説明

地中管内の土砂堆積量調査装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は下水管などの地中管内を流れる流水の下側に堆積している土砂の堆積量を調査する土砂堆積量調査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】下水管内に土砂が高く堆積すると下水の円滑な流れが妨げられるので、適当な時期に、又は定期的に土砂の堆積状況を調査し、調査結果に基づいて堆積した土砂を除去するために下水管内を清掃しなければならない。小口径の下水管の場合には、マンホールでの下水の流れを調査して土砂の堆積状況を把握し、例えばワイヤロープにバケットを取り付け、このワイヤロープをマンホールに設置したウインチで巻き取り、下水管内を上流から下流に移動するバケットによって土砂をマンホールに掻き集める方法や、下水管内でホース先端から高圧水を噴射して土砂をマンホールに集める方法などにより下水管内の清掃を行っているが、大口径の下水管に対しては、調査員が直接下水管内に入り、流れの淀みを目視により確認するなどの方法で土砂が高く堆積している場所を調査して特定し、その後、作業員が下水管内に入って調査により特定された区域の土砂を搬出除去しているのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、広域下水道計画の実施及び非開削技術の向上にともなって、近年、下水管の長距離化、すなわちマンホール間隔の長距離化が進展しているが、マンホール間隔の長距離化は換気不足を生じさせ、しばしば下水管内に有毒ガスが充満するといった事態を引き起こすので、大口径の下水管では予定通りに調査作業を行うことができない場合も多く、また、作業を行う場合には十分な有毒ガス対策が必要となる。さらに、大口径下水管内の下水の水深及び流速は大きいので、この点からも調査作業は危険なものとなっている。そして、調査員の目視などによる調査では土砂堆積状況の正確な把握はなかなか困難であり、調査及び清掃作業を何回も繰り返さないと十分な清掃効果を達成できない場合も多い。
【0004】そこで、本発明は特に大口径の地中管内の土砂堆積状況を無人で、かつ正確に調査することのできる土砂堆積量調査装置の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、本発明の地中管内の土砂堆積量調査装置は、地中管内を流れる流水の下側に堆積している土砂の堆積量を調査する地中管内の土砂堆積量調査装置であって、流水上を航行する航行体と、この航行体の底部の幅方向複数位置に設けられ、垂直下方に超音波を発振する測定用超音波センサ装置と、を備えたものである。流水中から垂直下方に発振された超音波は堆積している土砂で反射する。堆積している土砂からの垂直上方への反射波を測定用超音波センサ装置で受信することにより測定用超音波センサ装置と土砂表面との距離を検出することができる。したがって、測定用超音波センサ装置の地中管内での垂直方向の位置に基づき土砂表面の垂直方向の位置を知ることができ、その結果、土砂堆積量を知ることができる。超音波を幅方向複数位置、すなわち幅方向の位置がずれている複数位置(長さ方向の位置もずれている場合がある)から発振し、各々の反射波をそれぞれの測定用超音波センサ装置で受信することにより、幅方向複数位置の土砂堆積量を知ることができるので、地中管の長さ方向特定位置での土砂堆積状況を詳細に把握することができる。
【0006】航行体は、航行本体と、この航行本体の両側に取り付けられた、幅方向の位置決めを行う一対の翼体と、から構成されていて、測定用超音波センサ装置は一方の翼体の外端部から他方の翼体の外端部にわたって複数個設けられ、かつ、これらの翼体は水平方向の角度を調整することができるように前記航行本体に取り付けられているということが好ましい。測定用超音波センサ装置は、流水上を航行する航行体の底部の幅方向複数位置に設けられるが、測定用超音波センサ装置の地中管内での幅方向の位置が一定であることが調査精度を確保する上で必要である。したがって、航行体の両側に幅方向に延びる一対の翼体を設け、この翼体の外端が地中管内面と接触することにより、航行体の幅方向の中心が地中管の幅方向の中心からずれてしまうことが防止されるように構成するが、翼体の水平方向の角度を調整することができるようにしておけば、流水量が異なっても適切な幅方向の位置決めを行うことができるし、径の異なる地中管に対しても同一の装置を使用できる。
【0007】また、航行体の幅方向中央には、垂直上方に超音波を発振する位置確認用超音波センサ装置が設けられていることが適当である。航行体の幅方向中央に位置確認用超音波センサ装置を設けておけば、航行体の地中管内での垂直方向の位置を検出することができ、その結果、測定用超音波センサ装置の垂直方向の位置を検出することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0009】図1は本発明に係る地中管内の土砂堆積量調査装置を下水管内に配置した状態を示す図である。
【0010】土砂堆積量調査装置1は、航行本体3と、外端に接触タイヤ5を有し、この航行本体3の両側から幅方向やや後側に延びる一対の翼体7(図3も参照)と、から構成された航行体の底部9に測定用超音波センサ装置11を取り付けたものであり、下水管A内の下水B上に浮かべられている。航行本体3の前面には引っ張り紐13の一端が接続され、この引っ張り紐13の他端は、例えば、テレビカメラなどを搭載した管内調査装置(図示せず)に接続されていて、土砂堆積量調査装置1はこの管内調査装置に引っ張られて下水管A内の下水B上を航行する。翼体7の外端の接触タイヤ5は下水管Aの内面Cと接触しているので、土砂堆積量調査装置1が幅方向にぶれて偏ってしまうことが防止される。航行本体3にはまた、上面の幅方向中央位置に位置確認用超音波センサ装置15が設けられている。
【0011】測定用超音波センサ装置11は、それぞれの翼体7の外端部から基部23(図3参照)にかけて等間隔で3個設けられ、航行本体3には中央部に1個設けられていて、すべての測定用超音波センサ装置11は幅方向等間隔で配置されている。測定用超音波センサ装置11は送受信切り替え手段を有する送受信兼用反射型のものであり、下水B中の上層部から垂直下方に超音波X1を発振する。調査精度を高めるためには、超音波X1の周波数を大きくして指向性を高める必要があり、1乃至10MHzの周波数のものを発振するのが適当である。発振された超音波X1は土砂D表面で垂直上方に反射し、それぞれの測定用超音波センサ装置11は反射波Y1を受信する。翼体7の外側の2個の測定用超音波センサ装置11から発振された超音波X1は下水管Aの内面Cで反射するので、この2個の測定用超音波センサ装置11は反射波を受信しないこととなり、土砂Dは、外側から2番目の測定用超音波センサ装置11の幅方向位置より内側に堆積していることが確認できる。
【0012】位置確認用超音波センサ装置15も送受信切り替え手段を有する送受信兼用反射型のものであり、垂直上方に超音波X2を発振し、下水管Aの内面C最上部からの反射波Y2を受信する。位置確認用超音波センサ装置15により測定用超音波センサ装置11と下水管Aの内面C最上部との距離が検出され、測定用超音波センサ装置11により測定用超音波センサ装置11と土砂D表面との距離が検出されるので、土砂D表面と下水管Aの内面C最上部との距離を知ることができる。したがって、位置確認用超音波センサ装置15及び測定用超音波センサ装置11の検出結果を地上に設置されたパソコン(図示せず)に伝送し、例えば長さ方向の特定位置における土砂Dの堆積状況を示す状況図を作成することが可能となる。
【0013】図2は土砂堆積量調査装置1の詳細を示す正面図、図3は土砂堆積量調査装置1の詳細を示す平面図である。
【0014】航行本体3及び翼体7の底部9には凹部17が形成され、この凹部17内に流体抵抗が加わらないように測定用超音波センサ装置11が収められている。航行本体3の両側板19にはそれぞれスリット21が形成されていて、このスリット21を通過して翼体7の基部23が航行本体3内に入り込んでいる。航行本体3に形成された中天板25には支持軸27が設けられ、翼体7の基部23はこの支持軸27に回転可能に取り付けられている。それぞれの翼体7の基部23内端部にはアーム29の一端が回転可能に取り付けられていて、このアーム29の他端はシリンダ31のピストンロッド33先端部に回転可能に取り付けられている。したがって、シリンダ31を作動させてピストンロッド33を伸長又は収縮させると、翼体7は支持軸27を中心として水平方向に回転し、その結果、翼体7の水平方向の角度が変化する(図3の仮想線参照)。なお、図中35はピストンロッド33の突出量決定用の調整つまみである。また、翼体7の角度調整により、両接触タイヤ5の幅方向の距離が1.5mから5.0mまで変化するように構成されていることが好ましい。
【0015】翼体7の外端にはスリット37が形成されていて、このスリット37の内側にはタイヤ室39が構成されている。タイヤ室39内には、図4に詳細に示すように、断面形状がコ字状の支持部材41が収容されていて、この支持部材41のコ字溝43内に設けられた支持軸45に回転可能に取り付けられている接触タイヤ5がスリット37から外側に突出している(図4はタイヤ室39部分を詳細に示す図)。コ字溝43内にはまた、接触タイヤ5と接触するようにロータリエンコーダ47が配置され、このロータリエンコーダ47により土砂堆積量調査装置1の航行距離が計測される。支持部材41の背面とタイヤ室39の後壁との間には、支持部材41をスリット37方向に押圧する圧縮コイルバネ49が配置され、また、支持部材41の上面及び下面には、タイヤ室39の上壁及び下壁に形成された、圧縮コイルバネ49の押圧方向に延びるガイド溝51に嵌まり込むガイド53がそれぞれ設けられている。したがって、下水管Aの内面Cに凹凸が生じていたり、翼体7が上下動した場合にも、支持部材41がガイド溝51に沿って移動してスリット37からの接触タイヤ5の突出量が変化するので、接触タイヤ5と内面Cとの間の接触圧が過大となって土砂堆積量調査装置1の航行に支障が生じたり、逆に接触タイヤ5が内面Cから離れてロータリエンコーダ47による航行距離計測が不正確となることが防止される。
【0016】図5は土砂堆積量調査装置1による調査過程を説明する図である。
【0017】土砂堆積量調査装置1はマンホール(図示せず)から所定距離航行すると停止して、停止位置における土砂Dの堆積量を調査する。次ぎに、等しい距離だけ航行して停止し、停止位置における土砂Dの堆積量を調査することを繰り返す(仮想線参照)。このように一定ピッチで調査を行うことにより、下水管Aの全長にわたる土砂Dの堆積状況を示す状況図などを効率的に作成することができる。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の地中管内の土砂堆積量調査装置を用いれば、地中管内の土砂堆積状況を無人で調査することができ、しかも幅方向にどのようなかたちで土砂が堆積しているかを正確に知ることができる。また、測定用超音波センサ装置を地中管内で移動させるのに航行体を用いているので、構成が簡単であり、かつ容易に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る地中管内の土砂堆積量調査装置を下水管内に配置した状態を示す図である。
【図2】土砂堆積量調査装置の詳細を示す正面図である。
【図3】土砂堆積量調査装置の詳細を示す平面図である。
【図4】タイヤ室部分を詳細に示す図である。
【図5】土砂堆積量調査装置による調査過程を説明する図である。
【符号の説明】
1 土砂堆積量調査装置
3 航行本体
7 翼体
9 底部
11 測定用超音波センサ装置
15 位置確認用超音波センサ装置
A 下水管(地中管)
B 下水(流水)
D 土砂
X1,X2 超音波
Y1 反射波

【特許請求の範囲】

【請求項1】 地中管内を流れる流水の下側に堆積して
いる土砂の堆積量を調査する地中管内の土砂堆積量調査装置であって、流水上を航行する航行体と、この航行体の底部の幅方向複数位置に設けられ、垂直下方に超音波を発振する測定用超音波センサ装置と、を備え、前記航行体は、航行本体と、この航行本体の両側に水平方向の角度を調整することができるように取り付けられた、幅方向の位置決めを行う一対の翼体と、から構成され、前記測定用超音波センサ装置は、一方の翼体の外端部から他方の翼体の外端部にわたって複数個設けられ、土砂からの垂直上方への反射波を受信して土砂表面との距離を検出し、前記一対の翼体は、外端が地中管内面と接触して前記航行体の幅方向の中心が地中管の幅方向の中心からずれることを防止する、ことを特徴とする地中管内の土砂堆積量調査装置。
【請求項2】 地中管内を流れる流水の下側に堆積している土砂の堆積量を調査する地中管内の土砂堆積量調査装置であって、流水上を航行する航行体と、この航行体の底部の幅方向複数位置に設けられ、垂直下方に超音波を発振する測定用超音波センサ装置と、前記航行体の幅方向中央に設けられ、垂直上方に超音波を発振する位置確認用超音波センサ装置と、を備え、前記航行体は、航行本体と、この航行本体の両側に水平方向の角度を調整することができるように取り付けられた、外端が地中管内面と接触して前記航行体の幅方向の中心が地中管の幅方向の中心からずれることを防止するように幅方向の位置決めを行う一対の翼体と、から構成され、前記測定用超音波センサ装置は、土砂からの垂直上方への反射波を受信して土砂表面との距離を検出し、前記位置確認用超音波センサ装置は、地中管の内面最上部からの反射波を受信してこの内面最上部との距離を検出する、ことを特徴とする地中管内の土砂堆積量調査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2821731号
【登録日】平成10年(1998)9月4日
【発行日】平成10年(1998)11月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−199139
【出願日】平成7年(1995)7月12日
【公開番号】特開平9−26079
【公開日】平成9年(1997)1月28日
【審査請求日】平成7年(1995)7月12日
【出願人】(592185666)管清工業株式会社 (12)
【参考文献】
【文献】特開 昭57−125811(JP,A)
【文献】特開 昭57−125810(JP,A)
【文献】特開 昭59−133415(JP,A)
【文献】特開 平3−75526(JP,A)