説明

圧迫衣類

本発明は、皮膚(2)に着用するための、弾性的に撓む材料から成る圧迫衣類(1)に関する。衣類(1)には、部分的に、圧迫のための手段(3,8)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性的に撓む材料から成る、皮膚に着用するための圧迫衣類に関する。
【0002】
圧迫衣類は、外部から身体への圧力を生ぜしめる。圧迫ストッキングでは、たとえば、包囲された脚の組織への圧力が形成される。この場合、圧迫ストッキングは、加えられる圧力が、上方から下方に向かって組織圧に相応して重力の方向で増大するように製造されている。圧迫衣類が加える圧力は、治療の種類に応じて選択可能である。衣類から加えられる圧力は、圧迫クラスに分類されている。
【0003】
圧迫衣類の使用は、医学的、美容的もしくは予防的な使用に分類可能である。医学的な使用では、たとえば静脈瘤、下肢静脈血栓症等が処置される。圧迫衣類が身体に僅かな圧力しか加えない予防的な使用では、たとえば「旅行者血栓症」が処置されるか、または圧迫衣類は、継続的に立ち仕事をする人のためのサポートとして使用される。予防的な使用により、たとえば長時間のフライトでの血栓症のリスクを著しく低減させることができる。さらに、圧迫衣類、特に圧迫ストッキングは、スポーツ、たとえばノルディック・ウォーキングまたはマラソンで使用される。
【0004】
公知の圧迫衣類は、身体へ面状の圧力を加える。これによって、たしかに均等な圧力分配が生ぜしめられているが、しかし、このことは同時に血液供給の抑制を生ぜしめる。このことは、たしかに医学的な使用では望ましいことであり得る。しかし、予防的な使用、特にスポーツにおいて、このことは下記の理由により望ましくない。
【0005】
筋肉の活動の結果として、(継続的な)筋肉の負荷時に筋温度が著しく上昇する。血流によって、生成された熱が筋肉から器官へと搬送される。これによって、身体の核心温度が同様に上昇する。この加熱により、皮膚の下の毛細血管が拡張する。このことは、たとえば、強い身体的な負荷時に皮膚が赤くなること、たとえば顔が赤くなること(赤面)の原因となる。血液温度を下げるために、体内で血液再分配が行われる。この場合、酸素豊富な血液が、身体中心部から周縁部へ、つまり冷却が行われる皮膚の方向に移動させられる。血液は、いわば身体の冷却液として働く。公知の圧迫衣類の面状の圧迫は、これに関して不都合に作用する。なぜならば、圧迫に基づいて毛細血管が圧縮されて、これによって血液搬送が減じられているからである。その結果、面状の圧迫は、不十分な冷却に基づく能力低減につながる。
【0006】
ここで本発明は解決手段を提供しようとする。本発明の根底を成す課題は、確かに公知の圧迫衣類の利点を有しているが、しかし同時に負荷された筋肉への十分な血行を可能にするように血液供給を維持する圧迫衣類を提供することである。
【0007】
この課題を解決するために、本発明による構成では、部分的に、圧迫のための手段が設けられているようにした。
【0008】
本発明によれば、確かに圧力を皮膚に加えるが、しかし同時に高い能力を可能にするようにしか筋肉への血液供給を制限しない圧迫衣類が提供される。このことは、部分的にしか行なわれない圧迫によって生ぜしめられる。圧迫手段に隣接した領域では圧迫が行われないので、その領域では影響を受けない血液循環が可能である。このようにして、負荷された筋肉に、内側の器官から搬送される「冷却された」血液を供給することが可能となる。圧迫が生ぜしめられているにも拘わらず、身体の冷却能力は維持されている。これによって、運動選手の能力が著しく改善される。
【0009】
圧迫のための手段が、ウェブにより形成されていると有利である。ウェブは、皮膚に面した側に設けられている。ウェブは、簡単な形で、部分的な圧迫を生ぜしめる可能性を提供する。さらにウェブは、任意に衣料に配置され得る。
【0010】
本発明の別の実施形態では、ウェブが、材料厚さを高めることにより生ぜしめられている。これにより簡単な形でウェブの製造が可能となる。材料として織布を使用する場合、材料厚さを高めることは、より大きな直径の糸を使用することにより行われるか、または糸の集積により行われ得る。
【0011】
本発明の別の実施形態では、ウェブが、ほぼ三角形の形状を有している。これにより、ウェブが極めて狭い区分でしか皮膚に当て付けられないことが保証されている。このことは、衣料による単に部分的な圧迫を改善する。
【0012】
ウェブが、規則的な間隔を置いて配置されていると有利である。これにより、衣料の対称的な形状が生ぜしめられている。このことは、一方では圧迫衣料の効果を高め、他方では製造を簡単にする。
【0013】
さらに圧迫衣類のウェブが、コーティングを備えていてよい。この場合、種々異なる効果を得るためには、種々異なる材料の使用がコーティングのために考えられ得る。したがって、たとえばコーティングの選択により、抗真菌効果もしくは抗菌効果を得ることができる。同じく、コーティングを意図的に選択することによって摩擦を減じる効果を得ることも可能である。
【0014】
本発明の別の実施形態では、圧迫のための手段が、織布ストリップにより形成されている。この織布ストリップは、衣料のベース織布とは異なる弾性を有している。これによって、同じく部分的な圧迫が可能となる。同時に、この場合、衣料が平坦な構造を有している。このことは、特定の使用条件下では望ましい。
【0015】
負荷された筋肉への「冷却された」血液の供給のさらなる改善は、圧迫のための手段が中断部を有していることにより可能である。これによって、一方では圧迫手段に隣接した圧迫が行われない領域において、他方では同じく圧迫が行われていない中断部において、影響を受けない血液循環が行われている。これによって、運動選手の能力はさらに改善される。
【0016】
本発明の別の実施形態および構成は請求項2以下に記載されている。本発明の実施形態を図面に示し、以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ひざ丈ストッキングである圧迫衣類が、人体に配置されている様子を示す側面図である。
【図2】図1に示した圧迫衣類を前から見た図である。
【図3】図4に示す圧迫衣類のIII−III線に沿った断面を示す概略図である。
【図4】鉛直方向の方向付けでウェブの配置を示す原理図である。
【図5】中断部を有する鉛直方向の方向付けのウェブを示す原理図である。
【図6】中断部を有する鉛直方向の方向付けのウェブの別の形態を示す原理図である。
【図7】水平方向の方向付けでウェブの配置を示す原理図である。
【図8】中断部を有する水平方向の方向付けのウェブを示す原理図である。
【図9】中断部を有する水平方向の方向付けのウェブの別の形態を示す原理図である。
【図10】螺旋状の方向付けのウェブを示す原理図である。
【図11】中断部を有する螺旋状の方向付けのウェブを示す原理図である。
【図12】水平方向の方向付けの織布ストリップの別の形態を示す原理図である。
【図13】水平方向の方向付けで織布ストリップの配置を示す原理図である。
【図14】本発明による圧迫衣類の部分的な圧迫作用を概略的に示す部分図である。
【図15】従来技術による圧迫衣類の面状の圧迫作用を概略的に示す部分図である。
【0018】
圧迫衣類の実施形態として選択された衣料1は、ひざ丈ストッキング(Kniestrumpf)の形で形成されている。このひざ丈ストッキングは、人間の脚部の下腿部に配置されている。ひざ丈ストッキングは、筒部11と足部分12とを有している。足部分12とは反対の側の端部に、バンド13が設けられている。
【0019】
圧迫衣料1には、部分的に、圧迫のための手段が設けられている。圧迫手段に隣接した領域では圧迫が行われない。この圧迫が行われない領域では、影響を受けない血液循環が可能である。
【0020】
図3〜図11に示した圧迫衣料1では、圧迫のための手段が隆起部もしくはウェブ3により形成されている。これらのウェブ3は、皮膚2に面した側に設けられている。ウェブ3は、本実施形態では規則的な間隔を置いて配置されている。図3から判るように、ウェブ3は、衣料1の材料厚さを高めることにより生ぜしめられている。材料が織布である限り、材料厚さを高めることは、ウェブの領域の織布を製造するためにより大きな直径の糸を使用することにより生ぜしめられていてよい。ウェブ3の領域でより多数の糸を使用することも可能であり、これにより高められた材料厚さが生じる。
【0021】
ウェブ3は、横断面で見てほぼ三角形の形状を有しているので、先端部31が生ぜしめられている。この先端部31は皮膚2に接触している。先端部31には、2つの脚部32が続いている。これらの脚部32は、ウェブ3の基部(Basis)33にまで延びている。基部33は、この実施形態では、ウェブ3の最も大きな幅を形成している。さらに、基部33は、同時にひざ丈ストッキングとして形成された衣料1の残りの材料への移行部を形成している。
【0022】
衣料1の材料は、圧迫衣料のために通常使用される、弾性的に撓む材料から製造されている。材料は、全ての方向X,YおよびZで弾性的に形成されている。材料は、特に、圧迫作用を皮膚2の方向で加える。ウェブ3によって形成された材料補強によって、皮膚2の方向で加えられる材料の圧迫力によって、図3に皮膚2の波形の形状により示されているように、皮膚2への先端部31の圧力が形成される。
【0023】
図12および図13では、圧迫のための手段が織布ストリップ8により形成されている。この織布ストリップ8は、衣料のベース織布とは異なる弾性を有している。これによって、互いに異なる圧迫作用を有する軟らかい織布ストリップと硬い織布ストリップとが、交互に設けられている。衣料の、隣接し合う織布ストリップ8の間に使用されるベース織布は圧迫作用を有していない。圧迫作用を有する織布ストリップもしくは圧迫作用を有しない織布ストリップを交互に使用することにより、部分的な圧迫が生ぜしめられている。
【0024】
圧迫のための手段3,8は、中断部34,81を有している(図5,6,8,9,11,13を参照)これによって、負荷された筋肉への「冷却された」血液の供給をさらに改善することが可能である。すなわち、中断部34,81では、圧迫手段3,8に隣接した領域において可能であるような、影響を受けない血液循環が行われ得る。
【0025】
圧迫のための手段3,8の配向もしくは方向付けは、ほぼ任意に行うことができる。例示的に図4〜図13には、圧迫のための手段の種々異なる方向付けが図示されている。図4〜図6に示した単純な鉛直方向の方向付けの他に、水平方向の方向付けの可能性も生じる(図7〜9および図12,13を参照)。図10,11に図示されているような、圧迫のための手段3,8の螺旋状の方向付けも可能である。全ての方向付けに共通しているのは、圧迫作用を有する領域が、圧迫作用を有しない領域と交互に配置されていることである。これによって、本発明による部分的な圧迫が生ぜしめられている。図面から判るように、手段3,8の方向付けとは無関係に、中断部34,81が設けられている。この中断部34,81は、本発明による作用を付加的に強化する。
【0026】
図14および図15には、本発明による部分的な圧迫作用が、先行技術による面状の圧迫作用と概略的に対比されている。この場合、皮膚2内に、圧迫の範囲が線4によって示されている。皮膚2の圧迫が、各ウェブ3の領域もしくは織布ストリップ8の領域だけで行われていることが判る。これらの箇所では、皮膚2が明るい色のままであるのに対して、各ウェブ3もしくは織布ストリップ8間の領域では皮膚2が赤みを帯びる。皮膚が赤くなることは、各ウェブ3もしくは織布ストリップ8間の領域における改善された血行を明確にする。このことは、身体的な負荷時に拡張する毛細血管5によって生じる。
【0027】
ウェブ3もしくは織布ストリップ8は、単に点状もしくはストリップ状に皮膚2に載置されているので、図14から判るように、皮膚2の下に位置する毛細血管5はほとんど圧迫されていない。これに対して、面状の圧迫を伴う先行技術から公知の衣料では、毛細血管5の圧縮が生ぜしめられている(図15参照)。このことは、結果として血行の悪化をもたらす。図15に示された先行技術による圧迫の図からは、線4により示された圧迫の作用が、毛細血管5の位置を考慮せずに均一に延びていることが判る。したがって、毛細血管5が圧縮されていて、このことは、毛細血管5の扁平な楕円形の横断面を生ぜしめる。したがって、先行技術による圧迫衣類では、器官の冷却のために必要な血液循環を維持することができず、このことは人間の能力に不都合に作用する。
【0028】
ウェブ3もしくは織布ストリップ8間の圧迫されていない毛細血管5に基づいて維持された、皮膚の下での血液循環の可能性は温度交換を可能にする。これによって、器官の冷却が生ぜしめられている。さらに、隣接したウェブ3と、皮膚2と、衣料1の材料との間の領域に生ぜしめられ、かつ符号「6」で示されたトンネル状の構造により、皮膚2で発生した熱を搬出する可能性が生じる。さらに、ウェブ3の間の領域の衣料1と皮膚2との間の間隔は、衣料が汗で濡れることを阻止する。むしろ、ウェブ3の先端部31の領域のみで衣料1と皮膚2との接触が生じるので、この領域でしか衣料が湿らせられない。このようにして、本発明による衣料の着用快適性は付加的に高められる。
【0029】
さらに、着用快適性は、ウェブ3がコーティング7を備えていることにより高められる。このコーティング7は、種々異なる種類であってよい。特に、抗真菌性もしくは抗菌性の作用が得られる機能性コーティング、たとえば高い金含量もしくは銀含量を有するコーティングを使用することができる。しかし、別のコーティング、たとえばポリテトラフルオロエチレンを使用することもできる。商品名「テフロン」で知られているこの材料は、特に良好な滑り特性により優れている。このことは、ウェブ3のためのコーティングとしての使用時に、衣類1と皮膚2との摩擦が明らかに減じられているようにする。このことは、同じく着用快適性の向上に貢献する。
【0030】
上記で本発明を例示的にひざ丈ストッキングにつき説明したが、本発明はこの物に制限されるものではない。むしろ、本発明は圧迫衣料として使用可能な全ての衣料に利用することができる。圧迫衣料は、実施例で説明したひざ丈ストッキングの他に、タイツ、アームスリーブ、シャツおよびオーバオールも含む。これらの圧迫衣料も、本発明の思想に包含されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性的に撓む材料から成る、皮膚に着用するための圧迫衣類であって、部分的に、圧迫のための手段が設けられていることを特徴とする、皮膚に着用するための圧迫衣類。
【請求項2】
前記圧迫のための手段が、ウェブ(3)により形成されていて、該ウェブが皮膚(2)に面した側に設けられている、請求項1記載の圧迫衣類。
【請求項3】
前記ウェブ(3)が、材料厚さを高めることにより生ぜしめられている、請求項2記載の圧迫衣類。
【請求項4】
前記ウェブ(3)が、ほぼ三角形の形状を有している、請求項1または2記載の圧迫衣類。
【請求項5】
前記ウェブ(3)が、規則的な間隔を置いて配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の圧迫衣類。
【請求項6】
前記ウェブ(3)が、コーティング(7)を備えている、請求項1から5までのいずれか1項記載の圧迫衣類。
【請求項7】
前記圧迫のための手段が、織布ストリップ(8)により形成されており、該織布ストリップ(8)が、衣料のベース織布とは異なる弾性を有している、請求項1記載の圧迫衣類。
【請求項8】
前記手段(3,8)が、中断部(34,81)を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の圧迫衣類。
【請求項9】
前記手段(3,8)が、水平方向に方向付けされている、請求項1から8までのいずれか1項記載の圧迫衣類。
【請求項10】
前記手段(3,8)が、鉛直方向に方向付けされている、請求項1から9までのいずれか1項記載の圧迫衣類。
【請求項11】
前記手段(3,8)が、螺旋状に方向付けされている、請求項1から10までのいずれか1項記載の圧迫衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−506497(P2012−506497A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532541(P2011−532541)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007633
【国際公開番号】WO2010/046130
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(504303687)エクス−テクノロジー スイス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (23)
【氏名又は名称原語表記】X−Technology Swiss GmbH
【住所又は居所原語表記】Samstagernstrasse 45, CH−8832 Wollerau, Switzerland
【Fターム(参考)】