説明

地下埋設鋼構造物の腐食診断装置及び腐食診断方法

【課題】高精度な地下埋設鋼構造物の腐食診断を実現する。
【解決手段】外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、前記インピーダンス測定手段及び前記電気的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下埋設鋼構造物の腐食診断装置及び腐食診断方法に係り、特に、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うための地下埋設鋼構造物の腐食診断装置及び腐食診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガソリン、灯油、軽油、重油等の燃料油を貯蔵するタンクや配管(タンクに接続されている配管も含む)、又はその両方等からなる地下埋設鋼構造物は、給液所、燃料基地、重油・軽油ボイラーを有する工場、事業所、ビル等に設置されている。また、地下埋設鋼構造物である地下タンクの外側は、土壌により腐食しないように、アスファルト、タールエポキシ、FRP(Fiber Reinforced Plastics)等で覆われている。更に、地下タンクの内側は、燃料油等の場合、通常のタンク材質である鉄鋼板を腐食することはないため、特段に防食措置を施さずに鉄鋼板が裸の状態となっている。
【0003】
さて、従来では、上述した地下タンクの腐食劣化診断手法が米国等で開発されている(例えば、非特許文献1参照。)。この手法は、地下タンクデータ(容量、埋設後の経過年数等)、設備の腐食環境データ(迷走流電流、土壌比抵抗、対地電位等)、土壌の化学的性質データ(塩化物濃度、硫化物濃度、pH等)と地下タンクの腐食進行量を多数測定し、各データと地下タンクの腐食進行量との関係を統計的に解析し、地下タンクの土壌の腐食劣化量の予測プログラムを開発する手法である。この方法で開発された予測プログラムにより診断対象地下タンクの地下タンクデータ、設備の腐食環境データ、土壌の化学的性質データを採取し予測プログラムにあてはめると、当該地下タンクの腐食劣化量が予測できるという手法である。
【非特許文献1】ASTM規格G158−98、メソッドA
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した手法の問題点は、次の通りである。即ち、採取する現場のデータ設備は腐食環境データ、土壌の化学的性質データであるが、これは地下タンクが埋設されている環境に腐食性があるかどうかのデータである。しかしながら、仮に埋設されている環境に腐食性が有ったとしても、地下タンクの塗覆装が健全であれば、地下タンクに腐食は発生することはない。即ち、腐食環境データ、土壌の化学的性質データのみからは診断対象地下タンクに腐食が発生するか否かは判断できない。したがって、腐食環境データ、土壌の化学的性質データのみに基づく診断手法では予測の確度は低いと考えられる。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うための地下埋設鋼構造物の腐食診断装置及び腐食診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0007】
請求項1に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、前記インピーダンス測定手段及び前記電気的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、インピーダンス測定により地下埋設鋼構造物の塗覆装の劣化を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することにより、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0009】
請求項2に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定手段と、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、前記超音波測定手段及び前記電気的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、超音波測定により地下埋設鋼構造物における錆の発生の有無を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することにより、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0011】
請求項3に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定手段と、前記インピーダンス測定手段、前記電気的腐食環境測定手段、及び前記化学的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、インピーダンス測定により地下埋設鋼構造物の塗覆装の劣化を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的及び化学的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することにより、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0013】
請求項4に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定手段と、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定手段と、前記超音波測定手段、前記電気的腐食環境測定手段、及び前記化学的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、超音波測定により地下埋設鋼構造物における錆の発生の有無を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的及び化学的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することにより、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0015】
請求項5に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定手段と、前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、前記超音波測定手段、前記インピーダンス測定手段、及び前記電気的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、インピーダンス測定により地下埋設鋼構造物の塗覆装の劣化を診断し、また超音波測定により地下埋設鋼構造物における錆の発生の有無を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することで、より高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0017】
請求項6に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定手段と、前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定手段と、前記超音波測定手段、前記インピーダンス測定手段、前記電気的腐食環境測定手段、及び前記化学的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、インピーダンス測定により地下埋設鋼構造物の塗覆装の劣化を診断し、また超音波測定により地下埋設鋼構造物における錆の発生の有無を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的及び化学的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することで、より高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0019】
請求項7に記載された発明は、前記電気的腐食環境測定手段は、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の迷走電流を測定する迷走電流測定手段と、前記地下埋設鋼構造物と前記地中との電位差を測定する対地電位測定手段と、前記地下埋設鋼構造物と前記地中との土壌比抵抗を測定する土壌比抵抗測定手段とのうち、少なくとも1つを有することを特徴とする。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、迷走電流測定、対地電位測定、土壌比抵抗測定により、地下埋設鋼構造物の周辺の設備環境や腐食状態の診断レベル等に応じて測定内容を選択することができる。これにより、高精度な腐食診断を実現することができる。
【0021】
請求項8に記載された発明は、前記化学的腐食環境測定手段は、前記地下埋設鋼構造物が埋設された地中の塩化物濃度、硫化物濃度、pH、含水比、及び酸化還元電位のうち少なくとも1つを分析する分析手段を有することを特徴とする。
【0022】
請求項8記載の発明によれば、錆の発生等を化学的に助長させる因子である塩化物濃度、硫化物濃度、pH、含水比、及び酸化還元電位のうち少なくとも1つを分析することで、高精度な腐食診断を実現することができる。
【0023】
請求項9に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、前記インピーダンス測定ステップ及び前記電気的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする。
【0024】
請求項9記載の発明によれば、インピーダンス測定により地下埋設鋼構造物の塗覆装の劣化を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することにより、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0025】
請求項10に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、前記超音波測定ステップ及び前記電気的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする。
【0026】
請求項10記載の発明によれば、超音波測定により地下埋設鋼構造物における錆の発生の有無を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することにより、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0027】
請求項11に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定ステップと、前記インピーダンス測定ステップ、前記電気的腐食環境測定ステップ、及び前記化学的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする。
【0028】
請求項11記載の発明によれば、インピーダンス測定により地下埋設鋼構造物の塗覆装の劣化を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的及び化学的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することにより、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0029】
請求項12に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定ステップと、前記超音波測定ステップ、前記電気的腐食環境測定ステップ、及び前記化学的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする。
【0030】
請求項12記載の発明によれば、超音波測定により地下埋設鋼構造物における錆の発生の有無を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的及び化学的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することにより、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0031】
請求項13に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、前記超音波測定ステップ、前記インピーダンス測定ステップ、及び前記電気的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする。
【0032】
請求項13記載の発明によれば、インピーダンス測定により地下埋設鋼構造物の塗覆装の劣化を診断し、また超音波測定により地下埋設鋼構造物における錆の発生の有無を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することで、より高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0033】
請求項14に記載された発明は、外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定ステップと、前記超音波測定ステップ、前記インピーダンス測定ステップ、前記電気的腐食環境測定ステップ、及び前記化学的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする。
【0034】
請求項14記載の発明によれば、インピーダンス測定により地下埋設鋼構造物の塗覆装の劣化を診断し、また超音波測定により地下埋設鋼構造物における錆の発生の有無を診断し、更に地下埋設鋼構造物の周辺の電気的及び化学的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することで、より高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0035】
請求項15に記載された発明は、前記電気的腐食環境測定ステップは、前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の迷走電流を測定する迷走電流測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物と前記地中との電位差を測定する対地電位測定ステップと、前記地下埋設鋼構造物と前記地中との土壌比抵抗を測定する土壌比抵抗測定ステップとのうち、少なくとも1つを有することを特徴とする。
【0036】
請求項15記載の発明によれば、迷走電流測定、対地電位測定、土壌比抵抗測定により、地下埋設鋼構造物の周辺の設備環境や腐食状態の診断レベル等に応じて測定内容を選択することができる。これにより、高精度な腐食診断を実現することができる。
【0037】
請求項16に記載された発明は、前記化学的腐食環境測定ステップは、前記地下埋設鋼構造物が埋設された地中の塩化物濃度、硫化物濃度、pH、含水比、及び酸化還元電位のうち少なくとも1つを分析する分析ステップを有することを特徴とする。
【0038】
請求項16記載の発明によれば、錆の発生等を化学的に助長させる因子である塩化物濃度、硫化物濃度、pH、含水比、及び酸化還元電位のうち少なくとも1つを分析することで、高精度な腐食診断を実現することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
<本発明の概要>
まず、本発明の実施形態を説明する前に、地下埋設鋼構造物(地下タンク、配管等)の腐食に起因する形態について説明する。腐食形態の一つとしては、例えば電気鉄道等の軌道からの洩れ電流が迷走電流となり、地下埋設鋼構造物等に流れ込むことで発生する電食(電気腐食)がある。また、他の腐食形態として、地下タンク、配管系と、鉄筋コンクリート構造物(施設の基礎や土間など)中の鉄筋との電気的接触によって発生するコンクリート/土壌マクロセル腐食がある。
【0041】
これらの腐食形態は、腐食の進行が早いために厚肉鋼板で作られた地下埋設鋼構造物であっても、腐食(電食及びコンクリート/土壌マクロセル腐食)が発生すると10年〜20年、あるいは腐食が緩やかな場合には30年で地下埋設鋼構造物の一部に穿孔が生じる。したがって、この腐食発生の有無を判断することが地下埋設鋼構造物の腐食診断を高精度に行うためのポイントとなる。
【0042】
なお、腐食形態には、従来よりミクロセル腐食も存在するが、この腐食の進行速度は0.02〜0.05mm/年程度と遅く、厚肉鋼板からなる地下タンク等においてはほとんど問題とならない。以上のことから、地下埋設鋼構造物の腐食診断においては、上述した電食及びコンクリート/土壌マクロセル腐食発生の有無を診断する必要がある。
【0043】
ここで、電食及びコンクリート/土壌マクロセル腐食の発生のメカニズムを考えると、電食の場合は、地下埋設鋼構造物周囲に迷走電流の流入があるか否かが第1の要素となる。また、コンクリート/土壌マクロセル腐食の場合は、地下埋設鋼構造物とコンクリート中の鉄筋との接触があるかないかが第2の要素となる。しかしながら、これらの二つの要素があったにしても、地下タンクの被覆状態が健全(地下タンクと土壌との電気的絶縁が良好に保たれている)場合には、電食もコンクリート/土壌マクロセル腐食も、更にはミクロセル腐食も発生しない。
【0044】
仮に、上述した二つの要素の何れか一方の要素があったとして、地下タンクの被覆の一部に劣化が生じた場合、この部分に集中的に電食あるいはコンクリート/土壌マクロセル腐食が発生し、速い腐食速度で進行するため、地下埋設鋼構造物の一部が穿孔することになる。このとき、土壌の土壌比抵抗が小さい場合、塩素イオンは孔食のきっかけを作ることから、より一層腐食速度が速くなる。
【0045】
したがって、本発明では、上述した二つの要素を基準として関連する値を測定することで高精度な腐食診断を実現する。
【0046】
<実施の形態>
以下に、本発明における地下埋設鋼構造物の腐食診断装置及び腐食診断方法を好適に実施した形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0047】
<腐食診断装置>
図1は、第1実施例における腐食診断装置の概略構成の一例を示す図である。図1に示す腐食診断装置10は、接地電極としてのアース(プローブ)11と、インピーダンス測定手段12と、超音波検出センサー13と、超音波測定手段14と、基準電極15と、端子16と、対地電位測定手段17と、電極18と、迷走電流測定手段19と、電極棒20と、土壌比抵抗測定手段21と、土壌分析手段22と、判定手段23と、入出力手段24とを有するよう構成されている。
【0048】
なお、図1には、地下埋設鋼構造物として地下タンク1及び地下タンク1に接続された配管2(2A〜2C)を有している。地下タンク1及び配管2は、鉄等の鋼製で形成され、外面が所定の材質の塗覆装により被覆されて、地中の土壌3に埋設されている。
【0049】
この塗覆装は、例えば被覆材料で覆い、その上にエポキシ樹脂を塗装して一定以上の厚みの被覆層を構成したものであり、地下タンク1及び配管2と、土壌3との間を電気的に絶縁し、鋼製の地下タンク1及び配管2の外面保護を行うものである。なお、地下タンク1及び配管2を被覆する被覆手段は、必ずしも塗覆装である必要はなく、地下タンク1及び配管2の外面と土壌3との間を電気的に絶縁するものであれば、他の被覆手段であってもよい。
【0050】
また、図1に示す配管2のうち、配管2Aは地下タンク1に貯蔵されているガソリン等の燃料油等を給油装置25に出力するための配管であり、配管2Bは燃料油を外部から地下タンク1に導入させるための配管であり、配管2Cはタンク内を大気圧に保つように大気とタンク内部とを連通するための配管(通気管)である。なお、配管2の本数や地下タンク1への接続位置については、これに限定されるものではない。また、地下タンク1についても単数ではなく、複数でもよい。
【0051】
アース11は、例えば地下タンク1及び配管2と同種の材料からなる板片又はブロックを用い、地下タンク1と所定の距離を隔てた地中の土壌3に埋設されている。また、インピーダンス測定手段12は、地下タンク1及びアース11と接続されており、接続された物体間の電気化学インピーダンス(以下、電気化学インピーダンスを単にインピーダンスと略称する。)を測定する。また、測定手段12は、測定結果を判定手段23に出力する。
【0052】
また、超音波検出センサー13は、光ファイバー式の超音波検出センサーであり、地下タンク1及び配管2に発生する錆の発生に伴って生じる振動、音等の超音波を検出する。なお、超音波検出センサー13は、地下タンク1や配管2の外側に設けられていてもよい。また、超音波検出センサー13は、例えば圧電素子等を用いることもできる。また、超音波検出センサー13は、検出結果を超音波測定手段14に出力する。超音波測定手段14は、超音波検出センサー13により検出される値から得られる測定結果を判定手段23に出力する。
【0053】
また、対地電位測定手段17は、基準電極15と、配管2に接している端子16−1あるいは地下タンク1の内側に接している端子16−2との電位差を測定する。なお、端子16は、それぞれ地下タンク1又は配管2Cの鋼製部分と接するようにする。また、基準電極15は、例えば、飽和硫酸銅等を用いることができる。また、対地電位測定手段17は、基準電極15と地下タンク1との電位差、基準電極15と配管2との電位差を測定し、その測定結果を判定手段23に出力する。
【0054】
迷走電流測定手段19は、所定の間隔を空けて接地された複数の電極18−1,18−2により地表面の少なくとも2点間の電位差を測定する。これにより、その区域の迷走電流の大きさを測定することができる。また、迷走電流測定手段19は、測定した迷走電流を判定手段23に出力する。
【0055】
土壌比抵抗測定手段21は、複数の電極棒20を用いて土壌の抵抗率(土壌比抵抗)を測定する。また、土壌比抵抗測定手段21は、測定した土壌比抵抗を判定手段23に出力する。
【0056】
なお、上述した対地電位測定手段17、迷走電流測定手段19、及び土壌比抵抗測定手段21のうち、少なくとも1つの測定結果を用いて後述する判定手段23により、地下埋設鋼構造物の周辺の電気的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することができる。
【0057】
また、土壌分析手段22は、地下タンク1や配管2が埋設された付近で採取された土壌を分析し、塩化物濃度、硫化物濃度、pH、含水比、及び酸化還元電位のうち、少なくとも1つのデータを取得する。また、土壌分析手段22は、土壌の分析結果を判定手段23に出力する。なお、土壌分析手段22の分析結果により、地下埋設鋼構造物の周辺の化学的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断することができる。
【0058】
判定手段23は、入出力手段24からの指示等により、インピーダンス測定手段12と、超音波測定手段14と、対地電位測定手段17と、迷走電流測定手段19と、土壌比抵抗測定手段21と、土壌分析手段23とから得られる各測定結果、分析結果のうち、複数の測定結果、分析結果に基づいて地下埋設鋼構造物の腐食の状態を診断する。
【0059】
入出力手段24は、ユーザからの入力、指示情報を受け付ける入力手段や、本発明における腐食診断の実行経過や診断結果等を表示や音声で出力する出力手段を有する。また、上述した腐食診断装置10は、蓄積手段を設け、測定結果や測定条件、腐食診断結果、測定日時、診断日時等の各種データを蓄積しておいてもよい。このとき、蓄積手段に蓄積された各種データは、入出力手段24により必要に応じて読み出して、例えば出力手段としてのディスプレイ等に表示させることができる。
【0060】
ここで、上述した腐食診断装置10において、インピーダンス測定手段12、超音波測定手段14、対地電位測定手段17、迷走電流測定手段19、土壌比抵抗測定手段21、及び土壌分析手段23は、少なくとも後述する判定処理手順の各実施例を実施可能な範囲で選択的に構成させることができる。また、各構成における測定及び分析は、所定のタイミング(周期や指示等)で継続的又はスポット的に実行される。次に、上述した各測定手段及び分析手段について具体的に説明する。
【0061】
<インピーダンス測定手段12>
インピーダンス測定手段12は、地下タンク1及び配管2からなる地下埋設鋼構造物とアース11との間に、低周波数から高周波数へと周波数を変化させて交流電圧を印加し、インピーダンスを測定する。
【0062】
判定手段23は、地下タンク1及び配管2とアース11との間におけるインピーダンスの測定結果から、そのインピーダンス特性が予め設定された正常時(劣化のない状態)のインピーダンス特性であるか否かを判断する。
【0063】
ここで、図2は、配管が接続された地下タンク、アース、及び土壌の関係を等価回路で置き換えた一例を示す図である。また、図3は、腐食等による劣化の有無におけるインピーダンス特性の違いを説明するための図である。なお、図3に示すグラフの横軸はインピーダンスの実数成分(Z’)を示し、縦軸はインピーダンスの虚数成分(Z’’)を示している。
【0064】
ここで、図2(a)に示す等価回路30は、アース11の表面近傍の土壌3の抵抗要素Rctpと、アース11の表面近傍のコンデンサ要素Cdlpと、アース11と地下タンク1との間の土壌3の抵抗値要素Rsol1と、地下タンク1及び配管2の外面が塗覆装により健全な状態で保護されている状態(地下タンク1及び配管2と土壌3とが電気的に絶縁状態)において地下タンク1及び配管2を大きな容積を持つコンデンサとしたときのコンデンサ要素Cpとからなる。
【0065】
ここで、地下タンク1又は配管2の塗覆装が劣化し、地下タンク1又は配管2の外部表面が部分的に土壌3と電気的に接している状況である場合、図2(a)に示す等価回路30は、図2(b)のように表すことができる。つまり、地下タンク1又は配管2の一部が土壌3と電気的に接触することにより、その接触部分の抵抗要素Rsol2+Rct2とコンデンサ要素Cdl2とが追加されることになる(図2(b)に示す点線31)。
【0066】
このような状態の場合、図3に示すように、インピーダンスの高周波数域での軌跡にアース/土壌界面のインピーダンスに相当する容量性半円がみられる。ここで、その容量性半円の直径が、アース/土壌界面の電荷移動抵抗Rctpになり、高周波数極限での収束点が、地下タンク1及び配管2とアース11との間の土壌抵抗Rsol1となる。更に、低周波数域でのインピーダンスは、虚数軸と平行の軌跡となる。これは、健全状態の地下タンク及び配管/土壌界面のコンデンサ成分によるものである。
【0067】
したがって、図3において、地下タンク1及び配管2に対する塗覆装に異常がない状態、即ち完全に外面の被覆状態が保たれている場合(健全状態)のナイキスト線図(インピーダンス特性)は、図3(A)で示すように所定の周波数で略垂直に立ち上がる(虚数軸と平行の軌跡となる)傾向を示す。また、腐食による劣化等があり正常なインピーダンス特性でない場合のナイキスト線図は、図3(B)に示すように所定の周波数を境にして2つの容量性半円の軌跡が表れる。
【0068】
したがって、上述したインピーダンス特性の軌跡により、地下埋設鋼構造物の外面における塗覆装の劣化の有無を把握することができる。なお、判定手段23は、図3に示すようなナイキスト線図を生成して入出力手段24が有するディスプレイ等に出力させてユーザに提示させることができる。また、判定手段23は、判定の結果、塗覆装の劣化があると判断された場合に、その旨をユーザに表示又は音声により通知することもできる。
【0069】
このように、インピーダンス測定による診断では、インピーダンス特性の軌跡(形状)の変化を判断材料とするため、インピーダンス解析装置があればユーザにインピーダンス解析の専門的な知識がなくても地下埋設鋼構造物の外面の劣化等の診断を高精度に行うことができる。
【0070】
<超音波測定手段14>
次に、超音波測定手段14について説明する。超音波測定手段14は、錆等によりタンク側壁に発生したAE(Acoustic Emission)波を用いて腐食の検知及び腐食位置を特定する。
【0071】
通常、腐食時に発生する錆は、自らの成長により自壊したり、僅かな歪みにより破壊されるが、その際にAE波(超音波)が発生する。具体的には、「錆が発生するときに地下タンク表面の錆部結晶組織を破壊する際」あるいは「地下タンクの組織に歪みが生じて錆部結晶組織が破壊する際」等に発生する超音波を検出することによって錆の発生と錆の成長を検出する。
【0072】
このように、AE波を超音波検出センサー13により検出することで、腐食の発生の有無と腐食の発生位置を診断することができる。なお、地下タンク1の外面に発生する錆破壊によるAE波を効率よく検出するためには、図1に示すようにタンク内部に直接センサーを挿入し、液中伝播AE波を検出することが好ましい。また、土壌中の錆の破壊頻度は高くないため、短時間の計測ではAEが発生しない可能性がある。そこで、測定する際には、1つの方向をできるだけ長時間計測し、かつ短時間で全方位を計測することができる検出センサーであることが好ましい。
【0073】
<対地電位測定手段17>
次に、対地電位測定手段17について説明する。通常、コンクリート/土壌マクロセル腐食の発生の要件となる地下タンク1、配管2系とコンクリート中の鉄筋との接触については、地下タンク1や配管2等の地下埋設鋼構造物における対地電位の測定値が指標となる。
【0074】
ここで、一般に土壌3に埋設された銅の対地電位(自然電位)は−200mV程度、鉄の対地電位(自然電位)は−600mv程度の値である。一方、コンクリート中の鉄筋は、アルカリ性雰囲気にあるため対地電位は−200mV程度となる。これにより、地下埋設鋼構造物の何れかの場所で鉄筋と電気的に接触した状態にある場合、地下埋設鋼構造物の対地電位は、−450mVから−300mV程度の値を示すことになる。
【0075】
したがって、判定手段23は、地下埋設鋼構造物の対地電位「−450mV〜−300mV」を閾値とし、測定値と比較することで、地下埋設鋼構造物にコンクリート/土壌マクロセル腐食が発生しているか否かを診断することができる。
【0076】
<迷走電流測定手段19>
次に、迷走電流測定手段19による迷走電流測定について説明する。通常、地表面に迷走電流が流れると、その影響によって地表面に電位勾配が生じる。また、このときの電位勾配は、迷走電流の大きさに比例する。したがって、測定した迷走電流の値と、予め設定された閾値とを比較することで、迷走電流による腐食の有無を判断することができる。なお、判定内容としては、例えば「地表電位勾配が5mV/m以上のとき、迷走電流の影響による腐食性が大きい」と判断することができる。
【0077】
図4は、迷走電流の測定手法を具体的に説明するための図である。なお、図4は、図1に示す腐食診断装置の構成から迷走電流の測定に係る構成のみを示したものである。また、図4では、4つの電極18−1〜18−4を有しており、電極18−1,18−4はプラス「+」に接続され、電極18−2,18−3はマイナス「−」に接続されている。なお、電極18は、例えば飽和硫酸銅等を使用することができる。
【0078】
図4に示すように、迷走電流測定手段19は、地下タンク1A、1B等や配管等の地下埋設鋼構造物が埋設されている区域(周辺)における水平な地表面上の直角方向2方向に測定可能間隔X,Y(例えば10m等)を保った位置に電極18−1〜18−4を設置して、それぞれの方向において2本の電極間の電位を10分間以上測定する。
【0079】
判定手段23では、10分間以上測定した測定結果と予め設定された閾値とを比較して、腐食の診断を行う。なお、判定内容としては、例えば、「1mあたりの最大電位幅が5mV以上である場合には、迷走電流の影響による腐食の可能性が高い」と判断することができる。
【0080】
<土壌比抵抗測定手段21>
次に、土壌比抵抗測定手段21における測定手法について説明する。通常、地下埋設鋼構造物の腐食支配因子としては、土壌3の抵抗率、pH、含水率、塩化物濃度、硫化物濃度等があるが、その中でも特に抵抗率は、腐食電流の流れ易さに関係し、腐食に大きな影響を及ぼす。そこで、土壌比抵抗を測定し、測定した土壌比抵抗と予め設定された土壌比抵抗の閾値とを比較することで、腐食性(腐食速度)を診断することができる。
【0081】
ここで、土壌比抵抗による腐食性の判定時に用いられる判定内容としては、例えば「土壌比抵抗(Ω−cm)が、0〜1000のとき腐食性は大きいとし、1000〜5000のとき腐食性はやや大きいとし、5000〜10000のとき腐食性は中程度とし、10000〜100000のとき腐食性は小さいとし、100000より大きいとき腐食性は極めて小さい」と判断することができる。
【0082】
ここで、図5は、土壌比抵抗の測定方法を具体的に説明するための図である。なお、図5は、図1に示す腐食診断装置10の構成から土壌比抵抗の測定に係る構成のみを示したものである。
【0083】
まず、土壌比抵抗を測定する際、水平な地表面上の測定点が決定したら、その点をG(電極棒20−3)とし、点Gを基準に一例として合計5本の電極棒20−1〜20−5(C1,P1,G,C2,P2)を地中に打ち込む。なお、電極棒20は、測定用のリード線等により土壌比抵抗測定手段21と接続されている。
【0084】
次に、土壌比抵抗測定手段21により両端の電極棒C1,C2間に交流電流を印加し、その時の電極棒P1,P2間の電位差を電極棒C1,C2間の交流電流値で割った大地抵抗Rの値を土壌比抵抗測定手段21で読み取る。
【0085】
ここで、深さa(m)までの土壌3の平均的な抵抗率ρは、「ρ(Ω−cm)=2πaR×100=628aR(a:電極間距離(m)、R:大地抵抗(Ω))」によって求めることができる。
【0086】
したがって、判定手段23は、上述した数式により算出された値から、上述の閾値と比較して地下埋設鋼構造物の腐食診断を行う。このように、土壌比抵抗を判定要素とすることで、地下埋設鋼構造物における錆(腐食)の進行速度を推定する確度を更に向上させることができる。
【0087】
<土壌分析手段22>
土壌分析手段22は、地下埋設鋼構造物が埋設されている土壌を人手等により採取し、採取された土壌から錆の発生を化学的に助長して腐食に影響する因子である塩化物濃度、硫化物濃度、pH、含水比、及び酸化還元電位のうち、少なくとも1つを分析する。また、これらの分析結果と予め設定した閾値とを比較することにより、腐食を進める成分及び嫌気性微生物腐食が存在する可能性の有無を診断することができる。
【0088】
なお、土壌分析結果は、腐食速度に対する相対的な判断要素とはなるが、分析結果から直接腐食速度を予測することは困難である。したがって、土壌分析は、間接的な腐食劣化診断において、副次的なデータとして利用することが好ましい。
【0089】
ここで、判定手段23において、上述した腐食判定に用いられる各閾値は、判定手段23内に予め蓄積されており、入出力手段24により任意に設定を変更することができる。
【0090】
<判定手段による判定処理手順>
次に、上述した各測定手段及び分析手段により得られる測定結果等を組み合わせた本発明における判定処理手順について具体的に説明する。
【0091】
<第1実施例>
図6は、第1実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。第1実施例では、まずインピーダンス測定を行い(S01)、その結果に基づいて、地下埋設鋼構造物の塗覆装が劣化しているか否かを判断する(S02)。ここで、インピーダンス測定とは、上述したように地中に埋設されたアースを用いて、低周波数から高周波数へと周波数の異なる交流電流をアースと地下埋設鋼構造物との間に印加し、両者間のインピーダンス特性の変化により、地下埋設鋼構造物の被覆装が劣化しているか否かを判断する。
【0092】
ここで、S02の処理において、被覆装が劣化していると判断された場合(S02において、YES)、地下埋設鋼構造物の周辺の電気的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断する。この診断を行うために、測定されている地下タンク周辺の迷走電流、地下埋設鋼構造物の大地に対する電位差(対地電位)、及び地下埋設鋼構造物を埋設した土壌の抵抗値(土壌比抵抗)のうち、少なくとも1つを取得する(S03)。
【0093】
また、S03の処理にて得られた迷走電流、対地電位、及び土壌比抵抗値のうち、少なくとも1つの測定結果に基づいて地下埋設鋼構造物が電気的に腐食環境にあるか否かを判断する(S04)。
【0094】
ここで、S04の処理において迷走電流を取得した場合は、測定により取得した迷走電流と予め設定された閾値とを比較して迷走電流による腐食の影響が大きいか否かを判断して、地下埋設鋼構造物が電気的腐食環境にあるか否かを判定する。また、対地電位を取得した場合は、測定により取得した対地電位の測定値と予め設定された閾値とを比較することで、コンクリート/土壌マクロセル腐食の可能性を判定する。更に、土壌比抵抗を取得した場合は、測定した土壌比抵抗値と予め設定された閾値とを比較して腐食の進行速度を判定する。
【0095】
S04の処理により、電気的に腐食にあると判断された場合(S04において、YES)、腐食が進行しつつあると判定する。(S05)。また、電気的に腐食がないと判断された場合(S04において、NO)、錆が発生しているものの腐食の進行が遅いと判定する(S06)。
【0096】
また、S02の処理において、地下埋設鋼構造物に被覆装が劣化していないと判断された場合(S02において、NO)、腐食なしと判定する(S07)。
【0097】
上述した第1実施例における腐食診断により、インピーダンス測定から地下埋設鋼構造物の被覆装が劣化しているか否かを判断することで、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0098】
<第2実施例>
次に、第2実施例について説明する。図7は、第2実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。第2実施例では、まず超音波測定を行い(S11)、その結果に基づいて、錆が発生しているか否かを判断する(S12)。ここで、超音波測定は、例えば、上述したように光ファイバー式の検出センサーによるAE測定等を行う。つまり、S12の処理において、超音波の発生がない場合には、錆が発生していないと判断し、超音波が発生している場合には、錆(腐食)があると判断する。
【0099】
したがって、S12の処理において、錆が発生していると判断された場合(S12において、YES)、地下埋設鋼構造物の周辺の電気的な環境が腐食を助長する状況にあるか否かを診断する。つまり、上述したS03と同様に、既に迷走電流、対地電位、及び土壌比抵抗のうち、少なくとも1つを取得し(S13)、その測定結果に基づいて地下埋設鋼構造物が電気的に腐食環境にあるか否かを判断する(S14)。
【0100】
ここで、電気的に腐食にあると判断された場合(S14において、YES)、腐食が進行しつつあると判定する。(S15)。また、電気的に腐食がないと判断された場合(S14において、NO)、錆が発生しているものの腐食の進行が遅いと判定する(S16)。
【0101】
また、S12の処理において、錆が発生していないと判断される場合(S12において、NO)、腐食なしと判定する(S17)。
【0102】
上述した第2実施例における腐食診断により、超音波の有無から錆の発生の有無を判断することで、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0103】
<第3実施例>
次に、第3実施例について説明する。図8は、第3実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、第3実施例において、図8に示すS21〜S24の処理は、上述した第1実施例のS01〜S04と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0104】
ここで、S24の処理において、電気的腐食環境にあると判断された場合(S24において、YES)、地下埋設鋼構造物が埋設されている土壌成分等の分析結果を取得し(S25)、地下埋設鋼構造物が化学的腐食環境にあるか否かを判断する(S26)。
【0105】
つまり、第3実施例では、電気的腐食環境を判定要素にすると共に、化学的腐食環境も判定要素に加える。ここで、土壌分析結果としては、土壌の塩化物成分、硫化物成分、pH、含水比及び酸化還元電位のうち、少なくとも1つと予め設定された閾値とを比較して腐食環境を診断する。
【0106】
ここで、化学的腐食環境にあると判断された場合(S26において、YES)、腐食が急速に進行していると判定する(S27)。また、S26の処理において、化学的腐食環境にないと判断された場合(S26において、NO)、通常の速度で腐食が進行していると判定する(S28)。また、S24の処理において、電気的腐食環境にないと判断された場合(S24において、NO)、腐食の進行が遅いと判定する(S29)。更に、S22の処理において、錆が発生していないと判断された場合(S22において、NO)、腐食なしと判定する(S30)。
【0107】
上述した第3実施例における腐食診断により、化学的腐食環境を判定条件にすることで、より高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0108】
<第4実施例>
次に、第4実施例について説明する。図9は、第4実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、第4実施例では、上述した第2実施例に、第3実施例で示した化学的腐食環境を判定条件に追加している。
【0109】
具体的には、まず第4実施例において、図9に示すS41〜S44の処理は、上述した第2実施例のS11〜S14と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0110】
ここで、S44の処理において、電気的腐食環境にあると判断された場合(S44において、YES)、第3実施例で示したように地下埋設鋼構造物が埋設されている土壌成分等の分析結果を取得し(S45)、地下埋設鋼構造物が化学的腐食環境にあるか否かを判断する(S46)。
【0111】
ここで、化学的腐食環境にあると判断された場合(S46において、YES)、腐食が急速に進行していると判定する(S47)。また、S46の処理において、化学的腐食環境にないと判断された場合(S46において、NO)、通常の速度で腐食が進行していると判定する(S48)。また、S44の処理において、電気的腐食環境にないと判断された場合(S44において、NO)、錆が発生しているものの腐食の進行が遅いと判定する(S49)。更に、S42の処理において、錆が発生していないと判断された場合(S42において、NO)、腐食なしと判定する(S50)。
【0112】
上述した第4実施例における腐食診断により、化学的腐食環境を判定条件にすることで、より高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0113】
<第5実施例>
次に、第5実施例について説明する。第5実施例は、上述した第1実施例及び第2実施例を組み合わせた判定処理手順を示したものである。
【0114】
図10は、第5実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。第5実施例では、まず超音波測定を行い(S61)、その結果に基づいて、錆が発生しているか否かを判断する(S62)。
【0115】
ここで、錆が発生していないと判断された場合(S62において、NO)、次に、インピーダンス測定を行い(S63)、その結果に基づいて、地下埋設鋼構造物の塗覆装が劣化しているか否かを判断する(S64)。
【0116】
また、S62の処理において、錆が発生していると判断された場合(S62において、YES)、又はS64の処理において、塗覆装が劣化していると判断された場合(S64において、YES)、次に、既に測定されている迷走電流、対地電位、及び土壌比抵抗のうち、少なくとも1つを取得し(S65)、その測定結果に基づいて地下埋設鋼構造物が電気的に腐食環境にあるか否かを判断する(S66)。
【0117】
ここで、電気的に腐食にあると判断された場合(S66において、YES)、腐食が進行しつつあると判定する。(S67)。また、電気的に腐食がないと判断された場合(S66において、NO)、錆が発生しているか又は地下埋設鋼構造物の塗覆装が劣化しているものの腐食の進行が遅いと判定する(S68)。
【0118】
また、S64の処理において、塗覆装が劣化していないと判断された場合(S64において、NO)、腐食なしと判定する(S69)。
【0119】
上述した第5実施例における腐食診断により、超音波測定及びインピーダンス測定の各測定結果から、より高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0120】
<第6実施例>
次に、第6実施例について説明する。図11は、第6実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、第6実施例は、上述した第5実施例に化学的腐食環境を判定要素に追加したものである。したがって、第6実施例において、図11に示すS71〜S76の処理は、上述した第5実施例のS61〜S66と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0121】
S76の処理において、電気的腐食環境にあると判断された場合(S76において、YES)、地下埋設鋼構造物が埋設されている土壌成分等の分析結果を取得し(S77)、地下埋設鋼構造物が化学的腐食環境にあるか否かを判断する(S78)。
【0122】
ここで、化学的腐食環境にあると判断された場合(S78において、YES)、腐食が急速に進行していると判定する(S79)。また、S78の処理において、化学的腐食環境にないと判断された場合(S78において、NO)、通常の速度で腐食が進行していると判定する(S80)。また、S76の処理において、電気的腐食環境にないと判断された場合(S76において、NO)、錆が発生しているか又は地下埋設鋼構造物の塗覆装が劣化しているものの腐食の進行が遅いと判定する(S81)。更に、S74の処理において、塗覆装が劣化していないと判断された場合(S74において、NO)、腐食なしと判定する(S82)。
【0123】
上述した第6実施例における腐食診断により、第5実施例から更に化学的腐食環境も判定要素に追加することで、より高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を行うことができる。
【0124】
なお、本発明において、上述した第1〜6実施例の腐食診断に用いられる測定結果又は分析結果の判定順序は特に制限されず、上述した判定順序であってもよい。また、第1〜6実施例に示された診断結果や測定、分析結果等を入出力手段24が有するディスプレイ等に表示することで、ユーザに容易に診断結果を提示することができる。
【0125】
上述したように本発明によれば、簡易に高精度な鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食診断を実現することができる。具体的には、インピーダンス測定と、超音波測定と、対地電位測定と、迷走電流測定と、土壌比抵抗測定と、土壌分析のうち複数の測定、分析結果を選択的に用いることで、高精度に地下埋設鋼構造物の腐食診断を実現することができる。
【0126】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】第1実施例における腐食診断装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】配管が接続された地下タンク、アース、及び土壌の関係を等価回路で置き換えた一例を示す図である。
【図3】腐食等による劣化の有無におけるインピーダンス特性の違いを説明するための図である。
【図4】迷走電流の測定手法を具体的に説明するための図である。
【図5】土壌比抵抗の測定方法を具体的に説明するための図である。
【図6】第1実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】第2実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】第3実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】第4実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】第5実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】第6実施例における判定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0128】
1 地下タンク
2 配管
3 土壌
10 腐食診断装置
11 アース
12 インピーダンス測定手段
13 超音波検出センサー
14 超音波測定手段
15 基準電極
16 端子
17 対地電位測定手段
18 電極
19 迷走電流測定手段
20 電極棒
21 土壌比抵抗測定手段
22 土壌分析手段
23 判定手段
24 入出力手段
25 給油装置
30 等価回路
31 点線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、
前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、
前記インピーダンス測定手段及び前記電気的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする腐食診断装置。
【請求項2】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、
前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、
前記超音波測定手段及び前記電気的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする腐食診断装置。
【請求項3】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、
前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定手段と、
前記インピーダンス測定手段、前記電気的腐食環境測定手段、及び前記化学的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする腐食診断装置。
【請求項4】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、
前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定手段と、
前記超音波測定手段、前記電気的腐食環境測定手段、及び前記化学的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする腐食診断装置。
【請求項5】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、
前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、
前記超音波測定手段、前記インピーダンス測定手段、及び前記電気的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする腐食診断装置。
【請求項6】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断装置であって、
前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定手段と、
前記超音波測定手段、前記インピーダンス測定手段、前記電気的腐食環境測定手段、及び前記化学的腐食環境測定手段により得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする腐食診断装置。
【請求項7】
前記電気的腐食環境測定手段は、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の迷走電流を測定する迷走電流測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物と前記地中との電位差を測定する対地電位測定手段と、
前記地下埋設鋼構造物と前記地中との土壌比抵抗を測定する土壌比抵抗測定手段とのうち、少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の腐食診断装置。
【請求項8】
前記化学的腐食環境測定手段は、
前記地下埋設鋼構造物が埋設された地中の塩化物濃度、硫化物濃度、pH、含水比、及び酸化還元電位のうち少なくとも1つを分析する分析手段を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の腐食診断装置。
【請求項9】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、
前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、
前記インピーダンス測定ステップ及び前記電気的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする腐食診断方法。
【請求項10】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、
前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、
前記超音波測定ステップ及び前記電気的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする腐食診断方法。
【請求項11】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、
前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定ステップと、
前記インピーダンス測定ステップ、前記電気的腐食環境測定ステップ、及び前記化学的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする腐食診断方法。
【請求項12】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、
前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定ステップと、
前記超音波測定ステップ、前記電気的腐食環境測定ステップ、及び前記化学的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする腐食診断方法。
【請求項13】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、
前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、
前記超音波測定ステップ、前記インピーダンス測定ステップ、及び前記電気的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする腐食診断方法。
【請求項14】
外面が所定の材質で被覆され地中に埋設された鋼製の地下埋設鋼構造物の腐食を診断する腐食診断方法であって、
前記地下埋設鋼構造物における錆の発生に伴って生じる超音波を測定する超音波測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物と、前記地下埋設鋼構造物に接続された接地電極との間の電気化学インピーダンスを測定するインピーダンス測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の電気的な腐食環境を測定する電気的腐食環境測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の化学的な腐食環境を測定する化学的腐食環境測定ステップと、
前記超音波測定ステップ、前記インピーダンス測定ステップ、前記電気的腐食環境測定ステップ、及び前記化学的腐食環境測定ステップにより得られる結果に基づいて、前記地下埋設鋼構造物の腐食状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする腐食診断方法。
【請求項15】
前記電気的腐食環境測定ステップは、
前記地下埋設鋼構造物が埋設されている周辺の迷走電流を測定する迷走電流測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物と前記地中との電位差を測定する対地電位測定ステップと、
前記地下埋設鋼構造物と前記地中との土壌比抵抗を測定する土壌比抵抗測定ステップとのうち、少なくとも1つを有することを特徴とする請求項9乃至14の何れか1項に記載の腐食診断方法。
【請求項16】
前記化学的腐食環境測定ステップは、
前記地下埋設鋼構造物が埋設された地中の塩化物濃度、硫化物濃度、pH、含水比、及び酸化還元電位のうち少なくとも1つを分析する分析ステップを有することを特徴とする請求項9乃至14の何れか1項に記載の腐食診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−278843(P2007−278843A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105515(P2006−105515)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】