説明

地すべり防止方法

【課題】地表面からすべり面までの距離が大きくても施工費用の高騰化を防ぐことができ、且つすべり面を確実に固定化することができる工法を提供することを課題とする。
【解決手段】地表面13からすべり面11に向かって進入トンネル14を掘削し、この進入トンネル14の先端からすべり面11に沿わせて本トンネル15を掘削し、これらの本トンネル15及び進入トンネル14にコンクリート16、17を充填して閉鎖する。
【効果】本トンネルをコンクリートで閉鎖すれば、すべり面を確実に固定化することができる。また、地表面からすべり面までの距離が大きいときは、進入トンネルを延ばすことで対処できるから、施工費用の高騰化を抑えることができる。できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜面の地すべり防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
斜面から土塊がすべり落ちるところの地すべり現象は、重大な自然災害を引き起こす。そこで、各種の地すべり対策が講じられてきた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−190252公報(図5、図6)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図7は従来の技術の基本原理を説明する図であり、(a)に示されるように、地表面101からすべり面102へ多数の縦穴103及び横穴104を穿つ。次に、(b)に示されるように穴103、104に袋体105を降ろし、この袋体105に硬化性充填材106を充填する。硬化性充填材106ですべり面102を固定してすべり難くする。
そして、穴103、104を埋め戻すことで、地表面101を綺麗にする。
【0004】
穴103、104は深いため、穴の掘削費用が嵩む。すなわち、地表面からすべり面までの距離が大きいほど、穴の掘削費用が嵩む。
また、袋体105がすべり面102に跨って配置されているか否かは、ほとんど確認できない。このため、袋体105の幾つかはすべり面102から外れてしまう。
そこで、地表面からすべり面までの距離が大きくても施工費用の高騰化を防ぐことができ、且つすべり面を確実に固定化することができる工法が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、地表面からすべり面までの距離が大きくても施工費用の高騰化を防ぐことができ、且つすべり面を確実に固定化することができる工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、斜面から土塊がすべり落ちることを防止する地すべり防止方法において、
前記土塊のすべり面を確定するために実施するすべり面調査工程と、
得られたすべり面よりも外側位置にて地表面から地山中心に向かって進入トンネルを掘る進入トンネル掘削工程と、
得られた進入トンネルの先端から前記すべり面に沿って本トンネルを掘る本トンネル掘削工程と、
得られた本トンネルの途中から水平に枝抗を掘る枝抗掘削工程と、
得られた枝抗及び前記本トンネルをコンクリートで閉鎖することで、すべり面を固めるすべり面固化工程と、
前記進入トンネルをコンクリートで閉鎖する進入トンネル閉鎖工程と、からなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、斜面から土塊がすべり落ちることを防止する地すべり防止方法において、
前記土塊のすべり面を確定するために実施するすべり面調査工程と、
得られたすべり面に向かって地表面から進入トンネルを掘る進入トンネル掘削工程と、
得られた進入トンネルの先端から前記すべり面に沿って本トンネルを掘る本トンネル掘削工程と、
得られた前記本トンネルをコンクリートで閉鎖することで、すべり面を固めるすべり面固化工程と、
前記進入トンネルをコンクリートで閉鎖する進入トンネル閉鎖工程と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、本トンネルがすべり面に沿っているため、本トンネル内で人目によりすべり面の存在及び状態を確認することができる。このような本トンネルをコンクリートで閉鎖すれば、すべり面を確実に固定化することができる。
また、地表面からすべり面までの距離が大きいときは、進入トンネルを延ばすことで対処できるから、施工費用の高騰化を抑えることができる。
【0009】
請求項2に係る発明でも、本トンネル内で人目によりすべり面の存在及び状態を確認することができる。このような本トンネルをコンクリートで閉鎖すれば、すべり面を確実に固定化することができる。また、地表面からすべり面までの距離が大きいときは、進入トンネルを延ばすことで対処できるから、施工費用の高騰化を抑えることができる。
この発明は、進入トンネルをすべり面に向かって掘るため、すべり面付近が広範囲に破砕されている場合に、適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1はダム上流の谷の断面図であり、ダム上流の谷を構成する地山10は、一般に急な斜面で構成される。そして、放置しておくとすべり面11を境にして土塊12がすべり落ちる危険がある。
その対策として、地表面13からすべり面11に向かって進入トンネル14を掘削し、この進入トンネル14の先端からすべり面11に沿わせて(図面表裏方向に)本トンネル15を掘削し、これらの本トンネル15及び進入トンネル14にコンクリート16、17を充填して閉鎖する。
【0011】
ダム上流の谷では、ダムの水位変化に伴って谷川18の水位が大きく変動する。特に水位が高まると、地山10からの排水性が低下し、すべり面11でのすべりが発生しやすくなる。このような場所に本発明による地すべり防止策を講じることは有効である。
【0012】
図2は図1の2矢視図であり、進入トンネル14、14はすべり面11を避けた外側に2本設ける。そして、これらの進入トンネル14、14の先端同士を結ぶことで本トンネル15を設ける。
【0013】
次に、本発明に係る地すべり防止方法の施工工程を、図3及び図4に基づいて説明する。
図3はすべり面調査から本トンネル掘削までの工程説明図であり、(a)において、土塊のすべり面11を確定するために、ボウリング調査法などですべり面11の位置を概ね決める。
【0014】
(b)において、すべり面11を避けるようにして、2本の進入トンネル14、14を掘削する。なお、進入トンネル14は1本のみであっても良い。そして、進入トンネル14、14の先端からすべり面11に沿った本トンネル15を掘削する。(b)のC−C線断面図である(c)に示すように、本トンネル15から水平に枝抗19を延ばす。
【0015】
図4はすべり面固化から進入トンネル閉鎖までの工程の工程説明図であり、先ず、(a)のb−b線断面図である(b)において、枝抗19にコンクリート21を充填する。そして、(a)において、本トンネル15にコンクリート16を充填する。これで、すべり面11を固めることができた。次に、進入トンネル14、14にコンクリート17、17を充填する。
【0016】
(a)から明らかなように、進入トンネル14、14に充填したコンクリート17、17は健全な地山(すなわち、すべり面11の外側)に埋設されている。これらのコンクリート17、17が橋脚の役割を果たして、コンクリート16が土止めブリッジの役割を果たして土塊12を地山に繋ぎ止める。
【0017】
すなわち、本発明は、斜面から土塊がすべり落ちることを防止する地すべり防止方法において、前記土塊のすべり面11を確定するために実施するすべり面調査工程(図3(a))と、得られたすべり面11よりも外側位置(土塊12を避けた位置)にて地表面13から地山10の中心に向かって進入トンネル14を掘る進入トンネル掘削工程(図3(b))と、得られた進入トンネル14の先端から前記すべり面11に沿って本トンネル15を掘る本トンネル掘削工程(図3(b))と、得られた本トンネル15の途中から水平に枝抗19を掘る枝抗掘削工程(図3(c))と、得られた枝抗19及び前記本トンネル15をコンクリート21、16で閉鎖することで、すべり面11を固めるすべり面固化工程(図4(a)、(b))と、前記進入トンネル14をコンクリート17で閉鎖する進入トンネル閉鎖工程(図4(a)、(b))と、からなることを特徴とする。
【0018】
上記地すべり防止方法を実施することにより、本トンネル15がすべり面11に沿っているため、本トンネル15内で人目によりすべり面11の存在及び状態を確認することができる。このような本トンネル15をコンクリート16で閉鎖すれば、すべり面11を確実に固定化することができる。
また、地表面13からすべり面11までの距離が大きいときは、進入トンネル14を延ばすことで対処できるから、施工費用の高騰化を抑えることができる。
【0019】
次に本発明の別実施例を説明する。
図5は図1の別実施例を説明する図、図6は図5の6−6線断面図であり、すべり面付近の地層が広範囲に破砕されている場合に、好適な例を示す。
すなわち、すべり面11に向かって地表面13から複数本の進入トンネル24を掘る。そして、進入トンネル24の先端からすべり面11に沿って短い本トンネル25を掘る。
次に、本トンネル25をコンクリート26で閉鎖することで、すべり面11を固め、さらに、進入トンネル24をコンクリート27で閉鎖する。
【0020】
この例においても、本トンネル25がすべり面11に沿っているため、本トンネル25内で人目によりすべり面11の存在及び状態を確認することができる。このような本トンネル25をコンクリート26で閉鎖すれば、すべり面11を確実に固定化することができる。
また、地表面13からすべり面11までの距離が大きいときは、進入トンネル24を延ばすことで対処できるから、施工費用の高騰化を抑えることができる。
【0021】
尚、本発明は、ダム上流の地山に対する地すべり対策に好適であるが、国道などの道路沿いの傾斜面に施す地すべり対策や住宅の裏山斜面に施す地すべり対策に適用することは差し支えなく、適用箇所は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、ダム上流の地山に対する地すべり対策に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ダム上流の谷の断面図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】すべり面調査から本トンネル掘削までの工程説明図である。
【図4】すべり面固化から進入トンネル閉鎖までの工程の工程説明図である。
【図5】図1の別実施例を説明する図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【符号の説明】
【0024】
10…地山、11…すべり面、12…土塊、13…地表面、14、24…進入トンネル、15、25…本トンネル、16、17、21、26、27…コンクリート、19…枝抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜面から土塊がすべり落ちることを防止する地すべり防止方法において、
前記土塊のすべり面を確定するために実施するすべり面調査工程と、
得られたすべり面よりも外側位置にて地表面から地山中心に向かって進入トンネルを掘る進入トンネル掘削工程と、
得られた進入トンネルの先端から前記すべり面に沿って本トンネルを掘る本トンネル掘削工程と、
得られた本トンネルの途中から水平に枝抗を掘る枝抗掘削工程と、
得られた枝抗及び前記本トンネルをコンクリートで閉鎖することで、すべり面を固めるすべり面固化工程と、
前記進入トンネルをコンクリートで閉鎖する進入トンネル閉鎖工程と、からなることを特徴とする地すべり防止方法。
【請求項2】
斜面から土塊がすべり落ちることを防止する地すべり防止方法において、
前記土塊のすべり面を確定するために実施するすべり面調査工程と、
得られたすべり面に向かって地表面から進入トンネルを掘る進入トンネル掘削工程と、
得られた進入トンネルの先端から前記すべり面に沿って本トンネルを掘る本トンネル掘削工程と、
得られた前記本トンネルをコンクリートで閉鎖することで、すべり面を固めるすべり面固化工程と、
前記進入トンネルをコンクリートで閉鎖する進入トンネル閉鎖工程と、からなることを特徴とする地すべり防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−75283(P2008−75283A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253310(P2006−253310)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(594135151)財団法人ダム技術センター (12)
【Fターム(参考)】