説明

均一表面処理された炭素繊維とその製造方法

【課題】表面が均一に電解酸化処理され界面接着性に優れた炭素繊維及び炭素繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】電解液7が貯留してある電解槽3と、電解液7の水面上方に配設された陽極ローラ11と、陽極ローラを通過した炭素繊維9を連続的に前記電解槽内の電解液に浸漬させる浸漬ローラ13、15と、電解液7から炭素繊維9を引き上げる電解液水面上方に配設されたガイドローラ17と、電解槽3内に電解液7に浸漬され、炭素繊維の走行方向において炭素繊維の電解液への浴入り位置Aより後方側に配設されている負極5と、を有する電解酸化処理装置で、走行する炭素繊維を陽極として負極との間に電圧を印加し、表面処理電気量 3 C/gから8.5 C/gの範囲で炭素繊維の電解酸化処理を行う炭素繊維の製造方法。この方法により得られる炭素繊維は、繊維束の内部と外部間の処理斑が低減された、マトリックス樹脂との含浸性が高い炭素繊維である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解酸化処理法により得られる界面接着性に優れた炭素繊維とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を炭素繊維で補強した炭素繊維複合材料は、引張強度・引張弾性率が高く、耐熱性、疲労特性に優れるなどの優れた特長を有しており、スポーツ・レジャー、航空・宇宙等の分野で幅広く用いられている。
【0003】
炭素繊維は、アクリル繊維等の原料繊維を、空気中で200〜300℃に加熱することにより耐炎繊維とした後、不活性ガス雰囲気中1000℃以上で焼成することにより製造される。
【0004】
炭素繊維複合材料の強度・弾性率等の機械的特性は、炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性により大きな影響を受ける。そのため、耐炎化工程、炭素化工程を経た後、マトリックス樹脂との親和性を高めることを目的として炭素繊維の表面に含酸素官能基を導入する酸化処理が一般に行われる。
【0005】
炭素繊維表面の酸化処理としては、液相における薬液酸化・電解酸化、気相酸化などの方法で処理することが知られている。これら表面処理のうち、生産性が高く、処理が均一に行える等の理由により、液相における電解酸化処理が広く採用されている。液相電解酸化処理は、電解質水溶液中で陽極としての炭素繊維と、負極との間に電圧を印加することにより、炭素繊維を電解酸化する処理方法である。
【0006】
炭素繊維は、その製造工程において1,000〜80,000本程度の束形状に製造される。通常の条件で電解酸化処理装置により電解酸化処理した炭素繊維は、束の外側に位置する繊維の酸化状態に比較して内側に位置する繊維の酸化状態が不十分となり、表面の酸化状態にばらつきがある。表面の酸化処理が均一でない炭素繊維をマトリックス樹脂に配合した場合には、炭素繊維の表面の官能基が少ない部分とマトリックス樹脂との接着が不十分となり、高いコンポジット物性を示す複合材料が得られない。
【0007】
表面処理の不均一性を解決するために、特開2002−38368号公報には、炭素繊維束を均一に表面酸化処理する処理装置が記載されている。この処理装置は、2つの陽極槽の間に陰極槽を配設し、上流側の陽極槽で炭素繊維に電解液を含浸させた後、陰極槽と下流側の陽極槽の液面に接触させて炭素繊維を走行させることにより炭素繊維の酸化処理を行うものである。この装置は3つの電解槽が必要であり、より簡便な装置が求められている。
【0008】
表面処理の不均一性を解決するために、断続的に炭素繊維束に電圧を印加し、炭素繊維束内部の拡散効率を向上させ、陽極酸化させる方法が提案されている(特許文献2〜4など)。何れも、炭素繊維束内部と外周部間の処理斑の低減に繋がる。しかし、断続的に処理を行うために、炭素繊維束の内部と外周部間の処理斑は低減するが、炭素繊維長手方向、機幅方向での斑の改善までには至ってない。
【0009】
また、特許文献5には、還元電気量を酸化電気量と還元電気量との和で除した値である還元率を0.001〜0.5とし、炭素繊維表面の陽極酸化と陰極還元を周期的に繰り返すことにより均一な処理効果が得られることが記載されている。しかし得られた繊維束は、界面せん断力で示される接着力のバラツキが30%であるに過ぎず、均一処理が不十分である。
【特許文献1】特開2002−38368号公報(図1)
【特許文献2】特開昭63−264967号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平7−189113号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平1−298275号公報(図1)
【特許文献5】特開平10−266066号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、表面が均一に酸化処理され、マトリックス樹脂に配合したときに高いコンポジット物性を示す炭素繊維が得られる炭素繊維および炭素繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意検討を行った結果、電解酸化処理装置における炭素繊維の電解液への浴入り位置に対する負極位置と、炭素繊維表面の酸化処理状態との間に一定の関係が存在することを見出した。更に、負極位置を所定の位置に設けた装置を用いて表面処理を行った炭素繊維は、表面の酸化状態のばらつきが極めて少ないものであることを知得し、本発明を完成するに到った。
【0012】
即ち、上記課題を解決する本発明は、以下に記載するものである。
【0013】
〔1〕 X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.05〜0.15、サイクリックボルタンメトリー(Cyclic Voltammetry)法により測定される炭素繊維の表面特性Ipaが0.16〜0.25であり、サイクリックボルタンメトリー法により測定される炭素繊維表面処理度合いのバラツキが6%以下であることを特徴とする炭素繊維。
【0014】
〔2〕 電解液が貯留してある電解槽と、前記電解槽の電解液水面上方に配設された陽極ローラと、前記陽極ローラを通過した炭素繊維を連続的に前記電解槽内の電解液に浸漬させる浸漬ローラと、電解液から炭素繊維を引き上げる電解液水面上方に配設されたガイドローラと、前記電解槽内に電解液に浸漬され、炭素繊維の走行方向において炭素繊維の電解液への浴入り位置より後方側に配設されている負極と、を有する炭素繊維用電解酸化処理装置で、走行する炭素繊維を陽極として負極との間に電圧を印加し、表面処理電気量 3〜8.5 C/gの範囲で炭素繊維を電解酸化処理することを特徴とする〔1〕に記載の炭素繊維の製造方法。
【0015】
〔3〕 負極が電解液に浸漬されて走行する炭素繊維の下方に配設される炭素繊維用電解酸化処理装置を用いる〔2〕に記載の炭素繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明で用いる電解酸化処理装置は、電解槽内に、負極が炭素繊維の走行方向において炭素繊維の電解液への浴入り位置より後方側に配設されている。その結果、炭素繊維の酸化処理が緩やかに行われ、炭素繊維の表面が均一に酸化処理される。この装置で表面処理される本発明の炭素繊維束は、内部に存在する繊維と外周部に存在する繊維間での処理斑が極めて少ない。装置の陽極と陰極の間に印加される電圧は常時一定であるので、炭素繊維束の繊維方向間で生じる処理斑も極めて少ない。更に、多数の炭素繊維束を平行に走行させて同時に表面処理する場合には、炭素繊維間での表面処理状態のばらつきが少ない。本発明の炭素繊維は表面処理状態にばらつきが少なく樹脂との親和性が高いので、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂に配合することにより機械的強度の高い炭素繊維複合材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で使用する電解酸化処理装置の一例の概略構成図を図1に示す。
【0018】
図1中、1は電解酸化処理装置で、3は電解槽である。電解槽3は内部に浸漬ローラ13、15と、負極5とを備えている。電解槽3内には硫酸等の電解液7が貯留されており、浸漬ローラ13、15の下部側と負極5は電解液7に浸漬された状態となっている。浸漬ローラ13、15は直径が同一に形成され、同じ高さに取り付けられている。
【0019】
電解槽3の上方には、炭素繊維9の走行方向の前方側に陽極ローラ11が、後方側にガイドローラ17が設けられている。陽極ローラ11はその表面が+に帯電した金属ローラで、不図示の電源から電解電流が供給される。炭素繊維9は、陽極ローラ11を通過した後、浸漬ローラ13、15に導かれて電解液に浸漬される。炭素繊維9は導電性が高いので、電解液中で陽極として作用する。陽極ローラ11と負極5との間に電圧を印可することにより炭素繊維の表面が電解酸化され、カルボキシル基、カルボニル基等の含酸素官能基が炭素繊維表面に導入される。表面が電解酸化処理された炭素繊維9は浸漬ローラ13、15を通過した後、ガイドローラ17により電解液7から引き上げられ、電解酸化処理が終了する。
【0020】
電解酸化処理装置1において、負極5は炭素繊維9が電解液7に液没する浴入り位置Aより炭素繊維9の走行方向において後方かつ電解液に液没している炭素繊維9の下方に配置されている。負極5を浴入り位置Aより後方に配置することにより、浴入りした炭素繊維の酸化反応が緩やかとなり、炭素繊維の表面は均一に電解酸化処理される。
【0021】
負極5の配設位置は、炭素繊維の浴入り位置Aより炭素繊維の走行方向の後方側であれば特に制限されない。炭素繊維が浴入り後、3〜20秒後、より好ましくは8〜20秒後に負極5の上方を通過するように、負極5の配設位置を調節することが好ましい。なお、炭素繊維の走行速度は、通常50〜600m/h程度である。
【0022】
上記説明においては、浸漬ローラ13、15の上部側が電解液の液面より高い場合について説明したが、浸漬ローラは全体が完全に液没していてもよい。ローラー巻付きのトラブル防止の観点から、浸漬ローラ13、15の上部側は液面より高い方が好ましい。具体的には、浸漬ローラ13、15は、その直径の好ましくは50〜80%、より好ましくは60〜70%が液面より高く取り付けられている。
【0023】
炭素繊維の電解酸化処理に用いる電解液7としては、硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機水酸化物、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩類などの電解質水溶液を挙げることができる。
【0024】
本発明で電解酸化処理する炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維の他、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維も使用することができる。
【0025】
炭素繊維9は、通常、直径4〜8μmのフィラメントが1000〜80000本程度集合した束形状に製造される。本発明の処理装置では、上記繊維径、フィラメント数に限定されず、いかなる繊維径、フィラメント数のものでも処理することが可能である。
【0026】
炭素繊維9に通電する電気量は、電解液7に使用する電解質の種類や炭素繊維9の弾性率等の条件に応じて表面酸素濃度比O/C、Ipa値から適宜決定すればよい。例えば、電解液に硫酸アンモニウム水溶液を用いて弾性率24tonf/mmの炭素繊維の電解酸化処理を行う場合には、炭素繊維に通電する電気量を3〜8.5C/gとすることが好ましく、4〜7C/gとすることがより好ましい。
【0027】
炭素繊維9の電解酸化処理温度は10〜80℃の範囲とするが、20〜50℃とすることが好ましい。
【0028】
炭素繊維の表面処理を行う際の指標としては、X線光電子分光法(ESCA)を用いて測定できる炭素繊維の表面酸素濃度比(O/C)により管理するのが良い。本発明の炭素繊維束を熱硬化性樹脂に配合して複合材料とする場合には、O/Cが、0.05〜0.15となるように電解酸化処理することが好ましい。
【0029】
O/Cが0.05より低いと表面処理効果が十分ではなく、マトリックス樹脂との接着性が低下してしまい、複合材料は安定した機械的特性が得られない。一方、O/Cが0.15より高いと炭素繊維の表面が過度に酸化され、繊維自体が脆弱になるため安定した機械的特性が得られない。
【0030】
表面酸素濃度O/Cが0.05〜0.15、サイクリックボルタンメトリー(Cyclic Voltammetry)法により測定されるIpaが0.16〜0.25、後述する実施例に記載の方法により測定される表面処理度合いのバラツキが6%以下の本発明の炭素繊維は、上述した電解酸化処理装置を用い、表面処理電気量3〜8.5C/gで表面処理を行うことにより得ることができる。
【0031】
本発明の炭素繊維束は、炭素繊維表面特性Ipaの値を0.16〜0.25とするが、好ましくは 0.16 〜 0.22、より好ましくは 0.16 〜 0.20 である。Ipaが0.16より低いと表面処理効果が十分ではなく、マトリックス樹脂との接着性が低下してしまい、複合材料は安定した機械的特性が得られない。一方、Ipaが0.25より高いと炭素繊維の表面が過度に酸化され、繊維自体が脆弱になるため安定した機械的特性が得られない。
【0032】
本発明の炭素繊維束は、サイクリックボルタンメトリー法により測定される炭素繊維表面処理度合いのバラツキが6%以下であるが、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下である。炭素繊維表面処理度合いのバラツキが6%より高いと、炭素繊維の表面の官能基が少ない部分とマトリックス樹脂との接着が不十分となり、マトリックス樹脂との接着状態が悪くなり、優れた機械的特性が得られない。炭素繊維表面処理度合いのバラツキは少ないほどマトリックス樹脂に配合したときに機械的強度が高い複合材料とすることができる。そのため、表面処理度合いのバラツキに特に下限値は設定していないが、上記装置を用いた表面処理により得られる炭素繊維束は、表面処理度合いのバラツキが最も少ない場合で2%程度である。
【実施例】
【0033】
以下に示す実施例、比較例の方法により、炭素繊維ストランドの表面処理を行った。各実施例及び比較例では、電解酸化処理後の炭素繊維を上述の方法で、表面酸素濃度比O/C、炭素繊維表面特性Ipa、炭素繊維表面処理度合いのバラツキ、炭素繊維のストランド強度及び弾性率、IPSSを測定した。
【0034】
〔表面酸素濃度比O/Cの測定〕
日本電子社製X線光電子分光器(ESCA JPS−9000MX)を用いて測定を行った。炭素繊維ストランドを10−6Paに減圧した測定室に入れ、Mgを対極として電子線加速電圧10kV、10mAの条件で発生させたX線を照射した。酸素原子、炭素原子より発生する光電子のスペクトルからその面積比を算出し、表面酸素濃度比O/Cとした。
【0035】
〔サイクリックボルタンメトリー法による炭素繊維表面特性Ipaの測定方法〕
燐酸を用いて電気伝導度90mS/cmの燐酸水溶液を作製した。参照電極としてAg/AgCl電極、対極として十分な表面積を有する白金電極、作動電極として炭素繊維束を使用した。
【0036】
電位操作範囲は−0.2V〜0.8Vとし、電位操作速度は、5mV/secとした。3回以上掃引させ、電位―電流曲線を描いた。電位―電流曲線が安定した段階で、Ag/AgCl電極に対して、+0.4Vでの電位を標準にとって電流値を読み取った。
【0037】
次式に従い、炭素繊維表面特性Ipaを算出した。
Ipa[μA/cm2]=電流値[μA]/試料長[cm]×{4π・目付[g/m]・フィラメント数/密度[g/cm3]}1/2
【0038】
〔炭素繊維表面処理度合いのバラツキ〕
本発明における炭素繊維表面処理度合いのバラツキIpaを求めるために、炭素繊維束を2本以上に分繊し、それぞれについてIpaを測定した。分繊した各炭素繊維束のIpa測定値から、Ipaのバラツキとして、その標準偏差の平均値に対する割合、即ちC.V.値を求めた。
【0039】
〔炭素繊維のストランド強度及び弾性率の測定方法〕
炭素繊維の樹脂含浸ストランド強度は、JIS R 7601に規定された方法により測定した。密度は、アルキメデス法により測定し、試料繊維はアセトン中にて脱泡処理し測定した。
【0040】
〔面内せん断応力(IPSS)〕
また、電解酸化処理後の炭素繊維束を用い、炭素繊維束を一方向に引きそろえて並べ、炭素繊維シートを得た。得られた炭素繊維シートにエポキシ樹脂(東邦テナックス社製、#135、硬化温度180℃)を含浸させた後、80〜100℃に加熱してエポキシ樹脂を予備重合させ、一方向プリプレグを得た。次いで、得られた一方向プリプレグ8枚を繊維の方向が順に[+45/−45/−45/+45/+45/−45/−45/+45]となるように積層し、炭素繊維束の含有量が体積含有率で60%である、繊維強化プラスチック板材を製造した。
【0041】
得られた試験片を用いて、JIS K 7079に記載の±45°方向引張法に従って、面内せん断応力(IPSS)を測定した。
【0042】
実施例1
図1に示す電解酸化処理装置を用い、炭素繊維ストランド(400tex、フィラメント数:6K)の電解処理を行った。電解槽には、長さ3400mm、幅3600mm、深さ250mmのものを使用し、浸漬ローラ13、15間の距離を2800mmとした。浸漬ローラ13、15の下方2cmに100cm×3600cmの負極5を長手方向が炭素繊維ストランドの繊維軸方向に対して垂直になるように配置した。電解液には10%硫酸アンモニウムを使用した。平行に並べた複数本の炭素繊維ストランドを処理装置に供給し、表面処理電気量を4.75C/gとし、表1に示す条件で電解酸化を行った。炭素繊維の電解液への浸漬時間は、22秒であった。なお、炭素繊維ストランドが浴入り後、負極5の上方に到達するまでに要した時間は18秒であった。
【0043】
実施例2
表面処理電気量を3 C/gとし、電解酸化を行った以外は、実施例1と同様の方法で炭素繊維ストランドの電解酸化処理を行った。
【0044】
実施例3
表面処理電気量を6 C/gとし、電解酸化を行った以外は、実施例1と同様の方法で炭素繊維ストランドの電解酸化処理を行った。
【0045】
実施例4
表面処理電気量を8 C/gとし、電解酸化を行った以外は、実施例1と同様の方法で炭素繊維ストランドの電解酸化処理を行った。
【0046】
比較例1
表面処理電気量を9C/gとし、電解酸化を行った以外は、実施例1と同様の方法で、炭素繊維ストランドの電解酸化処理を行った。
【0047】
比較例2
表面処理電気量を4.75C/gとし、図2に示す装置により炭素繊維ストランドの電解酸化処理を行った。負極5は、炭素繊維の走行方向において浴入り位置Aの前方に、浴入り位置Aとの水平距離が100mmになるように配設した。
【0048】
比較例3
表面処理電気量を9C/gとし、電解酸化を行った以外は、比較例2と同様の方法で炭素繊維ストランドの電解酸化処理を行った。
【0049】
比較例4
表面処理電気量を3C/gとし、電解酸化を行った以外は、比較例2と同様の方法で炭素繊維ストランドの電解酸化処理を行った。
【0050】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明で使用する電解酸化処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の比較例2〜4で用いた電解酸化処理装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 電解酸化処理装置
3 電解槽
5 負極
7 電解液
9 炭素繊維
11 陽極ローラ
13、15 浸漬ローラ
17 ガイドローラ
A 浴入り位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.05〜0.15、サイクリックボルタンメトリー(Cyclic Voltammetry)法により測定される炭素繊維の表面特性Ipaが0.16〜0.25であり、サイクリックボルタンメトリー法により測定される炭素繊維表面処理度合いのバラツキが6%以下であることを特徴とする炭素繊維。
【請求項2】
電解液が貯留してある電解槽と、前記電解槽の電解液水面上方に配設された陽極ローラと、前記陽極ローラを通過した炭素繊維を連続的に前記電解槽内の電解液に浸漬させる浸漬ローラと、電解液から炭素繊維を引き上げる電解液水面上方に配設されたガイドローラと、前記電解槽内に電解液に浸漬され、炭素繊維の走行方向において炭素繊維の電解液への浴入り位置より後方側に配設されている負極と、を有する炭素繊維用電解酸化処理装置で、走行する炭素繊維を陽極として負極との間に電圧を印加し、表面処理電気量 3〜8.5 C/gの範囲で炭素繊維を電解酸化処理することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
【請求項3】
負極が電解液に浸漬されて走行する炭素繊維の下方に配設される炭素繊維用電解酸化処理装置を用いる請求項2に記載の炭素繊維の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−114557(P2009−114557A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285731(P2007−285731)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000003090)東邦テナックス株式会社 (246)
【Fターム(参考)】