説明

地域医療連携支援サーバ、地域医療連携支援方法および地域医療連携支援プログラム

【課題】地域医療連携が医療費に与える効果を明らかにして、地域医療連携を促進する。
【解決手段】地域毎の患者に対して地域医療連携による医療行為を行なう医療機関の医療機関端末に接続された地域医療連携支援サーバが、一定期間内に患者に対して地域医療連携によらずに行なわれる医療行為に応じて必要となる地域毎の医療費の推定値を予め記憶し、地域毎の医療機関端末から、一定期間内に患者に対して行なわれた医療行為に応じた医療費の実績値が含まれるレセプトデータを受信し、地域毎の医療費の推定値と、地域毎の医療費の実績値とを比較し、比較結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地域医療連携システムにおける地域医療連携支援サーバ、地域医療連携支援方法および地域医療連携支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療の質の向上や医療費の適正化を目的として、地域医療連携が進められている。地域医療連携は、地域毎に診療所や病院などのそれぞれの医療機関の特長を活かした役割分担をして、全ての患者のそれぞれに対して適切な医療を提供しようとするものである。
例えば、特許文献1または特許文献2には、地域医療連携システムにおいて、医療機関間での患者の紹介を支援することにより地域医療連携を支援する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−122380号公報
【特許文献2】特開2008−33780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献に記載された技術は、医療機関間での患者の紹介を支援することにより患者が適切な医療機関から医療を受けることを促進し、医療の質の向上と医療費の適正化を促進するとされているが、その効果を明確に示すものではない。ここで、従来、地域医療連携を行なうことによる医療費への影響を把握する仕組みがなく、地域医療連携の導入による医療費への影響の定量的な効果測定や、地域医療連携の導入による医療費への影響を医療費予算の算定等に役立てるようなことは行なわれていなかった。ここでは、地域医療連携によって、医療の質の向上を図るとともに、医療費の適正化を促進することが望ましい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、地域医療連携が医療費に与える効果を明らかにするとともに、医療費予算の策定に役立てることが可能な情報を出力し、地域医療連携を支援することを目的とする情報処理サーバ、情報処理方法、および情報処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、地域毎の患者に対して地域医療連携による医療行為を行なう医療機関の医療機関端末に接続された地域医療連携支援サーバであって、一定期間内に患者に対して地域医療連携によらずに行なわれる医療行為に応じて必要となる地域毎の医療費の推定値が予め記憶される推定医療費記憶部と、地域毎の医療機関端末から、一定期間内に患者に対して行なわれた医療行為に応じた医療費の実績値が含まれるレセプトデータを受信するレセプトデータ受信部と、地域毎の医療費の推定値と、地域毎の医療費の実績値とを比較する医療費比較部と、医療費比較部による比較結果を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、地域医療連携支援サーバが、一定期間内に地域毎に行なわれた医療行為に基づいたレセプトデータが予め記憶された審査支払機関の審査支払機関装置に接続され、審査支払機関装置に記憶されたレセプトデータを読み出すレセプトデータ抽出部をさらに備え、医療費比較部は、推定医療費記憶部に記憶された推定医療費と、レセプトデータ抽出部によって抽出されたレセプトデータに含まれる地域毎の医療費の実績値とを比較することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、レセプトデータには、地域毎に医療行為が行なわれた一定期間内の期間と、医療行為に応じた疾病を示す情報とが含まれ、医療費比較部は、疾病毎、一定期間内の期間毎に、医療費を比較することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、地域毎の患者に対して地域医療連携による医療行為を行なう医療機関の医療機関端末に接続され、一定期間内に患者に対して地域医療連携によらずに行なわれる医療行為に応じて必要となる地域毎の医療費の推定値が予め記憶される推定医療費記憶部を備えた地域医療連携支援サーバの地域医療連携支援方法であって、レセプトデータ受信部が、地域毎の医療機関端末から、一定期間内に患者に対して行なわれた医療行為に応じた医療費の実績値が含まれるレセプトデータを受信するステップと、医療費比較部が、地域毎の医療費の推定値と、地域毎の医療費の実績値とを比較するステップと、出力部が、医療費比較部による比較結果を出力するステップと、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、地域毎の患者に対して地域医療連携による医療行為を行なう医療機関の医療機関端末に接続され、一定期間内に患者に対して地域医療連携によらずに行なわれる医療行為に応じて必要となる地域毎の医療費の推定値が予め記憶される推定医療費記憶部を備えた地域医療連携支援サーバのコンピュータに、レセプトデータ受信部が、地域毎の医療機関端末から、一定期間内に患者に対して行なわれた医療行為に応じた医療費の実績値が含まれるレセプトデータを受信するステップと、医療費比較部が、地域毎の医療費の推定値と、地域毎の医療費の実績値とを比較するステップと、出力部が、医療費比較部による比較結果を出力するステップと、を実行させる地域医療連携支援プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、地域毎の患者に対して地域医療連携による医療行為を行なう医療機関の医療機関端末に接続された地域医療連携支援サーバが、一定期間内に患者に対して地域医療連携によらずに行なわれる医療行為に応じて必要となる地域毎の医療費の推定値を予め記憶し、地域毎の医療機関端末から、一定期間内に患者に対して行なわれた医療行為に応じた医療費の実績値が含まれるレセプトデータを受信し、地域毎の医療費の推定値と、地域毎の医療費の実績値とを比較し、比較結果を出力するようにしたので、例えば推定医療費と実績医療費の差を明らかにすることで、地域医療連携の導入による定量的な効果の測定や、地域における医療費予算の算定等ができるようになり、国や自治体が負担すべき医療費が明確になることで全国各地域における地域医療連携を支援し、地域全体しいては国全体の医療費の適正化を促進するとともに、患者に対して質の高い効率的な医療を提供することを促進することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による地域医療連携システムの概要を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による地域医療連携システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による患者基本情報のデータ例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による診療情報のデータ例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による紹介情報のデータ例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態によるレセプトデータ送信要求のデータ例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態によるレセプトデータのデータ例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態により地域毎に算出された比較結果の例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態により期間毎に算出された比較結果の例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態により疾病毎に算出された比較結果の例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態による検査結果送信要求データのデータ例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態による検査結果のデータ例を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態による地域医療連携システムの動作例を示すシーケンス図である。
【図14】本発明の一実施形態による地域医療連携支援サーバの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態による地域医療連携システム1の概要を説明する。本実施形態による地域医療連携支援サーバ300は、自身が備えるウェブサービス部312により、医療行為の過程が定められた地域医療連携パスに基づいて、中核病院と診療所との間での患者紹介や逆紹介などを行なうウェブサービスを公開する。地域医療連携支援サーバ300は、医療行為が行なわれる中核病院や診療所に設置されたコンピュータ端末から、医療行為を行なった患者や診療内容等の情報が含まれる診療データを受信する。ここで、診療データの集計が可能な病院情報システム140を保有する中核病院からは、中核病院の病院データ抽出用ゲートウェイ121によって診療データが送信され、地域医療連携支援サーバ300は、自身が備える診療データ受信用標準インタフェース311を介して受信する。一方、地域医療連携支援サーバ300は、病院情報システムを導入していない診療所等からは、ウェブサービス部312を介して診療データを受信する。
【0014】
地域医療連携支援サーバ300が備える疾病別連携パス部391は、疾病別に行なわれる医療行為の過程が定められた疾病別連携パスに基づいて、疾病毎に診療データの集計を行ない、統計を出力する。レセプトデータを審査して保険者に提出する審査支払機関が備えるレセプトデータ記憶部420には、医療機関によって患者に対して行なわれた医療行為に応じたレセプトデータが記憶されている。地域医療連携支援サーバ300は、審査支払機関のレセプトデータ抽出用ゲートウェイ431から送信されるレセプトデータを、レセプトデータ受信用インタフェース341を介して受信し、記憶する。また、臨床検査メーカの臨床検査結果記憶部510に備えられる臨床検査結果記憶部510に記憶された臨床検査結果が、検査結果抽出用ゲートウェイ521によって地域医療連携支援サーバ300に送信される。地域医療連携支援サーバ300は、送信される臨床検査結果を検査結果値受信・変換インタフェース381を介して受信し、記憶する。地域医療連携支援サーバ300は、受信した臨床検査結果データやレセプトデータを診療データと符号させる。このようにして、地域医療連携システム1は、地域医療連携を支援する。
【0015】
図2は、本実施形態により医療費比較を行なう地域医療連携システム1の構成を示す図である。上述したように、地域医療連携システム1は、中核病院端末100と、診療所端末200と、地域医療連携支援サーバ300と、審査支払機関端末400と、臨床検査メーカ500とを備えている。ここで、中核病院とは、二次医療圏において定められた病床数以上の入院設備を備える医療機関をいい、診療所とは、入院設備がないか、あるいは定められた病床数に満たない入院設備を備える医療機関をいう。二次医療圏とは、保健医療計画等によって病院の一般病床や療養病床の整備を図るために定められた地域的単位であり、都道府県内はその広さや人口によって複数の地域に分けられ、二次医療圏の地域毎に基準病床数などの計画が立てられる。地域医療連携は、このような二次医療圏の地域を単位として計画される。本実施形態では、このような二次医療圏の地域毎に医療費を比較する例について説明する。
【0016】
中核病院端末100は、中核病院に設置されるコンピュータ端末であり、診療データ入力部110と、診療データ送信部120と、レセプトデータ送信部130とを備えている。
診療データ入力部110は、中核病院において行なわれた医療行為に応じた診療データの入力を受付ける。診療データには、例えば、患者基本情報と、診療情報と、紹介情報とが含まれる。図3は、患者基本情報のデータ例を示す図である。患者基本情報には、患者を識別する患者ID(Identifier)、患者の氏名、性別、生年月日、住所、電話番号や、患者が加入している保険を識別する保険情報等の情報が含まれる。図4は、診療情報のデータ例を示す図である。診療情報には、患者IDに対応付けて、患者に対して診察を行なった診察日、次の診療予定、診療実績、診療項目、検査結果等の情報が含まれる。ここで、診療実績や診療項目には、例えば、診療を行なった患者の疾病を示す情報が含まれる。図5は、紹介情報のデータ例を示す図である。紹介情報は、医療機関から他の医療機関に紹介する患者に応じた情報であり、患者IDに対応付けて、紹介先医療機関を識別する情報、紹介元Dr(Doctor)、紹介先Dr(Doctor)、紹介元科、紹介先科、紹介状内容、紹介理由、照会先での診察予定、紹介期間(期間がある場合のみ)等の情報が含まれる。
【0017】
診療データ送信部120は、診療データ入力部110に入力された診療データを、地域医療連携支援サーバ300に送信する。
レセプトデータ送信部130は、診療データ入力部110に入力された診療データに基づいて、定められたフォーマットに応じたレセプトデータを生成し、審査支払機関装置400に送信する。
【0018】
診療所端末200は、各診療所等の医療機関に設置されるコンピュータ端末であり、診療データ入力部210と、診療データ送信部220と、レセプトデータ送信部230とを備えている。
診療データ入力部210は、診療所において行なわれた医療行為に応じた診療データの入力を受付ける。診療データ送信部220は、診療データ入力部110に入力された診療データを、地域医療連携支援サーバ300に送信する。レセプトデータ送信部230は、診療データ入力部210に入力された診療データに基づいて、定められたフォーマットに応じたレセプトデータを生成し、審査支払機関装置400に送信する。
【0019】
地域医療連携支援サーバ300は、中核病院端末100、診療所端末200、審査支払機関装置400、臨床検査メーカ装置500に接続された共同利用データセンタに設置されるコンピュータ装置である。地域医療連携支援サーバ300は、診療データ受信部310と、レセプトデータ記憶部320と、レセプトデータ収集部340と、推定医療費入力部350と、推定医療費記憶部360と、医療費比較部370と、検査結果収集部380と、出力部390とを備えている。
【0020】
診療データ受信部310は、中核病院端末100または診療所端末200から送信される診療データを受信する。診療データ受信部310は、中核病院端末100や診療所端末200によって、診療データが定められたレセプトデータのフォーマットに変換されたレセプトデータを受信するようにしても良いし、医療機関毎にフォーマットが異なる診療データを受信して、定められたレセプトデータのフォーマットに変換するようにしても良い。また、診療データ受信部310は、GUI(Graphical User Interface)によりレセプトデータを入力するウェブページを中核病院端末100または診療所端末200に提供し、送信したウェブページに応じて入力されるレセプトデータを受信するようにしても良い。
【0021】
レセプトデータ記憶部320には、診療データ受信部310が受信した診療データに基づくレセプトデータが記憶される。レセプトデータには、医療行為に対して行なわれた医療費(金額)が含まれている。図6は、レセプトデータ記憶部420に記憶されるレセプトデータのデータ例を示す図である。レセプトデータには、患者ID、対象月、医療機関情報、レセプト科、保険情報、病名情報、実施内容、金額等の情報が含まれる。ここで、患者IDは、医療行為が行なわれた患者の識別情報である。対象月は、対応する患者に対して医療行為が行なわれた月を示す情報である。医療機関情報は、医療行為を行なった医療機関を識別する情報である。ここで、医療機関情報には、その医療機関の所在地を示す情報が含まれており、所在地を示す情報は、例えば、二次医療圏におけるその医療機関の地域を示す情報であっても良い。
【0022】
レセプトデータ収集部340は、審査支払機関装置400に記憶されたレセプトデータの送信を要求するレセプトデータ送信要求を、審査支払機関装置400に送信する。図7は、レセプトデータ収集部340が審査支払機関装置400に送信するレセプトデータ送信要求に含まれるデータ例を示す図である。レセプトデータ送信要求には、レセプトデータの送信を要求する期間を示す対象月と、患者IDと、対象医療機関と、レセプト科を示す情報が含まれる。レセプト科は、医療行為が行なわれた科を示す情報である。レセプトデータ収集部340は、レセプトデータ送信要求に応じて審査支払機関装置400から送信されるレセプトデータを受信すると、レセプトデータ記憶部320に記憶させる。
【0023】
推定医療費入力部350には、一定期間内に患者に対して地域医療連携によらずに行なわれる医療行為に応じて必要となる地域毎の医療費の推定値が予め記憶される。例えば、推定医療費入力部350には、地域毎、期間毎、疾病毎に、現状の医療費に基づいて算出された一定期間後の推定医療費が入力される。具体的には、推定医療費は、特定の年度の、地域毎の実績医療費や、人口、疾病毎の患者数、合併症患者数等に基づいて、論文や学説等に基づいてシミュレーションされて算出された値である。
推定医療費記憶部360には、推定医療費入力部350に入力された推定医療費が入力される。
【0024】
医療費比較部370は、レセプトデータ記憶部320に記憶されたレセプトデータに基づいて、一定期間内の地域毎、患者毎、期間毎、疾病毎等の種別毎に医療費を算出し、推定医療費記憶部360に記憶された推定医療費のうち、対応する種別の医療費を読み出して算出し、比較する。例えば、医療費比較部370は、特定の年度内において定められた種別毎の推定医療費と実績医療費との差を算出する。図8は、医療費比較部370が比較して算出する地域毎の推定医療費と実績医療費との比較結果を示す図である。図9は、医療費比較部370が比較して算出する期間毎の推定医療費と実績医療費との比較結果を示す図である。ここでは、月を単位とした期間毎の比較結果である。図10は、医療費比較部370が比較して算出する疾病毎の推定医療費と実績医療費との比較結果を示す図である。
【0025】
検査結果収集部380は、臨床検査メーカ装置500に対して検査結果データ送信要求を送信し、送信した検査結果データ送信要求に応じて臨床検査メーカ装置500から送信される検査結果を受信する。図11は、検査結果収集部380が送信する検査結果データ送信要求に含まれるデータ例を示す図である。検査結果データ送信要求には、患者IDと、対象日と、対象医療機関と、対象結果種との情報が含まれる。
【0026】
出力部390は、医療費比較部370によって算出された比較結果や、検査結果収集部380が受信した臨床検査結果を出力する。出力部390としては、画像を表示するディスプレイや、比較結果等を紙媒体に印刷する印刷部等でも良い。地域医療連携支援サーバ300のユーザは、出力部390から出力される比較結果を参照することで、地域医療連携の導入による定量的な効果を知ることができる。また、ユーザは、比較結果に基づいて地域における医療費予算の算定等ができるようになり、国や自治体が負担すべき医療費を明確にすることが可能である。
【0027】
また、出力部390は、ウェブサービス機能を備え、中核病院端末100や診療所端末200から送信された診療データや、審査支払機関装置400から読み出したレセプトデータ、臨床検査メーカ装置500から受信した検査結果などを、中核病院端末100または診療所端末200からの要求に応じて送信し、中核病院端末100と診療所端末200との間で相互に参照させる。これにより、中核病院端末100や診療所端末200は、他の医療機関との間での同一の患者に対する診療内容や検査結果等の情報交換を容易に行なうことが可能である。
【0028】
審査支払機関装置400は、レセプトデータ受信部410と、レセプトデータ記憶部420と、レセプトデータ送信部430とを備えている。
レセプトデータ受信部410は、地域医療連携支援サーバ300から送信されたレセプトデータを受信し、レセプトデータ記憶部420に記憶させる。
レセプトデータ記憶部420には、地域医療連携において定められたフォーマットに応じたレセプトデータが記憶される。
【0029】
レセプトデータ送信部430は、地域医療連携支援サーバ300のレセプトデータ収集部340から受信するレセプトデータ送信要求に応じて、レセプトデータ記憶部420に記憶されたレセプトデータを読み出し、読み出したレセプトデータをレセプトデータ収集部340に送信する。ここで、レセプトデータ記憶部430は、地域医療連携支援サーバ300からのレセプトデータ送信要求に含まれる患者IDに対応するレセプトデータのみを、レセプトデータ送信部420から読み出し、地域医療連携支援サーバ300に送信するようにしても良い。このように、レセプトデータは患者の個人情報であるため、レセプトデータ記憶部430がレセプトデータを送信する際には、レセプトデータ送信部420に記憶された全てまたは任意のレセプトデータについて送信するのではなく、レセプトデータ送信要求に含まれる患者IDに対応するレセプトデータのみを読み出して送信する。
【0030】
臨床検査メーカ装置500は、医療機関からの依頼に基づいて行われた臨床検査の結果が記憶されるコンピュータ装置であり、臨床検査結果記憶部510と、臨床検査結果送信部520とを備えている。
臨床検査結果記憶部510には、医療機関からの依頼に基づいて行われた臨床検査の結果が記憶される。図12は、臨床検査結果送信部510に記憶される検査結果データのデータ例を示す図である。検査結果データには、患者IDと、対象日と、医療機関情報と、検査結果項目コードと、検査結果項目と、検査結果内容と、検査結果単位とを示す情報が含まれる。
【0031】
臨床検査結果送信部520は、検査結果収集部380から送信される検査結果データ送信要求に応じて、検査結果を臨床検査結果記憶部510から読み出し、読み出した検査結果を地域医療連携支援サーバ300に送信する。
【0032】
図13は、本実施形態の地域医療連携システム1によりデータが送受信される例を示すシーケンス図である。
中核病院にて医療行為が行なわれると、中核病院端末100の診療データ入力部110は、患者に対して行なわれた医療行為に関する診療データの入力を受付ける。ユーザによって中核病院端末100に入力される診療データには、患者基本情報、診療情報、紹介情報が含まれている。中核病院端末100の診療データ送信部120は、入力された診療データを地域医療連携支援サーバ300に送信する(ステップS1)。同様に、診療所にて医療行為が行なわれると、診療所端末200の診療データ入力部210は、患者に対して行なわれた医療行為に関する診療データの入力を受付ける。診療所端末200の診療データ送信部220は、入力された診療データを地域医療連携支援サーバ300に送信する(ステップS2)。
【0033】
地域医療連携支援サーバ300の診療データ受信部310は、中核病院端末100または診療所端末200から送信された診療データを受信する。地域医療連携支援サーバ300は、診療データ受信部310が受信した患者基本情報と、自身の記憶領域に予め記憶された患者基本情報とを比較して、同一の患者に基づく患者基本情報が既に自身の記憶領域に記憶されているか否かを判定する。ここでは、患者基本情報に含まれる患者の氏名、性別、生年月日、住所、電話番号等の情報に基づいて、中核病院端末100または診療所端末200から受信した患者基本情報と、予め記憶されている患者基本情報とが同一の患者に対応するものであるか否かを判定することができる。ここで、地域医療連携支援サーバ300は、中核病院端末100または診療所端末200から送信される患者基本情報に含まれる患者IDが、各医療機関内において固有に付与されたIDである場合には、医療機関内での固有の患者IDを、地域医療連携支援サーバ300内において患者を識別する患者IDに変換する(ステップS3)。地域医療連携支援サーバ300は、中核病院端末100または診療所端末200から受信した診療データを、自身の記憶領域に記憶する。
【0034】
地域医療連携支援サーバ300のレセプトデータ収集部340は、審査支払機関装置400に、レセプトデータ送信要求を送信する(ステップS4)。審査支払機関装置400のレセプトデータ送信部430は、地域医療連携支援サーバ300から送信されたレセプトデータ送信要求を受信すると、レセプトデータ記憶部420に記憶されたレセプトデータを読み出し、読み出したレセプトデータを識別する情報を、地域医療連携支援サーバ300へのレセプトデータの送信を行なったことを示すレセプトデータ送信患者一覧テーブルに記憶させ(ステップS5)、地域医療連携支援サーバ300に送信する(ステップS6)。
【0035】
地域医療連携支援サーバ300の検査結果収集部380は、臨床検査メーカ装置500に、検査結果データ送信要求を送信する(ステップS7)。臨床検査メーカ装置500の臨床検査結果送信部520は、地域医療連携支援サーバ300から送信された検査結果送信要求を受信すると、臨床検査結果記憶部510に記憶された検査結果を読み出し、読み出した検査結果を識別する情報を、地域医療連携支援サーバ300への検査結果の送信を行なったことを示す検査結果送信患者一覧テーブルに記憶させ(ステップS8)、地域医療連携支援サーバ300に送信する(ステップS9)。このようにして、地域医療連携支援サーバ300には、中核病院端末100、診療所端末200、審査支払機関装置400に入力され記憶されたレセプトデータや、臨床検査メーカ装置500に記憶された検査結果情報などが収集され、記憶される。
【0036】
次に、図14を参照して、地域医療連携支援サーバ300が、地域毎の医療費比較を行なう処理動作例を説明する。
推定医療費入力部350には、 地域医療連携が行なわれなかった場合に、一定期間内に患者に対する医療行為に応じて必要となる医療費の推定値が入力され、地域毎に予め記憶される(ステップS11)。レセプトデータ収集部340は、審査支払機関装置400に記憶されたレセプトデータを月毎に抽出し、抽出したレセプトデータに基づいて、医療費の実績値を算出してレセプトデータ記憶部320に記憶させる(ステップS12)。医療費比較部370は、レセプトデータ記憶部320に記憶された実績医療費と、推定医療費記憶部360に記憶された推定医療費との比較結果を算出する(ステップS13)。出力部390は、医療費比較部370によって算出された比較結果を出力する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、地域医療連携の導入による定量的な効果の測定や、地域における医療費予算の算定等ができるようになり、国や自治体が負担すべき医療費が明確になることで全国各地域において地域医療連携が進み、地域全体しいては国全体の医療費の適正化を促進するとともに、患者に対して質の高い効率的な医療を提供することを促進することが期待できる。また、例えば患者ごとの医療費を積算することで、当該地域における地域医療連携にかかった医療費の算出が可能となる。また、地域毎、疾病毎の医療費や患者数の推移をグラフ化することや、地域医療連携を行なわずに患者の病状が悪化した際にかかる医療費等をシミュレーションした結果と実際にかかった医療費との差分をとることにより、地域医療連携を行なうことによる効果を定量的に算出することが可能となる。
【0038】
また、地域全体や疾病単位、地域医療連携を行なった場合と行なわなかった場合、専門医数等に基づく医療費を測定することや、疾病毎の医療費の変化率を年々比較することで、将来の医療費シミュレーションを行なうようにしても良い。このように、レセプトデータを活用することにより、地域医療連携を行なった場合と行なわなかった場合との医療費の比較や、医療費予算算定のベースラインを明確化することが可能となる。
また、臨床検査メーカ装置500から地域医療連携支援サーバ300に送信され、出力部390から出力される検査結果を伴わせて参照することで、地域医療連携を行なった場合の治療効果や、地域に最適な専門医数、病院数等をシミュレーションすることが可能である。さらに、例えば、レセプトデータ記憶部320に記憶されているレセプトデータを参照して、例えば特定の疾病の患者数が一定数以上になった場合や、特定の患者の臨床検査結果が定められた閾値を超えて悪化した場合などに警告メッセージを出力するようにして、医療状況の変化に対する早期の対応や、病院をまたがった病態の変化を把握することが可能となる。これにより、医療機関間で患者を紹介する際にも、情報伝達の齟齬を防ぐことが可能である。
【0039】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより地域医療連携の支援を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0040】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 地域医療連携システム
100 中核病院端末
110 診療データ入力部
120 診療データ送信部
121 病院データ抽出用ゲートウェイ
130 レセプトデータ送信部
140 病院情報システム
200 診療所端末
210 診療データ入力部
220 診療データ送信部
230 レセプトデータ送信部
300 地域医療連携支援サーバ
310 診療データ受信部
311 診療データ受信用標準インタフェース
312 ウェブサービス部
320 レセプトデータ記憶部
340 レセプトデータ収集部
341 レセプトデータ受信用インタフェース
350 推定医療費入力部
360 推定医療費記憶部
370 医療費比較部
380 検査結果収集部
381 検査結果値受信・変換インタフェース
390 出力部
391 疾病別連携パス部
400 審査支払機関装置
410 レセプトデータ受信部
420 レセプトデータ送信部
430 レセプトデータ記憶部
431 レセプトデータ抽出用ゲートウェイ
500 臨床検査メーカ装置
510 臨床検査結果送信部
520 臨床検査結果記憶部
521 検査結果抽出用ゲートウェイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域毎の患者に対して地域医療連携による医療行為を行なう医療機関の医療機関端末に接続された地域医療連携支援サーバであって、
一定期間内に前記患者に対して地域医療連携によらずに行なわれる医療行為に応じて必要となる前記地域毎の医療費の推定値が予め記憶される推定医療費記憶部と、
前記地域毎の前記医療機関端末から、前記一定期間内に前記患者に対して行なわれた医療行為に応じた医療費の実績値が含まれるレセプトデータを受信するレセプトデータ受信部と、
前記地域毎の前記医療費の推定値と、前記地域毎の前記医療費の実績値とを比較する医療費比較部と、
前記医療費比較部による比較結果を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする地域医療連携支援サーバ。
【請求項2】
前記地域医療連携支援サーバは、前記一定期間内に前記地域毎に行なわれた医療行為に基づいた前記レセプトデータが予め記憶された審査支払機関の審査支払機関装置に接続され、
前記審査支払機関装置に記憶された前記レセプトデータを読み出すレセプトデータ抽出部をさらに備え、
前記医療費比較部は、前記推定医療費記憶部に記憶された前記推定医療費と、前記レセプトデータ抽出部によって抽出された前記レセプトデータに含まれる前記地域毎の前記医療費の実績値とを比較する
ことを特徴とする請求項1に記載された地域医療連携支援サーバ。
【請求項3】
前記レセプトデータには、前記地域毎に医療行為が行なわれた前記一定期間内の期間と、前記医療行為に応じた疾病を示す情報とが含まれ、
前記医療費比較部は、前記疾病毎、前記前記一定期間内の期間毎に、前記医療費を比較する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地域医療連携支援サーバ。
【請求項4】
地域毎の患者に対して地域医療連携による医療行為を行なう医療機関の医療機関端末に接続され、一定期間内に前記患者に対して地域医療連携によらずに行なわれる医療行為に応じて必要となる前記地域毎の医療費の推定値が予め記憶される推定医療費記憶部を備えた地域医療連携支援サーバの地域医療連携支援方法であって、
レセプトデータ受信部が、前記地域毎の前記医療機関端末から、前記一定期間内に前記患者に対して行なわれた医療行為に応じた医療費の実績値が含まれるレセプトデータを受信するステップと、
医療費比較部が、前記地域毎の前記医療費の推定値と、前記地域毎の前記医療費の実績値とを比較するステップと、
出力部が、前記医療費比較部による比較結果を出力するステップと、
を備えることを特徴とする地域医療連携支援方法。
【請求項5】
地域毎の患者に対して地域医療連携による医療行為を行なう医療機関の医療機関端末に接続され、一定期間内に前記患者に対して地域医療連携によらずに行なわれる医療行為に応じて必要となる前記地域毎の医療費の推定値が予め記憶される推定医療費記憶部を備えた地域医療連携支援サーバのコンピュータに、
レセプトデータ受信部が、前記地域毎の前記医療機関端末から、前記一定期間内に前記患者に対して行なわれた医療行為に応じた医療費の実績値が含まれるレセプトデータを受信するステップと、
医療費比較部が、前記地域毎の前記医療費の推定値と、前記地域毎の前記医療費の実績値とを比較するステップと、
出力部が、前記医療費比較部による比較結果を出力するステップと、
を実行させる地域医療連携支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−231652(P2010−231652A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80428(P2009−80428)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【出願人】(393012183)株式会社NTTデータ・アイ (2)