説明

圧電特性計測システムおよび圧電特性計測方法

【課題】動的荷重に対しても圧電特性を精度よく求めることができる圧電特性計測システムおよび方法を提供する。
【解決手段】測定対象物である圧電体Sが発生する電圧の情報(対象出力電圧情報)に加え、圧力を印加する方向である軸Cに方向に沿って圧電体Sと重ねた台座圧電体26が発生する電圧の情報(台座出力電圧情報)を取得し、これら出力電圧の情報と台座出力電圧の情報との双方に基いて圧電体Sの圧電特性を求めることで、動的圧力に対する圧電体Sの特性を高精度に測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電特性計測システムおよび圧電特性計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の燃料噴射装置の圧力の測定など、圧電素子を用いた圧電センサは様々な用途に使用されている。圧電素子は印加された圧力に対して、所定の関係の高さの電圧を発生する。圧電センサによる圧力の測定結果を高精度に評価するには、圧電素子の特性を表すこの所定の関係を、予め高精度に測定しておく必要がある。
【0003】
特許文献1は、圧電素子の特性を測定するため、あらかじめバネ係数が分かっているバネの付勢力と圧電素子に印加する力とをバランスさせ、そのバネの撓み量を可変コンデンサーの静電容量の変化によって精密に測定し、印加した力を精密に算出する方法を開示している、特許文献1は、さらにこの方法を用いて、圧電体の特性を精密に測定する測定装置を開示している。この装置では、圧電素子への力の印加は手動操作でプローブを圧電素子に押し付けることによって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−235589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば車載用の圧力センサ等においては、静的にかかる圧力(静的圧力)の測定精度だけでなく、振動などに起因して生じる、時間変化する圧力(動的圧力)に対する測定精度が高いことも重要である。車載用の圧電素子においては、圧電素子自体の特性として、静的圧力に対する特性だけでなく、動的圧力に対する特性についても詳しく知っておくことが重要である。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている従来の測定装置では、動的圧力に対する特性を精度よく測定することが難しい。例えば測定装置によって算出された圧力値は、バネ定数の変動に伴う誤差、静電容量変化の時間遅れ、バネの撓みの時間遅れなど、様々な時間遅れや誤差が重畳されている。このため、特許文献1に記載されているような測定装置では、印加された動的圧力の大きさ自体を、少ない時間遅れで高精度に測定することが難しく、圧電素子の動的圧力に対する特性を知ることが難しかった。本発明は、かかる課題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、測定対象物である圧電体の圧電特性のうち、圧力を印加した際に発生する前記圧電体からの出力電圧を計測するための圧電特性計測システムであって、前記圧電体が載置される載置面を有する載置測定部と、前記載置面に対向して配置された、前記載置面に平行な当接面を有し、前記載置面および前記当接面に直交する一軸方向に沿った圧力を、前記当接面を介して前記圧電体に印加する圧力印加部と、印加した前記圧力の情報および前記圧力に応じて発生する前記圧電体からの出力電圧の情報を取得する情報取得部と、前記圧力の情報および前記出力電圧の情報を用いて、前記圧電体の圧電特性値を算出する算出部とを備えており、前記載置測定部は、前記載置面を一方の主面とする一対の平行な主面を有する板状体と、該板状体の他方の主面に対向して配置された、前記一軸方向と直交する台座面を有する台座部材と、該台座部材の前記台座面に載置されて前記板状体の前記他方の主面との間に挟持された台座圧電体とを備え、該台座圧電体は、前記一軸方向に沿って前記圧電体と重なる位置に配置され、前記台座面と前記他方の主面とから受ける前記一軸方向に沿った圧力に応じた台座出力電圧を発生し、前記情報取得部は、印加した前記圧力に応じて発生する前記台座出力電圧の情報を取得し、前記算出部は、前記台座出力電圧の情報と前記圧電体からの前記出力電圧の情報とを用いて、測定対象物である前記圧電体の圧電特性を算出することを特徴とする圧電特性計測システムを提供する。
【0008】
また、本発明は、測定対象物である対象圧電体の圧電特性のうち、圧力を印加した際に発生する前記圧電体からの出力電圧を計測するための圧電特性計測方法であって、一軸方向に沿って重ねて配置するステップと、前記対象圧電体に対して、前記計測用圧電体と反対の側から、前記一軸方向に沿った圧力を周期的に印加するステップと、印加した前記圧力の情報および前記圧力に応じて発生する前記対象圧電体からの出力電圧の情報を取得するステップと、前記圧力の情報および前記出力電圧の情報を用いて前記計測圧電体の圧電特性値を算出するステップとを有し、前記取得するステップでは、印加した前記圧力の情報として、前記一軸方向に沿った圧力に応じて発生する前記計測用圧電体からの出力電圧の情報を併せて取得することを特徴とする圧電特性計測方法を、併せて提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の圧電特性計測システムおよび圧電特性計測方法は、測定対象物である圧電体が発生する電圧と、その圧電体に重ねて配置した圧力検出用の台座圧電体から算出した印加圧力とに基づいて圧電特性を算出するので、動的圧力に対しても圧電特性を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧電特性計測システムの概略構成図である。
【図2】図1の計測システムで測定する測定対象物の一例を示す概略斜視図である。
【図3】図1の計測システムの集電ヘッドの一実施形態の概略断面図である。
【図4】図1の計測システムの集電ヘッドの他の実施形態の概略断面図である。
【図5】図1の計測システムの台座部材の近傍を拡大して示す概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る計測方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の圧電特性計測システムの一実施形態である計測システム1の概略構成図である。図1では一部を断面で示している。測定対象物である圧電体Sの圧電特性のうち、特に動的な圧力を印加した際に発生する圧電体Sからの出力電圧を計測するための圧電特性計測システムである。圧電体Sが載置される載置面22Aを有する載置測定部20と、圧電体Sに圧力を印加するための圧力印加部30と、印加した圧力の情報および圧力に応じて発生する圧電体Sからの出力電圧の情報を取得する情報取得部40と、情報取得部40が取得した圧力の情報と出力電圧の情報とを用いて、圧電体Sの圧電特性値を算出する算出部50と、圧電体Sに印加する動的圧力の大きさや周期等を制御する印加圧力制御部53を備えている。
【0012】
載置測定部20は、載置面22Aを一方の主面とする一対の平行な主面を有する板状体22と、板状体22の他方の主面22Bに対向して配置された、軸Cと直交する台座面24Aを有する台座部材24と、台座部材24の台座面24Aに載置されて板状体22の他方の主面22Bとの間に挟持された台座圧電体26とを備えている。
【0013】
台座圧電体26は、軸Cに沿って圧電体Sと重なる位置に配置され、台座面24Aと板状体22の他方の主面22Bとから受ける、軸Cに沿った圧力に応じた台座出力電圧を発生する。台座圧電体26は、ローノイズケーブルL1を介して情報取得部40と接続されている。
【0014】
計測システム1は、測定対象物である圧電体Sが発生する電圧の情報(対象出力電圧情報)に加え、圧力を印加する方向である軸Cに方向に沿って圧電体Sと重ねた台座圧電体26が発生する電圧の情報(台座出力電圧情報)を取得し、これら出力電圧の情報と台座出力電圧の情報との双方に基いて圧電体Sの圧電特性を求めることで、動的圧力に対する圧電体Sの特性を高精度に測定することを可能としている。以下、計測システム1の各部の構成について説明する。
【0015】
圧電体Sは例えば図2に示すように、中央に貫通孔Saが形成された円柱状のものである。本実施形態では、圧電体Sの貫通孔Saの中心が、図1に示す軸Cに一致するように載置面22Aに配置されている。
【0016】
圧力印加部30は、アクチュエータ34と、載置面22Aに対向して配置された、載置面22に平行な当接面35Aを備えた集電ヘッド35とを備えている。アクチュエータ34は、複数の圧電素子が積層された圧電デバイスからなり、圧電体Sに印加する圧力を発生する圧力発生手段である。アクチュエータ34が、印加された電圧に応じた量だけ、筒状体13の軸方向に沿って膨張または収縮するように構成されている。アクチュエータ34を構成する圧電素子としては、ピエゾアクチュエータなど、高い周波数の変動に対しても正確に追従して圧力を発生できるものを用いればよい。アクチュエータ34は、ローノイズケーブルL3を介して、印加圧力制御部53のピエゾドライバ52と接続されている。
【0017】
アクチュエータ34は、支持体11によって支持された筒状体13の内部に配置されている。アクチュエータ34は、摺動抵抗を低減させるためのリニアガイドブッシュ17を介して第1筒状体13の内部に収容されている。リニアガイドブッシュ17は、いわゆるリニアボールベアリングあるいはボールスプラインを構成している。支持体11は向かい合って配置された側板11aと、天板11bと、底板11cとを有した枠体状の部材である。筒状体13は天板11bに対して固定されており、筒状体13の中心軸は、軸Cと一致している。
【0018】
支持体11の天板11bには、軸Cと一致する中心軸を有する雌ネジ孔11αが形成されており、この雌ネジ孔11αに、第1プリロード印加ネジ(雄ネジ)37が螺合されている。第1プリロード印加ネジ37の下側には、圧電素子を備えるプリロード圧センサ39が設けられている。プリロード圧センサ39は、圧力を電気信号に変換するセンサである。プリロード圧センサ39は、プリロード印加ネジ37に追従して筒状体13内を上下方向に移動する。プリロード圧センサ39には、軸Cに直交する基準面38を下端に備えている。この基準面38はプリロード印加ネジ37の回転に応じて、筒状体13内を上下に移動する。プリロード印加ネジ37は基準面可動手段である。アクチュエータ34は、軸Cに直交する上端面34Aを有しており、基準面38は、この上端面34Aと当接している。
【0019】
印加圧力制御部53は、アクチュエータ34に送る電圧波形を作成するファンクションジェネレータ51と、発生した波形を増幅してアクチュエータ34を作動させるピエゾドライバ52とを備えている。アクチュエータ34に、印加圧力制御部53から測定用電圧が印加されて、アクチュエータ34は、印加された電圧に応じた量だけ、筒状体13の軸方向に沿って膨張または収縮するように構成されている。
【0020】
集電ヘッド35は、当接面35Aが圧電体Sに当接し、圧電体Sから発生した電荷を集め(集電し)、電圧信号として出力する。この集電ヘッド35は、図3に拡大して示すように、円柱状の上治具66と下治具57の間にアルミナ製のボール68を挟み、ボール68を介して荷重を圧電体Sに伝達すると共に、ローノイズケーブルL2を介して、圧電体Sが発生した電荷に対応する、圧電体Sから出力された電圧信号(対象出力電圧情報)を情報取得部40に送る。
【0021】
上治具66および下治具67の対向する面には、それぞれボール68を支持する円錐状の凹部66a、67aが形成されている。また、凹部66a、67aには、ボール68の脱落を防止するとともに、衝撃を吸収する軟質樹脂69、たとえばシリコーン系接着剤、シリコーン系シーラントが充填されている。上治具66および下治具67の対向する面に、ボール68を支持させる構成とすることで、圧電体Sの上下面の平行度がばらついた場合であっても、当接面35A全体が圧電体Sの上側面に当接し、C軸方向に沿った圧力を圧電体Sに効率よく伝えることができる。なお、計測システム1では、支持体11全体が除振機構部70上に載置されており、圧電体Sに余分な振動が伝わらないようにされている。
【0022】
図4は、集電ヘッドの異なる実施形態について説明する図である。図4に示す集電ヘッド60は、図3の集電ヘッド35と比べ、上治具61は円板状であって下面が平坦である。下治具62は円柱状で上面の中央に円錐状の凹部62aが形成され、その凹部にアルミナ製のボール63が載置されている。上下の治具61、62の間には、ボール63の脱落防止およびダンパのため、シリコーン系接着剤64が環状に設けられている。シリコーン系接着剤64の中心部は、硬化後に切り取るなどにより、ボール63が触れない程度の空間65が設けられている。図4に示す実施形態でも、当接面35A全体が圧電体Sの上側面に当接し、C軸方向に沿った圧力を圧電体Sに効率よく伝えることができる。
【0023】
載置測定部20の台座部材24はレールガイド41を備えている。また、支持体11の側板11aはレール13が設けられている。台座部材24のレールガイド41は、レール13に装着されており、レールガイド41がレール13に沿って上下方向(軸Cに沿った方向)に移動することで、台座部材24全体がC軸方向に沿って移動可能となっている。台座部材24は、台座面24Aと反対側の面に開口した開口端27aおよび軸Cに直交する底面27Bを有する、軸C方向に沿って延びた孔部27を備えている。支持体11の底板11cには、軸Cに一致する中心軸をもつ雌ネジ孔11βが設けられており、この雌ネジ孔11βにロッド部材25が挿入されている。ロッド部材25は、外周面に凹凸を有する雄ネジ形状であって、底板11cの雌ネジ孔11βに螺合されている。ロッド部材25は、軸Cに直交する端面25Aを有し、端面25Aが孔部27の底面27Bに当接している。端面25Aは、ロッド部材25の回転に応じて、底板部11cからの突出量が変動する。台座部材24は、ロッド部材25の端面25Aの位置に応じて、軸Cに沿った位置が変動される。
【0024】
計測システム1では、第1プリロード印加ネジ(雄ネジ)37によって、基準面38の軸Cに沿った位置を調整し、ロッド部材25によって、台座部材24ひいては載置面22Aの軸Cに沿った位置を調整することができる。すなわち、計測システム1では、基準面38と載置面22Aとの間隔を変動させることができる。計測システム1では、基準面38と載置面22Aとの間隔を変動させて、所定の大きさの静的圧力を圧電体Sに印加し、所定の大きさの静的圧力がかかった状態での動的特性を測定することができる。アクチュエータ34は、印加された動的圧力に応じた出力電圧を出力するものであるが、印加された圧力に対するアクチュエータ34からの出力電圧の応答性は、ある程度の静的圧力が印加された状態(プリロード状態)の方が高い場合がある。基準面38と載置面22Aとの間隔を変動させて、アクチュエータ34に予め所定の静的圧力を印加しておくことで、圧電体Sの動的特性を高精度に検出することができる。第1プリロード印加ネジ37によって印加された圧力を検出するプリロード圧センサ39は、計測した圧力を表示する図示しないモニターに接続されている。計測作業者は、このモニターに表示される表示値(プリロード圧センサ39による計測値)を確認しながら、プリロード印加ネジ37を回転させて、圧電体に所定の大きさの静的圧力を印加することができる。
【0025】
なお、台座圧電体26も、印加された圧力に応じた電圧を出力するものであるが、台座圧電体26からの出力電圧の応答性も、静的圧力がある程度印加された状態の方が高い場合がある。図5は、台座部材24の近傍を拡大して示す概略断面図である。計測装置1では、台座圧電体26として中心に貫通孔26aが設けられた形状のものを用いている。台座部材24の上記孔部27の底面27bには、中央部に凹部21が形成されており、この凹部21の底面に貫通孔21aが形成されている。また、載置面22Aを備える板状体22の他方主面22Bの中央部には、雌ネジ状の凹部23が設けられている。計測システム1では、第2プリロード印加ネジ(雄ネジ)29が、凹部21の貫通孔21aと台座圧電体26の貫通孔26aとに挿通され、板状体22の凹部23に締結されている。このプリロード印加ネジ29を締結することで、台座圧電体26には、所定の大きさの静的圧力がかけられた状態(プリロード状態)することができる。第2プリロード印加ネジ29の締結強度を調整することで、台座圧電体に印加しておく静的圧力の大きさを調整し、動的圧力に応じた電圧を良好に出力することができる程度の静的圧力を印加しておくことが可能となっている。
【0026】
情報取得部40は、印加した圧力に応じて発生する台座出力電圧の情報を取得する。算出部50は、台座出力電圧の情報と、圧電体からの出力電圧の情報とを用いて、測定対象物である圧電体Sの圧電特性を算出する。情報取得部40は、集電ヘッド35にローノイズケーブル55を介して接続された出力電荷用のチャージアンプ56と、台座圧電体26にローノイズケーブルを介して接続された印加圧力モニタ用のチャージアンプ58と、チャージアンプ56とチャージアンプ58と接続されたデータロガー59とを有している。データロガー59は、算出部50に接続されている。算出部50は、公知のパーソナルコンピュータ(情報処理部)である。なお、両方のチャージアンプ56、58の出力はオシロスコープなどのモニター59によって、計測中もリアルタイムに確認できるようになっている。
【0027】
次に、図6を参照しながら、このような計測システム1により圧電体Sの圧電特性を計測する本発明の計測方法の実施形態を説明する。
【0028】
まず、図1に示す状態となるよう、計測システム1の各部と圧電体Sとを配置する(ステップS1)。このステップでは、圧電体Sと、計測用圧電体である台座圧電体とを、軸C方向に沿って重ねて配置するとともに、アクチュエータ34、第1プリロード印加手段27、ロッド部材25等も、それぞれの中心軸が軸Cに一致するように配置する。
【0029】
次に、対象圧電体Sに静的圧力を印加し、プリロード状態とする(ステップS2)。具体的には、集電ヘッド35と板状体22の間に測定対象である圧電体Sを挟み、第1プリロード印加ネジ27を回して基準面38の位置を調整して、所定の大きさの静的圧力を圧電体Sに付与する。プリロードする静的圧力として、たとえば4〜6kNと比較的高い圧力を印加しておく。この際、ロッド部材25の回転を調整することで、載置面22Aの位置を併せて調整することもできる。第1プリロード印加手段27およびロッド部材25は、それぞれの中心軸が軸Cに一致するように配置されており、圧電体Sには軸Cに沿った静的圧力が効率的に印加される。
【0030】
次に、圧電体Sに対する動的圧力の印加を開始する(ステップS3)。このステップでは、印加圧力制御部53がアクチュエータ34測定用電圧を印加し、アクチュエータ34が、印加された電圧に応じた量だけ筒状体13の軸方向に沿って膨張または収縮することで、圧電体Sに対して動的圧力が印加される。
【0031】
続いて、情報取得部40が、測定対象物である圧電体Sが発生する電圧の情報(対象出力電圧情報)と、圧力を印加する方向である軸C方向に沿って圧電体Sと重ねた台座圧電体26が発生する電圧の情報(台座出力電圧情報)とを取得する(ステップS4)。圧電体Sに印加する圧力は、ファンクションジェネレータ51が発生する電圧およびピエゾドライバ52が増幅して得られる電圧により、推定することができる。しかしこのような推定値は、実際に圧電体Sに印加されている圧力から、大きく相違していることも多い。台座圧電体26は、測定対象である圧電体Sの直下に配置されており、また、圧電体Sにかかる軸Cに沿った動的圧力を直接受ける。台座圧電体26から出力される電圧の情報は、圧電体Sに印加される動的圧力の大きさに精度良く対応しているといえる。
【0032】
次に、算出部50が、情報取得部40が取得した対象出力電圧情報と台座出力電圧情報とを用いて、圧電体Sの圧電特性値を算出する(ステップS5)。例えば、台座出力電圧情報における電圧波形を圧電体Sに入力された動的圧力の時系列変化を表す波形とみなし、対象出力電圧情報における電圧波形を、この動的圧力の時系列変化に応じて対象体Sから発生する電圧情報とし、印加された動的圧力に対する圧電体Sの応答特性を表すパラメータを算出する。算出するパラメータとしては、例えばd33と呼ばれる圧電歪定数などが挙げられるが、特に限定されない。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は特に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0034】
S 圧電体
11 支持体
11a 側板
11b 天板
11c 底板
13 筒状体
22A 載置面
20 載置測定部
22 板状体
22A 載置面
22B 他方の主面
24 台座部材
24A 台座面
25 ロッド部材
26 台座圧電体
30 圧力印加部
34 アクチュエータ
35 集電ヘッド
35A 当接面
37 第1プリロード印加ネジ
38 基準面
40 情報取得部
50 算出部
52 ピエゾドライバ
53 印加圧力制御部
56、58 チャージアンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物である圧電体の圧電特性のうち、圧力を印加した際に発生する前記圧電体からの出力電圧を計測するための圧電特性計測システムであって、
前記圧電体が載置される載置面を有する載置測定部と、
前記載置面に対向して配置された、前記載置面に平行な当接面を有し、前記載置面および前記当接面に直交する一軸方向に沿った圧力を、前記当接面を介して前記圧電体に印加する圧力印加部と、
印加した前記圧力の情報および前記圧力に応じて発生する前記圧電体からの出力電圧の情報を取得する情報取得部と、
前記圧力の情報および前記出力電圧の情報を用いて、前記圧電体の圧電特性値を算出する算出部と
を備えており、
前記載置測定部は、前記載置面を一方の主面とする一対の平行な主面を有する板状体と、該板状体の他方の主面に対向して配置された、前記一軸方向と直交する台座面を有する台座部材と、該台座部材の前記台座面に載置されて前記板状体の前記他方の主面との間に挟持された台座圧電体とを備え、
該台座圧電体は、前記一軸方向に沿って前記圧電体と重なる位置に配置され、前記台座面と前記他方の主面とから受ける前記一軸方向に沿った圧力に応じた台座出力電圧を発生し、
前記情報取得部は、印加した前記圧力に応じて発生する前記台座出力電圧の情報を取得し、
前記算出部は、前記台座出力電圧の情報と前記圧電体からの前記出力電圧の情報とを用いて、測定対象物である前記圧電体の圧電特性を算出することを特徴とする圧電特性計測システム。
【請求項2】
前記一軸方向に沿った中心軸を有する筒状体と、前記筒状体を支持する支持体とをさらに備え、
前記圧力印加部は、前記筒状体の内部に配置された、前記圧電体に印加する圧力を発生する圧力発生手段と、該圧力発生手段と前記載置面との間に配置された、前記当接面を有する圧力印加用板状体を備え、
前記圧力発生手段は、前記一軸方向に沿った圧力を前記圧力印加用板状体に印加することを特徴とする請求項1に記載の圧電特性計測システム。
【請求項3】
前記筒状体は、内部に前記中心軸と直交する基準面を備えており、
前記圧力発生手段は、前記基準面と前記圧力印加用板状体との間に配置された、印加された電圧に応じて前記一軸方向に沿った圧力の大きさを調整する圧電デバイスを有していることを特徴とする請求項2に記載の圧電特性計測システム。
【請求項4】
前記筒状体に対する前記台座面の相対位置を、前記一軸方向に沿って変動させる台座面可動手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の圧電特性計測システム。
【請求項5】
前記台座部材は、前記台座面と反対側の面に開口した開口端および前記一軸方向に直交する底面を有する、前記一軸方向に沿って延びた孔部を備え、
前記台座面可動手段は、前記一軸方向に直交する端面を有するロッド部材と、前記端面の前記一軸方向に沿った位置を変動させるロッド部材変動機構とを備え、
前記ロッド部材は、前記孔部に挿入されて前記端面が前記孔部の前記底面に当接しており、
前記台座面可動手段は、前記ロッド部材変動機構によって前記端面の位置を変動させることで、前記筒状体に対する前記台座面の相対位置を変動させることを特徴とする請求項4に記載の圧電特性計測システム。
【請求項6】
測定対象物である対象圧電体の圧電特性のうち、圧力を印加した際に発生する前記圧電体からの出力電圧を計測するための圧電特性計測方法であって、
前記対象圧電体および印加された圧力に応じて電圧を発生する計測用圧電体を、一軸方向に沿って重ねて配置するステップと、
前記対象圧電体に対して、前記計測用圧電体と反対の側から、前記一軸方向に沿った圧力を周期的に印加するステップと、
印加した前記圧力の情報および前記圧力に応じて発生する前記対象圧電体からの出力電圧の情報を取得するステップと、
前記圧力の情報および前記出力電圧の情報を用いて前記計測圧電体の圧電特性値を算出するステップとを有し、
前記取得するステップでは、印加した前記圧力の情報として、前記一軸方向に沿った圧力に応じて発生する前記計測用圧電体からの出力電圧の情報を併せて取得することを特徴とする圧電特性計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96816(P2013−96816A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239312(P2011−239312)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)