培養容器用アダプタ
【課題】培養容器をより安定的に搬送する。
【解決手段】アダプタ11には、ウェルプレートの寸法と同様の長さの長辺および短辺からなる略長方形の形状をした板状部材の長辺となる両側面の中央近傍において外側に向かって突出するように、その先端面が直線状に形成されたウイング部14−1および14−2が設けられている。また、ディッシュ12が取り付けられる面の中央に、ディッシュ12の形状に応じてマーキング13が標記されている。本発明は、例えば、100mmディッシュ用のアダプタに適用できる。
【解決手段】アダプタ11には、ウェルプレートの寸法と同様の長さの長辺および短辺からなる略長方形の形状をした板状部材の長辺となる両側面の中央近傍において外側に向かって突出するように、その先端面が直線状に形成されたウイング部14−1および14−2が設けられている。また、ディッシュ12が取り付けられる面の中央に、ディッシュ12の形状に応じてマーキング13が標記されている。本発明は、例えば、100mmディッシュ用のアダプタに適用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養容器をより安定的に搬送することができるようにした培養容器用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞培養に対する重要度は、再生医療の早期実現のための研究や、動物実験の規制などによって、より一層増加している。細胞培養を行うには、培地交換や継代などを定期的に行う必要があり、取り扱う容器の数が多い場合、実験者にとって大きな負担となる。そこで、実験者の負担を軽減するために、ラボラトリオートメーションによる自動化が導入されている。
【0003】
ところで、細胞培養に用いる培養容器には、様々な直径のディッシュや、それぞれ異なる個数の複数の穴が設けられたウェルプレートなど、様々な形状のものが存在する。例えば、ディッシュとしては、直径100mm、60mm、または35mmのものがあり、ウェルプレートとしては、6穴、12穴、24穴、48穴、または96穴のものがある。
【0004】
一般的に、ウェルプレートについては、搬送ロボットによる搬送を想定して容器サイズの規格化が行われているのに対し、ディッシュについての規格は明確ではなく、ディッシュのサイズはメーカによって微妙に異なっている。そのため、ディッシュは搬送ロボットによる搬送が困難であり、現在、自動化に対応可能な容器はウェルプレートに限られている。
【0005】
これに対し、実験者は、より広い培養面積を確保でき、かつ、低コストの100mmディッシュを使用することが多く、100mmディッシュを使用した培養の自動化が望まれている。
【0006】
例えば、特許文献1には、多種多様な培養容器を搬送できる容器搬送装置を備えた培養装置が開示されている。しかしながら、上述したように、ディッシュの形状はメーカによって微妙に異なっており、形状が規格化されているウェルプレートのように、より安定的に搬送できる手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−095297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、細胞培養の自動化において、培養容器を安定的に搬送することが困難なことがあった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、培養容器をより安定的に搬送することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の培養容器用アダプタは、培養容器に取り付けられる培養容器用アダプタであって、所定の長さの長辺および短辺からなる略長方形の形状をした板状部材と、前記板状部材の長辺となる両側面の中央近傍において外側に向かって突出し、その先端面が直線状に形成された把持部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の培養容器用アダプタにおいては、所定の長さの長辺および短辺からなる略長方形の形状をした板状部材の長辺となる両側面の中央近傍において外側に向かって突出し、その先端面が直線状に形成された把持部が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の培養容器用アダプタによれば、培養容器をより安定的に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用したアダプタの一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】サイドクランプ型の搬送ロボットがアダプタを把持している状態を示す図である。
【図3】シャベル状のアームで掬い取る機構を採用している搬送ロボットがアダプタを把持している状態を示す図である。
【図4】アダプタが、自動観察システムの顕微鏡ステージに載置されている状態を示す図である。
【図5】アダプタの第1の変形例を示す図である。
【図6】アダプタの第2の変形例を示す図である。
【図7】アダプタの第3の変形例を示す図である。
【図8】サイドクランプ型の搬送ロボットがアダプタを把持している状態を示す図である。
【図9】アダプタの第4の変形例を示す図である。
【図10】アダプタの第5の変形例を示す図である。
【図11】第5の変形例のアダプタの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用したアダプタの一実施の形態の構成例を示す図である。
【0016】
図1Aには、アダプタ11の平面図が示されており、図1Bには、アダプタ11の側面図が示されており、図1Cには、ディッシュ12が載置された状態の側面図が示されている。
【0017】
図1に示すように、アダプタ11は、平面的に見て略長方形の形状をした板状の部材であり、その長辺および短辺の長さが、ウェルプレートの寸法と略同一となるように形成されている。
【0018】
例えば、ウェルプレートは、SBS(Society of Biomolecular Screening)において規格化されており、アダプタ11の長辺の長さWと、アダプタ11の短辺の長さH1とは、その規格に準拠した寸法となっている。具体的には、アダプタ11の外径寸法は、例えば、長辺の長さWが約140mmとされ、短辺の長さH1が約950mmとされている。また、アダプタ11の厚みDは、約4mmとされている。
【0019】
また、アダプタ11の表面側の中央には、アダプタ11に載置されるディッシュ12の外径に応じた円形のマーキング13が標記されている。マーキング13は、ユーザがアダプタ11にディッシュ12を固定する際の指標となるマークである。例えば、ユーザは、マーキング13と一致するように、またはマーキング13と同心円となるように両面テープなどを利用して、アダプタ11の中央にディッシュ12を固定する。
【0020】
さらに、アダプタ11の長辺となる両側面には、その中央付近において外側に突出するような形状のウイング部14−1および14−2が形成されている。ウイング部14−1および14−2は、例えば、サイドクランプ型の搬送ロボットによりアダプタ11を搬送する際に、アダプタ11を把持するための把持部である。
【0021】
ウイング部14−1および14−2は、アダプタ11から外側に向かうに従ってアダプタ11の長辺方向の間隔が狭くなり、かつ、突出した先端が直線状に形成された略台形の形状となるように形成されている。ウイング部14−1および14−2の先端どうしの間隔H2は、約110mmとされている。つまり、ウイング部14−1および14−2は、例えば、直径が100mmのディッシュ12がアダプタ11に載置された際に、平面的に見て、ディッシュ12がアダプタ11の外側にはみ出ることがないような形状とされている。
【0022】
このようなアダプタ11にディッシュ12を固定することにより、搬送ロボットにより安定的にディッシュ12を搬送することができる。
【0023】
例えば、図2には、サイドクランプ型の搬送ロボットが、ディッシュ12が固定されているアダプタ11を把持している状態が示されている。図2Aには、平面図が示されており、図2Bには、側面図が示されている。
【0024】
図2に示すように、搬送ロボットのアーム部21および22は、アダプタ11の両側(図2では上側および下側)から、アダプタ11のウイング部14−1および14−2の先端部の直線部分を挟み込むように把持する。このように、ウイング部14−1および14−2が設けられたアダプタ11を利用することにより、アーム部21および22が円盤状のディッシュ12を直接的に把持して搬送するのに比較して、ディッシュ12を安定的に搬送することができる。
【0025】
また、図3には、シャベル状のアームで掬い取る機構を採用している搬送ロボットが、ディッシュ12が固定されているアダプタ11を掬い上げている状態が示されている。図3Aには、平面図が示されており、図3Bには、側面図が示されている。
【0026】
図3に示すように、搬送ロボットのシャベル部31には、その先端部(図3の右側の端部)と基端部とにおいて上側に凸となる傾斜部が設けられており、それらの傾斜部の間隔が、アダプタ11の長辺の長さWと略一致している。即ち、シャベル部31の傾斜部の間にアダプタ11が載置される。これにより、シャベル部31がディッシュ12を搬送する際に、より安定的に搬送することができる。例えば、ディッシュ12が単体でシャベル部31に載置される場合には、シャベル部31の長手方向(図3の左右方向)にディッシュ12がずれる恐れがあるが、アダプタ11がシャベル部31の傾斜部の間に載置される場合には、シャベル部31の長手方向にアダプタ11がずれることが防止される。従って、安定的にディッシュ12を搬送することができる。
【0027】
また、図4には、ディッシュ12を固定したアダプタ11が、自動観察システムの顕微鏡ステージに載置されている状態が示されている。
【0028】
図4に示されているステージ41は、図3に示したシャベル部31を有する搬送ロボットが採用された自動観察システムにおける構成例であり、図4の左側に向かって開口部を有するようにコ字状に形成されている。即ち、図4の左側から、シャベル部31がアダプタ11の下側に挿入可能なようにステージ41が形成されている。
【0029】
ステージ41の上面には、アダプタ11を位置決めするための固定ピン42−1乃至42−4が設けられている。固定ピン42−1および42−2は、アダプタ11の短辺と当接してステージ41に対する左右方向の位置決めをし、固定ピン42−3および42−4は、アダプタ11の長辺と当接してステージ41に対する上下方向の位置決めをする。これにより、再現性良く位置決めすることができる。
【0030】
また、固定ピン42−1乃至42−4は、アダプタ11の角の近傍に当接するように配置されている。つまり、固定ピン42−3および42−4は、アダプタ11の長辺の中央近傍に設けられているウイング部14−2以外の箇所に当接するように配置されている。上述したように、アダプタ11の長辺および短辺の長さは、ウェルプレートの寸法と略同一となるように形成されているので、ウェルプレートに特化した自動観察システムで、ウェルプレートと同様に、アダプタ11に固定されたディッシュ12を運用することができる。即ち、アダプタ11を使用することにより、ウェルプレートに特化した自動観察システムでも、ウェルプレートとディッシュ12とを共用することができる。
【0031】
なお、アダプタ11の中央部分には、顕微鏡観察が可能なように開口部(図示せず)が形成されており、ディッシュ12をアダプタ11に固定した状態で顕微鏡による観察を行うことができる。
【0032】
また、アダプタ11にディッシュ12を固定する際の指標は、図1に示したようなマーキング13に限られるものではない。図5および図6に、アダプタの第1および第2の変形例を示す。
【0033】
図5には、第1の変形例であるアダプタ11Aが示されている。図5Aは、アダプタ11Aの平面図であり、図5Bは、アダプタ11Aの側面図である。
【0034】
図5に示されているアダプタ11Aには、島出し加工により突出するように加工された円形の凸領域51が、ディッシュ12を固定する際の指標として設けられている。
【0035】
図6には、第2の変形例であるアダプタ11Bが示されている。図6Aは、アダプタ11Bの平面図であり、図6Bは、矢印A−Aから見たアダプタ11Bの断面図である。
【0036】
図6に示されているアダプタ11Bには、掘り込み加工により窪むように加工された円形の凹領域52が、ディッシュ12を固定する際の指標として設けられている。
【0037】
図5および図6に示すように、ディッシュ12の外径に応じた円形の凸領域51および凹領域52を、ユーザがアダプタ11にディッシュ12を固定する際の指標として設けてもよい。
【0038】
図7には、第3の変形例であるアダプタ11Cが示されている。
【0039】
図7に示すように、アダプタ11Cは、追加ウイング部61−1乃至61−4を取り付け可能とされている。
【0040】
追加ウイング部61−1および61−2は、ウイング部14−1の両側に取り付けられ、ウイング部14−1の先端の直線部分を、アダプタ11の長辺方向に沿って拡大する。また、追加ウイング部61−3および61−4は、ウイング部14−2の両側に取り付けられ、ウイング部14−2の先端の直線部分を、アダプタ11の長辺方向に沿って拡大する。即ち、追加ウイング部61−1乃至61−4により、サイドクランプ型の搬送ロボットが把持する部分が拡大される。
【0041】
図8には、サイドクランプ型の搬送ロボットが、ディッシュ12が固定されているアダプタ11Cを把持している状態が示されている。
【0042】
図8に示されている搬送ロボットのアーム部21’および22’は、図2のアーム部21および22よりも大きな構成となっている。そして、ウイング部14−1の両側に取り付けられた追加ウイング部61−1および61−2にアーム部21’が当接し、ウイング部14−2の両側に取り付けられた追加ウイング部61−3および61−4にアーム部22’が当接することで、アダプタ11Cが挟み込まれ把持される。
【0043】
このように、追加ウイング部61−1乃至61−4を取り付け可能とすることにより、搬送ロボットのアームの大きさや形状などに合わせて、追加ウイング部61−1乃至61−4を交換することで、より安定的にアダプタ11Cを把持することができるようになる。
【0044】
ところで、アダプタ11にディッシュ12を固定する方法としては、上述したような両面テープなどを利用する他、例えば、ディッシュ12を保持するための保持部品をアダプタ11に設けてもよい。
【0045】
図9には、第4の変形例であるアダプタ11Dが示されている。
【0046】
アダプタ11Dでは、付勢部81、可動アーム82、および2つの固定ピン83−1および83−2が、ディッシュ12が載置される面に設けられている。
【0047】
アダプタ11Dにおいては、付勢部81が、内蔵するスプリングなどにより、可動アーム82を固定ピン83−1および83−2の方向(図9の左方向)に向かって付勢している。そして、可動アーム82と固定ピン83−1および83−2との間にディッシュ12(図9の円形の二点差線)が載置されると、付勢部81の付勢力により可動アーム82がディッシュ12の側面を押し付けることで、可動アーム82と固定ピン83−1および83−2とが、それぞれディッシュ12に対して点で押圧し、ディッシュ12を保持する。
【0048】
このように、付勢部81および可動アーム82による付勢力を利用してディッシュ12を保持することで、ディッシュ12の取り替えを容易に行うことができる。
【0049】
図10には、第5の変形例であるアダプタ11Eが示されている。
【0050】
アダプタ11Eでは、付勢部81、可動アーム82、および2つの駒84−1および84−2が、ディッシュ12が載置される面に設けられている。
【0051】
駒84−1および84−2の4側面には、それぞれ異なる曲率の凹曲面が形成されているとともに、駒84−1および84−2は、それぞれの中心を軸に回転可能とされている。即ち、駒84−1および84−2を回転させることで、アダプタ11Eに載置されるディッシュ12の直径に応じた曲率の凹曲面が、ディッシュ12が載置される側に向くように調整される。
【0052】
さらに、駒84−1および84−2は、アダプタ11Eの中心に対してオフセット可能とされている。即ち、駒84−1および84−2をオフセットさせることで、アダプタ11Eに載置されるディッシュ12が、アダプタ11Eの中心に一致するように調整することができる。
【0053】
このような駒84−1および84−2を利用することで、例えば、直径が100mmとされているディッシュ12であっても、メーカごとに微妙に形状が異なる場合に、それぞれのディッシュ12の形状に合わせて調整することで、ディッシュ12をアダプタ11Eの中心に確実に保持することができる。
【0054】
なお、駒84−1および84−2のように回転させることにより曲面が変更されるような構成の他、それぞれ異なる曲面の駒を交換可能となるように構成されていてもよい。また、駒84−1および84−2の曲面は、ディッシュ12に対する保持力を高めるような表面処理(例えば、ローレット加工)を施すことにより、ディッシュ12の搬送時や培養操作時などにおけるディッシュ12のズレを抑制することができきる。
【0055】
さらに、例えば、付勢部81の外側を向く側面に、ディッシュ12を識別するためのバーコードシール(識別情報)を貼付することができる。
【0056】
図11には、アダプタ11Eの他の構成例が示されている。
【0057】
図11に示すように、アダプタ11E’では、付勢部81の外側を向く側面に、バーコードシール85が貼付されている。このようなバーコードシール85により、自動観察システムで一般的に採用されているバーコードによるディッシュ12の管理を行うことができる。
【0058】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
11 アダプタ, 12 ディッシュ, 13 マーキング, 14−1および14−2 ウイング部, 21および22 アーム部, 31 シャベル部, 41 ステージ, 42−1乃至42−4 固定ピン, 51 凸領域, 52 凹領域, 61−1乃至61−4 追加ウイング部, 81 付勢部, 82 可動アーム, 83−1および83−2 固定ピン, 84−1および84−2 駒, 85 バーコードシール
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養容器をより安定的に搬送することができるようにした培養容器用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞培養に対する重要度は、再生医療の早期実現のための研究や、動物実験の規制などによって、より一層増加している。細胞培養を行うには、培地交換や継代などを定期的に行う必要があり、取り扱う容器の数が多い場合、実験者にとって大きな負担となる。そこで、実験者の負担を軽減するために、ラボラトリオートメーションによる自動化が導入されている。
【0003】
ところで、細胞培養に用いる培養容器には、様々な直径のディッシュや、それぞれ異なる個数の複数の穴が設けられたウェルプレートなど、様々な形状のものが存在する。例えば、ディッシュとしては、直径100mm、60mm、または35mmのものがあり、ウェルプレートとしては、6穴、12穴、24穴、48穴、または96穴のものがある。
【0004】
一般的に、ウェルプレートについては、搬送ロボットによる搬送を想定して容器サイズの規格化が行われているのに対し、ディッシュについての規格は明確ではなく、ディッシュのサイズはメーカによって微妙に異なっている。そのため、ディッシュは搬送ロボットによる搬送が困難であり、現在、自動化に対応可能な容器はウェルプレートに限られている。
【0005】
これに対し、実験者は、より広い培養面積を確保でき、かつ、低コストの100mmディッシュを使用することが多く、100mmディッシュを使用した培養の自動化が望まれている。
【0006】
例えば、特許文献1には、多種多様な培養容器を搬送できる容器搬送装置を備えた培養装置が開示されている。しかしながら、上述したように、ディッシュの形状はメーカによって微妙に異なっており、形状が規格化されているウェルプレートのように、より安定的に搬送できる手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−095297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、細胞培養の自動化において、培養容器を安定的に搬送することが困難なことがあった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、培養容器をより安定的に搬送することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の培養容器用アダプタは、培養容器に取り付けられる培養容器用アダプタであって、所定の長さの長辺および短辺からなる略長方形の形状をした板状部材と、前記板状部材の長辺となる両側面の中央近傍において外側に向かって突出し、その先端面が直線状に形成された把持部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の培養容器用アダプタにおいては、所定の長さの長辺および短辺からなる略長方形の形状をした板状部材の長辺となる両側面の中央近傍において外側に向かって突出し、その先端面が直線状に形成された把持部が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の培養容器用アダプタによれば、培養容器をより安定的に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用したアダプタの一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】サイドクランプ型の搬送ロボットがアダプタを把持している状態を示す図である。
【図3】シャベル状のアームで掬い取る機構を採用している搬送ロボットがアダプタを把持している状態を示す図である。
【図4】アダプタが、自動観察システムの顕微鏡ステージに載置されている状態を示す図である。
【図5】アダプタの第1の変形例を示す図である。
【図6】アダプタの第2の変形例を示す図である。
【図7】アダプタの第3の変形例を示す図である。
【図8】サイドクランプ型の搬送ロボットがアダプタを把持している状態を示す図である。
【図9】アダプタの第4の変形例を示す図である。
【図10】アダプタの第5の変形例を示す図である。
【図11】第5の変形例のアダプタの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用したアダプタの一実施の形態の構成例を示す図である。
【0016】
図1Aには、アダプタ11の平面図が示されており、図1Bには、アダプタ11の側面図が示されており、図1Cには、ディッシュ12が載置された状態の側面図が示されている。
【0017】
図1に示すように、アダプタ11は、平面的に見て略長方形の形状をした板状の部材であり、その長辺および短辺の長さが、ウェルプレートの寸法と略同一となるように形成されている。
【0018】
例えば、ウェルプレートは、SBS(Society of Biomolecular Screening)において規格化されており、アダプタ11の長辺の長さWと、アダプタ11の短辺の長さH1とは、その規格に準拠した寸法となっている。具体的には、アダプタ11の外径寸法は、例えば、長辺の長さWが約140mmとされ、短辺の長さH1が約950mmとされている。また、アダプタ11の厚みDは、約4mmとされている。
【0019】
また、アダプタ11の表面側の中央には、アダプタ11に載置されるディッシュ12の外径に応じた円形のマーキング13が標記されている。マーキング13は、ユーザがアダプタ11にディッシュ12を固定する際の指標となるマークである。例えば、ユーザは、マーキング13と一致するように、またはマーキング13と同心円となるように両面テープなどを利用して、アダプタ11の中央にディッシュ12を固定する。
【0020】
さらに、アダプタ11の長辺となる両側面には、その中央付近において外側に突出するような形状のウイング部14−1および14−2が形成されている。ウイング部14−1および14−2は、例えば、サイドクランプ型の搬送ロボットによりアダプタ11を搬送する際に、アダプタ11を把持するための把持部である。
【0021】
ウイング部14−1および14−2は、アダプタ11から外側に向かうに従ってアダプタ11の長辺方向の間隔が狭くなり、かつ、突出した先端が直線状に形成された略台形の形状となるように形成されている。ウイング部14−1および14−2の先端どうしの間隔H2は、約110mmとされている。つまり、ウイング部14−1および14−2は、例えば、直径が100mmのディッシュ12がアダプタ11に載置された際に、平面的に見て、ディッシュ12がアダプタ11の外側にはみ出ることがないような形状とされている。
【0022】
このようなアダプタ11にディッシュ12を固定することにより、搬送ロボットにより安定的にディッシュ12を搬送することができる。
【0023】
例えば、図2には、サイドクランプ型の搬送ロボットが、ディッシュ12が固定されているアダプタ11を把持している状態が示されている。図2Aには、平面図が示されており、図2Bには、側面図が示されている。
【0024】
図2に示すように、搬送ロボットのアーム部21および22は、アダプタ11の両側(図2では上側および下側)から、アダプタ11のウイング部14−1および14−2の先端部の直線部分を挟み込むように把持する。このように、ウイング部14−1および14−2が設けられたアダプタ11を利用することにより、アーム部21および22が円盤状のディッシュ12を直接的に把持して搬送するのに比較して、ディッシュ12を安定的に搬送することができる。
【0025】
また、図3には、シャベル状のアームで掬い取る機構を採用している搬送ロボットが、ディッシュ12が固定されているアダプタ11を掬い上げている状態が示されている。図3Aには、平面図が示されており、図3Bには、側面図が示されている。
【0026】
図3に示すように、搬送ロボットのシャベル部31には、その先端部(図3の右側の端部)と基端部とにおいて上側に凸となる傾斜部が設けられており、それらの傾斜部の間隔が、アダプタ11の長辺の長さWと略一致している。即ち、シャベル部31の傾斜部の間にアダプタ11が載置される。これにより、シャベル部31がディッシュ12を搬送する際に、より安定的に搬送することができる。例えば、ディッシュ12が単体でシャベル部31に載置される場合には、シャベル部31の長手方向(図3の左右方向)にディッシュ12がずれる恐れがあるが、アダプタ11がシャベル部31の傾斜部の間に載置される場合には、シャベル部31の長手方向にアダプタ11がずれることが防止される。従って、安定的にディッシュ12を搬送することができる。
【0027】
また、図4には、ディッシュ12を固定したアダプタ11が、自動観察システムの顕微鏡ステージに載置されている状態が示されている。
【0028】
図4に示されているステージ41は、図3に示したシャベル部31を有する搬送ロボットが採用された自動観察システムにおける構成例であり、図4の左側に向かって開口部を有するようにコ字状に形成されている。即ち、図4の左側から、シャベル部31がアダプタ11の下側に挿入可能なようにステージ41が形成されている。
【0029】
ステージ41の上面には、アダプタ11を位置決めするための固定ピン42−1乃至42−4が設けられている。固定ピン42−1および42−2は、アダプタ11の短辺と当接してステージ41に対する左右方向の位置決めをし、固定ピン42−3および42−4は、アダプタ11の長辺と当接してステージ41に対する上下方向の位置決めをする。これにより、再現性良く位置決めすることができる。
【0030】
また、固定ピン42−1乃至42−4は、アダプタ11の角の近傍に当接するように配置されている。つまり、固定ピン42−3および42−4は、アダプタ11の長辺の中央近傍に設けられているウイング部14−2以外の箇所に当接するように配置されている。上述したように、アダプタ11の長辺および短辺の長さは、ウェルプレートの寸法と略同一となるように形成されているので、ウェルプレートに特化した自動観察システムで、ウェルプレートと同様に、アダプタ11に固定されたディッシュ12を運用することができる。即ち、アダプタ11を使用することにより、ウェルプレートに特化した自動観察システムでも、ウェルプレートとディッシュ12とを共用することができる。
【0031】
なお、アダプタ11の中央部分には、顕微鏡観察が可能なように開口部(図示せず)が形成されており、ディッシュ12をアダプタ11に固定した状態で顕微鏡による観察を行うことができる。
【0032】
また、アダプタ11にディッシュ12を固定する際の指標は、図1に示したようなマーキング13に限られるものではない。図5および図6に、アダプタの第1および第2の変形例を示す。
【0033】
図5には、第1の変形例であるアダプタ11Aが示されている。図5Aは、アダプタ11Aの平面図であり、図5Bは、アダプタ11Aの側面図である。
【0034】
図5に示されているアダプタ11Aには、島出し加工により突出するように加工された円形の凸領域51が、ディッシュ12を固定する際の指標として設けられている。
【0035】
図6には、第2の変形例であるアダプタ11Bが示されている。図6Aは、アダプタ11Bの平面図であり、図6Bは、矢印A−Aから見たアダプタ11Bの断面図である。
【0036】
図6に示されているアダプタ11Bには、掘り込み加工により窪むように加工された円形の凹領域52が、ディッシュ12を固定する際の指標として設けられている。
【0037】
図5および図6に示すように、ディッシュ12の外径に応じた円形の凸領域51および凹領域52を、ユーザがアダプタ11にディッシュ12を固定する際の指標として設けてもよい。
【0038】
図7には、第3の変形例であるアダプタ11Cが示されている。
【0039】
図7に示すように、アダプタ11Cは、追加ウイング部61−1乃至61−4を取り付け可能とされている。
【0040】
追加ウイング部61−1および61−2は、ウイング部14−1の両側に取り付けられ、ウイング部14−1の先端の直線部分を、アダプタ11の長辺方向に沿って拡大する。また、追加ウイング部61−3および61−4は、ウイング部14−2の両側に取り付けられ、ウイング部14−2の先端の直線部分を、アダプタ11の長辺方向に沿って拡大する。即ち、追加ウイング部61−1乃至61−4により、サイドクランプ型の搬送ロボットが把持する部分が拡大される。
【0041】
図8には、サイドクランプ型の搬送ロボットが、ディッシュ12が固定されているアダプタ11Cを把持している状態が示されている。
【0042】
図8に示されている搬送ロボットのアーム部21’および22’は、図2のアーム部21および22よりも大きな構成となっている。そして、ウイング部14−1の両側に取り付けられた追加ウイング部61−1および61−2にアーム部21’が当接し、ウイング部14−2の両側に取り付けられた追加ウイング部61−3および61−4にアーム部22’が当接することで、アダプタ11Cが挟み込まれ把持される。
【0043】
このように、追加ウイング部61−1乃至61−4を取り付け可能とすることにより、搬送ロボットのアームの大きさや形状などに合わせて、追加ウイング部61−1乃至61−4を交換することで、より安定的にアダプタ11Cを把持することができるようになる。
【0044】
ところで、アダプタ11にディッシュ12を固定する方法としては、上述したような両面テープなどを利用する他、例えば、ディッシュ12を保持するための保持部品をアダプタ11に設けてもよい。
【0045】
図9には、第4の変形例であるアダプタ11Dが示されている。
【0046】
アダプタ11Dでは、付勢部81、可動アーム82、および2つの固定ピン83−1および83−2が、ディッシュ12が載置される面に設けられている。
【0047】
アダプタ11Dにおいては、付勢部81が、内蔵するスプリングなどにより、可動アーム82を固定ピン83−1および83−2の方向(図9の左方向)に向かって付勢している。そして、可動アーム82と固定ピン83−1および83−2との間にディッシュ12(図9の円形の二点差線)が載置されると、付勢部81の付勢力により可動アーム82がディッシュ12の側面を押し付けることで、可動アーム82と固定ピン83−1および83−2とが、それぞれディッシュ12に対して点で押圧し、ディッシュ12を保持する。
【0048】
このように、付勢部81および可動アーム82による付勢力を利用してディッシュ12を保持することで、ディッシュ12の取り替えを容易に行うことができる。
【0049】
図10には、第5の変形例であるアダプタ11Eが示されている。
【0050】
アダプタ11Eでは、付勢部81、可動アーム82、および2つの駒84−1および84−2が、ディッシュ12が載置される面に設けられている。
【0051】
駒84−1および84−2の4側面には、それぞれ異なる曲率の凹曲面が形成されているとともに、駒84−1および84−2は、それぞれの中心を軸に回転可能とされている。即ち、駒84−1および84−2を回転させることで、アダプタ11Eに載置されるディッシュ12の直径に応じた曲率の凹曲面が、ディッシュ12が載置される側に向くように調整される。
【0052】
さらに、駒84−1および84−2は、アダプタ11Eの中心に対してオフセット可能とされている。即ち、駒84−1および84−2をオフセットさせることで、アダプタ11Eに載置されるディッシュ12が、アダプタ11Eの中心に一致するように調整することができる。
【0053】
このような駒84−1および84−2を利用することで、例えば、直径が100mmとされているディッシュ12であっても、メーカごとに微妙に形状が異なる場合に、それぞれのディッシュ12の形状に合わせて調整することで、ディッシュ12をアダプタ11Eの中心に確実に保持することができる。
【0054】
なお、駒84−1および84−2のように回転させることにより曲面が変更されるような構成の他、それぞれ異なる曲面の駒を交換可能となるように構成されていてもよい。また、駒84−1および84−2の曲面は、ディッシュ12に対する保持力を高めるような表面処理(例えば、ローレット加工)を施すことにより、ディッシュ12の搬送時や培養操作時などにおけるディッシュ12のズレを抑制することができきる。
【0055】
さらに、例えば、付勢部81の外側を向く側面に、ディッシュ12を識別するためのバーコードシール(識別情報)を貼付することができる。
【0056】
図11には、アダプタ11Eの他の構成例が示されている。
【0057】
図11に示すように、アダプタ11E’では、付勢部81の外側を向く側面に、バーコードシール85が貼付されている。このようなバーコードシール85により、自動観察システムで一般的に採用されているバーコードによるディッシュ12の管理を行うことができる。
【0058】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
11 アダプタ, 12 ディッシュ, 13 マーキング, 14−1および14−2 ウイング部, 21および22 アーム部, 31 シャベル部, 41 ステージ, 42−1乃至42−4 固定ピン, 51 凸領域, 52 凹領域, 61−1乃至61−4 追加ウイング部, 81 付勢部, 82 可動アーム, 83−1および83−2 固定ピン, 84−1および84−2 駒, 85 バーコードシール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養容器に取り付けられる培養容器用アダプタであって、
所定の長さの長辺および短辺からなる略長方形の形状をした板状部材と、
前記板状部材の長辺となる両側面の中央近傍において外側に向かって突出し、その先端面が直線状に形成された把持部と
を備えることを特徴とする培養容器用アダプタ。
【請求項2】
前記培養容器が取り付けられる面の中央に、前記培養容器の形状に応じて標記されたマーク、または、前記培養容器の形状に応じて形成された凸領域あるいは凹領域が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の培養容器用アダプタ。
【請求項3】
前記把持部の先端面における前記長辺の方向に沿った長さを拡大する追加部材が着脱可能である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の培養容器用アダプタ。
【請求項4】
前記培養容器が取り付けられる面に、前記培養容器を保持するための保持手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の培養容器用アダプタ。
【請求項5】
前記保持手段は、少なくとも2箇所に設けられた固定ピンと、前記固定ピンに向かって前記培養容器を付勢する付勢手段とを有する
ことを特徴とする請求項4に記載の培養容器用アダプタ。
【請求項6】
前記保持手段は、少なくとも2箇所に設けられた回動可能な駒と、前記コマに向かって前記培養容器を付勢する付勢手段とを有し、前記駒の側面には凹曲面が形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の培養容器用アダプタ。
【請求項7】
前記培養容器を識別するための識別情報が貼付されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の培養容器用アダプタ。
【請求項1】
培養容器に取り付けられる培養容器用アダプタであって、
所定の長さの長辺および短辺からなる略長方形の形状をした板状部材と、
前記板状部材の長辺となる両側面の中央近傍において外側に向かって突出し、その先端面が直線状に形成された把持部と
を備えることを特徴とする培養容器用アダプタ。
【請求項2】
前記培養容器が取り付けられる面の中央に、前記培養容器の形状に応じて標記されたマーク、または、前記培養容器の形状に応じて形成された凸領域あるいは凹領域が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の培養容器用アダプタ。
【請求項3】
前記把持部の先端面における前記長辺の方向に沿った長さを拡大する追加部材が着脱可能である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の培養容器用アダプタ。
【請求項4】
前記培養容器が取り付けられる面に、前記培養容器を保持するための保持手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の培養容器用アダプタ。
【請求項5】
前記保持手段は、少なくとも2箇所に設けられた固定ピンと、前記固定ピンに向かって前記培養容器を付勢する付勢手段とを有する
ことを特徴とする請求項4に記載の培養容器用アダプタ。
【請求項6】
前記保持手段は、少なくとも2箇所に設けられた回動可能な駒と、前記コマに向かって前記培養容器を付勢する付勢手段とを有し、前記駒の側面には凹曲面が形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の培養容器用アダプタ。
【請求項7】
前記培養容器を識別するための識別情報が貼付されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の培養容器用アダプタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−161253(P2012−161253A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22258(P2011−22258)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]