説明

地震等から物品を防護する載置台

【課題】載置面の載置部分を水平に保ったまま落下させ、緩衝手段を介して停止させ、突出部を含む物品全体への衝撃力を緩衝し、かつ、物品の中間部を支持すてることにより、突出部を含む物品の破壊を有効に防止できる地震等から物品を防護する載置台を提供すること。
【解決手段】載置面に、物品の中間部断面が嵌合する嵌合孔を設け、該嵌合孔を垂直方向に通過可能であって、垂直下方へ延びた載置シャフトによって支持された載置板と、振動検知手段と、前記中間部断面が前記孔に嵌合するまで前記物品が落下した時、前記載置シャフトを緩衝的に停止させる載置シャフト停止手段と、常時、前記載置板が前記載置面にあるように前記載置シャフトを係止し、前記振動検知手段からの振動検知信号によって前記載置シャフトの係止を解除して、前記載置板及び載置シャフトを落下可能にする係止手段とを設けたことを特徴とする地震等から物品を防護する載置台。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学術的に重要な文化財あるいは高価な陶磁器、ガラス工芸品のような装飾品等の物品を、博物館に展示したり、応接室の飾り棚に飾ったり、店舗や展示会場に陳列する場合に、該物品を転倒や落下による破壊から護るための地震等から物品を防護する載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した上記したような破損し易い装飾品等を飾り棚や展示棚、陳列棚等に載置しておいたのでは、地震が発生した際、震動によって転倒したり落下して、貴重な装飾品等が損傷したり、破損してしまうことがある。このため、一般的には、飾り棚や陳列棚の装飾品等の周りに紐等を張設したり、支え用バー等を設けることで転倒や落下に対処している。また、特に大きい装飾品等の場合は、複数本の紐等を所定間隔を置いて張設している。しかし、このような方法では転倒、落下の防止手段としては不確実である。また、外観上の体裁も悪いだけでなく、装飾品等の鑑賞の邪魔になることがある。
【0003】
このような不都合を解消するため、物品が載置され、当該載置される物品を支持する支持手段と、振動を検知する検知手段と、この検知手段からの検知信号により、支持手段による器物の支持を解除させる解除手段と、支持手段の下方に配されており、支持手段による器物の支持解除で、支持手段から落下する物品を収容して保護する保護手段とを具備し、前記解除手段は、検知手段からの信号により作動するソレノイド装置と、支持手段に係合しており、ソレノイド装置によって支持手段との係合が解除される止具とを具備している対振動保護機能付き器物載置台が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、他の載置台として、頂部および底部に一対の開口部を対向するように設けた所定高さの支持台を備え、該支持台の頂部側の開口部に、その中央部で突き合わせつつ閉成自在にして、かつ開成自在の二枚一対のシャッター板を配設し、底部側の開口部下方に、緩衝性能を有しかつ容積を調節可能である装飾品等の受け袋の上端開口縁を装着、吊持し、かつ上記シャッター板の駆動装置と震動感知機とを設け、該震動感知機が地震による震動を感知して駆動装置を作動させることでシャッター板を開成するようにしたことを特徴とする地震等から装飾品等を防護する載置台が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第2746253号公報
【特許文献2】特許第3458089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された対振動保護機能付き器物載置台においては、開成した支持手段から落下した器物を、衝撃緩衝材を備えた箱体の底部によって受け取り、その上方を解除手段によって制御された防護蓋によって蓋することによって、更なる落下から保護する構成である。すなわち、特許文献1においては、落下した器物に対する更なる落下器物からの保護を作用効果としている。
【0007】
一方、実際の器物載置台においては、仮に落下領域に例えば一般的に考えられるスポンジ等の衝撃緩衝材が設けられていたとしても、陶芸品等が所定高さ位置から底部まで重力落下した場合に、破壊する可能性は極めて高いと推定される。従って、引用文献1においては、地震時の外部からの物体の衝撃から保護することを作用効果とするものであって、陶芸品等衝撃に極めて弱い物品に関する器物載置台内部の重力落下による衝撃については実質上解決に至っていない。
【0008】
引用文献2に記載された地震等から装飾品等を防護する載置台においては、袋が柔軟性を有し、また容積の変更を容易にかつ確実に行うことができることに注目し、器物載置台の内部における重力落下による器物の破損に対する防止手段を備えている。引用文献2の「緩衝性能を有しかつ容積を調節可能である装飾品等の受け袋の上端開口縁を装着、吊持する」構成は、受け袋の柔軟性に基づく衝撃吸収性を有効に利用し、特別に角状に突出した形状のもの等を除いて、どのような形状のものでも小さな衝撃のみでその形状に沿って受け止めることができる。また、中間部を紐で締める等して容易に容積を調整することができ、その上に載置される陶芸品等の器物は時々入れ替えられ、その形状や大きさが変更された場合にも、器物に合わせて受け袋の容積を調整できることは、落下による衝撃を最少にするために、さらに、落下により器物が回転することを防止するために有効である。
【0009】
一方、火焔土器や特別な形状の花器等にように、本体部分から大きく突出した突出部を有する物品については、特許文献1に記載された対振動保護機能付き器物載置台においては、衝撃緩衝材を備えた箱体の底部によって受け取った際の衝撃力によって、突出部が切り離されたり破壊される恐れが高い。
また、引用文献2に記載された地震等から物品を防護する載置台においては、突出部のない物品を衝撃力からは保護することはできる。しかし、本体部分から大きく突出した突出部を有する物品については、支持台の頂部側の開口部、その中央部で突き合わせつつ閉成自在である二枚一対のシャッター板に突出部が衝突して、突出部が切り離されたり破壊される恐れがある。
【0010】
(発明の目的)
本発明は、上記した従来技術の有する上述した問題点に鑑みてなされたもので、載置面の載置部分を水平に保ったまま垂直に落下させ、緩衝手段を介して停止させることにより、突出部を含む物品全体への衝撃力を緩衝することができる地震等から物品を防護する載置台を提供することを目的とする。さらに、物品の中間部を支持して物品の転倒を防止することにより、突出部を含む物品の破壊、特に、突出部の破壊や切り離されを有効に防止できる地震等から物品を防護する載置台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係わる地震等から物品を防護する載置台は、
載置面に、物品の中間部断面が嵌合する嵌合孔を設け、該嵌合孔を垂直方向に通過可能であって、垂直下方へ延びた載置シャフトによって支持された載置板と、
振動を検知する振動検知手段と、
前記中間部断面が前記孔に嵌合するまで前記物品が落下した時、前記載置シャフトを緩衝的に停止させる載置シャフト停止手段と、
常時、前記載置板が前記載置面にあるように前記載置シャフトを係止し、前記振動検知手段からの振動検知信号によって前記載置シャフトの係止を解除して、前記載置板及び載置シャフトを落下可能にする係止手段と
を設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明の実施態様は、以下のとおりである。
前記載置シャフト停止手段が、エアシリンダの緩衝部を有していることを特徴とする。このように構成することにより、前記載置シャフトの停止時の物品への衝撃を減少させることができる。
前記載置シャフト停止手段が、緩衝能力を調整可能な緩衝部を有していることを特徴とする。このように構成することにより、前記載置シャフトの停止時の物品への衝撃を適切にすることができる。
前記載置シャフト停止手段が、前記載置シャフトの停止位置を調整可能であることを特徴とする。このように構成することにより、載置面の開口の周囲に配置された緩衝材が物品の中間部と軽く接触する状態を容易に実現することができる。
前記嵌合孔の周囲に、緩衝材を配置したことを特徴とする。このように構成することにより、載置面の開口の周囲に物品の中間部が接触することによる衝撃を減少させることができる。
前記緩衝材が、エアチューブであることを特徴とする。このように構成することにより、緩衝性に優れた緩衝材を容易に形成できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の地震等から物品を防護する載置台によれば、載置面の載置部分を水平に保ったまま垂直に落下させ、緩衝手段を介して停止させることにより、突出部を含む物品全体への衝撃力を緩衝することができる効果を有する。同時に、物品の中間部を支持して物品の転倒を防止することにより、突出部を含む物品の破壊、特に、突出部の破壊や切り離されを有効に防止できる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(構成)
以下に、本発明の実施形態の地震等から物品を防護する載置台10の構成を図に基づいて説明する。
載置台10は、図1に示すように、載置面を形成する展示板12上において、火焔形器物Aを載置すべき載置領域に開口14を形成してなる。開口14の上端周囲には、緩衝のためのタイヤチューブ18が配置されている。火焔形器物Aは、例えば、新潟県十日町市に出土した火焔土器で、容器部の上方に火焔状の突出部を有する器物である。
【0015】
開口14内には、載置シャフト22によって支持された載置板20が配置されている。載置板20は、開口14内から円筒管24内を垂直移動可能である。載置シャフト22は、載置板20から垂直下方へ延び、展示板12と実質上一体のシャフトガイド26によってガイドされ、中間板31のエアシリンダ孔33を貫通している。載置シャフト22の中間部には、係止金具30が固着されている。係止金具30は、中間板31に取付けられた載置アクチュエータ32によって、通常は上昇位置に掛け留められている。地震が感知されたときは、載置アクチュエータ32の係止アーム92との係合が外れて、載置シャフト22は自由落下可能になる。
【0016】
載置シャフト22の下端部には、エアシリンダ40内を摺動して垂直移動するピストン部材42が取付けられている。エアシリンダ40の上端部は、中間板31に形成されたエアシリンダ支持部44によって支持されている。
エアシリンダ40のシリンダキャップ50の上には、載置板高さ調整キャップ52が配置されている。載置板高さ調整キャップ52は、高さの異なった複数のものが準備され、それを選択して配置することによって、載置板20の停止高さ位置を調整する。
載置板高さ調整キャップ52の上には、係止金具30を緩衝的に受け止めるためのコイルバネ40が配置されている。
【0017】
エアシリンダ40に隣接して、圧縮タンク60が配置されている。エアシリンダ40は、圧縮タンク60に連通されている。圧縮タンク60には、調整バルブ62が取付けられている。
【0018】
載置アクチュエータ32は、図3に示すように、地震検知部70と、駆動部72からなる。地震検知部70は、公知の振動センサーを組み込んだ振動センサー部74と、停電時に電池電源に切換え可能な電源部76と、振動センサー部74からの地震検知信号によって駆動部72の回転ソレノイド80へ地震検知駆動信号を供給する演算駆動部82からなる。
【0019】
駆動部72は、支持柱90によって軸支された係止アーム92と、係止アーム92を作動させる回転ソレノイド80を有する。回転ソレノイド80は、係止アーム92に係合するフィンガー94を設けたロータリー96を有する。ロータリー96は、演算駆動部82からの地震検知信号によって回動し、係止アーム92を図3に実線で示す位置、すなわち係止アーム92が係止金具30を持ち上げている位置と、フィンガー94が係止アーム92に係合しておらず、係止アーム92を図3に点線で示す位置、すなわち係止アーム92が係止金具30を持ち上げていない位置のどちらかにあるようにする。
係止アーム92の一端と、支持柱90の基部を繋ぐ引っ張りバネ100は、係止アーム92の図3における反時計方向に加わる重力の影響を軽減するために作用する。
【0020】
振動センサー部74の振動センサーは、振り子の傾きでリミットスイッチがONとする方式、レーザ光を利用し、地震発生時の液面変化による反射角度の変化や光遮断を検出する方式、その他、液面変化で永久磁石が上下動してスイッチが作動するリードスイッチ方式等が使用可能である。
【0021】
(作動)
展示板12の上に火焔形器物Aを展示する場合、載置板20の上に火焔形器物Aを載置する。載置板20は、係止金具30と係止アーム92の係合によって、開口14内にあって、展示板12と同一面になっている。
地震があり、振動センサー部74が地震を検知して地震検知信号を演算駆動部82へ出力する。演算駆動部82は、回転ソレノイド80へ地震検知駆動信号を供給する。回転ソレノイド80は、ロータリー96を回転させて、係止アーム92による係止金具39の係止を解いて、載置シャフト22及び載置板20が火焔形器物Aを載置したまま落下する。
【0022】
載置シャフト22の落下速度は、火焔形器物Aの重量が影響する載置台10の地震への反応速度及び火焔形器物Aが落下して停止する時の衝撃力を考慮して調整される。載置シャフト22の落下速度は、エアシリンダ40によって緩和される。エアシリンダ40の落下速度の減速能力及び緩衝能力は、エアシリンダ40への圧縮タンク60の遮断連通及び調整バルブ62の調整によって調節することができる。
【0023】
載置板20の落下後の停止位置は、開口14の周囲に配置されたタイヤチューブ18が火焔形器物Aの中間部と軽く接触して火焔形器物Aの転倒の恐れがない状態となるように決められる。ただし、実際上、開口14の周囲に配置されたタイヤチューブ18が火焔形器物Aの中間部と軽く接触する状態を実現することは困難なことが多い。そのため、載置板20の落下後の停止位置は、載置板高さ調整キャップ52を選択することによって調整される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の地震等から物品を防護する載置台の載置状態の垂直説明図である。
【図2】本発明の実施形態の地震等から物品を防護する載置台の落下状態の垂直説明図である。
【図3】本発明の実施形態の載置アクチュエータの斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
A 火焔形器物
10 載置台
12 展示板
14 開口
18 タイヤチューブ
20 載置板
22 載置シャフト
24 円筒管
26 シャフトガイド
30 係止金具
31 中間板
32 載置アクチュエータ
33 エアシリンダ孔
40 エアシリンダ
42 ピストン部材
50 シリンダキャップ
52 載置板高さ調整キャップ
60 圧縮タンク
62 調整バルブ
70 地震検知部
72 駆動部
74 振動センサー部
76 電源部
80 回転ソレノイド
82 演算駆動部
92 係止アーム
96 ロータリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面に、物品の中間部断面が嵌合する嵌合孔を設け、該嵌合孔を垂直方向に通過可能であって、垂直下方へ延びた載置シャフトによって支持された載置板と、
振動を検知する振動検知手段と、
前記中間部断面が前記孔に嵌合するまで前記物品が落下した時、前記載置シャフトを緩衝的に停止させる載置シャフト停止手段と、
常時、前記載置板が前記載置面にあるように前記載置シャフトを係止し、前記振動検知手段からの振動検知信号によって前記載置シャフトの係止を解除して、前記載置板及び載置シャフトを落下可能にする係止手段と
を設けたことを特徴とする地震等から物品を防護する載置台。
【請求項2】
前記載置シャフト停止手段が、エアシリンダの緩衝部を有していることを特徴とする請求項1に記載の地震等から物品を防護する載置台。
【請求項3】
前記載置シャフト停止手段が、緩衝能力を調整可能な緩衝部を有していることを特徴とする請求項1に記載の地震等から物品を防護する載置台。
【請求項4】
前記載置シャフト停止手段が、前記載置シャフトの停止位置を調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の地震等から物品を防護する載置台。
【請求項5】
前記嵌合孔の周囲に、緩衝材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の地震等から物品を防護する載置台。
【請求項6】
前記緩衝剤が、エアチューブであることを特徴とする請求項5に記載の地震等から物品を防護する載置台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−222481(P2007−222481A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48620(P2006−48620)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(301012461)株式会社武蔵 (4)
【Fターム(参考)】