説明

地震等から複雑な形状をした展示品を保護する載置台

【課題】貴重で複雑な形状をした展示品を地震等から保護する載置台を提供する。
【解決手段】柔軟性を持ち、背が高く伸びるド−ナツ形状をしたフロ−ト3を架台に固定し、中央部の展示台床下には電磁石19を配置する。また、展示品14内側低部に磁性材21を置き、展示台上部には、衝撃を吸収する素材できたクッションを設置する。地震等が発生した場合、地震感知装置が働いてロ−タリ−ソレノイド6を動かし、不燃性ガス注入バルブ5を開成すると瞬時にフロ−ト3内に不燃性ガスが充填され、所定の形状まで膨らみ展示品を包み込み、展示品どうしの接触による破損を防止する。一方、パワ−リレ−の働きによりバッテリ−からの電源がパワ−リレ−を介して展示台床下に配置した電磁石19を励磁し、展示品内側低部に配置した磁性材21を展示品共々展示台床に吸い付け、地震等での大きな揺れでも、展示品14は転倒や移動をすることなく、確実に保護できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重要な国宝等の文化財や高価な工芸品等の展示品を、地震等による展示品どうしの接触による破損、および転倒や落下等による破損しないよう保護する載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したような破損し易い展示品等を従来通りに棚に展示陳列しておいたのでは地震が発生した場合、上下の直下振動や360度方向からの大きな揺れによる転倒や落下で貴重な展示品等が損傷や破損することが多い。このため、通常では飾り棚や陳列棚に展示する場合は、展示品等の周りに紐とかバ−等を利用して転倒や落下に対処している。
しかし、このような方法では、今迄に発生した大きな地震では保護ができず、多くの貴重な文化財を破損している。また、今迄の方法では、外観上からも体裁が悪いうえに、展示品等の鑑賞の邪魔になる。
【0003】
このような不具合を解消するため、展示台として、頂部および低部に一対の開口部を対向するように設けた、所定の高さの支持台を備え、支持台の頂部側の開口部に、その中央部で突き合わせつつ閉成自在にして、かつ開成自在の二枚一対のシャッタ−板を配設し、低部側の開口部下方に緩衝性能を有し、かつ容積調節可能とした展示品等の受け袋上端開口縁を装着、吊持している。また、シャッタ−板の駆動装置と地震感知装置とを設けている。地震発生時に、地震の震動を地震感知装置が感知して、その信号をシャッタ−板駆動装置に送り、駆動装置を作動させることでシャッタ−板を開成するようにしたことを特徴とする、地震等から貴重な展示品を保護する載置台が提案されている(例えば特許3458089号公報)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常の角状に突出した形状をした火焔土器等を除いては、上記載置台が有効であるが、本体部分から大きく突出した突出部を有する展示品等では、展示台頂部側の開口部やシャッタ−板等に接触して、貴重な展示品の突出部が破損する恐れがある。
【発明の目的】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、貴重で複雑な形状をした各種の展示品を移動させることなく、地震等から保護する。複雑な形状をした複数種類に対応出来るように、少し大きめで、柔軟性を持ち、背が高く伸びるド−ナツ形状をしたフロ−トを架台に固定し、そのフロ−ト中央に展示品を置き地震待機状態で展示する。地震等発生で地震感知装置が作動し、感知装置からの電源がガス注入バルブのロ−タリ−ソレノイドを働かせ、バルブが開成して不燃性ガスがフロ−ト内へ瞬時に注入され、柔軟性があるド−ナツ形状をしたフロ−トの背が高く伸びて、展示品を包み込む。
同時に展示台床下に設置した電磁石も働き、展示品内側に収納した磁性材と吸引しあい、展示台床面に展示品は強く固定され、展示品の移動や転倒を阻止して、複雑な形状をした火炎土器や特別な形状をした高価なガラス工芸品等を地震等から保護する載置台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係わる地震等から展示品を保護する載置台は、
柔軟性があるド−ナツ形状で、背が高く伸びるジャバラ式のフロ−トを架台に固定する手段と、
展示台床下に電磁石か永久磁石を設置する手段と共に、展示品内側低部に磁性材を設置する手段と、
地震等を感知する地震感知手段と、
地震等発生で地震感知装置が作動して、地震感知装置からの電源がフロ−ト回路用パワ−リレ−を励磁することにより、バッテリ−からの電源がフロ−ト回路用パワ−リレ−を通過してタイマ−を介してロ−タリ−ソレノイドを働かせ、不燃性ガス注入バルブを動かす手段と、
柔軟性があるフロ−トの高さを決定する不燃性ガス注入バルブの開成時間を調節するタイマ−を設ける手段と、
フロ−ト中央部の展示台上部には衝撃を吸収する性能がある素材を設置する手段等の構成で、
地震等が発生した場合は、地震感知装置が作動して、地震感知装置からの電源がフロ−ト回路用パワ−リレ−を励磁し、バッテリ−からの電源がフロ−ト回路用パワ−リレ−を通過してタイマ−を介してロ−タリ−ソレノドを働かせ、ガス注入バルブが開成し、不燃性ガスを分配して複数箇所から、柔軟性あるフロ−ト内に充填し、瞬時にフロ−ト全体を平均に所定の高さ迄背を伸ばし展示品を包み込み、展示品どうしの接触による破損を防止する手段と、
地震感知装置からの電源が電磁回路用パワ−リレ−を励磁し、バッテリ−からの電源が電磁回路用パワ−リレ−を通過して展示台床下に配置した電磁石に供給され、強力な磁場を形成することにより、展示品内側低部に設置した磁性材を、展示品共々展示台床面に強力に吸い付ける手段と、
地震感知装置が一度働くと、各回路のパワ−リレ−の働きにより、バッテリ−からの電源がパワ−リレ−を通過するとき、その一部の電源をパワ−リレ−解除スイッチを介してパワ−リレ−励磁回路に流し、以後連続して展示品の転倒や移動が阻止できることを特徴とする、地震等から複雑な形状をした展示品を保護する載置台。
【0007】
平常時、常に地震等に対して待機しているが、
地震等が発生した場合は、地震感知装置が作動して、一連の作動により貴重で複雑な形状をした複数の展示品を動かすことなく、各展示品の周囲をフロ−トが包み込む形と、
複数の展示台床下に配置した電磁石が働き、複数の展示品内側低部に配置した磁性材を展示品共々展示台に強く吸い付ける構成で、
展示品どうしの接触による破損および転倒や移動を阻止する手法には、両手段を併用利用が最善だが、展示品の重要度、および展示場所等や展示品の数量等により、併用利用か、フロ−ト方式か、電磁石方式か、永久磁石方式のみとするか、選択して個別に利用しても展示品の保護性能に変わりがないことを特徴とする。
【0008】
本発明の実施態様は、以下の通りである。
フロ−ト中央部に配置した展示台は、展示台上部に衝撃吸収材で出来たクッションを配置し、弱い各種震動に対して対応できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上説明したように構成されるものであるから、次に述べる効果を有する。貴重で複雑な形状をした展示品を展示した状態で、動かすことなく地震等から展示品を保護する載置台で、地震等が発生すると、各手段による一連の動作で、展示品の周囲から柔軟性があるフロ−トが所定迄背が高く伸びて展示品を包み込むと同時に、展示台床下に配置した電磁石の働きで、各種の展示品内側低部に配置した磁性材を強力に引きつけるなどして、展示品どうしの接触による破損、また転倒や移動を阻止して、貴重で複雑な形状をした展示品を地震等から有効に保護できる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の基本的構成を図面を参照して説明する。図1は載置台の正面図である。図2は、載置台の平面図である。図3は、図2のA−A断面図である。図4は、地震等の発生による一連の作動でフロ−トが膨らんだ状態で、展示品は火焔状の大きな突出部がある物を載置した状態である。図5は電気配線図である。
【0011】
通常は、図1のようにフロ−ト3はジャバラが縮んだ状態で、中央の展示台9の上部には衝撃吸収材クッション12が配置され、このクッション12上に複雑な形状をした貴重な展示品14を載置し待機している。待機中に地震等が発生した場合、地震感知装置18が作動して、感知装置18からの電源がフロ−ト回路用パワ−リレ−22を励磁することにより、バッテリ−25からの電源がパワ−リレ−22を通過して、設定されたタイマ−13を介してロ−タリ−ソレノイド6を働かせ、ガス注入バルブ5を開成させる。ガス注入バルブ5が開成すると、不燃性ガスがフロ−ト3内に瞬時に充填され、図4の状態となる。この時、展示品14はフロ−ト3に包み込まれており、展示品14どうしでの接触による破損が阻止され、地震等から展示品14を安全に保護できる。
【0012】
また、平行して地震感知装置18からの電源が電磁石回路用パワ−リレ−23を励磁することにより、バッテリ−25からの電源がパワ−リレ−23を通過して、展示台9床下に配置されている電磁石19を励磁して強い磁場を発生させる。この磁力により展示品14内側低部に配置している磁性材21は、展示品14と一緒に展示台9に強力に吸い付けられる。以上のことから、地震等による大きな揺れが来ても、複雑な形状をした展示品14は、転倒や移動することもなく、安定した状態で地震等から確実に保護できる。
【0013】
複雑な形状をした展示品14の大きさに合った、任意の直径と高さのフロ−ト3へ、不燃性ガスを確実に充填できるよう、不燃性ガス注入時間をタイマ−13にてあらかじめ調整しておく。すると、地震等が発生したとき、瞬時に所定量のガスが確実にフロ−ト3内に充填され、所定の大きさに膨らみ、展示品14を包み込み地震等から確実に保護できる。
【0014】
また、博物館や美術館等の多くの展示品14を保管管理している倉庫であっても、地震等が発生した場合、地震感知装置18が作動して、倉庫の大きな棚の下部複数箇所に連続して設置された電磁石19を励磁し、多くの保管品内側低部に個々に配置している磁性材21を、保管品と一緒に、棚に強力に吸い付けられる。また、一度地震感知装置18が働くと、パワ−リレ−22および23の働きで地震がおさまっても連続して励磁し、パワ−リレ−解除スイッチ24をオフにするまで作動を続ける。このパワ−リレ−解除スイッチ24をオフとした場合、その時点で地震待機状態となって、以後も複雑な形状をした多くの保管品について破損および転倒や移動することもなく、安定した状態で地震等から確実に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 載置台上に火焔状の大きな突出部がある展示品を載置した通常状態での正面図である。
【図2】 載置台の平面図である。
【図3】 図2のA−Aラインの、載置台断面図である。
【図4】 図2のA−Aラインの、地震等で作動した時の火焔状の大きな突出部がある展示品を保護したときの載置台断面図である。
【図5】 電気配線図である。
【符号の説明】
【0016】
1 架台
2 フロ−ト押さえ
3 フロ−ト
4 分配管
5 ガス注入バルブ
6 ロ−タリ−ソレノイド
7 配線
8 ガス排出管
9 展示台兼フロ−ト押さえ
10 ガス注入管
11 ガス排出バルブ
12 衝撃吸収材
13 タイマ−
14 火焔土器で大きな突出部がある展示品
15 ACソケット
16 充電機
17 バッテリ−
18 地震感知装置
19 電磁石か永久磁石
21 磁性材
22 パワ−リレ−
23 パワ−リレ−解除スイッチ
24 バッテリ−
25 バッテリ−充電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性があるド−ナツ形状で、背が高く伸びるジャバラ式のフロ−トを架台に固定する手段と、
展示台床下に電磁石か永久磁石を設置する手段と共に、展示品内側低部に磁性材を設置する手段と、
地震等を感知する地震感知手段と、
地震等発生で地震感知装置が作動して、地震感知装置からの電源がフロ−ト回路用パワ−リレ−を励磁することにより、バッテリ−からの電源がフロ−ト回路用パワ−リレ−を通過してタイマ−を介してロ−タリ−ソレノイドを働かせ、不燃性ガス注入バルブを動かす手段と、
柔軟性があるフロ−トの高さを決定する不燃性ガス注入バルブの開成時間を調節するタイマ−を設ける手段と、
フロ−ト中央部の展示台上部には衝撃を吸収する性能がある素材を設置する手段等の構成で、
地震等が発生した場合は、地震感知装置が作動して、地震感知装置からの電源がフロ−ト回路用パワ−リレ−を励磁し、バッテリ−からの電源がフロ−ト回路用パワ−リレ−を通過してタイマ−を介してロ−タリ−ソレノドを働かせ、ガス注入バルブが開成し、不燃性ガスを分配して複数箇所から、柔軟性あるフロ−ト内に充填し、瞬時にフロ−ト全体を平均に所定の高さ迄背を伸ばし展示品を包み込み、展示品どうしの接触による破損を防止する手段と、
地震感知装置からの電源が電磁回路用パワ−リレ−を励磁し、バッテリ−からの電源が電磁回路用パワ−リレ−を通過して展示台床下に配置した電磁石に供給され、強力な磁場を形成することにより、展示品内側低部に設置した磁性材を、展示品共々展示台床面に強力に吸い付ける手段と、
地震感知装置が一度働くと、各回路のパワ−リレ−の働きにより、バッテリ−からの電源がパワ−リレ−を通過するとき、その一部の電源をパワ−リレ−解除スイッチを介してパワ−リレ−励磁回路に流し、以後連続して展示品の破損および転倒や移動が阻止できることを特徴とする、地震等から複雑な形状をした展示品を保護する載置台。
【請求項2】
平常時、常に地震等に対して待機しているが、
地震等が発生した場合は、地震感知装置が作動して、一連の作動により貴重で複雑な形状をした複数の展示品を動かすことなく、各展示品の周囲をフロ−トが包み込む形と、
複数の展示台床下に配置した電磁石が働き、複数の展示品内側低部に配置した磁性材を展示品共々展示台に強く吸い付ける構成で、
展示品どうしの接触による破損および転倒や移動を阻止する手法には、両手段を併用利用が最善だが、展示品の重要度、および展示場所等や展示品の数量等により、併用利用か、フロ−ト方式か、電磁石方式か、永久磁石方式のみとするか、選択して個別に利用しても、展示品の保護性能に変わりがないことを特徴とする、請求1に記載の地震等から複雑な形状をした展示品を保護する載置台。
【請求項3】
フロ−ト中央部に配置した展示台は、展示台上部に衝撃吸収材で出来たクッションを配置し、弱い各種震動に対して対応できることを特徴とする、請求項1に記載の地震等から複雑な形状をした展示品を保護する載置台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−325895(P2007−325895A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184937(P2006−184937)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(301012461)株式会社武蔵 (4)
【Fターム(参考)】