説明

地盤補強材

【課題】優れた靭性を示し、軽量かつ変形追従性に優れ、しかも強度的にも優れている地盤補強材を提供する。
【解決手段】アスファルト乳剤100質量部に対して、セメント30〜50質量部と、細骨材10〜100質量部とが配合されてなり、前記細骨材がゴム粉と該ゴム粉とほぼ同粒度の砂とからなる地盤補強材である。前記アスファルト乳剤が、ノニオン系アスファルト乳剤であることが好ましい。また、ゴム粉の粒径は、好適には0.5〜2.0mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤補強材に関し、詳しくは、優れた靭性を示し、軽量かつ変形追従性に優れ、しかも強度的にも優れている地盤補強材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川、山地、造成、盛土等の安定化のための補強材として、土嚢やコンクリートブロック等が用いられていた。しかし、土嚢やコンクリートブロック等では十分な補強材の効果が得られないという問題点があった。そこで、一般にアスファルト乳剤が路盤安定処理などに使用され、また、アスファルト乳剤、セメントおよび細骨材を所定割合で含有したアスファルトモルタル(CAモルタル)はスラブ軌道の緩衝材として使用されていた。これにより、列車荷重の衝撃の緩和や路盤面の不陸を調整する効果があった。また、廃タイヤから得られるゴム粉を、セメントおよび浚渫土と混合することにより、固化処理土として使用することも一般に行われていた。
【0003】
さらに、特許文献1には、廃タイヤの構造としての優れた機能である軽量性、保持性、組み合わせの自由度を活かすとともに、長時間の使用においても優れた形態保持性を示す、複数の廃タイヤを組み合わせて形成される構造体に係る地盤補強材が報告されている。
【特許文献1】特開2007−170046号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の地盤補強材を使用した場合、夫々の目的に応じて、例えば、列車荷重の衝撃の緩和や路盤面の不陸を調整する効果や、あるいは軽量性、保持性などの効果については満足できるものであったが、靭性および変形追従性については十分な検討がなされておらず、この点について、なお改良の余地が残されていた。また、廃タイヤから得られるゴム粉をセメントおよび浚渫土と混合することにより得られる固化処理土は、強度の面で必ずしも十分とはいえなかった。
【0005】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、優れた靭性を示し、軽量かつ変形追従性に優れ、しかも強度的にも優れている地盤補強材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アスファルト乳剤、セメント、およびゴム粉と砂とからなる細骨材を所定割合で混合して成形品とすることにより、上記問題を解消しうる地盤補強材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の地盤補強材は、アスファルト乳剤100質量部に対して、セメント30〜50質量部と、細骨材10〜100質量部とが配合されてなり、前記細骨材がゴム粉と該ゴム粉とほぼ同粒度の砂とからなることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の地盤補強材においては、前記アスファルト乳剤が、ノニオン系アスファルト乳剤であることが好ましい。また、前記ゴム粉の粒径が、0.5〜2.0mmであることが好ましい。さらに、前記細骨材におけるゴム粉と砂との質量比が1:5〜5:1であることが好ましい。さらにまた、前記ゴム粉として廃タイヤの粉砕物を好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた靭性を示し、軽量かつ変形追従性に優れ、しかも強度的にも優れている地盤補強材を提供することが可能となる。また、廃タイヤを使用することにより環境に対しても望ましいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明の地盤補強材は、アスファルト乳剤100質量部に対して、セメント30〜50質量部と、細骨材10〜100質量部とが配合されてなるものである。セメントが30質量部未満であると十分な強度が得られず、一方、50質量部を超えると靭性が不十分であり、好ましくない。また、細骨材が10質量部未満であるとゴムの効果が得られず、一方、100質量部を超えると強度が不十分となり、好ましくない。
【0011】
また、本発明に用いるアスファルト乳剤としては、所望の効果が得られれば特に限定はされず、アニオン系アスファルト乳剤、カチオン系アスファルト乳剤およびノニオン系アスファルト乳剤を使用できるが、好ましくはノニオン系アスファルト乳剤である。
【0012】
さらに、本発明に用いるセメントとしては、所望の効果が得られれば特に限定はされないが、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等が挙げられ、特に普通ポルトランドセメントが好ましい。
【0013】
さらにまた、本発明に用いる細骨材は、ゴム粉と該ゴム粉とほぼ同粒度の砂とからなる。細骨材として、ゴム粉と該ゴム粉とほぼ同粒度の砂との2種類を使用することにより、強度を保ちつつ、かつ靭性に優れた材料となる。即ち、衝撃あるいは振動防止に効果のある成型品を提供することが可能となる。細骨材中のゴム粉の比率を上げることにより強度は落ちるが、圧縮ひずみはほぼ変わらず保つことができるため、必要強度により細骨材中のゴム粉と細骨材との比率を定めればよい。好ましくはゴム粉と砂との質量比が1:5〜5:1である。
【0014】
さらにまた、本発明に用いるゴム粉としては、特に制限されず、天然ゴム(NR)、汎用合成ゴム、例えば、乳化重合スチレン−ブタジエンゴム、溶液重合スチレン−ブタジエンゴム、高シス−1,4ポリブタジエンゴム、低シス−1,4ポリブタジエンゴム、高シス−1,4ポリイソプレンゴム等、ジエン系特殊ゴム、例えば、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム等、オレフィン系特殊ゴム、例えば、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等、その他特殊ゴム、例えば、ヒドリンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム等のいずれを用いることもできる。また、環境への配慮およびコストから、廃タイヤの粉砕物であることが好ましい。
【0015】
かかるゴム粉の粒径は、0.5〜2.0mmであることが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜1.0mmである。粒径が0.5mm未満であるとゴムとしての効果が得られない場合があり、一方、2.0mmを超えると不均一になる場合があり、好ましくない。また、細骨材中の砂の粒径も、ゴム粉とほぼ同程度の粒径とする。これにより細骨材としての所望の効果を得ることが可能となる。
【0016】
本発明の地盤補強材は、密度が0.7〜0.9g/cmであることが好ましい。この密度範囲とすることにより、軽量化と強度との両立が可能である。
【0017】
また、本発明の地盤補強材には、低分子量の石油樹脂(ワックス)を添加してもよく、充填剤として、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水珪酸、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、酸化第二鉄、活性亜鉛華、水添ひまし油等を、1種または2種以上にて適宜組合せて配合することができる。さらに、その他の添加剤として、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着性改良剤、老化防止剤、金属不活性剤、光定剤、発泡剤、水分除去剤、希釈溶剤、物性調整用高分子または低分子添加剤、改質剤などを配合してもよい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表1に示す配合処方に従って、混合物を攪拌装置(東京理科器械(株)製)を用いて常温で15分間攪拌した後、型枠に流し込んだ。一週間後に型枠を外し、実施例1、2および比較例1の地盤補強材のサンプルを調製した。尚、砂はゴム粉とほぼ同粒度である。
【0019】
得られたサンプルに対し、密度(g/cm)、圧縮応力(MPa)および圧縮ひずみ(%)を測定した。密度(g/cm)の測定は、電子天秤およびノギスを使用して質量及び体積を測定した。また、圧縮応力(MPa)および圧縮ひずみ(%)の測定は、以下の一軸圧縮試験で測定した。得られた結果を下記の表1に併記する。
【0020】
<一軸圧縮試験>
サンプルをφ50mm×100mmの大きさにし、試験温度24℃(室温)、載荷速度0.5mm/minで、試験機((株)丸東製作所製)を用いて一軸圧縮試験を行い、圧縮応力(MPa)および圧縮ひずみ(%)を測定した。
【0021】
【表1】

*1)ノニオン系アスファルト乳剤(東亜道路工業(株)製,Lot.No07042601)
*2)普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
*3)廃タイヤのゴム粉(粒径0.6〜0.8mm)
【0022】
図1は、比較例1と実施例1の地盤補強材の最大圧縮応力(MPa)と最大圧縮ひずみ(%)の関係を示すグラフである。図2は、実施例1と実施例2の地盤補強材の最大圧縮応力(MPa)と最大圧縮ひずみ(%)の関係を示すグラフである。図1の実施例1と比較例1との比較より、細骨材のゴム粉の一部を砂と置換することで高い最大圧縮応力を有することが分かる。また、図2の実施例1と実施例2との比較より、細骨材の量を増やすことで強度は落ちるが、ひずみは殆ど変わらないため、変形追従性は確保することができることが分かる。よって、必要な強度に応じた配合が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の地盤補強材の最大圧縮応力(MPa)と最大圧縮ひずみ(%)の関係を示す図である。
【図2】本発明の地盤補強材の最大圧縮応力(MPa)と最大圧縮ひずみ(%)の関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト乳剤100質量部に対して、セメント30〜50質量部と、細骨材10〜100質量部とが配合されてなり、前記細骨材がゴム粉と該ゴム粉とほぼ同粒度の砂とからなることを特徴とする地盤補強材。
【請求項2】
前記アスファルト乳剤が、ノニオン系アスファルト乳剤である請求項1記載の地盤補強材。
【請求項3】
前記ゴム粉の粒径が、0.5〜2.0mmである請求項1または2記載の地盤補強材。
【請求項4】
前記細骨材におけるゴム粉と砂との質量比が1:5〜5:1である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の地盤補強材。
【請求項5】
前記ゴム粉が、廃タイヤの粉砕物である請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の地盤補強材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−133118(P2009−133118A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310339(P2007−310339)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】