説明

地盤改良構造体

【課題】 地盤改良構造体において、有害物質の溶出や、地盤改良材料の溶出、溶脱を防止すること。
【解決手段】 地盤改良構造体10であって、土壌に地盤改良材料を混練した改良土壌10Bを、防水性のあるシート10Aで梱包したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤改良構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
土嚢袋に土又はその代替物を詰め込んで箱状に成形した建設資材として、特許文献1に記載のものがある。この建設資材では、土嚢袋に建設廃棄物等を詰め込み、圧縮耐力等を表示することとしている。
【0003】
工場等の建屋の下に遮水シートを水平に敷設し、遮水シートの上に、有害物質を固化、不溶化又は分解する汚染防止層を形成する土壌汚染防止構造として、特許文献2に記載のものがある。この土壌汚染防止構造では、工場等の建屋内で人知れず漏洩した有害物質が、知らない間に床下の土壌に染み込んで汚染が拡散するのを防止することとしている。
【特許文献1】特開2001-207422
【特許文献2】特開2004-36096
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、土嚢の強度表示に関するものであり、土壌を固化材、溶剤等の地盤改良材料で改良した際の有害物質の溶出、溶脱を防止しようとするところが全くない。
【0005】
特許文献2に記載の発明は、工場等の建屋内で漏洩した有害物質による土壌の汚染拡散防止に関するものであり、土壌を固化材、溶剤等の地盤改良材料で改良した際の有害物質の溶出、溶脱を防止しようとするところが全くない。尚、特許文献2に記載の発明は、シートを単に、水平に敷設するものであり、シートによる梱包に関するところが全くない。
【0006】
しかるに、住宅地等の地盤改良では、軟弱な地盤土壌にセメントや石灰、石膏、水ガラス等の固化材、溶液を注入、散布等して混練し、土壌の強度等の性質の改善を図っている。しかしながら、六価クロム等の有害物質の溶出や、周囲からの地下水の流入による地盤改良材料の溶出、溶脱等により、環境汚染を生じたり、改良地盤自体の長期強度低下を招く等の問題がある。
【0007】
本発明の課題は、地盤改良構造体において、有害物質の溶出や、地盤改良材料の溶出、溶脱を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、土壌に地盤改良材料を混練した改良土壌を、防水性のあるシートで梱包した地盤改良構造体である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記シート上で土壌と地盤改良材料を混練したものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1の発明において更に、前記シートに混練済の土壌と地盤改良材料を投入したものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1の発明において更に、前記シート内の土壌に地盤改良材料を投入して混練したものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において更に、前記シートの梱包のつなぎ目を密閉したものである。
【0013】
請求項6の発明は、土壌に地盤改良材料を混練した改良土壌を、防水性のある袋に詰めた地盤改良構造体である。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6の発明において更に、前記袋内で土壌と地盤改良材料を混練したものである。
【0015】
請求項8の発明は、請求項6の発明において更に、前記袋内に混練済の土壌と地盤改良材料を投入したものである。
【0016】
請求項9の発明は、請求項6の発明において更に、前記袋内の土壌に地盤改良材料を投入して混練したものである。
【0017】
請求項10の発明は、請求項6〜9のいずれかの発明において更に、前記袋の開口を密閉したものである。
【発明の効果】
【0018】
(請求項1)
(a)地盤改良構造体は、土壌に地盤改良材料を混練した改良土壌を、防水性のあるシートで梱包したことにより、改良土壌に対する水の浸入、透過を防止し、六価クロム等の有害物質の溶出による環境汚染や、固化材等の地盤改良材料の溶出、溶脱による長期強度低下を防止できる。また、改良土壌のシートへの梱包により、地盤改良構造体自体の強度を確保できる。
【0019】
(請求項2)
(b)地盤改良構造体は、シート上で土壌と地盤改良材料を混練したことにより、簡易に作成できる。
【0020】
(請求項3)
(c)地盤改良構造体は、シートに混練済の土壌と地盤改良材料を投入したことにより、簡易に作成できる。
【0021】
(請求項4)
(d)地盤改良構造体は、シート内の土壌に地盤改良材料を投入して混練したことにより、簡易に作成できる。
【0022】
(請求項5)
(e)地盤改良構造体は、シートの梱包のつなぎ目を密閉したことにより、防水性を確保できる。
【0023】
(請求項6)
(f)地盤改良構造体は、土壌に地盤改良材料を混練した改良土壌を、防水性のある袋に詰めたことにより、改良土壌に対する水の浸入、透過を防止し、六価クロム等の有害物質の溶出による環境汚染や、固化材等の地盤改良材料の溶出、溶脱による長期強度低下を防止できる。また、改良土壌の袋詰めにより、地盤改良構造体自体の強度を確保できる。
【0024】
(請求項7)
(g)地盤改良構造体は、袋内で土壌と地盤改良材料を混練したことにより、簡易に作成できる。
【0025】
(請求項8)
(h)地盤改良構造体は、袋内に混練済の土壌と地盤改良材料を投入したことにより、簡易に作成できる。
【0026】
(請求項9)
(i)地盤改良構造体は、袋内の土壌に地盤改良材料を投入して混練したことにより、簡易に作成できる。
【0027】
(請求項10)
(j)地盤改良構造体は、袋の開口を密閉したことにより、防水性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は実施例1の地盤改良構造体の使用状態を示す模式図、図2は実施例2の地盤改良構造体の使用状態を示す模式図、図3は実施例3の地盤改良構造体の使用状態を示す模式図、図4は地盤改良構造体の設置工程を示す模式図である。
【実施例】
【0029】
(実施例1)(図1)
図1は、住宅等の建物1を支持する地盤の浅層改良構造を示すものである。地盤改良構造体10は、軟質地盤11を改良範囲の深さ例えば1〜2m(浅層)掘削して露出させた支持地盤12の上に設置され、地盤改良構造体10の上に盛り土13、割栗石14を介して建物1の基礎2を設ける。
【0030】
地盤改良構造体10は、支持地盤12の上面に防水性のあるシート(遮水シート)10Aを敷設し、土壌に地盤改良材料を混練した改良土壌10Bをシート10Aで梱包し、密封したものである。本実施例では、建物1の下の全域に、1枚の広いシート10Aを敷設し、単一の地盤改良構造体10を設置した。
【0031】
改良土壌10Bを構成する地盤改良材料は、固化材と溶剤からなる。これらの地盤改良材料としては、セメント系固化材、石灰系固化材、消石灰、廃石膏、高炉スラグ、珪酸ソーダ・シリカ系溶液、ウレタン系溶液等がある。
【0032】
シート10Aは、土壌の有害物質の内容や固化材・溶剤の仕様、求められる耐久性に応じて必要な遮水性能を持つものとし、必ずしも100%の遮水性能を有する必要はなく、固化材や改良土の性能に応じて透水係数を0〜1×10−6cm/sとするものとする。
【0033】
シート10Aの構成材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、塩ビシート等の樹脂系シートやEPDM等の合成ゴム系シートがある。また、強度を持たせるため、フラットヤーンを織ったシートに防水層を重ねた複層のシートがある。
【0034】
地盤改良構造体10によれば、以下の作用効果を奏する。
地盤改良構造体10は、土壌に地盤改良材料を混練した改良土壌10Bを、防水性のあるシート10Aで梱包したことにより、改良土壌10Bに対する水の浸入、透過を防止し、六価クロム等の有害物質の溶出による環境汚染や、固化材等の地盤改良材料の溶出、溶脱による長期強度低下を防止できる。また、改良土壌10Bのシート10Aへの梱包により、地盤改良構造体10自体の強度を確保できる。
【0035】
地盤改良構造体10において、改良土壌10Bの地盤改良材料としてセメント系固化材、石灰系固化材を用いたものでは、六価クロムの溶出を防ぎ、環境汚染を防止できる。
【0036】
地盤改良構造体10において、改良土壌10Bの地盤改良材料として廃石膏を用いたものでは、フッ素の溶出を防ぎ、環境汚染を防止できる。
【0037】
地盤改良構造体10において、改良土壌10Bの地盤改良材料として消石灰、石膏や珪酸ソーダ・シリカ系溶液を用いたものでは、地下水等の水によるそれら成分の溶脱を防ぎ、地盤改良構造体10自体の長期強度の低下を防止できる。
【0038】
(実施例2)(図2)
図2は、住宅等の建物1を支持する地盤の浅層改良構造を示すものである。地盤改良構造体20は、軟質地盤11を改良範囲の深さ例えば1〜2m(浅層)掘削して露出させた支持地盤12の上に設置され、地盤改良構造体20の上に盛り土13、割栗石14を介して建物1の基礎2を設ける。
【0039】
地盤改良構造体20は、支持地盤12の上面に防水性のある袋20Aを配置し、土壌に地盤改良材料を混練した改良土壌20Bを袋20Aに詰め込み、密封したものである。本実施例では、建物1の下の3位置のそれぞれに、3個の地盤改良構造体20を3段積層し、支持地盤12の上で左右に相隣る地盤改良構造体20と地盤改良構造体20の間には軟弱地盤11を埋め戻した。
【0040】
改良土壌20Bを構成する地盤改良材料は、固化材と溶剤からなる。これらの地盤改良材料としては、セメント系固化材、石灰系固化材、消石灰、廃石膏、高炉スラグ、珪酸ソーダ・シリカ系溶液、ウレタン系溶液等がある。
【0041】
シート20Aは、土壌の有害物質の内容や固化材・溶剤の仕様、求められる耐久性に応じて必要な遮水性能を持つものとし、必ずしも100%の遮水性能を有する必要はなく、固化材や改良土の性能に応じて透水係数を0〜1×10−6cm/sとするものとする。
【0042】
シート20Aの構成材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、塩ビシート等の樹脂系シートやEPDM等の合成ゴム系シートがある。また、強度を持たせるため、フラットヤーンを織ったシートに防水層を重ねた複層のシートがある。
【0043】
地盤改良構造体20によれば、以下の作用効果を奏する。
地盤改良構造体20は、土壌に地盤改良材料を混練した改良土壌20Bを、防水性のある袋20Aに詰めたことにより、改良土壌20Bに対する水の浸入、透過を防止し、六価クロム等の有害物質の溶出による環境汚染や、固化材等の地盤改良材料の溶出、溶脱による長期強度低下を防止できる。また、改良土壌20Bの袋20A詰めにより、地盤改良構造体20自体の強度を確保できる。
【0044】
地盤改良構造体20において、改良土壌20Bの地盤改良材料としてセメント系固化材、石灰系固化材を用いたものでは、六価クロムの溶出を防ぎ、環境汚染を防止できる。
【0045】
地盤改良構造体20において、改良土壌20Bの地盤改良材料として廃石膏を用いたものでは、フッ素の溶出を防ぎ、環境汚染を防止できる。
【0046】
地盤改良構造体20において、改良土壌20Bの地盤改良材料として消石灰、石膏や珪酸ソーダ・シリカ系溶液を用いたものでは、地下水等の水によるそれら成分の溶脱を防ぎ、地盤改良構造体20自体の長期強度の低下を防止できる。
【0047】
(実施例3)(図3)
実施例3の地盤改良構造体20が実施例2の地盤改良構造体20と異なる点は、袋20Aを小型化したことにある。本実施例では、建物1の下に多数個の地盤改良構造体20を4段積層し、各層内において左右に相隣る地盤改良構造体20と地盤改良構造体20は隙間なく配置され、上下の各層間で相隣る地盤改良構造体20と地盤改良構造体20は千鳥配置した。
【0048】
以下、地盤改良構造体10、20の設置工程について説明する(図4)。
(1)バックホーにより、軟弱地盤11を改良範囲の深さだけ掘削し、支持地盤12を露出させる。
【0049】
(2)支持地盤12の上に地盤改良構造体10、20を設置する。地盤改良構造体10、20の作成方法としては、シート10A上、又は袋20A内で、土壌と地盤改良材料を混練する方法、シート10A、又は袋20A内に前工程で混練済の土壌と地盤改良材料を散布、注入、投入する方法、シート10A内、又は袋20A内の土壌に地盤改良材料を投入して混練する方法のいずれかを採用できる。
【0050】
(3)シート10Aの梱包のつなぎ目、又は袋20Aの開口を密閉し、防水性を確保する。密閉の方法は、接着剤や粘着性シート(ブチルテープ等)を用いて封着する方法、ひもによって結束する方法を採用できる。
【0051】
(4)支持地盤12の上に必要数の地盤改良構造体10、20を設置した後、それらを上部より転圧し、締め固める。
【0052】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明の地盤改良構造体10、20は、建物の下部の全面に設置するものでなく、建物の柱の直下部の範囲のみに設置し、シート10Aと改良土壌10B、袋20Aと改良土壌20Bを削減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は実施例1の地盤改良構造体の使用状態を示す模式図である。
【図2】図2は実施例2の地盤改良構造体の使用状態を示す模式図である。
【図3】図3は実施例3の地盤改良構造体の使用状態を示す模式図である。
【図4】図4は地盤改良構造体の設置工程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0054】
10 地盤改良構造体
10A シート
10B 改良土壌
20 地盤改良構造体
20A 袋
20B 改良土壌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に地盤改良材料を混練した改良土壌を、防水性のあるシートで梱包した地盤改良構造体。
【請求項2】
前記シート上で土壌と地盤改良材料を混練した請求項1に記載の地盤改良構造体。
【請求項3】
前記シートに混練済の土壌と地盤改良材料を投入した請求項1に記載の地盤改良構造体。
【請求項4】
前記シート内の土壌に地盤改良材料を投入して混練した請求項1に記載の地盤改良構造体。
【請求項5】
前記シートの梱包のつなぎ目を密閉した請求項1〜4のいずれかに記載の地盤改良構造体。
【請求項6】
土壌に地盤改良材料を混練した改良土壌を、防水性のある袋に詰めた地盤改良構造体。
【請求項7】
前記袋内で土壌と地盤改良材料を混練した請求項6に記載の地盤改良構造体。
【請求項8】
前記袋内に混練済の土壌と地盤改良材料を投入した請求項6に記載の地盤改良構造体。
【請求項9】
前記袋内の土壌に地盤改良材料を投入して混練した請求項6に記載の地盤改良構造体。
【請求項10】
前記袋の開口を密閉した請求項6〜9のいずれかに記載の地盤改良構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−208559(P2008−208559A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44216(P2007−44216)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】