説明

埋設型枠用ボード

【課題】片面に備えた凸部分又は凹部分の破損が生じにくい埋設型枠用ボードを提供する。
【解決手段】セメント、BET比表面積が3〜25m2/gの微粉末、細骨材、水、減水剤及び直径0.02〜0.2mmで長さ1〜30mmのアラミド繊維を含む配合物の硬化体からなる埋設型枠用ボード1であって、(i)上記埋設型枠用ボード1の片面の全面に略均一に、高さが3mm以上である複数の凸部分3又は深さが3mm以上である複数の凹部分を有し、(ii)上記凸部分3又は凹部分の切断面面積が、上記凸部分3又は凹部分を有する片面の投影面積に対して10〜80%であり、かつ、(iii)片面の全表面積(S1)と、上記凸部分3又は凹部分を有する片面の投影面積(S2)との面積比(S1/S2)が1.2〜7.0である埋設型枠用ボード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設型枠を構成する単位部材である、セメント質硬化体からなる埋設型枠用ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を形成するための型枠として用いられ、かつ、型枠内に後打ちコンクリートが打設され硬化した後であっても取り外されることなく、後打ちコンクリートと一体化して存置する埋設型枠が、従来より知られている。埋設型枠は、その構成部材である種々の埋設型枠用ボードを適宜組み合わせることによって、梁等の所望の形状に組み立てられる。
【0003】
コンクリート構造物の耐久性等の観点から、埋設型枠用ボードには、埋設型枠用ボード自体の耐久性や、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力やせん断強度を大きくすることが望まれている。
従来、このような性能を有する埋設型枠用ボードとして、例えば、特許文献1には、特定の形状を有する埋設型枠が提案され、また、特許文献2には、特定の形状を有するプレキャスト製埋設型枠が提案されている。すなわち、特許文献1の埋設型枠は、パネル状の心材と、この心材の両面に形成された表面補強層とから構成される型枠本体の片面に、砂利、砂、網状体等からなるコンクリート固着用突起体を配置した構成としている。特許文献1の埋設型枠は、レジンモルタルで形成した心材の両面に、ガラス繊維強化プラスチックで形成された表面補強層を設けることで、耐久性を向上させている。また、特許文献2のプレキャスト製埋設型枠は、後打ちコンクリートと密着する側の略全面に錐体状(正多角錐体状又は正多角錐台状)の突起を設けた構成としている。特許文献2のプレキャスト製埋設型枠は、後打ちコンクリートと接触する一方の側面に、隙間を生じることなく、底面が連続した正多角錐体の突起を形成することによって、埋設型枠の表面と後打ちコンクリートとの接触面積を大きくし、両者の付着力を大きくさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−45432号公報
【特許文献2】特開平7−52133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の埋設型枠は、複数のコンクリート固着用突起体を、埋設型枠の片面の中央部分に集中して配置し、その周囲に枠状の平面部分が残存するように形成しているので、埋設型枠の枠状の平面部分と後打ちコンクリートとの付着力が小さくなり、上記の平面部分において、剥離が生じやすくなる。このような剥離が生じると、埋設型枠と後打ちコンクリートとの界面に水が浸入しやすくなるので、コンクリート構造物の耐久性が低下するという問題がある。
さらに、特許文献1の埋設型枠は、レジンモルタル製の心材の両面に、ガラス繊維強化プラスチック製の表面補強層を密着させて、両面から加熱・加圧成形することによって製造されるものであるため、製造に手間がかかるという問題がある。
【0006】
特許文献2のプレキャスト製埋設型枠は、突起の形状が錐体状(正多角錐体状又は正多角錐台状)であるので、上記プレキャスト製埋設型枠の運搬時や構築時等に、突起の先端部分が破損しやすく、取り扱いに注意を要するという問題がある。例えば、プレキャスト製埋設型枠の突起の先端部分が破損してしまった場合は、期待しうる付着力やせん断強度が得られない場合がある。
また、特許文献2のプレキャスト製埋設型枠は、コンクリートの表面にセメントモルタル層を設けた後に、該セメントモルタル層に専用型枠で錐体状の突起を製造しているので、製造に手間がかかるという問題もある。
そこで、本発明は、片面に備えた凸部分又は凹部分の破損が生じにくく、後打ちコンクリートとの付着力やせん断強度に優れ、遮蔽性や耐久性が高く、機械的強度が大きく、製造が容易である埋設型枠用ボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の材料を含有するセメント質硬化体からなり、かつ、後打ちコンクリートと接触する面に特定の形状の凸部分又は凹部分を有する埋設型枠用ボードであれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の埋設型枠用ボードは、セメント、BET比表面積が3〜25m2/gの微粉末、細骨材、水、減水剤及び直径0.02〜0.2mmで長さ1〜30mmのモノフィラメントタイプのアラミド繊維を含む配合物の硬化体からなる埋設型枠用ボードであって、(i)上記埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、高さが3mm以上である複数の凸部分又は深さが3mm以上である複数の凹部分を有し、(ii)上記凸部分の3mmの高さ又は凹部分の3mmの深さにおける切断面(但し、上記凸部分の高さが3mm又は上記凹部分の深さが3mmの場合は、表面積)の面積が、上記凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積に対して10〜80%であり、かつ、(iii)上記凸部分又は凹部分を有する片面の全表面積(S1)と、上記凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積(S2)との面積比(S1/S2)が1.2〜7.0であることを特徴とする埋設型枠用ボードである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の埋設型枠用ボードは、セメント質硬化体からなり、片面の全面に略均一に、特定の形状の凸部分又は凹部分を有するものであるので、凸部分又は凹部分を有する面の破損等が生じにくく、後打ちコンクリートとの付着力及びせん断強度が優れている。本発明の埋設型枠用ボードは、セメント質硬化体からなるものであり、機械的強度が大きく、遮蔽性や耐久性が高い。また、本発明の埋設型枠用ボードは、凸部分又は凹部分と、それ以外の部分(本体部)とを、同じ材料を用いて一体的に形成することができるので、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の埋設型枠用ボードの一例(部分)を示す斜視図である。
【図2】本発明の埋設型枠用ボードの一例(部分)を示す断面図である。
【図3】本発明の埋設型枠用ボードを含むコンクリート構造体の一例(部分)を示す断面図である。
【図4】本発明の埋設型枠用ボードの他の一例(部分)を示す斜視図である。
【図5】本発明の埋設型枠用ボードの他の一例(部分)を示す断面図である。
【図6】付着強度の測定方法を説明する図((a);試験体の斜視図、(b);試験体(部分)の正面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の埋設型枠用ボードについて、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の埋設型枠用ボードの一例(部分)を示す斜視図、図2は、本発明の埋設型枠用ボードの一例(部分)を示す断面図、図3は、本発明の埋設型枠用ボードを含むコンクリート構造体の一例(部分)を示す断面図である。
図1〜3に示すように、本発明の埋設型枠用ボード1は、セメント質硬化体からなる板状の本体部2と、該本体部2の片面4(後打ちコンクリートが打ち込まれる側の面)の全面に略均一に形成された、特定の形状を有する複数の凸部分3からなる。図1〜3に示す埋設型枠用ボード1は、円柱形状の凸部分3を本体部2の片面4(基準面)に形成した例を示している。
本発明の埋設型枠用ボードは、例えば、図3に示すような形態で用いられる。図3に示すように、2つの埋設型枠用ボード1,1は、複数の凸部分3を有する側の面(片面4)が相対するように配置され、このように配置された2つの埋設型枠用ボード1,1の間に、後打ちコンクリート6が打設されて、コンクリート構造体5が構成される。2つの埋設型枠用ボード1,1は、後打ちコンクリート6の硬化後も、取り外されることなく、コンクリート構造体5の構成部分として存置される。
【0011】
図4は、本発明の埋設型枠用ボードの他の一例(部分)を示す斜視図、図5は、本発明の埋設型枠用ボードの他の一例(部分)を示す断面図である。
図4及び5に示すように、本発明の埋設型枠用ボード10は、セメント質硬化体からなる板状の本体部11と、該本体部11の片面13(後打ちコンクリートが打ち込まれる側の面)の全面に略均一に形成された、特定の形状を有する複数の凹部分12とからなる。 図4及び図5に示す埋設型枠用ボード10は、四角柱形状の凹部分12を本体部11の片面13(基準面)に形成した例を示している。
【0012】
次に、本発明の埋設型枠用ボードを構成するセメント質硬化体について詳細に説明する。
該セメント質硬化体は、セメント、BET比表面積が3〜25m2/gの微粉末、細骨材、水、減水剤及び直径0.02〜0.2mmで長さ1〜30mmのモノフィラメントタイプのアラミド繊維を含む配合物の硬化体である。
【0013】
セメントの種類としては、特に限定されないが、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントを使用することができる。
本発明においては、配合物の硬化体の早期強度を向上させようとする場合には、早強ポルトランドセメントを使用することが好ましく、配合物の流動性を向上させようとする場合には、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
【0014】
BET比表面積が3〜25m2/gの微粉末としては、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゾル、沈降シリカ、石灰石粉末等が挙げられる。一般に、シリカフュームやシリカダストは、そのBET比表面積が5〜25m2/gであり、粉砕等をする必要がないので、本発明の微粉末として好適である。また、被粉砕性や流動性等の観点から、石灰石粉末も本発明の微粉末として好適である。
上記微粉末のBET比表面積は、3〜25m2/g、好ましくは7〜15m2/gである。該値が3m2/g未満では、硬化体の圧縮強度が低下するうえ、緻密性や耐衝撃性等も低下する。一方、該値が25m2/gを越えるものは、入手が困難であるうえ、単位水量が増大し、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等が低下することがある。
上記微粉末の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部である。配合量が5質量部未満では、硬化体の圧縮強度が低下するうえ、緻密性や耐衝撃性等も低下する。一方、配合量が50質量部を越えると、単位水量が増大し、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等が低下することがある。
【0015】
細骨材としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂等又はこれらの混合物が挙げられる。 本発明においては、細骨材としては、配合物の流動性や硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等から、最大粒径が2mm以下、より好ましくは1.5mm以下のものを用いることが好ましい。また、流動性や作業性等から、細骨材中の0.15mm未満の粒子の割合が5.0質量%以下であることが好ましい。
細骨材の配合量は、配合物の流動性や施工性、硬化体の強度の観点、さらには、自己収縮や乾燥収縮の低減、水和発熱量の低減等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは50〜250質量部、より好ましくは80〜180質量部である。
【0016】
水としては、水道水等を使用することができる。
本発明において、水/セメント比は、配合物の流動性や施工性、硬化体の強度、耐久性、緻密性や耐衝撃性等から、10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。
【0017】
減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することができる。なかでも、ポリカルボン酸系の高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することが好ましい。減水剤を配合することによって、配合物の流動性や施工性、硬化体の緻密性や強度等が向上する。
減水剤の配合量は、配合物の流動性や分離抵抗性、硬化体の緻密性や強度、コスト等の面から、セメント100質量部に対して固形分換算で0.1〜4.0質量部が好ましく、0.1〜2.0質量部がより好ましく、0.1〜1.0質量部が特に好ましい。
【0018】
本発明で使用するアラミド繊維は、直径0.02〜0.2mm(好ましくは0.03〜0.2mm、より好ましくは0.04〜0.2mm)、長さ1〜30mm(好ましくは3〜20mm、より好ましくは5〜16mm)のモノフィラメントタイプの繊維である。アラミド繊維の直径が0.02mm未満では、配合物の流動性や作業性が低下するうえ、硬化体の圧縮強度も低下する。一方、直径が0.2mmを越えるアラミド繊維をモノフィラメントタイプの繊維として入手することは困難である。また、直径が0.2mmを越える収束型のアラミド繊維を使用した場合では、同一配合量での本数が少なくなるので、曲げ強度や破壊エネルギーが低下することがある。アラミド繊維の長さが1mm未満では、入手が困難であるうえ、曲げ強度や破壊エネルギーが低下することがある。一方、長さが30mmを越えると、配合物の流動性や作業性が極端に低下するうえ、硬化体の圧縮強度も低下する。
アラミド繊維の配合量は、配合物の体積の0.5〜3.0%が好ましく、より好ましくは0.8〜2.0%である。配合量が配合物の体積の0.5%未満では、曲げ強度や破壊エネルギー、特に破壊エネルギーが低下することがある。一方、配合量が3.0%を越えると、配合物の流動性や作業性が極端に低下するうえ、コストも高くなる。
【0019】
本発明においては、配合物の流動性や作業性、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等から、アラミド繊維は含水率が5〜50質量%のものを使用するのが好ましく、10〜30質量%のものを使用するのがより好ましい。アラミド繊維の含水率が5質量%未満では、アラミド繊維がダマ状になったり、配合物の流動性や作業性が低下することがある。一方、含水率が50質量%を越えると、強度発現性が低下することがあり、また、硬化体の緻密性や耐衝撃性等が低下することがある。
なお、本発明において、アラミド繊維の含水率は、105℃で24時間加熱した際の質量減少量から算出される値である。
【0020】
本発明においては、配合物は、ブレーン比表面積が3500〜10000cm2/gの無機粉末を含有することができる。該無機粉末を含有することにより、配合物の流動性や硬化体の強度発現性、緻密性等を高めることができる。
無機粉末としては、スラグ、石灰石粉末、長石類、ムライト類、アルミナ粉末、石英粉末、フライアッシュ、火山灰、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末等が挙げられる。なかでも、スラグ、フライアッシュ、石灰石粉末、石英粉末は、コストの点や硬化体の品質安定性の点で好ましく用いられる。
無機粉末のブレーン比表面積は3500〜10000cm2/gが好ましく、4000〜9000cm2/gがより好ましく、5000〜9000cm2/gが特に好ましい。無機粉末のブレーン比表面積が3500cm2/g未満では、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等が低下するため好ましくない。一方、該値が10000cm2/gを越えると、流動性が低下したり、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等が低下することがある。さらに、この場合、コストも増大する。
無機粉末の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは55質量部以下、より好ましくは10〜50質量部である。配合量が55質量部を越えると、流動性が低下したり、硬化体の強度、緻密性や耐衝撃性等が低下することがある。
【0021】
本発明においては、配合物は、平均粒度が1mm以下の繊維状粒子又は薄片状粒子を含有することができる。ここで、粒子の粒度とは、その最大寸法の大きさ(特に、繊維状粒子ではその長さ)である。該繊維状粒子又は薄片状粒子を含有することにより、硬化後の靱性を高めることができる。
繊維状粒子としては、ウォラストナイト、ボーキサイト、ムライト等が、薄片状粒子としては、マイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。
繊維状粒子又は薄片状粒子の配合量は、配合物の流動性や施工性、硬化体の靱性等から、セメント100質量部に対して35質量部以下が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
なお、繊維状粒子においては、硬化体の靱性を高める観点から、長さ/直径の比で表される針状度が3以上のものを用いるのが好ましい。
【0022】
本発明においては、配合物の混練方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法を用いることができる。また、混練に用いる装置も特に限定されるものではなく、オムニミキサ、パン型ミキサ、二軸練りミキサ、傾胴ミキサ等が用いられる。
【0023】
上記混練した配合物を成形し、養生・硬化させることによって、本発明の埋設型枠用ボードを製造することができる。なお、成形方法は、特に限定されるものではなく、流し込み成形等の慣用の成形方法を採用することができる。また、養生方法も特に限定されるものではなく、常温養生や蒸気養生等を行なえばよい。
【0024】
本発明の埋設型枠用ボードは、セメント質硬化体からなり、(i)上記埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、高さが3mm以上である複数の凸部分又は深さが3mm以上である複数の凹部分を有し、(ii)上記凸部分の3mmの高さ又は凹部分の3mmの深さにおける切断面(但し、上記凸部分の高さが3mm又は上記凹部分の深さが3mmの場合は、表面積)の面積が、上記凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積に対して10〜80%であり、かつ、(iii)上記凸部分又は凹部分を有する片面の全表面積(S1)と、上記凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積(S2)との面積比(S1/S2)が1.2〜7.0である。
本発明の埋設型枠用ボードは、埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、特定の形状の凸部分又は凹部分を有することによって、埋設型枠用ボードの凸部分又は凹部分を有する片面と、後打ちコンクリートとの付着強度を1N/mm2以上に向上させることができ、せん断強度も1N/mm2以上に向上させることができる。
【0025】
上記凸部分又は凹部分は、本体部と同じ材料を用いて一体的に形成することができる。上記凸部分又は凹部分を形成する方法としては、例えば、特定の凹形状又は凸形状を、内部の底面に備えた型枠内に、上記本体部を構成する配合物を打設し硬化して、脱型することによって、セメント質硬化体の片面に凸部分又は凹部分を形成する方法が挙げられる。また、他の方法として、底面が平面である通常の型枠内に、配合物を打設した後、特定の凹形状又は凸形状を備えた押さえ型枠を、打設後の配合物の上面から押し付けて、セメント質硬化体の片面に凸部分又は凹部分を形成する方法が挙げられる。
【0026】
(i)埋設型枠用ボード1の片面4に形成される凸部分3の高さ又は凹部分の深さは、埋設型枠用ボード1の片面4(基準面)から、3mm以上であり、埋設型枠用ボードの強度やコスト等の観点から、好ましくは3〜10mm、より好ましくは4〜9mmである(図1参照)。
凸部分の高さ又は凹部分の深さが3mm未満では、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が低下し、1N/mm2以上の付着強度が得られ難い。また、1N/mm2以上のせん断強度も得られ難い。凸部分の高さ又は凹部分の深さが10mmを超えても、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力やせん断強度は、それほど向上しない。そればかりか、凸部分の高さが10mmを超えると、運搬や工事現場に設置の際に、凸部分に欠け等が生じやすくなる。また、凹部分の深さが10mmを超えると、埋設型枠用ボードの強度を保つために、部材(本体部)を厚くする必要があり、コスト高になる。
なお、付着強度が1N/mm2未満では、後打ちコンクリートの厚さにもよるが、後打ちコンクリートの剥離が生じる可能性があり、好ましくない。また、せん断強度が1N/mm2未満でも、後打ちコンクリートの剥離が生じる可能性があり、好ましくない。
【0027】
本発明の埋設型枠用ボードは、埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、複数の凸部分又は凹部分を有する。複数の凸部分又は凹部分が、埋設型枠用ボードの片面に、部分的に集中して形成されている場合や、一方に偏って形成されている場合は、埋設型枠用ボードの片面の凸部分又は凹部分が形成されていない部分(平面部分)と、後打ちコンクリートとの付着力が小さくなり、該部分における埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートの界面に剥離が生じやすくなるので、好ましくない。
なお、埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、複数の凸部分又は凹部分を有する形態とは、凸部分(又は凹部分)を有する片面を、100cm2(10cm×10cm)に区分けし、1つの区域における凸部分(又は凹部分)の個数と、他の1つの区域における凸部分(又は凹部分)の個数との差が、5個以内になるように、複数の凸部分(又は凹部分)が、埋設型枠用ボードの片面に形成されている形態をいう。上記凸部分(又は凹部分)は、埋設型枠用ボードの片面の全面に、等間隔で均等に形成することが好ましい。
【0028】
(ii)上記凸部分の3mmの高さ又は凹部分の3mmの深さにおける切断面(但し、上記凸部分の高さが3mm又は上記凹部分の深さが3mmの場合は、表面積)の面積が、上記凸部分又は凹部分を有する片面(全体)の投影面積に対して10〜80%であり、好ましくは20〜70%であり、より好ましくは30〜65%である。
上記数値が、10%未満では、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が低下し、1N/mm2以上の付着強度が得られ難い。また、1N/mm2以上のせん断強度も得られ難い。上記数値が80%を超えるものは、製造が困難であるうえに、凸部分又は凹部分を有する面に欠けやひび割れ等が生じやすくなる。
上記凸部分の3mmの高さ又は凹部分の3mmの深さにおける切断面とは、上記凸部分の高さが3mm以上又は凹部分の深さが3mm以上の場合に、各々の凸部分の3mmの高さ又は凹部分の3mmの深さにおける切断面の面積を合計した面積(Ca)をいう。また、上記凸部分の高さが3mmであり又は上記凹部分の深さが3mmである場合の表面積とは、各々の凸部分の3mmの高さ又は凹部分の3mmの深さにおける表面積を合計した面積(Sa)をいう。
なお、本明細書においては、便宜上、上記凸部分の3mmの高さ又は凹部分の3mmの深さにおける切断面(但し、上記凸部分の高さが3mm又は上記凹部分の深さが3mmの場合は、表面積)の面積(Ca又はSa)と、上記凸部分又は凹部分を有する片面(全体)の投影面積(S2)との比を断面積率(Ca/S2×100%、又は、Sa/S2×100%)と称する。
【0029】
(iii)上記凸部分又は凹部分を有する片面の全表面積(S1)と、上記凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積(S2)との面積比(S1/S2)が1.2〜7.0であり、好ましくは1.25〜6.0であり、より好ましくは1.3〜5.0である。面積比が1.2未満では、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が低下し、1N/mm2以上の付着強度が得られ難い。また、1N/mm2以上のせん断強度も得られ難い。面積比が7.0を超えるものは、製造が困難であるうえに、凸部分又は凹部分を有する面に欠けやひび割れ等が生じやすくなる。
なお、面積比とは、次の式のように算出される値である。
面積比=(凸部分又は凹部分を有する片面の全表面積;S1)/(凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積;S2)
なお、埋設型枠用ボードの凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積(S2)は、凸部分又は凹部分を有しない場合の埋設型枠用ボードの片面(全体)の面積と同一である。
【0030】
本発明において、埋設型枠用ボードが片面に凸部分を有するものである場合は、該凸部分は、直径が4〜25mmの円柱形状又は1辺の長さが4〜25mmの四角柱形状を有するものであることが好ましい。凸部分が、直径が4mm未満の円柱形状又は1辺の長さが4mm未満の四角柱形状を有するものであると、凸部分に欠けや割れ等が生じやすくなるので、好ましくない。一方、凸部分が、直径が25mmを超える円柱形状又は1辺の長さが25mmを超える四角柱形状を有するものであると、埋設型枠用ボードの面積比(S1/S2)が小さくなる場合があり、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が低下し、1N/mm2以上の付着強度が得られなくなる場合がある。
【0031】
本発明において、埋設型枠用ボードが片面に凹部分を有するものである場合は、該凹部分は、直径が5〜25mmの円柱形状又は1辺の長さが5〜25mmの四角柱形状を有するものであることが好ましい。凹部分が、直径が5mm未満の円柱形状又は1辺の長さが5mm未満の四角柱形状を有するものであると、後打ちコンクリートが凹部分に入り込むことが困難となり、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が低下し、1N/mm2以上の付着強度が得られ難い。また、1N/mm2以上のせん断強度も得られ難い。一方、凹部分が、直径が25mmを超える円柱形状又は1辺の長さが25mmを超える四角柱形状を有するものであると、埋設型枠用ボードの面積比(S1/S2)が小さくなる場合があり、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が低下し、1N/mm2以上の付着強度が得られなくなる場合がある。
【0032】
本発明において、上記凸部分同士又は凹部分同士の間隔は、好ましくは2mm以上であり、より好ましくは3mm以上であり、特に好ましくは4mm以上である。凸部分同士又は凹部分同士の間隔が2mm未満の場合は、製造が困難であるうえに、製造時や運搬時、工事現場への設置の際に、凸部分や凹部分に欠け等が生じやすくなる。
凸部分同士又は凹部分同士の間隔が大きすぎると、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が低下し、1N/mm2以上の付着強度が得られ難い。また、1N/mm2以上のせん断強度も得られ難いので、凸部分同士又は凹部分同士の間隔は、20mm以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、凸部分同士の間隔とは、凸部分3と凸部分3の間の空隙の距離d1(図2参照)をいう。また、凹部分同士の間隔とは、凹部分12と凹部分12の間の距離d2(図5参照)をいう。
【0033】
本発明の埋設型枠用ボードの寸法は、埋設型枠用ボード自体の強度や耐久性、さらには、製造や運搬、工事現場への設置等の手間を考慮して、縦0.3〜5.0m×横0.3〜5.0m×厚さ1〜7cmであることが好ましい。なお、ここで、埋設型枠用ボードの厚さとは、片面(基準面)に凸部分が形成されている場合は、該凸部分の頂部分の面から、該凸部分が形成されていない反対側の片面までの距離をいう。片面(基準面)に凹部分が形成されている場合は、該凹部分が形成されている片面(基準面)から、凹部分が形成されていない反対側の片面までの距離をいう。
【0034】
本発明の埋設型枠用ボードは、当該埋設型枠用ボードを固定するためのインサート孔を持つことができる。固定具をインサート孔に挿通して、法面や天井等に打ち付けることによって、埋設型枠用ボードをアーチ状、板状等の形状に容易に組み立てることができる。
【0035】
本発明で用いられるセメント、BET比表面積が3〜25m2/gの微粉末、細骨材、水、減水剤及び直径0.02〜0.2mmで長さ1〜30mmのモノフィラメントタイプのアラミド繊維を含む配合物は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行なわないで測定したフロー値が、200mm以上と流動性に優れるものであり、型枠への投入等の作業性に優れるものである。また、該配合物の硬化体は、180N/mm2以上、より好ましくは190N/mm2以上の圧縮強度を有するものである。よって、本発明の埋設型枠用ボード1は、極めて緻密で、表面処理等を行わなくても凍結融解抵抗性、耐摩耗性、非透水性等に非常に優れている。
【実施例】
【0036】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
1.使用材料
以下に示す材料を使用した。
(a)セメント:低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
(b)微粉末:シリカフューム(BET比表面積11m2/g)
(c)無機粉末:石英粉末(ブレーン比表面積7000cm2/g)
(d)細骨材:珪砂(粒径0.15〜0.6mm)
(e)減水剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤
(f)水:水道水
(g)アラミド繊維:直径:0.045mm、長さ:6mmのモノフィラメント繊維(含水率15質量%)
(h)ポリビニルアルコール繊維:直径:0.3mm、長さ:15mm
(i)鋼繊維:直径:0.2mm、長さ:15mm
【0037】
2.配合物の製造と評価1
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、細骨材120質量部、水22質量部、高性能減水剤0.4質量部(固形分換算)及びアラミド繊維(配合物の体積の1%)を二軸練りミキサに投入し、混練した。該配合物のフロー値を、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行なわないで測定した。その結果、フロー値は200mmであった。
また、前記配合物をφ50×100mmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)を得た。該硬化体の圧縮強度(3本の平均値)は182N/mm2であった。
また、前記配合物を4×4×16cmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)を得た。該硬化体の曲げ強度(3本の平均値)は29N/mm2であった。
また、上記曲げ強度試験において、荷重がひび割れ発生荷重に達してから、1/3に低下するまでの間の荷重−荷重点変位の積分値を供試体断面積で除した値として、破壊エネルギー算出した。なお、荷重点変位としては、曲げ試験機のクロスヘッド変位量を用いた。
該硬化体の破壊エネルギー(3本の平均値)は43kJ/m2であった。
また、前記配合物をφ50×100mmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)を得た。該硬化体の透水係数を「地盤工学会基準JGS 0231(土の透水試験法)」に準じて、変水位透水試験方法により測定した。その結果、水の浸透が全く認められず、浸透深さはゼロであった。
また、前記配合物を10×10×40cmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)を得た。該硬化体の凍結融解試験を、「JIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)付属書2(コンクリートの凍結融解試験)」に準じて測定した。その結果、耐久性指数(3本の平均値)は、99.8であった。
【0038】
3.配合物の製造と評価2
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末30質量部、細骨材120質量部、水22質量部、高性能減水剤0.4質量部(固形分換算)及びアラミド繊維(配合物の体積の1%)を二軸練りミキサに投入し、混練した。
配合物のフロー値、硬化体の圧縮強度、曲げ強度、破壊エネルギー、水の浸透深さ及び耐久性指数を、上記2と同様に測定した。
その結果、フロー値は212mm、圧縮強度は192N/mm2、曲げ強度は29N/mm2、破壊エネルギーは44kJ/m2、水の浸透深さはゼロ、耐久性指数は99.9であった。
【0039】
4.配合物の製造と評価3
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末30質量部、細骨材120質量部、水22質量部及び高性能減水剤0.4質量部(固形分換算)を二軸練りミキサに投入し、混練した。
配合物のフロー値、硬化体の圧縮強度、曲げ強度及び破壊エネルギーを、上記2と同様に測定した。
その結果、フロー値は270mm、圧縮強度は220N/mm2、曲げ強度は17N/mm2、破壊エネルギーは2kJ/m2であった。
【0040】
5.配合物の製造と評価4
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末30質量部、細骨材120質量部、水22質量部、高性能減水剤0.4質量部(固形分換算)及びポリビニルアルコール繊維(配合物の体積の3%)を二軸練りミキサに投入し、混練した。
配合物のフロー値、硬化体の圧縮強度、曲げ強度及び破壊エネルギーを、上記2と同様に測定した。
その結果、フロー値は260mm、圧縮強度は165N/mm2、曲げ強度は21N/mm2、破壊エネルギーは32kJ/m2であった。
【0041】
6.配合物の製造と評価5
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末30質量部、細骨材120質量部、水22質量部、高性能減水剤0.4質量部(固形分換算)及び鋼繊維(配合物の体積の2%)を二軸練りミキサに投入し、混練した。
配合物のフロー値、硬化体の圧縮強度、曲げ強度及び破壊エネルギーを、上記2と同様に測定した。
その結果、フロー値は270mm、圧縮強度は200N/mm2、曲げ強度は45N/mm2、破壊エネルギーは45kJ/m2であった。
【0042】
7.埋設型枠用ボードの評価1
7-1 埋設型枠用ボードの製造
上記3.で製造した配合物を、400mm×400mm×30mm(厚さ)の型枠であって、該型枠の内部の底面に、深さが6mmで、直径が7mmである凹形状を備えた型枠に流し込み、養生(20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生)し脱型して、片面4の全面に略均一に、高さが6mmで、直径が7mmである複数の凸部分3を有する埋設型枠用ボード1を製造した。なお、凸部分同士の間隔は4mm、断面積率は38.5%、面積比(S1/S2)は2.32であった。
【0043】
7-2 後打ちコンクリートの打設及び養生
上記埋設型枠用ボードの凸部分を有する片面に、表1に示す後打ちコンクリート(スランプ12cm、圧縮強度は32N/mm2(28日間水中養生))を打設した。
なお、後打ちコンクリートの使用材料は以下の通りである。
(1)セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
(2)細骨材:小笠産陸砂
(3)粗骨材:岩瀬産5号砕石と岩瀬産6号砕石の混合物(最大粒径20mm)
(4)減水剤;リグニンスルホン酸系AE減水剤
(5)AE剤;アルキルアリルスルホン化合物系陰イオン界面活性剤
(6)水 ;水道水
【0044】
【表1】

【0045】
7-3 せん断強度及び付着強度の測定(評価)
埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートからなる硬化体について、下記の方法でせん断強度及び付着強度を測定した。
(1)せん断強度の測定方法
上記硬化体のせん断強度を「JSCE−G 553−1983(鋼繊維補強コンクリートのせん断強度試験方法)」に準じて測定した。
(2)付着強度の試験方法
400mm×400mm×30mm(厚さ)の埋設型枠用ボードの突起体を有する片面を底面とした型枠内に、上記後打ちコンクリート用の配合物を流し込み、20℃で24時間湿空養生した後、脱型し、さらに28日間水中養生し、硬化させて、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリート(厚さ50mm)からなる試験体(硬化体)を得た。
図6に示すように、試験体20の一つ側端面21から80mm、200mm、320mmの位置に、埋設型枠用ボード20aの側から後打ちコンクリート20bの中まで、側端面21に対して平行に3本の切り込み線22,23,24を形成した。この3本の切り込み22,23,24に対して直交するように、上記側端面21と直交する一つの側端面25から80mm、200mm、320mmの位置に、さらに3本の切り込み線26,27,28を形成した。
図6(b)に示すように、上方に埋設型枠用ボード20a、下方に後打ちコンクリート20bが配置されるように試験体20を設置し、試験位置(図6(a)のA)に鋼製の上部引張用のアタッチメント30をエポキシ樹脂接着剤で貼り付け、該アタッチメントの上に重石を載せて、20℃の乾燥炉で試験体20を一日静置した。その後、上部引張用のアタッチメント30を介して載荷速度1.0kN/mm2で鉛直方向(図6(b)中の矢印方向)に引張載荷したときの最大荷重を求め、この数値を上部引張用のアタッチメント30の接着面積で除して付着強度とした。
その結果、せん断強度は2.6N/mm2、付着強度は1.3N/mm2であった。
【0046】
8.埋設型枠用ボードの評価2
8-1 埋設型枠用ボードの製造
上記3.で製造した配合物を、400mm×400mm×30mm(厚さ)の型枠であって、型枠の底面に、高さが10mmで、直径が5mmである複数の凸形状を備えた型枠に流し込み、片面の全面に略均一に、深さが10mmで、直径が5mmである複数の凹部分を有する埋設型枠用ボードを製造した。なお、凹部分同士の間隔は2.1mm、断面積率は40.0%、面積比(S1/S2)は4.20であった。
【0047】
8-2 後打ちコンクリートの打設、養生及び評価
上記7.と同様にして、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートからなる硬化体を製造した。該硬化体のせん断強度を上記7.と同様に測定した。
その結果、せん断強度は1.3N/mm2であった。
【0048】
9.埋設型枠用ボードの評価3
上記5.で製造した配合物を使用して、上記7.と同様にして埋設型枠用ボードを製造した。上記7.と同様にして、該埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートからなる硬化体を製造した。該硬化体のせん断強度と付着強度を上記7.と同様に測定した。
その結果、せん断強度は1.9N/mm2、付着強度は1.1N/mm2であった。
【0049】
10.埋設型枠用ボードの評価4
上記6.で製造した配合物を使用して、上記7.と同様にして埋設型枠用ボードを製造した。上記7.と同様にして、該埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートからなる硬化体を製造した。該硬化体のせん断強度と付着強度を上記7.と同様に測定した。
その結果、せん断強度は2.8N/mm2、付着強度は1.4N/mm2であった。
【符号の説明】
【0050】
1 埋設型枠用ボード
2 本体部
3 凸部分
4 埋設型枠用ボードの片面(基準面)
5 コンクリート構造体
6 後打ちコンクリート
10 埋設型枠用ボード
11 本体部
12 凹部分
13 埋設型枠用ボードの片面(基準面)
20 試験体
20a 埋設型枠用ボード
20b 後打ちコンクリート
21 試験体の一側端面
22,23,24 切り込み線
25 試験体の一側端面
26,27,28 切り込み線
30 上部引張用のアタッチメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、BET比表面積が3〜25m2/gの微粉末、細骨材、水、減水剤及び直径0.02〜0.2mmで長さ1〜30mmのモノフィラメントタイプのアラミド繊維を含む配合物の硬化体からなる埋設型枠用ボードであって、
(i)上記埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、高さが3mm以上である複数の凸部分又は深さが3mm以上である複数の凹部分を有し、
(ii)上記凸部分の3mmの高さ又は凹部分の3mmの深さにおける切断面(但し、上記凸部分の高さが3mm又は上記凹部分の深さが3mmの場合は、表面積)の面積が、上記凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積に対して10〜80%であり、かつ、
(iii)上記凸部分又は凹部分を有する片面の全表面積(S1)と、上記凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積(S2)との面積比(S1/S2)が1.2〜7.0であることを特徴とする埋設型枠用ボード。
【請求項2】
上記凸部分は、直径が4〜25mmの円柱形状又は1辺の長さが4〜25mmの四角柱形状を有する請求項1記載の埋設型枠用ボード。
【請求項3】
上記凹部分は、直径が5〜25mmの円柱形状又は1辺の長さが5〜25mmの四角柱形状を有する請求項1記載の埋設型枠用ボード。
【請求項4】
上記凸部分同士又は凹部分同士の間隔が2mm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の埋設型枠用ボード。
【請求項5】
配合物が、ブレーン比表面積3500〜10000cm2/gの無機粉末を含む請求項1〜4のいずれかに記載の埋設型枠用ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−26849(P2011−26849A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173864(P2009−173864)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)