説明

型枠装置及びこれを用いたコンクリート躯体の施工方法

【課題】専用の型枠体を必要としない保温性に優れ、安価にできるコンクリート躯体を形成するための型枠装置と、これを用いて外壁板を強固に保持してコンクリート材表面のむき出しを防止した見た目のよいコンクリート躯体の施工方法を提供する。
【解決手段】断熱板11を有するコンクリート躯体20を形成するための型枠装置10、10a、10bにおいて、断熱板11と、この上下端部をH型溝に装着させると共に、上下方向に連接可能に保持できる横部材12とを有し、任意間隔を設けて相対向させた状態で立設配置される第1と、第2の型枠体13、13aと、これらの外側に、任意間隔を設けてそれぞれを立設させ横部材12に固着させて配置される縦部材14と、相対向するそれぞれの横部材12にコ字状金属棒の両端部のそれぞれをブリッジ状に引っかけて任意間隔を設けて並列して取り付けられる鎹部材15を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋や、高さが4階建て程度のビル等に採用される鉄筋入りのコンクリート躯体を形成するための型枠装置、及びこの型枠装置を用いたコンクリート躯体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築用の基礎や、コンクリート壁等のコンクリート躯体を構築するには、構築する場所である施工現場で行うのが原則であった。この施工においては、例えば、先ず地面を掘削してそこに敷設石を入れ、捨てコンクリート材を打設して根切り部を構築した後、根切り部上に基礎あるいはコンクリート壁構築用の所定の高さの型枠装置を形成している。この型枠装置は、2枚の型枠体を任意間隔を設けて相対向させて立設させると共に、任意間隔内に縦鉄筋や、横鉄筋等を配設した後、コンクリート材を流し込み、適当期間経過させ固化させた後、型枠体を取り外すようになっている。そして、更に、この上には、コンクリート壁を構築するための型枠装置を形成し、上方に積み上げるようになっている。このコンクリート躯体を構築するための型枠装置は、2枚の型枠体を間の隙間となる部分に鉄筋を設けると共に、それぞれに貫通孔を設けた2枚の型枠体を間に隙間を設けて相対向させて立設させ、貫通孔にスペーサ部材を取り付けて型枠体を支持している。そして、この型枠装置は、型枠体間にコンクリート材を流し込んで適当期間経過させ、固化させた後、型枠体を取り外すことでコンクリート壁を形成するようになっている。このように、従来の施工方法では、捨てコンクリート材の打設、コンクリート躯体構築用の型枠形成、コンクリート材固化後の型枠体の取り外しといったそれぞれの作業を施工現場において順次行っている。
【0003】
また、従来より、コンクリート壁や、コンクリートスラブ等のコンクリート躯体を形成するのは、例えば、工場等でブロック状のコンクリート壁や、コンクリートスラブに作製しておき、これを施工現場に運搬して連結配設するものがある。この場合にも、ブロック状のコンクリート躯体を形成するための型枠装置は、仮設台上に鉄筋を設けると共に、仮設台上にそれぞれに貫通孔を設けた2枚の型枠体を間に隙間を設けて相対向させて立設させ、貫通孔にスペーサ部材を取り付けて型枠体を支持している。そして、型枠体間には、コンクリート材を流し込んで適当期間経過させ、固化させた後、型枠体を取り外すことでブロック状のコンクリート躯体を形成するようになっている。
【0004】
更には、従来より、コンクリート壁や、コンクリートスラブ等のコンクリート躯体には、断熱板を嵌め込んだ状態で形成されるものがある。このようなコンクリート躯体を構築するための型枠装置は、2枚の型枠体を間の隙間となる部分に鉄筋を設けると共に、それぞれの型枠体に貫通孔を設けた2枚の内の少なくとも1枚の内壁面側に断熱板を設けた状態の2枚の間に隙間を設けて相対向させて立設させ、貫通孔にスペーサ部材を取り付けて型枠体を支持している。そして、この型枠装置は、型枠体間にコンクリートを流し込んで適当期間経過させ、固化させた後、型枠体を取り外すことで断熱板を嵌め込んだ状態のコンクリート壁や、コンクリートスラブ等のコンクリート躯体を形成するようになっている。
【0005】
従来の型枠装置には、任意間隔で向かい合わせ状に縦配置され、内部側にモルタルを打設させる第1、第2型枠を有し、これらの第1、第2型枠には横方向に貫通する挿着溝孔が形成され、さらに、第1、第2型枠を向かい合わせに縦配置させた状態で外面側からこれらの挿着溝孔にそれぞれ挿着し、内部側で相互に嵌合する嵌合部を備えた連結部材を有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この型枠装置によれば、連結部材と分離可能な型枠を対向設置し、この型枠の内部に設けた連結部材を相互に連結するだけで、型枠強度の保持と共に迅速な型枠施工ができ型枠を解体する必要のない型枠装置を提供することができるとなっている。
【0006】
また、従来の型枠兼用断熱パネル及びそれを用いた施工方法は、断熱板の一方の面に形成する凹溝に所定深さの凹陥部を所定間隔で形成し、この凹陥部の底面には断熱板の他方の面に抜ける貫通孔を形成し、桟木には突起体を設けておき、打設コンクリート材が貫通孔及び凹陥部内に流入して硬化するようになっているものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
この型枠装置によれば、断熱板とその一方の面に形成された凹溝に埋め込まれた桟木とを備える形態の型枠兼用断熱パネルにおいて、打設コンクリート材と断熱板及び桟木との間の高い一体性を確保できる型枠装置及びそれを用いた施工方法を提供することができるとなっている。
【0007】
更には、従来の型枠・内装下地兼用断熱パネルとこれを用いた鉄筋コンクリート構造物の施工方法は、合成樹脂発泡体よりなる断熱板と、その一方の面に配置された複数本の複合補強材とからなり、複合補強材は、断熱板の凹溝内に嵌め込まれると共に、複合補強材の両側にはさらに複合補強材の表面までの厚さを有する補助断熱体が設けられているものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
この型枠装置によれば、優れた断熱性と強度を有する、型枠・内装下地兼用断熱パネル及びこれを用いた鉄筋コンクリート構造物の施工方法を提供することができるとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−242231号公報
【特許文献2】特開2002−201748号公報
【特許文献3】特開2009−221821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述したような従来の型枠装置及びこれを用いたコンクリート躯体の施工方法は、次のような問題がある。
(1)従来の型枠装置は、いずれの場合においても、取り付けたり、取り外したりする専用の型枠体を準備する必要があり、この型枠体形成のための費用を要している。また、従来の型枠装置及びこれを用いたコンクリート躯体の施工方法は、コンクリート躯体の施工作業自体が屋外で行われる場合には、天候に大きく左右され、特に、風雨の強い悪天候が続くときには、工期の延長が余儀なくされ、施工が進まなくなることがある。また、従来のコンクリート躯体は、断熱板を用いないものの場合には、作製されるコンクリート躯体自体が断熱性に欠け、外気からの保温性が乏しくなっている。更に、従来のコンクリート躯体は、表面がコンクリート材むき出しの状態の場合には、表面に湿気や、結露が発生して表面を汚染すると共に、見た目も寒々としたものとなっている。
【0010】
(2)従来の型枠体の内壁面側に断熱板を設けた状態の型枠装置は、断熱板付きの型枠体が高価なものとなるので、これらを用いて作製されるコンクリート躯体が高価になり、ひいては家屋や、ビル等の建造物が高価なものとなっている。また、型枠体を取り外した後の断熱板には、外壁板を強固に固定するのが難しくなっていると共に、断熱板と外壁板との間に空間部を容易に形成することができない構造となっている。
【0011】
(3)特開平9−242231号公報で開示される型枠装置は、例え、第1、第2の型枠自体に発泡樹脂等からなる断熱板を用いて、これ自体を組み込んだコンクリート壁、又はコンクリートスラブ等を形成することができるものの、第1、第2の型枠を相対向させて立設配置させるための複雑な構造の挿着溝孔の形成や、この挿着溝孔に取り付けて立設保持させるための複雑な構造の嵌合部を備えた連結部材が必要となっている。従って、上記の型枠装置は、第1、第2の型枠や、連結部材が高価なものとなるので、これらを用いて作製されるコンクリート躯体が高価になり、ひいては家屋や、ビル等の建造物が高価なものとなっている。
【0012】
(4)特開2002−201748号公報で開示される型枠兼用断熱パネルは、断熱板や、これに取り付けられる桟木には、断熱板に凹溝と、この凹溝に所定深さの凹陥部を所定間隔で形成し、更に、凹陥部の底面には貫通孔を形成する必要があると共に、桟木に断熱板に設けた貫通孔に対向している位置に突起体を備える必要があり、断熱板や桟木に複雑な構造加工が必要となっている。従って、型枠装置は、断熱板や、桟木が高価なものとなるので、これらを用いて作製されるコンクリート壁、又はコンクリートスラブ等のコンクリート躯体が高価になり、ひいては建築物が高価なものとなっている。また、上記の型枠装置を用いた施工方法では、打設コンクリート材の粘度が比較的高いので、断熱板の貫通孔及び凹陥部内にコンクリート材を充填流入させて硬化させることが難しくなっている。
【0013】
(5)特開2009−221821号公報で開示される型枠・内装下地兼用断熱パネルとこれを用いた鉄筋コンクリート構造物の施工方法は、断熱板に凹溝を形成し、そこに複合補強材を嵌め込めると共に、複合補強材の両側に補助断熱体を設けているが、断熱板へのこれらの構造形成が容易でなく、型枠・内装下地兼用断熱パネルが高価なものとなっている。また、この型枠・内装下地兼用断熱パネルを用いた鉄筋コンクリート構造物の施工方法においては、複合補強材を断熱板を介してネジ又は釘等の係止部材で保持したとしても、断熱板が合成樹脂発泡体で強固に保持することができないので、複合補強材に固定する内装ボードを強固に固定することができなくなっている。
【0014】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、取り付けたり、取り外したりする専用の型枠体を必要としない保温性に優れ、簡単で安価にできるコンクリート躯体を形成するための型枠装置と、これを用いて内装、外装壁面板や、床板や、天井板等の外装板を強固に保持してコンクリート材表面のむき出しを防止した見た目のよいコンクリート躯体の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的に沿う本発明に係る型枠装置は、鉄筋コンクリートの両面に合成樹脂発泡体からなる板状の断熱板を有する家屋や、ビル等のコンクリート躯体を形成するための型枠装置において、断熱板と、断熱板の上、下端部のそれぞれをH型溝に装着させると共に、複数枚を上下方向に連接可能に保持できるH型材からなる横部材とを有し、任意間隔を設けてそれぞれを相対向させた状態で立設配置される第1と、第2の型枠体と、第1と、第2の型枠体のそれぞれの外側に、任意間隔を設けてそれぞれを立設させ横部材に固着させて並列して配置される棒体からなる縦部材と、第1と、第2の型枠体の相対向するそれぞれの横部材にコ字状金属棒の両端部のそれぞれをブリッジ状に引っかけて任意間隔を設けて並列して取り付けられる鎹部材を有する。
【0016】
ここで、上記の型枠装置は、横部材が金属又は硬質樹脂からなると共に、横部材の溝底部の鎹部材が取り付けられる部位に貫通孔を有するのがよい。
【0017】
また、これら上記の型枠装置は、縦部材が木又は硬質樹脂からなると共に、縦部材を貫通させて横部材に固着させる繋止部材を有するのがよい。
【0018】
上記の型枠装置を用いたコンクリート躯体の施工方法は、第1と、第2の型枠体間にコンクリート材を流し込み、硬化させた後、縦部材に内装壁面板、外装壁面板、床板、又は天井板等の外壁板を取り付けて断熱板との間に空間部を形成する工程を有するのがよい。
【発明の効果】
【0019】
上記本発明、又はこれに従属する発明の型枠装置は、断熱板と、この上、下端部のそれぞれをH型溝に装着させると共に、複数枚を上下方向に連接可能に保持できるH型材からなる横部材とを有し、任意間隔を設けてそれぞれを相対向させた状態で立設配置される第1と、第2の型枠体と、このそれぞれの外側に、任意間隔を設けてそれぞれを立設させ横部材に固着させて並列して配置される棒体からなる縦部材と、第1と、第2の型枠体の相対向するそれぞれの横部材にコ字状金属棒の両端部のそれぞれをブリッジ状に引っかけて任意間隔を設けて並列して取り付けられる鎹部材を有するので、後加工の必要のない平板状の断熱板を、簡単な形状の横部材で支えて構成される第1と、第2の型枠体を棒状の簡単な縦部材で外側から支えることができると共に、第1と、第2の型枠体をコ字状金属棒の簡単な構造の鎹部材で支持でき、第1と、第2の型枠体を取り外すことのなくそのまま使用して保温性に優れ、簡単で安価にできるコンクリート躯体を形成するための型枠装置を提供することができる。
【0020】
特に、上記本発明に従属する発明の型枠装置は、横部材が金属又は硬質樹脂からなると共に、横部材の溝底部の鎹部材が取り付けられる部位に貫通孔を有するので、断熱板を装着するためのH型溝を容易に形成でき、第1と、第2の型枠体の隙間に流し込まれるコンクリート材の内圧を容易に支えることができる強度を備えることができると共に、鎹部材の両端部を貫通孔に差し込むだけで固定でき第1と、第2の型枠体の隙間を容易に確保して、隙間に流し込まれるコンクリート材の内圧を容易に支えることができる。
【0021】
また、特に、上記本発明に従属する、又は上記本発明に従属する発明に更に従属する発明の型枠装置は、縦部材が木又は硬質樹脂からなると共に、縦部材を貫通させて横部材に固着させる繋止部材を有するので、横部材がネジ釘や、釘や、ボルト・ナット等の繋止部材を用いて横部材に縦部材を強固に固着させることができ、第1と、第2の型枠体の隙間を容易に確保して保持できると共に、流し込まれたコンクリート材の固化後のコンクリート躯体から縦部材の離脱を防止することができる。
【0022】
上記本発明、又はこれに従属する発明の型枠装置を用いたコンクリート躯体の施工方法は、第1と、第2の型枠体間にコンクリート材を流し込み、硬化させた後、縦部材に内装壁面板、外装壁面板、床板、又は天井板等の外壁板を取り付けて断熱板との間に空間部を形成する工程を有するので、内装、外装壁面板や、床板や、天井板等の外壁板を強固に保持できると共に、断熱板との間の空間部によって、コンクリート材表面の湿気や、結露によるコンクリート材表面と断熱板間の湿気を乾燥させることができるコンクリート躯体の施工方法を提供することができる。また、コンクリート材表面のむき出しを防止して寒々感を防止することができるコンクリート躯体の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る型枠装置、変形例の型枠装置、他の変形例の型枠装置の部分平面図、A−A’線縦断面図である。
【図2】同型枠装置の横部材の説明図である。
【図3】同型枠装置の横部材に鎹部材が取り付けられる説明図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ同型枠装置を用いたコンクリート躯体の施工方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
続いて、本発明の型枠装置を具体化した実施するための形態について説明する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る型枠装置10は、通常の家屋や、4階建て程度の比較的低いビル等の鉄筋コンクリート壁や、鉄筋コンクリートスラブ等のコンクリート躯体20(図4(B)参照)を形成するために用いられている。このコンクリート躯体は、鉄筋を埋設させたコンクリート材21(図4(B)参照)の両面に合成樹脂発泡体からなる板状の断熱板11を有する形態からなっている。この断熱板11は、施工時にはコンクリート材21流し込み用の型枠材として使用され、コンクリート材21を流し込んで固化させた後には断熱材としてそのまま使用されるようになっている。また、断熱板11の素材は、特に材料を限定するものではないが、硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノールフォーム、硬質塩化ビニルフォーム、ユリアフォーム、アクリルフォーム、酢酸セルロースフォーム等を用いることができる。この断熱板11の厚さは、特に限定するものではないが、50〜70mm程度あれば充分な保温性と、コンクリート材21を流し込んだ時の圧力に耐えることができるようになっている。このように形成された断熱板11は、広く一般的に市販されているものが利用でき、表面には凹溝や、貫通孔等の特段の加工が一切施されていない正方形や、長方形の板状の非常に安価なものであるので、型枠装置10のコストアップを防止することができる。
【0025】
上記の型枠装置10は、合成樹脂発泡体からなる板状の断熱板11と、横方向に延設する長尺のH型材からなる横部材12とを有する第1の型枠体13と、第2の型枠体13aを有している。この第1と、第2の型枠体13、13aは、板状の断熱板11の上、下端部のそれぞれを横部材12のH型溝に装着させると共に、複数枚を上下方向に連接可能に保持でき、任意間隔を設けてそれぞれを相対向させた状態で立設配置されるようになっている。なお、第1と、第2の型枠体13、13aは、それぞれの横部材12の高さ位置が略同一位置になるようにして相対向するようになっている。
【0026】
また、上記の型枠装置10は、相対向して立設する第1と、第2の型枠体13、13aのそれぞれの外側に、任意間隔を設けてそれぞれを断熱板11及び横部材12に当接するようにして立設させ、横部材12とは固着させて並列して配置される棒体からなる縦部材14を有している。この縦部材14は、特に、形状を限定するものではないが、後述する内装板や、外装板等を縦部材14に取り付けることから、断面が四角形状や、内部が空洞の四角形状や、横部材12と同様のH型材や、コ字形状等からなる棒体であるのが好ましい。
【0027】
図2に示すように、上記の第1と、第2の型枠体13、13aの横部材12は、H型溝方向のH型材の突出する高さa、b、c、dがそれぞれ異なるのが好ましい。型枠装置10には、第1と、第2の型枠体13、13a間の隙間にコンクリート材21を流し込んだ時に内側から外側に圧力がかかるようになっている。また、型枠装置10では、横部材12のH型材の外側となる部分に縦部材14が当接するようになっている。従って、横部材12のH型材の高さa、b、c、dは、断熱板11を支持すると共に、縦部材14を当接させるために外側となる部分の高さa、bが内側となる部分の高さc、dより高くなるようにするのが好ましい。また、第1と、第2の型枠体13、13aの横部材12には、断熱板11を装着する時に上端部を上部側の横部材12の下方側のH型溝に押し上げて嵌め込んだ後、下端部を下部側の横部材12の上方側のH型溝に落とし込むようにして装着できるようにしている。従って、横部材12のH型材の内側となる部分の高さc、dは、断熱板11を嵌め込むために内側となる部分の下方側の高さdを内側となる部分の上方側の高さcより高くするのが好ましい。更に、横部材12は、断熱板11を上方側のH型溝に落とし込む易くさせると共に、後述する鎹部材15がH型材の内側となる部分の上方側に取り付けるために、この部分の高さcを最も低くするのが好ましい。すなわち、横部材12のH型材の突出するそれぞれの高さa、b、c、dは、b>a≧d>cであるのが好ましい。
【0028】
更に、上記の型枠装置10は、第1と、第2の型枠体13、13aの相対向するそれぞれの横部材12にコ字状金属棒の両端部のそれぞれをブリッジ状に引っかけて複数個が隣接間に任意間隔を設けて取り付けられる鎹部材15を有している。この鎹部材15は、丸鋼、角形鋼、平鋼等の鉄棒からなる金属棒がコ字状に折り曲げられているもので、コンクリート材21を流し込んだ時でも第1と、第2の型枠体13、13aを充分に支えることができる。また、この鎹部材15は、広く一般的に市販されているものであり、非常に安価なものであるので、型枠装置10のコストアップを防止することができる。鎹部材15のコ字状に折り曲げられまでの直線部の長さは、実質的に第1と、第2の型枠体13、13a間の隙間間隔となっている。この隙間間隔は、鉄筋コンクリート壁や、鉄筋コンクリートスラブ等のコンクリート躯体20の構造によって異なるものの、通常の家屋や、4階建て程度までのビルであれば、170〜200mm程度であれば強度的に何ら問題はない。従って、上記の鎹部材15の直線部の長さは、170〜200mm程度であるのが好ましい。
【0029】
上記の型枠装置10の変形例の型枠装置10aは、横部材12が金属、又が硬質樹脂からなるのがよい。金属や、硬質樹脂の素材は、特に限定するものではないが、金属の場合には、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム等を用いることができ、硬質樹脂の場合には、例えば、硬質塩化ビニル樹脂、ABS樹脂等を用いることができる。なお、横部材12が金属からなる場合には、例えば、金属板をコ字状に折り曲げ溝底部同士を接合させたり、あるいは溝底部同士を当接させた状態で縦部材14に固着させることで容易にH型材に形成することができる。また、横部材12が硬質樹脂からなる場合には、熔融樹脂をプレスすることでH型材を容易に形成することができる。何れの場合でも、構造が簡単で形成が容易であるので、安価にすることができる。
【0030】
そして、図3に示すように、上記の型枠装置10aは、横部材12の溝底部端部の鎹部材15が取り付けられる部位に貫通孔16を有するのがよい。この貫通孔16には、鎹部材15を容易に位置決めして取り付けることができると共に、相対向するする横部材12を確実に保持して第1と、第2の型枠体13、13a間の隙間にコンクリート材21を流し込んだ時に内側から外側に圧力がかかるのを支えることができる。また、鎹部材15は、貫通孔16に嵌り込むことによって、コンクリート材21を流し込んだとしても、横部材15からの脱落を防止することができる。
【0031】
上記の型枠装置10、10aの他の変形例の型枠装置10bは、縦部材14が木、又は硬質樹脂からなるのがよい。木や、硬質樹脂の素材は、特に限定するものではないが、木の場合には、特に高級なものを必要としなくあらゆる種類のものや、廃木等とガラス繊維等の複合材料を成型加工した剛性を強化させたようなものも用いることができる。また、縦部材14が硬質樹脂の場合には、横部材12に用いられる硬質樹脂と同様の硬質塩化ビニル樹脂、ABS樹脂等を用いることができる。なお、縦部材14は、大きさも特に限定されるものではないが、断面視して外形が40〜50mm程度のものであれば、充分にコンクリート材21を流し込んだ時でも内側から外側にかかる圧力を支えることができる。また、縦部材14の断面視する形状は、四角形状や、内部が空洞からなる四角形状や、H型形状や、コ字形状等を採用することができ、横部材12及び断熱板11に当接する面と、これに対向する面が平行となるような面を有する形状のものであるのが好ましい。
【0032】
そして、上記の型枠装置10bは、縦部材14を貫通させて横部材14に固着させる繋止部材17を有するのがよい。この繋止部材17には、ネジ釘、釘、あるいはボルト・ナット等を用いることができ、縦部材14側からネジ釘をネジ込んだり、釘を打ち付けたり、あるいは縦部材14と横部材12に取り付け用の挿通孔を開けておき、そこにボルトを通してナットで締め付けたりして容易に縦部材14を横部材12に固着させることができる。
【0033】
次いで、図4(A)、(B)を参照しながら上記の型枠装置10、10a、10bを用いたコンクリート躯体の施工方法を説明する。
図4(A)に示すように、上記の型枠装置10、10a、10bを用いたコンクリート躯体20の施工方法には、施工現場で全てを構築するものがある。この場合には、先ず、地面を掘削してそこに敷設石を入れ、捨てコンクリート材を流し込んで根切り部を構築した後、根切り部上に基礎用の型枠装置を形成している。そして、根切り部上には、基礎用型枠装置の2枚の型枠体を任意間隔を設けて相対向させて立設させると共に、任意間隔内に縦鉄筋や、横鉄筋等を配設した後、基礎用コンクリート材を流し込み、適当期間経過させ固化させた後、型枠体を取り外すことで基礎を構築している。更に、基礎上には、上記の型枠装置10、10a、10bの第1と、第2の型枠体13、13aの任意間隔となる部分に鉄筋を配設すると共に、断熱板11、横部材15、及び縦部材14からなる第1と、第2の型枠体13、13aを鎹部材15を嵌め込みながら任意間隔を設けて相対向させて立設させた後、任意間隔となる部分にコンクリート材21を流し込み、適当期間経過させ硬化させている。なお、コンクリート材21を硬化させた後、更に上方へコンクリート躯体20を形成する場合には、硬化した上に、上記の施工方法を行うことを繰り返すことで形成することができる。
【0034】
あるいは、コンクリート躯体20の施工方法には、例えば、工場等でブロック状のコンクリート躯体20に作製しておき、これを施工現場に運搬して連結配設するものがある。この場合にも、仮設台上には、上記の型枠装置10、10a、10bの第1と、第2の型枠体13、13aの任意間隔となる部分に鉄筋を配設すると共に、断熱板11、横部材15、及び縦部材14からなる第1と、第2の型枠体13、13aを鎹部材15を嵌め込みながら任意間隔を設けて相対向させて立設させた後、任意間隔となる部分にコンクリート材21を流し込み、適当期間経過させ硬化させている。
【0035】
次に、図4(B)に示すように、上記の型枠装置10、10a、10bを用いたコンクリート躯体20の施工方法は、家屋内側の縦部材14に内装壁面板や、床板や、天井板の室内側の外壁板22、家屋外側の縦部材14に外装壁面板の室外側の外壁板22を取り付けて断熱板11との間に空間部23を形成している。縦部材14は、横部材12に繋止部材17で強固に固着されているので、内装、外装壁面板や、床板や、天井板等の外壁板22を強固に保持できる。また、外壁板22と断熱板11との間の空間部23は、コンクリート表面の湿気や、結露によるコンクリート表面と断熱板間の湿気を乾燥させることができると共に、コンクリート材21表面のむき出しを防止して寒々感を防止することができる。
【0036】
なお、コンクリート躯体20の内装壁面板や、外装壁面板の外壁板22は、特に、その素材や、デザインを限定するものではなく、これらには、既に様々なものが市販されているので、用途に応じていずれのものでも選択でき、しかも安価なものとして採用することができる。また、コンクリートスラブのようなコンクリート躯体20は、床板や、天井板のいずれか一方、又は両方を必要としない場合には、必要としない部位の縦部材14を除去した後、コンクリート材21表面のむき出しのまま、あるいはコンクリート材21表面に仕上げ用コンクリートや、モルタル等で塗装を施して用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の型枠装置及びこれを用いたコンクリート躯体の施工方法は、冬は暖かくて暖房費のほとんど掛らず、夏は涼しくて冷房費のほとんど掛らない、耐久性に優れた安価な家屋や、ビル等の建築物として提供できる。
【符号の説明】
【0038】
10、10a、10b:型枠装置、11:断熱板、12:横部材、13:第1の型枠体、13a:第2の型枠体、14:縦部材、15:鎹部材、16:貫通孔、17:繋止部材、20:コンクリート躯体、21:コンクリート材、22:外壁板、23:空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリートの両面に合成樹脂発泡体からなる板状の断熱板を有する家屋や、ビル等のコンクリート躯体を形成するための型枠装置において、
前記断熱板と、該断熱板の上、下端部のそれぞれをH型溝に装着させると共に、複数枚を上下方向に連接可能に保持できるH型材からなる横部材とを有し、任意間隔を設けてそれぞれを相対向させた状態で立設配置される第1と、第2の型枠体と、該第1と、第2の型枠体のそれぞれの外側に、任意間隔を設けてそれぞれを立設させ前記横部材に固着させて並列して配置される棒体からなる縦部材と、前記第1と、第2の型枠体の相対向するそれぞれの前記横部材にコ字状金属棒の両端部のそれぞれをブリッジ状に引っかけて任意間隔を設けて並列して取り付けられる鎹部材を有することを特徴とする型枠装置。
【請求項2】
請求項1記載の型枠装置において、前記横部材が金属又は硬質樹脂からなると共に、前記横部材の溝底部の前記鎹部材が取り付けられる部位に貫通孔を有することを特徴とする型枠装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の型枠装置において、前記縦部材が木又は硬質樹脂からなると共に、前記縦部材を貫通させて前記横部材に固着させる繋止部材を有することを特徴とする型枠装置。
【請求項4】
請求項1又はこれに従属する請求項2又は3記載のいずれか一項記載の型枠装置を用いたコンクリート躯体の施工方法であって、
前記第1と、第2の型枠体間にコンクリート材を流し込み、硬化させた後、前記縦部材に内装壁面板、外装壁面板、床板、又は天井板等の外壁板を取り付けて断熱板との間に空間部を形成する工程を有することを特徴とするコンクリート躯体の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−149145(P2011−149145A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8646(P2010−8646)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【特許番号】特許第4574736号(P4574736)
【特許公報発行日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(510017354)フレンディーホーム株式会社 (1)