説明

垂直記録用パターンドディスク媒体及び同媒体を搭載した磁気ディスクドライブ

【課題】表裏両面のパターンが正確に一致した垂直記録用パターンドディスク媒体及び同媒体を搭載した磁気ディスクドライブを提供する。
【解決手段】第1の面SA及び当該第1の面とは反対側の第2の面SBとを持つディスク状の平坦な基板に対し、上記第1及び第2の面SA,SBにそれぞれ事前形成されたデータ領域パターン12,22と、この第1及び第2の面SA,SBのデータ領域パターン12,22をそれぞれ周方向に複数分割する、略円弧放射状に事前形成されたサーボ領域パターン11,21と、上記基板の第1及び第2の面SA,SBの略一致した位置に、上記サーボ領域パターン11,21及びデータ領域パターン12,22を同時に事前形成する際の位置合わせに用いられた位置合わせマークPMa,PMbとをパターンドディスク媒体1に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状の基板の各面側に磁性体の有無でサーボパターン部が物理的に形成された垂直記録用パターンドディスク媒体及び同媒体を搭載した磁気ディスクドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクドライブに搭載されるディスク状の磁気記録媒体(ディスク媒体)には、予め、或いは初期化時に、サーボ情報が記録されるのが一般的である。サーボ情報は、磁気ヘッドを上記メディア上の目標位置に位置付けるのに必要な位置情報を含む。このサーボ情報が記録された領域はサーボ領域と呼ばれる。
【0003】
近年、このサーボ領域(サーボゾーン)を、表面に磁性層を有する基板の凹凸パターンで、サーボパターンとして予め形成する磁気ディスク媒体、いわゆるパターンドディスク媒体に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1には、パターン化された記録層を有する記録媒体とその製造方法、パターン化された金属層を有するインプリント原盤とその製造方法、及びこのインプリント原盤を用いてパターン化された記録層を有する記録媒体を製造する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2004−079098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、上記特許文献1は磁気ディスク媒体の1面にパターン化された記録層を形成する技術に関するものであり、各パターンのディスク媒体の表裏間の相対位置関係等は考慮されていない。
【0005】
一般にこの種の磁気ディスク装置は充分な記録容量を確保するべく、1枚のディスク媒体の表裏両面に記録層を形成するのが必須である。この垂直記録用パターンドディスク媒体では、ディスク基板上に成膜するマスク材料にスピンオンガラス(SOG)等を用いて凹凸のパターンを形成することから、ディスクの表裏両面に対して一対のスタンパを用いて1回のプレス工程により表裏同時にパターンを形成する必要がある。
【0006】
しかるに、ディスク媒体の表裏にそれぞれ凹凸のパターンを形成するに際しては、そのディスク媒体を搭載するドライブ装置で各面に当接される磁気ヘッドの位置制御を統括して行なうことを考慮すると、各パターンが媒体の表裏で正確に完全に一致していることが望ましい。
【0007】
しかしながら、物理的な凹凸をパターン形成したパターンドディスク媒体で、その表裏のパターンの位置を正確に一致させるための技術は未だ考案されておらず、その実現はきわめて困難であると考えられる。
【0008】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、表裏両面のパターンが正確に一致した垂直記録用パターンドディスク媒体及び同媒体を搭載した磁気ディスクドライブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの観点によれば、垂直記録用のパターンドディスク媒体が提供される。このパターンドディスク媒体は、第1の面及び当該第1の面とは反対側の第2の面とを持つディスク状の平坦な基板と、この基板の上記第1及び第2の面にそれぞれ事前形成されたデータ領域パターンと、この第1及び第2の面のデータ領域パターンをそれぞれ周方向に複数分割する、略円弧放射状に事前形成されたサーボ領域パターンと、上記基板の第1及び第2の面に対し、上記サーボ領域パターン及びデータ領域パターンを同時に事前形成する際の位置合わせに用いられた位置合わせマークとを具備したことを特徴とする。
【0010】
このように、上記の構成のパターンドディスク媒体においては、ディスク状の平坦な基板の第1及び第2の面側に、データ領域パターンとサーボ領域パターンとを事前形成するための一対のスタンパ双方のスタンプ面に位置合わせマークを設け、これら位置合わせマークを例えばビームスプリッタ等で正確に相対向するように正確に位置合わせした後にパターン形成するものとした。つまり、本発明の1つの観点によれば、第1及び第2の面にデータ領域パターンとサーボ領域のみならず位置合わせマークも事前形成したディスク媒体から、当該第1及び第2の面のデータ領域パターン及びサーボ領域パターンが正確に一致していることがわかる。
【0011】
また本発明の他の1つの観点によれば、垂直記録用のパターンドディスク媒体を搭載した磁気ディスクドライブが提供される。この磁気ディスクドライブは、第1の面及び当該第1の面とは反対側の第2の面とを持つディスク状の平坦な基板、この基板の上記第1及び第2の面にそれぞれ事前形成されたデータ領域パターン、この第1及び第2の面のデータ領域パターンをそれぞれ周方向に複数分割する、略円弧放射状に事前形成されたサーボ領域パターン、及び上記基板の第1及び第2の面に対し、上記サーボ領域パターン及びデータ領域パターンを同時に事前形成する際の位置合わせに用いられた位置合わせマークを備えた垂直記録用パターンドディスク媒体と、このパターンドディスク媒体の上記第1の面側に配置される第1の磁気ヘッドと、上記パターンドディスク媒体の上記第2の面側に配置される第2の磁気ヘッドとを具備したことを特徴とする。
【0012】
このように、上記の構成の磁気ディスクドライブにおいては、ディスク状の平坦な基板の第1及び第2の面側に、データ領域パターンとサーボ領域パターンとを事前形成するための一対のスタンパ双方のスタンプ面に位置合わせマークを設け、これら位置合わせマークを例えばビームスプリッタ等で正確に相対向するように正確に位置合わせした後にパターン形成したディスク媒体を搭載するものとした。つまり、本発明の他の1つの観点によれば、第1及び第2の面にデータ領域パターンとサーボ領域のみならず位置合わせマークも事前形成したディスク媒体から、当該第1及び第2の面のデータ領域パターン及びサーボ領域パターンが正確に一致しており、磁気ヘッドによるアクセス制御を容易とし、アクセス速度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ディスク状の平坦な基板の第1及び第2の面に事前形成されたデータ領域パターン、サーボ領域、及び位置合わせマークから、当該第1及び第2の面のデータ領域パターン及びサーボ領域パターンを正確に位置合わせされたものであることがわかるパターンドディスク媒体を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施の一形態につき図面を参照して説明する。
【0015】
[両面垂直磁気記録用のパターンドディスク媒体のパターン概要]
図1は、同実施の形態に係る両面垂直記録用のパターンドディスク媒体1のパターン構成の概要を示す平面図であり、図1(A)がディスク上面SAのパターンを、図1(B)がディスク下面SBのパターンを示す。
【0016】
パターンドディスク媒体1は、中央に図示しないスピンドルモータで支持するための透孔TH(例えば6ミリ径)を形成した小径(例えば0.85インチ径(=約21.6ミリ径))のディスク媒体である。図1(A)に示すディスク上面SAには、最内周及び最外周にそれぞれマージンを設けて、複数のサーボ領域(サーボパターン部)11が当該パターンドディスク媒体1の半径方向に円弧状に、且つ当該パターンドディスク媒体1の円周方向に複数等間隔で形成されている。
【0017】
この円弧は、パターンドディスク媒体1が磁気ディスクドライブに組込まれて使用される際に、当該ドライブのヘッドアーム131a先端に形成した磁気ヘッド110aがパターンドディスク媒体1上を浮上して移動する軌跡(ヘッドアクセス軌跡)に対応する。
【0018】
各サーボ領域11のパターンドディスク媒体1の円周方向に沿った長さ(幅)は、当該パターンドディスク媒体1の半径位置に依存して比例して長く(広く)なるように設定されている。
【0019】
同様に、図1(B)で示すパターンドディスク媒体1のディスク下面SBにも、複数のサーボ領域21がサーボ領域11と同様に形成されている。ディスク上面SAの複数のサーボ領域11とディスク下面SBの複数のサーボ領域21は、ミラー対象に配置される。つまり、パターンドディスク媒体1には表裏がある。
【0020】
図1(A)に示すディスク上面SAの複数のサーボ領域11は、当該面SAをパターンドディスク媒体1の円周方向に等分割するように配置されている。パターンドディスク媒体1の上面SAは、この複数のサーボ領域11により同数のセクタ(サーボセクタ)に分割される。なお、図1(A)では作図の都合上、パターンドディスク媒体1の上面SAが15サーボセクタに分割されている。しかし、実際のパターンドディスク媒体1においては、ディスク上面SAは100サーボセクタ以上に分割される。
【0021】
ディスク媒体1の上面SAにおいて、隣接するサーボ領域11で挟まれた領域はデータ領域12と呼ばれる。データ領域12は、一般にユーザデータを記録再生するのに用いられる領域である。
【0022】
本実施の形態において、ディスク媒体1はDTRタイプのパターンドディスク媒体であるものとする。そのため、ディスク媒体1のデータ領域12には、DT(ディスクリート・トラック)と呼ばれる複数の円環(リング)状の磁性トラック(図示せず)がデータ領域12の半径方向に一定長(トラックピッチTp)周期で予め形成されている。
【0023】
ユーザデータは、この磁性トラックに磁化パターンとして記録される。複数の磁性トラックは、記録層(磁性層)となる強磁性体(例えばCoCtPt)を用いて、このディスク媒体1を構成する基板(図示せず)の下地層上に凸状に且つ円環(リング)状に形成される。隣接する磁性トラック間は、非磁性ガードと呼ぶ、凹状の記録不可能な非磁性部となっている。
【0024】
このように、複数の磁性トラックは、ディスク媒体1の半径方向に磁性分断する円環状に形成され、データ領域12は当該複数の磁性トラックが非磁性部を介して一定長周期で配設されたパターンにより構成される。このようなDTRタイプのディスク媒体1では、各磁性トラックが、隣接トラックの干渉の影響を受けるのを抑えることが可能となり、ディスク媒体1の高密度化に寄与する。上記したように、ディスク媒体1の上面SAは、複数のサーボ領域11によりこのサーボ領域11と同数のサーボセクタに分割される。このことは、上面SA上の各磁性トラックが、複数のサーボ領域11によりディスク媒体1の円周方向に同数のサーボセクタに分割されることを意味する。
【0025】
加えて、上記サーボ領域11とデータ領域12とで構成されるパターン領域を外れた内周側の一箇所に、位置合わせマークPMaが形成される。この位置合わせマークPMaは、後述する転写工程でスタンパにより形成されるもので、所定のサーボセクタ番号、例えば基準となる「0(ゼロ)」番セクタに対応した位置に形成されるものとする。
【0026】
以上はディスク上面SAについて記述したものであるが、上述した如くディスク下面SBについてもディスク上面SAとミラー対象となるべく、同様の配置構成を有するものであり、サーボ領域21と制御部22に加えて、内周側に位置合わせマークPMbがやはり所定のサーボセクタ番号、例えば基準となる「0(ゼロ)」番セクタに対応した位置に形成されるものとする。
【0027】
図2は、特にパターンドディスク媒体1のディスク上面SAに形成された位置合わせマークPMaとサーボ領域11及びデータ領域12との位置関係を示すもので、ここではサーボ領域11及びデータ領域12を一括してハッチングにより表現するものとする。図示する如く位置合わせマークPMaは、パターンドディスク媒体1のサーボ領域11及びデータ領域12を形成した範囲より内周側に外れた、且つこのパターンドディスク媒体1をディスクドライブに搭載して使用する際に少なくともスピンドルモータの支持マージン分だけ透孔THより離れた位置に、位置合わせマークPMaを形成する。この位置合わせマークPMaの具体的な形状と構成は、後述する図4で説明する。
【0028】
なお、ディスク媒体1のディスク上面SAのみならずディスク下面SBもディスク上面SAと同様であり、上記位置合わせマークPMaと同形状の位置合わせマークPMbが、パターンドディスク媒体1のサーボ領域21及びデータ領域22を形成した範囲より内周側に形成されるものとする。
【0029】
加えて、ディスク上面SAに形成された位置合わせマークPMaとディスク下面SBに形成された位置合わせマークPMbは、上述した如く所定のサーボセクタ番号に対応した位置に形成されると共に、ディスク媒体1の厚さ方向、すなわち図2の紙面に直交する方向に沿って正確に一致した位置で形成されるものとする。
【0030】
[ディスク媒体製造プロセスの概略]
次に、ディスク媒体1の製造方法について、そのプロセスを簡単に説明する。ディスク媒体1の製造プロセスは、転写工程、磁性加工工程及び仕上げ工程からなる。まず、転写工程に使用するスタンパの製造方法から説明する。
【0031】
スタンパの製造工程は、パターン描画、現像、電鋳、及び仕上げの各処理に細分化される。パターン描画処理では、原盤回転型の電子線露光装置を用いて、磁気ディスク媒体上で非磁性化させる部位が、レジスト塗布された原盤上に、内周から外周まで露光描画される。現像処理では、原盤に塗布された露光描画後のレジストを現像し、その現像後の原盤にRIE等の処理をすることにより、凹凸パターンを持つ原盤が作成される。電鋳処理では、凹凸パターンを持つ原盤に導電化処理してNiを表面に電鋳し、当該原盤から凹凸パターンを持つNi板を剥離し、最後に当該Ni板に対して内径/外径を打ち抜き加工することで、Niのディスク状スタンパが形成される。なお、スタンパは、非磁性化させる部位が凸部として形成される。このスタンパを使って、パターンドディスク媒体1が製造される。
【0032】
さて、ディスク媒体1の製造プロセスの転写工程では、両面同時転写型のインプリント装置を用い、インプリントリソグラフィー法による転写が次のように行なわれる。まず、垂直磁気記録用ディスク基板の両表面にレジストが塗布される。垂直磁気記録用ディスク基板とは、基板(ガラス基板)の両面に形成された下地層の全面に垂直磁気異方性を持つ磁性層が形成された基板をいう。この垂直磁気記録用ディスク基板の中心部には、スピンドルモータに支持可能とするための透孔THが形成されている。そこで、垂直磁気記録用ディスク基板を、当該基板の透孔THでチャッキングする。そして、ディスク基板を裏面用、表面用に準備した一対、2種のスタンパで、全面均等押圧で挟み込み、レジスト表面に凹凸転写する。この転写工程により、非磁性化させる部位が、レジストの凹部として形成される。
【0033】
図3は、上記転写工程前に実行する上記一対、2種のスタンパの位置合わせについて説明するものである。同図で、2種のスタンパ31,32を平行に配置し、図示する如くそれらの位置合わせマーク部31a,32aをできうる限り正確に相対向させる。
【0034】
この状態で、このスタンパ31,32の間にビームスプリッタ33を介在させる。
具体的には、ビームスプリッタ33はハーフミラー34,35、レーザ光源36、及び受光部37から構成されるもので、一対の平行なハーフミラー34,35をスタンパ31,32間の上記位置合わせマーク部31a,32a位置に、対向軸方向に対して上方45度となるように位置させる。
【0035】
この状態で、上方に配置したレーザ光源36より平行光であるレーザ光をハーフミラー34に入射させ、その一部反射光がスタンパ31の位置合わせマーク部31a面に垂直に照射されるようにする。この位置合わせマーク部31aで反射したレーザ光の一部がハーフミラー34,35を透過し、スタンパ32の位置合わせマーク部32aで反射された後に、さらにその一部がハーフミラー35で反射されて受光部37に導かれる。
【0036】
受光部37でその受光強度(輝度)をモニタリングしながら、スタンパ31の位置合わせマーク部31aとスタンパ32の位置合わせマーク部32aをそれぞれ個別に位置調整することで、結果として2種のスタンパ31,32を正確に位置合わせすることが可能となる。
【0037】
図4は、上記スタンパ31,32に形成される位置合わせマーク部31a,32aの具体構成を例示するものである。同図に示すように位置合わせマーク部31a,32aは共に、反射領域41と、この反射領域41を挟んだ一対の2次元型回析格子構造の反射領域42,43とからなる。図中、ハッチングを施した部分がいずれもスタンパ31,32の凸部として形成されるもので、同図の横方向がパターンドディスク媒体1における周方向、同縦方向がディスク媒体1の径方向となる。
【0038】
中央の反射領域41がレーザ光の入射に対して全反射を行ない、面に垂直なレーザ光の入射を受けた場合には同一光軸を通ってほぼ全量の反射光が出射される一方で、2次元型回析格子構造、所謂、市松模様の凹凸を有する反射領域42,43では、いずれも回析光が多く反射、散乱し、入射光と同一光軸を通って出射される反射光の量は大幅に減少する。
【0039】
したがって、反射領域41の短手方向(ディスク媒体1の周方向)の幅pを反射領域42,43の各正方格子の幅dよりも充分大きく設定し、且つレーザ光源36の出射するレーザ光のスポット径を上記幅pと略一致させることにより、反射領域41と反射領域42,43との位置の違いによる、レーザ光の反射度の違いをより正確に検出することができるようになる。
【0040】
また、レーザ光源36の出射するレーザ光のスポット径は、例えば現状で0.5[mm]程度のオーダーであり、上記ディスク媒体1のサーボ領域11の円周方向に沿った長さ(幅)に比して充分大きな値となるため、上記、当該反射領域41の幅pもサーボ領域11の幅に比して充分大きなものとなる。
【0041】
実際のスタンパ31,32の位置合わせの調整においては、図5に示すようにスタンパ31,32の打ち抜かれた内径部に、ほぼ同じ大きさ(若干小径)のハブ51を通し、位置合わせマーク部31a,32aが形成された径方向から図中に矢印DRで示す如く該ハブ51にスタンパ31,32を押しつけ、2種のスタンパ31,32の固定位置に生じる径方向の誤差を極力排除した上で、図中に矢印Rで示す回転方向に沿ってスタンパ31,32を一方ずつ微少角度で回転させることにより、相対する位置合わせマーク部31a,32aの位置合わせを行なうものとする。
【0042】
こうしてスタンパ31,32の正確な位置合わせを行なった後、上述した如く垂直磁気記録用ディスク基板を、当該基板の透孔THでチャッキングする。そして、ディスク基板を2種のスタンパ31,32で、全面均等押圧で挟み込み、レジスト表面に凹凸転写する。
【0043】
次に、磁性加工工程で、凹部レジストを除去することにより、非磁性化させる部位の磁性層表面が露出する。この状態では、磁性層を磁性体として残す部位に、レジストが凸部として形成されている。そこで、このレジストをガード層として、ディスク基板の両面を例えばイオンミリングすることで、凹部に位置する磁性層のみが除去され、所望のパターンの磁性体が形成される。
【0044】
その後、レジストを充分な厚さとなるようにスパッタして表面の凹凸をなくし、これを磁性層表面まで逆スパッタすることで凹部を非磁性体で埋め込んで平坦化することで、平坦化したパターンドディスク媒体1ができあがる。
【0045】
最後の仕上げ工程では、磁性体が形成されたディスク基板の両面を研磨仕上げした後にDLC保護層を形成し、潤滑用ルブを塗布することで、ディスク媒体1が完成する。但し、この段階では、ディスク媒体1の両面の磁性体は磁化されていないため、後の図示しない着磁工程で磁性体を磁化させる必要がある。
【0046】
[パターンドディスク媒体のドライブ装置への組込み]
このようにして完成されたパターンドディスク媒体1をドライブに組込んだ場合、上記図1に示した如くディスク媒体1の上面SAの位置合わせマークPMa及び下面SBの位置合わせマークPMbは、スピンドルモータの支持マージンを残してほぼ最内周側に位置させるものとしている。
【0047】
したがって、ドライブの一体的に揺動制御されるヘッドアーム131a,131bの各先端に設けられた磁気ヘッド110a,110bは、図示しない内周ストッパにより動作範囲を制限され、サーボ領域11,21とデータ領域12,22でなるアクセス領域を外れてこれら位置合わせマークPMa,PMbの位置にまで達することは物理的にあり得ない。
【0048】
また、上述した如く磁気ヘッド110a,110bは、ヘッドアーム131a,131bが一体的に構成されるためにディスク媒体1を表裏から挟んで常に相対向する位置となるように制御される。
【0049】
パターンドディスク媒体1は、上述した如く位置合わせマークPMa,PMbを含めてサーボ領域11,21とデータ領域12,22すべてが表裏ミラー対象となるようにその厚さ方向で一致したパターンで形成されるものとしている。
【0050】
したがって、磁気ヘッド110a,110bは常に同一のサーボパターン位置に対向配置されることとなり、ヘッドの切換えに際して一切のタイムラグを生じない。そのため、頻繁に磁気ヘッドを切換えてデータの書込み/読出しを行なう際にも、従来の磁気的にサーボ情報を媒体に書込む磁気ディスク装置と同様に、ドライブ装置としてのパフォーマンス、具体的には書込み/読出しのアクセス速度をより向上させることができ、該アクセスに要する制御処理もより簡易なものとすることができる。
【0051】
[位置合わせマークの他の例]
なお、スタンパ31,32の位置合わせに用いるために形成され、結果としてパターンドディスク媒体1にも形成される位置合わせマークは、上記図4で示した形状のみに限定するものではなく、その種々変形したものを考えることができる。以下図6〜図11を用いてその一部を説明する。
【0052】
図6は、中央の全反射を行なう矩形状の反射領域61をその両長辺側から挟むように、この反射領域61よりも大幅に反射率の低い、一対の反射領域62,63を配置した場合を示す。同図の横方向がパターンドディスク媒体1における周方向、同縦方向がディスク媒体1の径方向に対応するものとなる。
【0053】
図7は、中央の全反射を行なう正方形状の反射領域71を包囲するように、この反射領域71よりも大幅に反射率の低い、矩形の反射領域72を同心的に配置した場合を示す。同図の横方向がパターンドディスク媒体1における周方向、同縦方向がディスク媒体1の径方向に対応するもので、このようにパターンドディスク媒体1の径方向においても反射率の異なる反射領域71,72を配することにより、スタンパ31,32をディスク媒体1の周方向のみならず径方向にも微調整して正確な位置合わせを行なうことが可能となる。
【0054】
図8は、中央の全反射を行なう円形の反射領域81を包囲するように、この反射領域81よりも大幅に反射率の低い、円形の反射領域82を同心的に配置した場合を示す。同図の横方向がパターンドディスク媒体1における周方向、同縦方向がディスク媒体1の径方向に対応するもので、このように反射率の異なる同心的な2つの反射領域81,82を配することにより、ビームスプリッタ33のレーザ光源36が出射するレーザ光のスポット径と中央の反射領域81をほぼ同径とすれば、スタンパ31,32をディスク媒体1の周方向のみならず径方向にも微調整して、きわめて正確な位置合わせを行なうことが可能となる。
【0055】
図9は、中央の全反射を行なう矩形状の反射領域91をその両長辺側から挟み込むように、この反射領域91とはそれぞれ反射率の異なる、矩形の反射領域92,93、94,95、96,97を順次配置した場合を示す。同図の横方向がパターンドディスク媒体1における周方向、同縦方向がディスク媒体1の径方向に対応するもので、中央の反射領域91をピークとしてこれを外れる毎に各反射領域で徐々に反射率が低くなるように全4段階の反射率を設定しているので、ビームスプリッタ33の受光部37で得られるレーザ光の受光強度(輝度)から、正確な位置合わせの回転方向を判断し易くなる。
【0056】
図10は、中央の全反射を行なう正方形状の反射領域101を包囲するように、この反射領域101とはそれぞれ反射率の異なる、矩形の反射領域102,103を同心的に配置した場合を示す。同図の横方向がパターンドディスク媒体1における周方向、同縦方向がディスク媒体1の径方向に対応するもので、中央の反射領域101をピークとして順次外側の反射領域の方が徐々に反射率が低くなるように全3段階の反射率を設定しているので、ビームスプリッタ33の受光部37で得られるレーザ光の受光強度(輝度)から、スタンパ31,32をディスク媒体1の周方向のみならず径方向にも微調整して正確な位置合わせを判断し易くなる。
【0057】
また、上記図4,図6乃至図10では、反射率の異なる反射領域をそれぞれ形状を対応するものとして配置した例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、中心部の全反射を行なう反射領域と、その中心部の反射領域に隣接する、反射率の異なる反射領域の形状は必ずしも逸する必要はない。
【0058】
図11は、(A)円形、(B)正方形、(C)正三角形、(D)正五角形、(E)菱形の各位置合わせマークの形状を例示したもので、これらをその周囲に隣接して位置する任意形状の反射領域と組み合わせることで位置合わせマークを構成するものとしても良い。
【0059】
さらには、上記図11に示した各種形状の反射領域を、他の反射率の異なる反射領域と組み合わせて1つの位置合わせマークを構成するのではなく、単独で使用するものとしても良く、その形状も上記図11に示したものに限らず、正六角形、星(五ぼう星、六ぼう星)形等を用いるものとしても良い。
【0060】
なお、上記図1、図2等では、位置合わせマークPMa,PMbはパターンドディスク媒体1のサーボ領域11及びデータ領域12でなるパターン領域を外れた内周側に配置するものとして説明したが、本発明はこれに限るものではない。
【0061】
図12は、位置合わせマークPMa′(,PMb′)をディスク上面SA(下面SB)のサーボ領域11(,21)及びデータ領域12(,22)でなるパターン領域の範囲から外れた外周側に配置した場合について示すものである。
【0062】
ヘッドロード/アンロード方式の磁気ディスクドライブ装置では、パターンドディスク媒体1′の最外周側に、磁気ヘッドがランプ材からロード/アンロードするために使用する領域が確保されており、当該領域は磁気ヘッドが直接アクセスする範囲ではないことから、このように位置合わせマークPMa′(,PMb′)をパターンドディスク媒体1の最外周位置に配置するべくスタンパ31,32にパターン形成することも充分有効であり、且つサーボ領域11及びデータ領域12の範囲が狭くなってしまう弊害も回避できる。
【0063】
また、上記実施の形態は、主としてDTRタイプのパターンドディスク媒体とそのディスク媒体を用いた磁気ディスクドライブについて説明したが、本発明はこれに限ることなく、物理的に各種パターンをディスク盤面に形成する他のタイプのパターンドディスク媒体についても同様に適応することが可能となる。
【0064】
さらには、複数枚のパターンドディスク媒体を1つのスピンドルモータに同軸的に組込んで搭載する磁気ディスクドライブにあっては、複数枚のディスク媒体の全面のパターンが一致することが、アクセスの制御を容易にし且つアクセス速度を向上させる点からも重要となると思われるが、これも各ディスク媒体1枚毎の表裏のパターンが一致していることが最低限の前提となるので、本発明は充分に有用であると思われる。
【0065】
その他、本発明は上記実施の形態に限らず、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能であるものとする。
【0066】
さらに、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施の形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の一形態に係るパターンドディスク媒体の表裏両面のパターン構成を示す平面図。
【図2】同実施の形態に係る特に位置合わせマークの形状と位置とを示す平面図。
【図3】同実施の形態に係るスタンパの位置合わせの原理構成を示す図。
【図4】同実施の形態に係るスタンパの位置合わせマーク部の具体的な構成を例示する図。
【図5】同実施の形態に係る実際のスタンパの位置合わせ時の固定調整を説明する図。
【図6】同実施の形態に係る位置合わせマークの他の形状構成を例示する図。
【図7】同実施の形態に係る位置合わせマークの他の形状構成を例示する図。
【図8】同実施の形態に係る位置合わせマークの他の形状構成を例示する図。
【図9】同実施の形態に係る位置合わせマークの他の形状構成を例示する図。
【図10】同実施の形態に係る位置合わせマークの他の形状構成を例示する図。
【図11】同実施の形態に係る位置合わせマークの他の形状構成を例示する図。
【図12】同実施の形態に係るディスク媒体に対する位置合わせマークの他の配置例を示す平面図。
【符号の説明】
【0068】
1…パターンドディスク媒体、11…サーボ領域、12…データ領域、21…サーボ領域、22…データ領域、31,32…スタンパ、31a,32a…位置合わせマーク部、33…ビームスプリッタ、34,35…ハーフミラー、36…レーザ光源、37…受光部、41,61,71,81,91,101…(全)反射領域、42,43…(2次元型回析格子構造)反射領域、51…ハブ、62,63,72,82,92〜97,102,103…反射領域、110a,110b…磁気ヘッド、131a,131b…ヘッドアーム、PMa,PMb,PMa′,PMb′…位置合わせマーク、SA…ディスク上面、SB…ディスク下面、TH…透孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面及び当該第1の面とは反対側の第2の面とを持つディスク状の平坦な基板と、
この基板の上記第1及び第2の面にそれぞれ事前形成されたデータ領域パターンと、
この第1及び第2の面のデータ領域パターンをそれぞれ周方向に複数分割する、略円弧放射状に事前形成されたサーボ領域パターンと、
上記基板の第1及び第2の面に対し、上記サーボ領域パターン及びデータ領域パターンを同時に事前形成する際の位置合わせに用いられた位置合わせマークと
を具備したことを特徴とする垂直記録用のパターンドディスク媒体。
【請求項2】
上記第1及び第2の面にそれぞれ事前形成された位置合わせマークは、上記第1及び第2の面に垂直な方向で略一致した位置にあることを特徴とする請求項1記載のパターンドディスク媒体。
【請求項3】
上記位置合わせマークは、上記サーボパターン領域及びデータパターン領域の範囲外に事前形成されていることを特徴とする請求項1記載のパターンドディスク媒体。
【請求項4】
上記位置合わせマークは、上記サーボパターン領域及びデータパターン領域の範囲を外れた上記第1及び第2の面のそれぞれ内周側に事前形成されていることを特徴とする請求項3記載のパターンドディスク媒体。
【請求項5】
上記位置合わせマークは、上記第1及び第2の面の同一セクタ番号に対応した位置に事前形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のパターンドディスク媒体。
【請求項6】
上記位置合わせマークは、その周方向長が上記サーボパターン領域1本の周方向長より大きいことを特徴とする請求項1記載のパターンドディスク媒体。
【請求項7】
第1の面及び当該第1の面とは反対側の第2の面とを持つディスク状の平坦な基板、この基板の上記第1及び第2の面にそれぞれ事前形成されたデータ領域パターン、この第1及び第2の面のデータ領域パターンをそれぞれ周方向に複数分割する、略円弧放射状に事前形成されたサーボ領域パターン、及び上記基板の第1及び第2の面に対し、上記サーボ領域パターン及びデータ領域パターンを同時に事前形成する際の位置合わせに用いられた位置合わせマークを備えた垂直記録用のパターンドディスク媒体と、
このパターンドディスク媒体の上記第1の面側に配置される第1の磁気ヘッドと、
上記パターンドディスク媒体の上記第2の面側に配置される第2の磁気ヘッドと
を具備したことを特徴とする磁気ディスクドライブ。
【請求項8】
上記位置合わせマークは、上記第1及び第2の磁気ヘッドのそれぞれアクセス範囲外に事前形成されていることを特徴とする請求項7記載の磁気ディスクドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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