説明

埋設型枠用ボード

【課題】後打ちコンクリートとの付着力やせん断強度に優れ、遮蔽性や耐久性が高く、機械的強度が大きく、製造が容易である埋設型枠用ボードを提供する。
【解決手段】セメント、BET比表面積が3〜20m2/gの微粉末、細骨材、水、減水剤及び直径0.02〜0.2mmで長さ1〜30mmのモノフィラメントタイプのアラミド繊維を含む配合物の硬化体からなる埋設型枠用ボード1であって、片面に平均値で2mm以上の高さを有する突起部分3を有し、かつ、該突起部分を2mmの高さで切断した切断面の面積が、該突起部分を有する上記片面の投影面積の10%以上である埋設型枠用ボード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設型枠を構成する単位部材である、セメント質硬化体からなる埋設型枠用ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を形成するための型枠として用いられ、かつ、型枠内に後打ちコンクリートが打設され硬化した後であっても取り外されることなく、後打ちコンクリートと一体化して存置する埋設型枠が、従来より知られている。埋設型枠は、その構成部材である種々の埋設型枠用ボードを適宜組み合わせることによって、梁等の所望の形状に組み立てられる。
【0003】
従来の埋設型枠用ボードは、例えば、次の(1)〜(3)のような方法によって、後打ちコンクリートとの付着力を高めている。
(1)コンクリート配合物(圧縮強度が30N/mm2程度のもの)で埋設型枠用ボードを製造した後、その表面(後打ちコンクリートが打設される側の片面)をブラシ等で荒らして、凹凸を形成させる。
(2)コンクリート配合物(圧縮強度が30N/mm2程度のもの)で埋設型枠用ボードを製造する際、埋設型枠用ボードの表面(後打ちコンクリートが打設される側の片面)に遅延剤を塗布しておき、養生の終了後、遅延剤を塗布しておいた表面を洗い出すことによって、骨材を露出させ、凹凸を形成させる。
(3)コンクリート配合物(圧縮強度が30N/mm2程度のもの)で埋設型枠用ボードを製造する際に、トラス状の立体鉄筋の一部を埋め込んでおき、その一部を露出させる。
【0004】
上記従来の埋設型枠用ボードは、遮蔽性の観点からは性能が著しく低かった。すなわち、従来の埋設型枠用ボードは、埋設型枠としての使用時に後打ちコンクリートとの境界面で剥離が生じ、当該境界面に水が浸入して、外部への漏水が起こる等の問題点があった。このため、近年、埋設型枠用ボードの遮蔽性を向上させる技術が検討されている。例えば、レジンモルタルで形成されたパネル状の心材と、この心材の両面にガラス繊維強化プラスチックで形成された表面補強層とで型枠本体を構成し、この型枠本体の片面にコンクリート固着用突起体を配置した埋設型枠が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−45432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の埋設型枠は、レジンモルタル製の心材の両面に、ガラス繊維強化プラスチック製の表面補強層を密着させて、両面から加熱・加圧成形することによって製造されるものであるため、製造に手間がかかるという問題がある。そこで、本発明は、後打ちコンクリートとの付着力やせん断強度に優れ、遮蔽性や耐久性が高く、機械的強度が大きく、製造が容易である埋設型枠用ボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の材料を含有する配合物の硬化体であって、かつ特定の形状を有する埋設型枠用ボードであれば、前記課題を解決することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の埋設型枠用ボードは、セメント、BET比表面積が3〜25m2/gの微粉末、細骨材、水、減水剤及び直径0.02〜0.2mmで長さ1〜30mmのモノフィラメントタイプのアラミド繊維を含む配合物の硬化体からなる埋設型枠用ボードであって、片面に平均値で2mm以上の高さを有する突起部分(通常、多数の突起体からなる。)を有し、かつ、該突起部分を2mmの高さで切断した切断面の面積が、該突起部分を有する上記片面の投影面積の10%以上であることを特徴とする埋設型枠用ボードである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の埋設型枠用ボードは、後打ちコンクリートとの付着力やせん断強度に優れ、遮蔽性や耐久性が高く、機械的強度が大きく、しかも容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の埋設型枠用ボードの一例(部分)を示す斜視図である。
【図2】本発明の埋設型枠用ボードの一例(部分)を示す断面図である。
【図3】本発明の埋設型枠用ボードを含むコンクリート構造体の一例(部分)を示す断面図である。
【図4】付着強度の測定方法を説明する図((a);試験体の斜視図、(b);試験体(部分)の正面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明の埋設型枠用ボードの一例(部分)を示す斜視図、図2は、本発明の埋設型枠用ボードの一例(部分)を示す断面図、図3は、本発明の埋設型枠用ボードを含むコンクリート構造体の一例(部分)を示す断面図である。
【0011】
本発明の埋設型枠用ボード1は、図1に示すように、特定の配合物の硬化体からなる板状の本体部2と、本体部2の片面(後打ちコンクリートが打ち込まれる側の面)に設けられた多数の突起体(突起部分)3とからなる。多数の突起体3を構成する各粒体(例えば、砕石、セラミックス粉砕物等)は、図2に示すように、本体部2の片面において部分的に埋め込まれ、本体部2の片面における底面4から適宜の高さだけ突出した状態に配置され固定されている。本発明の埋設型枠用ボード1は、例えば、図3に示すような形態で用いられる。図3中、コンクリート構造体5は、多数の突起体3を有する側の面(片面)を内側に向けた状態で対向して配置された2つの埋設型枠用ボード1,1と、2つの埋設型枠用ボード1,1の間に打ち込まれた後打ちコンクリート6とから構成される。埋設型枠用ボード1,1は、後打ちコンクリート6の硬化後も、取り外されることなく、コンクリート構造体5の構成部分として存置する。
【0012】
次に、埋設型枠用ボード1の本体部2を構成する硬化体、及び多数の突起体(突起部分)3について詳細に説明する。本体部2を構成する硬化体は、セメント、BET比表面積が3〜25m2/gの微粉末、細骨材、水、減水剤及び直径0.02〜0.2mmで長さ1〜30mmのモノフィラメントタイプのアラミド繊維を含む配合物の硬化体である。
【0013】
セメントの種類としては、特に限定されないが、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントを使用することができる。
本発明においては、配合物の硬化体の早期強度を向上させようとする場合には、早強ポルトランドセメントを使用することが好ましく、配合物の流動性を向上させようとする場合には、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
【0014】
BET比表面積が3〜25m2/gの微粉末としては、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゾル、沈降シリカ、石灰石粉末等が挙げられる。一般に、シリカフュームやシリカダストは、そのBET比表面積が5〜25m2/gであり、粉砕等をする必要がないので、本発明の微粉末として好適である。また、被粉砕性や流動性等の観点から、石灰石粉末も本発明の微粉末として好適である。
上記微粉末のBET比表面積は、3〜25m2/g、好ましくは7〜15m2/gである。該値が3m2/g未満では、硬化体の圧縮強度が低下するうえ、緻密性や耐衝撃性等も低下する。一方、該値が25m2/gを越えるものは、入手が困難であるうえ、単位水量が増大し、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等が低下することがある。
上記微粉末の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部である。配合量が5質量部未満では、硬化体の圧縮強度が低下するうえ、緻密性や耐衝撃性等も低下する。一方、配合量が50質量部を越えると、単位水量が増大し、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等が低下することがある。
【0015】
細骨材としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂等又はこれらの混合物が挙げられる。 本発明においては、細骨材としては、配合物の流動性や硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等から、最大粒径が2mm以下、より好ましくは1.5mm以下のものを用いることが好ましい。また、流動性や作業性等から、細骨材中の0.15mm未満の粒子の割合が5.0質量%以下であることが好ましい。
細骨材の配合量は、配合物の流動性や施工性、硬化体の強度の観点、さらには、自己収縮や乾燥収縮の低減、水和発熱量の低減等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは50〜250質量部、より好ましくは80〜180質量部である。
【0016】
水としては、水道水等を使用することができる。
本発明において、水/セメント比は、配合物の流動性や施工性、硬化体の強度、耐久性、緻密性や耐衝撃性等から、10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。
【0017】
減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することができる。なかでも、ポリカルボン酸系の高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することが好ましい。減水剤を配合することによって、配合物の流動性や施工性、硬化体の緻密性や強度等が向上する。
減水剤の配合量は、配合物の流動性や分離抵抗性、硬化体の緻密性や強度、コスト等の面から、セメント100質量部に対して固形分換算で0.1〜4.0質量部が好ましく、0.1〜2.0質量部がより好ましく、0.1〜1.0質量部が特に好ましい。
【0018】
本発明で使用するアラミド繊維は、直径0.02〜0.2mm(好ましくは0.03〜0.2mm、より好ましくは0.04〜0.2mm)、長さ1〜30mm(好ましくは3〜20mm、より好ましくは5〜16mm)のモノフィラメントタイプの繊維である。アラミド繊維の直径が0.02mm未満では、配合物の流動性や作業性が低下するうえ、硬化体の圧縮強度も低下する。一方、直径が0.2mmを越えるアラミド繊維をモノフィラメントタイプの繊維として入手することは困難である。また、直径が0.2mmを越える収束型のアラミド繊維を使用した場合では、同一配合量での本数が少なくなるので、曲げ強度や破壊エネルギーが低下することがある。アラミド繊維の長さが1mm未満では、入手が困難であるうえ、曲げ強度や破壊エネルギーが低下することがある。一方、長さが30mmを越えると、配合物の流動性や作業性が極端に低下するうえ、硬化体の圧縮強度も低下する。
アラミド繊維の配合量は、配合物の体積の0.5〜3.0%が好ましく、より好ましくは0.8〜2.0%である。配合量が配合物の体積の0.5%未満では、曲げ強度や破壊エネルギー、特に破壊エネルギーが低下することがある。一方、配合量が3.0%を越えると、配合物の流動性や作業性が極端に低下するうえ、コストも高くなる。
【0019】
本発明においては、配合物の流動性や作業性、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等から、アラミド繊維は含水率が5〜50質量%のものを使用するのが好ましく、10〜30質量%のものを使用するのがより好ましい。アラミド繊維の含水率が5質量%未満では、アラミド繊維がダマ状になったり、配合物の流動性や作業性が低下することがある。一方、含水率が50質量%を越えると、強度発現性が低下することがあり、また、硬化体の緻密性や耐衝撃性等が低下することがある。
なお、本発明において、アラミド繊維の含水率は、105℃で24時間加熱した際の質量減少量から算出される値である。
【0020】
本発明においては、配合物は、ブレーン比表面積が3500〜10000cm2/gの無機粉末を含有することができる。該無機粉末を含有することにより、配合物の流動性や硬化体の強度発現性、緻密性等を高めることができる。
無機粉末としては、スラグ、石灰石粉末、長石類、ムライト類、アルミナ粉末、石英粉末、フライアッシュ、火山灰、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末等が挙げられる。なかでも、スラグ、フライアッシュ、石灰石粉末、石英粉末は、コストの点や硬化体の品質安定性の点で好ましく用いられる。
無機粉末のブレーン比表面積は3500〜10000cm2/gが好ましく、4000〜9000cm2/gがより好ましく、5000〜9000cm2/gが特に好ましい。無機粉末のブレーン比表面積が3500cm2/g未満では、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等が低下するため好ましくない。一方、該値が10000cm2/gを越えると、流動性が低下したり、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等が低下することがある。さらに、この場合、コストも増大する。
無機粉末の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは55質量部以下、より好ましくは10〜50質量部である。配合量が55質量部を越えると、流動性が低下したり、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等が低下することがある。
【0021】
本発明においては、配合物は、平均粒度が1mm以下の繊維状粒子又は薄片状粒子を含有することができる。ここで、粒子の粒度とは、その最大寸法の大きさ(特に、繊維状粒子ではその長さ)である。該繊維状粒子又は薄片状粒子を含有することにより、硬化後の靱性を高めることができる。
繊維状粒子としては、ウォラストナイト、ボーキサイト、ムライト等が、薄片状粒子としては、マイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。
繊維状粒子又は薄片状粒子の配合量は、配合物の流動性や施工性、硬化体の靱性等から、セメント100質量部に対して35質量部以下が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
なお、繊維状粒子においては、硬化体の靱性を高める観点から、長さ/直径の比で表される針状度が3以上のものを用いるのが好ましい。
【0022】
本発明においては、配合物の混練方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法を用いることができる。また、混練に用いる装置も特に限定されるものではなく、オムニミキサ、パン型ミキサ、二軸練りミキサ、傾胴ミキサ等が用いられる。
【0023】
上記混練した配合物を成形し、養生・硬化させることによって、本発明の埋設型枠用ボードを製造することができる。なお、成形方法は、特に限定されるものではなく、流し込み成形等の慣用の成形方法を採用することができる。また、養生方法も特に限定されるものではなく、常温養生や蒸気養生等を行なえばよい。
【0024】
本発明の埋設型枠用ボード1は、片面(後打ちコンクリートを打ち込む側の表面)に、平均値で2mm以上の高さを有する突起部分(多数の突起体3)を有するものである。多数の突起体3を有することによって、埋設型枠用ボード1の片面と、後打ちコンクリート6(図3参照)との付着力を、剥離が生じない程度の大きさに向上させることができる。
【0025】
多数の突起体3は、例えば、以下の(1)や(2)の方法等によって形成させることができる。
(1)突起体を形成させ得る物を、硬化前の配合物の片面に、配合物に固定されるのに十分な程度の深さで、かつ、配合物の片面(底面)から適宜の高さだけ突出した露出部分を有するように、極力均一な密度(単位面積当りの個数)になるように多数埋め込んだ後、配合物を硬化させる。
(2)型枠の底面に突起体を形成させ得る物を敷設し、その目地間に溶融した造形剤(寒天、パラフィン、松脂等)を注入して硬化させ、次いで配合物を型枠内に打設し、養生後に脱型し、目地間の造形剤を除去する。
なお、突起体を形成させ得る物としては、球状のものよりも、付着力が大きくなる不定形物の方が好ましい。該不定形物としては、例えば、砕石、セラミックス粉砕物、都市ごみ溶融スラグ粉砕物、スラグ粉砕物、石灰石砕石、ガラスカレット、回収ガラスカレット、クリンカー粉砕物、短尺鉄筋等が挙げられる。
【0026】
埋設型枠用ボード1の片面に形成される突起部分(多数の突起体3)の高さは、平均値で2mm以上、好ましくは5〜20mmである。ここで、突起部分(多数の突起体3)の高さの平均値とは、埋設型枠用ボード1の片面において、多数の突起体3の部分のみ(すなわち、底面4を除く部分)を対象にして、高さが同じになるように平坦にならした場合の高さ(すなわち、多数の突起体3の投影面において、これら突起体3の体積の合計を一定に保持したまま、投影面上の全ての地点において同一の高さを有するように平坦にならした場合の当該高さ)をいう。突起部分(多数の突起体3)の高さの平均値が2mm未満では、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が低下し、1.0N/mm2以上の付着強度が得られ難い。また、1.0N/mm2以上のせん断強度も得られ難い。
なお、付着強度が1.0N/mm2では、後打ちコンクリート6の厚さにもよるが、後打ちコンクリート6の剥離が生じる可能性があり、好ましくない。また、せん断強度が1.0N/mm2未満でも、後打ちコンクリート6の剥離が生じる可能性があり、好ましくない。
【0027】
また、多数の突起体3を底面4(図2参照)から2mmの高さで切断した切断面の面積(各突起体の切断面の合計面積)は、多数の突起体3を有する片面全体の投影面積の10%以上、好ましくは20〜80%、より好ましくは30〜70%である。当該面積の割合が10%未満では、埋設型枠用ボード1と後打ちコンクリート6との付着力が低下し、1.0N/mm2以上の付着強度が得られ難い。また、1.0N/mm2以上のせん断強度も得られ難い。
【0028】
本発明の埋設型枠用ボードの寸法は、埋設型枠用ボード自体の強度や耐久性、さらには、製造や運搬、工事現場への設置等の手間を考慮して、縦0.3〜5.0m×横0.3〜5.0m×厚さ1〜7cmであることが好ましい。なお、ここで、埋設型枠用ボードの厚さとは、本体部の厚さ(図2のd1)をいう。
【0029】
本発明の埋設型枠用ボード1は、当該埋設型枠用ボード1を固定するためのインサート孔を持つことができる。固定具をインサート孔に挿通して、法面や天井等に打ちつけることによって、埋設型枠用ボード1をアーチ状、板状等の形状に容易に組み立てることができる。
【0030】
本発明で用いられるセメント、BET比表面積が3〜25m2/gの微粉末、細骨材、水、減水剤及び直径0.02〜0.2mmで長さ1〜30mmのモノフィラメントタイプのアラミド繊維を含む配合物は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行なわないで測定したフロー値が、200mm以上と流動性に優れるものであり、型枠への投入等の作業性に優れるものである。また、該配合物の硬化体は、180N/mm2以上、より好ましくは190N/mm2以上の圧縮強度を有するものである。よって、本発明の埋設型枠用ボード1は、極めて緻密で、表面処理等を行わなくても凍結融解抵抗性、耐摩耗性、非透水性等に非常に優れている。
【実施例】
【0031】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
1.使用材料
以下に示す材料を使用した。
(a)セメント:低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
(b)微粉末:シリカフューム(BET比表面積11m2/g)
(c)無機粉末:石英粉末(ブレーン比表面積7000cm2/g)
(d)細骨材:珪砂(粒径0.15〜0.6mm)
(e)減水剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤
(f)水:水道水
(g)アラミド繊維:直径:0.045mm、長さ:6mmのモノフィラメント繊維(含水率15質量%)
(h)ポリビニルアルコール繊維:直径:0.3mm、長さ:15mm
(i)鋼繊維:直径:0.2mm、長さ:15mm
【0032】
2.配合物の製造と評価1
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、細骨材120質量部、水22質量部、高性能減水剤0.4質量部(固形分換算)及びアラミド繊維(配合物の体積の1%)を二軸練りミキサに投入し、混練した。該配合物のフロー値を、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行なわないで測定した。その結果、フロー値は200mmであった。
また、前記配合物をφ50×100mmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)を得た。該硬化体の圧縮強度(3本の平均値)は182N/mm2であった。
また、前記配合物を4×4×16cmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)を得た。該硬化体の曲げ強度(3本の平均値)は29N/mm2であった。
また、上記曲げ強度試験において、荷重がひび割れ発生荷重に達してから、1/3に低下するまでの間の荷重−荷重点変位の積分値を供試体断面積で除した値として、破壊エネルギー算出した。なお、荷重点変位としては、曲げ試験機のクロスヘッド変位量を用いた。
該硬化体の破壊エネルギー(3本の平均値)は43kJ/m2であった。
また、前記配合物をφ50×100mmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)を得た。該硬化体の透水係数を「地盤工学会基準JGS 0231(土の透水試験法)」に準じて、変水位透水試験方法により測定した。その結果、水の浸透が全く認められず、浸透深さはゼロであった。
また、前記配合物を10×10×40cmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)を得た。該硬化体の凍結融解試験を、「JIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)付属書2(コンクリートの凍結融解試験)」に準じて測定した。その結果、耐久性指数(3本の平均値)は、99.8であった。
【0033】
3.配合物の製造と評価2
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末30質量部、細骨材120質量部、水22質量部、高性能減水剤0.4質量部(固形分換算)及びアラミド繊維(配合物の体積の1%)を二軸練りミキサに投入し、混練した。
配合物のフロー値、硬化体の圧縮強度、曲げ強度、破壊エネルギー、水の浸透深さ及び耐久性指数を、上記2と同様に測定した。
その結果、フロー値は212mm、圧縮強度は192N/mm2、曲げ強度は29N/mm2、破壊エネルギーは44kJ/m2、水の浸透深さはゼロ、耐久性指数は99.9であった。
【0034】
4.配合物の製造と評価3
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末30質量部、細骨材120質量部、水22質量部及び高性能減水剤0.4質量部(固形分換算)を二軸練りミキサに投入し、混練した。
配合物のフロー値、硬化体の圧縮強度、曲げ強度及び破壊エネルギーを、上記2と同様に測定した。
その結果、フロー値は270mm、圧縮強度は220N/mm2、曲げ強度は17N/mm2、破壊エネルギーは2kJ/m2であった。
【0035】
5.配合物の製造と評価4
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末30質量部、細骨材120質量部、水22質量部、高性能減水剤0.4質量部(固形分換算)及びポリビニルアルコール繊維(配合物の体積の3%)を二軸練りミキサに投入し、混練した。
配合物のフロー値、硬化体の圧縮強度、曲げ強度及び破壊エネルギーを、上記2と同様に測定した。
その結果、フロー値は260mm、圧縮強度は165N/mm2、曲げ強度は21N/mm2、破壊エネルギーは32kJ/m2であった。
【0036】
6.配合物の製造と評価5
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末30質量部、細骨材120質量部、水22質量部、高性能減水剤0.4質量部(固形分換算)及び鋼繊維(配合物の体積の2%)を二軸練りミキサに投入し、混練した。
配合物のフロー値、硬化体の圧縮強度、曲げ強度及び破壊エネルギーを、上記2と同様に測定した。
その結果、フロー値は270mm、圧縮強度は200N/mm2、曲げ強度は45N/mm2、破壊エネルギーは45kJ/m2であった。
【0037】
7.埋設型枠用ボードの評価1
7-1 埋設型枠用ボードの製造
上記3.で製造した配合物を、400mm×400mm×30mm(厚さ)の型枠に流し込み、その上に砕石(最大粒径13mm)を8kg/m2となるように均一に散布した後、養生(20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生)して、多数の突起体を片面に有する埋設型枠用ボードを製造した。埋設型枠用ボードの突起体の高さは、6〜9mmであった。また、高さ2mmで切断した全突起体の切断面の合計面積は、片面の全面積(投影面積)の60%であった。
【0038】
7-2 後打ちコンクリートの打設及び養生
上記埋設型枠用ボードの突起体を有する片面に、表1に示す後打ちコンクリート(スランプ12cm、圧縮強度は32N/mm2(28日間水中養生))を打設した。
なお、後打ちコンクリートの使用材料は以下の通りである。
(1)セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
(2)細骨材:小笠産陸砂
(3)粗骨材:岩瀬産5号砕石と岩瀬産6号砕石の混合物(最大粒径20mm)
(4)減水剤;リグニンスルホン酸系AE減水剤
(5)AE剤;アルキルアリルスルホン化合物系陰イオン界面活性剤
(6)水 ;水道水
【0039】
【表1】

【0040】
7-3 せん断強度及び付着強度の測定(評価)
埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートからなる硬化体について、下記の方法でせん断強度及び付着強度を測定した。
(1)せん断強度の測定方法
上記硬化体のせん断強度を「JSCE−G 553−1983(鋼繊維補強コンクリートのせん断強度試験方法)」に準じて測定した。
(2)付着強度の試験方法
400mm×400mm×30mm(厚さ)の埋設型枠用ボードの突起体を有する片面を底面とした型枠内に、上記後打ちコンクリート用の配合物を流し込み、20℃で24時間湿空養生した後、脱型し、さらに28日間水中養生し、硬化させて、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリート(厚さ50mm)からなる試験体(硬化体)を得た。
図4に示すように、試験体20の一側端面21から80mm、200mm、320mmの位置に、埋設型枠用ボード20aの側から後打ちコンクリート20bの中まで、側端面21に対して平行に3本の切り込み線22,23,24を形成した。この3本の切り込み22,23,24に対して直交するように、上記側端面21と直交する一つの側端面25から80mm、200mm、320mmの位置に、さらに3本の切り込み線26,27,28を形成した。
図4(b)に示すように、上方に埋設型枠用ボード20a、下方に後打ちコンクリート20bが配置されるように試験体20を設置し、試験位置(図4(a)のA)に鋼製の上部引張用のアタッチメント30をエポキシ樹脂接着剤で貼り付け、該アタッチメントの上に重石を載せて、20℃の乾燥炉で試験体20を一日静置した。その後、上部引張用のアタッチメント30を介して載荷速度1.0kN/mm2で鉛直方向(図4(b)中の矢印方向)に引張載荷したときの最大荷重を求め、この数値を上部引張用のアタッチメント30の接着面積で除して付着強度とした。
その結果、せん断強度は2.8N/mm2、付着強度は1.5N/mm2であった。
【0041】
8.埋設型枠用ボードの評価2
上記5.で製造した配合物を使用して、上記7.と同様にして埋設型枠用ボードを製造した。上記7.と同様にして、該埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートからなる硬化体を製造した。該硬化体のせん断強度と付着強度を上記7.と同様に測定した。
その結果、せん断強度は2.0N/mm2、付着強度は1.1N/mm2であった。
【0042】
9.埋設型枠用ボードの評価3
上記6.で製造した配合物を使用して、上記7.と同様にして埋設型枠用ボードを製造した。上記7.と同様にして、該埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートからなる硬化体を製造した。該硬化体のせん断強度と付着強度を上記7.と同様に測定した。
その結果、せん断強度は2.8N/mm2、付着強度は1.6N/mm2であった。
【符号の説明】
【0043】
1 埋設型枠用ボード
2 本体部(配合物の硬化体)
3 多数の突起体(突起部分)
4 底面
5 コンクリート構造体
6 後打ちコンクリート
20 試験体
20a 埋設型枠用ボード
20b 後打ちコンクリート
21 試験体の一側端面
22,23,24 切り込み線
25 試験体の一側端面
26,27,28 切り込み線
30 上部引張用のアタッチメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、BET比表面積が3〜25m2/gの微粉末、細骨材、水、減水剤及び直径0.02〜0.2mmで長さ1〜30mmのモノフィラメントタイプのアラミド繊維を含む配合物の硬化体からなる埋設型枠用ボードであって、
片面に平均値で2mm以上の高さを有する突起部分を有し、かつ、該突起部分を2mmの高さで切断した切断面の面積が、該突起部分を有する上記片面の投影面積の10%以上であることを特徴とする埋設型枠用ボード。
【請求項2】
配合物が、ブレーン比表面積3500〜10000cm2/gの無機粉末を含む請求項1記載の埋設型枠用ボード。
【請求項3】
突起部分が、砕石、セラミックス粉砕物、都市ごみ溶融スラグ粉砕物、スラグ粉砕物、石灰石砕石、ガラスカレット、回収ガラスカレット、クリンカー粉砕物、短尺鉄筋から選ばれる一種以上の材料で形成される請求項1又は2記載の埋設型枠用ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−26848(P2011−26848A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173863(P2009−173863)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)