説明

垂直一様流排気装置(略称バーチカルプルブース)

【課題】屋内作業工程等で発生する有害粉塵や、塗装作業などで発生する有機溶剤等を含む空気を、屋外へ排出するための排気装置を提供する。
【解決手段】枠体の側面を遮蔽する遮蔽壁と、枠体の床面に多数の吸気孔を有する多孔床と、前記吸気孔に連通してこれらの吸気孔から前記粉塵、有機溶剤等を含む空気を下部から吸気して屋外へ排出するための排気ダクトと、この排気ダクトに接続してこれら空気を収束し、排出するための排気ファンとを備えるとともに、前記遮蔽壁の上部に空気整流誘導装置を設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種製造業における、屋内作業工程等で発生する有害粉塵や、塗装作業などで発生する有機溶剤等を含む空気を、屋外へ排出するための排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種製造工程等における研磨、グラインダー研磨作業や塗装作業工程において発生する粉塵や有機溶剤ミストを含む空気は、これらの作業工程に関わる作業者の人体にとって有害なものであり、直接作業者や周辺作業者がこれら汚染空気を吸気しないように管理することが望まれ、これを実現すべく、有機溶剤中毒予防規則や粉塵障害予防規則等において、これら空気中の粉塵等含有濃度や排気流速の点で法上規制もなされている。
特に多量の有機溶剤等を発生させる塗装作業においては、作業者の衛生管理上や他の被塗装体の品質管理面からも、厳重な安全対策が望まれる。
このため、図13に示す塗装フィルター(013)による『側方吸引方式』や、『局所排気方式』、さらには、図14に示すプッシュ装置(012)による『プッシュプル型換気装置』等が用いられているが、極端に作業条件が制限される。
また、工場床面上(02)に、平行に間隔を設けて多数の枠を設置し、隣接する枠上に、枠と直交する方向に延伸する多数の踏板を架設状態に敷き並べ、それら踏板の間に開口を持つ開口踏板(03)を適宜に挿入し、開口踏板間の距離を調整して工場床面上に垂直一様流作業床面(02)を構成し、かつ、対向する2本の枠と踏板及び工場床面との間に気流通路(04)を形成し、同気流通路の末端または中央部合流点をテイクオフを介して排気ダクト(04)に連結して排気ファン(05)による気流通路を構成した垂直一様流排気装置が知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 実開昭61−104130
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遮蔽壁(01)で覆われた枠体(ブース)の内部では、開口踏板(03)の多数の吸気孔から空気が吸引されるが、この吸気孔を通過する際の流動抵抗の効果で、床面(02)近傍では、一様な速度分布になる。
一方、遮蔽壁(01)の上端部では、ブースの外部四方から空気が接近し、ブース上端を通過すると、急激に下部へ流れの方向を変更する。
この際、空気の流れは鋭角的な方向転換をすることができないため、ブースの上部平面断面で、速度分布は非一様な状態を呈し、この影響が強いとブース全体での一様な空気流の分布を阻害する可能性がある。
【0005】
作業場における垂直一様流排気装置(略称バーチカルプルブース)の配置が適切であれば問題は無いが、工場建物の形状、排気装置の設置場所、作業条件、外気取入れ口などの条件次第では、次のように作業場の環境に悪影響を与える恐れがある。
【0006】
まず、作業場の天井が低いため、空気のすみやかな流入を妨げる場合である。
垂直一様流排気装置(略称バーチカルプルブース)の遮蔽壁(01)上面部と、天井との空間域が狭い場合、垂直一様流排気装置が稼動すると床面(02)の吸気孔に装置内の空気を吸引すると、連動して遮蔽壁(01)上部を超えて外気が四方より流入してくる。天井との空間域が狭い場合は、空気流の流れが装置に近づくにつれ急激に速くなり、風速の変化が装置内で乱流の大きな原因のひとつとなる。
天井と遮蔽壁(01)上部に充分な空間域があれば、ゆったりとした空気流にて床面吸気孔に向かって、装置内全域に風量、風速等計画された整流がつくられる。
【0007】
つぎに、装置の片側が工場壁に近い場合である。
垂直一様流排気装置(略称バーチカルプルブース)は、装置内の垂直一様流が形成される条件として、外気が四方より均等に流入できる状況を作る事も条件の一つである。
装置の四方に障害物がない場合、問題は生じ無い。しかし、垂直一様流排気装置(略称バーチカルプルブース)は、粉じん作業や有機溶剤塗装作業のため、既設工場の片隅に設置されるケースが多々ある。既設工場壁面にて、1面及び2面が遮蔽された場合、垂直一様流排気装置(略称バーチカルプルブース)装置内に、外気が四方より均等に流入できる状況を作る事が出来ず、垂直一様流が形成される条件が成り立たない。
【0008】
さらに、その他装置内に空気が速やかに流入できないような状態の場合である。
例えば、既設の工場に設置されている天井走行クレーンの高さが低い場合など、遮蔽壁(01)の高さが制限され、垂直流を形成するための条件が成立せず、遮蔽壁(01)上部から装置内に流入してくる空気流は斜流となり、装置内全体の垂直一様流を形成出来ない。
【0009】
上記のような設置場所、設置条件が整わない場合、装置内に流入する空気の量、風速のバランスが崩れ、装置内で乱流が起こる原因になる。また、壁際での舞い上がり現象を発生させる要因となる。よって、ブースの遮蔽壁(01)で、四方いずれかの箇所に建屋などの壁があり、その方向からの空気の接近が制限される場合、ブースに流入する空気は、四方から均等に接近することができず、ブース全体での一様な空気流の分布を得ることが、より困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
遮蔽壁の上端部に、枠体の外側に向けて湾曲した壁(ベルマウス)を付設するか、または、遮蔽壁の上端部で枠体の内側に、流線型の成型体を設置するか、あるいは、遮蔽壁の上部開口部に、通気性を有する繊維状素材でなる被覆材を、開閉可能に設置する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記構成によって,つぎのような効果を奏する。
すなわち、遮蔽壁の上端部に、枠体の外側に向けて湾曲したベルマウス型の整流装置を付設することにより、ブースの外部四方から空気が接近し、ブース上端を通過し下部へ流れの向きを変更する際、急激に流れの方向を変更する必要がなく、緩やかな方向転換になるため、ブースの上部平面断面で、速度分布は非一様な状態を呈することなく、一様な空気流の分布を実現することができる。
【0012】
また、遮蔽壁の上端部で枠体の内側に、流線型の成形体を設置した場も、上記と同様な効果を得るため、ブースの上部平面断面で、速度分布は非一様な状態を呈することなく、一様な空気流の分布を実現することができる。
【0013】
あるいは遮蔽壁の上部開口部に、通気性を有する繊維状素材(フィルター類)でなる被覆材(を、開閉可能に設置することによって、ブースの横に建物の壁などの阻害物があり、この方向からの外部空気流入がない場合も、通気する際の流動抵抗がブースの上部に流入する空気流の流量配分を均一にならしめ、一様な空気流の分布を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】は、第一実施例を示すベルマウス型空気整流誘導装置付き垂直一様流排気装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】は、図1の平面図である。
【図3】は、図1の正面図である。
【図4】は、オリフィスの計画図である。
【図5】は、ベルマウスの製作図である。
【図6】は、本願発明の第二実施例を示す流線型成形型空気整流誘導装置を有する垂直一様流排気装置を概略的に示す斜視図である。
【図7】は、図4の平面図である。
【図8】は、図4の正面図である。
【図9】は、流線形成形型製作図
【図10】は、本願発明の第三実施例を示す開閉式上部フィルター取付型垂直一様流排気装置を概略的に示す斜視図である。
【図11】は、図10の平面図である。
【図12】は、図10の正面図である。
【図13】は、従来の局所排気装置の要部を概略的に示す斜視図である。
【図14】は、従来のプッシュプル型換気装置の正面断面図である。
【図15】は、従来の垂直一様流排気装置を概略的に示す斜視図である。
【図16】は、作業床図である。
【図17】は、スリット図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態として第1の実施例ないし第3の実施例を図1〜図12に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
遮蔽壁(1)の上端部に、枠体の外側に向けて湾曲したベルマウス型の壁整流装置(7)を付設することにより、ブースの外部四方から空気が接近し、ブース上端を通過し下部へ流れの向きを変更する際、急激に流れの方向を変更する必要がなく、緩やかな方向転換になるため、ブースの上部平面断面で、速度分布は非一様な状態を呈することなく、一様な空気流の分布を実現することができる。
ベルマウス型空気整流誘導装置(7)の形状を計画するにあたっては、《オリフィス》の計算公式が基本となる。
図4に示すようにオリフィスの条件を考慮し、当社の製品にマッチするよう試行錯誤して実験を行い、図5ベルマウスの製作図となるベルマウスの曲線、高さ寸法、等を算出した。
D=空気が通過する距離(径、幅)
r=空気の初期通過曲線=0,2D
R=空気の流入角度を決める曲線=0,33D
例をあげると,遮蔽壁(1)から2mの位置で空気の舞い上がり現象があった場合、
D=2000
r=0,2D=0,2×2,000=400
R=0,33D=0,33×2,000=660
図5においては、D=1000の場合でテストしたところ
現場の状況やベルマウス型空気整流誘導装置の規模等によりA,B,C,Dの寸法変更はあるものの、遮蔽壁(1)の高さは、3mぐらいが一様な空気流の分布を実現しやすいことがわかった。
テストの結果は大変良好であった。
ベルマウス型空気整流誘導装置(7)は、垂直一様流排気装置の側面遮蔽壁(1)の上部に簡単に取付が可能であるという利点もある。
【実施例2】
【0017】
また、遮蔽壁(1)の上端部で枠体の内側に、流線型の成形体(8)を設置した場合も、上記と同様な効果を得るため、ブースの上部平面断面で、速度分布は非一様な状態を呈することなく、一様な空気流の分布を実現することができる。
流線型成形型空気整流誘導装置(8)は、実施例1に記載したベルマウス型空気整流誘導装置(7)が計画できない場合の手段として考えている。
ただ、室内に取り付けた流線型成形型空気整流誘導装置(8)が作業場を狭く感じさせ、作業者に威圧感を感じさせることも考えられる。
図9に示した流線形成形型製作図に記載した数値は、多数の実験結果から得られた標準的な大きさの装置における曲線、高さ寸法である。
【実施例3】
【0018】
図10、図11に示すものは遮蔽壁(1)の上部開口部に、通気性を有する繊維状素材(10)いわゆるフィルター類でなる被覆材(9)を、開閉可能に設置したものである。
このような装置を設置することによって、ブースの横に壁などの阻害物があり、この方向からの外部空気流入がない場合も、通気する際の流動抵抗がブースの上部に流入する空気流の流量配分を均一にならしめ、一様な空気流の分布を実現することができる。
通気性を有する繊維状素材(10)は通常エアーフィルターとよばれる製品であり、素材としてはポリエステル系やアクリル系がある。不燃性、自己消化性であることが好ましい。
繊維素材(10)の目の大きさは、濾過風速2,5m/sec、厚みは粉じん等による目詰まりを考慮して18mmから25mm程度が適している。
上部開口部に設置された被覆材(9)を開閉可能にすることにより、天井クレーン等にて重厚長大の製品等を問題なく搬出入できるのが、バーチカルプルブースの大きな特徴のひとつである。
上部開口部に設置された被覆材(9)を開閉する開閉装置は、遮蔽壁(1)の上部に走行レール(11)を設置し、繊維素材(10)を搭載したボード板に車輪を取付、モーターもしくはチェーン駆動により、走行開閉方式をとる。
【符号の説明】
【0019】
1.遮蔽壁
2.作業床面
3.吸気孔(スリット)
4.排気ダクト
5.排気ファン
6.製品搬出口カーテン
7.ベルマウス型空気整流誘導装置
8.整流誘導板
9.被覆材
10.繊維状素材
11.走行レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種作業工程等で発生する粉塵、有機溶剤等を含む空気を屋外へ排出するための排気装置において、枠体の側面を遮蔽する遮蔽壁(1)と、枠体の床面に多数の吸気孔(3)を有する多孔床(2)と、前記吸気孔(3)に連通してこれらの吸気孔(3)から前記粉塵、有機溶剤等を含む空気を下部から吸気して屋外へ排出するための排気ダクト(4)と、この排気ダクト(4)に接続してこれら空気を収束し、排出するための排気ファン(5)とを備えるとともに、前記遮蔽壁(1)の外側上部にはベルマウス型空気整流誘導装置(7)を設置したことを特徴とする垂直一様流排気装置。
【請求項2】
前記遮蔽壁(1)の内側上部に、流線型の成型体よりなる空気整流誘導板(8)を設置したことを特徴とする垂直一様流排気装置。
【請求項3】
前記遮蔽壁(1)上部の開口部に、通気性を有する繊維状素材よりなる被覆材(9)を開閉可能に設置したことを特徴とする垂直一様流排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−29298(P2013−29298A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177762(P2011−177762)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(305040101)三陽保安産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】