説明

地下熱源に注水することにより蒸気を得る方法と装置

【課題】立地に制限されずに地下の圧力、水脈、水量等の変調や地下の構造のバランスを崩すことなく、地熱発電用の水蒸気を得る方法を提供する。
【解決手段】およそ200メートル以上の深さの地中の熱源に向けて注水パイプ1と注水パイプと併設する蒸気抜きパイプ2を通して、注水パイプに地下水源または雨水を利用して注水することにより、蒸気抜きパイプを通して水蒸気を収得し、発電、その他の既存の装置や機器等の目的に合わせて接続、活用する。蒸気抜きパイプの径は100m/m程度以上として、地中の熱源4に近い底部に水たまり部5を設け、注水パイプから注入された水は浮沈するように設定されたダンパーベン3を介して水溜り部に流入し、底部に一定量滞留するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発電方法の多様化が求められている今日、地熱発電はその一つとして注目を浴びている。しかし、これまでに考えられている地熱発電方式は温泉源等に向けて穴を掘り、そこから蒸気、熱水等を採取し、タービンを動かして発電するものである。しかし、この方法では温泉地等に立地が限定されるとともに、大規模な蒸気や温泉等の採取は地下の圧力、水脈、水量等の変調を招き、地下の構造のバランスを崩す恐れがある。
【0002】
地熱の回収方法には、噴出する熱水や蒸気をそのまま利用する方法と、熱水から沸点の低い流体に熱交換して利用する方法、地下に水を流し込んで地熱により蒸気に変える方法などが有る。地熱は二酸化炭素を出さず一年を通して安定した供給が得られるため、次世代のクリーンエネルギーとして注目され、現在効率的な利用について研究が進められている。
また、地上の温度と地下の温度の温度差を利用する方法(地中熱)もあり、この場合は地下の温度が特に高くなくてもよいのでどこでも利用できる。
【背景技術】
【0003】
地熱発電は、地下から噴出する天然の、または地上からの注水による蒸気又は熱水を利用してタービン・発電機を回し、発電を行うものである。また、地下の温度や圧力が低く熱水しか得られない場合でも、アンモニアやペンタン・フロンなど水よりも低沸点の媒体を、熱水で沸騰させタービンを回して発電させる方式もある。石油などの化石燃料を使わないクリーンエネルギーのひとつである。
地熱源としては、地熱の発生源は地球の中心部。地球内部は、外から順に、固体岩石の地殻、固体岩石のマントル、鉄やニッケルを主成分とする溶融金属でできた外殻、鉄やニッケルを主成分とする固体金属の内殻に分かれている。
● 地球内部で発生する熱の大半は、天然放射性元素が崩壊する時の熱に由来する。
地熱の45から85パーセントは地殻に含まれる元素の放射性崩壊から発生している。
● 落下した隕石がもともとの地球の構成中に取り込まれるときの衝撃および圧縮の熱。
● 過剰な重金属(鉄、ニッケル、銅)が地核に沈降していくときに放出される摩擦熱。
● 地磁気が作る電磁気的効果によって生み出されるジュール熱。
地核で発生している熱量は4〜10テラワットの範囲と推定されている。この地熱は地表近くまで及び、地表から1kmぐらい掘り進めば200〜300℃の地熱帯に達する。浅いところでは200〜500mでこの地熱帯に達する。
【0004】
地熱発電の長所としては、
排出する二酸化炭素の量が少ない(火力発電にくらべ単位発電量当たりの二酸化炭素排出量が約20分の1)。
燃料を必要とせず、燃料の枯渇や高騰の心配が少ない。
他の新エネルギー発電より出力が安定している。
需要に応じて安定した発電量を得られる。
【0005】
地熱発電の短所としては、
探査・開発に多大な費用・時間がかかる。
開発リスクが高い(掘ってみるまで、利用可能かわからない)。
建設中のボ−リング作業による騒音・振動、噴気の騒音などがある。
熱水・蒸気採取による地盤沈下や土壌汚染の可能性がある。
硫化水素の放出による大気汚染がある。
泥水の温泉への混入や温泉の減衰といった既存の地熱利用施設に影響が出る可能性がある。
日本の地熱地帯は、国立公園内で開発が規制されている区域が多く簡単に開発できない。
【0006】
地熱発電の現在の状況としては、
現在の発電原価は21円/kWh(補助金を受ける場合は15円/kWh)である。
日本の発電量は3,369×106kWhである(国内発電能力の0.2%)
ただ、発電出力換算で2000万キロワットを超える未利用資源をすべて活用した場合、原子力発電所15基分以上に相当するとの試算もある
蒸気発電には使用できない熱水が大量に出てくるが、地熱発電所のある市町村の多くでは、この熱水のもつエネルギーの有効利用を図るため、河川水と熱交換して造成熱水をつくり近くの地域へ供給し、地域開発に役立てており、これも再生可能エネルギーの利用形態の一つと言える。
【特許文献】[文献]特開2001−355566(JP,A)
【非特許文献】[文献]ウィキペディア フリー百科事典 地熱
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
地熱発電のこれからについては、
・深部地熱資源採取技術の開発(現在、地熱発電容量の増大を図る上で深部地熱資源(深度3,000〜4,000m、温度350℃程度)の開発が望まれているが、浅部地熱資源に比べて高温・高圧でかつ硬質の地層環境にあると想定されている)
・高温岩体発電の開発→簡単に言うと地底の水を含まない高温の岩体中に地表から水を循環させて蒸気や熱水を回収して発電を行う方式の開発
・調査をより、確実で短時間で行える技術の開発
・新たな地域の調査・開発
・国立公園内などの区域内における地熱発電に対する法整備などが課題である。
また、発電量は日本の消費電力からみると、微々たるものであるが、他の新エネルギーと比べると出力が安定しており、供給の調節も可能なので安定した出力源として普及していく可能性は高いと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、地下の熱源付近まで穴を掘り、このパイプシステムを伏設し、地上からこの穴に注水して、その水を蒸気として同パイプの蒸気収集口から収集して、発電、暖房等に使用しようとするものである.
【0009】
およそ200メートル以上の深さの地中の熱源に向けてパイプを挿入してこれに河川や地下水源または雨水を利用して注水することにより、地中に注水パイプと併設する蒸気収集口を通して蒸気を収得する方法と装置。
蒸気収集パイプの径は100m/m程度以上として、地中の熱源に近い底部に水溜り部を設け、注水パイプから注入された水が底部に一定量滞留させるために、浮沈するように設定されたダンパーベンを介して水溜り部に流入することを特徴とする。収得した蒸気は発電、その他の既存の装置や機器等の目的に合わせて接続、活用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
日本は火山国であり、地下500メートルぐらいでは、ほとんどの地域で200℃以上の熱があり、立地場所が得やすい。また、注水による熱源だけの利用なので、地下の変調はなく、バランスを崩すことはない。硫化水素の放出による大気汚染もない。さらに、開発リスクが低く、小規模分散型立地が可能である、等々が言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
およそ200メートル以上の深さの地中の熱源に向けてパイプを挿入して、これに河川や地下水源または雨水等を利用して注水することにより、地中に注水パイプと併設する蒸気収集パイプを通して蒸気を収得する方法と装置に関する。
蒸気抜きパイプの径は100m/m程度以上として、地中の熱源に近い底部に水溜り部を設け、注水パイプから注入された水が底部に一定量滞留させるために、浮沈するように設定されたダンパーベンを介して水溜り部に流入することを特徴とする。収得した蒸気は発電、その他の既存の装置や機器等の目的に合わせて接続、活用することを特徴とする。
ダンパーベンは上下に移動式であり、これにより水圧の問題を注水パイプの水圧とダンパーベンを含む水溜り部との重量バランスの関係に置き換える。地下の深度により、注入水の底部における重量と水圧が異なるので、それに合わせてダンパーベンの重量設定を変える。
【実施例1】
【0012】
およそ200メートル以上の深さの地中の熱源に向けて注水パイプ1を挿入してこれに河川や地下水源または雨水等を利用して注水することにより、地中に注水パイプ1と併設する蒸気収集パイプ2を通して蒸気8を収得する方法と装置に関する。
蒸気抜きパイプ2の径は100m/m程度以上として、地中の熱源に近い底部に水溜り部5を設け、注水パイプ1から注入された水6が底部に一定量滞留させるために、浮沈するように設定されたダンパーベン3を介して水溜り部5に流入することを特徴とする。収得した蒸気は発電、その他の既存の装置や機器等の目的に合わせて接続、活用することを特徴とする。
図1は注水中の図である。
注入水6の底部水圧は深度によって異なる。従って、ダンパーベン3と水溜り部5の水量によって調整する。すなわち、
注入水重量=ダンパーベン重量+水溜り部の水の重量
水溜り部5の水は、地熱によって加熱され蒸気8となって減少するので、
注入水重量 > ダンパーベン重量+水溜り部の水の重量
となり、ダンパーベン3が上昇して、注水6を開始する。
図2は注水停止中の図である。注入水6により、水溜り部5の水量が増加すると
注入水重量 < ダンパーベン重量+水溜り部の水の重量
となり、注水は停止する。
注水中であっても注水停止中であっても蒸気8は連続して発生する。ダンパーベンは上下に移動式であり、最下部に設けた水圧調整部12により水圧の問題を注水パイプの水圧とダンパーベンを含む水溜り部の重量バランスの関係に置き換える。例えば、鉄製(比重7.8)のダンパ−ベンでは、10m程度の水溜り部を確保するためには、30cm程度の厚さが必要となり、注水パイプを挿通して浮沈させるためにはそれぞれのパイプとの間に適度のクリアランスを設ける。
【産業上の利用可能性】
【0013】
● 温泉は昔から使われている地熱利用法で、人が温まる(浴用)以外にも、高温の温泉では卵(温泉卵)や野菜をゆでたり、蒸気熱を利用した地獄釜で蒸したりしている。各家庭でも職場でも比較的狭いスペースでも、できることになる。
● 地熱発電:各家庭でも職場でもできることになる。
● 暖房:古くからの湯治場では部屋暖房に温泉蒸気が利用されている。
● 園芸:花卉栽培では野菜・花卉の温泉熱利用による栽培、育種が可能となる。
● その他、冷房、養殖、融雪、食品・木材加工等に活用される。
尚、図示はしないが、この原理のその他の実施例として、図2のパイプ部を短縮して水溜り部を大径として全体を地上に設定して、この水溜り部をガスや重油などで加熱して、言わば蒸気発生ボイラーとして活用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】注水停止中の図である。注水6により、水溜り部5の水量が増加すると注水は停止する。注水中であっても注水停止中であっても蒸気は連続して発生する。
【図2】注水中の図である。注入水6の底部水圧は深度によって異なる。従ってダンパーベン3と水溜り部5の水量によって調整する。水溜り部5の水は、地熱によって加熱され蒸気8となって減少するので、ダンパーベン3が上昇して、注水を開始する。A−A断面図とB−B断面図に示すように、中央部に中心が一致するように注水口を設け、その周囲に位置をずらして複数の注水口を配置する。
【符号の説明】
【0015】
1 注水パイプ 2 蒸気抜きパイプ 3 ダンパーベン
4 地下熱源 5 水溜り部 6 注入水
7 水 8 蒸気 9 地表
10 蒸気収集口 11 底部注水板(固定) 12 水圧調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
およそ200メートル以上の深さの地中の熱源に向けて注水パイプを挿入して、これに河川や地下水源、または雨水を利用して注水することにより、併設する蒸気収集パイプを通して蒸気を収得する方法と装置。
【請求項2】
蒸気収集パイプの径は100m/m程度以上として、地中の熱源に近い底部に水溜り部を設け、注水パイプから注入された水が底部に浮沈するように設定されたダンパーベンを介して水溜り部へ流入する水量を調整することを特徴とする、請求項1に記載の蒸気を収得する方法と装置。
【請求項3】
収得した蒸気は発電、その他の既存の装置や機器等の目的に合わせて接続、活用することを特徴とする、請求項1および2に記載の蒸気を収得する方法と装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−32764(P2013−32764A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179232(P2011−179232)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(301060989)