説明

埋設型ガス栓

【課題】室内と室外との間を密封状態で遮断することができ、しかも壁板に対して容易に取り付けることができる埋設型ガス栓を提供する。
【解決手段】
ケーシング2を所定の剛性をもって形成する。ケーシング2の室内I側の端面には、第2シール部材9をケーシング2の開口部に沿って環状に設ける。ケーシング2の内部には、受け部62を有する固定部材6を設けるとともに、挟持部材8を設ける。挟持板8を固定ボルトBによって室内I側へ移動させ、取付枠7及び挟持板8によって壁板W及び受け部62を挟持する。これにより、ケーシング2を壁板Wに固定するとともに、第2シール部材9を壁板Wに押し付ける。ケーシング2には、ガス栓5に接続されるガス管(図示せず)が挿通されるガス管挿通孔(図示せず)を設ける。ガス管挿通孔とガス管との間を第1シール部材(図示せず)によって気密にシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、壁部材に取り付けられる埋設型ガス栓に関する。なお、この発明において「壁部材」とは、側壁を構成する通常の壁板のみならず、床板その他埋設型ガス栓が取り付けられる各種の部材を含むものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、埋設型ガス栓は、壁板に対して室外側に配置された第1取付板と、室内側に配置された第2取付板とを有している。各取付板は、四角形の枠状をなしており、壁板に形成された貫通孔を囲むようにそれぞれ配置されている。第1及び第2取付板間には、固定手段が設けられており、固定手段は第1及び第2取付板を互いに接近するように移動させて壁板の室外面及び室内面にそれぞれ押し付ける。これにより、第1及び第2取付板を壁板に固定する。
【0003】
壁板より室外側には、ガス栓が配置されている。ガス栓は、迅速継手タイプのプラグ部を有しており、このプラグ部を貫通孔と対向させた状態で第1取付板に取り付けられている。一方、壁板より室内側には、化粧板が配置されている。化粧板は、第2取付板及び貫通孔を遮蔽するようにして第2取付板に取り付けられている。化粧板には、装着孔が形成されている。装着孔は、貫通孔と対向するように配置されており、開閉蓋によって開閉される。
【0004】
開閉蓋を開いた状態では、プラグが貫通孔及び装着孔を介して室内に露出する。したがって、ソケットを装着孔から挿入してプラグに接続することができる。ソケットをプラグ部に接続すると、ガス栓が自動的に開状態になり、ガス栓からソケット及びガス管を介してガス機器にガスが供給される。開いた状態の開閉蓋を室外側に押すと、ソケットがプラグ部から外される。ソケットがプラグ部から外れると、ガス栓が自動的に閉状態になる。ソケットを装着孔から室内に取り出した後、開閉蓋を閉じることにより、埋設型ガス栓が元の状態に戻る。
【0005】
上記構成の埋設型ガス栓を壁板に設けると、室外と室内とが貫通孔及び装着孔を介して連通する。このため、開閉蓋を開くと、室内外の空気が貫通孔及び装着孔を通ってほとんど抵抗なく流通する。この結果、室内の気密性が損なわれ、室内の空調効率が低下する等の問題があった。
【0006】
このような問題を解消するために、下記特許文献1に記載の埋設型ガス栓においては、気密カバーが採用されている。気密カバーは、樹脂等の柔軟性を有する材料からなるものであり、一端が開口した容器の形態に形成されている。気密カバーの開口部には、内側に突出するフランジ部が環状に形成されている。また、気密カバーの壁部には、筒部が形成されている。この筒部には、ガスに接続されるガス管が気密に挿通されている。
【0007】
気密カバーを有する埋設型ガス栓を壁板に取り付ける場合には、予め気密カバーの内部にガス栓を収容するとともに、ガス管を筒部から気密カバー内に挿入する。そして、ガス管をガス栓に接続しておく。その後、第1取付板を気密カバーの内部に挿入し、フランジ部と対向させる。次に、固定手段により、第1取付板を壁板の室外面にフランジ部を介して押し付けるとともに、第2取付板を壁板の室内面に押し付ける。つまり、第1及び第2取付板によって壁板及びフランジ部を挟持する。これによって、埋設型ガス栓を壁板に取り付ける。
【0008】
埋設型ガス栓が壁板に取り付けられた状態においては、貫通孔が気密カバーによって閉じられる。また、気密カバーの筒部の内周面とガス管の外周面との間は、筒部自体の弾性によって筒部の内周面がガス管の外周面に押し付けられることによってシールされる。したがって、室内と室外とが気密カバーによって遮断される。よって、室内の気密性を十分に確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−346247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載の埋設型ガス栓においては、フランジ部の内部寸法(内周面の形状寸法)が第1取付部材の外部寸法より小さいので、第1取付板を気密カバー内に挿入するときには、フランジ部を拡大するように弾性変形させなければならない。このため、第1取付板の気密カバー内への挿入に手間を要するという問題がある。しかも、第1取付板の挿入時には、気密カバーが第1取付板によって傷付けられるおそれがある。また、筒部が柔軟であるため、ガス管を筒部に挿入し難いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の問題を解決するために、この発明は、貫通孔を有する壁部材に対しその室外側に配置され、上記貫通孔と対向する部位に開口部を有する容器状のケーシングと、このケーシングの内部に収容されたガス栓と、上記壁部材に対しその室内側に上記貫通孔を囲むように配置さ環状の取付枠と、この取付枠及び上記ケーシングを上記壁部材の室内面及び室外面にそれぞれ押し付けることにより上記ケーシングを上記壁部材に固定する固定手段とを備え、上記ケーシングが、その形状を一定に維持することができるよう、所定の剛性をもって形成され、上記ケーシングには、上記ガス栓に接続されるガス管が挿通されるガス管挿通孔が形成されるとともに、上記ガス管の外周面と上記ガス管挿通孔の内周面との間を気密にシールする第1シール部材が設けられ、上記ケーシングの上記壁部材と対向する部位には、上記開口部を囲むように環状に延びるフランジ部が形成され、このフランジ部には、フランジ部に沿って環状に延びる第2シール部材が設けられ、上記固定手段により上記フランジ部が上記壁部材の室外面に上記第2シール部材を介して気密に押し付けられ、上記固定手段のうちの上記壁部材より室外側の部分が上記第2シール部材によって囲まれる範囲の内側に配置されていることを特徴としている。
この場合、上記ケーシングには、上記ガス管挿通孔を上記ケーシングの内部側の部分と外部側の部分とに二分する収容部が形成され、上記第1シール部材が弾性材によって形成され、上記収容部に上記第1シール部材が圧縮状態で挿入されることにより、上記第1シール部材が、少なくとも上記ガス管挿通孔の内部側の部分が開口する上記収容部の内面に環状に押圧接触され、上記第1シール部材には上記ガス管挿通孔に挿入されたガス管が挿通される通孔が設けられ、この通孔の内周面が上記ガス管の外周面に上記第1シール部材の弾性によって押し付けられることにより、上記通孔の内周面と上記ガス管の外周面との間が気密にシールされていることが望ましい。
また、ガイド部材をさらに備え、上記ガイド部材が、上記壁部材を支持する支持部材に取り付けられ、上記ガイド部材に上記ケーシングの上記壁部材に接近離間する方向へ移動可能に取り付けられていることが望ましい。特に、上記ケーシングの上記ガイド部材に対する移動範囲が所定の範囲に規制されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、固定手段のうちの壁部材より室外側の部分が第2シール部材によって囲まれる範囲内に配置されているので、固定手段の室外側の部分は、第2シール部材を弾性的に拡大することなく、第2シール部材内に挿通することができる。したがって、固定手段を第2シール部材に容易に挿通させることができるとともに、第2シール部材が固定手段によって傷付けられることを防止することができる。また、ケーシングが剛性をもって形成されているので、ガス管をガス管挿通孔に容易に挿通することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態を示す、図9のX−X線に沿う断面図である。
【図2】図2は、同実施の形態を、壁板を省略して示す分解斜視図である。
【図3】図3は、同実施の形態を室内から見て示す分解斜視図である。
【図4】図4は、同実施の形態を、ケーシングを省略して示す分解斜視図である。
【図5】図5は、同実施の形態のケーシング及びそれに付属した部材を室内側から見て示す分解斜視図である。
【図6】図6は、同実施の形態のケーシング及びそれに付属した部材を室外側から見て示す分解斜視図である。
【図7】図7は、同実施の形態のケーシングを間柱に取り付けた状態で示す正面図である。
【図8】図8は、間柱に取り付けられたケーシングにガス栓を仮固定した状態で示す正面図である。
【図9】図9は、同実施の形態の取付が完了した状態を、壁板を省略して示す正面図である。
【図10】図10は、図8のX−X線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、添付の図1〜図10を参照して説明する。
この発明に係る埋設型ガス栓1は、ケーシング2を有している。このケーシング2は、図1に示すように、取付完了時には壁板(壁部材)Wに取り付けられるが、それ以前の仮取付時には間柱(支持部材)Cに室内外方向へ移動可能に取り付けられている。そこで、まずケーシング2の間柱Cへの取付構造について説明し、その後壁板Wへの取付構造を説明する。なお、取付完了時、ケーシング2は、間柱Cに取り付けられた状態を維持しつつ壁板Wに取り付けられている。また、ガス栓1が床板(図示せず)に取り付けられる場合において、その仮取付時には、ガス栓1が床板の支持部材たる根太(図示せず)に上下方向(床板に接近離間する方向)へ移動可能に取り付けられる。
【0015】
特に図5及び図6に示すように、ケーシング2は、室内I側を向く面が開口した略直方体の容器状をなしており、硬質の樹脂又は金属によって構成されている。したがって、ケーシング2は、一定の形状を維持するだけの強度ないしは剛性を有している。しかも、ケーシング2は、開口部を除き、内部が外部に対して密閉されている。ケーシング2は、その開口部を室内I側に向けた状態で配置されており、図1の左側部がガイド板(ガイド部材)3を介して間柱Cの右側面に室内外方向へ所定範囲移動可能に取り付けられている。ケーシング2は、図1の右側部が間柱Cの左側面に取り付けられることもある。
【0016】
ガイド板3は、金属の板材からなるものであり、上下の両端部が階段状に折り曲げられている。そして、ガイド板3の上下の両端部は、間柱Cの右側面にビスB1、B1によって押圧固定されている。ガイド板3の上下方向の中間部は、間柱Cから右方に向かって離間させられている。
【0017】
ガイド板3には、一対のガイド溝31,31が形成されている。一対のガイド溝31,31は、間柱Cから離間したガイド板3の中間部のうちの上端部及び下端部にそれぞれ配置されており、ガイド板3の室内I側の端面から室外O側へ向かって水平に延びている。
【0018】
一方、ガイド板3と対向するケーシング2の左側面には、室内外方向へ水平に延びる一対の幅広突条21,21が形成されている。一対の幅広突条21,21は、一対のガイド溝31,31とほぼ同一距離だけ上下方向へ離間して配置されている。幅広突条31の上下方向の幅は、ガイド溝31の上下方向の幅より広くなっている。
【0019】
幅広突条21の突出方向の先端面、つまり幅広突条21のガイド板3と対向する面には、室内外方向へ水平に延びるガイド突条22が形成されている。ガイド突条22,22は、ガイド溝31,31と同一距離だけ上下方向へ離間して配置されている。各ガイド突条22の上下方向の幅は、ガイド溝31の幅とほぼ同一に設定されている。そして、一対のガイド突条22,22は、それぞれ一対のガイド溝31,31に室内外方向へ移動可能に挿入されている。これにより、ケーシング2がガイド板3に室内外方向へ移動可能に、かつ上下方向へ移動不能に支持されている。
【0020】
ガイド突条22の幅広突条21からの高さ(幅広突条21の左方を向く先端面からガイド突条22の左方を向く先端面までの距離)は、ガイド板3の板厚とほぼ同一か僅かに高くなっている。特に、図1及び図10に示すように、ケーシング2の左側部には、ガイド突条22の突出方向の先端面、つまり左方を向く面からケーシング2の内面まで貫通するビスB2が挿通されている。このビスB2の頭部は、ガイド突条22に突き当たっている。ビスB2の頭部の直径は、ガイド突条21の幅より大きくなっており、頭部の上下の両側部がガイド突条21からそれぞれ上下方向へ突出している。ビスB2の頭部のガイド突条21から突出した両側部がガイド板3に突き当たることにより、ガイド突条21がガイド溝31から右方へ抜け出ることが防止されている。しかも、ビスB2の頭部のガイド突条21から突出した両側部と幅広突条21とがガイド板3を左右方向にほぼ挟持した状態になっている。これにより、ケーシング2がガイド板3に左右方向へ移動不能に支持されている。
【0021】
図5及び図6に示すように、ガイド板3の上下方向の略中央部には、室内I側を向く端面から室外O側へ向かって水平に延びる一対のスリット32,32が形成されている。一対のスリット32,32は、上下方向へ互いに離間しており、それらの間に位置するガイド板3の実質部によって弾性片33が形成されている。弾性片33は、室内I側に位置する先端部が左右方向へ移動するように弾性変形可能である。弾性片33のケーシング2と対向する面には、ケーシング2に向かって突出する小突起34が形成されている。この小突起34は、弾性片33の先端部に配置されている。
【0022】
一方、ケーシング2の左側面には、ガイド板3側に向かって突出する傾斜突出部23が形成されている。この傾斜突出部23は、弾性片33と上下方向においてほぼ同一位置に配置されている。傾斜突出部23の突出方向の先端面、つまり左方を向く面は、傾斜突出部23の突出高さが室外O側から室内I側へ向かうにしたがって漸次高くなるよう、室外O側から室内I側へ向かって上り勾配をなす傾斜面23aとされている。この傾斜面23aは、ガイド突条22をガイド溝31にその左端開口部から所定の短い距離だけ挿入すると、小突起34が突き当たるように配置されている。
【0023】
小突起34が傾斜面23aに突き当たった状態において、ガイド突条22,22をガイド溝31,31にさらに挿入すると、その挿入に伴って小突起34が傾斜面23a上を摺動する。その結果、弾性片33の先端部が左方へ移動する(ケーシング2から離間する)ように弾性片33が弾性変形させられる。ガイド突条22,22をガイド溝31,31に所定距離だけ挿入すると、小突起34が傾斜面23aを乗り越える。すると、弾性片33がそれ自体の弾性によって元の状態に復帰する。この状態においては、小突起34が傾斜突出部23の室内I側を向く面に突き当たっている。これにより、ケーシング2の室内I側への移動が阻止される。勿論、小突起34が傾斜突出部23に突き当たらないように、弾性片33を弾性変形させることにより、ガイド突条22をガイド溝31から抜き出すことができ、それによってケーシング2をガイド板3から室内I側へ向かって取り外すことができる。
【0024】
小突起34が傾斜突出部23を乗り越えた後、さらに所定距離だけガイド突条22をガイド溝31に挿入すると、ガイド突条22の室外O側の端面がガイド溝31の室外O側の端面に突き当たる。すると、それ以上ケーシング2が室外O側へ移動することができなくなる。このようにして、ケーシング2のガイド板3及び間柱Cに対する室内外方向への移動範囲が規制されている。ケーシング2のガイド板3に対する室内外方向への移動範囲は、小突起34が傾斜突出部23の室内I側を向く面に突き当たる位置と、ガイド突条22がガイド溝31の室外O側の端面に突き当たる位置との間である。
【0025】
図5及び図6から明らかなように、ケーシング2は、左右対称に形成されており、ケーシング2の右側部にも、幅広突条21,21、ガイド突条22,22、傾斜突起23が形成され、さらにビスB2が挿通されている。これにより、ケーシング2の右側部を間柱Cの左側面にも取り付けることができるようになっている。ケーシング2を間柱Cの左側面に取り付ける場合には、ガイド板3を上下逆向きにして間柱の左側面に取り付けることにより、上記と同様にしてケーシング2を間柱Cにガイド板3を介して取り付けることができる。
【0026】
図6に示すように、ケーシング2の下側部には、収容部24が形成されている。収容部24は、ケーシング2の上側部や左右の側部に形成してもよい。収容部24は、室外O側に向かって開放されている。収容部24は、室内I側に向かって開放してもよく、左右いずれか一方に開放してもよい。あるいは、室内外両方向に向かって開放してもよく、左右の両方向に向かって開放してもよい。
【0027】
収容部24が形成されたケーシング2の下側部には、その内面から外面まで貫通するガス管挿通孔(挿通孔)25が形成されている。ガス管挿通孔25は、水平方向において収容部24の中央部に位置するように配置されている。ガス管挿通孔25には、ガス管Gが挿脱可能に挿通されている。ガス管Gは、収容部24の中央部を上下に貫通している。
【0028】
収容部24には、その開放部からゴム等の弾性材からなる第1シール部材4が挿入されている。第1シール部材4の上下方向の厚さは、収容部24の上下方向の幅より厚くなっている。したがって、第1シール部材4は、上下方向へ弾性的に圧縮された状態で収容部24に挿入されており、第1シール部材4の上下の両面が第1シール部材4自体の弾性によって収容部24の上下の内面に押圧接触させられている。
【0029】
第1シール部材4の中央部には、当該中央部を上下に貫通する通孔41が形成されている。この通孔41の内径は、後述するガス栓5に接続されるガス管Gの外径より小径である。しかし、通孔41は、弾性的に拡径することによってガス管Gが挿通可能である。しかも、通孔41の内周面は、第1シール部材4自体の弾性によってガス管Gの外周面に押圧接触させられており、それによって通孔41の内周面とガス管Gの外周面との間が気密にシールされている。
【0030】
このように、第1シール部材4の上下両面が収容部24の上下の内面にそれぞれ押し付けられるとともに、通孔41の内周面がガス管Gの外周面に押し付けられているので、ガス管挿通孔25とガス管Gとの間が第1シール部材4によって閉じられている。したがって、ケーシング2の内部と室外Oとがガス管挿通孔25を介して連通することはない。
【0031】
図1、図2及び図10に示すように、ケーシング2の内部には、ガス栓5が収容されている。ガス栓5は、取付完了時には、後述する取付枠7に取り付けられるが、それまではケーシング2に仮固定されている。すなわち、図1、図7及び図8に示すように、ケーシング2には、支持突起26が形成されている。支持突起26は、ケーシング2の内面のうちの室内I側を向く底面に配置されている。そして、ガス栓5は、当該ガス栓5を貫通して支持突起26に螺合されたビスB3を締め付けることにより、支持突起26に仮固定され、ひいてはケーシング2に仮固定されている。ガス栓5には、上記ガス管Gが接続されている。また、ガス栓5は、プラグ部51を有している。プラグ部51は、その先端部を室内I側に向けて配置されている。プラグ部51は、日本工業規格JIS S 2120で定められた形状、寸法を有している。
【0032】
図1に示すように、間柱Cの室内I側を向く面には、壁板Wが取り付けられている。壁板Wには、ケーシング2が固定状態で取り付けられている。壁板Wに対するケーシング2の取付構造について説明すると、壁板Wには、貫通孔W1が形成されている。この貫通孔W1は、ケーシング2の内部に収容されたガス栓5と対向するように、特にプラグ部51と対向するように配置されている。
【0033】
図1及び図2に示すように、ケーシング2には、左右一対の固定板6が収容されている。固定板6は、図5及び図6に示すように、長手方向を上下方向に向けた金属製の板材を断面L字状に折り曲げることによって構成されており、左右方向を向く固定部61及び室内外方向を向く受け部62を有している。固定部61には、ケーシング2の左側部を貫通したビスB2が螺合されている。そして、ビスB2を締め付けることにより、固定部61がケーシング2の内面の側部に固定されている。なお、これに伴ってビスB2がケーシング2に固定されている。図1及び図10に示すように、固定部61の室内I側の側部は、ケーシング2から所定距離だけ室内I側に突出させられている。
【0034】
ケーシング2から室内I側に突出した固定部51の側部には、受け部62が一体に形成されている。受け部62は、固定部61からケーシング2の内部側に向かって突出させられている。図1に示すように、左右の受け部62,62の間隔は、貫通孔W1の左右の幅より狭くなっている。したがって、受け部62は、室内I側から見て貫通孔W1内に露出することがなく、受け部62全体が壁板Wの室外面W2に押し付けられている。
【0035】
図1に示すように、室内I側には、取付枠7が配置されている。取付枠7は、金属製の板材からなるものであり、図1〜図4に示すように、四角形の環状に形成されている。図1に示すように、取付枠7の外部寸法は、貫通孔W1より大きくなっている。一方、取付枠7の内部寸法は貫通孔W1より小さくなっている。この結果、取付枠7の外周側の略半分が、壁板Wの室内面W3の貫通孔W1を囲む環状の部分に押圧接触させられ、内周側の略半分が、貫通孔W1の内側に突出させられている。
【0036】
取付枠7の内周部には、支持板部71が形成されている。支持板部71には、軸線を室内外方向に向けた挿通孔72が形成されている。挿通孔72は、全部で4つ形成されている。各挿通孔72は、取付枠7の内側の4つのコーナー部に隣接して配置されている。挿通孔72は、左右方向に長い長孔として形成されている。挿通孔72には、固定ボルトBが挿通されている。固定ボルトBは、挿通孔72が左右方向に延びる長孔であるので、左右方向へ所定角度だけ揺動可能である。
【0037】
図1に示すように、壁板2より室外O側には、左右一対の挟持板8,8が設けられている。挟持板8は、金属製の板材からなるものであり、その長手方向を上下方向に向けて配置されている。しかも、各挟持板8,8は、固定板6,6の受け部62,62より室外O側に位置し、かつ受け部62,62と室内外方向においてそれぞれ対向するように配置されている。挟持板8の上下の両端部には、固定ボルトB,Bがそれぞれ螺合されている。したがって、固定ボルトBを締め付けると、挟持板8,8が室内I側へ移動し、受け部62,62に突き当たる。その状態で固定ボルトBをさらに締め付けると、受け部62,62が挟持板8,8によって室内I側へ移動させられ、ひいてはケーシング2が室内I側へ移動させられる。そして、受け部62,62が壁板Wの室外面W2に突き当たると、取付枠7が室内面W3に押圧接触させられる。つまり、受け部62と取付枠7とが壁板Wを挟持する。これにより、取付枠7及び固定板6,6が壁板Wに固定され、ひいてはケーシング2が壁板Wに固定される。これから明らかなように、この実施の形態の埋設型ガス栓1においては、固定部材6の受け部62、挟持部材8及び固定ボルトBにより、取付枠7及びケーシング2を壁板Wに固定するための固定手段が構成されている。固定手段は、必ずしも上記構成のものに限定されるものでなく、周知の各種のものを採用することができる。
【0038】
図2〜図4に示すように、取付枠7の内周部には、室外O側に向かって延びる左右一対の支持脚部73,73が形成されている。各支持脚部73の先端部には、ビスB4が挿通されている。このビスB4は、ガス栓5に螺合されている。そして、ビスB4を締め付けることにより、ガス栓5が支持脚部73に固定されている。なお、ビスB4を締め付ける際には、ビスB1によるガス栓5のケーシング2への仮固定が予め解除される。
【0039】
図1〜図6に示すように、ケーシング2の開口部側の端部、つまり室内I側の端部には、フランジ部27が形成されている。フランジ部27は、ケーシング2から外方(左右及び上下方向)に向かって突出しており、開口部に沿って環状に延びている。フランジ部27の室内I側を向く面には、第2シール部材9が接着等の手段によって固着されている。第2シール部材9は、樹脂その他の弾性を有する材料からなるものであり、フランジ部27に沿って環状に形成されている。
【0040】
図10に示すように、室内外方向における第2シール部材9の厚さ、つまり第2シール部材9に外力が作用していない自然状態での厚さは、受け部62のフランジ部27からの突出量より所定の寸法だけ厚く設定されている。この結果、第2シール部材9の室内I側の端部は、受け部62から室内I側に突出させられている。したがって、図1に示すように、受け部62が壁板Wの室外面W2に押し付けられると、第2シール部材9は、その厚さと受け部62の突出量との差の分だけ弾性的に圧縮され、その弾性力によって第2シール部材9が室外面W2に押し付けられる。それによって、室外面W2とケーシング2との間が気密にシールされている。しかも、シール部材9は、貫通孔W1を環状に囲んでいる。したがって、貫通孔W1は、ケーシング2及びシール部材9によって閉じられている。勿論、前述したように、ケーシング2のガス管挿通孔25とガス管Gとの間は、第1シール部材4によって気密にシールされている。したがって、室内Iと室外Oとを連通させる貫通孔W1がケーシング2、第1シール部材4及び第2シール部材9によって遮蔽され、ひいては室内Iと室外Oとの間が遮断されている。
【0041】
図1〜図3に示すように、取付枠7には、化粧板10が着脱可能に取り付けられている。化粧板10は、取付枠7及び貫通孔W1が室内から目視されることを防止するように、それらを覆っている。化粧板10には、窓孔10aが形成されている。窓孔10aは、上下及び左右方向において貫通孔W1とほぼ同一位置に配置されている。窓孔10aには、蓋体11が開閉回動可能に設けられている。蓋体11を開くと、ガス栓5のプラグ部51が貫通孔W1及び窓孔10aを介して室内Iに露出する。そこで、窓孔10aからソケット(図示せず)を挿入してプラグ51aに接続することができる。勿論、ソケットにはガス管を介してガス機器(いずれも図示せず)が接続されており、ソケットをプラグ部51に接続すると、ガス栓5が自動的に閉状態から開状態に切り換わり、ガス栓5からガス器具にガスが供給される。開状態の蓋体11を室外O側に向かって押すと、ソケットがプラグ部51から外れる。すると、ガス栓5が自動的に開状態から閉状態に切り換わる。その後、ソケットを窓孔から室内Iに取り出し、蓋体11を閉位置に回動させることにより、窓孔10aを閉じることができる。
【0042】
上記構成の埋設型ガス栓1の取付手順の一例を説明する。埋設型ガス栓1を壁板Wに取り付ける場合には、図7に示すように、予め、ケーシング2に左右一対の固定板6を取り付けておく。その後、間柱Cにガイド板3を取り付け、ガイド板3にケーシング2を室内外方向へ移動可能に取り付ける。次に、図8に示すように、ケーシング2にガス管Gを挿通するとともに、ガス管Gをガス栓5に接続し、さらにガス栓5をケーシング2に仮固定する。ガス管G及びガス栓5は、ケーシング2を間柱Cに取り付ける前に予めケーシング2に取り付けておいてもよい。
【0043】
その後、図10に示すように、壁板Wを間柱Cに固定する。壁板Wには、貫通孔W1を形成する。次に、図3に示すように、一対の挟持板8,8を貫通孔W1からケーシング2内に挿入する。ここで、固定ボルトBが壁板Wと垂直になった状態では、挟持板8,8が固定板6の受け部62,62に突き当たってしまう。そこで、固定ボルトBの室外O側の端部が室内I側の端部(頭部側の端部)より互いに接近するように固定ボルトBを傾斜させ、挟持板8,8を互いに接近させる。すると、挟持板8,8が受け部62,62間を室外O側へ通り抜けることができる。ここで、ケーシング2、ひいては受け部62,62が上下及び左右方向に位置固定され、さらにケーシング2の室内外方向への移動範囲が規制されているから、挟持板8,8を受け部62,62間に容易に通すことができる。挟持板8,8が受け部62,62間を室外O側へ通りぬけた後、固定ボルトBを垂直位置まで戻す。すると、挟持板8,8が受け部62,62と対向する。その後、図9に示すように、ビスB4をガス栓5に螺合させる。このとき、ガス栓5がケーシング2を介して上下方向及び左右方向へ位置固定されるとともに、室内外方向の移動範囲が規制されているから、ビスBをガス栓5に容易に螺合させることができる。次いで、ビスB3を取り外し、ガス栓5のケーシング2への仮固定を解除する。その後、ビスB4を締め付けて、ガス栓5を取付枠7に固定する。
【0044】
次に、固定ボルトBを締め付けて、挟持板8,8を室内I側へ移動させる。すると、挟持板8,8が受け部62,62を室内I側へ押し、ケーシング2を室内I側へ移動させる。このとき、ケーシング2がガイド板3に室内外方向へ移動可能に、上下方向及び左右方向へは移動不能に支持されているから、ケーシング2を円滑に室内I側へ移動させることができる。その後、挟持板8,8は、壁板Wに突き当たり、取付枠7と協働して壁板W及び受け部62,62を挟持する。これにより、ケーシング2及びガス栓5が壁板Wに取り付けられる。しかも、このときには、第2シール部材9が貫通孔W1を囲むようにして壁板Wの室外面W2に押し付けられ、それによって貫通孔W1が閉じられている。
【0045】
上記構成埋設型ガス栓1によれば、固定手段のうちの壁板Wより室外側の部分たる受け部62、挟持板8及び固定ボルトBが第2シール部材9によって囲まれる範囲の内側に配置されているから、挟持板8は、第2シール部材9を拡大するように弾性変形することなく、第2シール部材9を室内I側から室外O側へ通り抜けることができる。したがって、挟持板8を第2シール部材9に挿通するのに面倒な手間が不要である。しかも、挟持板8が第2シール部材9内を通るときに第2シール部材9を傷付けることもない。さらに、ガス管Gが挿通されるガス管挿通孔25が所定の強度を有するケーシング2に設けられているから、ガス管挿通孔25にはガス管Gを容易に挿通することができる。
【0046】
また、ケーシング2がガイド板3に上下方向及び左右方向へ移動不能に支持されているから、第2シール部材9は、必ず貫通孔W1を囲むようにして壁板Wに押し付けられる。したがって、貫通孔W1を確実に閉じ、室内外間の気密性を高めることができる。
【0047】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、ケーシング2を間柱Cに室内外方向へ移動可能取り付けているが、これはガス工事が壁板Wの設置より早い時期に行われることを考慮してそのようにしたものであり、ガス工事と壁板Wの設置とがほとんど同時期に行われる場合には、必ずしもケーシング2を間柱Cに取り付ける必要がない。
また、上記の実施の形態においては、ケーシング2に固定部材6を固定し、固定部材6に受け部62を設けているが、受け部62をケーシング2に一体に設けてもよい。受け部62については、ケーシング2の室内I側の端面より室外O側に配置してもよい。その場合には、ケーシング2に受け部62に代わって室外面W2に突き当たる当接部を設ける。勿論、当接部は、自然状態での第2シール部材9の室内I側の面より室外O側に配置される。
また、上記の実施の形態においては、ガス栓5を取付枠7に固定しているが、ケーシング2に固定してもよい。
さらに、上記の実施の形態においては、第1シール部材4として貫通孔41を有する平板状のものを採用しているが、ガス管挿通孔25の内周面にOリング等のシール部材を設け、このシール部材によってガス管挿通孔25の内周面とガス管Gの外周面との間を気密にシールしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明に係る埋設型ガス栓は、高い気密性が要求されるマンションその他の建築物に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
B 固定ボルト(固定手段)
G ガス管
I 室内
O 室外
W 壁板(壁部材)
W1 貫通孔
W2 室外面
W3 室内面
1 埋設型ガス栓
2 ケーシング
3 ガイド板(ガイド部材)
4 第1シール部材
5 ガス栓
7 取付枠
8 挟持板(固定手段)
9 第2シール部材
24 収容部
25 ガス管挿通孔
27 フランジ部
41 通孔
62 受け部(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する壁部材に対しその室外側に配置され、上記貫通孔と対向する部位に開口部を有する容器状のケーシングと、このケーシングの内部に収容されたガス栓と、上記壁部材に対しその室内側に上記貫通孔を囲むように配置さ環状の取付枠と、この取付枠及び上記ケーシングを上記壁部材の室内面及び室外面にそれぞれ押し付けることにより上記ケーシングを上記壁部材に固定する固定手段とを備え、
上記ケーシングが、その形状を一定に維持することができるよう、所定の剛性をもって形成され、
上記ケーシングには、上記ガス栓に接続されるガス管が挿通されるガス管挿通孔が形成されるとともに、上記ガス管の外周面と上記ガス管挿通孔の内周面との間を気密にシールする第1シール部材が設けられ、
上記ケーシングの上記壁部材と対向する部位には、上記開口部を囲むように環状に延びるフランジ部が形成され、このフランジ部には、フランジ部に沿って環状に延びる第2シール部材が設けられ、上記固定手段により上記フランジ部が上記壁部材の室外面に上記第2シール部材を介して気密に押し付けられ、
上記固定手段のうちの上記壁部材より室外側の部分が上記第2シール部材によって囲まれる範囲の内側に配置されていることを特徴とする埋設型ガス栓。
【請求項2】
上記ケーシングには、上記ガス管挿通孔を上記ケーシングの内部側の部分と外部側の部分とに二分する収容部が形成され、上記第1シール部材が弾性材によって形成され、上記収容部に上記第1シール部材が圧縮状態で挿入されることにより、上記第1シール部材が、少なくとも上記ガス管挿通孔の内部側の部分が開口する上記収容部の内面に環状に押圧接触され、上記第1シール部材には上記ガス管挿通孔に挿入されたガス管が挿通される通孔が設けられ、この通孔の内周面が上記ガス管の外周面に上記第1シール部材の弾性によって押し付けられることにより、上記通孔の内周面と上記ガス管の外周面との間が気密にシールされていることを特徴とする請求項1に記載の埋設型ガス栓。
【請求項3】
ガイド部材をさらに備え、上記ガイド部材が、上記壁部材を支持する支持部材に取り付けられ、上記ガイド部材に上記ケーシングの上記壁部材に接近離間する方向へ移動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の埋設型ガス栓。
【請求項4】
上記ケーシングの上記ガイド部材に対する移動範囲が所定の範囲に規制されていることを特徴とする請求項3に記載の埋設型ガス栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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