説明

圧延装置

【課題】圧延装置に備わるローラの数を少なくしつつ、圧延時にバンドを支持するローラ(バックアップローラ)の剛性を高め、バンドの加圧時にバックアップローラが撓むことを抑制することが可能な圧延装置を提供する。
【解決手段】圧延装置1においては、バックアップローラ13は、互いに平行に配置される第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22を有し、第一バックアップローラ21は、第一バックアップローラ21の最大径部として形成される第一フランジ23を有し、第二バックアップローラ22は、第二バックアップローラ22の最大径部として形成される第二フランジ24を有し、第一フランジ23及び第二フランジ24は、軸方向の位置が異なるように配置され、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22は、第一フランジ23の外周と第二フランジ24の外周とが重なる部分を有するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製無端バンドを圧延する圧延装置は公知であり、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の圧延装置は、圧延対象である金属製無端バンド(以下、バンドと記載する)が掛け渡される第一ベアリングローラ及び第二ベアリングローラと、第二ベアリングローラを間に挟んで対向配置される圧延ローラ及びバックアップローラと、を備える。
上記圧延装置は、バンドが第一ベアリングローラ及び第二ベアリングローラに掛け渡された状態で、前記バックアップローラで前記第二ベアリングローラを前記圧延ローラに向けて押して、第二ベアリングローラと圧延ローラとでバンドを挟んで加圧することによって、バンドを圧延する。このバンドの加圧時には、バックアップローラが第二ベアリングローラを支持する。
【0004】
上記バックアップローラは、押圧手段に接続される第一バックアップローラ(特許文献1における圧力ローラ13に相当)と、第一バックアップローラと第二ベアリングローラとの間に配置される第二・第三バックアップローラ(特許文献1における支持ローラ12・12に相当)と、を有する。第二・第三バックアップローラは、互いに若干の隙間を有した状態で、第二ベアリングローラの周方向に並設されている。
【0005】
上述の圧延装置は、3つのバックアップローラを有しているが、ローラの数が多くなれば、各ローラの位置関係の調整等、圧延装置の調整に要する工数が増加する点で不利である。さらに、装置の製造コストがかかる点で不利である。
従って、ローラの数は少ない方が好ましい。
【0006】
そこで、上記圧延装置のバックアップローラについて、第一バックアップローラを用いずに、第二・第三バックアップローラのみを用いて、ローラの数を減少させることが考えられる。
このように構成すると、バンドの加圧時に第二・第三バックアップローラのみで第二ベアリングローラを支持することになるので、第二・第三バックアップローラの径を大きくして、第二・第三バックアップローラの剛性を高める必要がある。
【0007】
図7(a)に示すように、バンドの加圧時、第二・第三バックアップローラ110・120で第二ベアリングローラ130を押す際、第二・第三バックアップローラ110・120は、反力「F」を受ける。このとき、第二・第三バックアップローラ110・120の径が小さければ、第二・第三バックアップローラ110・120は、反力「F」を受けることによって撓んでしまうことがある。
そして、バンドの加圧時に、第二・第三バックアップローラ110・120が撓んでしまうと、第二・第三バックアップローラ110・120の姿勢が崩れて、これにより圧延作業を精確に行えなくなる問題が生じる。
【0008】
これに対し、第二・第三バックアップローラ110・120の径が大きければ、第二・第三バックアップローラ110・120の剛性が高まり、これによりバンドの加圧時における第二・第三バックアップローラ110・120の撓みの発生を抑制できる。
【0009】
ここで、第二ベアリングローラ130と第二バックアップローラ110との各軸心を互いに結ぶ軸心連結線Xと、第二ベアリングローラ130と第三バックアップローラ120との各軸心を互いに結ぶ軸心連結線Yと、のなす角をローラ角「2θ」とする。
バンドの加圧時、第二・第三バックアップローラ110・120は反力「F」を受けるが、詳細には、第二バックアップローラ110は、反力「F」を軸心連結線X方向と軸心連結線Y方向とに分解した分力のうちで、軸心連結線X方向に分解した方の分力「F/(2cosθ)」を受ける。これに対し、第三バックアップローラ120は、反力「F」を軸心連結線Y方向に分解した方の分力「F/(2cosθ)」を受ける。
【0010】
上記したように第二・第三バックアップローラの径を大きくすると、例えば図7(b)に示すような大径の第二・第三バックアップローラ140・150を用いると、第二・第三バックアップローラ140・150の剛性を高くすることができる。
この背反として、第二・第三バックアップローラ140・150が大型化するので、この大型化に応じて第二・第三バックアップローラ140・150の軸心間の距離「L」が大きくなり、ローラ角「2θ」が大きくなる。これにより、各分力「F/(2cosθ)」が増加する。
従って、大きな径の第二・第三バックアップローラ140・150を用いて、第二・第三バックアップローラ140・150の剛性を高めても、これに伴って各分力「F/(2cosθ)」が増加するので、この増加した各分力「F/(2cosθ)」によって、バンドの加圧時に第二・第三バックアップローラ140・150が撓んでしまう問題が生じうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2006−507948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、圧延装置に備わるローラの数を少なくしつつ、圧延時にバンドを支持するローラ(バックアップローラ)の剛性を高め、バンドの加圧時にバックアップローラが撓むことを抑制することが可能な圧延装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の圧延装置は、金属製無端バンドが掛け渡される第一ベアリングローラ及び第二ベアリングローラと、前記金属製無端バンドを圧延する圧延ローラと、前記圧延ローラに対して前記第二ベアリングローラを間に挟んだ対向位置に配置されるバックアップローラと、を備え、前記バックアップローラによって前記第二ベアリングローラを前記圧延ローラに向けて押して、前記第二ベアリングローラと前記圧延ローラとで前記金属製無端バンドを挟んで加圧することによって、前記金属製無端バンドを圧延する圧延装置であって、前記バックアップローラは、互いに平行に配置される第一バックアップローラ及び第二バックアップローラを有し、前記第一バックアップローラは、前記第一バックアップローラの最大径部として形成される第一フランジを有し、前記第二バックアップローラは、前記第二バックアップローラの最大径部として形成される第二フランジを有し、前記第一フランジ及び第二フランジは、軸方向の位置が異なるように配置され、前記第一バックアップローラ及び第二バックアップローラは、前記第一フランジの外周と第二フランジの外周とが重なる部分を有するように配置される。
【0014】
請求項2に記載の圧延装置においては、前記第一フランジ及び第二フランジは、それぞれ複数設けられ、前記複数の第一フランジ及び第二フランジは、それぞれ前記第一バックアップローラ及び第二バックアップローラの軸方向中央部を中心として、対称となる位置に配置される。
【0015】
請求項3に記載の圧延装置においては、前記第一フランジ及び第二フランジは、それぞれ複数設けられ、前記第一バックアップローラにおける、軸方向中央側に配置される一対の前記第一フランジの間の部位、及び第二バックアップローラにおける、軸方向中央側に配置される一対の前記第二フランジの間の部位は、前記第一バックアップローラにおける、前記一対の第一フランジよりも軸方向外側に位置する部位、及び前記第二バックアップローラにおける、前記一対の第二フランジよりも軸方向外側に位置する部位、よりも大径に形成される、太径部として構成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧延装置に備わるローラの数を少なくしつつ、圧延時にバンドを支持するローラ(バックアップローラ)の剛性を高め、バンドの加圧時にバックアップローラが撓むことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】圧延装置の概略構成図である。
【図2】第一バックアップローラ及び第二バックアップローラの斜視図である。
【図3】図1を矢印C方向から見た図であり、(a)はバンド、第一バックアップローラ、及び第二ベアリングローラを示し、(b)はバンド、第二バックアップローラ、及び第二ベアリングローラを示す。
【図4】第一バックアップローラ、第二バックアップローラ、及び第二ベアリングローラの拡大図である。
【図5】圧延装置を用いてバンドを圧延するときの手順を示す図である。
【図6】バックアップローラの数を一つとした場合の圧延装置を示す図である。
【図7】従来の圧延装置のバックアップローラの数を二つに減らした場合を示す図であり、(a)は第二・第三バックアップローラ及び第二ベアリングローラを示し、(b)は図6(a)のものよりも径の大きい第二・第三バックアップローラを用いた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る圧延装置の実施の一形態である圧延装置1について、図面を参照して説明する。
【0019】
圧延装置1は、リング形状の金属製無端バンド(以下、「バンド」)2を圧延することにより、バンド2の周長及び厚みを所望のサイズに形成する装置である。
例えば、圧延装置1でバンド2(マルエージング鋼等の特殊鋼からなる無端バンド)が圧延されることによって、無段変速機用ベルト(CVTベルト)の部品が製造される。
【0020】
図1に示すように、圧延装置1は、第一ベアリングローラ11及び第二ベアリングローラ12と、バックアップローラ13と、圧延ローラ14と、の合計四種のローラを備える。
圧延装置1は、第一ベアリングローラ11及び第二ベアリングローラ12にバンド2が掛け渡された状態で、バックアップローラ13によって、第二ベアリングローラ12を圧延ローラ14に向けて押して、第二ベアリングローラ12と圧延ローラ14とでバンド2を挟んで加圧することによって、バンド2を圧延する。
【0021】
圧延装置1においては、第二ベアリングローラ12の径が圧延ローラ14の径よりも小さく設定されている。バンド2は、このような所定の大きさの径を有する第二ベアリングローラ12と圧延ローラ14とに挟まれて加圧されることによって、圧延される。
また、上記したように第二ベアリングローラ12の径が小さく設定されているので、第二ベアリングローラ12の剛性が低くなって、荷重を受ける能力が低くなる。そこで、バンド2の加圧時に、第二ベアリングローラ12の加重を受ける能力を高めるべく、第二ベアリングローラ12をバックアップローラ13で支持するように構成している。
【0022】
第一ベアリングローラ11及び第二ベアリングローラ12は、それぞれ略円柱形状に形成されており、かつ、軸回りに回転可能に支持されている。
第一ベアリングローラ11及び第二ベアリングローラ12は、所定間隔を開けて配置されており、かつ、バンド2が掛け渡される。
【0023】
第二ベアリングローラ12は、第二ベアリングローラ12に対して圧延ローラ14から離間する方向に圧力を付与するアクチュエータ(エアシリンダ)15に接続されている。
【0024】
第一ベアリングローラ11は、第二ベアリングローラ12に対して接近/離間する方向(以下、「A方向」)に移動可能に支持されている。
これに対し、第二ベアリングローラ12は、A方向に移動不可能に支持されている。
【0025】
第一ベアリングローラ11は、第一ベアリングローラ11をA方向に移動する移動装置16に接続されている。
移動装置16で第一ベアリングローラ11が適宜A方向に移動されることによって、第一ベアリングローラ11及び第二ベアリングローラ12に掛け渡されるバンド2のテンションが所望の大きさに保たれる。つまり、圧延によるバンド2の周長の変化に応じて、移動装置16を作動させることによって、バンド2のテンションを一定に保っている。
【0026】
移動装置16は、アクチュエータ(モータ)17と、モータ17及び第一ベアリングローラ11に接続され、モータ17の駆動力で回転駆動されることにより第一ベアリングローラ11をA方向に移動させる送り手段(ボールねじ)18と、第一ベアリングローラ11に接続され、第一ベアリングローラ11及び第二ベアリングローラ12に掛け渡されるバンド2の張力を検出する張力検出手段(ロードセル)19と、第一ベアリングローラ11に接続され、第一ベアリングローラ11の位置を検出する位置検出手段(リニアゲージ)20と、を有する。
そして、ロードセル19の検出値及びリニアゲージ20の検出値に基づいて、モータ17の回転するタイミング、回転速度等が調整され、第一ベアリングローラ11の位置が制御される。
【0027】
バックアップローラ13及び圧延ローラ14は、それぞれ第二ベアリングローラ12を間に挟んで対向位置に配置される。
圧延ローラ14は略円柱形状に形成されており、軸回りに回転可能に支持されている。また、圧延ローラ14は、モータ(不図示)に接続されており、当該モータの回転駆動力で軸回りに回転する。
一方、バックアップローラ13は、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22の合計二つのローラにより構成される。
第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22は、略円柱形状に形成されており、軸回りに回転可能に支持されている。
第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22は、それぞれの回転軸心と第二ベアリングローラ12の回転軸心との距離が同一となるように、第二ベアリングローラ12の周方向に並んで配置されている。また、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22は、それぞれモータ(不図示)に接続されており、当該モータの回転駆動力でそれぞれ軸回りに回転する。
【0028】
また、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22は、圧延ローラ14に向かう方向(以下、「B方向」)に移動可能に支持されている。
さらに、バックアップローラ13(第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22)と圧延ローラ14との間に配置される第二ベアリングローラ12は、B方向に移動可能に支持されている。
これに対し、圧延ローラ14は、B方向に移動不可能に支持されている。
なお、B方向とA方向とは、直交している。
【0029】
また、図2及び図3に示すように、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22は、材料特性から軸方向の中央部分が撓みやすいので、それを考慮して中央部分の径を両端部分の径よりも大きく設定し、太径部21a・22aとして形成している。
また、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22には、両端部分に回転支持用のベアリング(不図示)がそれぞれ取り付けられるので、第一バックアップローラ21と第二バックアップローラ22との間に距離を設けて当該ベアリングの配置スペースを確保する必要がある。このため、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22では、両端部分の径が太径部21a・22aの径よりも小さく設定されている。
【0030】
第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22は、互いの軸が平行となるように配置されている。
第一バックアップローラ21は、外周面に、第一フランジ23・23・23・23を有する。各第一フランジ23は、円盤形状に形成されており、その径が第一バックアップローラ21の太径部21aの径よりも大きく設定され、第一バックアップローラ21の最大径部として形成されている。また、各第一フランジ23は、第一バックアップローラ21と同心となる位置に配置されている。各第一フランジ23は、第一バックアップローラ21の軸方向に所定間隔を開けて配置されており、第一バックアップローラ21の太径部21aを中心に対称に配置されている。つまり、軸方向中央側(軸方向中央に最も近い位置)に配置される一対の第一フランジ23と第一フランジ23との間には太径部21aが形成されている(図2及び図3参照)。
第二バックアップローラ22は、外周面に、第二フランジ24・24を有する。各第二フランジ24は、円盤形状に形成されており、その径が第二バックアップローラ22の太径部22aの径よりも大きく設定され、第二バックアップローラ22の最大径部として形成されている。また、各第二フランジ24は、第二バックアップローラ22と同心となる位置に配置されている。各第二フランジ24は、第二バックアップローラ22の軸方向に所定間隔を開けて配置されており、第二バックアップローラ22の太径部22aを中心に対称に配置されている。つまり、第一バックアップローラ21の場合と同様に、軸方向中央側(軸方向中央に最も近い位置)に配置される一対の第二フランジ24と第二フランジ24との間には太径部22aが形成されている。
【0031】
第一・第二バックアップローラ21・22を作動させて第二ベアリングローラ12を押す際には、各第一・第二フランジ23・24が第二ベアリングローラ12に接触することによって、第二ベアリングローラ12が押される。このとき、第一・第二バックアップローラ21・22の太径部21a・22aと第二ベアリングローラ12との間に所定間隔の隙間が形成されており、バンド2は、第二ベアリングローラ12において当該隙間を通る位置に掛け渡される(図3参照)。
これにより、バンド2が、第一・第二バックアップローラ21・22と第二ベアリングローラ12とに挟まれて加圧されることが回避されて、第二ベアリングローラ12と圧延ローラ14とにのみ挟まれて加圧される。
また、上記したように各第一・第二フランジ23・24は、それぞれ第一・第二バックアップローラ21・22の太径部21a・22aを中心にして対称に配置されているので、第二ベアリングローラ12をバランスよく支持することができ、安定的に支持できる。
【0032】
第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22は略同形状および略同径に形成されており、さらに各第一フランジ23及び各第二フランジ24は同形状および略同径に形成されている。また、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22は、第二ベアリングローラ12の軸心と圧延ローラ14の軸心とを結ぶ軸心連結線Wを中心にして線対称に配置されている。
これにより、第一・第二バックアップローラ21・22で第二ベアリングローラ12を圧延ローラ14に向けて押す際に、バランスよく押す(バランスよく支持する)ことができる。
【0033】
各第一フランジ23及び各第二フランジ24は、軸方向(第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22の軸方向)の位置が異なるように配置される。
このように、第一フランジ23及び第二フランジ23とが軸方向にずれた位置に配置されていることによって、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22を、各第一フランジ23の外周と各第二フランジ24の外周とが重なる部分を有する位置に配置することができる。
【0034】
つまり、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22を軸方向から見たとき、各第一フランジ23の外周の一部分と各第二フランジ24の外周の一部分とが重なって(オーバーラップして)見えるように(二つの第一フランジ23・23と、それらの間に位置する第二フランジ24とが噛み合いつつ重なるように)配置することができる(図1及び図2参照)。
これにより、第一バックアップローラ21と第二バックアップローラ22とを出来る限り近接した状態に配置できる。
【0035】
このように、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22が、各第一フランジ23の外周と各第二フランジ24の外周とが重なる部分を有する位置に配置されることによって、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22(太径部21a・22a)の軸径を太くしつつ、第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22の軸心間の距離「L」を小さくすることができる(図4参照)。
距離「L」が小さくなると、第二ベアリングローラ12・第一バックアップローラ21の各軸心を互いに結ぶ軸心連結線Xと、第二ベアリングローラ12・第二バックアップローラ22の各軸心を互いに結ぶ軸心連結線Yと、のなす角であるローラ角「2θ」が小さくなる。
【0036】
図4に示すように、バンド2の加圧時には、第一・第二バックアップローラ21・22は反力「F」を受ける、詳細には第一・第二バックアップローラ21・22はそれぞれ反力「F」の分力「F/(2cosθ)」を受けるが、第一・第二バックアップローラ21・22(太径部21a・22a)の径を大きくして、第一・第二バックアップローラ21・22の剛性を高めたとしても、上記のように各第一フランジ23及び各第二フランジ24の一部分が重なるように第一バックアップローラ21及び第二バックアップローラ22を配置することで、距離「L」の増加を抑制できるので、ローラ角「2θ」の増加を抑制できる。これにより、分力「F/(2cosθ)」の増加を抑制できる。
従って、バンド2の加圧時に第一・第二バックアップローラ21・22が撓むことを抑制することが可能である。
【0037】
図1に示すように、バックアップローラ13(21・22)は、押圧手段25に接続されている。
押圧手段25は、バックアップローラ13(21・22)を一体的に押すものであり、押圧手段25がバックアップローラ13(21・22)をB方向に押すことによって、バックアップローラ13(21・22)が第二ベアリングローラ12を圧延ローラ14に向けて押す(B方向に押す)。
押圧手段25は、アクチュエータ(モータ)26と、モータ26及びバックアップローラ13(21・22)に接続され、モータ26の駆動力で回転駆動されることによりバックアップローラ13(21・22)をA方向に移動させる送り手段(ボールねじ)27と、バックアップローラ13(21・22)に接続され、バックアップローラ13(21・22)にかかる荷重を検出する荷重検出手段(ロードセル)28と、を有する。
そして、ロードセル28の検出値に基づいて、モータ26の回転するタイミング、回転速度等が調整される。
【0038】
また、押圧手段25は、弾性部材29を介してバックアップローラ13(21・22)に接続されている。
【0039】
また、バックアップローラ13(21・22)には、過負荷検出手段(リミットスイッチ)30が接続されている。リミットスイッチ30は、押圧手段25とバックアップローラ13(21・22)との距離が過度に近接していないか否かを検出する。
リミットスイッチ30の検出値に基づいて、モータ26の回転するタイミング、回転速度等が調整され、これにより押圧手段25がバックアップローラ13(21・22)を過度に押すことが抑制される。
【0040】
また、所定位置に配置される温度センサ(熱電対)31の検出値に基づいて、モータ17・26の回転速度の調整等が行われ、つまりバンド2の温度に応じて圧延条件が適宜変更される。
【0041】
次に、圧延装置1を用いてバンド2を圧延するときの手順について説明する。各手順は、以下に示す(1)〜(9)の順に行われる。
【0042】
(1)図5(a)に示すように、バックアップローラ13(21・22)及び圧延ローラ14が、第二ベアリングローラ12を間に挟むとともに、第二ベアリングローラ12から所定距離だけ離間して対向配置された状態で、図5(b)に示すように、第一ベアリングローラ11及び第二ベアリングローラ12にバンド2が掛け渡される。
【0043】
(2)第一ベアリングローラ11が、移動装置16によってA方向に適宜移動されて、バンド2が狙ったテンション「Fm」で掛け渡された状態になる。
【0044】
(3)バックアップローラ13(21・22)及び圧延ローラ14が、接続されているモータによって回転される。
【0045】
(4)第二ベアリングローラ12が、エアシリンダ15(図1参照)によって大きさ「Fp」の力で支えられる。
【0046】
(5)図5(c)に示すように、バックアップローラ13(21・22)が、押圧手段25(図1参照)によってB方向に押される。
【0047】
(6)バックアップローラ13(21・22)は、回転した状態で、押圧手段25によってB方向に押されて移動され、そして第一・第二バックアップローラ21・22の各第一・第二フランジ23・24が第二ベアリングローラ12に接触する。これにより、第一・第二バックアップローラ21・22に接続されているモータの回転駆動力が第二ベアリングローラ12に伝達されて、第二ベアリングローラ12が回転する。そして、第二ベアリングローラ12の回転に伴って、第二ベアリングローラ12に掛けられたバンド2が回転して、さらに第一ベアリングローラ11も回転する。
【0048】
(7)図5(d)に示すように、押圧手段25が、バックアップローラ13(21・22)を「Fp」よりも大きな力「Fu1」でB方向に押して移動する。これにより、バックアップローラ13(21・22)及び第二ベアリングローラ12が一体的にB方向に移動されて、そして第二ベアリングローラ12に掛けられたバンド2が圧延ローラ14に接触する。
【0049】
(8)図5(e)に示すように、バンド2が圧延ローラ14に接触したことがロードセル28(図1参照)の検出値に基づいて検知されたら(ロードセル28で「Fp」が検出されたら)、押圧手段25の押圧力を「Fu1」よりも大きな「Fu2」に増加させる。これにより、バンド2が「Fu2−Fp」の力で、第二ベアリングローラ12と圧延ローラ14とに挟まれて加圧される。
このとき、バンド2、第二ベアリングローラ12、及び圧延ローラ14が回転しており、バンド2が回転しながら第二ベアリングローラ12と圧延ローラ14とに挟まれて加圧されている。これにより、バンド2の各部位が均等に加圧され、バンド2の厚み寸法にムラが生じることが抑制されつつ圧延されて、バンド2の周長が長くなる。
なお、バンド2の周長の変化に応じて、第一ベアリングローラ11が移動装置16によってA方向に適宜移動されて、これによりバンド2のテンションが一定の値「Fm」に保たれる。
【0050】
(9)バンド2の周長が所望の長さに到達したことが、リニアゲージ20の検出値に基づいて検知されると、バックアップローラ13(21・22)及び圧延ローラ14の回転等が停止されて、バンド2の圧延が終了される。
【0051】
なお、図6に示すように、バックアップローラ13を、一つのバックアップローラ32だけで構成することも可能であるが、このように構成した場合、第二ベアリングローラ12を圧延ローラ14に向けてバランスよく押すためには、バックアップローラ32を、その軸心が軸心連結線W上にくる位置に配置することが必要となる。
このとき、第二ベアリングローラ12と圧延ローラ14とでバンド2を挟んで加圧する際に、第二ベアリングローラ12自身が、A方向(軸心連結線Wと直交する方向)に作用するバンド2のテンションを受けることとなる。
このように、さらにバックアップローラ13の数を減らすことも可能であるが、本実施形態のようにバックアップローラ13を二つのローラ21・22で構成した場合と比較して、配置制約が大きくなると共に、バンド2から受けるテンションによる位置ずれ等の可能性も考慮する必要が出てくる。
これに対して、バックアップローラ13を、第二ベアリングローラ12を挟むように配置される二つのバックアップローラ21・22にて構成すれば(図1及び図3参照)、よりバランスよく第二ベアリングローラ12を押すことができると共に、バンド2からのテンションを第一バックアップローラ21(第一ベアリングローラ11側に配置されるバックアップローラ)でも受けることができるため、第二ベアリングローラ12をより確実に支持できる。
【符号の説明】
【0052】
1 圧延装置
2 金属製無端バンド
11 第一ベアリングローラ
12 第二ベアリングローラ
13 バックアップローラ
14 圧延ローラ
21 第一バックアップローラ
22 第二バックアップローラ
23 第一フランジ
24 第二フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製無端バンドが掛け渡される第一ベアリングローラ及び第二ベアリングローラと、前記金属製無端バンドを圧延する圧延ローラと、前記圧延ローラに対して前記第二ベアリングローラを間に挟んだ対向位置に配置されるバックアップローラと、を備え、
前記バックアップローラによって前記第二ベアリングローラを前記圧延ローラに向けて押して、前記第二ベアリングローラと前記圧延ローラとで前記金属製無端バンドを挟んで加圧することによって、前記金属製無端バンドを圧延する圧延装置であって、
前記バックアップローラは、互いに平行に配置される第一バックアップローラ及び第二バックアップローラを有し、
前記第一バックアップローラは、前記第一バックアップローラの最大径部として形成される第一フランジを有し、
前記第二バックアップローラは、前記第二バックアップローラの最大径部として形成される第二フランジを有し、
前記第一フランジ及び第二フランジは、軸方向の位置が異なるように配置され、
前記第一バックアップローラ及び第二バックアップローラは、前記第一フランジの外周と第二フランジの外周とが重なる部分を有するように配置される、
圧延装置。
【請求項2】
前記第一フランジ及び第二フランジは、それぞれ複数設けられ、
前記複数の第一フランジ及び第二フランジは、それぞれ前記第一バックアップローラ及び第二バックアップローラの軸方向中央部を中心として、対称となる位置に配置される、
請求項1に記載の圧延装置。
【請求項3】
前記第一フランジ及び第二フランジは、それぞれ複数設けられ、
前記第一バックアップローラにおける、軸方向中央側に配置される一対の前記第一フランジの間の部位、及び第二バックアップローラ22における、軸方向中央側に配置される一対の前記第二フランジの間の部位は、
前記第一バックアップローラにおける、前記一対の第一フランジよりも軸方向外側に位置する部位、及び前記第二バックアップローラ22における、前記一対の第二フランジよりも軸方向外側に位置する部位、よりも大径に形成される、太径部として構成される、
請求項1又は請求項2に記載の圧延装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−79030(P2011−79030A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234489(P2009−234489)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)