説明

圧延油の濃度測定方法

【課題】 安全で手間のかからない圧延油の濃度測定方法を提供する。
【解決手段】 圧延油を少量採取し、水分計上の皿の濾紙に圧延油を染み込ませ、以下、自動的に測定する方法である。初期重量を測定するステップと、該測定値と基準値とを比較するステップと、該ステップがNOなら、やり直すステップと、該ステップがYESなら加熱するステップと、重量変化の有無を判断するステップと、該ステップがYESなら、加熱後重量を測定するステップと、該加熱後重量で前記初期重量を割り算して100を掛けるステップと、該計算値を表示するステップを含む。また前記において、予め圧延油の種類毎に、従来の酸分解法と本発明の水分計による圧延油濃度の測定値との関係を求めておき、前記、水分計による測定値に対する上乗値を決定し、該上乗値を水分計による測定値に上乗せする
ことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延油の濃度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板圧延において使用される圧延油の濃度は、圧延性の安定化または圧延後のコイル防錆の上で重要な管理指標である。一般的に板圧延で使用される圧延油の濃度測定には、薬剤を使用した酸分解法と超音波式オンライン濃度計などがあった。
【0003】
前者の酸分解法の一般的な濃度の測定方法は次の通りである。圧延油100mlをフラスコに採取し、沸騰石,食塩を添加して加熱促進し、濃硫酸(12ml)を加え、濃硝酸(6ml)を加え、60分加熱して油分,鉄分を分離する。分離した油層の厚みを目視で確認して油分量を測定し、この油分量を採取量で割り算(濃度=油分量÷採取量(100ml)×100)して、濃度に換算する。
【0004】
後者の超音波式オンライン濃度計は、測定液中に超音波を発振して濃度を測定する方法でで、圧延油の循環配管に設置することで濃度を連続的に測定でき、前者の酸分解法のような手間も掛からない便利な方法である。
【特許文献1】特開平7−284608号公報
【特許文献2】特開2005−91306公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の方法では、硫酸,硝酸の劇物など数種の薬剤が必要なため、次ぎのような問題点がある。劇物が使用されるため安全性に欠ける。また、薬剤の飛散防止のため、保護眼鏡,ゴム手袋,腕抜きなどの安全対策が必要である。そして、測定による手間が掛かり、拘束時間が長い。
【0006】
また後者では次のような問題がある。設備投資が高価となる。配管の中の気泡および鉄分,スカム等の影響を受けやすく、誤差が生じやすい。実用化されている例は少ない。
【0007】
本発明は上記課題を解決し、安全で手間のかからない圧延油の濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1課題解決手段は、圧延油を少量採取し、水分計上の皿の濾紙に圧延油を染み込ませ、以下、自動的に測定する方法であって、初期重量を測定するステップと、該測定値と基準値とを比較するステップと、該ステップがNOなら、やり直すステップと、該ステップがYESなら加熱するステップと、重量変化の有無を判断するステップと、該ステップがYESなら、加熱後重量を測定するステップと、該加熱後重量で前記初期重量を割り算して100を掛けるステップと、該計算値を表示するステップを含むことである。
【0009】
本発明の第2課題解決手段は、第1課題解決手段に加え、予め圧延油の種類毎に、従来の酸分解法と本発明の水分計による圧延油濃度の測定値との関係を求めておき、前記、水分計による測定値に対する上乗値を決定し、該上乗値を水分計による測定値に上乗せすることである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、硫酸,硝酸等の劇物が不要なために、作業者の安全面が改善された。このため、保護眼鏡,ゴム手袋,腕抜き等の装着が不要となり、作業者の作業負荷の改善が可能となった。また、自動測定の部分が多く、作業者の拘束時間の短縮が可能となったばかりでなく、分析に必要な沸騰石,硫酸,硝酸が不要でコスト削減が可能となった。しかも、水分計自体は非常に安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の一実施例を図面に基づき説明する。
図1において、圧延油Aの5g程度を採取し、水分計1上の皿の濾紙Bに染み込ませる。圧延油の初期重量を測定し、ランプ(ハロゲンまたは赤外線)2で加熱して水分を蒸発させる(約20分)。そして、加熱後の重量を測定し、その値と前記初期重量との割合が濃度となる。
【0012】
ここで、前記初期重量の測定からをコンピュータにより自動的に行う。即ち、図2のフローチャートにおいて、自動装置をSTARTさせる。
初期重量を測定する(ステップ1)、
該測定値と基準値(0.59g)以上かを比較する(ステップ2)、
該ステップがNOなら、やり直す(ステップ8)、
該ステップがYESなら加熱する(ステップ3)、
重量変化の有無を判断する(ステップ4)、
該ステップがYESなら、加熱後重量を測定する(ステップ5)、
該加熱後重量で前記初期重量を割り算して100を掛ける(ステップ6)、
該計算値を表示し(ステップ7)、ENDに至る。
また、ステップ4がNOなら加熱継続する(ステップ9)。
【0013】
このように、手順1〜9は自動測定であり、計器に表示される値を読み取るのみで良く、作業者が分析に拘束される時間は短く、薬剤も必要なく安全である。
【0014】
〔実施例〕
実際の冷間圧延ミルにおいて、従来の酸分解法と本発明の水分計により測定した圧延油濃度の比較結果を、図3に示す。同時刻に圧延油サンプルを採取し、従来方法と本発明方法で濃度測定を行った。このときの圧延油循環はリサキュエーション,圧延油は合成エステル+改質油脂ベース,ノニオン乳化系であった。
【0015】
図3に示すように、水分計と従来の酸分解法による測定値には強い正の相関がある。つまり、現状と同等の圧延油濃度の測定が可能であることが分かる。そして、水分計の方が約0.06%(定数)低い値を示す点については、下記のように対応する。
(1)測定値に定数を上乗せした値を正規の測定値として採用する。
(2)管理目標値の変更を行い、定数を上乗せした管理値を採用する。
【0016】
圧延油は使用状態であれば、ロールおよび板から発生する鉄分を含むが、鉄分は高々1000ppm程度ならば測定誤差範囲である。
【0017】
本発明は前記した実施例や実施態様に限定されず、特許請求の範囲および範囲を逸脱せずに種々の変形を含む。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、圧延油の濃度測定方法に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施に使用される装置の説明図である。
【図2】自動測定のフローチヤートである。
【図3】従来の酸分解法と本発明の水分計による測定値の比較グラフである。
【符号の説明】
【0020】
A 圧延油
B 濾紙
1 水分計
1a 皿
2 ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延油を少量採取し、水分計上の皿の濾紙に圧延油を染み込ませ、以下、自動的に測定する方法であって、
初期重量を測定するステップと、
該測定値と基準値とを比較するステップと、
該ステップがNOなら、やり直すステップと、
該ステップがYESなら加熱するステップと、
重量変化の有無を判断するステップと、
該ステップがYESなら、加熱後重量を測定するステップと、
該加熱後重量で前記初期重量を割り算して100を掛けるステップと、
該計算値を表示するステップを含むことを特徴とする圧延油の濃度測定方法。
【請求項2】
予め圧延油の種類毎に、従来の酸分解法と本発明の水分計による圧延油濃度の測定値との関係を求めておき、前記、水分計による測定値に対する上乗値を決定し、該上乗値を水分計による測定値に上乗せすることを特徴とする請求項1記載の圧延油の濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−224463(P2008−224463A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64214(P2007−64214)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)