説明

地中タンクのシャフト組立作業足場

【目的】 組立てが簡単で、組立て後高い剛性を有し、高能率でシャフトの組立て作業を行なうことができ、その上、シャフト組立終了後も簡単に撤去できる地中タンクのシャフト組立て用の作業足場の提供。
【構成】 側壁の建設時にコンクリート側壁中に埋めこまれたタイロッドの裏面の鋼製ライニングに設けられているボスに支持された昇降架構と、同昇降架構に昇降自在に取付けられた作業架台とを設けた。これによって、作業架台を支持する昇降架構を側壁に隣接した位置に寄せ、剛性の高い構造物とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、石油設備基地の地中タンクにおける油中ポンプ配管等を保護するシャフトを組立てるために使用される作業足場に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、かかる作業足場として、特公平2−62754号公報に開示されているように、地中タンクの内壁に複数のユニットからなる側壁架台を取付け、この架台のタンク中心寄りの端部に上下移動可能で、その中心に組み立てるシャフトが貫通できる開口を有する複数段の作業床を設けたものが提案されている。これによって、タンク側壁が完成していない時点でシャフトの組立を開始できるので全体の工期が短縮できるという効果が期待できるとしている。
【0003】ところが、実作業においては、架台ユニットの側壁への取付け及び解体に際しては、それ自体の構造が不安定なため、それに取付けられる足場も不安定なものとなる。また、シャフトの組立作業の進捗に伴う作業床の移動には、その都度、揚重機を用いた作業が必要となり、余分の工期と費用を要する。さらには、作業終了後の作業床と架台の解体に際しては、側壁に残ったボス、治工具等の撤去及び手入れの作業をゴンドラ等を使用して別に行う必要があり、さらに工期が長くなり、工期短縮の面から改善の余地がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、組立てが簡単で、作業を安全に行うことができ、その上、シャフト組立終了後も簡単に撤去できる地中タンクのシャフト組立て用の作業足場を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、地中タンクのコンクリート側壁に打ち込まれた鋼製ライニングのボスに支持された昇降架構と、同昇降架構に昇降自在に取付けられた作業架台とを有する地中タンクのシャフト組立作業足場にであって、前記昇降架構を裏面がタイロッドで支持されたボスを用いた壁つなぎ固定治具によって固定された構造とすることによって、その目的を達成した。
【0006】
【作用】昇降架構が裏面がタイロッドで支持されたボスを用いた壁つなぎ固定治具によって固定された、剛性が高い壁つなぎに取付けられているので、昇降架構自体を単純で且つ剛性の高い構造物とすることができ、作業架台の昇降機構をこの昇降架構に設けることができるので、シャフトの組立てを高能率で行なうことができる。
【0007】また、足場の組立と解体は、剛性の高い壁つなぎを介して行なわれるので、作業の安定性がよく、また、壁つなぎの取付け、解体はさらに固定治具のボルトによって行なわれるので簡単である。
【0008】
【実施例】タンク側壁内に設置されるポンプ配管等を保護するシャフト(保護管)を組立てるのに使用する足場に本発明を適用した実施例について説明する。
【0009】図1は側壁側から見た構造を示し、図2は平面から見た構造を示す。
【0010】図1において、タンクTは、コンクリート側壁Aの内面に形成された鋼製ライニングBを有し、このタンクの底面Cの側壁に近くシャフトDを組立てる。
【0011】10は本発明による作業足場を示し、この作業足場10は、タンクの内壁面に固定された昇降架構1と、この昇降架構1に沿って自在に昇降できる作業架台2からなる。
【0012】昇降架構1は、壁つなぎ固定治具3を介して側壁に固定された壁つなぎ材5をフランジ4によって連結した構造を有する。
【0013】固定治具3は、側壁の建設時にコンクリート側壁A中に埋めこまれたタイロッド6の裏面の鋼製ライニングB面に設けられているボス7を適当に選択して、これにボルト止めすることによって壁つなぎ材5の固定用としている。
【0014】この複数段に渡って設けられた固定治具3のそれぞれには、昇降架構1の各段の床材と柱を形成する壁つなぎ材5が設けられ、各壁つなぎ材5の柱材はフランジ4によって、タンクの底から頂部にわたってユニットが連続した昇降架構1を形成する。
【0015】昇降架構1の各ユニットには、作業員が昇降するための梯子8と、図2に示すような床板9と、タンクの中心側には、図2に示すようなガイドレール11が設けられ、作業架台2に取付けられたワイヤ12を巻取り、巻き戻すためのモータ13が昇降架構1の頂部に設置されている。
【0016】作業架台2は、図1に示すように、安全柵14を設けた上下の足場板15を取付けビーム材16で固定した構造を有し、昇降架構1の係止機構を有するガイドレール11に倣わさせ、巻き上げ用モータ13によって昇降且つ係止自在に取付けられている。
【0017】この移動式の作業架台2を、組立てシャフトの高さに応じた位置に係止して、作業架台2の略中央にシャフトを貫通し、その周囲から種々の作業が可能なように足場板15を取付けた構造としてシャフトDの組立作業を行う。
【0018】足場の組立てに際しては、最下段から、順次下方の固定治具3を鋼製ライニングBに設けられているボス7に固定治具3をボルト止めし、この固定治具3に昇降架構1の壁つなぎ材5を支持して最下段の昇降架構ユニット1−1を形成させる。次に新たな昇降架構ユニット1−2を最下段のユニットの上に載せ、架構の下部のフランジ4−1を結合させ、昇降架構を一体構造とし、上記作業を繰り返して、昇降架構を下から上へと順次積み上げる。
【0019】また、昇降架構1を取付けた後、ガイドレール11上を巻き上げ用モータ13及び図示しないストッパーを有する装置によって、揚重機を用いることなく上下方向に自在に移動でき、落下の恐れのない作業架台2を昇降架構1に取付けることによりシャフトの組立て作業が高能率で行える。
【0020】足場の解体は、移動式作業架台2を取り外した後、最上部の昇降架構1−nの固定治具3−nと壁つなぎ5−nのボルトを昇降架構1から除き、自立させ、次にボスに固定されたボルトを外して固定治具を撤去し、昇降架構からボスの溶接部をはつり取り、跡を手入れする。最後に一段下の昇降架構からフランジを切り離し、上の昇降架構を撤去する。これを繰り返すことによって全て安全に、且つ確実に撤去できる。
【0021】
【発明の効果】本発明のシャフト組立用足場によって以下の効果を奏する。
【0022】(1) 昇降架構ユニットは剛性が高く、下部の支持があれば自立できるので、同架構から直接ボスへの固定治具の取付け、取外し、固定治具と昇降架構の固定支持を目的とする壁つなぎの取付け、取外しの作業が安全で短期間に行える。
【0023】(2) 鋼製ライニングに溶接されたボスの撤去及び跡の手入れがゴンドラ等を用いずに、昇降架構の解体時に同時に行うことができ、安全性が向上し、工期の短縮が可能となる。
【0024】(3) 係止及び巻き上げ装置を内蔵しているので、揚重機を用いずに作業架台の昇降が自在となるため、揚重機等の他の作業の工期に制限されることなくシャフト組立て作業が可能となり、工期が短縮でき、費用も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を側面からの断面によって示す。
【図2】 本発明の実施例の平面図を示す。
【符号の説明】
A コンクリート側壁 B 鋼製ライニング
C 底面 D シャフト
T タンク
1 昇降架構 2 作業架台
3 壁つなぎ固定治具 4 フランジ
5 壁つなぎ材 6 タイロッド
7 ボス 8 昇降梯子
9 床板 10 作業足場
11 ガイドレール 12 ワイヤ
13 ワイヤ巻き上げ用モータ 14 作業架台の安全柵
15 足場板 16 ビーム材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 地中タンクのコンクリート側壁に打ち込まれた鋼製ライニングのボスに支持された昇降架構と、同昇降架構に昇降自在に取付けられた作業架台とを有する地中タンクのシャフト組立作業足場であって、前記昇降架構を裏面がタイロッドで支持されたボスを用いた壁つなぎ固定治具によって固定された構造とした地中タンクのシャフト組立作業足場。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【公開番号】特開平6−56189
【公開日】平成6年(1994)3月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−204062
【出願日】平成4年(1992)7月30日
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)