地表下の炭化水素地層の循環熱伝導流体の加熱
地表下地層を処理するためのシステムおよび方法が本明細書において説明される。地表下地層を加熱する方法は、第1の位置でコンジットインコンジット加熱器の第1の通路に溶解塩を導入することを含むことが可能である。方法は、第2の位置に地層内のコンジットインコンジット加熱器を介して溶解塩を通すことを含むことが可能である。熱は、コンジットインコンジット加熱器を介しての溶解塩の通過の間に、溶解塩から処理領域に移動することが可能である。方法は、第1の位置から間隔をあけて配置された第2の位置で、コンジットインコンジット加熱器から溶解塩を取り除くことを含むことが可能である。実施形態によっては、方法は、加熱器の少なくとも一部に第2の熱伝導流体を導入して、加熱器を予備加熱して、加熱器内の第1の熱伝導流体の流動性を確実にすることを含むことが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、炭化水素含有地層などの様々な地表下地層からの炭化水素、水素、および/または他の生成物の生成のための方法およびシステムに関する。特に、ある実施形態は、インサイチュ転化プロセスの間に、地層の一部を加熱するための閉ループ循環システムを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
地下にある地層から得られる炭化水素は、エネルギー資源として、原材料として、消費財として数多く使用されている。入手可能な炭化水素資源の枯渇に対する懸念、および生成された炭化水素の全体特性を低下することに対する懸念は、入手可能な炭化水素資源のより効率的な回収、処理、および/または使用のためのプロセスの開発をもたらした。インサイチュプロセスが使用されて、地下にある地層から炭化水素材料を取り除くことが可能である。地下にある地層内の炭化水素材料の化学的性質、および/または物理的性質が変更されて、炭化水素材料が地下にある地層からより容易に取り除かれることを可能にする必要がある。化学的変化および物理的変化は、地層内の炭化水素材料の除去可能な流体、組成変化、可溶性変化、密度変化、相変化、および/または粘性変化を引き起こすインサイチュ反応を含んでいてもよい。流体は、ガス、液体、乳濁液、スラリー、および/または液体の流れに類似する流れ特性を有する固体粒子の流れであってもよいが、それらに限定されない。
【0003】
様々なタイプの坑井または坑井穴が、インサイチュ熱処理プロセスを使用して、炭化水素含有地層を処理するために使用されることが可能である。実施形態によっては、垂直で、および/または実質的に垂直の坑井が地層を処理するために使用される。実施形態によっては、水平または実質的に水平の坑井(J形状の坑井、および/またはL形状の坑井)、および/またはU字形状の坑井が、地層を処理するために使用される。実施形態によっては、水平の坑井と垂直の坑井との組み合わせ、および/または他の組み合わせが、地層を処理するために使用される。ある実施形態では、坑井は、地層のオーバーバーデンを介して、地層の炭化水素含有層まで延在する。状況によっては、坑井内の熱は、オーバーバーデンに失われる。状況によっては、水平の坑井穴またはU字形状の坑井穴内で、加熱器、および/または生成装置を支持するために使用される地表基礎構造およびオーバーバーデン基礎構造は、サイズが大きく、および/または多数である。
【0004】
Sandbergらの米国特許第7,575,052号明細書は、1つまたは複数の処理領域を加熱するために循環システムを利用するインサイチュ熱処理プロセスを記載している。循環システムは、地層に熱を移動するために、地層内の配管を通る加熱された液体熱伝導流体を使用することが可能である。
【0005】
Vinegarらの米国特許出願公開第2008−0135254号明細書は、1つまたは複数の処理領域を加熱するために循環システムを利用するインサイチュ熱処理プロセスのためのシステムおよび方法を記載している。循環システムは、地層に熱を移動するために地層内の配管を通る加熱された液体熱伝導流体を使用する。実施形態によっては、配管は、少なくとも2つの坑井穴内に位置する。
【0006】
Nguyenらの米国特許出願公開第2009−0095476号明細書は、地表下地層用の加熱システムが、地表下地層内の開口部内に位置するコンジットを含むことを記載している。絶縁導電体は、コンジット内に位置する。材料は、絶縁導電体の一部とコンジットの一部との間のコンジット内にある。材料は、塩であってもよい。材料は、加熱システムの使用温度で流体である。熱は、絶縁導電体から流体に、流体からコンジットに、およびコンジットから地表下地層に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,575,052号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0135254号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0095476号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
炭化水素含有地層から、炭化水素、水素、および/または他の生成物を経済的に生成する方法およびシステムを開発するためにかなりの努力があった。しかしながら、現在、炭化水素、水素、および/または他の生成物が経済的に生成されることができない、さらに多くの炭化水素含有地層がある。地層を処理するためのエネルギーのコストを低減する、処理プロセスからの排出を低減する、加熱システム設置を容易化する、および/または地表走行装置を利用する炭化水素回収プロセスと比較してオーバーバーデンに対する熱損失を低減する、改善された方法およびシステムの必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載された実施形態は、概して、地表下地層を処理するためのシステムおよび方法に関する。ある実施形態では、本発明は、地表下地層を処理する1つまたは複数のシステムおよび1つまたは複数の方法を提供する。
【0010】
本発明は、実施形態によっては、地表下地層を加熱する方法であって、第1の位置でコンジットインコンジット加熱器の第1の通路に溶解塩を導入することと、第2の位置に地層内のコンジットインコンジット加熱器を介して溶解塩を通し、コンジットインコンジット加熱器を介して溶解塩の通過の間に溶解塩から処理領域に熱が移動することと、第1の位置から間隔をあけて配置された第2の位置でコンジットインコンジット加熱器から溶解塩を取り除くこととを含む、方法を提供する。
【0011】
本発明は、実施形態によっては、地表下地層を加熱する方法であって、加熱器の第1の通路に第2の熱伝導流体を導入して、加熱器を予備加熱することと、加熱器の第2の通路に第1の熱伝導流体を導入することと、加熱器の温度が第1の熱伝導流体の流動性を確実にするのに十分となった後、第1の通路への第2の熱伝導流体の流れを取り除くまたは低減することとを含む、方法を提供する。
【0012】
本発明は、実施形態によっては、地表下地層を加熱するためのシステムであって、地層内の複数の加熱器に熱い熱伝導流体をもたらすように構成された少なくとも1つの流体循環システムと、循環システムに結合された地層内の複数の加熱器とを含み、加熱器の少なくとも1つは、第1のコンジットと、第1のコンジット内に位置する第2のコンジットと、第2のコンジットを流れる流体が第1のコンジットと第2のコンジットとの間の環状領域を流れることを可能とするように構成された第1の流れ切り換え装置とを含む、システムを提供する。
【0013】
本発明は、実施形態によっては、地表下地層を加熱する方法であって、地表下地層内に位置した加熱器を介して第1の熱伝導流体を循環させて、加熱器内の第2の熱伝導流体の流動性を確実にする温度に加熱器の温度を上げることと、加熱器を介しての第1の熱伝導流体の循環を停止することと、地表下地層内に位置した加熱器を介して第2の熱伝導流体を循環させて、加熱器に隣接する熱処理領域の温度を上げることとを含む、方法を提供する。
【0014】
さらなる実施形態では、ある実施形態からの特徴が、他の実施形態からの特徴と組み合わせられてもよい。例えば、1つの実施形態からの特徴が、他の実施形態のうちのいずれかからの特徴と組み合わせられてもよい。
【0015】
さらなる実施形態では、地表下地層を処理することは、本明細書に記載された方法、システム、加熱器のうちのいずれかを使用して行われる。
【0016】
さらなる実施形態では、さらなる特徴が、本明細書に記載されたある実施形態に加えられてもよい。
【0017】
本発明の利点は、次の詳細な説明を検討し、添付図面を参照して当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】炭化水素含有地層を処理するためのインサイチュ熱処理システムの一部の実施形態の概略図を示す。
【図2】地層の一部を加熱するための熱伝導流体循環システムの実施形態の概略図を表す。
【図3】地層の一部を加熱するための熱伝導流体循環システムとともに使用するための、L形状の加熱器の実施形態の概略図を表す。
【図4】処理領域に隣接する熱伝導循環加熱システム用のコンジットインコンジット加熱器の実施形態の端面図の説明を表す。
【図5】加熱器内の熱伝導流体の流れを再スタートするための加熱器の様々な部分を加熱するための実施形態の図を表す。
【図6】地層内に位置する流動循環加熱システムのコンジットインコンジット加熱器の実施形態の概略を表す。
【図7】オーバーバーデンに隣接するコンジットインコンジット加熱器の実施形態の断面図を表す。
【図8】液体熱伝導流体用の循環システムの実施形態の概略図を表す。
【図9】コンジットインコンジット加熱器を介して循環される溶解塩を使用して、地層を加熱するための日に対する平均地層温度(℃)を表す。
【図10】時間(日)に対する溶解塩温度(℃)および動力注入速度(W/ft)を表す。
【図11】18kg/sの質量流量で8000フィートの加熱長さを備えた加熱器を介して循環される溶解塩を使用して、地層を加熱するための時間(日)に対する温度(℃)および動力注入速度(W/ft)を表す。
【図12】12kg/sの質量流量で8000フィートの加熱長さを備えた加熱器を介して循環される溶解塩を使用して、地層を加熱するための時間(日)に対する温度(℃)および動力注入速度(W/ft)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、様々な変形および別の形態の影響を受けやすい一方、その具体的な実施形態は、図面において一例として示され、本明細書に詳細に説明される。図面は縮尺どおりではない。しかしながら、図面および詳細な説明は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図しないが、それどころか、その意図は、添付の請求項によって定義されるように、本発明の精神および範囲以内にある変形、均等および代替物をすべてカバーすることであることを理解するべきである。
【0020】
次の説明は、概して、地層内の炭化水素を処理するためのシステムおよび方法に関する。そのような地層は、炭化水素生成物、水素および他の生成物を産出するように処理されることが可能である。
【0021】
「API重力」は、15.5℃(60°F)でのAPI重力を指す。API重力は、ASTM法D6822またはASTM法D1298によって決まる。
【0022】
「流体圧力」は、地層内の流体によって発生される圧力である。「地盤圧力」(「地盤応力」と称されることもある)は、覆っている岩盤の単位面積当たりの重量に等しい地層内の圧力である。「静水圧」は、水柱によって及ぼされる地層内の圧力である。
【0023】
「地層」は、1つまたは複数の炭化水素含有層、1つまたは複数の非炭化水素層、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデン(underbarden)を含む。「炭化水素層」は、炭化水素を含有する地層内の層を指す。炭化水素層は、非炭化水素材料および炭化水素材料を含んでいてもよい。「オーバーバーデン」、および/または「アンダーバーデン」は、1つまたは複数の異なる種類の不浸透性材料を含む。例えば、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンは、岩、頁岩、泥岩または湿性/堅固な炭酸塩を含んでいてもよい。インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンは、比較的不浸透性であり、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンの炭化水素含有層の著しい特性変化をもたらすインサイチュ熱処理プロセスの間に温度にさらされない、1つの炭化水素含有層または複数の炭化水素含有層を含んでいてもよい。例えば、アンダーバーデンは、頁岩または泥岩を含んでいてもよいが、アンダーバーデンは、インサイチュ熱処理プロセスの間に熱分解温度に加熱されなくてもよい。ある場合には、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンが多少浸透性であってもよい。
【0024】
「地層流体」は、地層内に存在する流体を指し、熱分解流体、合成ガス、易動化炭化水素および水(蒸気)を含んでいてもよい。地層流体は、非炭化水素流体のみならず炭化水素流体も含んでいてもよい。用語「易動化流体」は、地層の熱処理の結果、流れることができる炭化水素含有地層内の流体を指す。「生成された流体」は、地層から取り除かれる流体を指す。
【0025】
「熱源」は、伝導熱伝導、および/または放射熱伝導によって、地層の少なくとも一部に熱を実質的に供給するための任意のシステムである。例えば、熱源は、導電材料であってもよく、および/または絶縁導電体、細長い部材、および/またはコンジット内に配置される導体などの電気加熱器を含む。熱源は、また、地層外、または地層内で燃料を燃焼することによって熱を発生するシステムを含んでいてもよい。システムは、地表バーナー、ダウンホールガスバーナー、無炎分配型燃焼器、および自然分配型燃焼器であってもよい。実施形態によっては、1つまたは複数の熱源にもたらされる、または1つまたは複数の熱源で発生される熱は、他のエネルギー源によって供給されてもよい。他のエネルギー源は、地層を直接加熱してもよく、または、エネルギーは、地層を直接または間接的に加熱する移動媒体に適用されてもよい。当然のことながら、地層に熱を加えている1つまたは複数の熱源は、異なるエネルギー源を使用してもよい。したがって、例えば、所定の地層に関して、熱源によっては、導電材料、電気抵抗加熱器から熱を供給してもよく、熱源によっては、燃焼から熱をもたらしてもよく、熱源によっては、1つまたは複数の他のエネルギー源(例えば、化学反応、太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマス、または他の再生可能エネルギー源)から熱をもたらしてもよい。化学反応は、発熱反応(例えば、酸化反応)を含んでいてもよい。熱源は、また、導電材料、および/または加熱器の坑井などの、加熱位置に隣接、および/または囲むゾーンに熱をもたらす加熱器を含んでいてもよい。
【0026】
「加熱器」は、坑井内または坑井穴領域近くで熱を発生するための任意のシステムまたは熱源である。加熱器は、電気加熱器、バーナー、地層内の材料もしくは地層から生成される材料と反応する燃焼器、および/またはそれらの組み合わせであってもよいが、それらに限定されない。
【0027】
「重炭化水素」は、粘性炭化水素流体である。重炭化水素は、重油、タール、および/またはアスファルトなどの高粘性炭化水素流体を含んでいてもよい。重炭化水素は、炭素および水素のほかに、より低濃度の硫黄、酸素および窒素を含んでいてもよい。さらなる元素も、重炭化水素中に微量存在していてもよい。重炭化水素は、API重力によって分類されてもよい。重炭化水素は、一般的に、約20°未満のAPI重力を有する。重油は、例えば、一般的に、約10から20°のAPI重力を有し、一方、タールは、一般的に、約10°未満のAPI重力を有する。重炭化水素の粘性は、一般的に、15℃で約100センチポアズより大きい。重炭化水素は、芳香族化合物または他の複合環状炭化水素を含んでいてもよい。
【0028】
重炭化水素は、比較的浸透性の地層で見られてもよい。比較的浸透性の地層は、例えば、砂または炭酸塩に取り込まれた重炭化水素を含んでいてもよい。「比較的浸透性」は、地層またはその一部に対して10ミリダルシー以上(例えば、10または100ミリダルシー)の平均浸透性として定義される。「比較的低い浸透性」は、地層またはその一部に対して約10ミリダルシー未満の平均浸透性として定義される。1ダルシーは、約0.99平方マイクロメートルに等しい。不浸透性層は、一般的に、約0.1未満のミリダルシーの浸透性を有する。
【0029】
重炭化水素を含むある種の地層は、また、天然鉱ろうまたは天然アスファルタイトを含むが、それらに限定されない。「天然鉱ろう」は、幅が数メーター、長さが数キロメーター、深さが数百メーターであってもよい実質的に管状の鉱脈に典型的には生じる。「天然アスファルタイト」は、芳香族化合物組成物の固体炭化水素を含んでおり、典型的には大鉱脈に生じる。天然鉱ろうおよび天然アスファルタイトなどの地層からの炭化水素のインサイチュ回収は、液体炭化水素を形成するための溶融、および/または地層からの炭化水素のソリューションマイニングを含んでいてもよい。
【0030】
「炭化水素」は、炭素原子および水素原子によって主として形成された分子として一般的に定義される。炭化水素は、また、ハロゲン、金属元素、窒素、酸素、および/または硫黄などの他の元素を含んでいてもよいが、それらに限定されない。炭化水素は、ケロゲン、ビチューメン、ピロビチューメン、油、天然鉱ろうおよびアスファルタイトであってもよいが、それらに限定されない。炭化水素は、地球の鉱物基質内または、それに隣接して位置することができる。基質は、堆積岩、砂、シリシライト、炭酸塩、珪藻岩、および他の多孔質媒体含んでいてもよいが、それらに限定されない。「炭化水素流体」は、炭化水素を含む流体である。炭化水素流体は、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水およびアンモニアなどの非炭化水素流体を含んでも、取り込んでいてもよく、非炭化水素流体に取り込まれていてもよい。
【0031】
「インサイチュ転化プロセス」は、熱源から炭化水素含有地層を加熱して、熱分解流体が地層内で生成さるように熱分解温度より高い温度で地層の少なくとも一部の温度を上げるプロセスを指す。
【0032】
「インサイチュ熱処理プロセス」は、易動化流体、粘性低下流体、および/または熱分解流体が、地層内に生成されるように、熱源で炭化水素含有地層を加熱して、易動化流体、粘性低下、および/または炭化水素含有材料の熱分解をもたらす温度より高い温度に地層の少なくとも一部の温度を上げるプロセスを指す。
【0033】
「絶縁導電体」は、電気を通すことができ、電気絶縁材料によって全体または一部において被覆される任意の細長い材料を指す。
【0034】
「熱分解」は、熱の適用による化学結合の破壊である。例えば、熱分解は、熱だけによって化合物を1つまたは複数の他の物質に変えることを含んでいてもよい。熱は、地層の部分に移動されて、熱分解を引き起こすことが可能である。
【0035】
「熱分解流体」または「熱分解生成物」は、炭化水素の熱分解の間に実質的に生成される流体を指す。熱分解反応によって生成される流体は、地層内で他の流体と混ざってもよい。混合物は、熱分解流体または熱分解生成物と考えられる。本明細書で説明されるように、「熱分解ゾーン」は、熱分解流体を形成するために反応されるまたは反応する地層(例えば、タール砂地層などの比較的浸透性地層)の体積を指す。
【0036】
「熱の重ね合わせ」は、熱源間の少なくとも1つの位置での地層の温度が、熱源によって影響されるように、地層の選択された部分に2つ以上の熱源から熱をもたらすことを指す。
【0037】
「タールサンド地層」は、炭化水素が、鉱物粒子枠組みまたは他の宿主岩盤(例えば、砂または炭酸塩)に取り込まれた重炭化水素、および/またはタールの形態で主に存在する地層である。タールサンド地層としては、アサバスカ地層、グロスモント地層、およびピースリバー地層(3つすべては、Alberta、Canada)、ファハ地層(Orinoco belt、Venezuela)などの地層が挙げられる。
【0038】
「温度限定加熱器」は、一般的に、温度調節器、電源レギュレータ、整流器または他の装置などの外部制御を使用することなく規定温度を超えて熱出力を調整する(例えば、熱出力を低減する)加熱器を指す。温度限定加熱器は、AC(交流)または調整された(例えば、「チョップ型」)DC(直流)駆動電気抵抗加熱器であってもよい。
【0039】
層の「厚さ」は、層の断面の厚さを指し、断面は、層の面に垂直である。
【0040】
「U字形状の坑井穴」は、地層内の第1の開口部から、地層の少なくとも一部を介し、地層内の第2の開口部を介して延在する坑井穴を指す。この文脈では、坑井穴は、坑井穴が「u」形状であるとみなされるために、「u」の「脚部」が互いに平行である必要はなく、または「u」の「底部」に対して垂直である必要はないという条件で、単に概略的に「v」または「u」形状であってもよい。
【0041】
「品質向上」は、炭化水素の質を高めることを指す。例えば、重炭化水素の品質向上は、重炭化水素のAPI重力を高め得る。
【0042】
「粘性低下」は、熱処理の間に流体内の分子のもつれを解くこと、および/または熱処理の間の大きな分子のより小さな分子への破壊を指し、流体の粘性を低減する。
【0043】
「粘性」は、別段の定めがない限り、40℃での動粘度を指す。粘性は、ASTM法D445によって決まる。
【0044】
用語「坑井穴」は、掘削または地層へのコンジットの挿入によって作製された地層における穴を指す。坑井穴は、実質的に円形断面または他の断面形状を有していてもよい。本明細書で使用されるように、用語「坑井」および「開口部」は、地層内の開口部を参照する場合、用語「坑井穴」で交換可能に使用されてもよい。
【0045】
地層は、様々な方法で処理されて様々な生成物を生成することが可能である。インサイチュ熱処理プロセスの間に地層を処理するために、異なる段階またはプロセスが使用されてもよい。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分は、ソリューションマイニングされて、その部分から可溶性鉱物を取り除く。ソリューションマイニング鉱物は、インサイチュ熱処理プロセスの前、間、および/または後に行われてもよい。実施形態によっては、ソリューションマイニングされる1つまたは複数の部分の平均温度は、約120℃より低く維持されてもよい。
【0046】
実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分が加熱されて、部分から水を取り除く、および/または部分からメタンおよび他の揮発性炭化水素を取り除く。実施形態によっては、平均温度は、水および揮発性炭化水素の除去の間に、周囲の温度から約220℃より低い温度に上げられてもよい。
【0047】
実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分が加熱されて、地層内で炭化水素の移動、および/または粘性低下を可能にする温度に加熱される。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分の平均温度は、その部分における炭化水素の易動化温度に上げられる(例えば、100℃から250℃、120℃から240℃、または150℃から230℃の範囲の温度に)。
【0048】
実施形態によっては、1つまたは複数の部分が、地層内での熱分解反応を可能にする温度に加熱される。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分の平均温度は、部分における炭化水素の熱分解温度に上げられてもよい(例えば、230℃から900℃、240℃から400℃、または250℃から350℃の範囲の温度)。
【0049】
複数の熱源で炭化水素含有地層を加熱することは、地層内の炭化水素の温度を所望の加熱速度で所望の温度に上げる熱源のまわりの温度勾配を確立することが可能である。所望の生成物のための易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間の温度増加率は、炭化水素含有地層から生成される地層流体の質および量に影響することが可能である。易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間に地層の温度をゆっくり上げることは、地層から高品質、高API重力の炭化水素の生成を可能にしてもよい。易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間に地層の温度をゆっくり上げることは、炭化水素生成物として地層内に存在する大量の炭化水素の除去を可能にしてもよい。
【0050】
いくらかのインサイチュ熱処理の実施形態では、地層の一部は、温度範囲の間に温度をゆっくり加熱する代わりに所望の温度に加熱される。実施形態によっては、所望の温度は、300℃、325℃または350℃である。所望の温度として他の温度が選択されてもよい。
【0051】
熱源からの熱の重ね合わせは、所望の温度が、地層において比較的速く効率的に確立されることを可能にする。熱源から地層へのエネルギー入力が調節されて、所望の温度で地層内で温度を実質的に維持することが可能である。
【0052】
易動化、および/または熱分解生成物が、生成坑井を介して地層から生成されることが可能である。実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度が易動化温度に上げられ、炭化水素が生成坑井から生成される。1つまたは複数の部分の平均温度は、易動化による生成が選択された値より下に低下した後、熱分解温度に上げられてもよい。実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度は、熱分解温度に達する前にほとんど生成せずに熱分解温度に上げられてもよい。熱分解生成物を含む地層流体は、生成坑井を介して生成されてもよい。
【0053】
実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度は、易動化、および/または熱分解後に、合成ガスの生成を可能にするのに十分な温度に上げられてもよい。実施形態によっては、炭化水素は、合成ガスの生成を可能にするのに十分な温度に達する前にほとんど生成せずに合成ガスの生成を可能とするのに十分な温度に上げられてもよい。例えば、合成ガスは、約400℃から約1200℃、約500℃から約1100℃、または約550℃から約1000℃の温度範囲で生成されてもよい。合成ガス発生流体(例えば、蒸気、および/または水)が、合成ガスを発生するために部分へ導入されてもよい。合成ガスは、生成坑井から生成されてもよい。
【0054】
ソリューションマイニング、揮発性炭化水素および水の除去、炭化水素の易動化、炭化水素の熱分解、合成ガスの発生、および/または他のプロセスが、インサイチュ熱処理プロセスの間に行われてもよい。実施形態によっては、いくつかのプロセスが、インサイチュ熱処理プロセス後に行われてもよい。そのようなプロセスとしては、処理された部分から熱を回収すること、予め処理された部分に流体(例えば、水、および/または炭化水素)を保存すること、および/または予め処理された部分に二酸化炭素を隔離することが挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
図1は、炭化水素含有地層を処理するためのインサイチュ熱処理システムの一部の実施形態の概略図を表す。インサイチュ熱処理システムは、障壁坑井100を含んでいてもよい。障壁坑井は、処理領域のまわりに障壁を形成するために使用される。障壁は、処理領域への、および/または処理領域からの流体の流れを抑制する。障壁坑井としては、脱水坑井、真空坑井、捕獲坑井、注入坑井、グラウト坑井、凍結坑井、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。実施形態によっては、障壁坑井100は、脱水坑井である。脱水坑井は、液体の水を取り除く、および/または液体の水が加熱される対象の地層、もしくは加熱されている地層の一部に入ることを抑制し得る。図1で表された実施形態では、障壁坑井100は、熱源102の一方の側に沿ってのみ延在して示されているが、障壁坑井は、典型的には、地層の処理領域を加熱するために使用された、または使用されるすべての熱源102を取り囲む。
【0056】
熱源102は、地層の少なくとも一部内に置かれる。熱源102は、導電材料を含んでいてもよい。実施形態によっては、絶縁導電体、導体インコンジット加熱器、地表バーナー、無炎分配型燃焼器、および/または自然分配型燃焼器などの加熱器である。熱源102は、また、他の種類の加熱器を含んでいてもよい。熱源102は、地層の少なくとも一部に熱をもたらして、地層内で炭化水素を加熱する。供給ライン104を介して熱源102にエネルギーが供給されてもよい。供給ライン104は、地層を加熱するために使用される熱源(複数可)の種類に応じて構造上異なっていてもよい。熱源用の供給ライン104は、導電材料または電気加熱器用に送電してもよく、燃焼器用の燃料を移動してもよく、または地層内で循環される熱交換流体を移動してもよい。実施形態によっては、インサイチュ熱処理プロセス用電気が、原子力発電所(複数可)によってもたらされてもよい。原子力の使用は、インサイチュ熱処理プロセスからの二酸化炭素排出の低減または除去を可能としてもよい。
【0057】
地層を加熱することは、地層の浸透性、および/または気孔率の増大を引き起こしてもよい。浸透性、および/または気孔率の増大は、水の蒸発および除去、炭化水素の除去、および/または破砕の作成により、地層の質量の低減に起因することが可能である。流体は、地層の浸透性、および/または気孔率が増大されるために、地層の加熱された部分においてより容易に流れることが可能である。地層の加熱された部分内の流体は、浸透性、および/または気孔率が増加されるために、地層を介して相当な距離を移動することが可能である。相当な距離は、地層の浸透性、流体の特性、地層の温度、および流体の移動を可能とする圧力勾配などの様々な要因に応じて1000mを超えることが可能である。流体が地層内で相当な距離を移動する能力は、生成坑井106が地層内で比較的遠く離れて間隔を置いて配置されることを可能にする。
【0058】
生成坑井106は、地層から地層流体を取り除くために使用される。実施形態によっては、生成坑井106は熱源を含む。生成坑井での熱源は、生成坑井で、または生成坑井の近くで地層の1つまたは複数の部分を加熱することが可能である。インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、生成坑井のメーター当たりの生成坑井からの地層に供給される熱量は、熱源のメーター当たりの地層を加熱する熱源から地層に加えられた熱量未満である。生成坑井から地層に加えられた熱は、生成坑井に隣接する液相流体を蒸発、除去することによって、および/または、マクロ破砕、および/またはミクロ破砕の地層によって生成坑井に隣接する地層の浸透性を増大させることによって、生成坑井に隣接する地層の浸透性を増大させることが可能である。
【0059】
実施形態によっては、生成坑井106内の熱源は、地層から地層流体の気相除去を可能にする。生成坑井で、または生成坑井を介して加熱をもたらすことは、以下を可能にする:(1)そのような生成された流体がオーバーバーデンに隣接した生成坑井内で移動している場合、生成された流体の凝縮、および/または還流を抑制する、(2)地層への熱入力を増大する、(3)熱源のない生成坑井に比較して生成坑井からの生成速度を増大する、(4)生成坑井での高炭素数化合物(C6以上の炭化水素)の凝縮を抑制する、および/または(5)生成坑井で、または生成坑井に隣接した地層の浸透性を増大する。
【0060】
地層内の地表下の圧力は、地層内で発生された流体圧力に相当してもよい。地層の加熱された部分の温度が上昇するにつれて、加熱された部分の圧力は、インサイチュ流体の熱膨張、流体の発生の増大、および水の蒸発の結果、増大する可能性がある。地層からの流体除去の速度の制御は、地層内の圧力の制御を可能にする。地層内の圧力は、生成坑井に近接してまたは生成坑井で、熱源に近接してまたは熱源で、または観察坑井で、などの複数の異なる位置で決定されることが可能である。
【0061】
炭化水素含有地層によっては、地層内の少なくともいくつかの炭化水素が易動化され、および/または熱分解されるまで、地層からの炭化水素の生成は抑制される。地層流体が選択された品質を有する場合、地層流体が地層から生成されることが可能である。実施形態によっては、選択された品質としては、少なくとも約20°、30°または40°のAPI重力が挙げられる。少なくともいくつかの炭化水素が易動化され、および/または熱分解されるまで生成を抑制することは、重炭化水素の軽質炭化水素への変換を増大させることが可能である。初期の生成の抑制は、地層から重炭化水素の生成を最小限にすることが可能である。相当量の重炭化水素の生成は、高価な装置を必要とし、および/または生成装置の寿命を短くする可能性がある。
【0062】
実施形態によっては、生成坑井106に対する開放通路または任意の他の圧力シンクが地層内に存在しなくてもよいが、地層内で発生された易動化流体、熱分解流体または他の流体の膨張によって発生された圧力は、増大することが可能であってもよい。流体圧力は、地盤圧力に対して増大することが可能であってもよい。流体が地盤圧力に達すると、炭化水素含有地層の破砕が生じることがある。例えば、破砕は、地層の加熱された部分において、熱源102から生成坑井106まで生じることがある。加熱された部分における破砕の発生は、一部内の圧力の一部を逃がすことが可能である。地層内の圧力は、選択された圧力より低く維持されて、不要な生成、オーバーバーデンもしくはアンダーバーデンの破砕、および/または地層内の炭化水素のコーキングを抑制しなければならない。
【0063】
易動化温度、および/または熱分解温度が到達され、地層からの生成が可能とされた後、地層内の圧力が変えられて、生成された地層流体の組成を変更、および/または制御して、地層流体内の非凝縮性流体に対して凝縮性流体の割合を制御する、および/または生成される地層流体のAPI重力を制御することが可能である。例えば、圧力を低下させることは、より大きな凝縮性流体成分の生成をもたらすことが可能である。凝縮性流体成分は、より大きな割合のオレフィンを含むことが可能である。
【0064】
インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、地層内の圧力は、20°より大きいAPI重力を備えた地層流体の生成を促進するのに十分高く維持されることが可能である。地層内の増加された圧力を維持することは、インサイチュ熱処理の間に地層の沈下を抑制することが可能である。増加された圧力を維持することは、地層流体を地表で圧縮する必要を低減または除去して、回収コンジット内の流体を処理施設に移動することが可能である。
【0065】
地層の加熱された部分内の増加された圧力を維持することは、驚くことに、品質が向上され、比較的低分子量の炭化水素を大量に生成することを可能にしてもよい。生成された地層流体が選択された炭素数を越える最小量の化合物を有するように、圧力は維持されてもよい。選択された炭素数は、最大で25、最大で20、最大で12、または最大で8であってもよい。いくつかの高炭素数化合物が地層内で蒸気で取り込まれていてもよく、蒸気で地層から取り除かれてもよい。地層内で増加した圧力を維持することは、高炭素数の化合物、および/または蒸気で多重環炭化水素化合物の取り込みを抑制することが可能である。高炭素数化合物、および/または多重環炭化水素化合物は、かなりの期間、地層内で液体相で残存していてもよい。かなりの期間は、化合物が熱分解するのに十分な時間をもたらして、低炭素数化合物を形成することが可能である。
【0066】
生成坑井106から生成された地層流体は、処理施設110に収集管108を介して移動されることが可能である。地層流体は、また、熱源102から生成されることが可能である。例えば、流体は、熱源102から生成されて、熱源に隣接する地層内の圧力を制御することが可能である。熱源102から生成された流体は、収集管108にチュービングもしくは配管を介して移動されることが可能であり、または、生成された流体は、処理施設110に直接、チュービングもしくは配管を介して移動されることが可能である。処理施設110は、分離ユニット、反応ユニット、品質向上ユニット、燃料電池、タービン、貯蔵容器、および/または生成された地層流体を処理するための他のシステムおよびユニットを含んでいてもよい。処理施設は、地層から生成された炭化水素の少なくとも一部から輸送燃料を生じることが可能である。実施形態によっては、輸送燃料は、JP−8などのジェット燃料であってもよい。
【0067】
ある実施形態では、熱源、熱源の電源、生成装置、供給ライン、および/または他の熱源または生産支援装置がトンネル内に位置し、より小さな熱源、および/またはより小さな装置が、地層を処理するために使用されることを可能にする。トンネル内にそのような装置、および/または構造を位置することは、地層を処理するためのエネルギーのコストを低減し、処理プロセスからの排出を低減し、加熱システム設置を容易化する、および/または地表ベース装置を利用する炭化水素回収プロセスと比較して、オーバーバーデンに対する熱損失を低減することが可能である。トンネルは、例えば、実質的に水平のトンネル、および/または傾斜したトンネルであってもよい。
【0068】
インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、地層を加熱するために循環システムが使用される。循環システムを炭化水素含有地層のインサイチュ熱処理に使用することは、地層を処理するためのエネルギーのコストを低減する、処理プロセスからの排出を低減する、および/または加熱システムの設置を容易化する。ある実施形態では、循環システムは、閉ループ循環システムである。図2は、循環システムを使用して、地層を加熱するためのシステムの概略図を表す。システムは、地中比較的深く、広がりが比較的大きい地層内にある炭化水素を加熱するために使用されることが可能である。実施形態によっては、炭化水素は、地表より100m、200m、300m以上低くてもよい。循環システムは、また、地中深くない炭化水素を加熱するために使用されることが可能である。炭化水素は、長手方向に1000m、3000m、5000m以上まで延在する地層内にある可能性がある。循環システムの加熱器間の熱の重ね合わせが、地層の温度が少なくとも地層内の水性地層流体の沸点より高く上げられることを可能にするように、循環システムの加熱器は、隣接する加熱器に対して位置していてもよい。
【0069】
実施形態によっては、加熱器200は、第1の坑井穴を掘削し、次いで第1の坑井穴に接続する第2の坑井穴を掘削することによって地層内に形成されていてもよい。U字形状の坑井穴内に配管が位置して、U字形状の加熱器200を形成してもよい。加熱器200は、配管によって熱伝導流体循環システム202に接続される。実施形態によっては、加熱器は、三角パターン内に位置する。実施形態によっては、他の規則的パターンまたは不規則的パターンが使用される。生成坑井、および/または注入坑井が地層内に位置していてもよい。生成坑井、および/または注入坑井は、加熱器200の加熱部分に類似する長く実質的水平部分を有していてもよく、または、生成坑井、および/もしくは注入坑井は、別の形で配向されていてもよい(例えば、坑井は、垂直配向の坑井、または1つもしくは複数の傾斜した部分を含む坑井であってもよい)。
【0070】
図2に表されるように、熱伝導流体循環システム202は、熱供給204、第1の熱交換器206、第2の熱交換器208、および流体移動機210を含んでいてもよい。熱供給204は、熱伝導流体を高温に加熱する。熱供給204は、炉、太陽光集光装置、化学反応器、原子炉、燃料電池、および/または熱伝導流体に熱を供給することができる他の高温源であってもよい。熱伝導流体がガスである場合、流体移動機210は圧縮機であってもよい。熱伝導流体が液体である場合、流体移動機210はポンプであってもよい。
【0071】
熱伝導流体は、地層212から抜け出た後、第1の熱交換器206および第2の熱交換器208を介して流体移動機210に移動する。第1の熱交換器206は、地層212から抜け出た熱伝導流体と、流体移動機210から抜け出た熱伝導流体との間で熱を移動して、熱供給204に入る熱伝導流体の温度を上げ、地層212から抜け出た流体の温度を低下する。第2の熱交換器208は、さらに、熱伝導流体の温度を低下する。実施形態によっては、第2の熱交換器208は、熱伝導流体用の貯蔵タンクを含む、または貯蔵タンクである。
【0072】
熱伝導流体は、第2の熱交換器208から流体移動機210に移動する。流体移動機210は、流体移動機が高温で作動する必要がないように熱供給204の前に位置していてもよい。
【0073】
一実施形態では、熱伝導流体は二酸化炭素である。熱供給204は、約700℃から約920℃の範囲、約770℃から約870℃の範囲、または約800℃から約850℃の範囲の温度に熱伝導流体を加熱する炉である。一実施形態では、熱供給204は、約820℃の温度に熱伝導流体を加熱する。熱伝導流体は、熱供給204から加熱器200に流れる。熱は、加熱器200から加熱器に隣接する地層212に移動する。地層212から抜け出た熱伝導流体の温度は、約350℃から約580℃の範囲、約400℃から約530℃の範囲、または約450℃から約500℃の範囲であってもよい。一実施形態では、地層212から抜け出た熱伝導流体の温度は約480℃である。熱伝導流体循環システム202を形成するために使用される配管の冶金学的技術は変えられて、配管のコストを著しく低減することが可能である。熱供給204から温度が十分に低い地点まで高温鋼が使用されてもよく、その地点から第1の熱交換器206まではより費用のかからない鋼が使用されることが可能である。いくらかの異なる鋼種が使用されて、熱伝導流体循環システム202の配管を形成することが可能である。
【0074】
実施形態によっては、循環流体システムにおいて熱伝導流体として天日塩(例えば、NaNO360重量%およびKNO340重量%を含む塩)が使用される。粗塩は、約230℃の融点および約565℃の上限使用温度限界を有していてもよい。実施形態によっては、LiNO3(例えば、LiNO3約10重量%から約30重量%)が粗塩に加えられて、粗塩に対してより広い使用温度範囲および最大使用温度がわずかに低下しただけの低溶融温度の第三塩混合物を生成することが可能である。第三塩混合物の低溶融温度は、予備加熱要件を低下することが可能であり、循環システムの配管を予備加熱するための熱伝導流体として加圧水および/または加圧塩水の使用を可能としてもよい。550℃での第三塩組成物による加熱器の金属の腐食速度は、565℃での粗塩による加熱器の金属の腐食速度に相当する。表1は、粗塩および第三塩混合物に関する融点および上限を示す。第三塩混合物の水溶液は、凝固することなく水を取り除く場合に溶融塩に移行してもよく、それによって、溶融塩が水溶液としてもたらされ、および/または保存されることを可能にする。
【表1】
【0075】
熱供給204は、約560℃の温度に熱伝導流体を加熱する炉であってもよい。熱伝導流体の戻り温度は、約350℃から約450℃であってもよい。熱伝導流体循環システム202からの配管は、断熱されていてもよく、および/または外部加熱されて(heat traced)、開始を促進し、流体の流れを確実にすることが可能である。
【0076】
実施形態によっては、垂直で、傾斜した、またはL形状の坑井加熱器坑井穴が、U字形状の坑井穴の代わりに使用されてもよい(例えば、坑井穴は、第1の位置の入口および他の位置の出口を有する)。図3は、L形状の加熱器200を表す。加熱器200は、熱伝導流体循環システム202に結合されることが可能であり、入口コンジット214および出口コンジット216を含むことが可能である。熱伝導流体循環システム202は、多数の加熱器に熱伝導流体をもたらすことが可能である。熱伝導流体循環システム202からの熱伝導流体は、入口コンジット214を流下し、出口コンジット216を還流することが可能である。入口コンジット214および出口コンジット216は、オーバーバーデン218を介して断熱されていてもよい。実施形態によっては、入口コンジット214は、オーバーバーデン218および炭化水素含有層220を介して断熱されて、出入りする熱伝導流体間の不要な熱伝導を抑制する。
【0077】
実施形態によっては、オーバーバーデン218に隣接する坑井穴222の一部は、炭化水素含有層220に隣接する坑井穴の一部より大きい。オーバーバーデンに隣接するより大きな開口部を有することは、入口コンジット214および/または出口コンジット216を断熱するために使用される断熱材料の調整を可能にしてもよい。特に、熱伝導流体が、液体のままであるために加熱される必要がある溶融塩または他の流体である場合、戻り流れからオーバーバーデンへの熱損失の一部は、効率に著しく影響しない可能性がある。加熱器200に隣接する加熱されたオーバーバーデンは、かなりの時間、液体が熱伝導流体の循環を停止するべきであるとともに、熱伝導流体を液体として維持してもよい。オーバーバーデン218に対するいくらかの熱伝導ためのいくらかの許容を有することは、出口コンジット216とオーバーバーデンとの間の高価な断熱システムの必要を取り除くことが可能である。実施形態によっては、オーバーバーデン218と出口コンジット216との間で断熱セメントが使用される。
【0078】
垂直で、傾斜した、またはL形状の加熱器に関して、坑井穴は、通電されていない加熱器(例えば、設けられたが使用されていない加熱器)を調整するために必要とされるよりも長く掘削されることが可能である。通電後の加熱器の熱膨張は、加熱器の熱膨張を調整するために設計された坑井穴の余長に加熱器の一部を移動させることが可能である。L形状の加熱器に関して、坑井穴内に掘削流体および/または地層流体を残すことは、加熱器が、熱伝導流体での予熱および/または加熱の間に膨張するとともに、坑井穴により深い加熱器の移動を容易にすることを可能とする。
【0079】
垂直で、傾斜した坑井穴に関して、坑井穴は、通電されていない加熱器を調整するために必要とされるよりも深く掘削されることが可能である。加熱器が熱伝導流体で予熱および/また加熱される場合、加熱器は、坑井穴の余分な深さに膨張することが可能である。実施形態によっては、膨張スリーブが加熱器の端に取り付けられて、不安定なボアホールの場合には熱膨張のための利用可能な空間を確保することが可能である。
【0080】
ある実施形態では、循環システムは、液体を使用して地層を加熱する。液体熱伝導流体の使用は、液体熱伝導流体を加熱するために使用される熱供給の高エネルギー効率による電気的加熱またはガス加熱器と比較して、システムに関する高い全エネルギー効率を可能にする。液体熱伝導流体を加熱するために炉が使用される場合、炉の効率のため、電気的加熱または坑井穴内に位置するガスバーナーの使用と比較して、プロセスの二酸化炭素の排出量(footprint)は低減されることが可能である。液体熱伝導流体を加熱するために原子力が使用される場合、プロセスの二酸化炭素排出量は著しく低減される、または除去されることが可能である。加熱システムのための地表設備が、単純なレイアウトで一般に市販されている工業装置から形成されてもよい。単純なレイアウトで一般に市販されている装置は、システムの全面的な信頼性を増大させることが可能である。
【0081】
ある実施形態では、液体熱伝導流体は、温度が選択された温度未満である場合に凝固する可能性を有する溶融塩または他の液体である。第2の加熱システムは、熱伝導流体が液体の形態のままであり、熱伝導流体が循環システムから加熱器を介して流れることを可能にする温度であることを確実にすることが必要とされることができる。ある実施形態では、第2の加熱システムは、加熱器および/または熱伝導流体を、溶解しより高温に加熱する代わりに熱伝導流体の流動性を確実にするのに十分な温度に熱伝導流体を加熱する。第2の加熱システムは、流体循環システムのスタートアップおよび/または再スタートアップの短期間に、単に必要とされてもよい。実施形態によっては、第2の加熱システムは、加熱器から除去可能である。実施形態によっては、第2の加熱システムは、加熱器の寿命に似た期待される耐用年限を有さない。
【0082】
ある実施形態では、熱伝導流体として溶融塩が使用される。断熱された戻り貯蔵タンクは、地層から戻り溶融塩を受ける。戻り貯蔵タンク内の温度は、例えば、約350℃近くであってもよい。ポンプは、戻り貯蔵タンクから炉に溶融塩を移動させることが可能である。各ポンプは、4kg/sから30kg/sの溶融塩を移動する必要があってもよい。各炉は、溶融塩に熱をもたらすことが可能である。炉からの溶融塩の出口温度は、約550℃であってもよい。溶融塩は、炉から断熱された給送貯蔵タンクに配管を介して通ることが可能である。各給送貯蔵堰は、例えば、地層に入る50以上の配管システムに溶融塩を供給することが可能である。溶融塩は、地層を介して戻り貯蔵タンクに流れる。ある実施形態では、炉は、90%以上の効率を有する。ある実施形態では、オーバーバーデンに対する熱損失は8%以下である。
【0083】
実施形態によっては、循環システム用加熱器は、処理領域を加熱するために使用される加熱器の一部を含めて、加熱器の長さに沿った断熱材料を含む。断熱材料は、地層内への加熱器の挿入を容易にすることが可能である。処理領域を加熱するために使用される部分に隣接する断熱材料は、予備加熱の間に断熱をもたらすのに十分であってもよいが、熱伝導流体の定常状態の循環によって生成される温度で分解してもよい。実施形態によっては、断熱層は、加熱器の放射率を変更して、加熱器からの放射熱伝導を抑制する。断熱材料の分解の後に、加熱器の放射率は、処理領域に放射熱伝導を促進することが可能である。断熱材料は、熱伝導流体の溶解および流動性を確実にするのに十分な温度に、加熱器および/または加熱器内の熱伝導流体の温度を上げるために必要な時間を低減することが可能である。実施形態によっては、処理領域を加熱する加熱器の一部に隣接する断熱材料は、ポリマーコーティングを含んでいてもよい。ある実施形態では、オーバーバーデンに隣接する加熱器の一部の断熱材料は、処理領域を加熱するために使用される加熱器の一部に隣接する加熱器の断熱材料と異なる。オーバーバーデンに隣接する加熱器の断熱材料は、加熱器の耐用年限以上の期待される耐用年限を有してもよい。
【0084】
実施形態によっては、分解性断熱材料(例えば、ポリマー発泡体)は、加熱器の配置の後または配置の間に坑井穴に導入されてもよい。分解性断熱材料は、予備加熱の間に処理領域を加熱するために使用される加熱器の一部に隣接して断熱材料をもたらしてもよい。処理領域を加熱するために使用される液体熱伝導流体は、断熱層を分解し、取り除くのに十分に加熱器の温度を上げることが可能である。
【0085】
熱伝導流体として溶融塩または他の液体を使用する循環システムの実施形態によっては、加熱器は、地層内で単一のコンジットであってもよい。コンジットは、熱伝導流体の流動性を確実にするのに十分な温度に予備加熱されてもよい。実施形態によっては、第2の熱伝導流体は、コンジットを介して循環されて、コンジットおよび/またはコンジットに隣接する地層を予備加熱する。コンジットおよび/またはコンジットに隣接する地層の温度が、十分に熱い後、第2の流体は、コンジットから流されてもよく、熱伝導流体は、配管を介して循環されてもよい。
【0086】
実施形態によっては、熱伝導流体として使用される塩組成物(例えば、Li:Na:K:NO3)の水溶液が、コンジットを予備加熱するために使用される。第2の熱伝導流体の温度は、坑口の地表下の出口の温度以下であってもよい。
【0087】
実施形態によっては、第2の熱伝導流体(例えば、水)は、0℃から約95℃の範囲、または第2の熱伝導流体の沸点までの温度に加熱される。塩組成物は、循環システムの貯蔵タンクにある間に、第2の熱伝導流体に加えられてもよい。温度が上昇されるにつれて、塩の組成物および/またはシステムの圧力は調節されて、水溶液の沸騰を抑制することが可能である。コンジットが、溶融塩の流動性を確実にするのに十分な温度に予備加熱される場合、残りの水は、水溶液から取り除かれて溶融塩のみを残すことが可能である。水は、塩溶液が、循環システムの貯蔵タンクにある間に、蒸発によって取り除かれることが可能である。実施形態によっては、溶融塩溶液の温度は100℃を超えて上げられる。コンジットが、溶融塩の流動性を確実にするのに十分な温度に予備加熱される場合、残る第2の熱伝導流体(例えば、水)の実質的、またはすべてが、塩溶液から取り除かれて、溶融塩だけを残すことが可能である。実施形態によっては、蒸発プロセスの間の溶融塩溶液の温度は、100℃から250℃に及ぶ。
【0088】
インサイチュ熱処理プロセスの完了の際に、溶融塩は冷却され、水が塩に加えられて、他の水溶液を形成することが可能である。水溶液は他の処理領域に移動されてもよく、プロセスは続けられてもよい。水溶液としての第三溶融塩の使用は、溶液の移動を容易にし、地層の2つ以上の部分が同じ塩で処理されることを可能にする。
【0089】
熱伝導流体として溶融塩または他の液体を使用する循環システムの実施形態によっては、加熱器は、コンジットインコンジット構造を有していてもよい。地層を加熱するために使用される液体熱伝導流体は、加熱器を介して第1の通路を流れること可能である。第2の熱伝導流体は、予備加熱のため、および/または液体熱伝導流体の流量保証のためにコンジットインコンジット加熱器を介して第2の通路を流れることが可能である。加熱器が、加熱器を介して熱伝導流体の継続的な流れを確実にするのに十分な温度に上げられた後、第2の熱伝導流体用の通路で真空が引かれて、第1の通路から第2の通路への熱伝導を抑制することが可能である。実施形態によっては、第2の熱伝導流体用の通路は、断熱材料で満たされる、および/または別の方法で閉鎖される。コンジットインコンジット加熱器のコンジット内の通路は、内側コンジット、および内側コンジットと外側コンジットとの間の環状領域を含んでいてもよい。実施形態によっては、1つまたは複数の流れ切り換え装置が使用されて、内側コンジットから環状領域に、および/または逆の場合も同様にコンジットインコンジット加熱器内の流れを変更する。
【0090】
図4は、処理領域300に隣接する熱伝導循環加熱システム用のコンジットインコンジット加熱器200の一実施形態の断面図を示す。加熱器200は、坑井穴222内に位置していてもよい。加熱器200は、外側コンジット302および内側コンジット302を含んでいてもよい。加熱器200の通常動作の間に、液体熱伝導流体は、外側コンジット302と内側コンジット302との間の環状領域306を流れることが可能である。通常動作の間に、内側コンジット302を流れる流体は必要でなくなる。
【0091】
予備加熱の間に、および/または流量保証については、第2の熱伝導流体は、内側コンジット304を流れることが可能である。第2の流体は、空気、二酸化炭素、排気ガス、および/または天然もしくは合成潤滑油(例えば、Dow/Therm A、SylthermまたはTherminol59)、室温溶融塩(例えば、NaCl2−SrCl2、VCl4、SnCl4またはTiCl4)、高圧液体水、蒸気または室温溶融金属合金(例えば、K−Na共晶混合物またはGa−In−Sn共晶混合物)であってもよいが、それらに限定されない。実施形態によっては、外側コンジット302は、地層を加熱するために使用される熱伝導流体が環状領域に導入される前に、環状領域306(例えば、二酸化炭素または排気ガス)を流れる第2の熱伝導流体によって加熱される。排気ガスまたは他の高温流体が使用される場合、他の熱伝導流体(例えば、水または蒸気)は加熱器を介して通されて、液体熱伝導流体の上方使用温度限界より下に温度を低減することが可能である。液体熱伝導流体が加熱器へ導入される場合、第2の熱伝導流体は環状領域から移動されることが可能である。内側コンジット304内の第2の熱伝導流体は、予備加熱の間に外側コンジット302を予備加熱するために使用される第2の流体と同じ流体または異なる流体であってもよい。2つの異なる第2の熱伝導流体の使用は、加熱器200における完全性の問題の識別に有用であってもよい。溶融塩の使用が始められる前に、いずれの完全性の問題も識別され直されることが可能である。
【0092】
実施形態によっては、予備加熱の間に環状領域306を流れる第2の熱伝導流体は、通常動作の間に使用される塩の水性混合物である。塩濃度は、水性混合物の沸点より下のままの間に、周期的に上昇させて、温度を上昇させることが可能である。水性混合物が使用されて、溶融塩が環状領域306内を流れることを可能にするのに十分な温度に外側コンジット302の温度を上げることが可能である。温度が到達されると、水性混合物内の残りの水は、混合物から蒸発して、溶融塩を残すことが可能である。溶融塩が使用されて、処理領域300を加熱することが可能である。
【0093】
実施形態によっては、内側コンジット304は、炭素鋼などの比較的安価な材料から製作されてもよい。実施形態によっては、内側コンジット304は、熱処理プロセスの初期段階を通じて耐える材料から製作されてもよい。外側コンジット302は、溶融塩および地層流体による腐食に強い材料(例えば、P91鋼)から製作されてもよい。
【0094】
液体熱伝導流体の所定の質量流量に関して、外側コンジット302と内側コンジット304との間の環状領域306内を流れる液体熱伝導流体を使用して処理領域を加熱することは、単一のコンジットを介して液体熱伝導流体を流すことに優るある種の利点を有することが可能である。内側コンジット304を介して第2の熱伝導流体を流すことは、加熱器200を予備加熱し、液体熱伝導流体が最初に使用される場合、および/または循環の停止後に流れを再スタートする必要がある場合、流れを確実にすることが可能である。外側コンジット302の大きな外面積は、地層への熱伝導のための大きな地表積をもたらし、一方、循環システムに必要とされる液体熱伝導流体の量は、内側コンジット304の存在のために低減される。循環される液体熱伝導流体は、同じ質量流量のための液体熱伝導流体の速度の増大により処理領域により良好な動力注入速度の分布をもたらすことが可能である。加熱器の信頼性も改善されることが可能である。
【0095】
実施形態によっては、熱伝導流体(溶融塩)は濃くなってもよく、外側コンジット302および/または内側コンジット304を介しての熱伝導流体の流れは遅くされ、および/または損なわれる。内側コンジット304の様々な部分を選択的に加熱することは、加熱器200の様々な部品に十分な熱をもたらして、加熱器を介して熱伝導流体の流れを増大させることが可能である。加熱器200の一部は、強磁性体、例えば、絶縁導電体を含み、電流が加熱器の選択された一部を通されることを可能にする。内側コンジット304を抵抗加熱することは、外側コンジット302および/または内側コンジット304内の高密度化熱伝導流体に十分な熱を移動して、コンジットを介して、溶融塩の加熱に先立って流れに対して増大された流れが得られるように、熱伝導流体の粘性を低下させる。時間依存性電流の使用は、熱伝導流体を介して電流を通すことなく、内側コンジットに電流が通されることを可能にする。
【0096】
図5は、加熱器内の高密度化または固定化された熱伝導流体(例えば、溶融塩)の流れを再スタートするために加熱器200の様々な部分を加熱するための概略を表す。ある実施形態では、内側コンジット304および/または外側コンジット302の一部は、断熱材料によって囲まれた強磁性体を含む。したがって、内側コンジット304および/または外側コンジット302のこれらの一部は、絶縁導電体308であってもよい。絶縁導電体308は、温度制限加熱器または表皮効果加熱器として作動してもよい。絶縁導電体308の表皮効果のために、絶縁導電体にもたらされる電流は、内側コンジット304および/または外側コンジット302に閉じ込められたままであり、コンジット内に位置する熱伝導流体を流れない。
【0097】
ある実施形態では、絶縁導電体308は、内側コンジット304の選択された長さ(例えば、内側コンジットの全長または内側コンジットのオーバーバーデン部分のみ)に沿って位置する。内側コンジット304に電気を印加することは、絶縁導電体308内に熱を発生する。発生された熱は、内側コンジットの選択された長さに沿って高密度化または固定化された熱伝導流体を加熱することが可能である。発生された熱は、内側コンジットの内部、および内側コンジットと外側コンジット302との間の環帯内の両方で、熱伝導流体を加熱することが可能である。ある実施形態では、内側コンジット304のみは、内側コンジットのオーバーバーデン部分内に位置する絶縁導電体308を含む。これらの絶縁導電体は、内側コンジット304のオーバーバーデン部分内で熱を選択的に発生する。内側コンジット304のオーバーバーデン部分を選択的に加熱することは、高密度化された熱伝導流体に熱を移動し、内側コンジットのオーバーバーデン部分内で流れを再スタートすることが可能である。そのような選択的加熱は、加熱器寿命を向上させ、熱伝導流体の高密度化または固定化に遭遇する可能性が最も高い領域において熱を集中させることによって電気的加熱コストを最小限することが可能である。
【0098】
ある実施形態では、絶縁導電体308は、外側コンジット302(例えば、外側コンジットのオーバーバーデン部分)の選択された長さに沿って位置する。外側コンジット302に電気を印加することは、絶縁導電体308内で熱を発生する。発生された熱は、内側コンジット304と外側コンジット302との間の環帯のオーバーバーデン部分を選択的に加熱することが可能である。十分な熱が外側コンジット302から移動されて、高密度化された熱伝導流体の粘性を低下させ、環帯内の溶融塩の損なわれていない流れを可能とする。
【0099】
ある実施形態では、コンジットインコンジット加熱器構造を有することは、流れが処理領域に隣接する場合の外側コンジットと内側コンジットとの間の環状領域を通る流れから、流れがオーバーバーデンに隣接する場合の内側コンジットを介しての流れに、加熱器内の熱伝導流体の流れを変更する流れ切り換え装置が使用されることを可能にする。図6は、流体循環システム202、202’と共に使用されて、処理領域300を加熱するコンジットインコンジット加熱器200の概略図を表す。ある実施形態では、加熱器200は、外側コンジット302、内側コンジット304、流れ切り換え装置310を含む。流体循環システム202、202’は、坑口311に加熱された液体熱伝導流体をもたらす。液体熱伝導流体の流れの方向は、矢印312によって示される。
【0100】
流体循環システム202からの熱伝導流体は、坑口311を介して内側コンジット304に通る。熱伝導流体は、流れ切り換え装置310を通り、それは、内側コンジット304から、外側コンジット302と内側コンジットとの間の環状領域に流れを変更する。熱伝導流体は、次いで、処理領域300内の加熱器200を流れる。熱伝導流体からの熱伝導は、処理領域300に熱をもたらす。熱伝導流体は、次いで、第2の流れ切り換え装置310’を通り、それは、環状領域から内側コンジット304に流れを変更する。熱伝導流体は、第2の坑口311’を介して地層から取り除かれ、流体循環システム202’にもたらされる。流体循環システム202’からの加熱された熱伝導流体は、流体循環システム202に加熱器200’を介して戻る。
【0101】
流体が処理領域300に隣接する間に、環状領域を介して流体を通すために流れ切り換え装置310を使用することは、外側コンジット302の大きな熱伝導面積に部分的に起因する処理領域への増大される熱伝導を促進する。オーバーバーデン218に隣接する場合に内側コンジットを介して流体を通すために流れ切り換え装置310を使用することは、オーバーバーデンに対する熱損失を低減することが可能である。さらに、加熱器200は、オーバーバーデン218に隣接して断熱されて、地層に対する熱損失を低減することが可能である。
【0102】
図7は、オーバーバーデン218に隣接するコンジットインコンジット加熱器200の一実施形態の断面図を表す。断熱材料314は、外側コンジット302と内側コンジット304との間に位置していてもよい。液体熱伝導流体は、内側コンジット304の中心を流れることが可能である。断熱材料314は、高温(例えば、500℃を超える温度)で放熱を抑制するとともに、予備加熱および/または加熱の流量保証段階の間に、第2の熱伝導流体の流れを可能にする高多孔性断熱層であってもよい。通常動作の間に、外側コンジット302と、オーバーバーデン218に隣接する内側コンジット304との間の環状領域を介した流体の流れは、停止または抑制されることが可能である。
【0103】
断熱スリーブ315は、外側コンジット302のまわりに位置していてもよい。U字形状の坑井穴の各側の断熱スリーブが、加熱器の重量を支持することができるように、システムが加熱されていない場合、U字形状の加熱器の各側の断熱スリーブ315は、長い長さにわたって外側コンジット302にしっかりと結合されることが可能である。断熱スリーブ315は、加熱器200が持ち上げられることを可能にする構造部材である外側部材を含み、加熱器の熱膨張を調整することが可能である。ケーシング317は、断熱スリーブ315を囲んでいてもよい。断熱セメント319は、ケーシング317をオーバーバーデン218に結合することが可能である。断熱セメント319は、伝導熱損失を低減する低熱伝導率セメントであってもよい。例えば、断熱セメント319は、蛭石/セメント骨材であってもよい。非反応性ガスは、断熱スリーブ315とケーシング317との間のギャップ321に導入されて、地層流体が坑井穴内で上昇することを抑制する、および/または断熱ガスブランケットをもたらすことができる。
【0104】
図8は、地層内に位置したコンジットインコンジット加熱器(例えば、図6で表された加熱器)に液体熱伝導流体をもたらす循環システム202の一実施形態の概略を表す。循環システム202は、熱供給204、圧縮機316、熱交換器318、排気システム320、液体貯蔵タンク322、流体移動機210(例えば、ポンプ)、供給マニホールド324、戻りマニホールド326、および第2の熱伝導流体循環システム328を含んでいてもよい。ある実施形態では、熱供給204は炉である。熱供給204用の燃料は、燃料ライン330を介して供給されることが可能である。制御バルブ332は、温度監視装置334によって測定されるような熱い熱伝導流体の温度に基づいて熱供給204に供給される燃料の量を調整することが可能である。
【0105】
熱供給204用の酸化剤は、酸化剤ライン336を介して供給されることが可能である。熱供給204からの排気は、排気システム320に熱交換器318を介して通ることが可能である。圧縮機316からの酸化剤は、熱供給204からの排気によって加熱される熱交換器318を通ることが可能である。
【0106】
実施形態によっては、バルブ338は、予備加熱の間に、および/または加熱器への流体の循環の始動の間に開かれて、加熱流体で第2の熱伝導流体循環システム328を供給することが可能である。実施形態によっては、排気ガスは、第2の熱伝導流体循環システム328によって加熱器を介して循環される。実施形態によっては、排気ガスは、第2の熱伝導流体循環システム328の1つまたは複数の熱交換器を通って、加熱器を介して循環される流体を加熱する。
【0107】
予備加熱の間に、第2の熱伝導流体循環システム328は、加熱器の内側コンジットおよび/または内側コンジットと外側コンジットとの間の環状領域に第2の熱伝導流体をもたらすことが可能である。ライン340は、加熱器の内側コンジットに流体をもたらす供給マニホールド324の一部に第2の熱伝導流体をもたらすことが可能である。ライン342は、加熱器の内側コンジットと外側コンジットとの間の環状領域に流体をもたらす供給マニホールド324の一部に第2の熱伝導流体をもたらすことが可能である。ライン344は、加熱器の内側コンジットから流体を戻す戻りマニホールド326の一部から第2の熱伝導流体を戻すことが可能である。ライン346は、加熱器の環状領域から流体を戻す戻りマニホールド326の一部から第2の熱伝導流体を戻すことが可能である。第2の熱伝導流体循環システム328のバルブ348は、供給マニホールド324および/または戻りマニホールド326に、または供給マニホールド324および/または戻りマニホールド326からの第2の熱伝導の流れを可能とする、または停止することが可能である。予備加熱の間に、バルブ348はすべて開いていてもよい。加熱の流量保証の段階の間に、ライン340用およびライン344用のバルブ348は閉まっていてもよく、ライン342用およびライン346用のバルブ348は開いていてもよい。熱供給204からの液体熱伝導流体は、加熱の流量保証の段階の間に、加熱器の内側コンジットに流体をもたらす供給マニホールド324の一部に供給されることができる。液体熱伝導流体は、加熱器の内側コンジットから流体を戻す戻りマニホールド326の一部から液体貯蔵タンク322に戻ることが可能である。通常動作の間に、バルブ348はすべて閉まっていてもよい。
【0108】
実施形態によっては、第2の熱伝導流体循環システム328は、モバイルシステムである。一旦加熱器を介した熱伝導流体の正常な流れが確立されれば、可動性の第2の熱伝導流体循環システム328は、移動され、開始されていない他の循環システムに取り付けられることが可能である。
【0109】
通常動作の間に、液体貯蔵タンク322は、戻りマニホールド326から熱伝導流体を受けることが可能である。液体貯蔵タンク322は、断熱および外部加熱されることが可能である。外部加熱は、液体貯蔵タンク322内でコイルを介して蒸気を循環させる蒸気循環システム350を含んでいてもよい。コイルを介して通された蒸気は、所望の温度で、または所望の温度範囲内で、液体貯蔵タンク322内で熱伝導流体を維持する。
【0110】
流体移動機210は、液体貯蔵タンク322から熱供給204に液体熱伝導流体を移動させることが可能である。実施形態によっては、流体移動機210は、液体貯蔵タンク322内に位置する水中ポンプである。貯蔵タンク内に流体移動機210を有することは、ポンプの使用温度範囲内の温度でポンプを正しく保存することが可能である。また、熱伝導流体は、ポンプ用の潤滑剤として機能することが可能である。1つまたは複数の余分のポンプシステムが、液体貯蔵タンク322内に位置していてもよい。主要ポンプシステムが中断する、または補修される必要がある場合、余分のポンプシステムが使用されることが可能である。
【0111】
熱供給204の始動の間に、バルブ352は、液体熱伝導流体を液体貯蔵タンクに導くことが可能である。地層内での加熱器の予備加熱が完了された後、バルブ352は、液体熱伝導流体を、予備加熱された加熱器の内側コンジットに液体熱伝導流体をもたらす供給マニホールド324の一部に導くように再構成されることが可能である。予備加熱された戻りコンジットの内側コンジットからの戻り液体熱伝導流体は、地層を通った熱伝導流体を受け、熱伝導流体を液体貯蔵タンク322に導く戻りマニホールド326の一部を通ることが可能である。
【0112】
流体循環システム202を使用し始めるために、液体貯蔵タンク322は、蒸気循環システム350を使用して加熱されることが可能である。熱伝導流体は、液体貯蔵タンク322に加えられることが可能である。熱伝導流体は、液体貯蔵タンク322内で溶解する固体粒子として加えられることが可能であり、または、液体熱伝導流体は、液体貯蔵タンクに加えられることが可能である。熱供給204は開始されることが可能であり、流体移動機210は、液体貯蔵タンク322から熱供給に、および戻って熱伝導流体を循環させるために使用されることが可能である。第2の熱伝導流体循環システム328は、供給マニホールド324および戻りマニホールド326に結合された地層内で加熱器を加熱するために使用されることが可能である。加熱器の内側コンジットに給送する供給マニホールド324の一部への第2の熱伝導流体の供給が停止されることが可能である。加熱器の内側コンジットから熱伝導流体を受ける戻りマニホールドの一部からの第2の熱伝導流体の戻りも停止されることが可能である。熱供給204からの熱伝導流体は、次いで加熱器の内側コンジットに導かれることが可能である。
【0113】
熱伝導流体は、内側コンジットから内側コンジットと外側コンジットとの間の環状領域に流体の流れを変更する流れ切り換え装置に加熱器の内側コンジットを流れることが可能である。熱伝導流体は、次いで、内側コンジットへ戻る流れを変更する流れ切り換え装置を通ることが可能である。加熱器に結合されたバルブは、流体循環システムに加熱器のすべてに対して熱伝導流体を一度に供給する代わりに、個々の加熱器への熱伝導流体の流れが連続して開始されることを可能にする。
【0114】
戻りマニホールド326は、第2の流体循環システムから供給される地層内の加熱器を通った熱伝導流体を受ける。戻りマニホールド326内の熱伝導流体は、液体貯蔵タンク322に導かれることが可能である。
【0115】
初期加熱の間に、第2の熱伝導流体循環システム328は、熱供給204から供給された熱伝導流体を受けない加熱器の一部を介して第2の熱伝導流体を循環させ続けることが可能である。実施形態によっては、第2の熱伝導流体循環システム328は、熱供給204から供給される熱伝導流体の流れと同じ方向に第2の熱伝導流体を導く。実施形態によっては、第2の熱伝導流体循環システム328は、熱供給204から供給される熱伝導流体の流れと反対方向に第2の熱伝導流体を導く。第2の熱伝導流体は、熱供給204から供給される熱伝導流体の連続する流れを確実にすることが可能である。地層から離れる第2の熱伝導流体が、熱伝導流体が熱供給204から供給される状態で、熱伝導により地層に供給される第2の熱伝導流体より熱い場合、第2の熱伝導流体の流れが停止されることが可能である。実施形態によっては、他の条件が選択された期間の後に満足される場合に、第2の熱伝導流体の流れは停止されることが可能である。
【0116】
実施例
非限定的な実施例が以下に説明される。
【0117】
溶解塩循環システムシミュレーション
循環システムにおいて溶解塩を使用して油頁岩地層を加熱するシミュレーションが実行された。坑井間隔は30フィート(約9.14m)であり、処理領域は、配管の実質的水平部分を囲む地層の5000フィート(約1.5km)であった。オーバーバーデンの厚さは、984フィート(約300m)であった。地層内の配管は、外部コンジット内に位置した内部コンジットを含む。処理領域に隣接して、外部コンジットは、4インチ(約10.2cm)のスケジュール80配管であり、溶解塩は、外部コンジットと内部コンジットとの間の環状領域を流れる。地層のオーバーバーデンを介して、溶解塩は内部コンジットを流れる。配管内の第1の流体切り換え装置は、内部コンジットから処理領域前の環状領域に流れを変更し、配管内の第2の流体切り換え装置は、環状領域から処理領域後の内部コンジットに流れを変更する。
【0118】
図9は、異なる質量流量または異なる入口温度で、340℃の目標貯留層温度に達する時間を表す。曲線354は、550℃の入口溶解塩温度および6kg/sの質量流量の場合を表す。目標温度に達する時間は、1405日であった。曲線356は、550℃の入口溶解塩温度および12kg/sの質量流量の場合を表す。目標温度に達する時間は1185日であった。曲線358は、700℃の入口溶解塩温度および12kg/sの質量流量の場合を表す。目標温度に達する時間は745日であった。
【0119】
図10は、入口溶解塩温度が550℃であった場合の時間に対する処理領域端での溶解塩温度および動力注入速度を表す。曲線360は、質量流量が6kg/sであった場合の処理領域端での溶解塩温度を表す。曲線362は、質量流量が12kg/sであった場合の処理領域端での溶解塩温度を表す。曲線364は、質量流量が6kg/sであった場合の地層(W/ft)への動力注入速度を表す。曲線366は、質量流量が12kg/sであった場合の地層(W/ft)への動力注入速度を表す。円で囲まれたデータ点は、加熱がいつ停止されたかを示す。
【0120】
図11および図12は、2つの異なる質量流量に関するカナダのGrosmont地層内に位置した加熱器8000フィート(約2.4km)の加熱部分のシミュレーション結果を表す。図11は、18kg/sの質量流量の結果を表す。曲線368は、約540℃の加熱器入口温度を表す。曲線370は加熱器出口温度を表す。曲線372は加熱された体積平均気温を表す。曲線374は地層への動力注入速度を表す。図12は、12kg/sの質量流量の結果を表す。曲線376は、約540℃の加熱器入口温度を表す。曲線378は加熱器出口温度を表す。曲線380は加熱された体積平均気温を表す。曲線382は地層への動力注入速度を表す。
【0121】
これらの実施例は、地層内の複数の加熱器、および循環システムに結合された地層内の複数の加熱器に熱い熱伝導流体をもたらすように構成された少なくとも1つの流体循環システムを含むシステムを使用する方法を明示する。加熱器の少なくとも1つは、第1のコンジット、第1のコンジット内に位置した第2のコンジット、および第1の流れ切り換え装置を含む。流れ切り換え装置は、第2のコンジットを流れる流体が第1のコンジットと第2のコンジットとの間の環状領域を流れることを可能にするように構成されている。
【0122】
本発明の種々の態様のさらなる変形および別の実施形態は、この説明を考慮して当業者に明らかとすることが可能である。従って、この説明は、例示としてのみ解釈され、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示するためのものである。当然のことながら、本明細書に示され、記載された本発明の形態は、現在、好ましい実施形態になる。要素および材料は、本明細書で例証され、説明されたものに代用されてもよく、部品およびプロセスは、逆にされてもよく、本発明の特定の特徴が独立して利用されてもよく、すべては、本発明のこの説明の利点を有した後、当業者に明らかとなる。次の請求の範囲に記載されるように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された要素において変更が行われることが可能である。さらに、当然のことながら、本明細書に独立して記載された特徴は、ある実施形態では、組み合わせられることが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、炭化水素含有地層などの様々な地表下地層からの炭化水素、水素、および/または他の生成物の生成のための方法およびシステムに関する。特に、ある実施形態は、インサイチュ転化プロセスの間に、地層の一部を加熱するための閉ループ循環システムを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
地下にある地層から得られる炭化水素は、エネルギー資源として、原材料として、消費財として数多く使用されている。入手可能な炭化水素資源の枯渇に対する懸念、および生成された炭化水素の全体特性を低下することに対する懸念は、入手可能な炭化水素資源のより効率的な回収、処理、および/または使用のためのプロセスの開発をもたらした。インサイチュプロセスが使用されて、地下にある地層から炭化水素材料を取り除くことが可能である。地下にある地層内の炭化水素材料の化学的性質、および/または物理的性質が変更されて、炭化水素材料が地下にある地層からより容易に取り除かれることを可能にする必要がある。化学的変化および物理的変化は、地層内の炭化水素材料の除去可能な流体、組成変化、可溶性変化、密度変化、相変化、および/または粘性変化を引き起こすインサイチュ反応を含んでいてもよい。流体は、ガス、液体、乳濁液、スラリー、および/または液体の流れに類似する流れ特性を有する固体粒子の流れであってもよいが、それらに限定されない。
【0003】
様々なタイプの坑井または坑井穴が、インサイチュ熱処理プロセスを使用して、炭化水素含有地層を処理するために使用されることが可能である。実施形態によっては、垂直で、および/または実質的に垂直の坑井が地層を処理するために使用される。実施形態によっては、水平または実質的に水平の坑井(J形状の坑井、および/またはL形状の坑井)、および/またはU字形状の坑井が、地層を処理するために使用される。実施形態によっては、水平の坑井と垂直の坑井との組み合わせ、および/または他の組み合わせが、地層を処理するために使用される。ある実施形態では、坑井は、地層のオーバーバーデンを介して、地層の炭化水素含有層まで延在する。状況によっては、坑井内の熱は、オーバーバーデンに失われる。状況によっては、水平の坑井穴またはU字形状の坑井穴内で、加熱器、および/または生成装置を支持するために使用される地表基礎構造およびオーバーバーデン基礎構造は、サイズが大きく、および/または多数である。
【0004】
Sandbergらの米国特許第7,575,052号明細書は、1つまたは複数の処理領域を加熱するために循環システムを利用するインサイチュ熱処理プロセスを記載している。循環システムは、地層に熱を移動するために、地層内の配管を通る加熱された液体熱伝導流体を使用することが可能である。
【0005】
Vinegarらの米国特許出願公開第2008−0135254号明細書は、1つまたは複数の処理領域を加熱するために循環システムを利用するインサイチュ熱処理プロセスのためのシステムおよび方法を記載している。循環システムは、地層に熱を移動するために地層内の配管を通る加熱された液体熱伝導流体を使用する。実施形態によっては、配管は、少なくとも2つの坑井穴内に位置する。
【0006】
Nguyenらの米国特許出願公開第2009−0095476号明細書は、地表下地層用の加熱システムが、地表下地層内の開口部内に位置するコンジットを含むことを記載している。絶縁導電体は、コンジット内に位置する。材料は、絶縁導電体の一部とコンジットの一部との間のコンジット内にある。材料は、塩であってもよい。材料は、加熱システムの使用温度で流体である。熱は、絶縁導電体から流体に、流体からコンジットに、およびコンジットから地表下地層に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,575,052号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0135254号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0095476号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
炭化水素含有地層から、炭化水素、水素、および/または他の生成物を経済的に生成する方法およびシステムを開発するためにかなりの努力があった。しかしながら、現在、炭化水素、水素、および/または他の生成物が経済的に生成されることができない、さらに多くの炭化水素含有地層がある。地層を処理するためのエネルギーのコストを低減する、処理プロセスからの排出を低減する、加熱システム設置を容易化する、および/または地表走行装置を利用する炭化水素回収プロセスと比較してオーバーバーデンに対する熱損失を低減する、改善された方法およびシステムの必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載された実施形態は、概して、地表下地層を処理するためのシステムおよび方法に関する。ある実施形態では、本発明は、地表下地層を処理する1つまたは複数のシステムおよび1つまたは複数の方法を提供する。
【0010】
本発明は、実施形態によっては、地表下地層を加熱する方法であって、第1の位置でコンジットインコンジット加熱器の第1の通路に溶解塩を導入することと、第2の位置に地層内のコンジットインコンジット加熱器を介して溶解塩を通し、コンジットインコンジット加熱器を介して溶解塩の通過の間に溶解塩から処理領域に熱が移動することと、第1の位置から間隔をあけて配置された第2の位置でコンジットインコンジット加熱器から溶解塩を取り除くこととを含む、方法を提供する。
【0011】
本発明は、実施形態によっては、地表下地層を加熱する方法であって、加熱器の第1の通路に第2の熱伝導流体を導入して、加熱器を予備加熱することと、加熱器の第2の通路に第1の熱伝導流体を導入することと、加熱器の温度が第1の熱伝導流体の流動性を確実にするのに十分となった後、第1の通路への第2の熱伝導流体の流れを取り除くまたは低減することとを含む、方法を提供する。
【0012】
本発明は、実施形態によっては、地表下地層を加熱するためのシステムであって、地層内の複数の加熱器に熱い熱伝導流体をもたらすように構成された少なくとも1つの流体循環システムと、循環システムに結合された地層内の複数の加熱器とを含み、加熱器の少なくとも1つは、第1のコンジットと、第1のコンジット内に位置する第2のコンジットと、第2のコンジットを流れる流体が第1のコンジットと第2のコンジットとの間の環状領域を流れることを可能とするように構成された第1の流れ切り換え装置とを含む、システムを提供する。
【0013】
本発明は、実施形態によっては、地表下地層を加熱する方法であって、地表下地層内に位置した加熱器を介して第1の熱伝導流体を循環させて、加熱器内の第2の熱伝導流体の流動性を確実にする温度に加熱器の温度を上げることと、加熱器を介しての第1の熱伝導流体の循環を停止することと、地表下地層内に位置した加熱器を介して第2の熱伝導流体を循環させて、加熱器に隣接する熱処理領域の温度を上げることとを含む、方法を提供する。
【0014】
さらなる実施形態では、ある実施形態からの特徴が、他の実施形態からの特徴と組み合わせられてもよい。例えば、1つの実施形態からの特徴が、他の実施形態のうちのいずれかからの特徴と組み合わせられてもよい。
【0015】
さらなる実施形態では、地表下地層を処理することは、本明細書に記載された方法、システム、加熱器のうちのいずれかを使用して行われる。
【0016】
さらなる実施形態では、さらなる特徴が、本明細書に記載されたある実施形態に加えられてもよい。
【0017】
本発明の利点は、次の詳細な説明を検討し、添付図面を参照して当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】炭化水素含有地層を処理するためのインサイチュ熱処理システムの一部の実施形態の概略図を示す。
【図2】地層の一部を加熱するための熱伝導流体循環システムの実施形態の概略図を表す。
【図3】地層の一部を加熱するための熱伝導流体循環システムとともに使用するための、L形状の加熱器の実施形態の概略図を表す。
【図4】処理領域に隣接する熱伝導循環加熱システム用のコンジットインコンジット加熱器の実施形態の端面図の説明を表す。
【図5】加熱器内の熱伝導流体の流れを再スタートするための加熱器の様々な部分を加熱するための実施形態の図を表す。
【図6】地層内に位置する流動循環加熱システムのコンジットインコンジット加熱器の実施形態の概略を表す。
【図7】オーバーバーデンに隣接するコンジットインコンジット加熱器の実施形態の断面図を表す。
【図8】液体熱伝導流体用の循環システムの実施形態の概略図を表す。
【図9】コンジットインコンジット加熱器を介して循環される溶解塩を使用して、地層を加熱するための日に対する平均地層温度(℃)を表す。
【図10】時間(日)に対する溶解塩温度(℃)および動力注入速度(W/ft)を表す。
【図11】18kg/sの質量流量で8000フィートの加熱長さを備えた加熱器を介して循環される溶解塩を使用して、地層を加熱するための時間(日)に対する温度(℃)および動力注入速度(W/ft)を表す。
【図12】12kg/sの質量流量で8000フィートの加熱長さを備えた加熱器を介して循環される溶解塩を使用して、地層を加熱するための時間(日)に対する温度(℃)および動力注入速度(W/ft)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、様々な変形および別の形態の影響を受けやすい一方、その具体的な実施形態は、図面において一例として示され、本明細書に詳細に説明される。図面は縮尺どおりではない。しかしながら、図面および詳細な説明は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図しないが、それどころか、その意図は、添付の請求項によって定義されるように、本発明の精神および範囲以内にある変形、均等および代替物をすべてカバーすることであることを理解するべきである。
【0020】
次の説明は、概して、地層内の炭化水素を処理するためのシステムおよび方法に関する。そのような地層は、炭化水素生成物、水素および他の生成物を産出するように処理されることが可能である。
【0021】
「API重力」は、15.5℃(60°F)でのAPI重力を指す。API重力は、ASTM法D6822またはASTM法D1298によって決まる。
【0022】
「流体圧力」は、地層内の流体によって発生される圧力である。「地盤圧力」(「地盤応力」と称されることもある)は、覆っている岩盤の単位面積当たりの重量に等しい地層内の圧力である。「静水圧」は、水柱によって及ぼされる地層内の圧力である。
【0023】
「地層」は、1つまたは複数の炭化水素含有層、1つまたは複数の非炭化水素層、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデン(underbarden)を含む。「炭化水素層」は、炭化水素を含有する地層内の層を指す。炭化水素層は、非炭化水素材料および炭化水素材料を含んでいてもよい。「オーバーバーデン」、および/または「アンダーバーデン」は、1つまたは複数の異なる種類の不浸透性材料を含む。例えば、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンは、岩、頁岩、泥岩または湿性/堅固な炭酸塩を含んでいてもよい。インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンは、比較的不浸透性であり、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンの炭化水素含有層の著しい特性変化をもたらすインサイチュ熱処理プロセスの間に温度にさらされない、1つの炭化水素含有層または複数の炭化水素含有層を含んでいてもよい。例えば、アンダーバーデンは、頁岩または泥岩を含んでいてもよいが、アンダーバーデンは、インサイチュ熱処理プロセスの間に熱分解温度に加熱されなくてもよい。ある場合には、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンが多少浸透性であってもよい。
【0024】
「地層流体」は、地層内に存在する流体を指し、熱分解流体、合成ガス、易動化炭化水素および水(蒸気)を含んでいてもよい。地層流体は、非炭化水素流体のみならず炭化水素流体も含んでいてもよい。用語「易動化流体」は、地層の熱処理の結果、流れることができる炭化水素含有地層内の流体を指す。「生成された流体」は、地層から取り除かれる流体を指す。
【0025】
「熱源」は、伝導熱伝導、および/または放射熱伝導によって、地層の少なくとも一部に熱を実質的に供給するための任意のシステムである。例えば、熱源は、導電材料であってもよく、および/または絶縁導電体、細長い部材、および/またはコンジット内に配置される導体などの電気加熱器を含む。熱源は、また、地層外、または地層内で燃料を燃焼することによって熱を発生するシステムを含んでいてもよい。システムは、地表バーナー、ダウンホールガスバーナー、無炎分配型燃焼器、および自然分配型燃焼器であってもよい。実施形態によっては、1つまたは複数の熱源にもたらされる、または1つまたは複数の熱源で発生される熱は、他のエネルギー源によって供給されてもよい。他のエネルギー源は、地層を直接加熱してもよく、または、エネルギーは、地層を直接または間接的に加熱する移動媒体に適用されてもよい。当然のことながら、地層に熱を加えている1つまたは複数の熱源は、異なるエネルギー源を使用してもよい。したがって、例えば、所定の地層に関して、熱源によっては、導電材料、電気抵抗加熱器から熱を供給してもよく、熱源によっては、燃焼から熱をもたらしてもよく、熱源によっては、1つまたは複数の他のエネルギー源(例えば、化学反応、太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマス、または他の再生可能エネルギー源)から熱をもたらしてもよい。化学反応は、発熱反応(例えば、酸化反応)を含んでいてもよい。熱源は、また、導電材料、および/または加熱器の坑井などの、加熱位置に隣接、および/または囲むゾーンに熱をもたらす加熱器を含んでいてもよい。
【0026】
「加熱器」は、坑井内または坑井穴領域近くで熱を発生するための任意のシステムまたは熱源である。加熱器は、電気加熱器、バーナー、地層内の材料もしくは地層から生成される材料と反応する燃焼器、および/またはそれらの組み合わせであってもよいが、それらに限定されない。
【0027】
「重炭化水素」は、粘性炭化水素流体である。重炭化水素は、重油、タール、および/またはアスファルトなどの高粘性炭化水素流体を含んでいてもよい。重炭化水素は、炭素および水素のほかに、より低濃度の硫黄、酸素および窒素を含んでいてもよい。さらなる元素も、重炭化水素中に微量存在していてもよい。重炭化水素は、API重力によって分類されてもよい。重炭化水素は、一般的に、約20°未満のAPI重力を有する。重油は、例えば、一般的に、約10から20°のAPI重力を有し、一方、タールは、一般的に、約10°未満のAPI重力を有する。重炭化水素の粘性は、一般的に、15℃で約100センチポアズより大きい。重炭化水素は、芳香族化合物または他の複合環状炭化水素を含んでいてもよい。
【0028】
重炭化水素は、比較的浸透性の地層で見られてもよい。比較的浸透性の地層は、例えば、砂または炭酸塩に取り込まれた重炭化水素を含んでいてもよい。「比較的浸透性」は、地層またはその一部に対して10ミリダルシー以上(例えば、10または100ミリダルシー)の平均浸透性として定義される。「比較的低い浸透性」は、地層またはその一部に対して約10ミリダルシー未満の平均浸透性として定義される。1ダルシーは、約0.99平方マイクロメートルに等しい。不浸透性層は、一般的に、約0.1未満のミリダルシーの浸透性を有する。
【0029】
重炭化水素を含むある種の地層は、また、天然鉱ろうまたは天然アスファルタイトを含むが、それらに限定されない。「天然鉱ろう」は、幅が数メーター、長さが数キロメーター、深さが数百メーターであってもよい実質的に管状の鉱脈に典型的には生じる。「天然アスファルタイト」は、芳香族化合物組成物の固体炭化水素を含んでおり、典型的には大鉱脈に生じる。天然鉱ろうおよび天然アスファルタイトなどの地層からの炭化水素のインサイチュ回収は、液体炭化水素を形成するための溶融、および/または地層からの炭化水素のソリューションマイニングを含んでいてもよい。
【0030】
「炭化水素」は、炭素原子および水素原子によって主として形成された分子として一般的に定義される。炭化水素は、また、ハロゲン、金属元素、窒素、酸素、および/または硫黄などの他の元素を含んでいてもよいが、それらに限定されない。炭化水素は、ケロゲン、ビチューメン、ピロビチューメン、油、天然鉱ろうおよびアスファルタイトであってもよいが、それらに限定されない。炭化水素は、地球の鉱物基質内または、それに隣接して位置することができる。基質は、堆積岩、砂、シリシライト、炭酸塩、珪藻岩、および他の多孔質媒体含んでいてもよいが、それらに限定されない。「炭化水素流体」は、炭化水素を含む流体である。炭化水素流体は、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水およびアンモニアなどの非炭化水素流体を含んでも、取り込んでいてもよく、非炭化水素流体に取り込まれていてもよい。
【0031】
「インサイチュ転化プロセス」は、熱源から炭化水素含有地層を加熱して、熱分解流体が地層内で生成さるように熱分解温度より高い温度で地層の少なくとも一部の温度を上げるプロセスを指す。
【0032】
「インサイチュ熱処理プロセス」は、易動化流体、粘性低下流体、および/または熱分解流体が、地層内に生成されるように、熱源で炭化水素含有地層を加熱して、易動化流体、粘性低下、および/または炭化水素含有材料の熱分解をもたらす温度より高い温度に地層の少なくとも一部の温度を上げるプロセスを指す。
【0033】
「絶縁導電体」は、電気を通すことができ、電気絶縁材料によって全体または一部において被覆される任意の細長い材料を指す。
【0034】
「熱分解」は、熱の適用による化学結合の破壊である。例えば、熱分解は、熱だけによって化合物を1つまたは複数の他の物質に変えることを含んでいてもよい。熱は、地層の部分に移動されて、熱分解を引き起こすことが可能である。
【0035】
「熱分解流体」または「熱分解生成物」は、炭化水素の熱分解の間に実質的に生成される流体を指す。熱分解反応によって生成される流体は、地層内で他の流体と混ざってもよい。混合物は、熱分解流体または熱分解生成物と考えられる。本明細書で説明されるように、「熱分解ゾーン」は、熱分解流体を形成するために反応されるまたは反応する地層(例えば、タール砂地層などの比較的浸透性地層)の体積を指す。
【0036】
「熱の重ね合わせ」は、熱源間の少なくとも1つの位置での地層の温度が、熱源によって影響されるように、地層の選択された部分に2つ以上の熱源から熱をもたらすことを指す。
【0037】
「タールサンド地層」は、炭化水素が、鉱物粒子枠組みまたは他の宿主岩盤(例えば、砂または炭酸塩)に取り込まれた重炭化水素、および/またはタールの形態で主に存在する地層である。タールサンド地層としては、アサバスカ地層、グロスモント地層、およびピースリバー地層(3つすべては、Alberta、Canada)、ファハ地層(Orinoco belt、Venezuela)などの地層が挙げられる。
【0038】
「温度限定加熱器」は、一般的に、温度調節器、電源レギュレータ、整流器または他の装置などの外部制御を使用することなく規定温度を超えて熱出力を調整する(例えば、熱出力を低減する)加熱器を指す。温度限定加熱器は、AC(交流)または調整された(例えば、「チョップ型」)DC(直流)駆動電気抵抗加熱器であってもよい。
【0039】
層の「厚さ」は、層の断面の厚さを指し、断面は、層の面に垂直である。
【0040】
「U字形状の坑井穴」は、地層内の第1の開口部から、地層の少なくとも一部を介し、地層内の第2の開口部を介して延在する坑井穴を指す。この文脈では、坑井穴は、坑井穴が「u」形状であるとみなされるために、「u」の「脚部」が互いに平行である必要はなく、または「u」の「底部」に対して垂直である必要はないという条件で、単に概略的に「v」または「u」形状であってもよい。
【0041】
「品質向上」は、炭化水素の質を高めることを指す。例えば、重炭化水素の品質向上は、重炭化水素のAPI重力を高め得る。
【0042】
「粘性低下」は、熱処理の間に流体内の分子のもつれを解くこと、および/または熱処理の間の大きな分子のより小さな分子への破壊を指し、流体の粘性を低減する。
【0043】
「粘性」は、別段の定めがない限り、40℃での動粘度を指す。粘性は、ASTM法D445によって決まる。
【0044】
用語「坑井穴」は、掘削または地層へのコンジットの挿入によって作製された地層における穴を指す。坑井穴は、実質的に円形断面または他の断面形状を有していてもよい。本明細書で使用されるように、用語「坑井」および「開口部」は、地層内の開口部を参照する場合、用語「坑井穴」で交換可能に使用されてもよい。
【0045】
地層は、様々な方法で処理されて様々な生成物を生成することが可能である。インサイチュ熱処理プロセスの間に地層を処理するために、異なる段階またはプロセスが使用されてもよい。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分は、ソリューションマイニングされて、その部分から可溶性鉱物を取り除く。ソリューションマイニング鉱物は、インサイチュ熱処理プロセスの前、間、および/または後に行われてもよい。実施形態によっては、ソリューションマイニングされる1つまたは複数の部分の平均温度は、約120℃より低く維持されてもよい。
【0046】
実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分が加熱されて、部分から水を取り除く、および/または部分からメタンおよび他の揮発性炭化水素を取り除く。実施形態によっては、平均温度は、水および揮発性炭化水素の除去の間に、周囲の温度から約220℃より低い温度に上げられてもよい。
【0047】
実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分が加熱されて、地層内で炭化水素の移動、および/または粘性低下を可能にする温度に加熱される。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分の平均温度は、その部分における炭化水素の易動化温度に上げられる(例えば、100℃から250℃、120℃から240℃、または150℃から230℃の範囲の温度に)。
【0048】
実施形態によっては、1つまたは複数の部分が、地層内での熱分解反応を可能にする温度に加熱される。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分の平均温度は、部分における炭化水素の熱分解温度に上げられてもよい(例えば、230℃から900℃、240℃から400℃、または250℃から350℃の範囲の温度)。
【0049】
複数の熱源で炭化水素含有地層を加熱することは、地層内の炭化水素の温度を所望の加熱速度で所望の温度に上げる熱源のまわりの温度勾配を確立することが可能である。所望の生成物のための易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間の温度増加率は、炭化水素含有地層から生成される地層流体の質および量に影響することが可能である。易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間に地層の温度をゆっくり上げることは、地層から高品質、高API重力の炭化水素の生成を可能にしてもよい。易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間に地層の温度をゆっくり上げることは、炭化水素生成物として地層内に存在する大量の炭化水素の除去を可能にしてもよい。
【0050】
いくらかのインサイチュ熱処理の実施形態では、地層の一部は、温度範囲の間に温度をゆっくり加熱する代わりに所望の温度に加熱される。実施形態によっては、所望の温度は、300℃、325℃または350℃である。所望の温度として他の温度が選択されてもよい。
【0051】
熱源からの熱の重ね合わせは、所望の温度が、地層において比較的速く効率的に確立されることを可能にする。熱源から地層へのエネルギー入力が調節されて、所望の温度で地層内で温度を実質的に維持することが可能である。
【0052】
易動化、および/または熱分解生成物が、生成坑井を介して地層から生成されることが可能である。実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度が易動化温度に上げられ、炭化水素が生成坑井から生成される。1つまたは複数の部分の平均温度は、易動化による生成が選択された値より下に低下した後、熱分解温度に上げられてもよい。実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度は、熱分解温度に達する前にほとんど生成せずに熱分解温度に上げられてもよい。熱分解生成物を含む地層流体は、生成坑井を介して生成されてもよい。
【0053】
実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度は、易動化、および/または熱分解後に、合成ガスの生成を可能にするのに十分な温度に上げられてもよい。実施形態によっては、炭化水素は、合成ガスの生成を可能にするのに十分な温度に達する前にほとんど生成せずに合成ガスの生成を可能とするのに十分な温度に上げられてもよい。例えば、合成ガスは、約400℃から約1200℃、約500℃から約1100℃、または約550℃から約1000℃の温度範囲で生成されてもよい。合成ガス発生流体(例えば、蒸気、および/または水)が、合成ガスを発生するために部分へ導入されてもよい。合成ガスは、生成坑井から生成されてもよい。
【0054】
ソリューションマイニング、揮発性炭化水素および水の除去、炭化水素の易動化、炭化水素の熱分解、合成ガスの発生、および/または他のプロセスが、インサイチュ熱処理プロセスの間に行われてもよい。実施形態によっては、いくつかのプロセスが、インサイチュ熱処理プロセス後に行われてもよい。そのようなプロセスとしては、処理された部分から熱を回収すること、予め処理された部分に流体(例えば、水、および/または炭化水素)を保存すること、および/または予め処理された部分に二酸化炭素を隔離することが挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
図1は、炭化水素含有地層を処理するためのインサイチュ熱処理システムの一部の実施形態の概略図を表す。インサイチュ熱処理システムは、障壁坑井100を含んでいてもよい。障壁坑井は、処理領域のまわりに障壁を形成するために使用される。障壁は、処理領域への、および/または処理領域からの流体の流れを抑制する。障壁坑井としては、脱水坑井、真空坑井、捕獲坑井、注入坑井、グラウト坑井、凍結坑井、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。実施形態によっては、障壁坑井100は、脱水坑井である。脱水坑井は、液体の水を取り除く、および/または液体の水が加熱される対象の地層、もしくは加熱されている地層の一部に入ることを抑制し得る。図1で表された実施形態では、障壁坑井100は、熱源102の一方の側に沿ってのみ延在して示されているが、障壁坑井は、典型的には、地層の処理領域を加熱するために使用された、または使用されるすべての熱源102を取り囲む。
【0056】
熱源102は、地層の少なくとも一部内に置かれる。熱源102は、導電材料を含んでいてもよい。実施形態によっては、絶縁導電体、導体インコンジット加熱器、地表バーナー、無炎分配型燃焼器、および/または自然分配型燃焼器などの加熱器である。熱源102は、また、他の種類の加熱器を含んでいてもよい。熱源102は、地層の少なくとも一部に熱をもたらして、地層内で炭化水素を加熱する。供給ライン104を介して熱源102にエネルギーが供給されてもよい。供給ライン104は、地層を加熱するために使用される熱源(複数可)の種類に応じて構造上異なっていてもよい。熱源用の供給ライン104は、導電材料または電気加熱器用に送電してもよく、燃焼器用の燃料を移動してもよく、または地層内で循環される熱交換流体を移動してもよい。実施形態によっては、インサイチュ熱処理プロセス用電気が、原子力発電所(複数可)によってもたらされてもよい。原子力の使用は、インサイチュ熱処理プロセスからの二酸化炭素排出の低減または除去を可能としてもよい。
【0057】
地層を加熱することは、地層の浸透性、および/または気孔率の増大を引き起こしてもよい。浸透性、および/または気孔率の増大は、水の蒸発および除去、炭化水素の除去、および/または破砕の作成により、地層の質量の低減に起因することが可能である。流体は、地層の浸透性、および/または気孔率が増大されるために、地層の加熱された部分においてより容易に流れることが可能である。地層の加熱された部分内の流体は、浸透性、および/または気孔率が増加されるために、地層を介して相当な距離を移動することが可能である。相当な距離は、地層の浸透性、流体の特性、地層の温度、および流体の移動を可能とする圧力勾配などの様々な要因に応じて1000mを超えることが可能である。流体が地層内で相当な距離を移動する能力は、生成坑井106が地層内で比較的遠く離れて間隔を置いて配置されることを可能にする。
【0058】
生成坑井106は、地層から地層流体を取り除くために使用される。実施形態によっては、生成坑井106は熱源を含む。生成坑井での熱源は、生成坑井で、または生成坑井の近くで地層の1つまたは複数の部分を加熱することが可能である。インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、生成坑井のメーター当たりの生成坑井からの地層に供給される熱量は、熱源のメーター当たりの地層を加熱する熱源から地層に加えられた熱量未満である。生成坑井から地層に加えられた熱は、生成坑井に隣接する液相流体を蒸発、除去することによって、および/または、マクロ破砕、および/またはミクロ破砕の地層によって生成坑井に隣接する地層の浸透性を増大させることによって、生成坑井に隣接する地層の浸透性を増大させることが可能である。
【0059】
実施形態によっては、生成坑井106内の熱源は、地層から地層流体の気相除去を可能にする。生成坑井で、または生成坑井を介して加熱をもたらすことは、以下を可能にする:(1)そのような生成された流体がオーバーバーデンに隣接した生成坑井内で移動している場合、生成された流体の凝縮、および/または還流を抑制する、(2)地層への熱入力を増大する、(3)熱源のない生成坑井に比較して生成坑井からの生成速度を増大する、(4)生成坑井での高炭素数化合物(C6以上の炭化水素)の凝縮を抑制する、および/または(5)生成坑井で、または生成坑井に隣接した地層の浸透性を増大する。
【0060】
地層内の地表下の圧力は、地層内で発生された流体圧力に相当してもよい。地層の加熱された部分の温度が上昇するにつれて、加熱された部分の圧力は、インサイチュ流体の熱膨張、流体の発生の増大、および水の蒸発の結果、増大する可能性がある。地層からの流体除去の速度の制御は、地層内の圧力の制御を可能にする。地層内の圧力は、生成坑井に近接してまたは生成坑井で、熱源に近接してまたは熱源で、または観察坑井で、などの複数の異なる位置で決定されることが可能である。
【0061】
炭化水素含有地層によっては、地層内の少なくともいくつかの炭化水素が易動化され、および/または熱分解されるまで、地層からの炭化水素の生成は抑制される。地層流体が選択された品質を有する場合、地層流体が地層から生成されることが可能である。実施形態によっては、選択された品質としては、少なくとも約20°、30°または40°のAPI重力が挙げられる。少なくともいくつかの炭化水素が易動化され、および/または熱分解されるまで生成を抑制することは、重炭化水素の軽質炭化水素への変換を増大させることが可能である。初期の生成の抑制は、地層から重炭化水素の生成を最小限にすることが可能である。相当量の重炭化水素の生成は、高価な装置を必要とし、および/または生成装置の寿命を短くする可能性がある。
【0062】
実施形態によっては、生成坑井106に対する開放通路または任意の他の圧力シンクが地層内に存在しなくてもよいが、地層内で発生された易動化流体、熱分解流体または他の流体の膨張によって発生された圧力は、増大することが可能であってもよい。流体圧力は、地盤圧力に対して増大することが可能であってもよい。流体が地盤圧力に達すると、炭化水素含有地層の破砕が生じることがある。例えば、破砕は、地層の加熱された部分において、熱源102から生成坑井106まで生じることがある。加熱された部分における破砕の発生は、一部内の圧力の一部を逃がすことが可能である。地層内の圧力は、選択された圧力より低く維持されて、不要な生成、オーバーバーデンもしくはアンダーバーデンの破砕、および/または地層内の炭化水素のコーキングを抑制しなければならない。
【0063】
易動化温度、および/または熱分解温度が到達され、地層からの生成が可能とされた後、地層内の圧力が変えられて、生成された地層流体の組成を変更、および/または制御して、地層流体内の非凝縮性流体に対して凝縮性流体の割合を制御する、および/または生成される地層流体のAPI重力を制御することが可能である。例えば、圧力を低下させることは、より大きな凝縮性流体成分の生成をもたらすことが可能である。凝縮性流体成分は、より大きな割合のオレフィンを含むことが可能である。
【0064】
インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、地層内の圧力は、20°より大きいAPI重力を備えた地層流体の生成を促進するのに十分高く維持されることが可能である。地層内の増加された圧力を維持することは、インサイチュ熱処理の間に地層の沈下を抑制することが可能である。増加された圧力を維持することは、地層流体を地表で圧縮する必要を低減または除去して、回収コンジット内の流体を処理施設に移動することが可能である。
【0065】
地層の加熱された部分内の増加された圧力を維持することは、驚くことに、品質が向上され、比較的低分子量の炭化水素を大量に生成することを可能にしてもよい。生成された地層流体が選択された炭素数を越える最小量の化合物を有するように、圧力は維持されてもよい。選択された炭素数は、最大で25、最大で20、最大で12、または最大で8であってもよい。いくつかの高炭素数化合物が地層内で蒸気で取り込まれていてもよく、蒸気で地層から取り除かれてもよい。地層内で増加した圧力を維持することは、高炭素数の化合物、および/または蒸気で多重環炭化水素化合物の取り込みを抑制することが可能である。高炭素数化合物、および/または多重環炭化水素化合物は、かなりの期間、地層内で液体相で残存していてもよい。かなりの期間は、化合物が熱分解するのに十分な時間をもたらして、低炭素数化合物を形成することが可能である。
【0066】
生成坑井106から生成された地層流体は、処理施設110に収集管108を介して移動されることが可能である。地層流体は、また、熱源102から生成されることが可能である。例えば、流体は、熱源102から生成されて、熱源に隣接する地層内の圧力を制御することが可能である。熱源102から生成された流体は、収集管108にチュービングもしくは配管を介して移動されることが可能であり、または、生成された流体は、処理施設110に直接、チュービングもしくは配管を介して移動されることが可能である。処理施設110は、分離ユニット、反応ユニット、品質向上ユニット、燃料電池、タービン、貯蔵容器、および/または生成された地層流体を処理するための他のシステムおよびユニットを含んでいてもよい。処理施設は、地層から生成された炭化水素の少なくとも一部から輸送燃料を生じることが可能である。実施形態によっては、輸送燃料は、JP−8などのジェット燃料であってもよい。
【0067】
ある実施形態では、熱源、熱源の電源、生成装置、供給ライン、および/または他の熱源または生産支援装置がトンネル内に位置し、より小さな熱源、および/またはより小さな装置が、地層を処理するために使用されることを可能にする。トンネル内にそのような装置、および/または構造を位置することは、地層を処理するためのエネルギーのコストを低減し、処理プロセスからの排出を低減し、加熱システム設置を容易化する、および/または地表ベース装置を利用する炭化水素回収プロセスと比較して、オーバーバーデンに対する熱損失を低減することが可能である。トンネルは、例えば、実質的に水平のトンネル、および/または傾斜したトンネルであってもよい。
【0068】
インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、地層を加熱するために循環システムが使用される。循環システムを炭化水素含有地層のインサイチュ熱処理に使用することは、地層を処理するためのエネルギーのコストを低減する、処理プロセスからの排出を低減する、および/または加熱システムの設置を容易化する。ある実施形態では、循環システムは、閉ループ循環システムである。図2は、循環システムを使用して、地層を加熱するためのシステムの概略図を表す。システムは、地中比較的深く、広がりが比較的大きい地層内にある炭化水素を加熱するために使用されることが可能である。実施形態によっては、炭化水素は、地表より100m、200m、300m以上低くてもよい。循環システムは、また、地中深くない炭化水素を加熱するために使用されることが可能である。炭化水素は、長手方向に1000m、3000m、5000m以上まで延在する地層内にある可能性がある。循環システムの加熱器間の熱の重ね合わせが、地層の温度が少なくとも地層内の水性地層流体の沸点より高く上げられることを可能にするように、循環システムの加熱器は、隣接する加熱器に対して位置していてもよい。
【0069】
実施形態によっては、加熱器200は、第1の坑井穴を掘削し、次いで第1の坑井穴に接続する第2の坑井穴を掘削することによって地層内に形成されていてもよい。U字形状の坑井穴内に配管が位置して、U字形状の加熱器200を形成してもよい。加熱器200は、配管によって熱伝導流体循環システム202に接続される。実施形態によっては、加熱器は、三角パターン内に位置する。実施形態によっては、他の規則的パターンまたは不規則的パターンが使用される。生成坑井、および/または注入坑井が地層内に位置していてもよい。生成坑井、および/または注入坑井は、加熱器200の加熱部分に類似する長く実質的水平部分を有していてもよく、または、生成坑井、および/もしくは注入坑井は、別の形で配向されていてもよい(例えば、坑井は、垂直配向の坑井、または1つもしくは複数の傾斜した部分を含む坑井であってもよい)。
【0070】
図2に表されるように、熱伝導流体循環システム202は、熱供給204、第1の熱交換器206、第2の熱交換器208、および流体移動機210を含んでいてもよい。熱供給204は、熱伝導流体を高温に加熱する。熱供給204は、炉、太陽光集光装置、化学反応器、原子炉、燃料電池、および/または熱伝導流体に熱を供給することができる他の高温源であってもよい。熱伝導流体がガスである場合、流体移動機210は圧縮機であってもよい。熱伝導流体が液体である場合、流体移動機210はポンプであってもよい。
【0071】
熱伝導流体は、地層212から抜け出た後、第1の熱交換器206および第2の熱交換器208を介して流体移動機210に移動する。第1の熱交換器206は、地層212から抜け出た熱伝導流体と、流体移動機210から抜け出た熱伝導流体との間で熱を移動して、熱供給204に入る熱伝導流体の温度を上げ、地層212から抜け出た流体の温度を低下する。第2の熱交換器208は、さらに、熱伝導流体の温度を低下する。実施形態によっては、第2の熱交換器208は、熱伝導流体用の貯蔵タンクを含む、または貯蔵タンクである。
【0072】
熱伝導流体は、第2の熱交換器208から流体移動機210に移動する。流体移動機210は、流体移動機が高温で作動する必要がないように熱供給204の前に位置していてもよい。
【0073】
一実施形態では、熱伝導流体は二酸化炭素である。熱供給204は、約700℃から約920℃の範囲、約770℃から約870℃の範囲、または約800℃から約850℃の範囲の温度に熱伝導流体を加熱する炉である。一実施形態では、熱供給204は、約820℃の温度に熱伝導流体を加熱する。熱伝導流体は、熱供給204から加熱器200に流れる。熱は、加熱器200から加熱器に隣接する地層212に移動する。地層212から抜け出た熱伝導流体の温度は、約350℃から約580℃の範囲、約400℃から約530℃の範囲、または約450℃から約500℃の範囲であってもよい。一実施形態では、地層212から抜け出た熱伝導流体の温度は約480℃である。熱伝導流体循環システム202を形成するために使用される配管の冶金学的技術は変えられて、配管のコストを著しく低減することが可能である。熱供給204から温度が十分に低い地点まで高温鋼が使用されてもよく、その地点から第1の熱交換器206まではより費用のかからない鋼が使用されることが可能である。いくらかの異なる鋼種が使用されて、熱伝導流体循環システム202の配管を形成することが可能である。
【0074】
実施形態によっては、循環流体システムにおいて熱伝導流体として天日塩(例えば、NaNO360重量%およびKNO340重量%を含む塩)が使用される。粗塩は、約230℃の融点および約565℃の上限使用温度限界を有していてもよい。実施形態によっては、LiNO3(例えば、LiNO3約10重量%から約30重量%)が粗塩に加えられて、粗塩に対してより広い使用温度範囲および最大使用温度がわずかに低下しただけの低溶融温度の第三塩混合物を生成することが可能である。第三塩混合物の低溶融温度は、予備加熱要件を低下することが可能であり、循環システムの配管を予備加熱するための熱伝導流体として加圧水および/または加圧塩水の使用を可能としてもよい。550℃での第三塩組成物による加熱器の金属の腐食速度は、565℃での粗塩による加熱器の金属の腐食速度に相当する。表1は、粗塩および第三塩混合物に関する融点および上限を示す。第三塩混合物の水溶液は、凝固することなく水を取り除く場合に溶融塩に移行してもよく、それによって、溶融塩が水溶液としてもたらされ、および/または保存されることを可能にする。
【表1】
【0075】
熱供給204は、約560℃の温度に熱伝導流体を加熱する炉であってもよい。熱伝導流体の戻り温度は、約350℃から約450℃であってもよい。熱伝導流体循環システム202からの配管は、断熱されていてもよく、および/または外部加熱されて(heat traced)、開始を促進し、流体の流れを確実にすることが可能である。
【0076】
実施形態によっては、垂直で、傾斜した、またはL形状の坑井加熱器坑井穴が、U字形状の坑井穴の代わりに使用されてもよい(例えば、坑井穴は、第1の位置の入口および他の位置の出口を有する)。図3は、L形状の加熱器200を表す。加熱器200は、熱伝導流体循環システム202に結合されることが可能であり、入口コンジット214および出口コンジット216を含むことが可能である。熱伝導流体循環システム202は、多数の加熱器に熱伝導流体をもたらすことが可能である。熱伝導流体循環システム202からの熱伝導流体は、入口コンジット214を流下し、出口コンジット216を還流することが可能である。入口コンジット214および出口コンジット216は、オーバーバーデン218を介して断熱されていてもよい。実施形態によっては、入口コンジット214は、オーバーバーデン218および炭化水素含有層220を介して断熱されて、出入りする熱伝導流体間の不要な熱伝導を抑制する。
【0077】
実施形態によっては、オーバーバーデン218に隣接する坑井穴222の一部は、炭化水素含有層220に隣接する坑井穴の一部より大きい。オーバーバーデンに隣接するより大きな開口部を有することは、入口コンジット214および/または出口コンジット216を断熱するために使用される断熱材料の調整を可能にしてもよい。特に、熱伝導流体が、液体のままであるために加熱される必要がある溶融塩または他の流体である場合、戻り流れからオーバーバーデンへの熱損失の一部は、効率に著しく影響しない可能性がある。加熱器200に隣接する加熱されたオーバーバーデンは、かなりの時間、液体が熱伝導流体の循環を停止するべきであるとともに、熱伝導流体を液体として維持してもよい。オーバーバーデン218に対するいくらかの熱伝導ためのいくらかの許容を有することは、出口コンジット216とオーバーバーデンとの間の高価な断熱システムの必要を取り除くことが可能である。実施形態によっては、オーバーバーデン218と出口コンジット216との間で断熱セメントが使用される。
【0078】
垂直で、傾斜した、またはL形状の加熱器に関して、坑井穴は、通電されていない加熱器(例えば、設けられたが使用されていない加熱器)を調整するために必要とされるよりも長く掘削されることが可能である。通電後の加熱器の熱膨張は、加熱器の熱膨張を調整するために設計された坑井穴の余長に加熱器の一部を移動させることが可能である。L形状の加熱器に関して、坑井穴内に掘削流体および/または地層流体を残すことは、加熱器が、熱伝導流体での予熱および/または加熱の間に膨張するとともに、坑井穴により深い加熱器の移動を容易にすることを可能とする。
【0079】
垂直で、傾斜した坑井穴に関して、坑井穴は、通電されていない加熱器を調整するために必要とされるよりも深く掘削されることが可能である。加熱器が熱伝導流体で予熱および/また加熱される場合、加熱器は、坑井穴の余分な深さに膨張することが可能である。実施形態によっては、膨張スリーブが加熱器の端に取り付けられて、不安定なボアホールの場合には熱膨張のための利用可能な空間を確保することが可能である。
【0080】
ある実施形態では、循環システムは、液体を使用して地層を加熱する。液体熱伝導流体の使用は、液体熱伝導流体を加熱するために使用される熱供給の高エネルギー効率による電気的加熱またはガス加熱器と比較して、システムに関する高い全エネルギー効率を可能にする。液体熱伝導流体を加熱するために炉が使用される場合、炉の効率のため、電気的加熱または坑井穴内に位置するガスバーナーの使用と比較して、プロセスの二酸化炭素の排出量(footprint)は低減されることが可能である。液体熱伝導流体を加熱するために原子力が使用される場合、プロセスの二酸化炭素排出量は著しく低減される、または除去されることが可能である。加熱システムのための地表設備が、単純なレイアウトで一般に市販されている工業装置から形成されてもよい。単純なレイアウトで一般に市販されている装置は、システムの全面的な信頼性を増大させることが可能である。
【0081】
ある実施形態では、液体熱伝導流体は、温度が選択された温度未満である場合に凝固する可能性を有する溶融塩または他の液体である。第2の加熱システムは、熱伝導流体が液体の形態のままであり、熱伝導流体が循環システムから加熱器を介して流れることを可能にする温度であることを確実にすることが必要とされることができる。ある実施形態では、第2の加熱システムは、加熱器および/または熱伝導流体を、溶解しより高温に加熱する代わりに熱伝導流体の流動性を確実にするのに十分な温度に熱伝導流体を加熱する。第2の加熱システムは、流体循環システムのスタートアップおよび/または再スタートアップの短期間に、単に必要とされてもよい。実施形態によっては、第2の加熱システムは、加熱器から除去可能である。実施形態によっては、第2の加熱システムは、加熱器の寿命に似た期待される耐用年限を有さない。
【0082】
ある実施形態では、熱伝導流体として溶融塩が使用される。断熱された戻り貯蔵タンクは、地層から戻り溶融塩を受ける。戻り貯蔵タンク内の温度は、例えば、約350℃近くであってもよい。ポンプは、戻り貯蔵タンクから炉に溶融塩を移動させることが可能である。各ポンプは、4kg/sから30kg/sの溶融塩を移動する必要があってもよい。各炉は、溶融塩に熱をもたらすことが可能である。炉からの溶融塩の出口温度は、約550℃であってもよい。溶融塩は、炉から断熱された給送貯蔵タンクに配管を介して通ることが可能である。各給送貯蔵堰は、例えば、地層に入る50以上の配管システムに溶融塩を供給することが可能である。溶融塩は、地層を介して戻り貯蔵タンクに流れる。ある実施形態では、炉は、90%以上の効率を有する。ある実施形態では、オーバーバーデンに対する熱損失は8%以下である。
【0083】
実施形態によっては、循環システム用加熱器は、処理領域を加熱するために使用される加熱器の一部を含めて、加熱器の長さに沿った断熱材料を含む。断熱材料は、地層内への加熱器の挿入を容易にすることが可能である。処理領域を加熱するために使用される部分に隣接する断熱材料は、予備加熱の間に断熱をもたらすのに十分であってもよいが、熱伝導流体の定常状態の循環によって生成される温度で分解してもよい。実施形態によっては、断熱層は、加熱器の放射率を変更して、加熱器からの放射熱伝導を抑制する。断熱材料の分解の後に、加熱器の放射率は、処理領域に放射熱伝導を促進することが可能である。断熱材料は、熱伝導流体の溶解および流動性を確実にするのに十分な温度に、加熱器および/または加熱器内の熱伝導流体の温度を上げるために必要な時間を低減することが可能である。実施形態によっては、処理領域を加熱する加熱器の一部に隣接する断熱材料は、ポリマーコーティングを含んでいてもよい。ある実施形態では、オーバーバーデンに隣接する加熱器の一部の断熱材料は、処理領域を加熱するために使用される加熱器の一部に隣接する加熱器の断熱材料と異なる。オーバーバーデンに隣接する加熱器の断熱材料は、加熱器の耐用年限以上の期待される耐用年限を有してもよい。
【0084】
実施形態によっては、分解性断熱材料(例えば、ポリマー発泡体)は、加熱器の配置の後または配置の間に坑井穴に導入されてもよい。分解性断熱材料は、予備加熱の間に処理領域を加熱するために使用される加熱器の一部に隣接して断熱材料をもたらしてもよい。処理領域を加熱するために使用される液体熱伝導流体は、断熱層を分解し、取り除くのに十分に加熱器の温度を上げることが可能である。
【0085】
熱伝導流体として溶融塩または他の液体を使用する循環システムの実施形態によっては、加熱器は、地層内で単一のコンジットであってもよい。コンジットは、熱伝導流体の流動性を確実にするのに十分な温度に予備加熱されてもよい。実施形態によっては、第2の熱伝導流体は、コンジットを介して循環されて、コンジットおよび/またはコンジットに隣接する地層を予備加熱する。コンジットおよび/またはコンジットに隣接する地層の温度が、十分に熱い後、第2の流体は、コンジットから流されてもよく、熱伝導流体は、配管を介して循環されてもよい。
【0086】
実施形態によっては、熱伝導流体として使用される塩組成物(例えば、Li:Na:K:NO3)の水溶液が、コンジットを予備加熱するために使用される。第2の熱伝導流体の温度は、坑口の地表下の出口の温度以下であってもよい。
【0087】
実施形態によっては、第2の熱伝導流体(例えば、水)は、0℃から約95℃の範囲、または第2の熱伝導流体の沸点までの温度に加熱される。塩組成物は、循環システムの貯蔵タンクにある間に、第2の熱伝導流体に加えられてもよい。温度が上昇されるにつれて、塩の組成物および/またはシステムの圧力は調節されて、水溶液の沸騰を抑制することが可能である。コンジットが、溶融塩の流動性を確実にするのに十分な温度に予備加熱される場合、残りの水は、水溶液から取り除かれて溶融塩のみを残すことが可能である。水は、塩溶液が、循環システムの貯蔵タンクにある間に、蒸発によって取り除かれることが可能である。実施形態によっては、溶融塩溶液の温度は100℃を超えて上げられる。コンジットが、溶融塩の流動性を確実にするのに十分な温度に予備加熱される場合、残る第2の熱伝導流体(例えば、水)の実質的、またはすべてが、塩溶液から取り除かれて、溶融塩だけを残すことが可能である。実施形態によっては、蒸発プロセスの間の溶融塩溶液の温度は、100℃から250℃に及ぶ。
【0088】
インサイチュ熱処理プロセスの完了の際に、溶融塩は冷却され、水が塩に加えられて、他の水溶液を形成することが可能である。水溶液は他の処理領域に移動されてもよく、プロセスは続けられてもよい。水溶液としての第三溶融塩の使用は、溶液の移動を容易にし、地層の2つ以上の部分が同じ塩で処理されることを可能にする。
【0089】
熱伝導流体として溶融塩または他の液体を使用する循環システムの実施形態によっては、加熱器は、コンジットインコンジット構造を有していてもよい。地層を加熱するために使用される液体熱伝導流体は、加熱器を介して第1の通路を流れること可能である。第2の熱伝導流体は、予備加熱のため、および/または液体熱伝導流体の流量保証のためにコンジットインコンジット加熱器を介して第2の通路を流れることが可能である。加熱器が、加熱器を介して熱伝導流体の継続的な流れを確実にするのに十分な温度に上げられた後、第2の熱伝導流体用の通路で真空が引かれて、第1の通路から第2の通路への熱伝導を抑制することが可能である。実施形態によっては、第2の熱伝導流体用の通路は、断熱材料で満たされる、および/または別の方法で閉鎖される。コンジットインコンジット加熱器のコンジット内の通路は、内側コンジット、および内側コンジットと外側コンジットとの間の環状領域を含んでいてもよい。実施形態によっては、1つまたは複数の流れ切り換え装置が使用されて、内側コンジットから環状領域に、および/または逆の場合も同様にコンジットインコンジット加熱器内の流れを変更する。
【0090】
図4は、処理領域300に隣接する熱伝導循環加熱システム用のコンジットインコンジット加熱器200の一実施形態の断面図を示す。加熱器200は、坑井穴222内に位置していてもよい。加熱器200は、外側コンジット302および内側コンジット302を含んでいてもよい。加熱器200の通常動作の間に、液体熱伝導流体は、外側コンジット302と内側コンジット302との間の環状領域306を流れることが可能である。通常動作の間に、内側コンジット302を流れる流体は必要でなくなる。
【0091】
予備加熱の間に、および/または流量保証については、第2の熱伝導流体は、内側コンジット304を流れることが可能である。第2の流体は、空気、二酸化炭素、排気ガス、および/または天然もしくは合成潤滑油(例えば、Dow/Therm A、SylthermまたはTherminol59)、室温溶融塩(例えば、NaCl2−SrCl2、VCl4、SnCl4またはTiCl4)、高圧液体水、蒸気または室温溶融金属合金(例えば、K−Na共晶混合物またはGa−In−Sn共晶混合物)であってもよいが、それらに限定されない。実施形態によっては、外側コンジット302は、地層を加熱するために使用される熱伝導流体が環状領域に導入される前に、環状領域306(例えば、二酸化炭素または排気ガス)を流れる第2の熱伝導流体によって加熱される。排気ガスまたは他の高温流体が使用される場合、他の熱伝導流体(例えば、水または蒸気)は加熱器を介して通されて、液体熱伝導流体の上方使用温度限界より下に温度を低減することが可能である。液体熱伝導流体が加熱器へ導入される場合、第2の熱伝導流体は環状領域から移動されることが可能である。内側コンジット304内の第2の熱伝導流体は、予備加熱の間に外側コンジット302を予備加熱するために使用される第2の流体と同じ流体または異なる流体であってもよい。2つの異なる第2の熱伝導流体の使用は、加熱器200における完全性の問題の識別に有用であってもよい。溶融塩の使用が始められる前に、いずれの完全性の問題も識別され直されることが可能である。
【0092】
実施形態によっては、予備加熱の間に環状領域306を流れる第2の熱伝導流体は、通常動作の間に使用される塩の水性混合物である。塩濃度は、水性混合物の沸点より下のままの間に、周期的に上昇させて、温度を上昇させることが可能である。水性混合物が使用されて、溶融塩が環状領域306内を流れることを可能にするのに十分な温度に外側コンジット302の温度を上げることが可能である。温度が到達されると、水性混合物内の残りの水は、混合物から蒸発して、溶融塩を残すことが可能である。溶融塩が使用されて、処理領域300を加熱することが可能である。
【0093】
実施形態によっては、内側コンジット304は、炭素鋼などの比較的安価な材料から製作されてもよい。実施形態によっては、内側コンジット304は、熱処理プロセスの初期段階を通じて耐える材料から製作されてもよい。外側コンジット302は、溶融塩および地層流体による腐食に強い材料(例えば、P91鋼)から製作されてもよい。
【0094】
液体熱伝導流体の所定の質量流量に関して、外側コンジット302と内側コンジット304との間の環状領域306内を流れる液体熱伝導流体を使用して処理領域を加熱することは、単一のコンジットを介して液体熱伝導流体を流すことに優るある種の利点を有することが可能である。内側コンジット304を介して第2の熱伝導流体を流すことは、加熱器200を予備加熱し、液体熱伝導流体が最初に使用される場合、および/または循環の停止後に流れを再スタートする必要がある場合、流れを確実にすることが可能である。外側コンジット302の大きな外面積は、地層への熱伝導のための大きな地表積をもたらし、一方、循環システムに必要とされる液体熱伝導流体の量は、内側コンジット304の存在のために低減される。循環される液体熱伝導流体は、同じ質量流量のための液体熱伝導流体の速度の増大により処理領域により良好な動力注入速度の分布をもたらすことが可能である。加熱器の信頼性も改善されることが可能である。
【0095】
実施形態によっては、熱伝導流体(溶融塩)は濃くなってもよく、外側コンジット302および/または内側コンジット304を介しての熱伝導流体の流れは遅くされ、および/または損なわれる。内側コンジット304の様々な部分を選択的に加熱することは、加熱器200の様々な部品に十分な熱をもたらして、加熱器を介して熱伝導流体の流れを増大させることが可能である。加熱器200の一部は、強磁性体、例えば、絶縁導電体を含み、電流が加熱器の選択された一部を通されることを可能にする。内側コンジット304を抵抗加熱することは、外側コンジット302および/または内側コンジット304内の高密度化熱伝導流体に十分な熱を移動して、コンジットを介して、溶融塩の加熱に先立って流れに対して増大された流れが得られるように、熱伝導流体の粘性を低下させる。時間依存性電流の使用は、熱伝導流体を介して電流を通すことなく、内側コンジットに電流が通されることを可能にする。
【0096】
図5は、加熱器内の高密度化または固定化された熱伝導流体(例えば、溶融塩)の流れを再スタートするために加熱器200の様々な部分を加熱するための概略を表す。ある実施形態では、内側コンジット304および/または外側コンジット302の一部は、断熱材料によって囲まれた強磁性体を含む。したがって、内側コンジット304および/または外側コンジット302のこれらの一部は、絶縁導電体308であってもよい。絶縁導電体308は、温度制限加熱器または表皮効果加熱器として作動してもよい。絶縁導電体308の表皮効果のために、絶縁導電体にもたらされる電流は、内側コンジット304および/または外側コンジット302に閉じ込められたままであり、コンジット内に位置する熱伝導流体を流れない。
【0097】
ある実施形態では、絶縁導電体308は、内側コンジット304の選択された長さ(例えば、内側コンジットの全長または内側コンジットのオーバーバーデン部分のみ)に沿って位置する。内側コンジット304に電気を印加することは、絶縁導電体308内に熱を発生する。発生された熱は、内側コンジットの選択された長さに沿って高密度化または固定化された熱伝導流体を加熱することが可能である。発生された熱は、内側コンジットの内部、および内側コンジットと外側コンジット302との間の環帯内の両方で、熱伝導流体を加熱することが可能である。ある実施形態では、内側コンジット304のみは、内側コンジットのオーバーバーデン部分内に位置する絶縁導電体308を含む。これらの絶縁導電体は、内側コンジット304のオーバーバーデン部分内で熱を選択的に発生する。内側コンジット304のオーバーバーデン部分を選択的に加熱することは、高密度化された熱伝導流体に熱を移動し、内側コンジットのオーバーバーデン部分内で流れを再スタートすることが可能である。そのような選択的加熱は、加熱器寿命を向上させ、熱伝導流体の高密度化または固定化に遭遇する可能性が最も高い領域において熱を集中させることによって電気的加熱コストを最小限することが可能である。
【0098】
ある実施形態では、絶縁導電体308は、外側コンジット302(例えば、外側コンジットのオーバーバーデン部分)の選択された長さに沿って位置する。外側コンジット302に電気を印加することは、絶縁導電体308内で熱を発生する。発生された熱は、内側コンジット304と外側コンジット302との間の環帯のオーバーバーデン部分を選択的に加熱することが可能である。十分な熱が外側コンジット302から移動されて、高密度化された熱伝導流体の粘性を低下させ、環帯内の溶融塩の損なわれていない流れを可能とする。
【0099】
ある実施形態では、コンジットインコンジット加熱器構造を有することは、流れが処理領域に隣接する場合の外側コンジットと内側コンジットとの間の環状領域を通る流れから、流れがオーバーバーデンに隣接する場合の内側コンジットを介しての流れに、加熱器内の熱伝導流体の流れを変更する流れ切り換え装置が使用されることを可能にする。図6は、流体循環システム202、202’と共に使用されて、処理領域300を加熱するコンジットインコンジット加熱器200の概略図を表す。ある実施形態では、加熱器200は、外側コンジット302、内側コンジット304、流れ切り換え装置310を含む。流体循環システム202、202’は、坑口311に加熱された液体熱伝導流体をもたらす。液体熱伝導流体の流れの方向は、矢印312によって示される。
【0100】
流体循環システム202からの熱伝導流体は、坑口311を介して内側コンジット304に通る。熱伝導流体は、流れ切り換え装置310を通り、それは、内側コンジット304から、外側コンジット302と内側コンジットとの間の環状領域に流れを変更する。熱伝導流体は、次いで、処理領域300内の加熱器200を流れる。熱伝導流体からの熱伝導は、処理領域300に熱をもたらす。熱伝導流体は、次いで、第2の流れ切り換え装置310’を通り、それは、環状領域から内側コンジット304に流れを変更する。熱伝導流体は、第2の坑口311’を介して地層から取り除かれ、流体循環システム202’にもたらされる。流体循環システム202’からの加熱された熱伝導流体は、流体循環システム202に加熱器200’を介して戻る。
【0101】
流体が処理領域300に隣接する間に、環状領域を介して流体を通すために流れ切り換え装置310を使用することは、外側コンジット302の大きな熱伝導面積に部分的に起因する処理領域への増大される熱伝導を促進する。オーバーバーデン218に隣接する場合に内側コンジットを介して流体を通すために流れ切り換え装置310を使用することは、オーバーバーデンに対する熱損失を低減することが可能である。さらに、加熱器200は、オーバーバーデン218に隣接して断熱されて、地層に対する熱損失を低減することが可能である。
【0102】
図7は、オーバーバーデン218に隣接するコンジットインコンジット加熱器200の一実施形態の断面図を表す。断熱材料314は、外側コンジット302と内側コンジット304との間に位置していてもよい。液体熱伝導流体は、内側コンジット304の中心を流れることが可能である。断熱材料314は、高温(例えば、500℃を超える温度)で放熱を抑制するとともに、予備加熱および/または加熱の流量保証段階の間に、第2の熱伝導流体の流れを可能にする高多孔性断熱層であってもよい。通常動作の間に、外側コンジット302と、オーバーバーデン218に隣接する内側コンジット304との間の環状領域を介した流体の流れは、停止または抑制されることが可能である。
【0103】
断熱スリーブ315は、外側コンジット302のまわりに位置していてもよい。U字形状の坑井穴の各側の断熱スリーブが、加熱器の重量を支持することができるように、システムが加熱されていない場合、U字形状の加熱器の各側の断熱スリーブ315は、長い長さにわたって外側コンジット302にしっかりと結合されることが可能である。断熱スリーブ315は、加熱器200が持ち上げられることを可能にする構造部材である外側部材を含み、加熱器の熱膨張を調整することが可能である。ケーシング317は、断熱スリーブ315を囲んでいてもよい。断熱セメント319は、ケーシング317をオーバーバーデン218に結合することが可能である。断熱セメント319は、伝導熱損失を低減する低熱伝導率セメントであってもよい。例えば、断熱セメント319は、蛭石/セメント骨材であってもよい。非反応性ガスは、断熱スリーブ315とケーシング317との間のギャップ321に導入されて、地層流体が坑井穴内で上昇することを抑制する、および/または断熱ガスブランケットをもたらすことができる。
【0104】
図8は、地層内に位置したコンジットインコンジット加熱器(例えば、図6で表された加熱器)に液体熱伝導流体をもたらす循環システム202の一実施形態の概略を表す。循環システム202は、熱供給204、圧縮機316、熱交換器318、排気システム320、液体貯蔵タンク322、流体移動機210(例えば、ポンプ)、供給マニホールド324、戻りマニホールド326、および第2の熱伝導流体循環システム328を含んでいてもよい。ある実施形態では、熱供給204は炉である。熱供給204用の燃料は、燃料ライン330を介して供給されることが可能である。制御バルブ332は、温度監視装置334によって測定されるような熱い熱伝導流体の温度に基づいて熱供給204に供給される燃料の量を調整することが可能である。
【0105】
熱供給204用の酸化剤は、酸化剤ライン336を介して供給されることが可能である。熱供給204からの排気は、排気システム320に熱交換器318を介して通ることが可能である。圧縮機316からの酸化剤は、熱供給204からの排気によって加熱される熱交換器318を通ることが可能である。
【0106】
実施形態によっては、バルブ338は、予備加熱の間に、および/または加熱器への流体の循環の始動の間に開かれて、加熱流体で第2の熱伝導流体循環システム328を供給することが可能である。実施形態によっては、排気ガスは、第2の熱伝導流体循環システム328によって加熱器を介して循環される。実施形態によっては、排気ガスは、第2の熱伝導流体循環システム328の1つまたは複数の熱交換器を通って、加熱器を介して循環される流体を加熱する。
【0107】
予備加熱の間に、第2の熱伝導流体循環システム328は、加熱器の内側コンジットおよび/または内側コンジットと外側コンジットとの間の環状領域に第2の熱伝導流体をもたらすことが可能である。ライン340は、加熱器の内側コンジットに流体をもたらす供給マニホールド324の一部に第2の熱伝導流体をもたらすことが可能である。ライン342は、加熱器の内側コンジットと外側コンジットとの間の環状領域に流体をもたらす供給マニホールド324の一部に第2の熱伝導流体をもたらすことが可能である。ライン344は、加熱器の内側コンジットから流体を戻す戻りマニホールド326の一部から第2の熱伝導流体を戻すことが可能である。ライン346は、加熱器の環状領域から流体を戻す戻りマニホールド326の一部から第2の熱伝導流体を戻すことが可能である。第2の熱伝導流体循環システム328のバルブ348は、供給マニホールド324および/または戻りマニホールド326に、または供給マニホールド324および/または戻りマニホールド326からの第2の熱伝導の流れを可能とする、または停止することが可能である。予備加熱の間に、バルブ348はすべて開いていてもよい。加熱の流量保証の段階の間に、ライン340用およびライン344用のバルブ348は閉まっていてもよく、ライン342用およびライン346用のバルブ348は開いていてもよい。熱供給204からの液体熱伝導流体は、加熱の流量保証の段階の間に、加熱器の内側コンジットに流体をもたらす供給マニホールド324の一部に供給されることができる。液体熱伝導流体は、加熱器の内側コンジットから流体を戻す戻りマニホールド326の一部から液体貯蔵タンク322に戻ることが可能である。通常動作の間に、バルブ348はすべて閉まっていてもよい。
【0108】
実施形態によっては、第2の熱伝導流体循環システム328は、モバイルシステムである。一旦加熱器を介した熱伝導流体の正常な流れが確立されれば、可動性の第2の熱伝導流体循環システム328は、移動され、開始されていない他の循環システムに取り付けられることが可能である。
【0109】
通常動作の間に、液体貯蔵タンク322は、戻りマニホールド326から熱伝導流体を受けることが可能である。液体貯蔵タンク322は、断熱および外部加熱されることが可能である。外部加熱は、液体貯蔵タンク322内でコイルを介して蒸気を循環させる蒸気循環システム350を含んでいてもよい。コイルを介して通された蒸気は、所望の温度で、または所望の温度範囲内で、液体貯蔵タンク322内で熱伝導流体を維持する。
【0110】
流体移動機210は、液体貯蔵タンク322から熱供給204に液体熱伝導流体を移動させることが可能である。実施形態によっては、流体移動機210は、液体貯蔵タンク322内に位置する水中ポンプである。貯蔵タンク内に流体移動機210を有することは、ポンプの使用温度範囲内の温度でポンプを正しく保存することが可能である。また、熱伝導流体は、ポンプ用の潤滑剤として機能することが可能である。1つまたは複数の余分のポンプシステムが、液体貯蔵タンク322内に位置していてもよい。主要ポンプシステムが中断する、または補修される必要がある場合、余分のポンプシステムが使用されることが可能である。
【0111】
熱供給204の始動の間に、バルブ352は、液体熱伝導流体を液体貯蔵タンクに導くことが可能である。地層内での加熱器の予備加熱が完了された後、バルブ352は、液体熱伝導流体を、予備加熱された加熱器の内側コンジットに液体熱伝導流体をもたらす供給マニホールド324の一部に導くように再構成されることが可能である。予備加熱された戻りコンジットの内側コンジットからの戻り液体熱伝導流体は、地層を通った熱伝導流体を受け、熱伝導流体を液体貯蔵タンク322に導く戻りマニホールド326の一部を通ることが可能である。
【0112】
流体循環システム202を使用し始めるために、液体貯蔵タンク322は、蒸気循環システム350を使用して加熱されることが可能である。熱伝導流体は、液体貯蔵タンク322に加えられることが可能である。熱伝導流体は、液体貯蔵タンク322内で溶解する固体粒子として加えられることが可能であり、または、液体熱伝導流体は、液体貯蔵タンクに加えられることが可能である。熱供給204は開始されることが可能であり、流体移動機210は、液体貯蔵タンク322から熱供給に、および戻って熱伝導流体を循環させるために使用されることが可能である。第2の熱伝導流体循環システム328は、供給マニホールド324および戻りマニホールド326に結合された地層内で加熱器を加熱するために使用されることが可能である。加熱器の内側コンジットに給送する供給マニホールド324の一部への第2の熱伝導流体の供給が停止されることが可能である。加熱器の内側コンジットから熱伝導流体を受ける戻りマニホールドの一部からの第2の熱伝導流体の戻りも停止されることが可能である。熱供給204からの熱伝導流体は、次いで加熱器の内側コンジットに導かれることが可能である。
【0113】
熱伝導流体は、内側コンジットから内側コンジットと外側コンジットとの間の環状領域に流体の流れを変更する流れ切り換え装置に加熱器の内側コンジットを流れることが可能である。熱伝導流体は、次いで、内側コンジットへ戻る流れを変更する流れ切り換え装置を通ることが可能である。加熱器に結合されたバルブは、流体循環システムに加熱器のすべてに対して熱伝導流体を一度に供給する代わりに、個々の加熱器への熱伝導流体の流れが連続して開始されることを可能にする。
【0114】
戻りマニホールド326は、第2の流体循環システムから供給される地層内の加熱器を通った熱伝導流体を受ける。戻りマニホールド326内の熱伝導流体は、液体貯蔵タンク322に導かれることが可能である。
【0115】
初期加熱の間に、第2の熱伝導流体循環システム328は、熱供給204から供給された熱伝導流体を受けない加熱器の一部を介して第2の熱伝導流体を循環させ続けることが可能である。実施形態によっては、第2の熱伝導流体循環システム328は、熱供給204から供給される熱伝導流体の流れと同じ方向に第2の熱伝導流体を導く。実施形態によっては、第2の熱伝導流体循環システム328は、熱供給204から供給される熱伝導流体の流れと反対方向に第2の熱伝導流体を導く。第2の熱伝導流体は、熱供給204から供給される熱伝導流体の連続する流れを確実にすることが可能である。地層から離れる第2の熱伝導流体が、熱伝導流体が熱供給204から供給される状態で、熱伝導により地層に供給される第2の熱伝導流体より熱い場合、第2の熱伝導流体の流れが停止されることが可能である。実施形態によっては、他の条件が選択された期間の後に満足される場合に、第2の熱伝導流体の流れは停止されることが可能である。
【0116】
実施例
非限定的な実施例が以下に説明される。
【0117】
溶解塩循環システムシミュレーション
循環システムにおいて溶解塩を使用して油頁岩地層を加熱するシミュレーションが実行された。坑井間隔は30フィート(約9.14m)であり、処理領域は、配管の実質的水平部分を囲む地層の5000フィート(約1.5km)であった。オーバーバーデンの厚さは、984フィート(約300m)であった。地層内の配管は、外部コンジット内に位置した内部コンジットを含む。処理領域に隣接して、外部コンジットは、4インチ(約10.2cm)のスケジュール80配管であり、溶解塩は、外部コンジットと内部コンジットとの間の環状領域を流れる。地層のオーバーバーデンを介して、溶解塩は内部コンジットを流れる。配管内の第1の流体切り換え装置は、内部コンジットから処理領域前の環状領域に流れを変更し、配管内の第2の流体切り換え装置は、環状領域から処理領域後の内部コンジットに流れを変更する。
【0118】
図9は、異なる質量流量または異なる入口温度で、340℃の目標貯留層温度に達する時間を表す。曲線354は、550℃の入口溶解塩温度および6kg/sの質量流量の場合を表す。目標温度に達する時間は、1405日であった。曲線356は、550℃の入口溶解塩温度および12kg/sの質量流量の場合を表す。目標温度に達する時間は1185日であった。曲線358は、700℃の入口溶解塩温度および12kg/sの質量流量の場合を表す。目標温度に達する時間は745日であった。
【0119】
図10は、入口溶解塩温度が550℃であった場合の時間に対する処理領域端での溶解塩温度および動力注入速度を表す。曲線360は、質量流量が6kg/sであった場合の処理領域端での溶解塩温度を表す。曲線362は、質量流量が12kg/sであった場合の処理領域端での溶解塩温度を表す。曲線364は、質量流量が6kg/sであった場合の地層(W/ft)への動力注入速度を表す。曲線366は、質量流量が12kg/sであった場合の地層(W/ft)への動力注入速度を表す。円で囲まれたデータ点は、加熱がいつ停止されたかを示す。
【0120】
図11および図12は、2つの異なる質量流量に関するカナダのGrosmont地層内に位置した加熱器8000フィート(約2.4km)の加熱部分のシミュレーション結果を表す。図11は、18kg/sの質量流量の結果を表す。曲線368は、約540℃の加熱器入口温度を表す。曲線370は加熱器出口温度を表す。曲線372は加熱された体積平均気温を表す。曲線374は地層への動力注入速度を表す。図12は、12kg/sの質量流量の結果を表す。曲線376は、約540℃の加熱器入口温度を表す。曲線378は加熱器出口温度を表す。曲線380は加熱された体積平均気温を表す。曲線382は地層への動力注入速度を表す。
【0121】
これらの実施例は、地層内の複数の加熱器、および循環システムに結合された地層内の複数の加熱器に熱い熱伝導流体をもたらすように構成された少なくとも1つの流体循環システムを含むシステムを使用する方法を明示する。加熱器の少なくとも1つは、第1のコンジット、第1のコンジット内に位置した第2のコンジット、および第1の流れ切り換え装置を含む。流れ切り換え装置は、第2のコンジットを流れる流体が第1のコンジットと第2のコンジットとの間の環状領域を流れることを可能にするように構成されている。
【0122】
本発明の種々の態様のさらなる変形および別の実施形態は、この説明を考慮して当業者に明らかとすることが可能である。従って、この説明は、例示としてのみ解釈され、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示するためのものである。当然のことながら、本明細書に示され、記載された本発明の形態は、現在、好ましい実施形態になる。要素および材料は、本明細書で例証され、説明されたものに代用されてもよく、部品およびプロセスは、逆にされてもよく、本発明の特定の特徴が独立して利用されてもよく、すべては、本発明のこの説明の利点を有した後、当業者に明らかとなる。次の請求の範囲に記載されるように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された要素において変更が行われることが可能である。さらに、当然のことながら、本明細書に独立して記載された特徴は、ある実施形態では、組み合わせられることが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表下地層を加熱する方法であって、
第1の位置でコンジットインコンジット加熱器の第1の通路に溶解塩を導入することと、
第2の位置に地層内のコンジットインコンジット加熱器を介して溶解塩を通し、コンジットインコンジット加熱器を介して溶解塩の通過の間に溶解塩から処理領域に熱が移動することと、
第1の位置から間隔をあけて配置された第2の位置でコンジットインコンジット加熱器から溶解塩を取り除くこととを含む、方法。
【請求項2】
第1の通路に溶解塩を導入することが、コンジットインコンジット加熱器の内部コンジットに熱伝導流体を導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の通路に溶解塩を導入することが、コンジットインコンジット加熱器の内部コンジットに溶解塩を導入し、流れ切り換え装置を介して溶解塩を通して、内部コンジットから内部コンジットと外部コンジットとの間の環状領域への流れを変更する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2の流れ切り換え装置を介して溶解塩を通して、内部コンジットと外部コンジットとの間の環状領域からの流れを内部コンジットを介しての流れに変更することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
コンジットインコンジット加熱器の第2の通路に第2の熱伝導流体を導入して、第1の通路内の溶解塩の流動性を確実にすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
加熱器の温度が溶解塩の流動性を確実にするのに十分となった後、第2の通路内の第2の熱伝導流体の流れを除去または低減することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
溶解塩を導入する前に、加熱器の第1の通路に第3の熱伝導流体を導入して第1の通路を予備加熱することと、
第1の通路から第3の熱伝導流体の少なくとも一部を取り除くこととをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第3の熱伝導流体の少なくとも一部を取り除くことが、第3の熱伝導流体を溶解塩で置き換えることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
地表下地層を加熱する方法であって、
加熱器の第1の通路に第2の熱伝導流体を導入して、加熱器を予備加熱することと、
加熱器の第2の通路に第1の熱伝導流体を導入することと、
加熱器の温度が第1の熱伝導流体の流動性を確実にするのに十分となった後、第1の通路に第2の熱伝導流体の流れを取り除くまたは低減することとを含む、方法。
【請求項10】
第1の熱伝導流体を導入して第2の通路を予備加熱する前に、加熱器の第2の通路に第3の熱伝導流体を導入することと、
第2の通路からの第3の熱伝導流体の少なくとも一部を取り除くこととをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第3の熱伝導流体の少なくとも一部を取り除くことが、第1の熱伝導流体で第3の熱伝導流体を置き換えることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
地表下地層を加熱するためのシステムであって、
地層内の複数の加熱器に熱い熱伝導流体をもたらすように構成された少なくとも1つの流体循環システムと、
循環システムに結合された地層内の複数の加熱器とを含み、
加熱器の少なくとも1つが、
第1のコンジットと、
第1のコンジット内に位置する第2のコンジットと、
第2のコンジットを流れる流体が第1のコンジットと第2のコンジットとの間の環状領域を流れることを可能とするように構成された第1の流れ切り換え装置とを含む、システム。
【請求項13】
1つまたは複数の加熱器が、L形状の加熱器である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
流体が溶解塩であり、溶解塩が、オーバーバーデンの少なくとも一部に隣接する第2のコンジットを流れ、
熱い熱伝導流体が、第1のコンジットと、処理領域の少なくとも一部に隣接する第2のコンジットとの間の環状領域を流れる、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
少なくとも1つの流体循環システムが、
処理領域の第1の側に近接した第1の流体循環システムと、
処理領域の第2の側に近接した第2の流体循環システムとを含み、
第1の循環システムが、第1のセットの加熱器の入口に溶解塩をもたらし、第2の処理システムが、第1のセットの加熱器の出口から溶解塩を受ける、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
地表下地層を加熱する方法であって、
地表下地層内に位置した加熱器を介して第1の熱伝導流体を循環させて、加熱器内の第2の熱伝導流体の流動性を確実にする温度に加熱器の温度を上げることと、
加熱器を介しての第1の熱伝導流体の循環を停止することと、
地表下地層内に位置した加熱器を介して第2の熱伝導流体を循環させて、加熱器に隣接する熱処理領域の温度を上げることとを含む、方法。
【請求項17】
加熱器が、地層内にコンジットを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
加熱器が、コンジットインコンジット加熱器を含み、第1の熱伝導流体が、加熱器を介して第1の通路を流れ、第2の熱伝導流体が、加熱器を介して第2の通路を流れる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
地表下地層を加熱するためのシステムであって、
地層内の複数の加熱器に熱い熱伝導流体をもたらすように構成された少なくとも1つの流体循環システムと、
循環システムに結合された地層内の複数の加熱器とを含み、
加熱器の少なくとも1つが、
第1のコンジットと、
第1のコンジット内に位置した第2のコンジットと、
第2のコンジットを流れる流体が第1のコンジットと第2のコンジットとの間の環状領域を流れることを可能とするように構成された第1の流れ切り換え装置とを含み、
第1のコンジットの少なくとも一部は、電流が該部分に印加される場合に抵抗加熱されるように構成されており、抵抗加熱が、熱伝導流体を加熱して加熱器内で熱伝導流体の流れを維持するように構成されている、システム。
【請求項20】
抵抗加熱されるように構成された第1のコンジットの一部が、第1のコンジットのオーバーバーデン部分を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
地表下地層を加熱するためのシステムであって、
地層内の複数の加熱器に熱い熱伝導流体をもたらすように構成された少なくとも1つの流体循環システムと、
循環システムに結合された地層内の複数の加熱器とを含み、
加熱器の少なくとも1つが、
第1のコンジットと、
第1のコンジット内に位置した第2のコンジットと、
第2のコンジットを流れる流体が第1のコンジットと第2のコンジットとの間の環状領域を流れることを可能とするように構成された第1の流れ切り換え装置とを含み、
第2のコンジットの少なくとも一部は、電流が該部分に印加される場合に抵抗加熱されるように構成されており、抵抗加熱が、熱伝導流体を加熱して加熱器内で熱伝導流体の流れを維持するように構成されている、システム。
【請求項22】
抵抗加熱されるように構成された第2のコンジットの該部分が、第2のコンジットのオーバーバーデン部分を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項1】
地表下地層を加熱する方法であって、
第1の位置でコンジットインコンジット加熱器の第1の通路に溶解塩を導入することと、
第2の位置に地層内のコンジットインコンジット加熱器を介して溶解塩を通し、コンジットインコンジット加熱器を介して溶解塩の通過の間に溶解塩から処理領域に熱が移動することと、
第1の位置から間隔をあけて配置された第2の位置でコンジットインコンジット加熱器から溶解塩を取り除くこととを含む、方法。
【請求項2】
第1の通路に溶解塩を導入することが、コンジットインコンジット加熱器の内部コンジットに熱伝導流体を導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の通路に溶解塩を導入することが、コンジットインコンジット加熱器の内部コンジットに溶解塩を導入し、流れ切り換え装置を介して溶解塩を通して、内部コンジットから内部コンジットと外部コンジットとの間の環状領域への流れを変更する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2の流れ切り換え装置を介して溶解塩を通して、内部コンジットと外部コンジットとの間の環状領域からの流れを内部コンジットを介しての流れに変更することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
コンジットインコンジット加熱器の第2の通路に第2の熱伝導流体を導入して、第1の通路内の溶解塩の流動性を確実にすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
加熱器の温度が溶解塩の流動性を確実にするのに十分となった後、第2の通路内の第2の熱伝導流体の流れを除去または低減することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
溶解塩を導入する前に、加熱器の第1の通路に第3の熱伝導流体を導入して第1の通路を予備加熱することと、
第1の通路から第3の熱伝導流体の少なくとも一部を取り除くこととをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第3の熱伝導流体の少なくとも一部を取り除くことが、第3の熱伝導流体を溶解塩で置き換えることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
地表下地層を加熱する方法であって、
加熱器の第1の通路に第2の熱伝導流体を導入して、加熱器を予備加熱することと、
加熱器の第2の通路に第1の熱伝導流体を導入することと、
加熱器の温度が第1の熱伝導流体の流動性を確実にするのに十分となった後、第1の通路に第2の熱伝導流体の流れを取り除くまたは低減することとを含む、方法。
【請求項10】
第1の熱伝導流体を導入して第2の通路を予備加熱する前に、加熱器の第2の通路に第3の熱伝導流体を導入することと、
第2の通路からの第3の熱伝導流体の少なくとも一部を取り除くこととをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第3の熱伝導流体の少なくとも一部を取り除くことが、第1の熱伝導流体で第3の熱伝導流体を置き換えることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
地表下地層を加熱するためのシステムであって、
地層内の複数の加熱器に熱い熱伝導流体をもたらすように構成された少なくとも1つの流体循環システムと、
循環システムに結合された地層内の複数の加熱器とを含み、
加熱器の少なくとも1つが、
第1のコンジットと、
第1のコンジット内に位置する第2のコンジットと、
第2のコンジットを流れる流体が第1のコンジットと第2のコンジットとの間の環状領域を流れることを可能とするように構成された第1の流れ切り換え装置とを含む、システム。
【請求項13】
1つまたは複数の加熱器が、L形状の加熱器である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
流体が溶解塩であり、溶解塩が、オーバーバーデンの少なくとも一部に隣接する第2のコンジットを流れ、
熱い熱伝導流体が、第1のコンジットと、処理領域の少なくとも一部に隣接する第2のコンジットとの間の環状領域を流れる、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
少なくとも1つの流体循環システムが、
処理領域の第1の側に近接した第1の流体循環システムと、
処理領域の第2の側に近接した第2の流体循環システムとを含み、
第1の循環システムが、第1のセットの加熱器の入口に溶解塩をもたらし、第2の処理システムが、第1のセットの加熱器の出口から溶解塩を受ける、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
地表下地層を加熱する方法であって、
地表下地層内に位置した加熱器を介して第1の熱伝導流体を循環させて、加熱器内の第2の熱伝導流体の流動性を確実にする温度に加熱器の温度を上げることと、
加熱器を介しての第1の熱伝導流体の循環を停止することと、
地表下地層内に位置した加熱器を介して第2の熱伝導流体を循環させて、加熱器に隣接する熱処理領域の温度を上げることとを含む、方法。
【請求項17】
加熱器が、地層内にコンジットを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
加熱器が、コンジットインコンジット加熱器を含み、第1の熱伝導流体が、加熱器を介して第1の通路を流れ、第2の熱伝導流体が、加熱器を介して第2の通路を流れる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
地表下地層を加熱するためのシステムであって、
地層内の複数の加熱器に熱い熱伝導流体をもたらすように構成された少なくとも1つの流体循環システムと、
循環システムに結合された地層内の複数の加熱器とを含み、
加熱器の少なくとも1つが、
第1のコンジットと、
第1のコンジット内に位置した第2のコンジットと、
第2のコンジットを流れる流体が第1のコンジットと第2のコンジットとの間の環状領域を流れることを可能とするように構成された第1の流れ切り換え装置とを含み、
第1のコンジットの少なくとも一部は、電流が該部分に印加される場合に抵抗加熱されるように構成されており、抵抗加熱が、熱伝導流体を加熱して加熱器内で熱伝導流体の流れを維持するように構成されている、システム。
【請求項20】
抵抗加熱されるように構成された第1のコンジットの一部が、第1のコンジットのオーバーバーデン部分を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
地表下地層を加熱するためのシステムであって、
地層内の複数の加熱器に熱い熱伝導流体をもたらすように構成された少なくとも1つの流体循環システムと、
循環システムに結合された地層内の複数の加熱器とを含み、
加熱器の少なくとも1つが、
第1のコンジットと、
第1のコンジット内に位置した第2のコンジットと、
第2のコンジットを流れる流体が第1のコンジットと第2のコンジットとの間の環状領域を流れることを可能とするように構成された第1の流れ切り換え装置とを含み、
第2のコンジットの少なくとも一部は、電流が該部分に印加される場合に抵抗加熱されるように構成されており、抵抗加熱が、熱伝導流体を加熱して加熱器内で熱伝導流体の流れを維持するように構成されている、システム。
【請求項22】
抵抗加熱されるように構成された第2のコンジットの該部分が、第2のコンジットのオーバーバーデン部分を含む、請求項21に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−509415(P2012−509415A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531189(P2011−531189)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060090
【国際公開番号】WO2010/045097
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060090
【国際公開番号】WO2010/045097
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
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