説明

圧電アクチュエータ

本発明は圧電アクチュエータに関する。公知の圧電アクチュエータが公知の数値制御装置により制御可能であるように公知の圧電アクチュエータを発展的に構成するために、圧電アクチュエータ(2)を、誘導性負荷のための制御装置、特に誘導性負荷の制御のためのコンバータに整合させるように構成されている整合素子(4)を提案する。整合素子(4)によって、一般にサーボモータを制御するために使用される数値制御装置の制御装置もしくはコンバータを使用することが可能である。したがって、圧電アクチュエータ(2)の制御のために特殊に構成されたハードウェアを用意する必要性がなくなり、前記の公知の制御装置が使用可能である。更に、整合素子(4)により圧電アクチュエータ(2)を数値制御装置のバスへの組み込むことができる。これは数値制御バスを介する通信をリアルタイムで可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータに関する。更に本発明は少なくとも1つの圧電アクチュエータを有する工作機械に関する。
【0002】
圧電アクチュエータは多方面にわたって使用可能であり、したがって、例えば積み重ねアクチュエータ、ディスクトランスレータ、曲げアクチュエータ、またはチューブアクチュエータのように種々の形で存在する。それ以外の圧電アクチュエータの適用分野の1つに工作機械における可制御もしくは可調節の振動減衰がある。
【0003】
圧電アクチュエータは、必要な制御電圧を供給する電力増幅器により制御される。この制御電圧の大きさは圧電アクチュエータの型式に従う。例えば、100ボルトまたは200ボルトまでの制御電圧を供給する低電圧アクチュエータおよび600ボルト、1000ボルトまたは2000ボルトを供給す高電圧アクチュエータが存在する。
【0004】
電力増幅器はそれぞれの圧電アクチュエータに整合させられている。統一的な規格が存在しないので、数値制御工作機械の場合には、サーボモータ用の電力増幅器を有する数値制御装置のほかに圧電アクチュエータ用の他の電力増幅器が必要である。しかしながら、付加的な電子モジュールの使用は多くの欠点を有する。サーボモータを制御する数値制御装置と圧電アクチュエータとの間で直接的な調整が可能でない。高いロットサイズによる合理化利点は実現されない。点検および交換部品管理が統一的でない。サーボモータと圧電アクチュエータとの間で、使用開始および最適化戦略が異なる。これは人的要求を倍増させる。
【0005】
したがって、サーボ駆動装置および圧電アクチュエータのための統一的なソフトウェアおよびハードウェアが存在しない。圧電アクチュエータは、数値制御装置のバスを介して通信するのではなくて、圧電アクチュエータの制御および調節のためにこれとは異なるかつ互換性のないハードウェアが使用され、これが工作機械における圧電アクチュエータの使用の妨げになる。
【0006】
本発明の課題は、公知の圧電アクチュエータを、公知の圧電アクチュエータが公知の数値制御装置により制御可能であるように構成することにある。
【0007】
この課題は、本発明にしたがって圧電アクチュエータを、誘導性負荷のための制御装置、特に誘導性負荷の制御のためのコンバータに整合させるように構成されている整合素子が設けられていることを特徴とする圧電アクチュエータによって解決される。整合素子によって、一般的にサーボモータを制御するために使用される数値制御システムの制御装置もしくはコンバータを使用することが可能である。したがって、圧電アクチュエータを制御するために特別に構成されたハードウェアを用意する必要性がなくなり、上述の公知の制御装置もしくはコンバータを使用することができる。更に、整合素子によって、圧電アクチュエータを数値制御装置のバスに組み込むことができる。これは数値制御バスを介する通信をリアルタイムで可能にする。
【0008】
本発明の有利な実施態様は従属請求項に示されている。
【0009】
整合素子が実質的に低域通過特性を有するとよい。これは、1次、2次または高次の低域通過フィルタの低域通過特性であるとよく、低域通過フィルタは、実質的にコンバータのパルス周波数を下回る成分のみを圧電アクチュエータに導くように設計されている。したがって、整合素子により、例えばサーボモータ制御用のコンバータのような制御装置が圧電アクチュエータを制御するために使用可能であるように、インピーダンス整合が達成される。この場合に、パルス幅変調された出力信号を供給し数値制御工作機械にしばしば使用される制御装置もしくはコンバータを使用することができる。
【0010】
整合素子が、例えば演算増幅器のような能動的なおよび/または受動的な構成要素を有することができる。しかしながら、整合素子が受動的な構成要素から構成されているのが有利であり、それによって整合素子が簡単な構造を有し、同時に信頼性のある機能が保証されている。この場合に圧電アクチュエータが整合素子と一体的に構成されているとよく、あるいは代替として2つの互いに分離された構成要素であってもよい。
【0011】
有利な実施態様では、整合素子が少なくとも1つのインダクタンスを有する。このインダクタンスは、誘導性負荷を制御するように構成されている例えばサーボモータ制御用コンバータが圧電アクチュエータを制御するために使用可能であるように圧電アクチュエータの容量性特性がインダクタンスによって補償されるように設計されている。更に、インダクタンスはパルス幅変調信号の使用時に電流平滑を生じさせる。
【0012】
更に、整合素子が少なくとも1つの抵抗を有するとよい。この抵抗は、電圧パルスの高調波を減衰させ、実質的に制御装置もしくはコンバータのパルス周波数を下回る成分のみを圧電アクチュエータに導くように設計されている。したがって、整合素子は2次の低域通過フィルタの低域通過特性を有する。
【0013】
整合素子はインダクタンスおよび抵抗のほかに他の構成要素を有してもよい。更に、その設計時にインダクタンスおよび抵抗は互いに並列に配置可能である。しかし、少なくとも1つのインダクタンスおよび少なくとも1つの抵抗が直列に配置されていると好ましい。
【0014】
更に、圧電アクチュエータおよび整合素子が直列に配置されていると好ましい。この場合に圧電アクチュエータも整合素子も制御装置に接続されている。
【0015】
整合素子は、誘導性負荷を制御するように構成されている単相制御装置により圧電アクチュエータを制御するために用いることができる。有利な実施態様では、例えば数値制御工作機械においてサーボモータを制御する3相制御装置もしくはコンバータも使用することができるように、整合素子が3相コンバータの第1の相に、そして圧電アクチュエータが3相コンバータの第2の相に接続されている。この場合に使用されない相の転流角は固定される。
【0016】
更に、圧電アクチュエータが測定素子を有するとよい。測定素子は圧電アクチュエータの変位の検出を可能にするストレインゲージであってよい。これは第1の制御される動作(開ループ)も、第2の調節される動作(閉ループ)も可能にする。この場合に測定信号が正弦−余弦増分信号に変換される。この形で信号が制御装置もしくはコンバータに属する調節器に供給され、調節器により一般にはサーボモータが制御される。
【0017】
更に、本発明は、本発明による少なくとも1つの圧電アクチュエータを有する工作機械に関する。この工作機械は、例えば3相のサーボモータの制御を可能にする制御装置もしくはコンバータを有し、コンバータは、付加的に位置制御のための調節器を有するとよい。ソフトウェア的にコンバータは、コンバータに3相のサーボモータの代わりに圧電アクチュエータが整合素子と共に接続されている場合に、3つの相のうち2つの相のみが使用されるように調整される。
【0018】
以下において、図面に示す実施例に基づいて本発明を更に詳細説明する。
【0019】
図面において、図1はサーボモータを制御するための従来技術から公知のコンバータの概略図を示し、図2は整合素子を有する本発明による圧電アクチュエータの概略図を示す。
【0020】
コンバータ10が示されている。コンバータ10は、一般に、例えばサーボモータ12のような3相モータの制御に使用され、したがって3つの出力端子から3相電流を供給する。コンバータ10は調節器14を有する。調節器14は、予め与えられた目標データと測定された実際データとの比較によって、実際データが目標データに一致するまで実際データが目標データへ近づくように操作量を決定する。実際データが図示されていない測定手段によって検出され、図示されていない線路を介して調節器14に供給される。
【0021】
コンバータ10は、(図示されていない)電力増幅器を有し、電力増幅器の最大出力電圧は150ボルトから750ボルトまでの間にある。所望の出力電圧の設定時に高い損失電力を避けるために、サーボ駆動装置用の電力増幅器はスイッチングモードもしくはパルス制御の最終段を備えている。所望の出力電圧は、相応のスイッチング比、つまりパルス幅変調によって与えられる。
【0022】
3相交流モータ12は電気的な等価回路図により抵抗とインダクタンスとからなる直列回路として理解することができるので、3相交流モータ12はコンバータ10にとって誘導性負荷である。
【0023】
これに対して、型式に応じて100ボルトから1000ボルトまでの間にある動作電圧を有する圧電アクチュエータ2は、電気的な等価回路図によりキャパシタンスとして理解することができるので、圧電アクチュエータ2は容量性負荷である。したがって、コンバータ10の3つの相の1つと圧電アクチュエータ2との間に直列に、インダクタンス6と抵抗8とからなる整合素子4が設けられている。インダクタンス6が、抵抗8と共に低域通過作用を有するフィルタを構成する。このフィルタは、コンバータ10のパルス幅変調された出力電圧を平滑し、そして特に、さもないと圧電アクチュエータ2の容量性特性によってしか制限されない流れる電流高さを制限するので、さもなければ構成要素の破壊を生じさせ得る電流レベルが回避される。
【0024】
例えば600ボルトの動作電圧を有する圧電アクチュエータが使用され、フィルタの遮断周波数が1.8kHz(非周期減衰、過上昇なし)であるべきであり、しかもコンバータ10の矩形周波数が16kHzである場合には、インダクタンスについては1.5mHが、そして抵抗については15オームが選ばれる。この場合に熱損失電力は約100ワットであるのに対して、16kHz(8kHzのパルス周波数における出力電圧の周波数)における減衰は−40dBであり、これは100のファクタ(100倍)に相当する。この場合に圧電アクチュエータの基本周波数は1kHzの周波数まで振幅減少なしに伝達可能である。
【0025】
コンバータ10は、使用されていない相の転流角が固定されしたがってこの相は使用されないように調整されている。更に、コンバータ10は、ソフトウェア技術的に、電流調節が動作を停止させられている間、出力電圧の調節が行われるように調整されている。
【0026】
位置調節のために圧電アクチュエータ2は、(図示されていない)ストレインゲージを有する。ストレインゲージは出力信号としてアナログ信号を供給する。例えば電子信号変換器によりアナログ出力信号が正弦−余弦増分信号に変換され、その後正弦−余弦増分信号が調節器14に供給されるので、サーボモータのような誘導性負荷を制御するための数値制御コンバータ10の従来の調節器14が使用可能である。しかしながら、位置調節が行なわない場合には、この種の電子信号変換器は必要でない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】サーボモータを制御するための従来技術から公知のコンバータの概略図
【図2】整合素子を有する本発明による圧電アクチュエータの概略図
【符号の説明】
【0028】
2 圧電アクチュエータ
4 整合素子
6 インダクタンス
8 抵抗
10 コンバータ
12 3相交流モータ
14 調節器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電アクチュエータ(2)を、誘導性負荷のための制御装置、特に誘導性負荷の制御のためのコンバータに整合させるように構成されている整合素子(4)が設けられていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
整合素子(4)が実質的に低域通過特性を有することを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
整合素子(4)が受動的な構成要素から構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
整合素子(4)が少なくとも1つのインダクタンス(6)を有することを特徴とする請求項2又は3記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
整合素子(4)が少なくとも1つの抵抗(8)を有することを特徴とする請求項4記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
少なくとも1つのインダクタンス(6)および少なくとも1つの抵抗(8)が直列に配置されていることを特徴とする請求項5記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
圧電アクチュエータ(2)および整合素子(4)が直列に配置されていることを特徴とする請求項6記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
整合素子(4)が3相制御装置の第1の相に接続され、圧電アクチュエータ(2)が3相制御装置の第2の相に接続されていることを特徴とする請求項7記載の圧電アクチュエータ。
【請求項9】
測定素子が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7の1つに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項10】
請求項1乃至9の1つに記載の少なくとも1つの圧電アクチュエータ(2)が設けられていることを特徴とする工作機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−542181(P2009−542181A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517051(P2009−517051)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053612
【国際公開番号】WO2008/003531
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany