説明

坑壁の展開画像作成装置

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本発明は、横坑の坑壁の状態を撮影して記録するための装置に関し、特には、坑壁の全周360度の画像を単一の画像として撮影し、平面上に展開した画像として記録する装置に関するものである。
【従来の技術】
従来は、撮影したい断面の位置から離れた場所から撮影することによって、坑壁の全周360度の画像を単一の画像として撮影記録したり、坑内に、カメラの光軸を坑の軸に平行に設置し、前記カメラのレンズ前方に光軸に45度傾斜させた平面鏡を回転させることにより、坑壁の全周を単一の画像として撮影することが行われてきた。
しかし、撮影したい断面の位置から離れた場所から撮影するという方法では、坑内の浮遊微細粉塵等によって鮮明な画像が得られないという問題と、坑壁をかなり斜めから撮影することになるので、画像が圧縮されてしまい、解像度が落ちるという問題がある。
また一方のカメラのレンズの前で鏡を回転させる方法では撮影に時間がかかるという問題がある。
そこで、特開平1−210594号公報に開示されているように、垂直方向に掘削されたボーリング孔内を昇降するゾンデに全周方向の透明窓を設けると共にその内部に全周が写る回転体鏡と照明ランプを収容して、前記回転体に写った坑壁をテレビカメラで撮影するように構成された技術がある。この技術は、垂直方向に掘削されたボーリング孔を対象とするという制限があるが、従来の装置より一歩進んだものである。
【発明が解決しようとする課題】
このような種々な構成による坑壁画像の撮影装置においては、基本的に円筒状の坑壁画像を平面的な展開画像に展開する技術と、テレビカメラ等で順次得られる坑壁の画像を解析する場合の画像の上下方向等の向きを一致させる技術とが重要である。
そこで、前述した特開平1−210594号公報の技術は、撮影対象が垂直方向に掘削されたボーリング孔の坑壁であるので、ボーリング孔内を昇降するゾンデに方位計を備えて、坑壁画像とともに方位計も撮影することによって、坑壁の画像の向きを把握する技術が開示されている。
ところが、トンネル等のように横坑の坑壁画像を撮影する場合には、方位計によって坑壁画像の上下方向等の向きを把握することはできないという問題があった。
そこで、本発明は上記問題点を解決するために、トンネル等のように横坑の坑壁画像を撮影して、その展開画像を得ることのできる装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
そのために、本発明にかかる坑の壁面の展開画像作成装置では、略円形断面をもつ横坑の所定幅の略円筒状の内壁面の画像を映すよう横坑の中心に設けた凸面鏡と、該凸面鏡に映された画像を撮影して基本画像を得る電子カメラと、前記基本画像の鉛直方向を重力の作用によって指示する指示手段と、前記基本画像の向きを鉛直方向に修正する修正手段と、前記基本画像を順次半径の異なる同心円状の複数の環状画像に分解し、該環状画像を直線状画像に展開し、この直線状画像を順次並べることによって平面に展開された展開画像を出力する画像処理手段とを備えるという手段を講じた。
また、修正手段は、電子カメラを横坑内に懸垂することによって、電子カメラの画像の上下方向を鉛直方向に一致させるように構成されている懸垂手段とするとよい。
また、修正手段は、電子カメラを回転自在に支持する支持手段と、前記電子カメラに垂下された重錘とからなり、前記重錘によって前記電子カメラの特定部位の方向を鉛直方向に一致させるように構成するとよい。
また、指示手段は、小球もしくは液体中の気泡によって鉛直方向を電子カメラの視野内に指示する指示手段とするとよい。
【作用】
本発明においては、横坑の中心に設けた凸面鏡に映された内壁面の所定幅の略円筒状の画像を、電子カメラによって撮影して基本画像を得る。
そして、画像処理手段によって、前記基本画像を順次半径の異なる同心円状の複数の環状画像に分解し、該環状画像を直線状画像に展開し、この直線状画像を順次並べることによって平面に展開された展開画像を出力する。
このとき、前記基本画像の鉛直方向は、指示手段によって指示されているので、修正手段により画像の上下方向を鉛直方向に一致させるように修正した状態で正確な展開画像が得られる。
また、修正手段を、電子カメラを横坑内に懸垂する懸垂手段とすることによって、電子カメラの画像の上下方向は、鉛直方向に一致した状態に修正される。
また、修正手段を、電子カメラを回転自在に支持する支持手段と、前記電子カメラに垂下された重錘とから構成することにより、電子カメラの画像の上下方向は常時鉛直方向に一致するように修正される。
また、指示手段を、小球もしくは液体中の気泡によって鉛直方向を指示する構成とすることにより、小球は常時重力の作用によって鉛直方向を指示し、気体中の気泡は重力と反対方向に作用する浮力によって鉛直方向を指示するのである。よって、この鉛直方向も電子カメラの視野内において坑壁の基本画像と共に撮影されるので、基本画像の鉛直方向は常時把握されているのである。そして、修正手段により画像の上下方向を修正して展開画像を得るのである。
【実施例】
以下に本発明をその実施例を示した図面に基づいて詳細に説明する。
第1図は本発明の撮像装置の一実施例の使用状態の側面図、第2図は本発明の撮像装置の一実施例の詳細な構成を示す側面断面図、第3図は同撮像装置の光軸に垂直な面での断面図、第4図は本発明の再生装置、画像展開装置、展開画像記録装置、入力画像モニタおよび展開画像モニタの構成を示すブロック図、第5図(a)は撮像装置の正面図、第5図(b)は重錘による鉛直方向指示器の実施例を示す正面図、第5図(c)は気泡による鉛直方向指示器の実施例を示す側面断面図、第5図(d)は気泡による鉛直方向指示器の実施例を示す正面図、第5図(e)は小球による鉛直方向指示器の実施例を示す正面図、第6図は本発明の基本原理を説明する原理説明図、第7図は本発明における画像の構成図であり、第7図(a)は凸面鏡上の画像を示す画像図、第7図(b)は電子カメラにおける画像を示す画像図、第7図(c)は平面画像に展開した画像を示す画像図である。
図面において、1はボーリング孔の坑壁、2はカッターヘッド、3は推進ジャッキ、4は大口径ボーリング機本体、5は懸垂アーム、6は外筒、7は透明窓、8は回転体鏡、9は遮光フード、10は照明ランプ、11はバッテリー、12は電子カメラ、13は水準器、14はホルダーリング、15は基準梁、16は取付け装置、18は再生装置、19は画像展開装置、20は入力画像メモリ、21は展開画像メモリ、22は入力画像モニタ、23は展開画像モニタ、24は展開画像記憶装置、26は防塵用フィルター、27は防塵用仕切板、28は散光マット、29はバッテリー充電プラグ、30はストロボ同期プラグである。
撮像装置31は、ボーリング機本体4の前方に推進ジャッキ3にて支持されたカッターヘッド2の後方における基準梁15に、取付け装置16,ホルダーリング14及び懸垂アーム5にてこの撮像装置31の中心軸と坑の中心軸とが略一致するよう懸垂され、カッターヘッド2にて掘削後の坑壁の状態を撮影するように設置されている。なお、第3図および第5図の(a)における懸垂アームは請求項(1)の指示手段に対応し、基準梁15,取付け装置16,ホルダーリング14及び懸垂アーム5は、請求項(1)の修正手段、もしくは対請求項(2)の懸垂手段に対応している。
ここで、撮像装置31には、電子カメラ12によって撮影される画像の上下方向を常に鉛直方向に保つとともに、電子カメラ12のローリング角を知るための水準器13も設けられている。即ち、水準器13によって示される鉛直方向が画面の上下方向と一致しないときは、撮像装置31をホルダーリング14内で回転させて水準器13によって示される鉛直方向と画面の上下方向とを一致させる。このとき、撮像装置31をホルダーリング14内で回転させる構造が請求項(1)における修正手段を構成している。
前記撮像手段31の詳細は、第2図に示したように、外筒6の内側には、前部の透明窓7の内部に照明ランプ10と凸面鏡8が、後部には電子カメラ12が設けられ、前記照明ランプ10からの光は透明窓7を通って坑壁を照明し、電子カメラ12は照明された坑壁を透明窓7を通して撮影するような構成となっている。
また、撮像装置31の機器への電源供給用のバッテリー11、バッテリー充電プラグ29、照明ランプ10の光を散光させる散光マット28、防塵用仕切り板27、防塵用フィルター26、余分な光を遮断するための遮光フィード9、及びストロボ同期プラグ30等の必要な部品が設けられている。
第5図(b)に示したように、撮像装置31をホルダーリング14内で回転自在に支え、撮像装置31に重錘33を垂下させることにより、格別な回転調節機構を備えなくても撮像装置31の上下方向を重錘33によって常に自動的に鉛直方向に一致させることが可能となる。なお、第5図(b)におけるホルダーリング14および重錘33は、請求項(3)の修正手段に対応している。
また、第5図(c)に示したように、凸面鏡8の光軸近傍の電子カメラの視野内に透明部分か切り欠き部分を設け、この部分に鉛直方向指示器13Aを配置して、凸面鏡8を介した坑壁の画像とともに鉛直方向指示器13Aが示す鉛直方向も写すことによって、輪状の画像を直線状の画像に展開するときの基準としても良い。このとき、鉛直方向指示器13Aとしては、第5図(d)に示すように、液体13Bを充満した円形容器の中に小さな気泡13Cを封入して液体と気泡との輝度を異なるようにしても良く、第5図(e)に示すように、円形容器の中に輝度の異なる小球13Dを封入しこの小球の位置で常に鉛直方向を示すようにしても良い。なお、この鉛直方向指示器13Bと電子カメラ12との間にはピント整合用のレンズを設けると良い。なお、第5図の(c),(d),(e)における鉛直方向指示器13Aは請求項(4)の指示手段に対応している。
第4図に示すように画像処理装置32においては、撮像装置31からの映像(第7図(b)参照)を入力画像モニタ22と画像展開装置19の入力画像メモリ20に入力する。18は再生装置である。
画像展開装置19においては、入力画像メモリ20の画像を前述したように多数の輪状の画像に分解し、例えば、輪状の画像の下端から右回りに展開し、線状の画像として展開画像メモリ21に入力する。この展開画像メモリ21の画像は展開画像モニタ23によって第7図(c)のように表示される。
この展開画像メモリ21の画像を展開画像記憶装置24にて記録保存するのである。
このようにして、本発明によれば、所定の幅aの坑壁の曲面の画像を凸面鏡8を介して平面的な画像(第7図(c)参照)として撮影および記録できるのである。
よって、長いボーリング孔であっても、所定の幅aづつ順次撮像して、展開して記録することが可能となるのである。
以上のようにして、撮影したい断面の近距離の場所から撮影するので坑内の浮遊微細粉塵等による影響を受けにくいので鮮明な画像を得ることができるという効果が得られる。
また、坑壁面に略垂直な視線で撮影するので、画像が坑壁面の凹凸によって隠れる部分がなく正確な画像を得ることができるという効果も得られる。
更に、一回の撮影で所定の幅の坑壁面を同時に撮影できるので、坑壁の撮像を短時間で行い効率の高い作業ができるという効果も得られるのである。
【発明の効果】
本発明によれば、横坑の中心に設けた凸面鏡に映された内壁面の画像を撮影するので、正確が基本画像が得られ、横坑において正確な展開画像が得られるという効果が得られる。
また、画像処理手段によって前記基本画像から項壁の展開画像を出力するときに、基本画像の鉛直方向を指示手段によって把握して処理するので、横坑において正確な展開画像が得られる。
また、懸垂手段によって電子カメラを横坑内に懸垂するので、電子カメラの画像の上下方向は、鉛直方向に一致するように修正され、横坑において正確な展開画像が得られる。
また、電子カメラを回転自在に支持するとともに重錘によって電子カメラの画像の上下方向を常時鉛直方向に一致させるよう修正するので、横坑において正確な展開画像が得られる。
また、小球もしくは液体中の気泡によって鉛直方向を指示する指示手段を電子カメラにおいて坑壁の画像とともに撮影するので、基本画像の鉛直方向を把握して画像処理することができ、横坑において正確な展開画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の撮像装置の一実施例の使用状態の側面図、第2図は本発明の撮像装置の一実施例の詳細な構成を示す側面断面図、第3図は同撮像装置の光軸に垂直な面での断面図、第4図は本発明の再生装置、画像展開装置、展開画像記録装置、入力画像モニタおよび展開画像モニタの構成を示すブロック図、第5図(a)は撮像装置の正面図、第5図(b)は重錘による鉛直方向指示器の実施例を示す正面図、第5図(c)は気泡による鉛直方向指示器の実施例を示す側面断面図、第5図(d)は気泡による鉛直方向指示器の実施例を示す正面図、第5図(e)は小球による鉛直方向指示器の実施例を示す正面図、第6図は本発明の基本原理を説明する原理説明図、第7図は本発明における画像の構成図であり、第7図(a)は凸面鏡上の画像を示す画像図、第7図(b)は撮像手段における画像を示す画像図、第7図(c)は平面画像に展開した画像を示す画像図である。
1……ボーリング坑壁、5……懸垂アーム(懸垂手段)、7……透明窓、8……凸面鏡、10……照明ランプ、12……電子カメラ、13……水準器(指示手段)、13A……鉛直方向指示器(指示手段)、13B……液体、13C……気泡、13D……小球、14……ホルダーリング(懸垂手段)、15……基準梁(懸垂手段)、16……取付け装置(懸垂手段)、19……画像展開装置(画像処理手段)、31……撮像装置、33……重錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】略円形断面をもつ横坑の所定幅の略円筒状の内壁面の画像を映すよう横坑の中心に設けた凸面鏡と、該凸面鏡に映された画像を撮影して基本画像を得る電子カメラと、前記基本画像の鉛直方向を重力の作用によって指示する指示手段と、前記基本画像の向きを鉛直方向に修正する修正手段と、前記基本画像を順次半径の異なる同心円状の複数の環状画像に分解し、該環状画像を直線状画像に展開し、この直線状画像を順次並べることによって平面に展開された展開画像を出力する画像処理手段とを備えたことを特徴とする坑壁の展開画像作成装置。
【請求項2】修正手段は、電子カメラを横坑内に懸垂することによって、電子カメラの画像の上下方向を鉛直方向に一致させるように構成されている懸垂手段であることを特徴とする請求項(1)に記載の坑壁の展開画像作成装置。
【請求項3】修正手段は、電子カメラを回転自在に支持する支持手段と、前記電子カメラに垂下された重錘とからなり、前記重錘によって前記電子カメラの特定部位の方向を鉛直方向に一致させるように構成されていることを特徴とする請求項(1)に記載の坑壁の展開画像作成装置。
【請求項4】指示手段は、小球もしくは液体中の気泡によって鉛直方向を電子カメラの視野内に指示する指示手段であることを特徴とする請求項(1)に記載の坑壁の展開画像作成装置。

【第2図】
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【第5図(a)】
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【第1図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図(b)】
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【第5図(c)】
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【第5図(d)】
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【第5図(e)】
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【第6図】
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【第7図(a)】
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【第7図(b)】
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【第7図(c)】
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【特許番号】第2562059号
【登録日】平成8年(1996)9月19日
【発行日】平成8年(1996)12月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−272258
【出願日】平成1年(1989)10月18日
【公開番号】特開平3−132590
【公開日】平成3年(1991)6月5日
【出願人】(999999999)株式会社奥村組
【出願人】(999999999)株式会社レアックス
【参考文献】
【文献】 特開 平1−210594(JP,A)