説明

型内融着成形用予備発泡粒子及びその製造方法

【目的】 型内融着成形性に優れ、高度な物性を有する型内発泡成形体を得ることのできる熱可塑性樹脂予備発泡粒子及びその製品方法を提供する。
【構成】 真円柱状或いは楕円柱状樹脂粒子にガス透過係数が1×10-10 cc.(STP).cm/cm2 .sec.cmHg以上にある揮発性発泡剤を含浸し加熱発泡させ、発泡倍率1.5〜5cm3 /gの一次発泡粒子を得た後、更にこの発泡粒子を3倍以上の体積に発泡せしめると、表皮層に膜厚の厚い帯状リングが半球とに1つづつ,互いに交叉せずに形成しており、ほぼ球状である熱可塑性樹脂予備発泡粒子を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、型内融着成形により熱可塑性樹脂発泡成形体を製造するための、いわゆる予備発泡された熱可塑性樹脂発泡粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】発泡した熱可塑性樹脂からなる成形体を、予備発泡させた発泡樹脂粒子を型内融着成形により製造する方法は、従来から広く実施されている。そしてこの型内成形に供する予備発泡粒子としては、粒子径の揃った球状の発泡粒子が理想的であるとされている。これは、成形機の型内に充填して加熱し、発泡粒子を膨張させて粒子相互間の空間が埋った密に融着した状態の成形体にしようとする際に、角ばった部分のある予備発泡粒子より球状の予備発泡粒子の方が型窩内への充填状態を均質にできること、及び得られた成形体の特性が本質的に良くあることに基づくものと考えられている。
【0003】そこで球状の予備発泡粒子を製造する方法に関する技術が、幾つか提案されている。例えば特公昭52−41777号公報には、エチレン系樹脂粒子を水性懸濁液中に懸濁させ、該樹脂の融点以上の高温度に加熱して球状粒子を製造する方法が記載されている。特開昭58−168626号公報および特開昭60−4534号公報にも同様に、高温の熱水懸濁液中で加熱して球状のポリプロピレン系樹脂粒子を製造する方法が記載されている。これらの技術理想は、型内成形に供する予備発泡粒子としては球状で粒子径のバラツキの少ない発泡粒子が必要となるので、先ず発泡剤含浸前の樹脂粒子の段階で着実に球状で粒子径の揃った粒子にし、これに発泡剤を含浸し加熱発泡させると、樹脂粒子への発泡剤含浸量バラツキや加熱温度斑が小さくなる理由で、得られる予備発泡粒子は形状の揃った状態になる事を教示している。しかしこの方法では、発泡工程の前に独立の球状化工程がいる為、製造工程が煩雑となる事や、専用の装置と大量の熱エネルギーを必要とし、コストアップとなる問題があった。
【0004】一方上記問題を解決したものとして、樹脂粒子を球状化する為に加熱発泡時に球状化して、ほぼ球状の予備発泡粒子を製造する方法がある。例えば特開昭60−115413号公報、特開平2−53837号公報および特開平2−67338号公報には、特殊な配向を持つポリオレフィン樹脂粒子を得、これを密閉容器内で発泡剤とともに分散媒に分散させて樹脂の融点近傍に加熱した後、得られた発泡性粒子を高温高圧下の分散媒と一諸に低圧の雰囲気に放出して発泡させる方法を採用して、ほぼ球状の予備発泡粒子を製造する技術が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記の改良方法では、粒子径の揃った状態の発泡粒子が得られない欠点がある。その結果、型窩内への充填性に劣るという問題点が依然として残る。この原因は、特殊な配向を有する樹脂粒子を得る方法及びその発泡方法自体が持つ難点にあると考えられる。即ち、i)ストランドとして押出して切断し、配向した樹脂粒子を得る為の、ストランド冷却速度とドラフト引取速度の微妙な変動による粒子個々の配向度斑と、ii)発泡性粒子の放出時に生じる容器内・分散媒内の発泡剤成分や圧力の変動がもたらす発泡剤の含浸量斑と発泡温度の変動による樹脂粒子の配向緩和量・収縮量の変化との2点に起因する、発泡粒子形状が一定せず不揃いになり易い問題点が未解決のままである為と推察される。また前記のような粒子形状の予備発泡粒子を用いると充填性が劣る為、予備発泡粒子を型窩に充填し、加熱成形して得られた成形体は、表面外観、圧縮永久歪、くり返し圧縮後の回復率などの物性が充分満足のいく成形体にならないという問題がある。
【0006】本発明の目的は、型内融着成形に際して、融着性、充填性、対金型寸法収縮率、ひけ等の成形性能に優れた予備発泡粒子を提供することである。本発明の他の目的は、表面外観、圧縮回復率、圧縮歪、加熱時の寸法安定性、動的緩衝特性等に優れた発泡成形品を製造することのできる予備発泡粒子を提供することである。
【0007】本発明のもう一つの目的は、前記の目的を達成する予備発泡粒子の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の一つは、熱可塑性樹脂からなるほぼ球状の予備発泡粒子であって、粒子の表面を覆っている樹脂膜に、膜厚の厚い帯状のリングが2本形成されており、これらのリングは互いに交叉せず2本のリングは粒子を2等分した時、夫々の半球上に1本づつ存在するように2等分できる位置にあり、かつ個々のリングに沿って切断した2つの切断面のなす角度が45°以下であることを特徴とする型内融着成形用予備発泡粒子である。
【0009】もう1つの発明は、溶融状態にある熱可塑性樹脂を押出機よりノズルを通してストランド状に押出し、一定の長さに切断して得た円柱ないし楕円柱状粒子に、粒子の基材樹脂に対するガス透過係数が1×10-10 cc.(STP).cm/cm2 .sec.cmHg以上にある揮発性発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子となし、発泡性樹脂粒子の端面(上記ストランド切断面に相当する)と円柱側面(上記ストランド表面に相当する)の交点である稜近傍部に存在する揮発性発泡剤を優先的に揮散させて発泡性樹脂粒子を加熱発泡させ、発泡倍率で1.5〜5cm3 /gの一次発泡粒子となし、次いで一次発泡粒子の気泡中に気体による圧力を付与せしめ、さらにこれを一次発泡粒子の発泡倍率に対する発泡比で3倍以上に加熱発泡させることを特徴とする型内融着成形用予備発泡粒子の製造方法である。
【0010】以下、本発明を図面を用いて説明する。図1R>1〜5は各種の予備発泡粒子を示す図である。
図1(実施例1の実験No.1):本発明の予備発泡粒子の図である。
図2〜5:比較品の予備発泡粒子の図である。
図2(同実験No.10):円柱湾曲状樹脂粒子を本発明の発泡技術を用いて発泡させたもの。
図3(同実験No.11):三角柱状樹脂粒子を本発明の発泡技術を用いて発泡させたもの。
図4(同実験No.9):楕円柱状粒子を高温熱水懸濁系で球状化処理して得た、ほぼ球状の樹脂粒子を本発明の発泡技術を用いて発泡させたもの。
図5(同実験No.6):楕円柱状樹脂粒子を従来の発泡技術を用いて発泡させたもの。
【0011】図1〜5において、Aは予備発泡粒子を正面から見た図、BはAに対して側面から見た図、Cは予備発泡粒子の中央断面図である。CにおいてSは気泡、Uは樹脂膜、α1 〜α4 は膜厚の厚い帯状部を、β1 、β2 は2つの帯状リングの中間点(α1 とα2 の中間点、α3 とα4 中間点)を表わす。
【0012】上記5種の各発泡粒子の構造上の相違を対比すると、図1の予備発泡粒子はほぼ球状の粒子であり、表面を覆っている樹脂膜に膜厚の厚い帯状リングが2つ(R1 2 )配置されている。図2の予備発泡粒子は非球状であり、図1と同じく、2個の膜厚の厚い帯状リングが粒子表面上に配置されている。図3の予備発泡粒子は2個の膜厚の厚い帯状リング(R1 、R2 )と3本のリング状になっていない。厚肉帯状膜(R3 、R4 、R5 )とが粒子表面上に存在し、膜厚の厚い帯状リング(R1 、R2 )は厚肉帯状膜(R3 、R4 、R5 )の両端に夫々連結している。図4の予備発泡粒子はほぼ球状であり、表面の膜厚はほぼ均一な厚みをしている。図5の予備発泡粒子は太鼓状の形をしており、帯状の肉厚部は存在せず、ほぼ均一な厚みをしている。
【0013】本発明の予備発泡粒子(図1)は、ほぼ球状であり、帯状の2本のリングは交叉しておらず、2本のリングは粒子を2等分した時、夫々の半球上に1本づつ存在するように2等分できる位置にある。更に、個々のリングに沿って切断した2つの切断面のなす角度(θ)は45°以下である。図2は、非球状であり、上述の角度(θ)が45°以上になっている。
【0014】即ち、本発明の予備発泡粒子の特徴は、■ 表皮層を形成している樹脂膜に膜厚の厚い帯状リングが2つ形成されており、■ 2つのリングは交叉せず、粒子を2等分した時、リングは夫々の半球上にリングが1本づつ存在するように2等分できる位置にあり、■ 上記個々のリングに沿って切断した2つの切断面のなす角度は45°以下であり、■ 予備発泡粒子の形状がほぼ球状である点である。
【0015】■は、本発明の最も特徴とする点である。本発明の予備発泡粒子は、粒子の表面を覆っている樹脂膜の厚みが均一でなく、粒子表面の2ケ所に、その2ケ所以外の膜厚に対し厚い膜の帯がリング状に形成しており、そのことで従来の発泡粒子にはない腰の強さが確保されている。つまり膜厚の厚い帯状リングがリブ的な役割を果たすことを意味している。
【0016】膜厚の厚い帯状リング(α1 、α2 、α3 、α4 )の帯幅は40〜500μmが好ましい。帯状リングの平均膜厚(t1 )と、2つの帯状リングの中間点(β1 、β2 )の平均膜厚(t2 )との比(t1 /t2 )は3〜20が好ましい。■及び■はリングの位置を規定する要件であり、図2、3と相違する点である。図2に示すような、リングに沿って切断した2つの切断面のなす角度が45°以上の場合、成形発泡体はリングによるリブ効果が発揮されない。また、図3に示すような、2個の帯状リングが3本の、ほぼ直線状の厚肉帯状膜と連結して配置されたものは、粒子が球状でないため、次に述べる効果が発揮されない。
【0017】■は本発明の発泡粒子の形状を示すものである。つまり本発明の発泡粒子は、全体に丸味を帯びた平面部分のほとんどない形状のもので、ほぼ球状の発泡粒子である。ほぼ球状とすることによって、型内融着成形において良好な充填性を確保することができる。本発明において、発泡粒子の中心から表面までの距離の最大値をA、最小値Bをとして、その比をとった球形化度Y(=A/B)が1.5以下のほぼ球状である予備発泡粒子が望ましい。また平均粒径が約1.5〜8.0mmφで、粒径の揃った状態のものが望ましい。
【0018】本発明の予備発泡粒子は、表皮層に2つの膜厚の厚い帯状リングを有する為に、対金型寸法収縮率及びひけの小さい成型性能を有し、70%圧縮回復率、繰り返し圧縮永久歪、加熱寸法変化、引張強さ、動的衝撃特性に優れた成型発泡体を製造することが可能となる。これらの性能は発泡倍率が高い程、良好な結果を示す。
【0019】また、リングは互いに交叉せず、半球上に1本づつ存在し、リングで囲まれた2つの面のなす角度を45°以下とすることによって、腰の強い発泡粒子が達成される。更に、予備発泡粒子の形状が、ほぼ球状である為、型窩内への充填性が向上し、得られる発泡成形体の表面外観が優れ、圧縮永久歪が少ない。
【0020】上記の効果は、本発明の予備発泡粒子を用いて型内融着成形を行うと、発泡成形体の内部の粒子表面どうしの融着によってつくられる融着膜に、膜厚の厚い融着膜部分が網目状に、立体的に形成され、その部分がリブ効果を発揮し機械的変形、熱的変形に対し構造的に補強する役割を演じるためと推定される。これは従来の予備発泡粒子の表皮層膜厚に対する考え方、すなわち表皮層に占める樹脂成分量が同一(同じ平均膜厚み)であれば均一膜厚みのものが好ましいという考え方とは異なる意外な事実である。
【0021】このように、本発明の予備発泡粒子を用いることによって、容易に高度の物性を有する発泡成形体が得られ本発明の予備発泡粒子は型内融着成形に理想的なものである。本発明の予備発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂の種類は、押出ペレット化できて予備発泡しうるものであるならばとくに限定されるものではないが、たとえば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ホリプロピレン、エチレンとのランダム共重合ポリプロピレン、α−オレフィンとのランダム共重合ポリプロピレン、エチレンとのブロック共重合ポリプロピレン、α−オレフィンとのブロック共重合ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン系アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などがあげられるが、好ましくは無架橋或いは軽度に架橋されたポリオレフィン系樹脂である。
【0022】本発明の予備発泡粒子の発泡倍率は、5cm3 /g以上、100cm3 /g以下のものである。次に本発明の予備発泡粒子の製造方法について説明する。本発明の製造方法としての主要点は、イ)ストランド状に押出して得た真円柱状ないし楕円柱状粒子を使用すること、ロ)上記粒子の基材樹脂に対するガス透過係数が1×10-10 cc.(STP).cm/cm2 .sec.cmHg以上にある揮発性発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子となすこと、ハ)発泡性樹脂粒子の端面(上記ストランド切断面に相当する)と円柱側面(上記ストランド表面に相当する)の交点である稜近傍部に存在する揮発性発泡剤を優先的に揮散させて該発泡性樹脂粒子を加熱発泡させること、ニ)発泡倍率で1.5〜5cm3 /gの一次発泡粒子となすこと、ホ)次いで、一次発泡粒子の気泡中に気体による圧力を付与せしめ、一次発泡粒子 の発泡倍率に対する発泡比で3倍以上に加熱発泡させること、である。
【0023】2つの厚肉帯状リングを互いに交叉せず、個々のリングに沿って切断した2つの面のなす角度が45°以下の図1に示すような予備発泡粒子を製造するには、先ず上記主要点イ)の円柱状ないし楕円柱状樹脂粒子を使用することが必要である。非円柱状粒子や三角柱状粒子を用いた場合、図2、図3、に示したような型内融着成形には劣り、かつ高度な物性を有する成形発泡体を提供するには不向きな発泡粒子になってしまう。
【0024】円柱状粒子は、熱可塑性樹脂を押出機で加熱混練したのち、ダイスからストランド状に押出して冷却し、所望の直径と高さをもったほぼ円柱状のペレットに切断して得られる。ペレットの分子配向はダイスの構造、ストランドの引取速度(ドラフト)、押出量、ストランドの冷却条件などによって微妙に変化し、その結果、発泡粒子の形状大きさにバラツキを与える。そこで、なるべく分子配向のかからない条件で押出ストランドを得るのが望ましい。また形状は、円柱状、楕円柱状に限られるわけでなく、近似的に楕円形で棒状のものになっていればよい。
【0025】上記主要点イ)が充足されていても、上記粒子の基材樹脂に対するガス透過係数が1×10-10 cc.(STP).cm/cm2 .sec.cmHg以上の揮発性発泡剤を用いないと、2つの厚肉帯状リングを得ることはできない。この場合のガス透過係数はASTM D1434−72に準じてガス透過率測定装置(東洋精機製作所(株)製)にて測定される。上記主要点ロ)の揮発性発泡剤としては、例えば密度が0.920〜0.945g/cm3 のポリエチレン樹脂或いはエチレン−プロピレンランダム共重合樹脂の場合、二酸化炭素、プロパン、ブタン、ペンタン、1,1−ジフルオロエタン(F−152a)、モノクロロジフルオロメタン(F−22)、塩化メチレン、塩化エチレンなどが挙げられる。その中でも、CFC、HCFC規制の問題がなく不燃である二酸化炭素は、望ましい発泡剤である。
【0026】主要点ハ)の発泡性粒子の端面と円柱側面の交点である稜近傍部に存在する揮発性発泡剤を優先的に揮散させることの意味は、2つの厚肉帯状リングを得る為であり、この現象は上記主要点イ)、ロ)と後述する発泡剤の揮散処理を満たすことによって起こる現象である。即ち、発泡性粒子の稜近傍部は他の粒子表面部に比べ、単位樹脂体積に対する表面積が大きく、発泡剤揮散量が多いこと、そしてこの発泡剤揮散量の差を、ガス透過係数の大きい発泡剤の使用と揮散処理にて増幅しているものと推察される。この場合の発泡剤揮散処理は、たとえば発泡性粒子を約1〜10分間解放状態で大気に曝すか、発泡性粒子を発泡装置に移送する段階で系内の圧力を大気圧に急速に減圧させたのち加熱発泡させるか、先ず発泡開始温度以下の加熱気体を容器内に吹き込んで粒子を昇温させたり、発泡装置内の発泡粒子が発泡温度に高まる迄の速さを示す「昇温速度或いはスチーム昇圧時間」を長くしたりして発泡させる等の方法によって行われる。これらの方法における具体的な条件は、使用する発泡剤の種類、目標とする発泡倍率、平均表皮膜厚みなどにより変化するが、簡単な予備条件によって最適条件を求めることができる。また主要点ニ)において一次発泡粒子の発泡倍率が5cm3 /gを超えると厚肉帯状リングが得られない理由は、発泡倍率が高い、即ち、発泡剤含浸量が多くなると、前述した「発泡性粒子の稜近傍部と他の表面部とにおいての発泡剤揮散量の差」を大きくすることが難しい為と考えられる。一次発泡倍率が1.5cm3 /g未満になる発泡条件では得られた粒子は樹脂成分内に占める気泡容積が不足し、後で膨張させて使うことが困難な粒子になってしまう。上記の現象からみて一次発泡倍率は、1.5〜5cm3 /gの狭い範囲で発泡管理する事が必要となる。
【0027】主要点ホ)の必要性は、厚肉帯状リングを持ちほぼ球状の予備発泡粒子を出現させることにある。一次発泡粒子の発泡倍率に対する発泡比で3倍以上に発泡させることによって、厚肉帯状リングによる拘束力によって太鼓状粒子の胴面及びその両面部を球面化することができる。
【0028】本発明の発泡方法である多段階に膨張させて目標の発泡倍率の予備発泡粒子を得る方法としては、例えば特公昭61−11253号公報、特公平2−50945号公報、特願平3−174752号公報に記載されている。これらの技術思想は、予備発泡粒子の型内融着成形時(再膨張)には独立気泡構造で粒子形状の揃った予備発泡粒子が必要になるので、多段階に発泡して段階当たりの無理な発泡をさける事を教示している。この点については、従来の発泡方法(実施例1の実験No.6及びNo.9)との対比にて、本発明の発泡方法(実施例1の実験No.1〜5、No.12〜13)は粒子形状の揃った、独立気泡構造に富む予備発泡粒子が得られることが確認されている。しかし前述の従来技術では、「表皮層に膜厚の厚い帯状リングを有する」予備発泡粒子を得る方法に関する技術的内容や、この予備発泡粒子が発揮するところの特異な効能についての開示はなく、そして本発明の予備発泡粒子を製造することはできない。
【0029】本発明の製造方法に基づけば、従来の予備発泡粒子では持っていなかった型内融着成形性能と高度な物性を有する型内発泡成形体を提供する、「表皮層に膜厚の厚い帯状リングを有する」ほぼ球状の本発明の予備発泡粒子を製造することができる。しかも、本発明の製造方法は、従来の独立した球状化工程を無くして省資源、省エネルギー、無公害(廃液処理問題解消)に貢献しており、簡易な方法でほぼ球状の、形状の揃った予備発泡粒子が得られ、産業界に及ぼす技術的意義は極めて高いものである。
【0030】評価方法本発明で使用する評価方法を次に示す。
1)発泡倍率重量(Wg)既知の発泡粒子及び成形発泡体の容積(Vcm3 )を水没法で測定し、その容積を重量で除した値を発泡倍率(cm3 /g)とする。
2)独立気泡率ASTM−D2856に記載されているエアーピクノメーター法(BECKMAN製、モデル930)により測定した。(n=10の平均)
3)発泡比次式より算出した。
【0031】発泡比=(Sn−1)/(S1 −1)
Sn:予備発泡粒子の発泡倍率(cm3 /g)
1 :一次発泡粒子の発泡倍率(cm3 /g)
4)形状■ほぼ球状 図1に示すように全体に丸味を帯び平面部分のほとんどない形状のものを言う。
【0032】■太鼓状図5に示すように、樹脂粒子の陵角部は曲率半径の小さい状態で丸味を帯びているが、平面部も残っている形状のものを言う。
■非形状上記■及び■に該当しない形状のものを言う。
5)球形化度次式より算出した。(n=50の平均)
球形化度Y=A/BA:発泡粒子中心から表面までの距離の最大値B:発泡粒子中心から表面までの距離の最小値6)予備発泡粒子径のバラツキアトランダムに200個の発泡粒子をサンプリングし、その各粒子の最大径xを最小単位10μまでデジタル式ノギスにて測定、そして次式より算出評価した。
【0033】
【数1】


【0034】
評価尺度 区 分 記 号 備 考 σ値が0.2以下の場合 ○ 優れる σ値が0.2を超える場合 × 不 良7)表皮層の膜厚発泡粒子のほぼ中心と2つの肉厚帯状リングの重心とを結んで出来た面に沿って切断した粒子切断片について電子顕微鏡写真(200倍)を撮り、下記の夫々の膜厚みを測定した。尚、厚肉帯状リングが存在しない発泡粒子は、粒子のほぼ中心を通る長手方向に切断した粒子切断片について分析した。
【0035】■肉厚帯状部の厚みt1 (μ)
図1〜3、Cにおける肉厚帯状部の各ケ所最大膜厚を測定し、この操作を10個の粒子の切断片について行ない、この40点の測定値を算術平均した値である。
■リング間曲線中央部の厚みt2 (μ)
図1〜3、Cにおける2つ帯状リング間の中間部に位置する2つの表皮膜厚を測定し、この操作を10個の粒子の切断片について行ない、この20点の測定値を算術平均した値である。
【0036】■平均表皮膜厚み図1〜3のように膜層の厚いリングを有する粒子については、■の厚みt1を4カ所、■の厚みt2 を2カ所、その他の表皮曲面部を14等分して得た14カ所の厚みを測定し、この操作を10個の粒子の切断片について行ない、この測定値を算術平均した値である。厚肉帯状リングが存在しない発泡粒子は、表皮曲面部を20等分して得た20カ所の厚みを測定して、上記と同様に200点の平均値とした。
【0037】■表皮膜厚比t1 /t2上記の肉厚帯状部の厚みt1 とリング間曲線中央部の厚みt2 との比である。
8)成形性能8−1)融着度箱形成形品の厚さ20mm以上の部分から100×100mm正方形状の試験片を切り出し、その中央部に深さ2mmの切れ目を入れ、切れ目にそって折り曲げ成形品を開裂させ、切開断面に存在する全粒子数に対する材料破断して切裂している粒子数の百分率を求めた。
【0038】
評価基準 区 分 記 号 備 考 材破率90%以上の場合 ○ (優れる)
材破率90%未満80%以上の場合 △ (良 好)
材破率80%未満の場合 × (不 良)
8−2)対金型寸法収縮率発泡成形体の成形用金型に対する収縮率により下記の如く判定した。
【0039】
区 分 記 号 備 考 2.5%未満の場合 ○ (優れる)
2.5%以上3.0%未満の場合 △ (良 好)
3.0%以上の場合 × (不 良)
8−3)ひけ空洞部が約300×300×100mm、厚み約20mmの箱型成形体実験片底面に、その対角線方向に直線定規を当て試験片と定規の間に生じた間隙の最大距離を求め、対角線の長さに対する百分率で評価した。
【0040】
評価基準 区 分 記 号 備 考 0.5%以下の場合 ○ (優れる)
0.5%より大きく2%未満の場合 △ (良 好)
2%以上の場合 × (不 良)
8−4)充填性発泡成形体の任意カ所の50mm×50mmの切断面を観察し、最も長い部分の長さが1mm以上の大きさの粒子間隙部分(ボイド)がいくつあるかにより、以下の基準で判定した。
【0041】
評価基準 区 分 記 号 備 考 2個未満の場合 ○ (優れる)
2個以上5個未満の場合 △ (良 好)
5個以上の場合 × (不 良)
9)型内成形発泡体の物性9−1)表面外観下記の如く評価した。
【0042】
評価基準 区 分 記 号 表面凹凸がほとんどなく平滑美麗な場合 ○ 表面凹凸が目立つがなんとか使用可能な場合 △ 表面凹凸が激しく平坦でない場合 × 9−2)70%圧縮歪回復率厚さが40mmで50mm四方の板状試験片を圧縮速度10mm/minで厚さ12mmになるまで厚さ方向に全面圧縮したのち、同じ速度で除圧し、圧縮応力がゼロになった時の厚さtを測定し〔(40−t)/40〕×100を70%圧縮歪回復率とする。
【0043】9−3)圧縮永久歪JIS K−6767法に準じて測定した。実験条件は25%一定圧縮とした。
9−4)繰り返し圧縮永久歪JIS K−6767法に準じて測定した。実験条件は25%圧縮、8万回繰り返しとした。
【0044】9−5)加熱寸法変化200mm正方形状に切出した成形体サンプルを25℃に24時間静置し、その中央部に100×100mmの正方形と中心十字線を描き、各線分の長さを精測し、100℃±1℃に温調した恒温槽内に96時間静置し、取出した後25℃で1時間放冷し標線の寸法を精測し、元の寸法からの変化率(%)を求め、その平均値を求めた。
【0045】9−6)引張強さJIS K−6767、A法に準じて測定した。
9−7)動的緩衝特性JIS Z−0234に準じて測定した。測定条件は緩衝材厚み50mm、落下高さ60cmで行ない、1回目の落下の測定値で示した。
10)総合評価評価結果を総合するものとして、次の尺度の評価をする。
【0046】
評価基準 区 分 記 号 備 考 総てが○印 ○ (市場要求品質)
総て○印か△印で×印なし △ (従来の目標品質)
×印が1個以上 × (従来の品質)
【0047】
【実施例】以下本発明を実施例を用いて説明する。
【0048】
【実施例1、比較例1】
実験No.1(本発明)無架橋エチレン−プロピレンランダム共重合樹脂〔ユニオンポリマー社製FM821、密度0.90g/cm3 、MFR 7g/10分(230℃、2.16kg)、エチレン含量2.7重量%〕を90ミリの押出機を用いて、ダイスノズル径1.0φ、ダイス孔数200のダイスより200kg/Hrの押出量にて、ポリマー分子配向のかかりにくく、ストランドが安定して引ける最低限の引取速度・18m/minで引取り、冷却して切断し、長さ1.5mm、平均径1.2mmφの楕円柱状粒子を製造した。この樹脂粒子を耐圧容器内に収容し、発泡剤としてガス透過係数が9×10-10 cc.(STP).cm/cm2 .sec.cmHgを示す二酸化炭素(気体)を注入し圧力30kg/cm2 G、温度8℃の条件下で4時間かけて樹脂粒子中に二酸化炭素を含浸した。次にこの発泡性樹脂粒子を2分間開放状態で大気に曝した後、発泡装置(脱気昇温方式)に収容して槽内温度を80℃から130℃まで25秒間かけて昇温し更にその温度を保持しながら10秒間水蒸気加熱発泡し、一次発泡粒子を得た。この発泡粒子の発泡倍率は3.0cm3 /gであった。得られた発泡粒子の形状は太鼓状のもので、両端面の稜近傍部の表皮膜厚は厚いものであった。この一次発泡粒子を加圧加温装置に収容し、80℃の温度下で高圧空気を用い8kg/cm2 Gまで1時間かけて昇圧し更に4時間その圧力を保持して、一次発泡粒子の気泡内圧を高め膨張能を付与した。次にこの膨張性一次発泡粒子を発泡装置に収容して槽内温度80℃から130℃まで10秒間かけて昇温し、更にその温度を保持しながら8秒間水蒸気加熱発泡し、二次発泡粒子を得た。この二次発泡粒子は、発泡倍率6.0cm3 /g、やや太鼓状の形状であった。更に二次発泡粒子に、上記二次発泡粒子を得た条件と同じ条件で膨張能処理と加熱発泡処理を行ない三次発泡粒子(予備発泡粒子)を得た。この実験で得られた予備発泡粒子の形状及び表皮層の膜構造の模式図を図1に示す。図1によると、本発明の予備発泡粒子はほぼ球状であり、表面を覆っている樹脂膜(いわゆる表皮層)に膜厚の厚い帯状リングが2つ、互いに交叉せず、個々のリングで囲まれた2つの面がほぼ平行に位置して形状されている事が分る。
実験No.2(本発明)実験No.1の130℃加熱時間10秒間を5秒間に変更して、発泡倍率1.5cm3 /gの一次発泡粒子を得、実験No.1の一次発泡粒子気泡内への空気追添圧力、時間8kg/cm2 G×4時間を30kg/cm2 G×15時間に変更して発泡倍率6cm3 /gの、ほぼ球状である二次発泡粒子を得た以外は実験No.1と同様にして、予備発泡粒子を得た。
実験No.3(本発明)実験No.1の使用した揮発性発泡剤・二酸化炭素をモノクロロジフルオロメタン(F−22、ガス透過係数1.1×10-10 cc.(STP).cm/cm2 ・sec.cmHg)とし60℃、24kg/cm2 Gで30分間液含浸に変更して、発泡倍率5cm3 /gの一次発泡粒子を得、実験No.1の一次発泡粒子気泡内への空気追添圧力を14kg/cm2 Gに変更して、発泡倍率15cm3 /gの、ほぼ球状である予備発泡粒子を二段発泡にて得た以外は実験No.1と同様にして得た。
実験No.4(本発明)実験No1の楕円柱状粒子を真円柱状粒子(冷却水槽内のガイドロール位置を変更して得た)に、一次発泡時の昇温(スチーム圧)時間25秒を15秒間に変更して、実験No.1と同じ発泡倍率、形状の一次発泡粒子を得、実験No.1の一次発泡粒子気泡内への空気追添圧力8kg/cm2 Gを10kg/cm2 Gに変更して、発泡倍率7.2cm3 /gのほぼ球状である二次発泡粒子を得た以外は実験No.1と同様にして予備発泡粒子を得た。
実験No.5(本発明)実験No.1の楕円柱状粒子を真円柱状粒子(冷却水槽内のガイドロール位置を変更して得た)に、揮発性発泡剤・二酸化炭素をn−ブタン(ガス透過係数12×10-10 cc.(STP).cm/cm2 ・sec.cmHg)に変更して、実験No.1と同じ発泡倍率、形状の一次発泡粒子を得、実験No.1の一次発泡粒子気泡内への空気追添圧力8kg/cm2 Gを6kg/cm2 Gに変更して、発泡倍率5cm3 /gの太鼓状である二次発泡粒子を得た以外は、実験No.1と同様にして予備発泡粒子を得た。
実験No.6(従来品)実験No.1の樹脂粒子100重量部、発泡剤としてn−ブタン20重量部、水450重量部、分散剤として第3リン酸カルシウム3.0重量部を耐圧容器内に収容し、攪拌下で130℃に昇温し1時間保持して樹脂中に発泡剤を含浸した後、容器内圧を20秒間10kg/cm2 Gにし、次いで33kg/cm2 Gの窒素ガスで加圧しつつ容器の一端を解放し大気中に放出発泡して発泡倍率15cm3 /gの予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子の形状及び表皮層の膜構造の模式図を図4に示す。
実験No.7(比較例)実験No.1の使用した揮発性発泡剤・二酸化炭素をモノクロロジフルオロメタン(F−22)とし、60℃、24kg/cm2 Gで30分間液含浸し、一次発泡時の昇温(スチーム圧)時間25秒間を10秒間に変更して、発泡倍率6cm3 /gの一次発泡粒子を得、二段発泡にて発泡倍率15cm3 /gの予備発泡粒子を得た以外は実験No.1と同様にして得た。
実験No.8(比較例)実験No.1の使用した揮発性発泡剤・二酸化炭素をモノクロロジフルオロエタン(F−142b、ガス透過係数2×10-10 cc.(STP).cm/cm2 ・sec.cmHg)とし、45℃で5時間含浸した他は、実験No.1と同様にして予備発泡粒子を得た。
実験No.9(従来品)実験No.1の樹脂粒子100重量部、水450重量部、分散剤として第3リン酸カルシウム3.0重量部を耐圧容器内に収容し、攪拌下で200℃に昇温し1時間保持した後冷却して、ほぼ球状の樹脂粒子を得た。このほぼ球状である樹脂粒子を使用する以外は、実験No.1と同様に行ない、発泡倍率15cm3 /gで、ほぼ球状の予備発泡粒子を得た。
実験No.10(比較例)実験No.1の楕円柱状粒子を円柱湾曲状粒子(押出量を300kg/Hrに変更した結果、押出ストランドがメルトフラクチャー現象を起こした。このストランドを切断して得た)に変更した以外は、実験No.1と同様にして予備発泡粒子を得た。
実験No.11(比較例)実験No.1の楕円柱状粒子を三角柱状(円形ノズルより、ストランド断面形状が三角形状となるノズル形状にして得た)に変更した以外は、実験No.1と同様にして予備発泡粒子を得た。
【0049】これらの実験で得られた予備発泡粒子の形状及び表皮層の膜構造は、実験No.2〜No.5の本発明品は図1と同状のものであっのに対し、実験No.7の一次発泡倍率が5cm3 /gを超えた6cm3 /gの一次発泡粒子では厚肉帯状リングを現出できず、実験No.8のガス透過係数が1×10-10 cc.(STP).cm/cm2 ・sec.cmHg未満の発泡剤の使用では、他の条件が満たされていても厚肉帯状リングを現出できないものであった。実験No.10の円柱湾曲状樹脂粒子、実験No.11の三角柱状樹脂粒子を用いて得た予備発泡粒子の形状及び表皮層の膜構造の模式図をそれぞれ図2及び図3に示す。図2及び図3は、膜厚の厚い帯状リングが粒子曲面上の片側に偏在し夫々のリングで囲まれた面が平行でなかったり(θ1 =80°)、3つの膜厚の厚い帯状平面部分を持ち、この帯状平面部に交叉して、この両端に膜厚の厚い帯状リングを配置した、非球状の構造を示した。そして、2つの厚肉帯状リングを持つ一次発泡粒子であっても、一次発泡粒子に対する発泡比で3倍以上膨らまさないと、ほぼ球状の予備発泡粒子が得られない事が分かる。
【0050】上記実験No.1〜No.11の予備発泡粒子について本文記載の方法で構造指標を評価し、表1に示した。
【0051】
【表1】


【0052】表1によると、粒子表面部の発泡剤を優先的に揮発させた条件、例えば加熱発泡昇温(スチーム圧)時間を長くした加熱方法のもの程、表皮膜厚比(t1 /t2 )が大きい値である事が分る。また従来の発泡方法である実験No.6では粒子径のバラツキが大きく問題である事が分かる。次いで上記実験No.1〜No.11の予備発泡粒子を用い、各々その粒子の内圧が1.0kg/cm2 (ゲージ圧)のものになるように空気を圧入させ、直ちにその粒子を空胴部が305×305×103mm、厚み21mmの箱型を形成する型内及び305×305×52mmの内寸法を有する型内に満たして型内で加熱発泡させ、成形発泡体を得た。この場合の加熱には水蒸気を用い、約15秒間、2.0kg/cm2 (ゲージ圧)の予備加熱と、3.3kg/cm2 (ゲージ圧)、15秒の成形加熱を行ない、後冷却して取出した。取出した成形体は90℃の室内で8時間熟成させた。この成形性能と得られた発泡成形体の物性を本文記載の方法で評価し、その結果を表2にまとめた。
【0053】
【表2】


【0054】なお、70%圧縮歪回復率は、18%以下の値を○、18%を超え22%以下の値を△、21%を超える値を×として判定、圧縮永久歪は、5%以下の値を○、5%を超え8%以下の値を△、8%を超える値を×として判定、繰り返し圧縮永久歪は、6%以下の値を○、6%を超え10%以下の値を△、10%を超える値を×として判定、100℃加熱寸法変化は、3.0%未満の値を○、3.0%以上で5.0%未満の値を△、5.0%以上の値を×として判定、引張強さは、7kg/cm2 以上の値を○、6kg/cm2 以上7kg/cm2 未満の値を△、6kg/cm2 未満の値を×として判定、そして動的緩衝特性は最大減速度(G)が、34G未満の値を○、34G以上37G未満の値を△、37G以上の値を×として判定した。また発泡成形体の発泡倍率は23cm3 /gの同じ水準になるように揃える努力をし、そして物性対比の評価をした。
【0055】表2によると、本発明の予備発泡粒子(実験No.1〜No.5)は比較品(実験No.7〜8、No.10〜11)や従来品(実験No.6及びNo.9)のいずれよりも、型内融着成形性能(融着度、対金型寸法収縮率、ひけ、充填性)に優れており、型内成形して得た発泡成形体の表面外観、70%圧縮歪回復率、圧縮永久歪、繰り返し圧縮永久歪、100℃加熱寸法変化、引張強さ、動的緩衝特性といった諸物性が品位のある高度な値を示すことが分かる。この結果は、本発明の予備発泡粒子の特徴であるところの、ほぼ球状であり、表面を覆っている樹脂膜に膜厚の厚い帯状リングが2つ、互いに交叉せず、個々のリングで囲まれた2つの面の角度が45度以下に形成されている為、これを型内融着成形して得た発泡成形体の内部に厚肉表皮の融着部が網目状に立体的に成形されリブ効果を発揮していることを示している。
【0056】
【実施例2、比較例2】ここでの実験は、本発明の製造方法が対象とする処の独立気泡率の高い高発泡倍率の予備発泡粒子が得られるものであることを示すものである。実験に供する発泡粒子は実施例1、比較例1の実験No.1、No.3、No.5、No.6、No.9で得られた発泡粒子(発泡倍率15cm3 /g)である。夫々の気泡内に発泡比が2.07倍になるように空気を追添調整して、実験No.1の二次発泡条件と同じ様な条件で加熱発泡して、発泡倍率30cm3 /gの予備発泡粒子を得た。これを実験No.12、No.13、No.14、No.15、No.16とした。
【0057】得られた予備発泡粒子について、構造指標を評価し、表3に示した。
【0058】
【表3】


【0059】表3によると、本発明品(実験No.12〜No.14)は従来品(実験No.15、No.16)に較べ、独立気泡率の高い予備発泡粒子が得られており、意外な事に従来品より膨張能力が同等以上にある事が判る。上記実験No.12〜No.16の予備発泡粒子(発泡倍率30cm3 /g)を実施例1、比較例1記載の方法で型内成形し、成形性能と得られた発泡成形体の物性を評価し、その結果について表4にまとめて示した。
【0060】
【表4】


【0061】なお、70%圧縮歪回復率は、10%以下の値を○、10%を超え13%以下の値を△、13%を超える値を×として判定、圧縮永久歪は、8%以下の値を○、8%を超え10%以下の値を△、10%を超える値を×として判定、繰り返し圧縮永久歪は、6%以下の値を○、6%を超え8%以下の値を△、8%を超える値を×として判定、100℃加熱寸法変化は、8%以下の値を○、8%を超え12%以下の値を△、12%を超える値を×として判定、引張強さは、3kg/cm2 以上の値を○、2kg/cm2 以上で3kg/cm2 未満の値を△、2kg/cm2 未満の値を×として判定、動的緩衝特性は最大減速度(G)が、36G以下の値を○、36Gを超え38G以下の値を△、38Gを超える値を×として判定した。また発泡成形体の発泡倍率は45cm3 /gの同じ水準になるように揃える努力をした。
【0062】表4によると、、高発泡倍率の予備発泡粒子においても、本発明品は従来品より型内成形性能に優れ、型内成形して得た高発泡倍率(45cm3 /g)の発泡成形体の物性は従来品に較べ顕著な差であり品位の高いものである事が分かる。
【0063】
【実施例3】この実験は、本発明の発泡シートが対象とする「熱可塑性樹脂」のいずれにも適用できる事を示す為のものである。
実験No.17高密度ポリエチレン樹脂〔旭化成工業社製サンテックHD、B770、密度0.955g/cm3 、MI0.2g/10分(190℃、2.16kg)〕を用いて、実施例1の実験No.1の二酸化炭素をn−ブタン(ガス透過係数5×10-10 cc.(STP).cm/cm2 ・sec.cmHg)に、発泡温度130℃を126℃にそれぞれ変更した他は実験No.1と同様にして行ない、発泡倍率3.0cm3 /gの一次発泡粒子、発泡倍率6.0cm3 /gの二次発泡粒子、そして発泡倍率15cm3 /gの予備発泡粒子を得た。
実験No.18低密度ポリエチレン樹脂〔旭化成工業社製サンテックLD、F2130、密度0.921g/cm3 、MI3.2g/10分(190℃、2.16kg)〕100重量部に対し、架橋剤ジクミルパーオキサイド0.15重量部を添加し、押出軽架橋した改質低密度ポリエチレン樹脂(MI0.5g/10分、ゲル分率10%(沸騰トルエン×8時間抽出)を用いて、実施例1の実験No.1の発泡温度130℃を104℃に変更した他は実験No.1と同様にして行ない、発泡倍率15cm3 /gの予備(三次)発泡粒子を得た。なお、二酸化炭素のLDPE(F2130)樹脂に対するガス透過係数は1.4×10-9cc.(STP).cm/cm2 ・sec.cmHgの値である。
実験No.19ポリスチレン樹脂〔旭化成工業社製、GP680、密度1.05g/cm3 、MFR7.5g/10分(200℃、5kg)〕を用いて、実施例1の実験No.1の発泡温度130℃を100℃に変更して発泡倍率3cm3 /gの一次発泡粒子を得、実験No.1の一次発泡粒子気泡内への空気追添条件80℃×8kg/cm2 Gを60℃×3kg/cm2 Gに変更して、発泡倍率15cm3 /gの予備発泡粒子を二段発泡にて得た。尚、二酸化炭素のPS(GP680)樹脂に対するガス透過係数は1.0×10-9cc.(STP).cm/cm2 ・sec.cmHgの値である。
【0064】これら実験No.17〜19で得た予備発泡粒子について、本文記載の方法で独立気泡率を評価した結果95%、96%、100%の値を示した。又実施例1、比較例1と同様に発泡粒子の表皮層膜構造を観察したところ,ほぼ図1と同状で、膜厚の厚い帯状リングが2つ、互いに交叉せず、個々のリングで囲まれた2つの面がほぼ平行に位置して形成している、ほぼ球状のものであった。
【0065】
【発明の効果】本発明の予備発泡粒子は上述の構成を持つことにより,型内融着成形性能(融着度、対金型寸法収縮率、ひけ、充填性)に富み、そして表面外観、70%圧縮歪回復率、圧縮永久歪、繰り返し圧縮永久歪、100℃加熱寸法変化、引張強さなどの機械的、熱的特性や動的緩衝特性に優れた成形発泡体を容易に得る事ができる。そしてこれらの特性が特に大きな応力を受ける構造材、緩衝材、例えば自動車のシート、弱電機器の輸送時の包装緩衝材のように、従来の低発泡成形体でなければ使用し得なかった分野にも高倍率の発泡体、厚さの薄い発泡体として用いることができ、軽量化、減容化が可能になる他、従来、成形発泡体の物性が劣る為に用途が制限されていた樹脂素材も多くの用途に使用することが出来るようになる。
【0066】また製造方法としても、従来その実現が不可能とされていた、独立した球状化工程なくして、粒径の揃ったほぼ球状の予備発泡粒子を得ることに成功し、その結果省資源、省エネルギー、無公害に貢献しており、その技術的意味は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の予備発泡粒子の正面図(A)、側面図(B)、中央断面図(C)である。
【図2】円柱湾曲状樹脂粒子を本発明の方法により予備発泡させた粒子の正面図(A)、側面図(B)、中央断面図(C)である。
【図3】三角柱状樹脂粒子を本発明の方法により予備発泡させた粒子の正面面(A)、側面図(B)、中央断面図(C)である。
【図4】楕円柱状粒子を高温高圧の熱水懸濁系で球状化した粒子を本発明の方法により予備発泡させた粒子の正面図(A)、側面図(B)、中央断面図(C)である。
【図5】楕円柱状樹脂粒子を公知の方法により予備発泡させた粒子の正面図(A)、側面図(B)、中央断面図(C)である。
【符号の説明】
U 樹脂膜
1 、R2 膜厚の厚い帯状リング
2 、R3 、R4 膜厚の厚い帯状膜
S 気泡
θ リングに沿って切断した2つの切断面のなす角

【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性樹脂からなるほぼ球状の予備発泡粒子であって、粒子の表面を覆っている樹脂膜に、膜厚の厚い帯状のリングが2本形成されており、これらのリングは互いに交叉せず、2本のリングは粒子を2等分した時、夫々の半球上に1本づつ存在するように2等分できる位置にあり、かつ個々のリングに沿って切断した2つの切断面のなす角度が45°以下であることを特徴とする型内融着成形用予備発泡粒子。
【請求項2】 熱可塑性樹脂からなる予備発泡粒子の製造方法において、溶融状態にある熱可塑性樹脂を押出機よりノズルを通してストランド状に押出し、一定の長さに切断して得た円柱ないし楕円柱状粒子に、粒子の基材樹脂に対するガス透過係数が1×10-10 cc.(STP).cm/cm2 .sec.cmHg以上の揮発性発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子となし、発泡性樹脂粒子の端面(上記ストランド切断面に相当する)と円柱側面(上記ストランド表面に相当する)の交点である稜近傍部に存在する揮発性発泡剤を優先的に揮散させて発泡性樹脂粒子を加熱発泡させ、発泡倍率で1.5〜5cm3 /gの一次発泡粒子となし、次いで一次発泡粒子の気泡中に気体による圧力を付与せしめ、さらにこれを一次発泡粒子の発泡倍率に対する発泡比で3倍以上に加熱発泡させることを特徴とする型内融着成形用予備発泡粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−145407
【公開日】平成6年(1994)5月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−294553
【出願日】平成4年(1992)11月2日
【出願人】(000000033)旭化成工業株式会社 (901)