説明

埋立灰の輸送方法

【課題】
焼却灰の埋立て地を掘削して再資源化する埋立灰を空気輸送する際に、空気輸送管内への埋立灰の付着や閉塞などを防止し、圧送空気による配管輸送の効率を向上させる。
【解決手段】
埋立灰を掘り起こし、掘り起こした埋立灰をセメントキルンの窯尻部に空気輸送する際に、埋立灰に廃プラスチックを同伴させて空気輸送する。廃プラスチックは、最長部が5から20mmであることが好ましい。また、埋立灰100重量部に対して、前記廃プラスチックを10乃至30重量部同伴させて空気輸送することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め立て処分した都市ゴミ等の焼却灰を掘り起こし、セメント原料として再資源化を行う際の、埋立灰の輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ゴミ焼却灰をはじめとする各種の焼却灰は、一般的に処分場に埋立て処分されているが、最近、処分場の容量が逼迫し、さらに新設用地の確保の困難性から、この埋立地を掘り起こして、埋め立てた焼却灰(以降、埋立灰と記載)をセメント原料として再資源化し、処分場の延命化を図ることが検討されている。
【0003】
埋立灰には有害なダイオキシンが含まれる事もあるため、埋立灰が飛散等しないように、密閉した輸送方法で輸送を行う必要がある。また、埋立灰は屋外で雨などにさらされており、15乃至35重量%の水分を含んでいる。このため、空気輸送する際に輸送配管の曲がり部などを起点として埋立灰の付着が発生し、配管の閉塞などのトラブルにより輸送が困難となる問題があった。特に、輸送距離が20乃至50メートル以上の遠方であれば、その影響が顕著であり短時間で配管が閉塞することもあった。
【0004】
埋立灰の輸送機としては、一般的には密閉型のチェンコンベアや垂直ベルトコンベアなどの輸送機を使用することが多い。しかし、これらの輸送機は配置に制限や設置には広い空間が必要であった。また、埋立灰のベルト等輸送機への付着などによるトラブルが懸念されるなどの問題点があった。
【0005】
焼却灰等の輸送工程におけるハンドリング性の改善として、特許文献1には、廃プラスチックを加熱溶融した状態で焼却灰と混練して固形化しハンドリング性を改善し粉塵発生対策を行う技術が記載されている。しかし、熱を加えるという工程を必要とする。また、特許文献2には、水を多量に混入して、即ち、スラリー化してポンプにて長距離を輸送するものが開示されている。しかし、埋立灰は高温での処理が必要であるので、キルン窯尻部の高温部へ直接投入するため、水を多量に使用すると水分の蒸発、加熱に要する熱損失が増大する、さらにセメント製造装置の運転悪化が生じてしまうなどの輸送上、なお運転上の課題が存在していた。
【特許文献1】特開2002−66499号公報
【特許文献2】特開2004−97865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、焼却灰を主とした埋立灰を空気輸送する際に、空気輸送管内への付着や閉塞などを軽減し、輸送の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、埋立灰を空気輸送する条件を鋭意検討した結果、流動性補助剤として廃プラスチックを埋立灰に同伴すれば、空気輸送管の内部における埋立灰の付着や閉塞が軽減することを見出し、発明を完成させた。すなわち、本発明は、埋立灰を掘り起こし、掘り起こした埋立灰をセメントキルンの窯尻部に空気輸送する際に、埋立灰に廃プラスチックを同伴させて空気輸送することを特徴とする埋立灰の輸送方法である。廃プラスチックは、最長部が5から20mmであることが好ましい。また、埋立灰100重量部に対して、前記廃プラスチックを10乃至30重量部同伴させて空気輸送することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、埋立灰が空気輸送の配管に付着する現象や閉塞することを軽減することができ、埋立灰のキルンへの投入が長期連続的に行うことができる。この結果、セメントキルンの連続安定した操業を行うことができ生産性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰、上水汚泥焼却灰などを主とする最終処分場としての埋立て物は、一部の物についてセメントクリンカの原燃料として再資源化が可能である。この埋立て物を掘削し掘り起こす。掘り起こした現地にて、樹脂の燃えガラ、石、コンクリート、非磁性金属などの大きな異物は風力選別機などで除去され、さらに鉄などの磁性金属は磁選機によって除去される。次に、篩い装置によってサイズが40mm以下に篩われて、埋立灰としてセメントクリンカの原燃料に利用可能なサイズの粉粒体にする。埋立灰1は、最長辺が40mm以下で平均サイズが5〜15mmであることが好ましい。この埋立灰は、ダンプトラックなどの車両に積載されてセメント工場へ搬入される。
【0010】
図1に示すように、セメント工場の受入れタンク4などの貯蔵設備に受入れられた埋立灰1は、別置の廃プラスチックタンク3に貯蔵された廃プラスチック2と最適な配合比でそれぞれ抜き出され混合される。ここに、廃プラスチック2はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、ナイロンなどを素材とした軟質フラフ状の樹脂類を主体とするが、ゴム、木屑、紙、繊維、油脂などの可燃性廃棄物が混入していてもよい。
【0011】
前記廃プラスチック2は、あらかじめ破砕され、40mmの篩いを全量通過して、最長辺が5から20mm、平均サイズが10mm程度のものが好ましい。
また、全体の重量比率で10乃至30重量%程度の表面が尖った塊からなるサイコロ状の硬質樹脂が混入していることが望ましい。30重量%を越えると、空気輸送管8内で窯尻部9へ輸送する途中配管の上昇部や上り傾斜部で、配管内に堆積や閉塞を起こす可能性があるからである。
【0012】
この埋立灰1と廃プラスチック2を埋立灰は、各々の貯蔵タンクから、それぞれ秤量器で重量が計量されて最適な配合比で混合される。廃プラスチック2の最適な配合比は、埋立灰100重量部に対して10乃至30重量%、好ましくは20乃至30重量%同伴させる。廃プラスチック中に前述の硬質樹脂が多く含まれる場合には、埋立灰に対する廃プラスチック比率は定性的には小さくて済む。
【0013】
図1と図2に示すように、埋立灰1と廃プラスチック2が配合された後、密閉された空気圧送装置7の空気によって専用の空気輸送管8でセメントキルン14の窯尻部9へ輸送される。最終的には、窯尻部9に取り付けた専用の円筒管11から噴出され、セメントキルン14に投入される。セメントキルン14はキルンバーナー19からの燃焼熱が排ガスファン20から排出されるので、窯尻部9の雰囲気温度は、一般には1000乃至1200℃である。そのため、投入された廃プラスチックはすぐに燃焼し、また埋立灰の水分もすぐに蒸発する。セメントキルン14内に投入された埋立灰は、セメント原料入口10から投入されたセメント原料と窯尻部9で一緒になって、キルンバーナー19の燃焼熱によって徐々に昇温しながら焼成されて、セメントキルン出口16ではセメントクリンカ15の一部となる。また、埋立灰の中の一部にダイオキシンなどが存在している場合もあるが、窯尻部9の高温処理によって、無害化することができる。
【0014】
廃プラスチックを混合した埋立灰の投入位置については、基本的には800℃以上の雰囲気領域であればよい。しかし、物理的には埋立灰を投入した後、比較的大きなサイズの埋立灰が炉内を落下して窯尻部9に着地するような炉の構造であれば、最下段サイクロンシュート17、またはライジングダクト12、または仮焼炉バーナー18が燃焼する仮焼炉13に投入してもよい。好ましくは、セメントキルン14の窯尻部9へ直接、投入した方が最もよい。800℃未満の雰囲気の温度領域へ投入すると、投入物の中に一部存在する可燃物や未燃物などの燃焼速度が遅くなり、燃え切らないうちに排気ファン20へ排出され、燃料資源を有効に利用せずに無駄にしてしまう。なお、炉への投入部の形状は空気輸送管8と同径の水平方向の円筒管11が好ましいが、水平より下向き方向角度0乃至60度の範囲であってもよい。
【0015】
埋立灰に廃プラスチックを同伴させて空気輸送することにより、埋立灰の流動性を改善することができる機構は必ずしも明確ではないが、次のように推察している。
埋立灰は、その殆どを占める焼却灰である粒子に含水や付着をした水分が10乃至35重量%程度のものが多い。そのために粒子同士で付着をし易く、団子状態の粒子群になりやすく空気輸送の対象物としては好ましくない。また、空気輸送を行うための空気輸送管8の材質は、一般的には鉄製の金属であるので、水分が付着した焼却灰の粒子が空気輸送管8の内壁に付着しやすい。このために、空気輸送管8内で閉塞を起こしやすい。また、空気輸送管8の材質を耐磨耗樹脂で内張りしたものであれば、内壁への付着に限っては比較的少ないが、設備コストが高い欠点があり万全ではない。
配管内での固気混合作用が、廃プラスチックのうち主にフラフ状の薄片の撥水作用によって促進され、埋立灰が本来持っている高付着性特性が低下して、分散しやすくなると考えられ。また、硬質樹脂の尖り形状は配管内壁への埋立灰の付着を削り取る現象が起こり、配管内の付着性を低減しそれによって埋立灰の流動性を向上させ固気混合作用を促進させると推定している。
【0016】
また、前記硬質樹脂の重量比率が増加すると、さらに流動性を向上させることもできることは、次のように推察している。廃プラスチックが高撥水性の特徴をもっているために、埋立灰の粒子群に衝突して粒子群を解砕するばかりではなく、廃プラスチックの表面と埋立灰が付着し難い特性から、粒子群を分散させることに寄与すると推定される。慣性力の相対的に大きい前記硬質樹脂は粒子群を解砕する力は、軟質フラフ状の廃プラスチックよりも大きいため粒子相互間の付着性を低減させる効果がある。
【0017】
そして、廃プラスチックには、前工程の破砕機で破砕された破砕面が鋭く尖っていることが多い。そのため、埋立灰と配合された後、空気輸送管8で圧送される際に、廃プラスチックにおいて特に硬質樹脂の尖端部で空気輸送管8の内壁部に付着した埋立灰が削ぎ取られて、付着が進行しない特性がある。廃プラスチック2の埋立灰1への配合比率が10重量%未満であれば、埋立灰が空気輸送管8内に付着量が多くなり、また、30重量%を超えると、廃プラスチック2の体積が大きくなり埋立灰の輸送処理能力が低下してくる。
【0018】
このようにして、埋立灰に廃プラスチックを配合して風速が15乃至30メートル/秒程度が好ましい。風速が30メートル/秒を越えて窯尻部9へ投入すると、窯尻部9を大量にセメントキルン14へ向かって流れるセメント原料が再飛散して、セメントキルン14の通風が悪くなって酸素不足となるおそれがある。その結果、窯尻部9で未燃ガスが発生し、セメントキルン14の燃焼を悪化させるおそれがある。
【実施例】
【0019】
図1と図2を用いながら、具体的な実験による実施例を説明する。実験を行ったセメント製造装置は、投入原料の予熱工程が5段式サイクロンを有し、仮焼炉13でセメント原料を仮焼させ、セメントキルン14でクリンカ焼成を行うセメント製造プラントである。
【0020】
水分が23重量%で、最長辺サイズが40ミリメートル以下の埋立灰1は受入れタンク4に供給量を1.0t/hr(嵩比重1.4)で投入した。また、廃プラスチックタンク3からは廃プラスチック2の流量を0.2t/hr(嵩比重0.2)で抜き出し同時に受入れタンク4に投入した。この時の埋立灰の粒度分布は、表1の通りである。また、廃プラスチック2は、最長辺が20ミリメートル以下の破砕品であって、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムを中心とする軟質でフラフ状のものが中心であるが、表面が尖った塊からなるABS樹脂を中心とするサイコロ状の硬質樹脂が5%重量程度混入している。
【0021】
【表1】

【0022】
受入れタンク4の中では、撹拌羽根5が設置され、スクリューが自転しながら、受入れタンク4のコーン部の内壁近辺を公転し周回する方法で、受入れタンク4内の撹拌と混合を行うようになっている。
【0023】
埋立灰と廃プラスチックが混合されたものが、受入れタンク4の下部から、ダブルロータリーフィーダ6を経由して空気輸送管8へ供給された。このダブルロータリーフィーダ6は、空気輸送管8内の圧送空気が受入れタンク4内にリークし難いようにする気密性が高い。空気輸送管8内部の圧送空気はルーツブロアー7を使用しており、管内空気量は74立方メートル/分で、管内風速が25メートル/秒であった。
【0024】
空気輸送管8は、その先端が窯尻部9の位置でセメントキルン14の空洞芯に向けて水平方向に円筒管11を接続している。埋立灰と廃プラスチックの混合物は、窯尻部にセメントキルン14の中心に向けて投入された。なお、閉塞状態の検出には、配管内の各部圧力の検出により確認した。この方法にて埋立灰を空気輸送により、空気輸送管8への埋立灰の付着や空気輸送管8の閉塞など起こすことなく、連続安定した操業が可能であった。
【0025】
なお、空気輸送が困難な条件の比較対象実験として、廃プラスチック2を供給しない状態で、他の条件は前記同様の実験を行った。その結果、60分程度で配管内部が閉塞した。また、廃プラスチックを0.1t/hrで供給し、他の条件は同様の実験を繰返し実験しても、240分程度で配管内部が閉塞した。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、焼却灰をベースとした埋立灰を原燃料とするあらゆる産業において利用が可能であるが、各種汚染土壌、建設残土、各種汚泥など廃プラスチックが混入しても構わない廃棄物等の空気輸送に利用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明における埋立灰の空気輸送方法の概略図を示す。
【図2】本発明のセメントキルンへの投入位置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0028】
1 埋立灰
2 廃プラスチック
3 廃プラスチックタンク
4 受入れタンク
5 撹拌羽根
6 ダブルロータリーフィーダ
7 空気圧送装置(ルーツブロアー)
8 空気輸送管
9 窯尻部
10 セメント原料入口
11 円筒管
12 ライジングダクト
13 仮焼炉
14 セメントキルン
15 セメントクリンカ
16 セメントキルン出口
17 最下段サイクロンシュート
18 仮焼炉バーナー
19 キルンバーナー
20 排ガスファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋立灰を掘り起こし、掘り起こした埋立灰をセメントキルンの窯尻部に空気輸送する際に、埋立灰に廃プラスチックを同伴させて空気輸送することを特徴とする埋立灰の輸送方法。
【請求項2】
前記廃プラスチックは、最長部が5から20mmである請求項1記載の埋立灰の輸送方法。
【請求項3】
前記埋立灰100重量部に対して、前記廃プラスチックを10乃至30重量部同伴させて空気輸送する請求項1または2記載の埋立灰の輸送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate