説明

地盤改良方法

【課題】アロフェンを含む土壌からなる地盤を簡単に補強することができる地盤改良方法を提供することを課題としている。
【解決手段】アロフェンを含む土壌と、セメントを含む固化剤とを混練し、0℃以上7℃以下の環境で1日間以上21日間以下養生させる低温養生を行い、その後15℃以上30℃以下の環境で養生する常温養生を行なうことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良方法に関して、特に、火山灰などを含む土壌の強度改善を図ることができる地盤改良方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤改良方法としては、掘り起こした土にセメントなどの水硬性硬化剤を混合して、この硬化剤を混合した土壌を硬化させることで地盤の強度を向上させる方法が採用されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、このような硬化剤を用いる方法だと、土壌の種類によって固化程度が異なるため、十分な改良効果が得られない場合がある。例えば、関東ローム土壌のように、火山灰や軽石を多く含む土壌の地盤では、従来の地盤改良方法では強度が上がらないことが知られている。
このような土壌中には、アロフェン(Al23・(1〜2)SiO2・nH2O)などの粘土鉱物が多量に含有されており、固化剤として用いるセメント成分から供給されるカルシウムの一部が、アロフェン等から溶出されるAl23成分に吸着し、セメント成分の硬化反応を阻害するためである。
【0004】
このような土壌の地盤を改良する方法としては、例えば、特許文献1にあるような、セメントとともに土砂を混合することで、関東ローム土壌のようなセメントの硬化を阻害する成分を含む土壌からなる地盤でも、強度を高くできる地盤改良方法が知られている。
【0005】
しかし、この方法はセメントと共に土砂を混合することで土壌の強度を上げる方法であるため、アロフェンによる硬化反応の阻害を抑制できるものはない。
従って、アロフェンが多量に含まれている場合には、十分な効果が得られない。
【0006】
或いは、予めアロフェンを含む土壌と石膏成分を混合して所定時間放置してから、セメント成分を混合する方法も知られている(特許文献2)。
このような方法では、あらかじめ石膏に含まれるカルシウムをアロフェンに吸着させておくことで、後から混合するセメント成分のセメントが、アロフェンに吸着されることを抑制できるため、硬化反応の阻害を抑制できる。
【0007】
しかし、この方法では、一度、土壌と石膏成分を混合してからしばらく放置した後に、さらにセメント成分を混合するという二段階で混合作業を行なう必要があり作業に手間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−301451号公報
【特許文献2】特開2005−281407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、アロフェンなどのセメントの硬化阻害成分を多く含む土壌からなる地盤であっても、容易に補強することができる地盤改良方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、アロフェンを含む土壌と、セメントを含む固化剤とを混練し、0℃以上7℃以下の環境で養生させる低温養生を行い、その後15℃以上30℃以下の環境で養生する常温養生を行なうことを特徴としている。
【0011】
アロフェンを含む土壌とセメントを含む固化剤とを混練後、前記範囲の低温環境下で養生させる低温養生を行なった後に、前記温度範囲の環境での常温養生を行なうことで、アロフェンによるセメントの硬化反応の阻害が抑制されて、土壌の硬化が進み、十分な強度を有する地盤に改良できる。
【0012】
前記低温養生を1日間以上3日間以下行なうことが好ましい。
【0013】
低温養生の期間が上記範囲であれば、硬化反応の阻害を抑制する効果が低下することなく、地盤の強度を高める硬化が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地盤を形成する土壌がアロフェンを多く含む土壌の場合に、容易に地盤を補強することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の土壌改良方法は、アロフェンを含む土壌と、セメントを含む固化剤とを混練し、低温養生を行い、その後常温養生を行なうことで行われる。
【0016】
まず、本発明の方法で改良される地盤は、アロフェン含む土壌からなる地盤である。
関東ローム層に代表される、火山灰を多く含む土壌中にはアロフェン(Al23・(1〜2)SiO2・nH2O)が含まれている。
尚、アロフェンを含む土壌とは、アロフェンを6質量%以上、好ましくは25質量%以上含む土壌をいう。
【0017】
本発明で用いられる固化剤は、通常の地盤改良に用いるセメント系の固化剤の中から適宜選択して使用することが可能であるが、例えば、普通、早強、超早強等の各種ポルトランドセメント、該ポルトランドセメントに高炉スラグ、シリカ、フライアッシュを混合してなる各種混合セメント、白色セメント、超速硬セメント、アルミナセメントなど、一般的なセメントを使用することができる。
特に好ましくは地盤改良に用いるセメント系の固化剤である。
【0018】
固化剤は、まず、所定量の混練水と混合してスラリー状の注入材を形成する。
この時の混練水の量は、固化剤100重量部に対して60重量部〜100重量部であることが好ましい。
【0019】
前記注入材を、前記土壌中に注入して混練する。前記注入材の混合量は、土壌100重量部に対して、前記固化剤が150重量部〜400重量部になるように混合することが好ましい。
【0020】
次に、前記注入材を混合した土壌について低温養生を行なう。
低温養生は、0℃以上7℃以下、好ましくは2℃〜5℃、さらに好ましくは約5℃の環境下に、土壌を置き養生を行なう。
この低温養生は、好ましくは1日〜7日間、さらに好ましくは1日〜3日間程度の期間行なうことが好ましい。
このような温度の環境下で養生を行なうためには、例えば、冬季などの前記低温養生の温度に適した季節に屋外で養生をすることによって行なうことができる。
また、夏季など前期低温養生温度に適さない季節の場合、注入材を予め冷却しておいた後に施工することで養生温度を低下させる事が可能である。
【0021】
低温養生時には、例えば、乾燥を防止するために、ビニールシートをかぶせるなどの湿潤状態で行なうことが好ましい。
【0022】
次に、前記低温養生を行なった後の土壌を、10℃以上30℃以下、好ましくは15℃以上25℃以下の常温環境下で養生する常温養生を行なう。
【0023】
常温養生を行なう期間は、地盤改良を行なうのに通常行なわれる養生期間まで行なうことが必要であるが、例えば、21日間以上27日間以下、好ましくは25日以上27日以下程度の期間、上記常温にて養生することが好ましい。
【0024】
尚、常温養生は、前記低温養生を行なった後に、続けて行なうことが好ましい。
また、このような常温での環境下で養生を行なうためには、例えば、シートなどで保温するなどの手段で常温養生の温度に調整して養生をすることによって行なうことができる。
【0025】
さらに、常温養生時には、例えば、乾燥を防止するために、保湿用のビニールシートをかぶせるなどの湿潤状態で行なうことが好ましい。
【0026】
前記のような低温養生を行なった後に、さらに常温養生を行なうことで、アロフェンを含む土壌であっても、セメントを含む固化剤によって、十分な強度まで硬化することができる。
【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
本実施例では、粘土にアフェロン試薬を添加したものを用いて、試験的に関東ローム土壌のようなアロフェンを含有する土壌を作製して、本発明の地盤改良方法に従って処理をした。
【0029】
(試料土壌の作製)
試料用の土壌ベースとして、木節粘土乾燥粉末(株式会社山田俊夫商店製)を準備した。
アロフェン試薬としては、商品名:アロフォサイトP−1(品川化成株式会社製)を準備した。
前記粘土成分561kg、水748kg、前記アロフェン試薬94kgになるように配合し混合することで、試料土壌を作製する。
尚、前記各量は試料土壌全体の単位体積(1m3)あたりの量である。
また、試料土壌の湿潤密度は1.40g/m3、含水比は114%である。
【0030】
(改良土の作製)
前記試料土壌に下記注入材をそれぞれ注入した。
セメント系の固化剤(商品名:TL-3E(タフロック3E)、住友大阪セメント社製)を300kgに水を300kg添加して混練したスラリー状の注入材を用意し、前記試料土壌(1400kg)に注入して混練して、改良土を作製した。
混練は、混練装置としてソイルミキサを用い、回転数165rpmで6分間混練した。
混練済みの改良土を直径50mm、高さ100mmの供試体として作製した。
【0031】
(養生条件)
上記各供試体を養生した。
まず、0℃、2℃、5℃、7℃、10℃にそれぞれ設定した恒温室に供試体を設置し低温養生と常温養生を行なった。
養生日数は、低温養生を各温度で、0日(低温養生を行なわない)から28日間まで、それぞれ表1に示す日数行い、その後続けて20℃の恒温室に移動して、常温養生を28日まで行なった。低温養生を行なわない供試体(0日のもの)は最初から20℃の恒温室におき28日間、常温養生のみを行なった。
28日経過後の各供試体の一軸圧縮強度を測定した結果を表1に示した。
尚、圧縮強度は、JIS A 1216の土の一軸圧縮試験方法に従って測定した。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示す結果から、本実施例のアロフェンを含む土壌は、0℃〜7℃で、1日から3日間低温養生を行なうと圧縮強度が高くなることが判る。
特に、2℃および5℃で低温養生を行なった場合には圧縮強度が高くなる。
一方、低温養生の温度が10℃の場合には、低温養生を行なうことによる強度の補強はなされていないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロフェンを含む土壌と、セメントを含む固化剤とを混練し、0℃以上7℃以下の環境で養生させる低温養生を行い、その後15℃以上30℃以下の環境で養生する常温養生を行なうことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項2】
前記低温養生を1日間以上3日間以下行なう請求項1に記載の地盤改良方法。

【公開番号】特開2012−207400(P2012−207400A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72282(P2011−72282)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】