説明

圧縮機台数制御システム

【課題】簡易な構成で、圧縮空気の使用負荷に迅速に追従させて圧縮空気を製造することのできる圧縮機台数制御システムを提供する。
【解決手段】複数台の圧縮機2と、これら圧縮機2から圧縮空気が供給されると共に圧縮空気利用機器へ圧縮空気を送るレシーバタンク3と、このレシーバタンク3に設置される圧力センサ4と、この圧力センサ4の検出圧力に基づき圧縮機2の運転台数を変更する台数制御器5とを備える。台数制御器5により運転台数を減少させるか否かの境界値としての台数減少用圧力は、運転台数が多いほど低くなるよう設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台の空気圧縮機を備え、圧縮空気の使用負荷に応じて圧縮機の運転台数を変更する圧縮機台数制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、圧力とその変化率とに基づき、圧縮機の運転台数を増減する圧力閾値を変更することが提案されている。この特許文献1に記載の発明では、すべての圧縮機がオンオフ制御される(段落番号0029など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−120497号公報(特許請求の範囲、段落番号0140−0155、図15、図16)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧力変化率は考慮されても、運転中の圧縮機の台数は考慮されていない。また、複数台の圧縮機は、単にオンオフ制御されている。これでは、圧縮空気の使用負荷に迅速に追従させて圧縮空気を製造することができない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で運転台数を考慮して制御し、圧縮空気の使用負荷に迅速に追従させて圧縮空気を製造することのできる圧縮機台数制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、複数台の圧縮機と、これら圧縮機から圧縮空気が供給されると共に圧縮空気利用機器へ圧縮空気を送る箇所に設けられ、圧縮空気の圧力を検出する圧力センサと、この圧力センサの検出圧力に基づき前記圧縮機の運転台数を変更する台数制御器とを備え、前記台数制御器により運転台数を減少させるか否かの境界値としての台数減少用圧力は、運転台数が多いほど低くなるよう設定されることを特徴とする圧縮機台数制御システムである。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、運転台数を減少させるか否かの境界値としての台数減少用圧力は、運転台数が多いほど低くなるよう設定される。圧縮機の運転台数が多いほど、目標圧力に維持するための1台当たりの寄与率は下がり、圧力変動は抑えられるので、運転台数の増加に応じて台数減少用圧力を下げることができる。言い換えれば、通常、台数減少用圧力以上になれば圧縮機を1台停止し、台数増加用圧力以下になれば圧縮機を1台起動するが、運転台数を増すほど台数減少用圧力を下げて、圧力変動幅を抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記各圧縮機は、同時に複数台が運転される場合でもすべてが容量制御され、停止時を負荷率0%、全負荷時を負荷率100%とした場合に、運転中の前記圧縮機の1台当たりの負荷率が次式により求められる停止負荷率以下になると、運転中の1台を停止させることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機台数制御システムである。
停止負荷率(%)=(運転台数−1)/運転台数×100
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、同時に複数台が運転される場合でもすべてを容量制御しつつ、2台運転しているときは1台当たりの負荷率が50%以下になると1台停止させ、3台運転しているときは1台当たりの負荷率が67%以下になると1台停止させるというように、運転台数に応じた1台当たり負荷率に基づき停止制御することで、簡易な構成で最適な運転を行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記各圧縮機は、その吐出側の圧力を、下限圧力PLと上限圧力PHとの間に維持するように容量制御され、運転台数に応じた停止負荷率で運転中の1台を停止させるために、前記台数減少用圧力は運転台数に基づき次式により設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧縮機台数制御システムである。
台数減少用圧力={(上限圧力PH−下限圧力PL)÷運転台数}+下限圧力PL
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、停止負荷率を圧力に換算して、簡易に制御することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記圧力センサによる検出圧力が前記台数減少用圧力以上の状態を設定時間継続後に、前記圧縮機の運転台数を減少させることを特徴とする請求項3に記載の圧縮機台数制御システムである。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、圧力センサによる検出圧力が台数減少用圧力以上の状態を設定時間継続後に圧縮機の運転台数を減少させるので、圧縮機が次々と過剰に停止されるのを防止できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記各圧縮機からの圧縮空気は、共通のレシーバタンクへ供給された後、一または複数の圧縮空気利用機器へ送られ、前記圧力センサは、前記レシーバタンクに設置され、前記台数制御器により運転台数を増加させるか否かの境界値としての台数増加用圧力は、前記圧力センサの検出圧力Pの圧力変化率ΔPに基づき異なるよう設定され、圧力変化率ΔPの絶対値が第一設定値ΔP1未満である場合には、前記圧力センサの検出圧力Pが、前記台数増加用圧力としての第二下限圧力PL2以下になると1台起動させ、圧力変化率ΔPの絶対値が第一設定値ΔP1以上であるが第二設定値ΔP2未満である場合には、前記圧力センサの検出圧力Pが前記台数増加用圧力としての第一下限圧力PL1以下になると1台起動させ、それでも第一下限圧力PL1以下を維持する場合、所定の連続起動防止時間を経過するごとに1台起動させるが、前記第一下限圧力PL1よりも低圧の第二下限圧力PL2以下になれば、前記連続起動防止時間の経過を待つことなくさらに1台起動させ、圧力変化率ΔPの絶対値が第二設定値ΔP2以上である場合には、前記圧力センサの検出圧力Pが前記台数増加用圧力としての前記上限圧力PH以下であると1台起動させ、それでも前記上限圧力PH以下を維持する場合、所定の連続起動防止時間を経過するごとに1台起動させるが、前記上限圧力PHよりも低圧の第一下限圧力PL1以下になれば、前記連続起動防止時間の経過を待つことなくさらにもう1台起動させることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の圧縮機台数制御システムである。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、圧力センサの検出圧力が台数増加用圧力以下になると圧縮機を1台起動させ、それでも台数増加用圧力以下を維持する場合、所定の連続起動防止時間を経過するごとに圧縮機を1台起動させるが、圧力変化率の絶対値が設定値以上の領域では、圧力センサの検出圧力が即時増加用圧力以下になれば、所定時間の経過を待つことなく1台起動させる。このように、圧力変化率が設定値以上で大きく、しかも目標圧力範囲から大きく離れようとした場合には、所定時間の経過を待つことなく、即時増加用圧力以下で1台起動するので、圧縮機の吐出量と圧縮空気利用機器の使用量との差を迅速に是正することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記台数制御器は、前記圧力センサの検出圧力に加えて、前記各圧縮機からの圧縮空気の吐出流量、または前記各圧縮機の回転数、使用電流もしくは使用電力に基づき、前記圧縮機の運転台数を変更することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧縮機台数制御システムである。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、各圧縮機からの圧縮空気の吐出流量、または各圧縮機の回転数、使用電流もしくは使用電力に基づき、圧縮機の運転台数を補正することで、最適な台数で運転することができる。
【0018】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記台数制御器は、前記各圧縮機の使用電流または使用電力を監視し、使用電流または使用電力の少ない圧縮機を優先して運転することを特徴とする請求項6に記載の圧縮機台数制御システムである。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、使用電流または使用電力の少ない圧縮機を優先して運転することで、運転効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な構成で運転台数を考慮して制御し、圧縮空気の使用負荷に迅速に追従させて圧縮空気を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の圧縮機台数制御システムの一実施例を示す概略図である。
【図2】図1の圧縮機台数制御システムによる台数制御方法の一例を示す図であり、運転中の各圧縮機の吐出圧力、レシーバタンク内の圧力、運転台数増減表を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の圧縮機台数制御システムの一実施例を示す概略図である。本実施例の圧縮機台数制御システム1は、複数台の圧縮機2,2,…と、これら圧縮機2から圧縮空気が供給されるレシーバタンク3と、このレシーバタンク3内の圧力を検出する圧力センサ4と、この圧力センサ4の検出圧力などに基づき前記各圧縮機2を制御する台数制御器5とを備える。
【0023】
各圧縮機2は、電動式の空気圧縮機であり、圧縮機本体がモータで駆動され、外気を吸入し圧縮して吐出する。各圧縮機2からの圧縮空気は、共通のレシーバタンク3を介して、一または複数の各種の圧縮空気利用機器(図示省略)へ送られる。
【0024】
各圧縮機2は、スクリュー式、ターボ式またはレシプロ式など、その構成を特に問わないが、典型的には互いに同一の構成とされる。また、各圧縮機2は、典型的には、同一の吐出容量とされる。
【0025】
本実施例の各圧縮機2は、容量制御可能に構成される。ここでは、機械的に自力で容量制御可能とされる。容量制御の具体的構成は特に問わないが、本実施例では、圧縮機2の吸込側に設けた容量調整弁(図示省略)の開度を調整することでなされる。
【0026】
容量調整弁は、圧縮機2の吐出側の圧力を所望に維持するように、自力で開度を調整する。つまり、圧縮機2の吐出側の圧力が上昇するのに伴い、容量調整弁は開度を絞って吸入量を減少させ、これにより圧縮機2は吐出量を減少させる一方、圧縮機2の吐出側の圧力が低下するのに伴い、容量調整弁は開度を拡げて吸入量を増加させ、これにより圧縮機2は吐出量を増加させる。
【0027】
より具体的には、容量調整弁は、図2において、圧縮機2の吐出側の圧力を、下限圧力PLと上限圧力PHとの間に維持するように開度を調整する。この場合、容量調整弁は、圧縮機2の吐出側の圧力が下限圧力PL以下になると全開される一方、上限圧力PH以上になると全閉される。また、下限圧力PLと上限圧力PHとの間では、下限圧力PLから上限圧力PHへ行くに従って比例的に開度が絞られる。このように、下限圧力PLと上限圧力PHとの圧力範囲が、容量調整弁の制御範囲とされる。つまり、各圧縮機2は、容量調整弁により、規定の調整範囲PL〜PHで、吐出圧力と吐出流量とが逆比例のリニアな特性を有する。言い換えれば、吐出圧力と圧縮機2の負荷率とは一次関数になっている。なお、万一、圧縮機2の吐出側の圧力が所定の停止圧力PSを超えると、圧縮機2は強制停止される。
【0028】
本実施例の各圧縮機2は、典型的には、同時に複数台が運転される場合でもすべてが容量制御される。そのため、各圧縮機2は、全負荷運転に保持するためのフルロードロック機能を備える必要はない。
【0029】
レシーバタンク3は、各圧縮機2から圧縮空気が供給される一方、一または複数の圧縮空気利用機器へ圧縮空気を供給する中空容器である。レシーバタンク3内の圧力を検出可能に、圧力センサ4が設けられる。
【0030】
台数制御器5は、各圧縮機2および圧力センサ4に接続され、圧力センサ4による検出圧力などに基づき、各圧縮機2を制御する。本実施例では、各圧縮機2の運転の有無(つまり運転台数の変更)を切り替える。具体的な制御方法は、以下のとおりである。
【0031】
図2は、本実施例の圧縮機台数制御システム1による台数制御方法の一例を示す図であり、運転中の各圧縮機2の吐出圧力と、レシーバタンク3内の圧力(つまり圧力センサ4の検出圧力)と、運転台数増減表とを示している。
【0032】
運転台数増減表は、図2の中央に表形式で示すように、運転台数を増やすための起動表と、図2の右側に棒グラフ状に示すように、運転台数を減らすための停止表とに分けられる。起動表は、レシーバタンク3内の圧力Pとその変化率ΔPとに基づき、圧縮機2を如何に起動するか、言い換えれば運転台数を如何に増加させるかを示している。一方、停止表は、レシーバタンク3内の圧力Pと、現在実際に運転中の台数とに基づき、圧縮機2を如何に停止するか、言い換えれば運転台数を如何に減少させるかを示している。これらの制御は、圧力センサ4の検出圧力Pと圧力変化率ΔPとをそれぞれ所定周期で求め、それに基づき行われる。本実施例では、検出圧力Pとして、台数制御器5のCPUの演算周期の所定回数分(たとえば20回分)の平均値が用いられ、圧力変化率ΔPとして、直近の所定時間(たとえば直近20秒)の平均値が用いられる。
【0033】
圧力変化率ΔPとは、所定時間当たりの変動圧力である。圧力変化率ΔPがマイナスの場合、レシーバタンク3内の圧力は減少傾向にあり、圧力変化率ΔPがプラスの場合、レシーバタンク3内の圧力は増加傾向にある。圧縮空気利用機器による圧縮空気の使用量が、圧縮機2による圧縮空気の吐出量よりも多い場合、レシーバタンク3内の圧力は減少し、逆に、圧縮機2による圧縮空気の吐出量が、圧縮空気利用機器による圧縮空気の使用量よりも多い場合、レシーバタンク3内の圧力は増加する。
【0034】
圧縮機2からレシーバタンク3への配管の圧力損失により、レシーバタンク3内の圧力は、圧縮機2の吐出圧力よりも若干低圧になる。そのため、図2において若干傾きのある破線で結んで示すように、レシーバタンク3内の圧力PL1,PL2は、それぞれ、圧縮機2の吐出圧力PL1´,PL2´と対応する。なお、本実施例の圧縮機台数制御システム1の場合、停止表から明らかなとおり、レシーバタンク3内の圧力が容量調整弁の制御範囲の上限圧力PHになるときは、すべての圧縮機2が停止され、空気流量は0になるので、上限圧力PHに関しては、圧縮機吐出圧力とレシーバタンク圧力とは同一になる。
【0035】
台数制御器5は、圧力センサ4の検出圧力と、予め設定した圧力値とを比較して、圧縮機2の運転台数を増減する。この際、運転台数を増加させる圧力値は、前記起動表に示すように、圧力センサ4の検出圧力Pの圧力変化率ΔPに基づき異なるよう設定される。つまり、台数制御器5は、圧力センサ4の検出圧力Pが台数増加用圧力A以下になると圧縮機2を1台起動させるが、運転台数を増加させるか否かの境界値としての台数増加用圧力Aは、圧力変化率ΔPがマイナス側へ大きくなるほど段階的に高圧になるよう設定される。
【0036】
運転台数を増加させる場合、台数制御器5は、圧力センサ4の検出圧力Pが台数増加用圧力A以下の状態を維持する場合、所定時間(連続起動防止時間)を経過するごとに前記圧縮機2を1台起動させるが、圧力変化率ΔPが設定値(−ΔP1)以下の領域(つまりΔP≦−ΔP1)では、圧力センサ4の検出圧力Pが即時増加用圧力B以下になれば、前記所定時間の経過を待つことなくさらに1台起動させる。なお、即時増加用圧力Bは、圧力変化率ΔPの絶対値が大きいほど高圧に設定されるのがよい。
【0037】
一方、運転台数を減少させる圧力値は、前記停止表に示すように、現在実際に運転中の圧縮機2の運転台数に基づき異なるよう設定される。つまり、台数制御器5は、圧力センサ4の検出圧力Pが台数減少用圧力C以上になると圧縮機2を1台停止させるが、運転台数を減少させるか否かの境界値としての台数減少用圧力Cは、運転台数が増すほど段階的に低圧になるよう設定される。
【0038】
台数減少用圧力Cは、各圧縮機2の負荷率を考慮して決定するのがよい。すなわち、停止時を負荷率0%、全負荷時を負荷率100%とした場合に、運転中の圧縮機2の1台当たりの負荷率が次式により求められる停止負荷率以下になると、運転中の1台を停止させる。
【0039】
[数1] 停止負荷率(%)=(運転台数−1)/運転台数×100
【0040】
台数制御器5は、運転中の台数に応じた停止負荷率で1台を停止させるために、運転中の台数に基づき台数減少用圧力Cを次式により求め、これに基づき運転台数を適宜減少させる。
【0041】
[数2] 台数減少用圧力C=上限圧力PH−{(上限圧力PH−下限圧力PL)×停止負荷率(%)/100}
【0042】
この数式2は、前記数式1を用いて、次のように書き換えることができる。
【0043】
[数3] 台数減少用圧力C={(上限圧力PH−下限圧力PL)÷運転台数}+下限圧力PL
【0044】
このように、運転台数に応じて台数減少用圧力Cを規定することができる。なお、数式2および数式3にいう上限圧力PHおよび下限圧力PLは、前述したように容量調整弁の制御範囲を規定する圧縮機吐出圧力であるが、実際の停止制御は本実施例ではレシーバタンク3に設けた圧力センサ4の検出圧力に基づきなされるので、圧縮機2とレシーバタンク3との間の圧力損失を考慮して補正した値を用いるのが好ましい。但し、上限圧力PHについては、前述したように、圧縮機吐出圧力とレシーバタンク圧力とは同一になる。従って、下限圧力PLについて、レシーバタンク圧力に換算した値を用いるのが好ましい。あるいは、数式2および数式3で導出される台数減少用圧力Cは厳密には圧縮機吐出圧力であるので、これをレシーバタンク圧力に換算して制御するのが好ましい。
【0045】
以下、具体的制御について、図2に基づき説明する。なお、第一下限圧力PL1よりも低圧で第二下限圧力PL2が設定され、第一下限圧力PL1および第二下限圧力PL2は、容量調整弁の制御範囲下限値PLよりも低圧に設定される。また、第一設定値ΔP1,第二設定値ΔP2は、圧縮機1台分の全負荷運転時の吐出容量を考慮して設定される。
【0046】
(1)圧縮機2の運転台数の増加制御
(1−1)圧力変化率ΔPの絶対値が第一設定値ΔP1未満である場合。具体的には、−ΔP1<ΔP<+ΔP1である場合。
圧力センサ4の検出圧力Pが台数増加用圧力Aとしての第二下限圧力PL2以下になると1台起動させる。これにより通常は圧力が第二下限圧力PL2を上回るが、この間も圧縮空気の使用負荷が増加し続けると、圧力が第二下限圧力PL2以下を維持する場合がある。その場合、所定の連続起動防止時間を経過するごとに圧縮機2を1台起動させる。つまり、圧力センサ4の検出圧力Pが図2における「1台起動」領域に留まる場合には、停止中の圧縮機2がある限り、連続起動防止時間を経過するごとに1台ずつ起動させる。
【0047】
(1−2)圧力変化率ΔPの絶対値が第一設定値ΔP1以上であるが第二設定値ΔP2未満である場合。具体的には、−ΔP2<ΔP≦−ΔP1である場合。
圧力センサ4の検出圧力Pが台数増加用圧力Aとしての第一下限圧力PL1以下になると1台起動させる。この場合も、1台起動させても第一下限圧力PL1以下を維持する場合、所定の連続起動防止時間を経過するごとに1台起動させるが、即時増加用圧力Bとしての第二下限圧力PL2以下になれば、連続起動防止時間の経過を待つことなくさらにもう1台起動させる。
【0048】
つまり、図2において、「1台起動」領域に入ることで1台を起動させても、なおその領域に留まる場合には、停止中の圧縮機2がある限り、連続起動防止時間ごとに1台ずつ圧縮機2を起動させる。また、その間、「さらに1台起動」領域に入れば、連続起動防止時間を経過しないでも、さらに1台を起動させる。
【0049】
(1−3)圧力変化率ΔPの絶対値が第二設定値ΔP2以上である場合。具体的には、ΔP≦−ΔP2である場合。
レシーバタンク3内の圧力下降時(圧力変化率ΔPがマイナスの場合つまりΔP≦−ΔP2の場合)には、圧力センサ4の検出圧力Pが台数増加用圧力Aとしての容量調整弁の制御範囲上限値PH以下、言い換えれば容量調整弁の制御範囲PL〜PHであっても、1台起動させる。この場合も、1台起動させても容量調整弁の制御範囲PL〜PHを維持する場合、所定の連続起動防止時間を経過するごとに1台起動させるが、即時増加用圧力Bとしての第一下限圧力PL1以下になれば、連続起動防止時間の経過を待つことなくさらにもう1台起動させる。
【0050】
つまり、図2において「1台起動」領域に入ることで1台を起動させても、なおその領域に留まる場合には、停止中の圧縮機2がある限り、連続起動防止時間ごとに1台ずつ圧縮機2を起動させる。また、その間、「さらに1台起動」領域に入れば、連続起動防止時間を経過しないでも、さらに1台を起動させる。
【0051】
(2)圧縮機2の運転台数の減少制御
圧力センサ4により空気圧力を監視して、たとえば、2台運転している場合には、1台当たりの負荷率が50%以下になると1台停止させ、3台運転している場合には、1台当たりの負荷率が67%以下になると1台停止させ、4台運転している場合には、1台あたりの負荷率が75%以下になると1台停止させるというように、前述した数式1による停止負荷率を考慮して、圧縮機2の運転台数を減少させる。
【0052】
これにより、1台だけ運転している場合には、負荷率が0〜100%で運転され、2台運転している場合には、1台当たりの負荷率が50〜100%で運転され、3台運転している場合には、1台当たりの負荷率が67〜100%で運転されるというように、台数が増すほど高負荷で運転される。
【0053】
圧力に基づく制御を行うには、前述した数式3(または数式2)により求められる運転台数に応じた台数減少用圧力C以上になれば、1台停止させればよい。たとえば、2台運転している場合には、「{(上限圧力PH−下限圧力PL)÷2)}+下限圧力PL」以上になると、圧縮機2を1台停止させる。また、3台運転している場合には、「{(上限圧力PH−下限圧力PL)÷3}+下限圧力PL」以上になると、圧縮機2を1台停止させるというように、運転中の台数に基づき数式3により台数減少用圧力Cが設定される。
【0054】
ここで、圧力センサ4による検出圧力Pが台数減少用圧力C以上の状態を設定時間継続後に、圧縮機2の運転台数を減少させるのが好ましい。これにより、1台を停止させた後に次の1台を停止させるまでに規定の時間を要し、次々と過剰に停止させるおそれがない。
【0055】
ところで、レシーバタンク3の圧力のみでは、圧縮空気利用機器における圧縮空気の実際の使用負荷は分からない。そこで、台数制御器5は、圧力センサ4の検出圧力に加えて、各圧縮機2からの圧縮空気の吐出流量、または各圧縮機2の回転数、使用電流もしくは使用電力に基づき、圧縮機2の運転台数を補正するようにしてもよい。
【0056】
たとえば、各圧縮機2からレシーバタンク3への吐出配管に空気流量計を設置したり、レシーバタンク3から圧縮空気利用機器への吐出配管に空気流量計を設置したり、各圧縮機2の回転数や電流などを検出したりして、各圧縮機2の負荷率つまり空気負荷を把握する。そして、空気負荷に対応した圧縮機2の台数(能力)を設定しておき、過剰となる圧縮機2を停止させればよい。特に、図2の停止表から分かるように、台数が増加するほど台数減少用圧力Cの差異が狭くなり、最適動作台数がずれるおそれがあるので、各圧縮機2の消費電力などを監視し、台数減少用圧力または運転台数を補正してもよい。
【0057】
あるいは、前記実施例では、レシーバタンク3の圧力により制御したが、場合により上述した空気流量にて制御してもよい。なお、電流の計測を行えば、空気負荷に対する電力消費を管理することができ、本発明の台数制御システム1の有無による省エネルギー効果をお知らせすることも可能となる。
【0058】
また、台数制御器5は、各圧縮機2の使用電流または使用電力を監視し、使用電流または使用電力の少ない圧縮機2を優先して運転するようにしてもよい。さらに、配管の圧力損失、容量調整弁の誤差、機器同士の干渉などで、運転中の各圧縮機2が同じ吐出容量にならないおそれもあるので、各圧縮機2の消費電力を監視して、消費電力の少ない圧縮機を優先して動かす他、消費電力に一定以上の偏り(差異)がある場合には、お知らせを出して容量調整弁などのメンテナンスを促してもよい。
【0059】
複数台を同時に運転する場合において、仮に1台だけを容量制御し他を全負荷運転させる場合、容量調整を1台のみで行っているので、空気使用量が急激に減少した場合に、レシーバタンク3内の圧力が過上昇するおそれがある。ところが、本実施例の構成によれば、複数台の圧縮機2を運転する場合でも、すべてを容量制御するので、空気使用量が急激に減少した場合でも、複数台の圧縮機2の容量制御機能が並行して作用することで、レシーバタンク3内の圧力が過上昇するのを防止することができる。たとえ空気使用量が突然に全くなくなったとしても、空気圧力が過上昇することはない。
【0060】
複数台を同時に運転する場合において、仮に1台だけを容量制御し他を全負荷運転させる場合、各圧縮機2には全負荷運転に保持するためのフルロードロック機能が必要となる。ところが、この機能は圧縮機2に標準的に装備されている訳ではなく圧縮機2を改造する必要がある。しかしながら、本実施例のシステム1によれば、各圧縮機2にフルロードロック機能は不要であるから、各圧縮機2を改造する必要がない。
【0061】
また、運転台数の増加に応じて台数減少用圧力Cを下げると、運転中の各圧縮機2の負荷率は前述したように上がり、言い換えれば、各圧縮機2は吐出圧力が低い側で運転することになる。そして、一般に、圧縮機2は吐出圧力が低い側で運転するほど高効率なので、台数減少用圧力Cを下げることで、運転効率を向上することができる。
【0062】
本発明の圧縮機台数制御システム1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、各圧縮機2は、アンローダ機能を有していてもよい。その場合、前記実施例において、圧縮機2の起動と停止は、圧縮機2のロードとアンロードとすればよい。
【0063】
また、各圧縮機2の容量制御の方法は、前記実施例のように圧縮機2の吸込側に設けた容量調整弁に限らず、従来公知の他の構成を採用することもできる。さらに、容量制御せずに、すべての圧縮機2を単にオンオフ制御やロード・アンロード制御するだけでもよい。
【0064】
また、前記実施例では、各圧縮機2からの圧縮空気はレシーバタンク3を介して圧縮空気利用機器へ送り、そのレシーバタンク3に圧力センサ4を設けたが、レシーバタンク3以外に、各圧縮機2から圧縮空気が供給される箇所、あるいは圧縮空気利用機器へ圧縮空気を送る箇所に、圧力センサ4を設けてもよい。
【0065】
さらに、前記実施例では、各圧縮機は互いに同一の構成および吐出容量としたが、場合によりこれらは異ならせてもよい。たとえば、他と比べて2倍の吐出容量を有した圧縮機が含まれる場合、その圧縮機は2台分として制御すればよい。
【符号の説明】
【0066】
1 圧縮機台数制御システム
2 圧縮機
3 レシーバタンク
4 圧力センサ
5 台数制御器
A 台数増加用圧力
B 即時増加用圧力
C 台数減少用圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の圧縮機と、
これら圧縮機から圧縮空気が供給されると共に圧縮空気利用機器へ圧縮空気を送る箇所に設けられ、圧縮空気の圧力を検出する圧力センサと、
この圧力センサの検出圧力に基づき前記圧縮機の運転台数を変更する台数制御器とを備え、
前記台数制御器により運転台数を減少させるか否かの境界値としての台数減少用圧力は、運転台数が多いほど低くなるよう設定される
ことを特徴とする圧縮機台数制御システム。
【請求項2】
前記各圧縮機は、同時に複数台が運転される場合でもすべてが容量制御され、
停止時を負荷率0%、全負荷時を負荷率100%とした場合に、運転中の前記圧縮機の1台当たりの負荷率が次式により求められる停止負荷率以下になると、運転中の1台を停止させる
ことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機台数制御システム。
停止負荷率(%)=(運転台数−1)/運転台数×100
【請求項3】
前記各圧縮機は、その吐出側の圧力を、下限圧力PLと上限圧力PHとの間に維持するように容量制御され、
運転台数に応じた停止負荷率で運転中の1台を停止させるために、前記台数減少用圧力は運転台数に基づき次式により設定される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧縮機台数制御システム。
台数減少用圧力={(上限圧力PH−下限圧力PL)÷運転台数}+下限圧力PL
【請求項4】
前記圧力センサによる検出圧力が前記台数減少用圧力以上の状態を設定時間継続後に、前記圧縮機の運転台数を減少させる
ことを特徴とする請求項3に記載の圧縮機台数制御システム。
【請求項5】
前記各圧縮機からの圧縮空気は、共通のレシーバタンクへ供給された後、一または複数の圧縮空気利用機器へ送られ、
前記圧力センサは、前記レシーバタンクに設置され、
前記台数制御器により運転台数を増加させるか否かの境界値としての台数増加用圧力は、前記圧力センサの検出圧力Pの圧力変化率ΔPに基づき異なるよう設定され、
圧力変化率ΔPの絶対値が第一設定値ΔP1未満である場合には、前記圧力センサの検出圧力Pが、前記台数増加用圧力としての第二下限圧力PL2以下になると1台起動させ、
圧力変化率ΔPの絶対値が第一設定値ΔP1以上であるが第二設定値ΔP2未満である場合には、前記圧力センサの検出圧力Pが前記台数増加用圧力としての第一下限圧力PL1以下になると1台起動させ、それでも第一下限圧力PL1以下を維持する場合、所定の連続起動防止時間を経過するごとに1台起動させるが、前記第一下限圧力PL1よりも低圧の第二下限圧力PL2以下になれば、前記連続起動防止時間の経過を待つことなくさらに1台起動させ、
圧力変化率ΔPの絶対値が第二設定値ΔP2以上である場合には、前記圧力センサの検出圧力Pが前記台数増加用圧力としての前記上限圧力PH以下であると1台起動させ、それでも前記上限圧力PH以下を維持する場合、所定の連続起動防止時間を経過するごとに1台起動させるが、前記上限圧力PHよりも低圧の第一下限圧力PL1以下になれば、前記連続起動防止時間の経過を待つことなくさらにもう1台起動させる
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の圧縮機台数制御システム。
【請求項6】
前記台数制御器は、前記圧力センサの検出圧力に加えて、前記各圧縮機からの圧縮空気の吐出流量、または前記各圧縮機の回転数、使用電流もしくは使用電力に基づき、前記圧縮機の運転台数を変更する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧縮機台数制御システム。
【請求項7】
前記台数制御器は、前記各圧縮機の使用電流または使用電力を監視し、
使用電流または使用電力の少ない圧縮機を優先して運転する
ことを特徴とする請求項6に記載の圧縮機台数制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−24163(P2013−24163A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160762(P2011−160762)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【特許番号】特許第4924855号(P4924855)
【特許公報発行日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】