空気シリンダで発生する装置を示す。Waideらの外部心臓マッサージ装置、米国特許第5,399,148号(1995年3月21日)はマニュアル操作される別の装置を示す。そのような装置の他の変形では、胸のまわりに配置するために設計されたベストかベルトは、胸部に圧迫力を作用させるために十分な空気ブラダー(bladder)を備える。Scarberryの人体圧力付加装置、米国特許第5,222,478号(1993年6月29日)、及びHalperinの心肺機能蘇生法及び補助サーキュレーションシステム、米国特許第4,928,674号(1990年5月29日)は、そのような装置の例を示す。Lachらの蘇生方法及び装置、米国特許第4,770,164号(1988年9月13日)は、背中の両側に幅広バンド及び止め木を有し、胸部を圧迫するために隣接してクランプ動作する胸部圧迫部を備える。
【0008】
蘇生装置が成功するには、幾つかの操作パラメータを満足していなければならない。胸部圧迫は有効であれば活発に実行されなければならない。胸部圧迫中に発揮された努力は、実際には胸部の心臓及び大動脈を圧迫することは殆どなく、胸部及び胸郭の変形をもたらす。効果的に胸部を圧迫するのに必要とされる力により他の傷が生じる危険が発生する。CPR中、心臓に穴を空けることを回避するために、胸骨上に手を置くことが必要とされることは周知である。胸部圧迫によって多数の他の傷が発生する。心臓、冠状動脈、大動脈瘤及び破裂の裂傷、肋骨の骨折、肺ヘルニア、胃及び肝臓裂傷がCPRによって引き起こされたことを示す(Jones及びFletterの心肺機能蘇生法後の併発症、687 地中海 エルグ アン岬12(Nov. 1994)参照)。したがって、胸部圧迫に付随する傷の危険が高く、それらの傷を回避することができる蘇生技術と比較して患者の生存機会が明らかに減少する。胸部は血液流量を引き起こすのに十分に圧迫できないので、胸部圧迫は、非常に大きいあるいは肥満の心停止患者には全く効果がない。空気式装置による胸部圧迫は、傷から胸部を保護することができず、胸部ではなく胸腔の変形に圧迫力を作用させることができないため、女性への適用が妨げられる。
【0009】
CPR及び胸部圧迫は、その有効性を最大限にし、かつ脳への血液流量の不足による神経損傷を回避するために、心停止後にできるだけ早く始められるべきである。低酸素症は心停止後、約2分以内に始まり、脳のダメージは脳への血液流量にも拘わらず約4分後に起こり、重大な神経欠陥は時間と共に急速に増大する。2,3分の遅延は、著しく生存機会を低下させ、脳障害の可能性及び深刻度を増加させる。しかしながら、CPRとACLSは、恐らくこの時間枠内には提供されない。心停止に対する反応は、局外者のCPR、基礎的な生命維持装置、心臓の生命維持装置及び緊急処置室による働きを含む4つの局面に生じると一般に考えられている。局外者のCPRは、いずれにしても心停止後の最初の数分以内に行われる。基礎的な生命維持装置は、現場に急送された後、約4〜6分で到着する第1応答者によって提供される。第1応答者は救急車人員、緊急医療技術者、消防士及び警察官を含む。彼らは一般にCPRを提供することができるが、薬又は血管内へのアクセス、細動除去又は挿管を提供できない。高度な生命維持装置は、一般に第1応答者に続く、約8〜15分の後に到着する急送の医療補助員あるいは正看護婦によって提供される。ALSは、一般にCPR、静脈注射用薬デリバリを含む薬品治療、細動除去、及び挿管を提供できる医療補助員、正看護婦又は緊急医師によって提供される。ALS供給者は、近くの病院へ患者を輸送する前に20〜30分間患者に働きかけてもよい。細動除去及び薬品治療は、患者を蘇生させたり持ちこたえさせたりすることに多くの場合成功するが、CPRは良く訓練された第1応答者やACLS人員によって実行されるときでさえ、供給者が疲労すれば胸部圧迫の効果がなくなるので、多くの場合効果がない。したがって、生命維持の成功には、第1応答者が到着前にCPRを開始することが不可欠である。さらに、基礎的な生命維持及び高度な生命維持段階では、CPRの有効性を維持するために機械的胸部圧迫装置の補助が必要とされる。
【発明の概要】
【0010】
以下に記載する装置は、小型でポータブルまたは可搬性があり、小さな電源で自動し、訓練をほとんどまたはまったく積んでいない局外者によって簡単に使用できる装置の使用によって、胸部の周囲の圧迫を提供する。また電源の利点を活かすために、装置に特徴を付加させることもでき、この装置の商業的実施形態のために構造上の支持板を考察している。
【0011】
この装置は心停止患者の胸部の周囲に巻きつけ、前部で留める広いベルトを含む。このベルトはCPRに必要とされる胸部の圧迫をもたらすため胸部の周囲を繰り返し締め付ける。 この装置は女性にも男性にも有効であるように、バックルおよび(または)ベルトの前部は女性の胸部または肥満体の胸部に対して構造的に適合するようになっている。バックルは、この装置を始動する前に適切な付加装置で始動することが必要なインターロックを含めてもよい。こうするとベルトのむだな回転を防止できる。ベルトを繰り返し締め付ける作動機構は、患者の側面に設置できる支持板または小型ボックスに備えられ、中間の長さのベルトを巻き取ることで胸部の周囲を締め付けを引き起こすローリング機構からなる。ローラーは小型電気モータで電動し、モータは電池および(または)120Vの家庭用電気ソケットまたは12V直流車内充電用ソケット(シガレットライターソケット)などの標準的電力供給装置で作動する。ベルトはカートリッジに内蔵されており、モータボックスに簡単に取り付けたり、モータボックスから簡単に取り外したりできる。カートリッジ自体は小型に折りたたんでもよい。モータはカムブレーキおよびクラッチを含む変速装置を介してベルトに接続され、また、モータ、クラッチ、およびカムブレーキをいくつかの態様で動かす制御装置を備える。 そうしたモードの1つは、ベルト動程(belt travel)を高圧迫閾値によって制限し、またベルト動程を低圧迫閾値に制限する装置を備える。別のそうしたモードは、ベルトを締めたあとベルトが弛緩しないようにベルトを保持し、続いてベルトを開放する装置を備える。圧迫を行わない小休止期間−CPR呼吸を許すため胸部の圧迫を行わない期間−をいくつかのモードで含めることができる。別の実施形態では、非逆転連結装置を含む変速装置を介してモータをベルトに接続することで、システムの簡単操作を可能にしており、また駆動トレイン(drive train)からのテイクオフを介してブレーキがシステムに接続されている。したがって、以下に記載するポータブル蘇生装置には多数の発明を組み込むことができる。
【0012】
ポータブル蘇生装置には、CPRやその他の療法の実行を補助するいくつかの特徴と付属品を組み込んでもよい。局外者は、胸部の圧迫が必要かどうか、あるいは胸部の圧迫をいつ停止すべきかを自信をもって決心できないことがある。したがって、この装置を、患者の状態を診断する心臓モニターまたはEKG、およびベルト動作を結果的に開始、許可、または禁止する回路またはコンピュータを含めたインターロックシステムと組み合わせてもよい。ベルト締付け用に設けられた電源装置は、除細動(多くの心停止患者に対する適切な処置である)用の電源装置として使用してよい。さらに、局外者はいつ除細動を施すべきかの決定を下せない可能性が高いため、この装置の除細動部分は、患者の状態を診断する心臓モニターまたはEKG、および除細動を開始、許可、禁止する回路を含むインターロックシステムを備えてもよい。回路またはコンピュータモジュールを介して実現される巧妙なシステムにより、これらの機能を達成することが可能である。
【0013】
自動化され、コンピュータで作動するこの種の療法は、別の方法では死亡したであろう多くの心停止患者に対する早期で適切な救命処置を提供するかもしれない。しかし、ある状況下で装置が使用される場合、救急救命士、救急室の医師、または心臓専門医によるCPR手順の監督が必要になるかもしれない。この目的を達するために、この装置の支持板内に収めた遠隔測定システムを介して、上述した巧妙なシステムを医療従事者の巧みな診断と意思決定に置き換えることができる。支持板には、近くの病院、救命救急隊員、救急車をはじめ、主要な診断および管理施設に至るまで自動的に呼び出せる遠隔計測システムを含めることができる。インターロック、制限スイッチ、およびその他の典型的なセンサを使用して、患者の胸部の周囲にベルトが正しく配置され、締められているかを検出することができる。心臓モニタおよびEKG電極は、犠牲者の心拍数とEKGの検知が可能である。装置内の通信機器を使用して、装置からこの情報を犠牲者から遠く離れた医療従事者に伝えることができる。同じシステムを介して、医療従事者はこの装置と交信し、好適な医療処置に規定されるように、ベルトの締め付けまたは除細動を開始、許可、または禁止することができる。交信は、通常の電話線やコードレス電話、携帯電話システム、ページング装置、インターネット、その他の通信手段を介して、確立することができる。この装置は、位置情報のプログラミング、または装置の位置を決定するためのGPS機能を備えることができ、通信システムが使用状態に配置されると、この情報は911番などの救急呼び出しシステムへ自動的に送信される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は簡略タイプの蘇生装置1を示す。胸部圧縮のために使用される機構は、バックル4L,4Rをもつ胸部圧縮ベルト3、フリクションライナ5、サポートボード6、およびモータ駆動スプールアセンブリ7を含む圧縮アセンブリ2を有する。サポートボード6は心停止の被害者の下に置かれ、圧縮ベルト3とフリクションライナ5は被害者の胸部の周囲を包む。左サイド3Lと右サイド3Rを有する胸部圧縮ベルトは、バックル4L,4Rを互いに引っ掛けることにより被害者の胸部の上で留められる。この構成では、フリクションライナ5は胸部圧縮ベルト3と被害者または被害者の着ている衣服との間に挟まることになる。圧縮ベルトは、硬度のある材料で作られていればよく、粗麻布が適している。また、圧縮ベルトは、ベスト、コルセット、ガードル、ストラップ、またはバンドと称してもよい。フリクションライナは、テフロン(登録商標)、チベク(tyvek)(トレードマーク)または他の低摩擦材料で作られていればよい(低摩擦とは、ベルトと被害者の衣服または皮膚との間で生じると予想されるものよりも小さい摩擦で圧縮ベルトを滑らせることができる材料を意図している)。フリクションライナは適当な裏地材料を有していてもよく、その目的は圧縮ベルトによって生じるすり傷から被害者を守るためであるが、圧縮ベルトの操作を妨げる摩擦力を制限するのにも役立つ。フリクションライナは、ベルト、ベスト、コルセット、ガードル、ストラップ、またはバンドの形態をとることもでき、胸部の周囲を部分的または完全に取り巻くものでもよい。
【0015】
バックル4L,4Rを含む圧縮ベルト3の前部は、被害者の胸骨の上に広い圧力点を与えるように形成されている。これは図2に示されている。女性の乳房や肥満男性の胸肉を収容するために大きな開口8を設けてもよい。バックル4L,4Rの下側は滑らかで広くなっており、これにより胸骨に対応する胸部の広い領域に圧縮力が均一に分配される。胸部圧縮ベルトに取り付けられるバックルの位置は胸部の正面から圧縮アセンブリの背面へと大きく変えてもよい。開口8は、ベルト自体にではなくバックルに設けられてもよい。図3は、被害者の胸部に圧縮ベルトを締め付けるために用いられるバックル4の詳細を示す。バックルはどのようなタイプであってもよいが、装置が被害者の胸部に取り付けられて圧縮サイクル開始の準備ができたことを指示するモータ制御システム(図13参照)に配線10を介して作動可能に接続されたラッチ感知センサ9を有していることが好ましい。図3に示すバックルは、圧縮ベルト3に取り付けられた、大きな開口8を有するD型リング状バックルである。他のファスナや留め手段を用いてもよい。
【0016】
胸部圧縮ベルト3は、サポートボード6内に配置されたスプールアセンブリ7を構成する1つ以上のスプールの作動によって被害者の胸部の周囲で繰り返し締め付けられる。図4に示すスプールアセンブリは、ベルトの背面部、好ましくは圧縮ベルトの中心または矢状縫合(saggital)の線11の近傍で、圧縮ベルト3に連結されている少なくとも1つのスプールまたはリールを有する(ただし、スプールアセンブリは、圧縮ベルトの前部または側部に配置されていてもよい)。図4は、スプールアセンブリおよび圧縮ベルトへのその取り付け状態を示す図である。スプールアセンブリは、ドライブシャフト15を介してモータ14に作動可能に連結された単一の駆動スプール12を有する。圧縮ベルトは適当な方法で駆動スプールに固定される。この場合、駆動スプール12には縦スロット16が設けてある。スロットは、駆動スプールを貫通して径方向に弦のように延びるとともに、駆動シャフト15およびジャーナルシャフト18の連結部である中実の端部17を残して、圧縮ベルトの幅に対応する長さだけ軸方向に延びている。ベルトはスロットを通っており、これによりベルトと駆動スプールとの強固な連結が達成されている。このように固定された状態で、駆動スプール12が回転すると、圧縮ベルトの右サイド3Rおよび左サイド3Lが巻き取られてスプール上に巻き付き、これにより装置を着た被害者の胸部の周囲に圧縮ベルトを締め付ける。スピンドルまたはアライメントローラ19は、ドライブシャフトの動作により行われるローラ上でのベルトの調節および低摩擦送りを実現している。
【0017】
回転機構として多くの代替実施形態を考えることができ、そのうちの1つの代替案を図5に示す。スプール12L,12Rは、平行に配置され、伝達ギヤ20および遊星式ギヤ21によって相互に連結され、かつ、シャフト18L,18Rにより軸支されている。駆動シャフト15は、スプール12R(またはスプール12L)に取り付けられるとともに、モータ12に作動可能に取り付けられている。モータはシャフト18Rおよびスプール12Rを反時計回り方向に回転させ、これにより圧縮ベルトの右サイド3Rを左側に引っ張ってスプールに巻く。伝達ギヤ20は遊星式ギヤ21により動作してスプール12Lを時計回り方向に回転させ、これにより圧縮ベルトの左サイド3Lを引っ張ってスプール12Lに巻く。
【0018】
このように、被害者の胸部の周囲を圧縮ベルトで繰り返して周期的に締め付ける機構については、多くの形態が考えられる。圧縮ベルトは、ベルト、ボードおよびバックルの協働動作により胸部を径方向に圧縮するとともに、胸部周りの圧縮力を分散させる働きをする。
【0019】
モータはスプールを回転駆動することにより、圧縮ベルトを被害者の胸部の周囲に締め付ける。バッテリー作動ハンドドリルモータのようなモータは、CPRの目的のための適当な胸部圧縮を提供する。圧縮ベルト3による反復締め付けを行うために、モータ14はクラッチ22または他の同様な機構を介して取り付けられていなければならない。モータ14は、トルクスリップクラッチ機構を介して駆動シャフト15に取り付けられてもよい。このクラッチ機構は、高いトルクに達するまで(あるいは、さらなる締め付けには大きな抵抗を示し、これにより被害者の胸部が圧縮されていることを示す)駆動シャフトに係合し、そのような高いトルクによって自動的に係合を解除し、被害者の胸部の通常の弾性的拡張に応じてベルトが広がったのちに再係合する。このようにすれば、モータの駆動および停止を繰り返し行うことなく反復圧縮を実施することができ、これによりバッテリ電源の作動時間の長さを引き伸ばすことができる。一方、ベルトが締め付けられていないときにはスプールが自由に回転できる状態で、モータの駆動および停止を繰り返し行ってもよい。この場合、クラッチ機構22は電気ドリルに使用されるクラッチ機構(ドリル動作のときに係合し、ドリルを行わないときには自由に回転する)と同様である。胸部の自然な弾性的拡張はベルトを緩んだ状態に向けて駆動することを不必要にすべきであるが、モータを逆回転させるか、または、適当なクラッチ機構やギヤ機構によりモータの作動を逆にすることによってベルトを緩めることを積極的に行ってもよい。圧縮のタイミングはコンピュータモジュールまたは簡単なリレー(ウインドシールドワイパー型リレー)により調整されるが、好ましくは、アドバンスト・カーデアック・ライフ・サポート・ガイドライン(Advanced Cardiac Life Support guidelines)、心肺機能蘇生ガイドライン、または他の医療的に許容できる蘇生法などの基準と同様である。アメリカ心臓協会(American Heart Association)により発表されている現在のガイドラインは、毎分60−100回の胸部圧縮を要求している。
【0020】
モータは、利用できる電源から電力をとるための設備を備えたバッテリ駆動のものが好ましい。バッテリ23は、サポートボード6内に収容されていてもよい。多数の電動工具の使用のために既に利用可能な、便利なサイズの3ボルトバッテリは、バッテリ当たり約5分の圧縮を提供する一方、12ボルトバッテリ(バッテリ当たり1700mA-h)は、バッテリ当たり約10分の圧縮を提供する。(心停止から病院への搬送までの推定平均時間に対応して)30分の総バッテリ容量が望ましい。したがって、数個のバッテリをサポートボード内に設置してモータおよびそのコントローラに電気的に接続してもよい。バッテリは、装置が使用されていないときに充電ソケットおよび充電プラグを120ボルト交流電源に差し込むことにより細流充電される(装置は、工場、オフィスビル、飛行機、および比較的安定した電源を有する他の設備内に設置されていて、不使用時にプラグで接続して充電することを想定している)。交流電源が使用場所で簡単に利用できるのであれば、後の使用に備えてバッテリを残すために交流電源による装置の駆動を続けてもよい。装置はまた、適当なアダプタを用いて自動車の電源ジャックに差し込むんでもよく、これにより自動車が唯一の電源である場所での使用や救急車内での長時間の使用に供される。
【0021】
図6は、心停止の被害者に装着された蘇生装置を示す。サポートボード6は被害者の下に置かれ、圧縮ベルトの右と左の部分3R,3Lは被害者の胸部の周囲を包んで、矢印25で示す胸部の前部で留められている。装着されたら、装置は、手動でモータを始動させることにより、または、装置に配置されたバックルラッチセンサを含むセンサからの適当なフィードバックによる自動開始により、作動を開始してもよい。
【0022】
上述した基本的な装置にいくつかの特徴を組み合わせてもよい。上記ではサポートボードとして参照したベルト用操作機構を収容する構造は、蘇生の間に使用する補助装置のための収納部であってもよい。図7は、可能性のある商業的実施形態における蘇生装置1を示す。サポートボード6は、被害者の腰の下部当たりから肩におおよそ届く程度の大きさに形成されている。圧縮モジュール26は、サポートボード6から分離可能になっており、圧縮モジュール内に収納された圧縮ベルトおよびフリクションベストを有している。スプールアセンブリおよびモータもまた、圧縮モジュール内に収納されているが、モータはサポートボード内に配置してもよい。この図において、圧縮モジュールは、より大きな装置サポートボード28内にはめ込まれる小さいサポートボード27を備えている。装置サポートボードにおける利用可能な空間を利用して、気道確保装置(袋状マスク、酸素マスクなど)を収納する区画29と、細動除去装置(電極、パドルなど)を収納する区画30とが、サポートボードとともに含まれている。
【0023】
制御および通信モジュール31もまた、サポートボードに組み込まれてもよい。小さい酸素ボトル32は、ボードの接続点につながったホースや、酸素ボトルと気道確保区画に収納された装置との間を接続するために必要なコネクタと共に、収納されてもよい。バッテリ23は、サポートボード内に収納される(バッテリの数は必要な作動時間に応じて選択され、バッテリの配置は利用可能な空間によって決まる)。バッテリは、電気コネクタ33やサポートボード内を通る適当な配線を介して、圧縮モジュール内のモータに作動可能に接続されている。バッテリはまた、細動除去モジュールや制御および通信モジュールにも作動可能に接続されることができる。長寿命のバッテリを使用することもできるが、再充電可能なバッテリを用いてもよい。そのために、サポートボードには、外部電源によりバッテリを充電したり装置を作動させるための充電接続部34が設けられている。
【0024】
装置は、長期間使用されずに収納されていることを想定されており、このために収納ホルダ35が設けられている。収納ホルダは、電源コネクタ、電源プラグ、充電変圧器などの必需品を収納可能である。サポートボードには、収納ホルダからサポートボードが取り外されたときを検知する取り外しセンサ36が設けられている(後述するように、このセンサは装置の使用を指示するものとして用いることができ、そのために緊急医療局に警報を出すのに必要なものである)。この取り外しセンサは装置の取り外しを物理的に検知する簡単なリミットスイッチで構成されることができ、このリミットスイッチは装置を始動させるパワースイッチまたは始動スイッチとして使用できる。取り外しセンサはまた、充電電流の停止、充電装置を流れる電流の増加、または使用を示すモータ電流などを扱う充電配線上の電流センサで構成されることもできる。センサの選択は、例えば使用を示すような電力低下や他の意図しない始動などの取り扱いを避けたいという要求のような多くの実際的な考慮のもとに行ってもよい。装置が使用中であると考えられる状態は実際的な考慮によって選択可能であり、多くの場合において、ホルダからの蘇生装置の単なる取り外しは、被害者がその使用を要求していると誰かが決めたという明らかなシグナルをなすものであり、緊急医療局が装置の場所に直ちに駆けつけるべきであるということが予想される。装置が使用中であることを示すために、もっとあとの条件が用いられるであろう状況がある。例えば、装置が救急車、飛行機、病院などに設置されている場合である。または、用心または予備的措置として収納ホルダから装置を取り外したり、装置が被害者に装着されるまで通信の開始を遅らせるたりすることが望ましいような他の状況もある。このような場合、図3に示すバックルラッチは、蘇生装置が使用中であることを指示するセンサとして使用可能である。
【0025】
図8は圧縮モジュール26の詳細を示す。使用されていないとき、モジュールは、圧縮ベルトを摩損から保護するための剥ぎ取れるシート37で覆われている。バックル4はシート37の下に容易に見てとれる。電気コネクタ38は、サポートボード内のバッテリを圧縮モジュール内部のモータに接続している。圧縮ベルトの内側には、EKG検知に必要な電極接触をとるために、右側胸骨位置(right sternum parasaggital location)と左側肋骨中央位置とに貫通電極39がそれぞれ配置されている。これらの電極は、普通の傍観者や第1対応者のうち高いレベルのトレーニングを受けた者によって細動除去電極の配置が行われると仮定される状況では、省くことができる。フリクションベスト5は、スプールアセンブリ位置で圧縮モジュールに固定されている。
【0026】
図9は、細動除去モジュールの詳細図を示す。細動除去モジュールは、電力接続部43によりバッテリに接続されている一対の細動除去電極42を有している。細動除去電極は、細動除去モジュール内に収納された回路によって制御されることになっており、データポート44を介して制御モジュールに接続されてもよい。細動除去モジュールは、迅速解除ラッチ45によってサポートボード28に取り外し可能に取り付けられている。剥ぎ取れるシート46は、保管時に細動除去モジュール内の構成部品を保護するとともに、使用時に前記構成部品の容易な取り出しを可能にする。
【0027】
図10は、気道確保モジュール29の詳細図を示す。気道確保モジュール29は、酸素マスク47、ある長さのチューブ48、およびサポートボード内の酸素ボトルに酸素マスクを接続する空気導入口49を有している。酸素マスクは、二酸化炭素のような血液ガスを交換するために肺に酸素を供給する血液ガス交換手段である。任意の薬注入器50は、気道にACLS薬剤を自動注入するために、マスクまたはホースに作動可能に接続されてもよい。細動除去モジュールは、迅速解除ラッチ51によりサポートボード28に取り外し可能に取り付けられる。剥ぎ取れるシート46は、保管時に気道確保モジュール内の構成部品を保護するとともに、使用時に前記構成部品の容易な取り出しを可能にする。生物学的フィードバックやCPRの成功の監視を行うために、最終呼吸CO2モニタ52をマスクに設けることもできる。同じ目的のために、皮膚に接触する血液酸素レベルモニタ53をマスクに取り付けることもできる(指先血液酸素センサもまた使用可能であり、容易に利用可能にするために全体のアセンブリ内に収納しておいてもよい)。センサによって得られた生物学的データは、マスクおよびサポートボード内の適当な配線を介して制御モジュールに送られる。
【0028】
図11は、制御および通信モジュールの詳細図を示す。制御ユニット54は、サポートボードを通る適当な配線を介して圧縮モジュール、細動除去モジュール、および気道確保モジュールに接続されている。制御ユニットは、通信ユニット55に任意に接続される。通信ユニットは、ボード上で検知されたEKGや測定された他の医療パラメータをスクリーン56へ送信するとともに、電話回線を通じて離れた医療局へ送信するための手段を有している。通信ユニットは、電話の受話器またはスピーカホンを有することもできる。装置は収納ホルダから離れた位置で使用されることが多いので、通信モジュールは、ワイヤレス電話、無線電話、携帯電話などのワイヤレス通信装置を有していることが好ましく、必要な電話基部は収納ホルダ内に設置されることになる。
【0029】
通信ユニットおよび制御ユニットは、図12のブロック図に示される通りに以下のように作動するように設定されている。装置は、不使用時には何ヶ月も充電ユニットに取り付けたままでもよく、使用時に充電ユニットから取り外されることになる。装置がその保管位置から取り外されると、制御ユニットのセンサは、(リミットスイッチ、磁気スイッチ、動作センサ、充電装置内の電流センサ、または同様のものにより)その取り外しを検知してシステムを始動し、機能をチェックし、表示ユニットを駆動し、他の特有のウォームアップ機能を立ち上げる。第1ステップで、システムは、通信ユニットにより医療施設との電話通信を開始する。その通信は、標準電話回線、携帯電話システム、ページングシステム、無線送信などのいかなる通信媒体を使用してもよい。システムは、地域の911緊急システム、近くの病院、救急車サービスなどの中央医療施設や、装置の遠隔使用について特別に訓練を受けた医療局員がいる中央施設(これら全てを総称して医療局という)との通信を開始するように設定されてもよい。通信が開始されると、通信ユニットは装置の場所または登録番号を医療局に知らせる(この情報は、通信ユニットのコンピュータメモリに格納しておいてもよいし、GPSまたは他の同様のシステムにより決定されてもよい)。この情報は、装置の場所に緊急医療チームを直ちに派遣するのに使用される。警報動作を制御するコンピュータを必要としない簡単な実施の形態では、取り外しセンサがリミットスイッチからなり、かつ、通信モジュールが、メッセージが録音されたテープと共に収納ホルダに設置された簡単な電話ユニットを備えていてもよい。この場合、蘇生装置の取り外しに対応した中継操作では、911に電話をかけて、装置の場所などの警告情報を提供する警告メッセージの再生を行う。また、通信ユニットは、蘇生装置の状態にかかわらずその場所に緊急チームを呼び出すために、装置の使用にかかわらず傍観者により操作される得る警告ボタンを備えていてもよい。
【0030】
緊急医療チームが到着する前に、傍観者は被害者の下にボードを置き、被害者の周囲に圧縮ベルトを留めて、細動除去および/または検知センサ(またはその逆)を当てることになる(代わりに、検知センサを圧縮ベルトの内面に設置しておくこともできる)。システムは、バックル内のラッチセンサからの信号によりベルトの装着を監視する。システムは、生物学的入力を監視する。この監視には、細動除去モジュールのEKG電極パッチからのEKG信号の監視、ベルトに取り付けた電極からのEKG信号の監視、気道確保モジュールの最終呼吸CO2モニタからの信号の監視、および装置に組み込まれた他の生物学的信号センサからの信号の監視などが含まれる。システムはまた、現場に到着した緊急医療局が装置の制御をその場で行えるようにするために、制御ユニットから手動で入力された指示を監視したり、これに応答したりすることもできる。作動時において、システムは、EKG信号、血圧、最終呼吸CO2、および監視された他の生物学的パラメータを含むすべての利用可能な生物学的情報を離れた医療施設に送信する。また、システムは、バッテリ寿命、システム操作限界設定(あるいは、システムが自動操作、操作可能、またはすべての機能について操作不能のいずれに設定されているか)などの装置の設定に関する情報を送信することもでき、これにより医療局は適当な設定になっているかが分かる。
【0031】
緊急医療局は、医療施設との通信により患者の状態を診断できるとともに、医療局から通信ユニットに送信された信号により補助治療のACLS動作を許可したり、開始したり、あるいは、禁止したりすることができる。例えば、細動除去が必要であることを示すEKG状態の診断により、医療局は、傍観者による細動除去電極の手動操作を許可するように制御ユニットに作用する信号を通信ユニットに送信することができる。装置はまた、医療局からの遠隔信号により細動除去ショックを与える。装置には、自動外部細動除去器のような特別な装置を組み込むこともできる。医療局は通信システムにより他の行為を伝えて、傍観者に所定の行為を引き受けてもらうことを確実にすることができる。例えば、医療局は、心停止の原因、酸素マスクの適当な配置、気道の適切な清掃、および他の情報を確かめるように、傍観者に言葉で伝えてもよい。エピネフリン、リドカイン、ブレチリウム、またはACLSガイドラインで要求される他の薬(またはT3のような新たに提案された薬)が気道確保モジュールに入っている場合、医療局は気道に適当な薬を注入するように傍観者に指示できる。クレイマーの米国特許第5,405,362号(1995年4月11日)「対話式外部細動除去および薬物注入装置」に開示されるような自動注入器、または、骨のない注入器をもつ同様の装置が設けられている場合、医療局はそれらの注入器により適当な薬を注入するように傍観者に指示できる。測定されたEKG信号、血圧、および最終呼吸CO2に基づいて自動で操作する手段をもつ注入器が設けられている場合、医療局はシステムに信号を送ることで、医療局の遠隔制御による注入を開始したり、特別な装置の決定にしたがってその場での制御による注入を許可したり、傍観者による注入を許可したり、あるいは、システムまたは傍観者による注入を禁止したりすることができる。例えば、システムは、いかなる注入も禁止するように最初に設定されることができる。医療局は、通信ユニットにより提供された情報により心室細動であると診断したとき、適当な信号を送ってエピネフリンの注入を許可または開始することができ、また、信号を送ることでACLSガイドラインの下で要求されるまでアトロピンの注入を禁止することができる。新たに提案された薬T3は、心停止の治療として、気道を介して肺に投与可能である。同じようにして、気道への制御された注入を開始したり禁止したりすることができる。このように、圧縮、細動除去、薬物注入などのACLSにおける全ての動作は、離れた場所からの医療局の指示に基づきシステムにより達成可能であり、または、制御モジュールに設けた特別な装置により達成可能である。これらの機能のそれぞれは、医療局との通信を自動的に開始して装置の場所を医療局に知らせるシステムに組み込まれており、これにより緊急医療局がその場所に急行することができる。
【0032】
繰り返し圧縮は、ベルトを留めることによって(自動的に)開始されることになるが、傍観者が圧縮を開始させるためのスイッチを設けてもよい。システムは、図13のモータ制御ブロック図にしたがって、不活性になるまで圧縮サイクルを続けることになる。システムの始動により、制御ユニットは、バックル内の適当なセンサまたは他のセンサによってベルトの装着を監視することになる。モータ制御部57が制御ユニットから最初の圧縮信号を受信すると、モータが始動する。モータは、始動電流を繰り返し印加するのを避けてバッテリ電力を節約するために、止めたり駆動したりするよりも、連続的に駆動するのが好ましい。モータがある速度に達すると、クラッチが係合する。基準としては、クラッチは1秒ごとに0.5秒間だけ係合する。クラッチのこの周期的係合は、現在のCPRガイドラインで推奨されるように、5周期だけ繰り返し続けられ、必要に応じてひと呼吸の休止のために中断される。バッテリの過度の消耗を避けるために、モータコントローラはトルクセンサ(例えば、モータへの電流供給を検知する)を有しており、モータのトルクまたは負荷を監視する。それ以上ではさらなる圧縮が望ましくないか、または、有効でないという閾値が設定されており、クラッチが係合する0.5秒の間に閾値越えが起きた場合には、クラッチを係合解除してサイクルを続行する。システムは、被害者の排気中のCO2含有量を監視することにより、圧縮ストロークの実効を監視できる。CO2含有量が低い場合、不適当な循環を示しており、制御システムはCO2レベルが許容値になるまで(または、モータの最大トルクに達するまで)トルクリミットを増加させる。これは、システムの動作を制御するために、生物学的信号を装置で使用する別の例である。サイクル時間および期間、ひと呼吸の休止間のサイクル数、およびトルクリミットは、現在のガイドラインにしたがって設定されることができ、制御ユニットの遠隔制御能力によって、離れた医療局により変更され得る。
【0033】
図14は、蘇生装置61の全体図である。主要部は、モジュール式であり、モータボックス62、ベルトカートリッジ63及びベルト64からなる。上記モータボックス62の外部には、駆動ホイール66内にスプロケット65が設けられ、このスプロケット65は、上記ベルトカートリッジ63の受けロッド7と係合する。上記ベルトカートリッジ63は、患者の胸部の周囲に巻かれる上記ベルト64を収容している。また、上記ベルトカートリッジ63は、上記受けロッド67によって回転されるスプール68を含む。このスプール68は、ベルト64の中間点を巻き取り圧迫サイクル状態にする。コンピュータ制御システム70は、図示するように上記モータボックス62内に収容されることが好ましい。上記装置を、上記モータボックス2が上記ベルトカートリッジ63に着脱自在に取り付けられているモジュール式で提供することにより、上記ベルトカートリッジ4を、患者の下側に容易に滑らすことが可能となる。
【0034】
図15は、内部機構を含む上記ベルトカートリッジ63を詳細に示している。上記ベルトカートリッジ63のアウタ部は、保管する間ベルト64の保護に役立つものであり、左側パネル71L及び(使用時において患者側に対する)右側パネル71Rを備えたバックプレート71を有する。上記右側プレートは、保管及び運搬されるとき左側プレート上に折り畳まれる。両方のパネルは、操作時にベルト64がパネル全体に渡って摺動するとき摩擦を減少させるような低摩擦材、例えばPTFE(登録商標テフロン)からなるシート72により覆われている。ベルトカートリッジ73の左側パネル71L下側には、ハウジング73が設けられ、このハウジング73は、ベルト4の中間部分、スプール68及びスピンドル75を収容している。(使用時に患者に関する解剖学的位置に対応する)上記カートリッジの側部74は、駆動軸67と一体の駆動スプール68を収容している。駆動軸67は、モータボックス62の駆動ホイール6と係合する。上記ベルトカートリッジ63は、上記ベルト64を駆動スプール8の方向に向かわせるためのガイドスピンドル75(図16に図示)を収容している。このガイドスピンドル75は、カートリッジ75の(使用時において患者の中心線に対応する)中心部の近傍に配置されており、装置が使用されるときには背骨の近くに位置する。このガイドスピンドル75は、ベルト64の左側に対してベルトの進行方向を反転させて、これにより駆動スプール68によって左側に引張された場合、身体の左横腹の周囲を覆う部分は、右側に移動する。上記カートリッジ本体は、中線の近傍においてもヒンジ接続されている。この図において、ベルトカートリッジ3は、スピンドル75の軸近傍にヒンジ接続されている。摩擦ライナ76は、ガイドスピンドル75の領域においてベルト64上方に浮遊し、ハウジングの頂上部と底面パネル73t,73bに取り付けられており、左側ベルト部71Lと右側ベルト71Rがベルトカートリッジ3から分岐する領域において広がっている。上記ベルト64が、開放状態で示されている。右側ベルト部71Rに設けられている雄型迅速解放取付部材77Rを、左側ベルト部71Lに設けられている対応する雌型迅速解放取付部材77Lに嵌合させることにより、患者の胸郭の周囲にベルト64を着脱自在に固定することが可能となる。ベルト64の左及び右側のベルト長は、調整可能であり、操作時にバックルをちょうど患者の胸郭の中心部の上に置くことができる。もしくはベルト長は、胸部の周囲のその他の場所にバックルを配置するように調整可能である。ハンドル78は、装置の取り扱い及び運搬を便利にするために設けられている。
【0035】
図16は、上記ベルトカートリッジ63の断面図である。ハウジング61は、上面側から見た場合、比較的平坦である。(しかし、患者の下側に滑らすことができるようにくさび形状であることが好ましい。)左側パネル71Lは、ハウジング73の頂上部に位置し、右側パネル71Rは、ハウジングから伸長している。展開位置において、カートリッジは、患者の下側に横側から滑り込ますことができる程度に十分平坦である。断面図において、ガイドスピンドル75が図示されている。また、駆動スプール68のスロット9に通されているベルト64がより明確に示されている。ベルト64は、強化繊維からなる61つの長いバンドからなり、駆動スプールスロット69を貫通し、駆動スプール68から右側の迅速解放部材77Rまで伸長し、一方、駆動スプール68からガイドスピンドル15の周囲を回って駆動スプール75の方へ後向きに向きを変え、左側の迅速解放部材77Lまで伸長している。上記ベルト64は、その中間点で駆動スプール68を貫通し、ガイドスピンドル75の周囲を回る。ガイドスピンドル75の周囲では、左側ベルト部4Lがガイドスピンドル75の周りで折り畳まれられ、摩擦ライナの下側を通り、カートリッジの左側へと戻る。一方、右ベルト部64Rはガイドスピンドル75を通過し患者の右側部の周囲に到達する。摩擦ベルトライナ76は、ガイドスピンドル75とベルト64の上に浮遊し、ハウジング上に取り付けられ、患者と圧迫ベルトとの間に密着する。ベルトカートリッジ63は、ガイドスピンドル75が脊椎81に近い位置に位置して実質的に脊椎と平行であるように患者80の下側に配置される。また、迅速解放取付部材77R,77Lは、胸部の胸骨82の一般的な領域上で結び付けられる。
【0036】
使用時において、ベルトカートリッジ63は患者80の下側に滑り込まされ、左及び右の迅速解放部材77R,77Lが接続される。図17に示すように、駆動スプール68が回転すると、ベルト64の中間部分を巻き上げて胸部の周囲にベルト4を締め付ける。ベルト4によって作用される圧迫力により、CPRに必要な内部胸郭圧力が十分に引き起こされ、もしくは増加させられる。ベルト4が駆動スプール8の周りに巻上られると、患者の胸部は、図示するように十分に圧迫される。
【0037】
通常はベルトカートリッジ63を患者の下側に滑り込ますことが好ましいが、これは必ずしも必要ではない。空間的制限のために必要である場合に、バックルを用いて背面側もしくは側部側で、またはモータを用いて患者の側部側もしくは上面側で患者に装置を固定してもよい。図18に示すように、ベルトカートリッジ63は、右側ベルト部64Rと右側パネル71Rだけを患者の下側に滑り込まし、右側パネル71Rと左側パネル71Lが部分的に展開した状態で患者20に装着することが可能である。右側パネル71R及び左側パネル71Lの間にヒンジを設けることにより、装置の設置に順応性を持たせることができる。図19から22は、右側パネル71Rと左側パネル71Lの両方を患者の下側に滑り込ますとともに、モータボックス62を上向きに固定し、駆動スプール68の軸回りで回転させて、患者80に装着されたベルトカートリッジ63を示す。これらの構成は、モータボックス62をベルトカートリッジ63に接続するというモジュール特性により可能となり、救急車またはヘリコプターのような狭い空間において有効である。(いずれの回転方向への巻上操作によってもベルトを締め上げることができるが、患者と装置の上面側から見た場合時計回り方向である矢印83で示す方向に締め付けることにより、体から外側に離れるのではなく体側に向かうように、モータボックス62を回転させるように作用する作用力が装置内において生じる。モータボックス63とベルトカートリッジ63との間のあらゆる回動動作を防止するための固定ピンが設けてもよい。図に示すようなモータボックス62の構成において、ボックスの高さ(ボックスの高さは、患者の左横腹と駆動スプールとの間の距離未満である。)を制限しておけば、固定ピンが何らかの理由のために係合されていない場合にも患者との接触を防止することができる。駆動ベルトの回転を、反時計回り方向に反転させ、作用力によりモータボックス63を外側に回転させることも可能である。この場合、固定ピンのような固定機構が、装置の動作から操作者を守るのに役立つ。)
【0038】
パネルの向きにかかわらず、逆回転するスピンドル75は、圧迫を確実にするようにベルト64の搬送方向を適切な向きに向かわせる。右側ベルト部64Rと左側ベルト部64Lが患者の胸部の下側で分岐する場所にスピンドル75を設けることにより、またこのスピンドル75を身体に極めて近接して配置することにより、ベルト64を胸郭周囲のほぼ全ての点において接触させることが可能となる。スピンドル75は、ベルト64の左側部分64Lの移動方向を、右から左への横方向から、左から右への横方向へと向きに反転する位置に位置している。一方、ベルト64の右部分4Rは、駆動スプールによって引かれるとスピンドル手段を通過して常に患者に関して右から左へと移動する。これにより、胸部と係合しているベルト64は、胸部の反対側の側部を中央点の近くの共通点まで常に引張する。図16,17において、両側の側部は、患者の解剖学的側部に対応し、中央箇所は脊椎に対応する。図18において、側部は脊椎と胴部の腹側左側部に対応し、中央点は胸部の左側部に対応する。さらに、身体の中央に位置する1つのスピンドル15を使用するとともに、身体の側部に配置された駆動スプールを使用することにより、モータアセンブリの簡単な構成と着脱自在もしくは組立式の実施例を可能とし、また全体の装置にモータボックスを取り付ける前に患者の周りにベルトを配置することを可能とする。
【0039】
図20は、圧迫ベルト4の変形例の実施形態を示す。この圧迫ベルト64は、設けられたモータ速度もしくは伝動機構に対する巻上速度を減少させる、または設けられたモータ速度に対する圧迫力を62倍にさせる。圧迫ベルト64は、ベルト材料からなるループ84を含む。このループは、迅速解放取付部材86内のスピンドル85の周囲を回り、身体を回りガイドスピンドル75に到達し、ガイドスピンドルを回りもしくは通過し、駆動スプール68の中へと続く複雑な経路を通されている。左ベルト部の外側層87Lと右ベルト部の外側層87Rは、左ベルト部の内側層88Lと右ベルト部の内側層88Rとともに連続的なループを形成する。このループは、固定スピンドルから内側に進み、胸部の周囲を反対側の駆動スプールまで内側に進み、反対側の駆動スピンドルから外側に進み、胸部に渡って下方に進み、ガイドスピンドルを通過し駆動スプールに至り、駆動スプールスロットを介してガイドスピンドルの下側後方に進み、ガイドスピンドルの周囲を逆向きに進み胸部後方に渡って上向きに進み固定スピンドルまで進む。このようにこの62つの層ベルトの内側及び外側層両方は、駆動スプールに向かって引張され、身体に作用する圧迫力が生じる。これにより、ベルトが患者に対して直接的に作用するのと違い互いに対して作用するので摩擦を低減するのに役立つ。さらに、低トルク、高速のモータにより必要な力を発生させることが可能となる。
【0040】
図21において、上記2層ベルトシステムは、内側ベルト部を適切な位置に固定し、身体の表面に沿って移動することを防止する構造により修正が加えられている。これにより、身体と接触するベルトの主要部分が身体に対して比較的摺動しないという利点がある。ベルト内側層をループ経路に関して適切な場所に固定するために、固定バー89が、ハウジング73の内側にガイドスピンドル75と駆動スプール68と平行に固定されている。内側ループは、固定バーに対して固定され締められることが好ましい。もしくは固定バーに渡って摺動的に輪をつくることが好ましい(さらに固定バーは、スピンドルのように回転可能であることが好ましい。)。左ベルト部の外側層27Lと右ベルト部の外側層27Rは、駆動スプール8を通されている。取り付けられた固定バーにより、駆動スプールが回転するとベルトの外側層を巻上げ、これらの外側層は、左ベルト部の内側層28Lと右ベルト部の内側層28Rの上を摺動するように作用される。しかし、内側層は、患者の表面に対して摺動しない。(ベルトに作用する力により自発的にわずかに生じる、患者の周囲においてベルトがセンタリングする短い数サイクルの間を除く。)
【0041】
図22において、2層ベルトシステムは、内側ベルト部を適切な場所に固定せずもしくはからだの表面に沿っての移動を防止しないような構造により修正が加えられている。しかし、代わりにベルトの内側層に作用する第2の駆動スプールが設けられている。ベルトの内側層をループ経路に対して駆動するために、第2駆動スプール90が、ガイドスピンドル75及び駆動スプール68と平行になるようにハウジング73内に取り付けられている。この第2駆動スプールは、ハウジング内に連動される伝動機構を介してもしくはハウジング及びモータボックス内の適当な連動機構を介して駆動される第2駆動ソケットから突出する第62受けロッドを介して、モータによって駆動される。内側ループは、第62駆動スプールに固定され締め付けられることが好ましい。もしくは第62駆動スプールスロット91を通されることが好ましい。左側ベルト部の外側層87Lと右側ベルト部の外側層87Rは、第61駆動スプール68を通されている。第62駆動スプールにより、第61駆動スプール68が回転するとベルトの外側層を巻上げ、これらの外側層は、左側ベルト部の内側層88Lと右側ベルト部の内側層88Rの上を摺動するように作用される。一方、第2駆動スプールは、内側層を巻上げない。
【0042】
圧迫ベルトはいくつかの形式で提供してもよい。それは、パラシュート生地あるいはタイベック(tyvek)のような幾つかのタフな材料で作られていることが好ましい。図23で示される最も基本的な形式において、ベルト64は固定端92Lおよび92R、および、左右ベルト部64L,101Rに対応し、スプール係合用中央部103を備えた素材からなるプレーンなバンドである。我々は、ドライブ・スプール中のベルトを係合する便利なメカニズムとして、スプール・スロットを通っているベルトと協同してスプール・スロットを使用する一方、ベルトはドライブ・スプールにあらゆる方法で固定してもよい。図11において、圧迫ベルトは、ドライブ・スプールを通っているケーブル104に結合されている左右ベルト部64L,101Rからなる別個の62片で提供される。この構成は極めて短いドライブ・スプールを許容し、図23の全巾圧迫バンドに内在するハウジング内の摩擦を除去できる。固定端92Lおよび92Rは、他の迅速なリリース・メカニズムの代わりとして使用できるフックアンドループ固定要素95で取り付けられる。操作中のベルトの緩めおよび締め上げの長さを提供するため、スプール近傍のベルトのスケール96が中央部33に係合するように、ベルトあるいはケーブルは線形エンコーダスケールの追加で修正してもよい。対応するスキャナあるいはリーダは、エンコーダスケールの近くに置かれたカートリッジ内、あるいは、モータボックス上にインストールしてもよい。
【0043】
図25は、モータボックス内におけるモータおよびクラッチの配置を図示する。モータボックスの外部には、ハウジング101、および、システムによって測定されたあらゆるパラメーターの表示に便利なディスプレイスクリーン102を備えたコンピューター・モジュール10がある。モータ103は、トルクを引き出すのに必要なベルトを稼働でき、典型的な小さなバッテリーで操作されるモータである。モータ軸104は、モータがエネルギーを与えられない場合(あるいは逆の負荷がギアーボックス出力軸に負荷される場合)、モータ空回りを制御する減速ギヤおよびカム・ブレーキを有するブレーキ45に同一軸心上に直接並べられている。ギアーボックス出力ロータ106は、入力歯車109に接続したチェーン108および歯車107に、そして、これによってクラッチ111の伝達ロータ110に接続している。クラッチ111は、入力歯車109が出力ホィール52に噛み合うか、そして、入力ホイールに入力される回転が出力ホイールに伝達されるかどうかを制御する。(図32に基づいて以下で説明するように、我々がスピンドルブレーキと呼ぶ第2ブレーキ113が、いくつかの実施形態においてシステムを制御する。)出力ホイール112は、チェーン114、駆動ホイール66、および、受けロッド67を介して駆動スプール68に接続されている。駆動ホイール66は、駆動ロッド67に嵌合して係合する大きさの形に作られている受けソケット65(駆動ロッドと一致する単純な六角形あるいは八角形のスプロケットで十分である)を受け入れている。我々はシステムの中でカム・ブレーキとしてラップ・スプリングブレーキ(Warner Electricによって販売されているMAC 45)を使用する一方、あらゆる形式のブレーキを使用できる。ラップ・スプリングブレーキは、電源を切られた時に軸の空回りを許すという長所を持ち、エネルギーを与えられた時だけに保持される。ラップ・スプリングブレーキはモータと無関係に操作してもよい。我々がシステムを通じて力を伝達するためにチェーンを使用する一方、ベルト、ギヤーあるいは他のメカニズムを使用してもよい。
【0044】
図26は、モータ箱の内のモータおよびクラッチの配置を図示する。モータボックスの外部には、トルクを引き出すのに必要なベルトを働かせることができる、典型的な小さなバッテリーで操作されるモータであるモータ103を保持するハウジング101を有している。モータ軸104は、減速ギヤおよびカムを有するブレーキ105に同一軸心上に直接並べられている。ギアーボックス出力ロータ106は、ブレーキをかけるため、駆動ホイール66および受けロッド7に直接、順番に接続する出力ホイール107およびチェーン108に接続している。駆動スプール68はハウジング101内に配置されている。駆動ホィールの反対側の駆動スプールの端部で、ブレーキ115は駆動スプールに直接接続されている。ベルト64は駆動スプール・スロット69から通されている。モータボックスにこすれることからベルトを保護するため、長い開口58を備えたシールド57は、開口が駆動スプール上に位置し、ベルトが開口を介して駆動スプールスロット内に通り、ハウジングから戻すことを許容するようにハウジングに固定されている。ハウジングの下、ハウジングの底のチャンネル内にスライド可能に配置され、プッシュ板130がハウジング対して前後にスライド可能に位置決めされている。ベルト右部64は、プッシュ板の右チップ132に噛み合いあるいは係合するポケット71に取り付けられる。プッシュ板の右チップはポケット内に適合する大きさの形に作られている。この適合メカニズムにより、ベルトをプッシュ板上で滑らせることができ、プッシュ板の左端のハンドル133で、右ベルト部と一緒にプッシュ板が患者の下を押すことができる。ベルトは、ハウジング内あるいはハウジング上に設けたエンコーダ・スキャナで読むことができるエンコーダスケール96を有している。使用時、ベルト右部は、プッシュ板に固定し、かつ、患者の下に前記プッシュ板を滑らすことによって患者の下に滑り込む。その後、モータボックスは、患者(ベルトは調節するために駆動スプール・スロットを通って滑り込む)の周囲の所望の位置に位置決めできる。その後、固定ベルトが患者の胸を囲むようにベルトの右側はベルト左部に接続できる。図25および26のいずれにおいても、モータは、クラッチおよび駆動スプールの隣り合う位置に設置されている。モータおよびローラーの並設配置で、モータは患者の傍に配置でき、そして、患者の下、あるいは、肩あるいは腰に干渉する位置に配置する必要はない。さらに、これは、モータとローラーとの直列関係と比較し、装置のよりコンパクトな収納配置を認める。バッテリーはボックス内に配置され、あるいは、スペースが許せばボックスに付けられる。
【0045】
操作中に、シールドが胸(シールドと胸との間に挿入された移動するベルトで)に接するまで、駆動スプールおよびベルトの動きは胸の方に装置を引き寄せる。また、シールドは、モータボックスのあらゆるラフな移動から患者を保護し、回転駆動スプールと患者の皮膚との間の最小距離の維持を助け、ベルトの両側がハウジング内に引かれるので、患者あるいは患者の衣類の巻き込みを回避するのに役立つ。図27で図示されているように、シールド117はさらに短い距離で分離されている2つ長い開口134を有していてもよい。この実施形態のシールドで、ベルトの片側は、一方の開口を通り、駆動スプール・スロット内に挿入され、さらに、ベルトの他方の片側は駆動スプール・スロットから、そして、シールドの他の開口を介して外側に出ている。示されているシールドはアーチ形の横断面(それがインストールされる身体に比例し)を有している。このアーチ形は、ボックスとベルトとの間で十分な巾のシールドが延在していると同時に、使用中の床にモータボックスを置くことを可能にする。シールドは、ベルトが容易に滑ることを可能にするプラスチック、ポリエチレン、PTFEあるいは他のタフな材料で作られている。しかしながら、モータボックスは、患者の胸の周囲のいかなる場所にも置いてもよい。
【0046】
システムコントローラーとして動作するコンピューター・モジュールはボックス内あるいはボックスに取り付けられ、全システム(血圧、血液酸素、エンドタイドル(end tidal)CO2、体重、胸周囲などがパラメーターであり、このパラメーターは、システムによって測定でき、さらに、圧迫割合およびトルクのしきい値、あるいは、ベルトの締め上げおよび緩め制限を調整するため、コントロールシステム内に組み込むことができる)に含まれている生物学的かつ物理的なパラメーター・センサーと同様、操作可能にモータ、カム・ブレーキ、クラッチ、エンコーダおよび他の操作部品に接続される。さらに、我々の先行出願第08/922,723号に図示されているように、コンピューター・モジュールは、ディスプレイおよび遠隔通信、センサー・モニタリングおよびフィードバック・モニタリングのような様々な付随的な作業を扱うようにプログラムできる。
【0047】
コンピューターは、プログラムされ(ソフトウェアまたはファームウェアまたは他の方法で)、繰り返してモータを回すように操作され、駆動スプールに圧迫ベルトを巻き付けるためにクラッチを開放し(これによって、患者の胸を圧迫し)、ベルトを開放することを許す駆動スプールをリリースし(これによって、ベルトおよび患者の胸を広げることを可能にする)、各サイクルの時間中にロックされ、あるいは、ブレーキがかけられた状態で駆動スプールを保持する。コンピューターは、トルク・センサーあるいはベルト・エンコーダのような様々なセンサーからの入力をモニターするようにプログラムされ、例えば、圧迫ストロークを停止し、あるいは、トルク限界かベルト取り分範囲に応じてクラッチ(あるいはブレーキ)を滑らせることにより、検知されたこれらのパラメーターに応じてシステムの操作を調節する。以下で示されるように、モータボックスコンポーネントの操作は、高い胸郭内の圧力の時間を延長する圧迫方法を保持し、そして、圧搾するために調整してもよい。システムは、圧し込んで、および、より迅速な圧迫サイクルおよびより良い波形のための迅速なリリース方法、ならびに、ある状態のフロー特性で操作してもよい。モータボックスコンポーネントの操作は、ベルトの過去の圧迫しきい値範囲あるいは緩和範囲を移動させるための時間およびバッテリーパワーの浪費を回避するため、制限された弛緩および圧迫のために調整してもよい。コンピューターは、ベルト圧迫の上方しきい値を決定するために検知された2以上のパラメーターをモニターするようにプログラムされていることが好ましい。トルク・センサーによって測定されるモーター・トルク、および、ベルト・エンコーダによって決定される引き出されるベルト長さをモニターすることにより、システムは余分な制限パラメーターでベルト取り分を制限できる。システムに2つの制限パラメーターを適用することによって提供される余剰は、システムがベルトの締め上げの停止によってしきい値を検知せずに応答しない一方、単一の圧迫パラメーターが安全しきい値を超える場合に、過剰圧迫を回避する。
【0048】
圧迫ベルトの状態に関してモータ・コントローラーにフィードバックさせるように、角光学エンコーダはシステムのあらゆる回転部分に設置してもよい。(エンコーダ・システムは光学スキャナに接続した光学スケール、磁気あるいは誘導エンコーダに接続した磁気あるいは誘導スケール、回転電位差計あるいは利用可能ないくつかのエンコーダ・システムのうちのいずれか1つであってもよい。)エンコーダ116は、例えば、第2ブレーキ113(図25中)に取り付けられ、かつ、システム・コントローラーにモータ軸動作の表示を与える。さらに、エンコーダは、ドライブ・ソケット65あるいは駆動歯車66、モータ43および/またはモータ軸104に配置してもよい。システムはトルク・センサー(例えば、モータに検出電流を供給)を有しており、モータ上のトルクか負荷をモニターする。いずれか一方あるいは両方のパラメーターのため、しきい値が、更なる圧迫が要求されないか、有用ではない以上に設定され、さらに、これが胸の圧迫中に生じる場合、クラッチが外される。ベルト・エンコーダは、ベルトの取り分を追跡し、ドライブ・ベルトに巻かれるベルトの長さを制限するため、コントロールシステムに使用される。
【0049】
これらの実施形態に示すように、駆動スプールは蘇生のための圧迫を達成するため、駆動スプールのいくつかの回転が可能で(かつ一般に必要)であるような小径を有する。駆動スプール径は0.5 〜2.5 cmの範囲が好適である。したがって、ベルト長をわずか12 cm変えるには2.5 cm径スプールを1.5回転まで回転させる必要があり、またベルト長をわずか12 cm変えるには0.5 cm径スプールを8回転まで回転させる必要がある。スプールの複数回転は、システムフィードバックまたは生理的フィードバックパラメータの検知後のモータオーバーランの制限、および続いて起こるモータの停止、ブレーキの係合、クラッチの切断等におけるシステム応答後のモータオーバーランの制限に役立つ結果、モータのオーバーランが少なくなり、そのためベルトのオーバーランも少なくなる。シャフトの最適な大きさ、およびシステム内のすべてのシャフトの大きさは、他の構成要素の好みに応じて変化を添え、またシステムに使用される角ばったエンコーダは、それが取り付けられるシャフトで有効な特定の結合構造に従って較正してもよい。
【0050】
エンコーダを使用する心臓圧迫装置のために胸部圧迫(周囲の変化)の量をコントロールするため、コントロールシステムは、ベルト取り分のためのベースラインまたはゼロポイントを設定しなければならない。ベルトが前記ポイントに余裕がないとき、幾分かの緩みが取り上げられた場合、モータは、胸を圧迫する負荷より下で回転し続けるためにより多くの電流を必要とするであろう。モータ電流ドロー(モータしきい値電流ドロー)におけるこの予想された急激な増加は、トルク・センサー(アンプ・メーター、分圧器回路等)によって測定される。電流または電圧のこのスパイクは、ベルトが患者にきつく引っ張られたという信号として得られ、そして、引き出されたベルトの長さは、適切な出発点であり、そして、この点でのエンコーダ測定はシステム(あるいは、ベルト取り分の出発点として得られた)内でゼロの位置に合わされる。その後、エンコーダは、この仮に締められた位置からベルトの長さの変化を決定するシステムに使用される情報を提供する。長さの変化をモニターしてコントロールする能力は、コントローラーが、圧迫サイクル中のベルト取り分の長さを制限することにより、患者の体積の変化および患者の突出した圧力の量をコントロールすることを可能にする。
【0051】
予め締められたベルトの位置の確認を容易にするため、モータに応用される電圧は予め締め付ける間制限してもよい。それによってモータは緩慢になり、モータのトルクは増し、より確認しやすい高い電流スパイク、すなわち身体の抵抗に接した瞬間に起こる電流増加が得られる。予め締められるベルトの位置を決定するため、システムのあるポイントにおいて適用されるモータの電流またはトルクを分析する別の方法として、ベルト取上げの速度は、いくつかの実施形態で説明した位置エンコーダを介して、配置または巻き上げられたベルトの長さをベルトエンコーダから読み取ることによって、あるいは回転している構成要素(これは簡単な倍数でベルト長に関係している)の1つの位置を読み取ることによって、監視することができる。緩みを取り上げる間、ベルト長の急激な変化またはある速度以下へ減少がないか、ベルト長の変化の速度 (Δl/Δt) を監視・分析してもよい。この変化は使用する特定の駆動トレインに応じて変動するであろう。
【0052】
最適圧迫のためのベルト取り分の予想長さは1〜6インチである。しかしながら、やせた個人に対する6インチの動程は、胸の周囲における過度の変化を起こし、装置から傷の危険を与える。この問題を克服するため、システムは、前述のように教えられるようになるのに要求されるベルト動程の量を測定することにより、要求されるベルト長さの必要な変化を決定する。ベルトの初期の長さを知り、かつ、教えられるようになるのに要求される量から引き算をすることは、患者のサイズ(胸周囲)の基準を提供する。その後、システムは、患者に適用される体積および圧力の変化を制限するために使用でき、インストールされている各患者の周囲において許容できる変化を予め決められた制限あるいはしきい値を適用する。より大きな患者と比較して小さな患者が周囲において少ない変化を受けるように、しきい値は患者の初期周囲とともに変化してもよい。エンコーダは、動程の状態について一定のフィードバック、したがって、あらゆる与えられた時の患者の周囲を提供する。ベルト取り分範囲がしきい値(体積の変化)に達すると、システム・コントローラーが圧迫ストロークを終了し、コントローラーにプログラムされた圧迫/減圧摂生法によって求められる支持あるいはリリースの次の期間に連続する。さらに、エンコーダは、それが完全にリリースしないように、システムがベルトのリリースを制限することを可能にする。あらかじめ締まる第1取り分で確立されるゼロポイント、あるいは、初期周囲のパーセンテージあるいは患者の初期周囲によって引き起こされるスライディングスケールを得ることにより、このリリース・ポイントを決定できる。
【0053】
また、それが患者に対してきつくベルトを締めてもよい。ベルトを締めることをオペレーターに要求することは、患者の初期周囲を決定する方法を提供する。再び、エンコーダはベルトの動程量を決定でき、したがって、初期周囲を与えた患者の周囲の変化量をモニターし、制限するのに使用できる。
【0054】
いくつかの圧迫およびリリース・パターンは、CPR圧迫の有効性を押し上げるために使用してもよい。典型的なCPR圧迫は、圧迫力の完全なリリースによって後続する単なる圧迫を構成するサイクルで、毎分60−80サイクルで達成される。これは既知の機械的および空気式胸圧迫装置と同様にCPRマニュアルのための場合である。我々の新システムで、20−70サイクル毎分の範囲中の圧迫サイクルは有効であり、また、システムは120サイクル毎分以上と同等な高さで操作してもよい。この種の圧迫サイクルは図28の中で示されるようなモータおよびクラッチ操作を備えたモータボックスで実行できる。システムが図28のタイミング・テーブルに従って作動している場合、モータは常にオンである。また、クラッチは係合(オン)とリリース(オフ)との間で回帰する。時間ピリオドT1、T3、T5、およびT7の何回かの圧迫後に、オペレーターが患者に換気あるいは人工呼吸を提供できる間、あるいは、そうでなければ、患者の肺に酸素処理された空気が流れる間、呼吸停止を提供するために僅かな時間(数秒)を認めるように幾つかの時間ピリオドの間、システムが休止する(それらはインストールしてもよいが、図25で図示されたブレーキはこの実施形態では使用されない)クラッチ係合時間の長さは0−2000ミリセカンドの範囲の中でコントロールされる。また、クラッチ係合時間の間はは0−2000ミリセカンド(勿論、医学的見地によって命令され、圧迫の最適の割合ついてのより多く学習によって変えても良い)範囲の中でコントロールされる。
【0055】
図28aのタイミングチャートは、図28のタイミング表により操作されたときの圧迫ベルトにより引き起こされる胸郭内圧力変化を示す。胸部圧迫は状態線119によって表示されている。モータは、モータ状態線120に示すように、常にオンする。クラッチは、図の下部の矩形波のクラッチ状態線121により、接続(engage)あるいは「オン」する。クラッチを接続する時間毎に、ベルトが患者の回りに締め付けられる結果、圧迫状態線122で示すように、ベルト張力と胸郭内圧力に高圧スパイク(high pressure spike)が生じる。パルスp1、p2、p3、p4及びp5は、パルスp3を除いて、振幅及び継続時間が類似している。パルスp3は、この例では、如何にトルクリミット(torque limit)フィードバックが作動して過剰なベルト圧迫を防止するかを示すために、継続時間が制限されている。(トルクリミットは、制限パラメータとして、ベルト動程(belt travel)または他のパラメータと置き換えてもよい。)トルクリミットを検出することに応答するシステムの例として、パルスp3はモータに設置されたトルクリミットに迅速に達することを示している。トルクリミットに達すると、クラッチを切断(disengage)して、患者への傷害とバッテリーの過剰な消耗を防止する(過剰圧迫はバッテリーを急速に確実に消耗する)。クラッチをパルスp3の下で切断した後、ベルト張力と胸郭内圧力は急速に降下し、胸郭内圧力はサイクルの小部分の間だけ増加することに注意すべきである。オーバートルク状態に基づいてクラッチを切断した後、システムは繰り返し圧迫のパターンに復帰する。パルスp4は次に予定されている圧迫期間T7で生じ、その後、クラッチを切断状態に維持することにより、T8、T9及びT10にわたる小休止期間(respiration pause)が生成される。この小休止期間の後、パルスp5は次のセットの圧迫の開始を表す。システムは、オペレータによって中断されるまで、小休止期間に続いて、圧迫のセットを繰り返し実行する。
【0056】
図29は、モータを逆転させることによってベルト圧迫を逆にするシステムにおけるモータ、クラッチ及びカムブレーキのタイミング表を示す。それはまた、圧迫期間の血流力学的効果を向上するための圧迫保持期間と、弛緩期間におけるベルト繰りだし(belt pay−out)を、ベルトが胸部の上で依然として緊張していて過剰に緩んでいない点に制限する弛緩保持とをさらに備える。表に示すように、モータはまず正転方向にのみ駆動して圧迫ベルトを締め付け、短期間の間ターンオフし、次に逆転方向に駆動してターンオフして、正転、オフ、逆転、オフのサイクルを通して動作し続ける。このモータ状態のサイクルと並行して、カムブレーキが作動(engage)していて、モータ駆動シャフトを適所にロックし、これにより駆動ローラを適所にロックし、圧迫ベルトの移動を防止する。ブレーキ状態線122はブレーキ105の状態を示す。あるいは、モータが圧迫ベルトを閾値または時間限度まで締め付けると、モータがターンオフし、カムブレーキが駆動して圧迫ベルトが緩むのを防止する。これにより、患者の胸部の弛緩が有効に防止され、T2、T6及びT10の保持期間中に、より高い胸郭内圧力が維持される。次の圧迫サイクルが開始される前に、モータが逆転し、カムブレーキが非作動(disengage)になり、これによりベルトをより緩い長さに駆動することをシステムに許容し、患者の胸部を弛緩させる。所定のベルト長さに対応する低閾値まで弛緩すると、カムブレーキが作動してスピンドルを停止し、ベルトを予め締め付けられた長さに保持する。クラッチは全ての時間において接続している(このクラッチは、システムに他の圧迫管理(compression regimen)が望まれないなら、完全に削除してもよい)。(この実施形態は、異なる方向に駆動する2つのモータを組み込んで、クラッチを介してスピンドルに接続してもよい。)
【0057】
図29aは、図29のタイミング表により操作されたときの圧迫ベルトにより引き起こされる胸郭内圧力変化を示す。クラッチ状態線121によって示すように、クラッチは、もしあれば、常にオンしている。カムブレーキは、図の下部の矩形波により、作動(engage)あるいは「オン」する。モータは、モータ状態線により、オン、オフ、または逆転する。モータが正転方向にターンオンする時間毎に、ベルトが患者の回りに締め付けられる結果、圧力プロット線に示すようにベルト張力と胸郭内圧力に高圧スパイクが生じる。高閾値限界がシステムにより検出され、モータが非駆動(de-energized)になる時間毎に、カムブレーキが作動しさらなるベルトの移動を防止する。この結果、図に示す保持期間(例えば時間期間T2)中、高維持圧力あるいは「保持圧力」となる。保持期間の終りに、モータが逆転し、ベルトを弛緩状態に駆動し、次に非駆動になる。モータが逆転運転の期間の後にターンオフすると、カムブレーキが作動して圧迫ベルトの過剰な緩みを防止する(これは時間とバッテリーパワーを浪費する)。サイクルが再開されるとカムブレーキが非作動(disengage)になり、モータが駆動(energized)して他の圧迫を開始する。パルスp1、p2は振幅及び継続時間が類似している。パルスp3は、この例では、如何にトルクリミットフィードバックが作動して過剰なベルト圧迫を防止するかを示すために、継続時間が制限されている。パルスp3はモータに設置されたトルクリミット(またはベルトに設置されたテイクアップリミット)に迅速に達し、モータが停止し、カムブレーキが作動して、患者への傷害とバッテリーの過剰な消耗を防止する。モータが停止し、カムブレーキがパルスp3の下で作動した後、ベルト張力と胸郭内圧力は他のパルスと同じ期間の間維持され、胸郭内圧力はあったとしても高圧力保持期間中は僅かに減少されることに、注意すべきである。パルスP3の後、ベルト張力が完全に弛むように許容される小休止期間が開始されてもよい。
【0058】
図30は、各サイクルの間、ベルト圧迫を完全に弛緩させるシステムにおけるモータ、クラッチ及びカムブレーキのタイミング表を示す。表に示すように、モータは正転方向にのみ駆動して圧迫ベルトを締め付け、短期間の間ターンオフし、オンオフサイクルを通して動作し続ける。T1の第1時間期間では、モータをオンしてクラッチを接続し、これにより圧迫ベルトを患者の回りに締め付ける。次のT2の時間期間では、モータをターンオフし、カムブレーキを作動して(クラッチは依然として接続している)圧迫ベルトを締付状態にロックする。次の時間期間T3で、クラッチを切断し、ブレーキをオフして、ベルトを緩ませて患者の胸部の自然弛緩により拡張させる。次の期間t4では、モータを駆動して増速(come up to speed)する一方、クラッチを切断し、カムブレーキをオフする。モータは、この時間期間では、圧迫ベルトに影響を与えることなく増速する。次の時間期間では、サイクルはそれ自身で繰り返す。これにより、モータが圧迫ベルトを閾値または時間限度まで締め付けると、モータがターンオフし、カムブレーキが作動して圧迫ベルトが緩むのを防止する。これにより、患者の胸部の弛緩が有効に防止され、高い胸郭内圧力が維持される。次の圧迫サイクルが開始される前に、クラッチを切断し、胸部を弛緩させ、モータを負荷がかかる前に増速させる。これにより、さらに迅速なベルト圧迫が提供され、胸郭内圧力が鋭敏に増加する。
【0059】
図30aは、図30のタイミング表により操作されたときの圧迫ベルトにより引き起こされる胸郭内圧力変化を示す。クラッチは、クラッチ状態線121とモータ状態線120により、モータが増速した後にのみターンオンする。これは、クラッチを接続する前の62つの時間期間でモータが駆動することを示している。カムブレーキは、ブレーキ状態線122の下部に示すように、作動あるいは「オン」する。クラッチを接続する時間毎に、ベルトが患者の回りに締め付けられる結果、圧力プロット線に示すようにベルト張力と胸郭内圧力に高圧スパイクが鋭敏に増加する。モータが非駆動になる時間毎に、カムブレーキを作動し、クラッチを接続したままとなり、ベルトがさらに移動するのを防止し、クラッチは弛緩を防止する。この結果、図に示す保持期間中、高維持圧力あるいは「保持圧力」となる。保持期間の終りに、クラッチを切断し、ベルトを弛緩状態に拡張させる。サイクルの終りには、(クラッチを切断することで)カムブレーキが非作動となり、次の圧迫サイクルの開始前にモータを増速させる。次のサイクルは、クラッチを接続したときに開始される。この動作により、各圧力パルスp1、p2及びp3の始まりにおける急峻な曲線で示すように、各サイクルの発端で鋭敏な圧力増加が生成される。再度、これらの圧力パルスは、パルスp2を除いて、大きさ及び期間が全て類似している。パルスp2は、如何にしてトルクリミットフィードバックが作動して過剰なベルト圧迫を防止するかを示すために、この例では継続時間が限定されている。パルスp2はモータに設置されたトルクリミットに迅速に達し、モータが停止し、カムブレーキが作動して、患者への傷害とバッテリーの過剰な消耗を防止する。モータが停止し、カムブレーキがパルスp2の下で作動した後、ベルト張力と胸郭内圧力は他のパルスと同じ期間の間維持され、胸郭内圧力は保持期間中僅かに減少されることに、注意すべきである。図30aによるシステムの動作は、ベルト圧力を高モータトルクによって測定される閾値に制限するように制御される(または、これに対応して、ベルトひずみまたはベルト長さ)。
【0060】
図31は、各サイクルの間、ベルト圧迫を完全に弛緩させないシステムにおけるモータ、クラッチ及びカムブレーキのタイミング表を示す。この代わり、システムは、モータトルク、ベルトひずみ、またはベルト長さの低閾値に、ベルト弛緩を制限する。表に示すように、モータは正転方向にのみ駆動して圧迫ベルトを締め付け、短期間の間ターンオフし、オンオフサイクルを通して動作し続ける。T1の第1時間期間では、モータをオンしてクラッチを接続し、これにより圧迫ベルトを患者の回りに締め付ける。次のT2の時間期間では、モータがターンオフし、カムブレーキが作動して(クラッチは依然として接続している)圧迫ベルトを締付状態にロックする。次の時間期間T3で、クラッチを切断し、ブレーキをオフして、ベルトを緩ませて患者の胸部の自然弛緩により拡張させる。駆動スプールは回転し、患者の胸部の弛緩に順応するのに必要なベルトの長さを繰り出す。次の期間t4では、モータは依然としてオフであり、クラッチを接続し(カムブレーキは依然としてオンである)、ベルトが完全に緩むのを防止する。T5でサイクルを開始するために、モータを始動し、カムブレーキをターンオフし、他の圧迫サイクルを開始する。
【0061】
図31aは、図31によるシステムの動作に対応する胸郭内圧力とベルトひずみを示す。モータ状態線120とブレーキ状態線122は、モータが圧迫ベルトを高トルク閾値または時間限度まで締め付けると、圧迫ベルトが緩むのを防止するために、モータがターンオフし、カムブレーキが作動することを示している。これにより、ベルトの取り上げ(take up)中に達する高圧は、T2で開始する保持期間中維持される。クラッチ(カムブレーキとは連結していない)の解放によりベルトがT3で緩むと、胸郭内圧力は圧力線で示すように降下する。T4で、圧力ベルトがある程度緩んではいるが全体的には弛まなくなった後、クラッチを接続して(カムブレーキを再連結し)、ベルトをある最小レベルのベルト圧力に保持する。これにより、患者の胸部の全体弛緩(total relaxation)が有効に防止され、圧迫サイクルの間でも僅かに上昇した胸郭内圧力が維持される。低レベル圧迫の期間がサイクルに生成される。いくつかのサイクル(4または5のサイクル)の後、小休止期間が圧迫パターンに組み入れられ、その間、クラッチがオフし、カムブレーキがオフしてベルトと患者の胸部の完全な弛緩を許容する。(このシステムは、上方閾値でなく低閾値で有効に動作させてもよく、これにより単一の低閾値システムが生成される。)モータは、次の圧迫サイクルが開始する前に増速させるため、時間期間T11とT12に示すように、圧迫期間で駆動してもよい。
【0062】
図32は、モータ、クラッチ及び第2ブレーキ113あるいは駆動ホィールまたはスピンドル自体の上にあるブレーキを使用するシステムと組み合わせて使用するためのタイミング表を示す。ブレーキ105は(モータボックスには設置されているが)この実施形態のシステムでは使用されない。モータ状態線120に示すように、モータは正転方向にのみ駆動して圧迫ベルトを締め付け、常にオンしている。T1の第1時間期間では、モータをオンしてクラッチを接続し、れにより圧迫ベルトを患者の回りに締め付ける。次の時間期間t2では、モータはオンするが、クラッチを切断し、ブレーキ113を作動して圧迫ベルトを締付状態にロックする。次の時間期間T3で、クラッチを切断し、ブレーキをオフして、ベルトを緩ませて患者の胸部の自然弛緩(natural relaxation)により拡張させる。駆動スプールは回転し、患者の胸部の弛緩に順応するのに必要なベルトの長さを繰り出す。次の期間t4では、モータは依然としてオンであり、クラッチを切断するが、スピンドルブレーキを効かせてベルトをロックし、ベルトが完全に緩むのを防止する(前述のシステムと対照すると、スピンドルブレーキはクラッチの下流であるため、スピンドルブレーキの動作はクラッチを切断したときには有効である)。T5で次のサイクルを開始するため、モータを始動し、スピンドルブレーキをターンオフし、クラッチを接続して、他の圧迫サイクルを開始する。パルスp3の間、T11とT12の時間期間ではクラッチを接続する一方、システムはトルク閾値限度に達しない。これにより、オーバーシュート圧迫期間が提供され、それはトルクリミット圧迫期間のなかに挿入することができる。
【0063】
図32aは、図32によるシステムの動作に対応する胸郭内圧力とベルトひずみを示す。モータ状態線120とブレーキ状態線122は、モータが圧迫ベルトを高トルク閾値または時間限度まで締め付けると、圧迫ベルトが緩むのを防止するために、スピンドルブレーキを作動し(スピンドルブレーキ状態線124による)、クラッチを切断することを示している。これにより、ベルトの取り上げ中に達する高圧は、T2で開始する保持期間中維持される。スピンドルブレーキの解放によりベルトがT3で緩むと、胸郭内圧力は圧力線で示すように降下する。T4で、圧力ベルトがある程度緩んではいるが全体的には弛まなくなった後、スピンドルブレーキが作動してベルトをある最小レベルのベルト圧力に保持する。これにより、患者の胸部の全体弛緩が有効に防止され、圧迫サイクルの間でも僅かに上昇した胸郭内圧力が維持される。低レベル圧迫の期間がそのサイクル内で生成される。P3では、上方閾値に達していないが、圧迫に対して許容された最大時間に達している。そのために、システムが時間限度に基づいてクラッチを解放するまで、T9とT10の2つの時間期間の間、クラッチを接続する。T9とT10では、スピンドルブレーキは可能ではあるがターンオンしない。
【0064】
図33は、モータ、クラッチ及び第62ブレーキ113あるいは駆動ホィールまたはスピンドル自体の上にあるブレーキを使用するシステムと組み合わせて使用するためのタイミング表を示す。ブレーキ105は(モータボックスには設置されているが)この実施形態のシステムでは使用されない。モータ状態線120に示すように、モータは正転方向にのみ駆動して圧迫ベルトを締め付け、常にオンしている。T1とT2の時間期間では、モータをオンしてクラッチを接続し、これにより圧迫ベルトを患者の回りに締め付ける。図32のタイミングチャートと対照すると、システムが上方閾値に達しない限り、ブレーキを駆動(energize)しないで、圧迫期間(T1とT2)中にベルトを保持する。次の時間期間T3で、クラッチを切断し、ブレーキをオフして、ベルトを緩ませて患者の胸部の自然弛緩により拡張させる。駆動スプールは回転し、患者の胸部の弛緩に順応するのに必要なベルトの長さを繰り出す。T3中、ベルトはゼロ点まで繰り出し、そのためにシステムはスピンドルブレーキを駆動する。D4中、モータはオンのままであり、クラッチを切断し、スピンドルブレーキを効かせてベルトをロックし、ベルトが完全に緩むのを防止する(カムブレーキを使用するシステムと対照すると、スピンドルブレーキはクラッチの下流であるため、スピンドルブレーキの動作はクラッチを切断したときには有効である)。T5で次のサイクルを開始するため、モータを始動し、スピンドルブレーキをターンオフし、クラッチを接続して、他の圧迫サイクルを開始する。システムは、時間期間T6の間、ピークP2で高閾値に達し、クラッチを解放し、スピンドルブレーキを駆動し、これにより、圧迫期間(T5とT6)の残りの間、高圧迫状態にベルトを締め付けて保持する。圧迫期間の終わりに、ブレーキを少しの間非作動にして低閾値またはゼロ点までベルトを拡張させ、再びブレーキを作動してベルトを低閾値に保持する。パルスP3が他の圧迫期間で生成され、その中でブレーキを解放し、T9とT10で閾値に達するまでクラッチを接続し、そこでクラッチを切断し、ブレーキを作動して、高圧迫状態でベルトを保持することで圧迫期間を終了する。時間間隔T11とT12では、クラッチを切断し、ブレーキを解放して胸部を完全に弛緩させる。これにより、患者が呼吸(ventilated)してもよい小休止期間が準備される。
【0065】
図33aは、図33によるシステムの動作に対応する胸郭内圧力とベルトひずみを示す。時間期間T1とT2では、モータ状態線120とブレーキ状態線122は、モータが圧迫ベルトを圧迫期間の終わりまで締め付けることを示している(システムは上方閾値以下の保持を開始しない)。スピンドルブレーキの解放によりベルトがT3で緩められると、胸郭内圧力は圧力線で示すように降下する。T3で、圧力ベルトがある程度緩んではいるが全体的には弛まなくなった後、スピンドルブレーキが作動してベルトをある最小レベルのベルト圧力に保持する。これにより、患者の胸部の全体弛緩が有効に防止され、圧迫サイクルの間でも僅かに上昇した胸郭内圧力が維持される。低レベル圧迫の期間がそのサイクル内で生成される。低レベル圧迫の期間はそのサイクル内で生成される。モータ状態線120ブレーキ状態線122は、モータが圧迫ベルトを高トルク閾値または時間限度まで締め付けると、圧迫ベルトが緩むのを防止するために、スピンドルブレーキを作動し(スピンドルブレーキ状態線124による)、クラッチを切断することを示している。これにより、ベルトの取り上げ中に達する高圧は、T6で開始する保持期間中維持される。スピンドルブレーキの解放によりベルトがT7で緩むと、胸郭内圧力は圧力線で示すように降下する。T7で、圧力ベルトがある程度緩んではいるが全体的には弛まなくなった後、スピンドルブレーキが作動してベルトを低閾値に保持する。P3では、再び上方閾値に達し、そのために、クラッチを切断し、T10でブレーキを作動して高圧迫保持を開始する。
【0066】
図34は、モータ、クラッチ及び第2ブレーキ113あるいは駆動ホィールまたはスピンドル自体の上にあるブレーキを使用するシステムと組み合わせて使用するためのタイミング表を示す。ブレーキ05は(モータボックスには設置されているが)この実施形態のシステムでは使用されない。表に示すように、モータは正転方向にのみ駆動して圧迫ベルトを締め付け、常にオンしている。T1の時間期間では、モータをオンしてクラッチを接続し、これにより圧迫ベルトを患者の回りに締め付ける。次の時間期間t2では、モータがオンし、検出された閾値に応答してクラッチを切断し、ブレーキ113を効かせて駆動し、上方閾値が圧迫期間中に検出されない場合にのみ、圧迫ベルトを締付状態にロックする。次の時間期間T3で、クラッチを切断し、ブレーキをオフして、ベルトを緩ませて患者の胸部の自然弛緩により拡張させる。駆動スプールは回転し、患者の胸部の弛緩に順応するのに必要なベルトの長さを繰り出す。次の期間t4中、モータは依然としてオンであり、クラッチを切断し、スピンドルブレーキの駆動を効かせてベルトをロックし、ベルトが完全に緩むのを防止する(前述のシステムと対照すると、スピンドルブレーキはクラッチの下流であるため、スピンドルブレーキの動作はクラッチを切断したときには有効である)。T5で次のサイクルを開始するため、モータを始動し、スピンドルブレーキをターンオフし、クラッチを接続して、他の圧迫サイクルを開始する。パルスP3中、クラッチは時間期間T9内でオンである。時間期間T10では、クラッチは接続したままであり、ブレーキは可能であはあるが駆動されていない。クラッチとブレーキは閾値に応答して制御される。これは、クラッチを解放しブレーキを駆動する保持状態にシステムを切り換える前に高閾値が検出されるまで、システムコントローラが待機していることを意味する。この実施例では、圧迫期間T9とT10の間は高閾値に達しないので、システムは保持を開始しない。
【0067】
図34aは、図34によるシステムの動作に対応する胸郭内圧力とベルトひずみを示す。モータ状態線120とブレーキ状態線122は、モータが圧迫ベルトを高トルク閾値または時間限度まで締め付けると、圧迫ベルトが緩むのを防止するために、クラッチを切断し、スピンドルブレーキを作動させる(スピンドルブレーキ状態線64による)ことを示している。これにより、ベルトの取り上げ中に達する高圧は、T2で開始する保持期間中維持される。このため、圧迫の期間は、静圧迫の期間とそれに続く能動圧迫の期間とからなる。スピンドルブレーキの解放によりベルトがT3で緩むと、胸郭内圧力は圧力線119で示すように降下する。T4で、圧力ベルトがある程度緩んではいるが全体的には弛まなくなった後、スピンドルブレーキが作動してベルトをある最小レベルのベルト圧力に保持する。これにより、患者の胸部の全体弛緩が有効に防止され、圧迫サイクルの間でも僅かに上昇した胸郭内圧力が維持される。低レベル圧迫の期間がそのサイクル内で生成される。上方閾値に達しないサイクルでは、圧迫期間は静圧迫(保持)期間を含まず、クラッチはT9とT10の2つの時間期間の間で接続し、システムは結局、当該システムによって設定された時間限度に基づいて能動圧迫を終えることに注意すべきである。
【0068】
図35は、モータ、クラッチ、ギヤボックス105内のカムブレーキ及び第2カムブレーキ113あるいは駆動ホィールまたはスピンドル自体の上にあるブレーキを使用するシステムと組み合わせて使用するためのタイミング表を示す。両ブレーキはこの実施形態のシステムで使用される。表に示すように、モータは正転方向にのみ駆動して圧迫ベルトを締め付ける。第1の時間期間では、モータをオンしてクラッチを接続し、これにより圧迫ベルトを患者の回りに締め付ける。次の時間期間t2では、上方閾値に達するが、モータは検出された閾値に応じてターンオフし、クラッチは依然として接続しており、第2ブレーキ113は効かせて駆動し、圧迫ベルトを締付状態にロックする(これらの事象は圧迫期間中に上方閾値が検出された場合にのみ起こる)。次の時間期間T3で、クラッチを切断し、ブレーキをオフして、ベルトを緩ませて患者の胸部の自然弛緩により拡張させる。駆動スプールは回転し、患者の胸部の弛緩に順応するのに必要なベルトの長さを繰り出す。次の期間t4では(モータは依然としてオンであるが)、モータはオンのままであり、第62ブレーキを効かせてベルトをロックし、ベルトが完全に緩むのを防止する。T5で次のサイクルを開始するため、スピンドルブレーキをターンオフし、クラッチを接続して、他の圧迫サイクルを開始する(モータは時間期間T3またはT4で早く駆動されており、速度が増加している)。パルスP3の間、クラッチは時間期間T9でオンされている。クラッチは接続したままであり、ブレーキは効いているが時間期間T10では駆動されていない。クラッチとブレーキは閾値に応答して制御される。これは、クラッチを解放しブレーキを駆動する保持状態にシステムを切り換える前に高閾値が検出されるまで、システムコントローラが待機していることを意味する。この実施例では、圧迫期間T9とT10の間は高閾値に達しないので、システムは保持を開始しない。カムブレーキは、ベルトを上方閾値長さに保持するのに役立ち、スピンドルブレーキはベルトを下方閾値長さに保持するのに役立つ。
【0069】
図35aは、図35によるシステムの動作に対応する胸郭内圧力とベルトひずみを示す。モータ状態線120とブレーキ状態線122は、モータが圧迫ベルトを高トルク閾値または時間限度まで締め付けると、圧迫ベルトが緩むのを防止するために(クラッチは接続したまま)、モータをターンオフし、カムブレーキを作動させる(スピンドルブレーキ状態線63による)ことを示している。これにより、ベルトの取り上げ中に達する高圧は、T2で開始する保持期間中維持される。このため、圧迫の期間は、静圧迫の期間とそれに続く能動圧迫の期間とからなる。クラッチの解放によりベルトがT3で緩むと、胸郭内圧力は圧力線119で示すように降下する。T4で、圧力ベルトがある程度緩んではいるが全体的には弛まなくなった後、スピンドルブレーキが作動して、スピンドルブレーキ状態線123で示すように、ベルトをある最小レベルのベルト圧力に保持する。これにより、患者の胸部の全体弛緩が有効に防止され、圧迫サイクルの間でも僅かに上昇した胸郭内圧力が維持される。低レベル圧迫の期間がそのサイクル内で生成される。上方閾値に達しないサイクルでは、圧迫期間は静圧迫(保持)期間を含まず、クラッチはT9とT10の2つの時間期間の間で接続し、システムは結局、当該システムによって設定された時間限度に基づいて能動圧迫を終えることに注意すべきである。
【0070】
前の図は、閾値が能動圧迫ストロークを制限するのに使用される場合でも、時間支配システム(time dominant system)における制御システムを示した。現在ACLSで好まれているように、時間支配システムは毎分の圧迫期間の数(acconsistent number of compression periods)を保証するのに好ましいと、我々は期待している。また、時間支配はランアウェイシステム(runaway system)の機会を排除している。トルクまたはエンコーダ閾値(encoder threshold)が会ったという指示を待っている場合、幾つかの理由でシステムは閾値に接近しない。しかしながら、閾値を部分的または完全に支配させることは、おそらく医者(medical personnel)によって密接に世話(attend)されるようなシステムでは有利である。部分閾値支配(partial threshold dominance)の例は、図36の表に示されている。圧迫期間は計時(time)されずに、上方閾値が点aで検出されたときのみ終了する。システムは、クラッチとブレーキを作動して点bで下方閾値への緩和(relaxation)を許容し、下方閾値保持期間を開始する。ピーク圧迫(peak compression)後の設定時間で、新たな圧迫ストロークが点cで開始され、ピーク圧迫が点dに達するまで維持される。能動圧迫に費やされる実時間は、システムが閾値に達するのにどれくらいかかるかに依存して変化する。したがて、サイクル時間(次の圧迫の開始までの、能動圧迫、解放及び低閾値保持の完全な期間)は、システムが閾値に達するのにどれくらいかかるかに依存して各サイクルで変化し、下方閾値緩和期間はそれに従って変動(float)する。決して達しない上方閾値を待機している間にシステムが失速(stall)する拡大期間(extended periods)を回避するために、外方時間限度(outer time limit)が点gで示すように各圧迫期間に付加され、そこでは最大許容圧迫(maximum allowed compression)に達する前に圧迫が終了する。本質において、システムクロックは上方閾値に達する時間毎にリセットされる。低圧迫保持期間に対するプリセット時間限度135は、図36aの図で左方へ浮動時間限度136にシフトされる。この試みは、これらのシステムが上方閾値に達するときはいつでもタイミングをリセットすることにより、以前の制御管理(control regimen)の各々と組み合わせることができる。
【0071】
モータ、カムブレーキ及びクラッチの配置は、ベルト駆動胸部圧迫に対する他のシステムに適用してもよい。例えば、ラッチ(Lach)の米国特許第4,770,164号(1988年9月13日)の蘇生方法及び装置は、胸部の上に取り付けるハンドクランクベルトと患者の胸部の下におく2つのチョック(chock)とを提案している。チョックは胸部を正しい位置に保持し、一方ベルトはきつくクランク(crank)される。トルクとベルト緊張度は、大きな駆動ローラの回転と干渉する機械的止め具により制限される。機械的止め具はスプールの締付けロールを単に制限するが、スプールの巻戻しを妨げない。駆動ロッドに取り付けるためのモータが提案されている。そのモータ軸と駆動ローラとの間の噛み合いは、クラッチと称される手動操作の機械的インターロックである。このクラッチは、使用前に手動で設定しなければならない原始的クラッチであり、圧迫サイクル中は操作することができない。それは、サイクル中は駆動ローラを解放することはできないし、モータが駆動している間または装置が動作している間は噛み合わせることができない。前述のブレーキとクラッチをラッチ(Lach)のような装置に適用することは、そのシステムを自動化させ、圧搾(squeeze)を達成し、圧迫パターンを保持するのに必要である。
【0072】
また、ラッチのPCT出願PCT/US96/18882号(1997年6月26日)の心停止用胸部圧迫装置は、ハサミ状のレバーシステムによって作動する圧迫ベルトを提案し、そのシステムをモータで駆動し、ハサミ機構を前後に往復駆動してベルトを締付けたり緩めるをすることを提案している。特に、ラッチは、完全解放の失敗が有害であることを提案し、さらに完全解放が起こるまで圧迫の1サイクルは開始しないことを提案している。このシステムは、前述したクラッチとブレーキシステムの適用によって改良することができる。これらの及び他のベルト締付手段はブレーキとクラッチシステムによって改良することができる。ラッチは、ベルトを駆動する多数の往復アクチュエータを開示し、これらのアクチュエータに力を付与することを要求している。例えば、ハサミ機構は、該ハサミ機構のハンドルに下向きの力を付与することによって操作され、この下向きの力はアクチュエータによって締付力に変換される。この動作を電動化することによって、クラッチとブレーキシステムの利点は、ラッチに開示された各力変換器を用いて達成することができる。モータと駆動スプールの間のソケット接続は、ラッチに開示された力変換器に接続されたフレキシブル駆動シャフトと置き換えることができる。
【0073】
図37は、胸骨ブラダーを備えた胸部圧迫装置の実施形態を示す。圧迫ベルト 3 は、使用中は患者の胸骨上にある圧縮ベルトの内側に位置する空気ブラダー140 を組み込んでおり、空気容量がわずか数立方センチのものから、数百立方センチのもの、約1リットルのものまで、様々なサイズのものであってもよい。この場合の圧迫ベルトは、フックとループファスナー(Velcro(r))からなる2つの重なる面141Rと141Lまたはその他のファスナーで身体に固定し、ブラダーは患者の胸骨上に位置するのが好ましい。圧迫の間、ブラダー自体もベルトによって圧迫され、この圧迫により空気ブラダー内の圧力も増加する。検知線142を介して空気ブラダー140に作動可能に接続される圧力センサは、空気ブラダー内の圧力を検知し、対応する信号をコントローラに送信する。検知線が使用されるため、圧力トランスデューサはベルトから離してコントロールボックス内に配置してもよいが、その場合、検知線は(ベルト下の)ブラダーからコントロールボックスまで届くことが必要である。(圧力センサを代わりにブラダー自体の中に配置してもよい。その場合、ブラダーからコントロールボックスまで延長する電力とトランスミッションケーブル143が必要になる。)圧力ブラダーは、検知線または電気ケーブルが患者上のベルトの配置を妨げないように、制御システム(この場合、左側のベルト部分 64L)と同じ患者の側のベルト部分に配置するのが好ましい。圧力ブラダーは、患者の脊椎の下などベルト上のどこにでも配置できるが、下に示すように胸骨の上に配置すると圧迫された胸郭の形状をコントロールするのに役立つ。(胸郭周囲の部分的な圧力を示すため、数個のブラダーを胸郭の周囲に配置するのもよい。例えば、ブラダーは、胸部側面で胸と圧迫ベルトの間、胸部前部の矢状面付近で胸と圧迫ベルトの間、そして矢状面付近で背中と圧迫ベルト(または背板)の間に配置してもよい。*胸部の周囲に数個のブラダーを配置し、圧力トランスデューサに接続することによって、被験者または実際の患者を対象に圧力プロファイルを記録し、圧力プロファイルを様々に変えた場合の効果を決定できるように、血流と比較してもよい。)
【0074】
コントローラは、空気ブラダー内部が200〜300 mmHgを超えないようにベルトの取上げを制限することによって、圧力信号を制御アルゴリズムに組み込んでもよい(空気ブラダー内部の圧力は患者の胸にかけられる圧力と直接対応しなければならないため)(現在240 mmHgが好適)。空気ブラダー内部の圧力および、それに対応して患者にかけられる圧力が、各圧迫で約240 mmHGの最小効果圧力に達することを確かめるため、圧力信号を使ってもよい。空気ブラダーは使用前に所定量の空気で満たすが、空気漏れの傾向がなければ保管または使用中にそれ以上膨らます必要はない。ベルトが予め締められ、弛みがすべて取り上げられ、そこにおいて、コントローラ(一定の圧迫中に発生したベルト運動量を決定するための開始点として使用される)がエンコーダ読取りを記録できたことの目安として、圧力信号を使用してもよい。現在、仮締付点として、ブラダー内の圧力は10〜50 mmHgが使用されている。空気が我々の好む流体であるが、ブラダーは圧力センサに圧力を伝達できるあらゆる流体、ゲル、その他の媒体で満たしてもよく、圧力検知容量および(または)形状制御容量を提供するように作動するであろう。空気で満たすと、ブラダーはわずかに圧迫可能でかつ様々な容量を有しており、また水のよう流体で満たすと、ブラダーは圧迫不可能で固定された容量を有するであろう。身体にかけられる圧力または力を検知するため、ベルトと患者の間に取り付けられる圧力トランスデューサ、力トランスデューサ、および力検知抵抗器を含めた別の手段を使用してもよい。
【0075】
図38は、1重の引張りストラップでベルトと駆動スプールが接続されている胸部圧迫ベルトの実施形態を示す。ベルトは、先行実施形態におけるように、フックとループ締付け要素95を取り付けた左右ベルト部分64Lと64R、および締付け端部92Lと92Rからなる。この実施形態における左右ベルト部分64Lと64Rは2つの引張りストラップ144に連結され、2つの引張りストラップに直接連結されるか、またはストラップ145と146の中間部分によって間接的に連結されてもよい。引張りストラップのスプール端147は駆動スプールに接続する。各引張りストラップは左右ベルト部分のそれぞれに均一に作動するため、図16から22までの引例に示すように、スプール自体へのベルト巻上げによるトルク効果は解消される。
【0076】
図40は、1重の引張りストラップがベルトを駆動スプールに接続している胸部圧迫ベルトの別の施形態を示す。この実施形態では、ベルトの左右ベルト部分64L及び64R が患者の脊椎に対応する下部端で共に固定され、ストラップ144に固定される。各ベルト部分の下端(引張りストラップに連結する端)148は、ステッチ、接着剤、その他の方法で共に固定してもよい。ベルト部分の上端149(胸骨上で結び合わせる端)はフックとループファスナパッドを備える。
【0077】
引張りストラップのスプール端は、図41に示すように、駆動スプールに取り付けてもよい。引張りストラップ144は、ステッチ、接着剤、その他の方法でベルトの脊椎部分に固定される。各引張りストラップのスプール端174は、駆動スプール68の皿穴に埋められた1対のピン202と203に取り付けるため、対応する1対の鳩目穴またはアイレット200と201を備える。図示するように、ピンはストラップの受入れ凹部分204と205の床に埋め込まれている。各対のピンの少なくとも1つは、その上にねじ付きボルトまたはねじを受け取れる内部または外部にねじ山の付いたピン(206及び207)である。凹部キャップ208と209は、ポストと係合させて適所に固定したあと、ストラップ端に被せられる。キャップは、駆動スプール上およびストラップ端上にねじ留めするか、あるいは内部にねじ山付のねじ210と211でねじ留めしてもよい。この配置により、ベルトの取付けと取替えが容易になり、駆動スプールの製造が簡素化される。
【0078】
引張りストラップは、スプールが回転すると同時に、左右ベルト部分の巻き取りに差異がないように結合された1重の広いベルト部分に取り替えてもよい。これは図39に示している。ここではベルト64は、締付け端92Lと92R、対応する左右ベルト部分64Lと64R、およびスプールを係合する中央部分93を備える平織りの帯材料である。この実施形態では、ベルトのスプール部分において一方側がもう一方側の上を滑らないように防止するため、中央のスプール係合部分内にあるベルトの左ベルトと右ベルト部分がステッチでつながれている。このように、スプールに巻き取られる間に1方側がもう1方側の上を異なる円周で運動することによる不均一なベルトの取り上げを防止する。したがって、図39はトルクのない巻取り部分がベルトを駆動スプールに接続している胸部圧迫ベルトの実施形態を示す。
【0079】
図42は、脊椎支持板150を備える胸部圧迫装置の実施形態を示す。圧迫ベルトの左部分64Lおよび右部分64Rは、図38に示すように、ストラップ144を引っ張るため、継ぎ目151でつながれており、また引張りストラップはカートリッジ63内で駆動スプール68に固定されている。圧迫ベルトの右部分64Rは、引張りストラップの内側の端152(すなわち、患者に当てられた場合に身体の中心面に近い端)から、中心寄りの下方スピンドル153および少し外側寄りの上右スピンドル154の下へ、脊椎支持台150の下へ、そして使用中はさらに患者の右脇腹の下へと延長する。圧迫ベルトの左部分64Lは、引張りストラップの内側端152(すなわち、患者に当てられた場合に身体の中心面に近い端)から、方向を変えて少し外側寄りの上左スピンドル155を取り巻いて、脊椎支持台150の下へ延長し、使用中はさらに患者の左脇腹の下へと延長する。脊椎支持台150は、カートリッジを被って下方および上方へ延長し、カートリッジ上の患者を支持する役割を果たしたあと、ベルトがカートリッジ内へ引き込まれる下に横たわる領域を離れ、それによって、さもなければ操作中に解決を要すると思われるベルト摩擦負荷の大部分が解消される。胸部の圧迫による摩擦を減らすため、脊椎支持板の表面に PTFEシート72を備えてもよい。
【0080】
図43および44は、図37から図39に述べた特徴に適合させた場合の圧迫装置の動作を示す。図43に示すように、圧迫ベルト64は患者の胸郭80 の周囲に巻き付ける。ブラダー140は、患者と患者の胸骨 82上の左ベルト部分64Lとの間に置かれるが、その理由はモーターボックスおよびコントロールボックスは患者の左側に配置されるからである。装置のこの断面図では、ベルトと引張りストラップの接続を示す。引張りストラップ144が内側の端152で左右ベルト部分に接続され、そしてスプール端147で駆動スプール68に接続されているベルトと引張りストラップの接続を示す(この図では圧迫ベルトが1本の長さのベルトからなり、引張りストラップはその中間部分で固定されるか、または2つの離れた長さのベルトからなり、各ベルトの内側の端で引張りストラップに固定されることを高く評価できるであろう )。引張りストラップと駆動スプールの接続は、ベルトの中間部分と駆動スプールの接続に比べて、ベルトの各側に(図44に示すように)均一な引張り長をもたらす。このことは、図16と17の引例に示すように、2重のストラップまたはベルトが重なって巻き取られた場合に生じる過剰な引張り長による身体上のトルクを解消する。先行する実施形態と同様に、各圧迫サイクルでベルト引締めを達成するため、スプールはいくつかの回転数で回転し、数重の引張りストラップを取り上げる。
【0081】
同様に、図43と44は、圧迫後の胸郭の形状の上に固定されたブラダーの効果を示す。患者とベルトの間に設置したブラダーで患者を圧迫する間、胸郭はやや楕円形の断面を維持し、また優先的に前後に圧迫される(矢印156)。この形状の圧迫は、先に述べた周囲圧迫に対して、前後圧迫または胸骨圧迫と呼ばれる。圧迫された胴体の形状は、図45に示すように、ブラダーを備えない場合の結果として、より丸く円形に近い胴体から、平坦な卵形の方向に変形する(ある患者では、理由は不明であるが、側面からの方が容易に圧迫される傾向にあり、結果として胴体の断面はより円形になる)。ブラダーを使用することによって、ある患者において側面方向(線157)に過度に圧迫されてより円形の断面になる結果、胸骨が上方に持ち上がる傾向が回避される。したがって、ブラダーの物理的存在は、フィードバック制御に使用されるか否かに関係なく、この装置の動作では有用である。円形圧迫は有用ではあるが、胸部の圧迫と心臓および胸大動脈の圧迫の相関関係という点では効率が低いと考えられている。
【0082】
脊椎支持台150の動作は、図43と44にも示されている。台は背中を上下に走る脊椎の陥没部分158を越えて横の方へ延びている。脊椎支持台の幅は、大部分の患者において、それが横の方へ肩甲骨159まで延びるように、または患者の肩甲骨の内側の端160まで延びるように、または背中の脊椎陥没のいずれかの側にある僧帽筋161の突出部(領域158)まで延びるように選択する。台はこのように、脊椎陥没をまたがり、両側へ脊椎陥没を越えて僧帽筋の突起部または肩甲骨の内側の端まで延長する。ベルト部分64Rと64Lは、台とカートリッジまたは背板との間の垂直の隙間163を介して台の下を通り、それによって患者の身体とカートリッジの間を直接通ることを避け、台幅をわずかに越えて広がる小さな側部の方へ向かっている。
【0083】
図46は、図42において示した装置の改良型である。胸部圧迫装置のこの断面図では、ガイドスピンドル153(中心スピンドル)、154(右スピンドル)、および155(左スピンドル)は、圧迫ベルトの圧力プロフィール(force profile)を変えるため、互いから横の方へ間隔をおいて配置される。左右のガイドスピンドルは、図42では本質的に脊椎の下に配置されるが、この装置ではさらに離して患者の側面の方へ配置される。ここでは、ガイドスピンドルは脊椎から横の方へ数インチのところにあり、患者の肩甲骨または僧帽筋部位の下に配置される。この部位はベルトの圧力プロフィールを変えるため、周囲に均一にかかる力よりも、むしろ一般に胸郭の前方から後方への力が生み出される。ガイドスピンドルの正確な位置は、典型的な患者にかけられる前方から後方への力と周囲を締め付ける力とのバランスを増減するため、さらに横の方へ、あるいは内側の方へ(図42に示すように、逆に中心部の方の脊椎のすぐ下へ)調整してもよい。身体の右左両側に側面支持板164と165を追加することは患者に支持を提供し、また、脊柱支持板150と共に、カートリッジから患者へ延びるベルトが通過する隙間となる形状を提供する。
【0084】
図46の実施形態では、胸骨の移動はスプールの回転に密接に関連している。直径が0.5インチのスプールを使用し、かつ素材の厚さが0.020インチの軽いTyvek(r)織物または同様の素材を使用して、胸骨の移動を次の公式によって計算することができる:
【0085】
前後方向移動量 = (0.0314(rev.)2 + 1.5394((rev.)) - (0.0314(take-up rev.)2 + 1.5394(take-up rev.)
【0086】
別の方法として、胸骨移動対スプール回転を観察することによって、経験的に次の公式が導き出される:
【0087】
前後方向移動量(経験に基づく) = (0.0739(rev.)2 +1.4389(rev.)) - (0.0739(take-up rev.)2 +1.4389(take-up rev.))
【0088】
これらの方程式では、(rev.) はスプールの回転を測定できるシステム内のエンコーダで直接または間接的に測定したスプールの総回転数であり、(take-up rev.) は上記の方法に従ったベルトのあらゆる緩みの取上げに必要な回転数である。システムのコントローラはこれらの方程式のいずれかを使用して、他のフィードバックコントロール方法に対する予備としてまたは第1の方法として、移動量を計算してもよい。いずれの方程式においても、コントローラソフトウェアは取上げ回転の記録を保持し、またこれらの回転からの異なる予想胸骨移動は、総回転数から計算した移動から差し引かれ、緩み取上げ後の一定の回転数からの実際の胸骨移動が提供される。システムによる移動情報を使用して、患者の最初の胸骨高に関する情報をシステムに伝えることができる。次にこの情報を好適な胸骨移動に関連付けることができる(身体の大きな人々はさらに圧迫を必要とする)。現在、1〜2インチの胸骨圧迫、または20%の胸骨高が好適である。上記のように胸骨移動を計算することによって、これらの胸骨移動目標のどちらでも満足させることができるかもしれない。 そのうえ、患者のサイズに関して最初の取上げから概算することができ、この情報を使用して好適な胸骨移動を決定し、かつ(または)好みによりシステムの他の閾値を調整することができる。例えば、全ベルトの最初の長さを知ること、および最初の取上げ中に巻き取られた長さを差し引くことによって、患者の周囲に配置されたベルトの長さを計算することができる。
【0089】
図 47は、モーターボックス62、およびモーター103と駆動スプール68の間にある連結装置の実施形態を示す。駆動スプールとモータは、使用中は患者に対してモータが横の向へ駆動スプールの外側に置かれるように、再び折りたたまれた反平行関係で整列している。モータ出力シャフト104は 減速ギア168を駆動し、減速ギア出力シャフト169 は非逆転連結装置170を駆動し、非逆転連結装置の出力シャフト171は スプロケット出力ホイール112を駆動する。スプロケット出力ホイール112は、次にチェーン172とスプロケット駆動ホイール66と駆動スプールを駆動する。非逆転連結装置170は、例えば減速ギア(図示するように)の出力点でまたは駆動スプールスプロケットの出力点で、駆動トレイン内に配置される。非逆転連結装置は、入力シャフト169の回転が可能となり、かつ出力シャフト171の回転をもたらすように、入力シャフトが連結装置の上流で駆動トレインによって回される時は、時計回りまたは逆時計回りに駆動してもよい。しかし、(胸部圧迫中に発生するかもしれないように)駆動トレインの下流側から駆動される出力シャフトの回転は、連結装置の内部機構によって禁止される。したがって、入力シャフトの動力は逆転されない。
【0090】
いくつの異なる種類のそうした非逆転連結装置を使用してもよく、また双方向非逆転連結装置または双方向逆転ロック連結装置とも呼ばれる。例えば、Warner Electricが発売している双方向非逆転連結装置は、ラップダウンスプリング(wrap-down springs)と干渉タング(interfering tangs)を組み込んでいる。連結装置はトルクが入力シャフトに応用された場合にのみ回すことができ、いずれの方向へも駆動させられるが、入力にトルクがない場合は出力シャフトは効果的にロックされ、いずれの方向へも回すことはできない。出力シャフトに応用されたトルクは、クラッチ本体に伝導され、入力シャフトには伝導されないであろう。Formsprag Engineeringが発売している双方向非逆転連結装置は、クラッチ本体内に出力シャフトの逆回転に干渉するスプラグを内蔵している。
【0091】
図25に関して説明したクラッチとブレーキの代わりに、駆動トレイン内に設置された双方向非逆転連結装置を使用してもよい。動作においては、クラッチ及びブレーキ運動は連結装置の逆転ロック機能によって置き換えられる。図48に示すように、システム動作のタイミングは大いに簡素化される。各圧迫行程の間、モータは好適なフィードバック限界に達するまで締付け方向に作動する。モータはそこで停止する。上位レベルの保持は、連結装置の逆転ロック機能によって自動的に達成される。保持期間の終わりに、モータは弛緩する方向に逆作動し、そこにおいて連結装置が自動的にロックを解除し、弛緩回転を許容する。低閾値保持期間が好適であれば、モーターは停止し、そこにおいて駆動スプールの継続的弛緩回転は、連結装置の逆転ロック機能によって禁止される。モータは(ベルトエンコータからの)ベルト長、空気ブラダー内の圧力、モータのトルク、または低閾値ベルト位置が得られたことを示すその他のフィードバックに基づくフィードバックに応じて、弛緩方向に停止させることができる。モータを低閾値をはるかに下回る弛緩方向に駆動させることによって、数回の圧迫の間にベルトが完全に弛緩する小休止期間を間に入れてもよい。小休止期間におけるベルトの最終位置は、エンコーダ、ブラダー内の圧力、またはその他のフィードバックによって決定してもよい。
【0092】
図48 は、非逆転連結装置を使用するシステムの動作に対応する胸郭内圧力とベルトのひずみを示す。モータ状態線120と非逆転連結装置線173は、モータが作動して高トルク閾値または制限時間まで圧迫ベルトを締め付けているとき、非逆転連結装置がモータによって駆動されることを示唆する。モータが停止すると、非逆転連結装置はロックされ、圧迫ベルトが弛緩するのを予防する。連結装置はロックされ、コントローラから何の入力がなくても逆転を防止する。これにより、ベルトの取上げ中に得られる高い圧力がT2で開始する保持期間中維持される。モータを逆転または弛緩方向へ作動させることによってT3でベルトが弛緩したとき、非逆転連結装置の内蔵ロック機構の特有解除によって、圧迫状態線119が示すように胸郭内圧力は低下する。T4では、圧迫ベルトが(完全な弛緩ではなく)ある程度弛緩した後(再びコントローラから何の入力または信号がなくても)モータ及び非逆転連結装置ロックは停止し、ベルトをある最低値のベルト圧力に保持する。これにより、患者の胸部全体の弛緩が有効に防止され、圧迫サイクルの間もわずかに上昇した胸郭内圧力が維持される。低レベルの圧迫期間がサイクル内に生成される。いくつかのサイクル(4または5サイクル)の後、小休止期間が圧迫パターンに組み入れられ、その間、モータが逆に駆動してベルトを弛緩させ、ベルトと患者の胸部の完全な弛緩を得られることに注意すべきである。 先行するモータボックスとコントローラの実施形態でも説明したように、このシステムは、実質的に低閾値でかつ実質的に高閾値なしで、あるいは実質的に低閾値のない高閾値で作動させてもよい。説明の中で、モータの逆転動作とは、締付方向へのモータの動作を意味する正方向への動作に対して、弛緩中のモータの動作を意味していることに注意すべきである。対照的に、非逆転連結装置に言及している場合、逆転とは出力シャフトを回して入力シャフトを回転させることにより、連結装置を動力で逆回転させることを意味している。したがって、これらの用語がモータに関して使用されるように、非逆転連結装置は逆転動力を許容しないが、前進および逆転方向、時計回りまたは反時計回り、ならびに弛緩または締付方向へ回転させることは可能である。
【0093】
ここまでは、圧力フィードバック制御、ベルト長または容量フィードバック制御、およびモータトルク制御について説明してきた。我々の経験から、圧力と胸郭容量の関係は、測定された容量と検知された圧力間の関係に関して圧迫サイクルをフィードバックで制御できるように関係していると思われる。したがって、モータ、クラッチ、ブレーキ、およびその他の駆動トレインの構成要素は、身体にかけられる力とベルト長の変化間の関係の関数として制御してもすることができる。胸郭にかけられる圧力は、上述のように、図37で示した空気ブラダーの圧力を測定することによって、または圧力トランスデューサ、力トランスデューサ、または身体にかけられた力を検知するその他の手段によって測定される。長さは、上述のように、ベルトエンコーダを走査することによって、または駆動トレイン内の回転エンコーダを走査することによって測定される(ベルトの長さを測定できるあらゆる機構を使用してもよい)。容量は円形の断面の胸部を前提とし、ベルトの長さを胸部の周囲の代用として使用することで計算される。容量の変化は、20 cm幅のベルトを基に計算され、胸部は円形の断面を有することを前提とし、またベルトが取り巻く容量はベルト長とベルト幅の積に等しい。したがって、容量の変化は ?v=?(断面) x 20cmとして計算される。.ベルト長の変化は、上記のように、このシステムのいくつかの位置の1つに配置したエンコーダを介して測定される。
【0094】
図49は、胸郭容量圧迫の変化(またはベルト長の変化)と胸郭圧力間の関係を示す。グラフに示すように、胸郭容量における最初の大きな負の変化 ?v1 (圧迫の大きな増分)は、胸郭圧力における小さな変化 ?p1をもたらし、一方、圧迫の終わり近くにある同様の容量変化 ?v2 は、圧力における大きな増加 ?p2をもたらす。反対に、圧力の大きな変化は、圧迫の終わりに量の小さな変化を生み出す。これは、勾配がゼロに近づく漸近曲線である。容量変化が圧力の漸進的変化をほとんどまたはまったく引き起こさない場合、システムによる胸部圧迫のさらなる努力は電池を消耗するため避けたほうがよい。したがって、コントロールシステムをプログラミングして、胸郭容量(配置されたベルト長または代用品)と胸郭圧力(ブラダー圧力またはその他の代用品)に対応する入力を監視し、容量変化と圧力変化の比率(図49の曲線勾配)が設定値より低くなった場合に圧迫を終了することによって、モータ動作を制限する。現在、設定値は実験的に0.05〜0.5 cm2/mmHgの範囲に決められている。これに対して、ベルト長を計算の基礎として用いる場合は、コントロールシステムをプログラミングして、配置されたベルト長と胸郭圧力(ブラダー圧力またはその他の代用品)に対応する入力を監視し、ベルト長変化と圧力変化の比率(図49の曲線勾配)が設定値より低くなった場合に圧迫を終了することによって、モータ動作を制限する。
【0095】
図50は、 図49の曲線勾配と実際のブラダー圧力間の関係を示す。図49の曲線勾配は実際のブラダー圧力の関数として表示されている。グラフで示すように、ブラダーの圧力が300 mmHgに近づくとき曲線勾配Δp/Δv はゼロに近づく。これはヒトに対して予想される値であり、動物研究では勾配は約300 mmHgでゼロに近づく。システムコントローラを作動させ、値またはこの曲線勾配が(ゼロに近い)設定値に近づいた時、圧迫を終了することによって、モータ動作を制限することが可能である。現在、設定値は実験的に 0.05〜0.15 cm2/mmHgの範囲に決められている。この値は、各患者に対して異なる圧力で、また1人の患者の治療過程中は異なる圧力で達成できるであろう。それは、しばしば空気ブラダー内の圧力が 300 mmHgをはるかに下回ったときに達成される。図49の曲線勾配 v(p)(すなわち、容量の変化と圧力の変化の関数として)、および図50の勾配または曲線値Δv/Δp(p)(すなわち、容量の漸進的変化に対する圧力の漸進的変化の割合とブラダー内の圧力の関数として、漸進的変化は容量対時間の関数の導関数とも言われる)の両方に関しては、すべての患者のための最適値は、十分な圧迫に必要とされる実際の圧力に比べて、狭い範囲内に収まる。
【0096】
圧力と容量の2重のパラメータに対応するシステムの動作、およびこれらのパラメータの変化の速度を因数分解することは、システムの動作に思いがけない長所を提供する。容量の最適な変化だけを、あるいは圧力の最適な変化だけを考えても、患者間で著しい範囲で変動するかもしれない。これは、容量と圧力の変化がすべての患者に十分であることを確実にするために、容量と圧力の変化が或る患者では過剰でなければならないことを必要とする(トルクフィードバックとトルク制限を使用することことの大きな利点を考慮している。このことは、かけられた圧力の量を最適化する一方で、電池の消耗を最小限に抑える)。 しかし、観察に基づく研究から、Δv/ΔAp(p) 曲線は患者間でほんのわずかに変動するように思われる。このことはシステムの制御をΔv/Δpの範囲に許容し、システムがさほど均一でないパラメータに応じて作動される場合に必要な電池の消耗を最小限に抑える。したがって、図49に示す閾値への到達に呼応する動作は変動がほとんどなく、すべての患者に適用されるために好適である。
【0097】
図50に示す閾値への達成に呼応する動作は同じ理由で好適であり、またパラメータの実際の値への依存も解消する。この方法では、コントローラをプログラミングしてモータを作動させ、ブラダー内の圧力に対応する信号が、患者の胸部の最適な蘇生圧迫が達成されたことを指示するまで、患者の胸の周囲にベルトを締め付ける。この場合の最適な蘇生圧迫は、容量の変化の第1の比率を、範囲-0.05〜-0.5の圧力の変化で割って求められる、あるいは、この第1の比率の第2の比率を、範囲-0.05〜-0.15のブラダー内の実際の圧力で割って求められる圧迫の次数として表わされる。この方法は胸部容量という面で検討されてきたが、容量はベルト長の積として概算され、計算では胸部容量の代わりにベルト長を使用してもよい。上記の計算はベルト長の変化を考慮している故に、実際のベルト長はどの点においても知る必要はないことに注目すべきである。
【0098】
図51と52は、駆動スプールの駆動に使用されるモータ及び駆動トレインの別の実施形態を示す。これらの実施形態では、クラッチを使用する必要はなく、ブレーキは駆動トレインに比較してオフラインに配置され、テークオフを介して駆動トレインに接続される。モータ103は、モータシャフト104、ギアボックス出力ロータ106、およびスプロケット出力ホイール107を、ギアボックス180を介して駆動する。出力ホイール107はチェーン108を駆動し、それが次に駆動スプロケットホイール181 およびスプール駆動ホイール66を駆動する。駆動スプール68は、駆動ホイールのソケット内に適合する受けロッドを備える駆動ホイールに作動可能に接続される。 駆動スプロケットと駆動ホイールの間に置かれているのはトルクセンサ182で、これは駆動スプール上の実際のトルクを検知し、対応する信号をコントローラに送信する。ギアボックスと出力ホイール107の間に置かれているのは、別のスプロケットホイール183で、これは、ブレーキチェーン184を介して、ブレーキ187に接続されたブレーキシャフト186に搭載されているブレーキスプロケット185に接続される。ブレーキはコントローラで作動可能な電気機械式ブレーキである。希望するギア減少とギアリング変化をもたらすため、各種サイズのスプロケットホイールから選ぶことができる。我々の好む実施形態で使用されるモータは、約15,000 rpmで回転する。ギアボックスは回転を約2,100 rpm(7:1の減少)に減少し、スプロケット107 と181は、スプールが約1,000 rpmで回転するように、サイズを調整して2:1に縮小する。制動スプロケット183および185は、ブレーキシャフト186が約4,200 rpmで回転するように、サイズを調整して1:2 に縮小する。別の実施形態では、モータは約10,000 rpmで回転し、ギアボックスは回転を約1,000 rpm(10:1の減少)に減少し、スプロケット107および181はスプールが約333 rpmで回転するように、サイズを調整して3:1に縮小する。制動スプロケット183および185は、ブレーキシャフト186が約3,000 rpmで回転するように、サイズを調整して1:3に縮小する。
【0099】
図52は、オフラインブレーキの設置のための別の配置を示す。図51が示すように、モータ103はモータシャフト104、ギアボックス出力ロータ106、およびスプロケット出力ホイール107を、ギアボックス180を介して駆動する。出力ホイール107はチェーン108を駆動し、それが続いて駆動スプロケット181 およびスプール駆動ホイール66を駆動する。駆動スプール68は駆動ホイールに作動可能に接続される。 この実施形態では、ブレーキ187は、ブレーキシャフト186を搭載するスプールおよび、このブレーキシャフト上に搭載されたブレーキスプロケット185を介して、駆動スプール68に接続される。ブレーキチェーン184およびブレーキスプロケット190は、ブレーキを駆動スプールに接続する。透視図に示すように、ブレーキは駆動スプールのいずれかの端で駆動スプールに接続し、ブレーキはブレーキシャフト186に接続し、駆動スプロケット181とブレーキスプロケット189から延長している。これは、駆動スプールのモータボックス側への駆動と制動の両接続を可能にし、モジュールシステムへの発展の可能性を保持している。モジュールシステムでは駆動スプール(および圧迫ベルトカートリッジの残余)は駆動ホイールおよびモータボックスの残余から簡単に取り除くことができる。ブレーキは、図52の駆動スプール上のテークオフを介して接続し、一方それは図51のギアボックス出力シャフト上のテークオフを介して駆動トレインに接続する。ブレーキをテークオフに接続することによって、例えば図25の説明に従うよりも、ブレーキのギアリングを調整してもよく、それによってブレーキ上のトルクの必要条件を減少し、より小型で軽量のブレーキの使用を許容し、またインラインブレーキよりもはるかに高速のブレーキを許容する。また、あらゆる制動後運動が様々なギアリング変化により、実質的にスプールで 減少し、したがって、システムがブレーキを作動させたあと、ベルトのオーバーランを制限するのに役立つ。
【0100】
ベルトのオーバーラン(コントローラが作動して圧迫が終了した後もベルトが締まり続ける状態に用いられる用語)は電池を消耗し、患者に対して好適とされる以上の圧力をかける。同様に、明白なブラダー圧力(身体にかけられた力)のわずかな遅れは、システム作動のオーバーシュートをきたすため、システム応答が瞬時であっても、定常の動作の間は予め定められた閾値が適用されてもよい。これらの問題を制限するために、コントロールシステムをブログラミングして装置をテストし、システムの設定ポイントを好適な閾値で較正する。これは図53に示しているが、これは較正目的でシステムが実行した一連の圧迫のための実際および設定ポイント圧力を説明している。
【0101】
図53に示すように、圧迫1において、システムは比較的に低い設定ポイントを選ぶ(例:ブラダー内圧140 mmHg)。システムがブラダー内圧140 mmHgを検知し、圧迫を停止したときには、ブラダー圧力は設定ポイントを大幅に飛び越えている。 コントロールシステムはこの実際の圧力を、患者上において予め定められた好適な閾値(例えば、240 mmHg)と比較し、閾値に触れるにはオーバーシュートが不十分であり、それゆえ設定ポイント140 mmHgは設定ポイントとして用いるには不十分でることを決定する。次の圧迫では、コントロールシステムはやや高い設定ポイント160 mmHgを選択し、その設定ポイントまで圧迫して、実際の圧力到達である約200 mmHgのオーバーシュートを観察する。そしてオーバーシュートが閾値に触れるには不十分であり、それゆえ設定ポイント140 mmHgは設定ポイントして用いるには不十分であることを決定する。コントロールシステムは、チャートの圧迫5の圧迫で示すように、それが設定ポイント220 mmHgがオーバーシュートして好適な閾値240 mmHgに導くことを観察するまで、このようにテストし続ける。つづいて、好適な閾値240 mmHgを達成するためにシステムが使用する220 mmHgを設定ポイントとして選択する。
【0102】
CPRの過程中、オーバーシュートは、患者の胸部の柔軟性の変化、ブラダーの温度など様々な理由で変動するかもしれない。システムは実際の圧力を設定ポイント圧力と比較し続け、それによって調整する。例えば、チャートの圧迫において、実際の圧力は閾値240 mmHgに達していない。それゆえシステムは 圧力n+1 およびそれ以降における設定ポイントをわずかに上げる。逆に、システムが実際の圧力が閾値を超えたことを観察すると、設定ポイントは 実際の圧力が閾値を記録するまで下げられる。この方法では、システムの動力供給に使用される電池は、患者に対するむだな圧力の応用で消費されることはないが、閾値を下回る保守的で非生産的な圧力の応用で浪費されることもない。
【0103】
CPR 装置と制御方法の多くの実施形態を、以上説明してきた。装置と方法の好適な実施形態を、それらが開発された環境を参照して説明してきたが、それらはこの発明の原理の具体例に過ぎない。その他の実施形態および構成は、発明および付録の請求範囲の精神から逸脱することなく工夫してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】部分的に開いた内側および外側ベストを示す蘇生装置の全体図。
【図2】留められた状態にある蘇生装置の全体図。
【図3】被害者の周囲に装置を閉じるために使用されるバックルの詳細図。
【図4】圧縮ベルトを操作するために使用されるスプールアセンブリを示す図。
【図5】圧縮ベルトを操作するために使用されるスプールアセンブリの別の実施形態を示す図。
【図6】被害者に適当に装着された蘇生装置を示す図。
【図7】蘇生の際に使用される幾つかの補助装置を有する蘇生装置を示す図。
【図8】図7のCPRモジュールの詳細図。
【図9】図7の細動除去モジュールの詳細図。
【図10】図7の気道確保モジュールの詳細図。
【図11】図7の制御および通信モジュールの詳細図。
【図12A】通信システムのブロック図。
【図12B】通信システムのブロック図。
【図13A】モータ制御システムのブロック図。
【図13B】モータ制御システムのブロック図。
【図14】蘇生装置の外観である。
【図15】ベルトカートリッジの取り付けを示している。
【図16】ベルトカートリッジの作動を示している。
【図17】ベルトカートリッジの作動を示している。
【図18】他のベルトカートリッジを示している。
【図19】他のベルトカートリッジを示している。
【図20】他のベルトカートリッジを示している。
【図21】他のベルトカートリッジを示している。
【図22】他のベルトカートリッジを示している。
【図23】他のベルトの実施形態を示している。
【図24】他のベルトの実施形態を示している。
【図25】モータボックス内のモータ及びクラッチの配置を示している。
【図26】図25の装置の他の実施形態を示している。
【図27】図26の装置と共に使用されるシールドを示している。
【図28】連続的に駆動するモータを備えた基礎的な実施形態中のモータ及びクラッチのタイミングテーブルである。
【図28a】図13のタイミングダイヤグラムに関し、操作されたシステムによって起こる圧力変化のダイヤグラムである。
【図29】連続的に駆動するモータを備えた基礎的な実施形態中のモータ及びクラッチのタイミングテーブルである。
【図29a】図14のタイミングダイヤグラムに関し、操作されたシステムによって起こる圧力変化のダイヤグラムである。
【図30】圧迫ベルト圧搾及びホールド手術用モータ及びクラッチのタイミングテーブルである。
【図30a】図15のタイミングダイヤグラムに関し、操作されたシステムによって起こる圧力変化のダイヤグラムである。
【図31】ベルト圧迫が各サイクル中に完全に緩むことを可能にしないシステム中のモータ、クラッチ、及びカムブレーキのタイミングを示している。
【図31a】図16のタイミングダイヤグラムに関し、操作されたシステムによって起こる圧力変化のダイヤグラムである。
【図32】モータ、クラッチ及び第2のブレーキ又は駆動車輪あるいはスピンドル自身を使用するシステムと共に使用されるタイミングテーブルを示している。
【図32a】図17のタイミングダイヤグラムに関し、操作されたシステムによって起こる圧力変化のダイヤグラムである。
【図33】圧迫ベルトの圧迫及び保持操作に対するモータとクラッチタイミングを表わした表である。
【図33a】図18のタイミング表により操作されたシステムによって生じた圧力変化を表わしたグラフである。
【図34】圧迫ベルトの圧迫及び保持操作に対するモータとクラッチタイミングを表わした表である。
【図34a】図19のタイミング表により操作されたシステムによって生じた圧力変化を表わしたグラフである。
【図35】圧迫ベルトの圧迫及び保持操作に対するモータとクラッチタイミングを表わした表である。
【図35a】図20のタイミング表により操作されたシステムによって生じた圧力変化を表わしたグラフである。
【図36】システムタイミングが高閾値に達した時点毎にリセットされる実施例における圧迫ベルトの操作に関するモータとクラッチタイミングを表わした表である。
【図36a】図21のタイミング表により操作されたシステムによって生じた圧力変化を表わしたグラフである。
【図37】胸骨ブラダーによる胸部圧迫の実施形態を示す。
【図38】1重の引張りストラップがベルトを駆動スプールに接続している胸部圧迫ベルトの別の実施形態を示す。
【図39】トルクのない巻上げ部分がベルトを駆動スプールに接続している胸部圧迫ベルトの実施形態を示す。
【図40】1重の引張りストラップがベルトを駆動スプールに接続している胸部圧迫ベルトの実施形態を示す。
【図41】胸部圧迫ベルトを駆動スプールに接続している機構を示す。
【図42】胸骨ブラダーを有する脊椎支持板を備えた胸部圧迫装置の実施形態を示す。
【図43】胸骨ブラダーを備えた胸部圧迫装置の断面図を示す。
【図44】胸骨ブラダー(圧迫中の図)を備えた胸部圧迫装置の断面図を示す。
【図45】胸骨ブラダーのない胸部圧迫装置の断面図で、圧迫中を示す。ある患者に発生する円形効果を説明している。
【図46】ガイドスピンドルを備え、横の方へ互いから離して配置され、圧迫ベルトの力プロフィールを変える胸部圧迫装置の断面図である。
【図47】非逆回転駆動機構を備えるモータボックスの図である。
【図48】非逆回転駆動機構を備えるモータボックスの表である。
【図49】胸郭容量の変化と胸郭圧力の変化間の関係を示す。
【図50】図49の曲線勾配と実際のブラダー圧力間の関係を示す。
【図51】モータおよび駆動トレインのさらなる実施形態を示す。
【図52】モータおよび駆動トレインのさらなる実施形態を示す。
【図53】較正目的でシステムが実行した一連の圧迫のための実際および設定ポイント圧力の表である。
【符号の説明】
【0105】
1 蘇生装置
2 モータボックス
3 ベルトカートリッジ
4 ベルト
5 スプロケット
6 駆動ホイール
7 受けロッド
8 駆動スプール
10 コンピュータ制御システム
11L 左側パネル
11R 右側パネル
12 シート
13 ハウジング
15 ガイドスピンドル
16 摩擦ライナ
18 ハンドル
41 モータ
45,53 ブレーキ
51 クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
患者の胸部の周囲に少なくとも部分的に延びるように適合されたベルトであって、繰出し部分と巻取り部分によって特徴づけられる上述のベルトと、
作動可能にベルトに接続され、スプール上でベルトを巻いたり緩めたりし、それによって、ベルトの巻取りおよび繰出し部分の長さに影響を及ぼすスプールと、
作動可能にスプールに接続され、スプールを回転させるように作動させることができ、患者の胸部の周囲にベルトを締め付けることができるモータと、
モータの動作を制御するコントローラと、
圧力検知手段であって、ベルトが患者の周囲に締め付けられるときベルトと患者の間に配置され、上記圧力検知手段を作動させて、ベルトが胸部にかけた圧力を検知し、ベルトが胸部にかけた圧力に呼応する信号を送信できる圧力検知手段とを備え、
上記コントローラは、ベルトがかけた圧力に一致する信号に呼応してモータの動作を制御するようにプログラミングされている、装置。
【請求項2】
圧迫中のベルト繰出し部分の長さの変化を測定し、ベルトの長さの変化に一致する信号をコントローラに送信するエンコーダをさらに備え、
コントローラがプログラミングされてモータの動作を制御し、モータの動作を開始することによって患者の胸部の周囲にベルトを締め付け、繰り出された部分の長さの変化に一致する信号が、患者の胸部の最適な蘇生圧迫を達成したことを表示するまで、締付け動作が継続されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
コントローラがプログラミングされてモータの動作を制御し、モータの動作を開始することによって患者の胸部の周囲にベルトを締め付け、ベルトによってかけられた力に一致する信号が、予め定められた設置ポイントに達するまで、締付け動作が継続されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
少なくとも部分的に患者の胸部の周囲に延長するように適合させたベルトと、
ブラダーであって、患者の周囲にベルトを締め付けたとき、ベルトと患者の間に置かれるように適合され、上記ブラダーが圧力伝達媒体で満たされるようになっているブラダーと、
作動可能にベルトに接続されており、作動させて患者の胸部の周囲をベルトで締め付けることができるモータと、
モータの動作を制御するためのコントローラと、
作動可能にブラダーに接続される圧力センサであって、上記圧力センサがブラダー内の圧力を監視するように作動させることができ、ブラダー内の圧力に一致する信号をコントローラに送信する圧力センサと
を備え、
上記コントローラは、圧力センサから送信されたブラダー内の圧力に一致する信号に呼応してモータの動作を制御するようにプログラミングされている、装置。
【請求項5】
コントローラがプログラミングされてモータの動作を制御し、モータの動作を開始することによってベルトを患者の胸部の周囲に締め付け、ブラダー内の圧力に一致する信号が予め定められた設置ポイントに達するまで、締付け動作が継続されることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
作動可能にベルトに接続され、そのベルトがベルトの繰出し長の変化に一致する信号をコントローラに送信するようになっているエンコーダをさらに備え、
コントローラがプログラミングされてモータの動作を制御し、モータの動作を開始することによって患者の胸部の周囲にベルトを締め付け、ベルトの長さの変化に一致する信号が、好適な圧迫閾値が達成されたことを表示するまで、モータの締付け動作が継続されることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
患者の胸部の好適な圧迫がいつ達成されるかを決定するため、ブラダー内の圧力に一致する信号とベルト長の変化に一致する信号を分析することによって、ブラダーの圧力の変化とベルト長の変化の速度がいつ予め定められた速度に達するかを決定するために、コントローラがプログラミングされることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
患者の胸部の好適な圧迫がいつ達成されるかを決定するため、ブラダー内の圧力に一致する信号とベルト長の変化に一致する信号を分析することによって、ブラダー内の圧力とベルト長の変化の速度の比に一致する第1の数値と、ブラダー内の圧力に一致する第2の数値の比が予め定められた比に達するかを決定するために、コントローラがプログラミングされることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
少なくとも部分的に患者の胸部の周囲に延長するように適合させたベルトと、
駆動スプールの回転がスプール周囲へのベルト取上げを生ずるようにベルトに接続された駆動スプールと、
駆動スプールを作動するためのモータと、
作動可能にモータを駆動スプールに接続する非逆転連結装置と、を備える装置。
【請求項10】
非逆転連結装置がモータを非逆転連結装置に接続している入力シャフトと、非逆転連結装置を駆動スプールに接続している出力シャフトを有し、上記の非逆転連結装置がモータによる入力シャフトの回転を許容し、それによって駆動スプールを第1の方向へ回転して、ベルトを患者の胸部の周囲に締め付け、モータが入力シャフトを第2の方向へ回転することを許容し、患者の胸部の周囲のベルトを弛緩させ、上記の非逆転連結装置が、駆動スプールにより回転力が出力シャフトにかかることに起因する出力シャフトの回転を防止することを特徴とする装置。
【請求項11】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
少なくとも部分的に患者の胸部の周囲に延長するように適合させたベルトと、
作動可能にベルトに接続して、患者の胸部の周囲にベルトの締付けと弛緩を繰り返すことができる駆動スプールと、
ブレーキシャフトを有し、上記ブレーキが作動可能に駆動スプールに接続され、駆動スプールを患者の胸部の周囲を締め付けた状態で保持できるブレーキと、駆動トレインを介して作動可能に駆動スプールに接続され、上記モータケーブルが駆動スプールを繰り返し作動させ、患者の胸部の周囲のベルトの締付けと患者の胸部の周囲のベルトの緩めをひき起こすことができるモータと、
上記駆動トレインは、モータシャフト、ギアボックス出力シャフトを備えるギアボックス、ギアボックス出力シャフト上に搭載された第1スプロケットホイール、およびギアボックス出力シャフト上に搭載された第2スプロケットホイールからなる、
上記ブレーキは、第1チェーンを介して第1スプロケットホイールに接続され、上記第1チェーンが、ブレーキシャフトに接続された第3ソケットホイールに接続され、
上記駆動スプールは、第2チェーンを介して第2スプロケットホイールに接続され、上記 第2チェーンが、ブレーキシャフトに接続された第4ソケットホイールに接続され、
モータとブレーキの動作を制御するコントローラであって、上記コントローラがモータとブレーキを作動させるようプログラムされ、ベルトの締付けと弛緩のサイクルの繰返しをひき起こし、断続的にブレーキを作動させて締付けの閾値でベルトを保持するコントローラと、を備える装置。
【請求項12】
第1のスプロケットホイールと第2のスプロケットホイールが互いに相関的なサイズに作られ、ギアボックス出力シャフトに対してブレーキシャフトのスピードを増すギアリング変化をもたらすことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
第2のスプロケットホイールと第3のスプロケットホイールが互いに相関的なサイズに作られ、ギアボックス出力シャフトに対して駆動スプールのスピードを減らすギアリング変化をもたらすことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
患者の胸部の周囲に適合され、患者を締め付けるベルトと、
作動可能にベルトに接続され、患者の胸部の周囲にベルトの締付けと弛緩を繰り返すことができる駆動スプールと、
駆動トレインを介して作動可能に駆動スプールに接続され、上記モータケーブルが駆動スプールを繰り返し作動させ、患者の胸部の周囲のベルトの締め付けと患者の胸部の周囲のベルトの緩めをひき起こすことができるモータと、
上記駆動トレインは、モータシャフト、ギアボックス出力シャフトを設けるギアボックス、ギアボックス出力シャフト上に搭載された第1スプロケットホイールからなり、上記スプロケットホイールが第1チェーンを介して駆動スプール上に搭載された第2スプロケットホイールに接続され、
ブレーキシャフトを有し、上記ソケットホイールが第3ソケットを介して第4スプロケットホイールに接続されているブレーキと、
モータとブレーキの動作を制御するコントローラであって、上記コントローラがモータとブレーキを作動させるようプログラムされ、ベルトの締付けと弛緩サイクルの繰返しをひき起こし、断続的にブレーキを作動させて締付けの閾値でベルトを保持するコントローラと、を備える装置。
【請求項15】
第2のスプロケットホイールと第3のスプロケットホイールが互いに相関的なサイズに作られ、駆動スプールに対してブレーキシャフトのスピードを増すギアリング変化をもたらすことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
ベルトに対して患者の上体を支持するように適合された第1台と、
患者の背中を横にまたがる大きさと寸法に作られ、患者の身体を横にほぼまたがる上記第1台と、
患者に対して垂直に拡がるスロットを有し、患者に対して台のほぼ水平面中心点に位置する上第1記台と、
上記スロットを介して上方に延びるように適合され、患者の周囲に延びて、患者の胴体の周囲を締め付けるように適合された上記ベルトと、
患者の胸部の周囲にベルトの締付けと弛緩を繰り返すためのベルトに作動可能に接続され、上記駆動スプールが脊椎から横方向に離して、患者の側面に配置される駆動スプールと、を備える装置。
【請求項17】
第1台と患者の間に配置され、上記第2台が患者に対して水平に延び、脊椎の凹部をほぼまたがるように適合され、脊椎の下を垂直に延び、それがスロットに実質的に重なり、第1台と第2台の間のスロットの左側と右側に隙間を形成するようになっている第2台をさらに備え、
ベルトがスロットを介して上方に延び、ベルトの右側部分はスロットの右側にある隙間を介して延び、ベルトの左側部分はスロットの左側にある隙間を介して延び、上記左右のベルト部分が患者の周囲に延び、患者の胴体の周囲で留めるように適合されていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
駆動スプールが約0.5 cm〜2.5 cmの径を有し、胸の各圧迫中に1回転を超えて回転するように適合されていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
少なくとも部分的に患者の胸部の周囲に延長するように適合させたベルトと、
回転部分の回転がベルトを回転部分に巻き付け、患者の胸部の周囲を締め付けるように、ベルトに作動可能に接続されている回転部分と、
回転部分を回転させるモータと、
上記回転部分の径が、胸部の蘇生圧迫をもたらすため駆動スプールの完全な1回転を超えることが必要とされるように選択された径である、装置。
【請求項20】
回転部分が0.5 cm〜2.5 cmの範囲の径を有する請求項19に記載の装置。
【請求項21】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
ベルトであって、患者の胸部の周囲に少なくとも部分的に延びるように適合され、上記ベルトがさらに患者の前後圧迫のために適合されたベルトと、
患者の周囲にベルトを締めたとき、ベルトと患者の間に配置されるブラダーであって、上記ブラダーが圧力伝達媒体で満たされるブラダーと、を備える装置。
【請求項22】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
患者の胸部を圧迫する手段と、
胸部を圧迫する手段と患者との間に配置され、上記ブラダーが圧力伝達媒体で満たされるブラダーと、を備える装置。
【請求項23】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
患者の胸部の周囲に少なくとも部分的に延びるように適合されるベルトであって、上記ベルトがさらに患者の前後圧迫のために適合されているベルトと、
患者の周囲にベルトを締めたとき、ベルトと患者の間に置かれ、上記の少なくとも1個のブラダーが圧力伝達媒体で満たされる少なくとも2個のブラダーと、を備える装置。
【請求項24】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
患者の胸部を圧迫する手段と、
胸部を圧迫する手段と患者との間に配置される少なくとも2個のブラダーであって、上記ブラダーが圧力伝達媒体で満たされる少なくとも2個のブラダーとを備える装置。
【請求項25】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
患者が横になることができる台と、
作動可能に台に接続されるベルトであって、患者の胸部の周囲に少なくとも部分的に延びるように適応され、上記ベルトがさらに、患者の前後圧迫のために適合されているベルトと、
作動可能にベルトに接続されるモータであって、そこにおいて、ベルトが患者の胸部を圧迫するようにモータがベルトを十分な力で駆動できるようになっているモータと、
モータとベルトに作動可能に取り付けられている駆動スプールと、
台に接続されているスピンドルと
を備え、
ベルトが患者の周囲に配置され、続いてスピンドルの周囲に配置され、
ベルトと患者の間に配置されるブラダーであって、上記ブラダーが圧力伝達媒体で満たされるブラダーと、を備える装置。
【請求項26】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
患者が横になることができる台と、
作動可能に台に接続されるベルトであって、患者の胸部の周囲に少なくとも部分的に延びるように適応され、上記ベルトがさらに、患者の前後圧迫のために適合されているベルトと、
作動可能にベルトに接続されるモータであって、そこにおいて、ベルトが患者の胸部を圧迫するようにモータがベルトを十分な力で駆動できるモータと、
モータとベルトに作動可能に接続されている駆動スプールと、
作動可能に台に接続され、患者の右に配置される第1のスピンドル、作動可能に台に接続され、患者の左に配置される第2のスピンドル、および、作動可能に台に接続され、患者の下に配置される第3のスピンドルと
を備え、
ベルトが第1のスピンドルの周囲、第2のスピンドルの周囲、および第3スピンドルの周囲に配置され、
ベルトと患者の間に配置されるブラダーであって、上記ブラダーが圧力伝達媒体で満たされるブラダーと、を備える装置。
【請求項27】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、上記装置が、
少なくとも部分的に患者の胸部の周囲に延長するように適合させたベルトと、
患者のまわりにベルトを締めたとき、ベルトと患者の間に置かれるように適合されるブラダーであって、上記ブラダーが圧力伝達媒体で満たされるブラダーと、
作動可能にベルトに接続されており、作動させて患者の胸部の周囲をベルトで締めることができるモータと、
モータの動作を制御するためのコントローラと、
作動可能にブラダーに接続される圧力センサであって、上記圧力センサがブラダー内の圧力を監視するように作動させることができ、ブラダー内の圧力に一致する信号をコントローラに送信する圧力センサと、
圧力センサから送信されたブラダー内の圧力に一致する信号に呼応してモータの動作を制御するようにプログラミングされている、上記コントローラとを備え、
モータがベルトを駆動させるとき、空気ブラダー内の圧力が約200 mmHgから約300 mmHgの範囲を超えないように、コントローラがベルトの取上げを制限することを特徴とする装置。
【請求項28】
患者の胸部を圧迫するための装置であって、
少なくとも部分的に患者の胸部の周囲に延長するように適合させたベルトと、
患者の周囲にベルトを締めたとき、ベルトと患者の間に置かれるように適合されるブラダーであって、上記ブラダーが圧力伝達媒体で満たされるブラダーと、
作動可能にベルトに接続されており、作動させて患者の胸部の周囲をベルトで締めることができるモータと、
モータの動作を制御するためのコントローラと、
作動可能にブラダーに接続された圧力センサであって、上記圧力センサがブラダー内の圧力を監視するように作動させることができ、ブラダー内の圧力に一致する信号をコントローラに送信する圧力センサと、
圧力センサから送信されたブラダー内の圧力に一致する信号に呼応してモータの動作を制御するようにプログラミングされている上記コントローラとを備え、
ブラダー内の圧力が約10 mmHg〜約50 mmHgの範囲に達したとき、コントローラがモニタに対して圧迫前ベルト張力を設定するよう指示することを特徴とする装置。
【請求項29】
胸部圧迫装置であって、
患者の胸部の周囲に圧迫ベルトを繰り返し締め付ける手段に作動可能に接続され、上記圧迫ベルトが符号化スケール(encoding scale)を有する圧迫ベルトと、
符号化スケールを走査できるスキャナであって、上記スキャナが符号化スケールを走査できるように配置されたスキャナとを備え、
符号化スケールの走査に基づき、スキャナが圧迫ベルトの移動距離を表示できる信号を生み出せることを特徴とする装置。
【請求項30】
符号化スケールが機械的な符号化スケールであることを特徴とする請求項29に記載の胸部圧迫装置。
【請求項31】
符号化スケールが光学的符号化スケールであることを特徴とする請求項29の胸部圧迫装置。
【請求項32】
符号化スケールが磁気符号化スケールであることを特徴とする請求項29の胸部圧迫装置。
【請求項33】
胸部圧迫装置であって、
患者の胸部の周囲に圧迫ベルトを繰り返し締め付ける手段に作動可能に接続されている圧迫ベルトと、
圧迫ベルトに作動可能に接続される回転部分であり、上記回転部分が角張った符号化スケールを有する回転部分と、
角張った符号化スケールを走査できるスキャナであって、上記スキャナが角張った符号化スケールを走査できるように配置されたスキャナとを備え、
圧迫ベルトの移動距離を表示できる符号化スケールの走査に基づき、スキャナが信号を生み出せることを特徴とする装置。
【請求項34】
符号化スケールが機械的な符号化スケールであることを特徴とする請求項33の胸部圧迫装置。
【請求項35】
符号化スケールが光学的符号化スケールであることを特徴とする請求項33の胸部圧迫装置。
【請求項36】
符号化スケールが磁気符号化スケールであることを特徴とする請求項33の胸部圧迫装置。
【請求項37】
胸部圧迫装置であって、
患者の胸部の周囲に圧迫ベルトを繰り返し締め付ける手段に作動可能に接続され、上記圧迫ベルトが符号化スケールを有する圧迫ベルトと、
符号化スケールを走査できるスキャナであって、上記スキャナが符号化スケールを走査できるように配置されたスキャナとを備え、
符号化スケールの走査に基づき、スキャナが圧迫ベルトの移動の変化率を表示できる信号を生み出せることを特徴とする装置。
【請求項38】
符号化スケールが機械的な符号化スケールであることを特徴とする請求項37の胸部圧迫装置。
【請求項39】
符号化スケールが光学的符号化スケールであることを特徴とする請求項37の胸部圧迫装置。
【請求項40】
符号化スケールが磁気符号化スケールであることを特徴とする請求項37の胸部圧迫装置。
【請求項41】
胸部圧迫装置であって、
患者の胸部の周囲に圧迫ベルトを繰り返し締め付ける手段に作動可能に接続される圧迫ベルトであって、上記圧迫ベルトが符号化スケールを有する圧迫ベルトと、
圧迫ベルトに作動可能に接続される回転部分であって、上記回転部分が角張った符号化スケールを有する回転部分と、
角張った符号化スケールを走査できるスキャナであって、上記スキャナが角張った符号化スケールを走査できるように配置されたスキャナとを備え、
符号化スケールの走査に基づき、上記スキャナが圧迫ベルトの移動の変化率を表示できる信号を生み出せることを特徴とする装置。
【請求項42】
符号化スケールが機械的な符号化スケールであることを特徴とする請求項41の胸部圧迫装置。
【請求項43】
符号化スケールが光学的符号化スケールであることを特徴とする請求項41の胸部圧迫装置。
【請求項44】
符号化スケールが磁気符号化スケールであることを特徴とする請求項41の胸部圧迫装置。
【請求項45】
胸部圧迫装置であって、
患者の胸部の周囲に圧迫ベルトを繰り返し締め付ける手段に作動可能に接続される圧迫ベルトであって、上記圧迫ベルトが複数のマーカを有し、複数のマーカの1つ1つがスキャナで走査できるようになった圧迫ベルトと、
複数のマーカの1つ1つを走査することができ、圧迫ベルトが移動するにつれて、スキャナが複数のマーカの1つ1つを測定できるように配置されるスキャナとを備え、
複数マーカの走査に基づき、上記スキャナが圧迫ベルトの移動距離を表示できる信号を生み出せることを特徴とする装置。
【請求項46】
胸部圧迫装置であって、
患者の胸部の周囲に圧迫ベルトを繰り返し締め付ける手段に作動可能に接続されている圧迫ベルトと、
圧迫ベルトに作動可能に接続された回転部分であって、上記回転部分が複数のマーカを有し、上記複数マーカの1つ1つがスキャナで走査可能である回転部分と、
複数のマーカの1つ1つを走査することができ、回転部分が回転するにつれて、スキャナが複数のマーカの1つ1つを測定できるように配置されるスキャナとを備え、
複数マーカの走査に基づき、上記スキャナが圧迫ベルトの移動距離を表示できる信号を生み出せることを特徴とする装置。
【請求項47】
胸部圧迫装置であって、
患者の胸部の周囲に圧迫ベルトを繰り返し締め付ける手段に作動可能に接続される圧迫ベルトであって、上記圧迫ベルトが複数のマーカを有し、複数のマーカの1つ1つがスキャナで走査できるようになった圧迫ベルトと、
複数のマーカの1つ1つを走査することができるスキャナであって、圧迫ベルトが移動するにつれて、スキャナが複数のマーカの1つ1つを測定できるように配置されるスキャナとを備え、
複数マーカの走査に基づき、上記スキャナが圧迫ベルトの移動の変化率を表示できる信号を生み出せることを特徴とする装置。
【請求項48】
胸部圧迫装置であって、
患者の胸部の周囲に圧迫ベルトを締め付ける手段に作動可能に接続されている圧迫ベルトと、
圧迫ベルトに作動可能に接続された回転部分であって、上記回転部分が複数のマーカを有し、上記複数マーカの1つ1つがスキャナで走査可能である回転部分と、
複数のマーカの1つ1つを走査することができるスキャナであって、回転部分が回転するにつれて、スキャナが複数のマーカの1つ1つを測定できるように配置されるスキャナとを備え、
複数マーカの走査に基づき、上記スキャナが圧迫ベルトの移動の変化率を表示できる信号を生み出せることを特徴とする装置。
【請求項49】
圧迫ベルトを駆動させる胸部圧迫装置内で胸部圧迫ベルトの移動を計算する方法であって、上記方法は、
胸部圧迫装置を提供するステップを備え、圧迫装置は、
患者の胸部の周囲に圧迫ベルトを繰り返し締め付ける手段に作動可能に接続され、上記圧迫ベルトが符号化スケールを有する圧迫ベルトと、
符号化スケールを走査できるスキャナであって、上記スキャナが符号化スケールを走査できるように配置されたスキャナとを備え、
圧迫ベルトが移動する距離を表示できる符号化スケールの走査に基づき、スキャナが信号を生み出すことができ、
圧迫ベルトが移動するにつれて、スキャナで符号化スケールを走査し、上記スキャナが圧迫ベルトが移動したことを示す信号を生み出し、
プロセッサに信号を提供し、及び、
プロセッサを使用して圧迫ベルトが移動する距離を計算するステップからなる方法。
【請求項50】
胸部圧迫装置内で、圧迫ベルトの緊張の圧迫閾値を設定する方法であって、上記方法が、
胸部圧迫装置を提供し、胸部圧迫装置は、
患者の胸部の周囲に圧迫ベルトを繰り返し締め付ける手段に作動可能に接続され、上記圧迫ベルトが符号化スケールを有する圧迫ベルトと、
符号化スケールを走査できるスキャナであって、上記スキャナが符号化スケールを走査できるように配置されたスキャナとを備え、
符号化スケールの走査に基づき、スキャナが圧迫ベルトの移動の変化率を表示できる信号を生み出せることができ、
圧迫ベルトが移動するにつれて、スキャナで符号化スケールを走査し、上記スキャナが圧迫ベルトの移動率を示す信号を生み出し、
プロセッサにスキャナ信号を提供し、
圧迫ベルトの移動の変化率が予め定められた数値を下回った地点で、圧迫ベルトの緊張の圧迫閾値を設定するため、スキャナ信号を処理するプロセッサを使用するステップからなる方法。
【請求項51】
当初はサイズが知られていない患者において特定の圧迫深度を達成するため、圧迫ベルトの作動長を設定する方法であって、上記方法が、
胸部圧迫装置を提供し、胸部圧迫装置は
患者の胸部の周囲に繰り返し締め付けられる手段に作動可能に接続される圧迫ベルトであって、上記圧迫ベルトが符号化スケールを有する圧迫ベルトと、
符号化スケールを走査できるスキャナであって、上記スキャナが符号化スケールを走査できるように配置されたスキャナとを備え、
圧迫ベルトが移動する距離を表示できる符号化スケールの走査に基づき、スキャナが信号を生み出すことができ、
圧迫ベルトが移動するにつれて、スキャナで符号化スケールを走査し、上記スキャナが圧迫ベルトの移動距離と圧迫ベルトの変化率の両方を示すスキャナ信号を生み出し、
プロセッサにスキャナ信号を提供し、
圧迫ベルト移動の変化率が予め定められた数値を下回った点で、圧迫ベルトの緊張の圧迫閾値を設定するため、スキャナ信号を処理するプロセッサを使用し、
圧迫ベルトが緊張の圧迫閾値にある点に圧迫ベルトの作動長を設定するため、プロセッサを使用してスキャナ信号を処理し、プロセッサを使用して、圧迫ベルト作動長を予め定められた一連の圧迫ベルト移動と比較し、及び
プロセッサを使用して、圧迫ベルトの作動長に基づき、一連の圧迫ベルト移動からの特定のベルト移動を設定することからなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図28a】
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【図29】
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【図29a】
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【図30】
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【図30a】
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【図31】
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【図31a】
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【図32】
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【図32a】
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【図33】
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【図33a】
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【図34】
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【図34a】
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【図35】
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【図35a】
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【図36】
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【図36a】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【公開番号】特開2012−96044(P2012−96044A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273831(P2011−273831)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【分割の表示】特願2002−592858(P2002−592858)の分割
【原出願日】平成14年5月24日(2002.5.24)
【出願人】(500087017)ゾール・サーキュレイション・インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Zoll Circulation, Inc.
【Fターム(参考)】