説明

培養装置

【課題】培養容器を培養室に簡便に搬入する。
【解決手段】培養装置10は、試料を培養する培養室11と、培養室11の外に隣接して設けた作業室12とを備える。培養室11には、開口30を開閉する扉32を通して培養容器16を搬入する搬送ユニットが配されている。作業室12には、ストック台37及び移動手段38が設けられている。ストック台37には、培養容器16をストックするストック部39が並設されている。ストック部39には、容器検出センサ51〜54が設けられている。移動手段38は、容器検出センサ51〜54から得られる検出信号に基づいて培養容器16をセットしたストック部39が搬入位置25にセットされるようにストック台37を移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞等の試料を培養する培養室で培養容器を搬送する搬送手段を備えた培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度、湿度、及び二酸化炭素濃度を適切に保つインキュベータ(培養室)に隣接してキャビネット(作業室)を設けた試料保存システムが知られている(特許文献1)。キャビネットは、雰囲気の調整、又は滅菌性の付与等、内部を目的に応じて設定雰囲気にすることができる室であり、自動扉付きの開口を介してインキュベータに接続されている。インキュベータには、キャビネットとの間で培養容器を搬送する搬送装置を備えている。培養容器は、キャビネットで作業が完了した後に、キャビネットに予め設定した搬入位置に1個ずつ手作業でセットされ、搬入位置からインキュベータに搬送装置によって1個ずつ搬入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−229939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した公報記載のシステムでは、複数の培養容器を搬入したい場合でも培養容器を搬入位置に一つずつしかセットすることができないため、手間がかかっていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、培養容器を培養室に簡便に搬入することができる培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、試料を培養する培養室と、前記培養室の開口を開閉する扉と、前記扉を通して前記培養容器を前記培養室に搬入する搬送手段と、前記培養室の外に設けられており前記搬送手段で搬送される培養容器をストックするストック部が並設されているストック台と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
培養容器をストックするストック部が並設されているストック台を培養室の外に設けた作業室に設けたので、培養容器を培養室に簡便に搬入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の培養装置を平面から見た説明図である。
【図2】培養室を示す説明図である。
【図3】作業室の要部を示す斜視図である。
【図4】培養容器及びストック部の要部を示す斜視図である。
【図5】培養装置の電気的概略を示すブロック図である。
【図6】作業室から培養容器を搬入する作業手順を示すフローチャートである。
【図7】ストック部を横に並べたストック台の他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】ストック部を縦に並べたストック台の別の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態の培養装置10は、図1及び図2に示す通り、培養室11と作業室12とを備えている。培養室11は、所定の温度及び湿度の雰囲気に保たれている。この培養室11には、ストッカー部13、観察部14、及び搬送ユニット15が設けられている。
【0010】
ストッカー部13は、培養容器16を収納する複数の収納部17を有している。観察部14は、観察位置18にセットされた培養容器16の試料を顕微鏡19で観察する。なお、観察部14としては、蛍光顕微鏡を用いて蛍光観察を行うものでもよい。
【0011】
搬送ユニット15は、保持部20、ステージ21、回転機構22、及び移動機構23を備え、観察位置18、収納部17、及び作業室12に設定された搬入位置25との間で培養容器16を搬送する。
【0012】
移動機構23は、ステージ21をX軸、Y軸、及びZ軸方向にそれぞれ直進移動させる。保持部20は、培養容器16の下方に入り込む保持位置とこれから退避する退避位置との間で出入り自在にステージ21に設けられている。また、ステージ21には、回転機構22が組み込まれている。回転機構22は、Z軸を中心としてステージ21を回転させる。
【0013】
作業室12は、作業台12a、及び作業台12aの作業エリアを覆う外カバー12bを有し、培養室11の外に隣接して設けられている。外カバー12bには、作業台12aを観察することができるように一部に透明な観察窓28が設けられている。この作業室12は、開口30、パスボックス31、扉32、待機手段33、操作用グローブ34、カバー35、及び操作部36等を備え、不図示のHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)によりホコリや微生物の進入を防ぎ、クリーンな雰囲気に維持されている。
【0014】
開口30は、培養室11との間の仕切壁29に設けられており、通常は扉32により遮蔽されている。扉32は、不図示の扉開閉機構により開口30を閉じる閉じ位置と開く開き位置との間で移動される。
【0015】
パスボックス31は、外部と作業室12との間で塵埃や外気の流入を防止しながら培養容器16を受け渡しするものである。操作用グローブ34は、開口30に対向する観察窓28に設けられている。搬入位置25は、保持部20が作業室12で培養容器16を保持する位置であり、開口30の近傍に予め設定されている。
【0016】
待機手段33は、図3に示すように、ストック台37、及び移動手段38等で構成されている。ストック台37には、培養容器16をセットするための4個のストック部39が設けられている。移動手段38は、各ストック部39を搬入位置25に順にセットすることができるように回転軸40を中心にストック台37を回転させる。
【0017】
カバー35は、透明な材料で形成されており、扉32に手を挟まないように開口30の周囲に設けられている。このカバー35には、ストック台37、及び扉32の移動軌跡上に切り欠き41,42が形成されている。
【0018】
培養容器16としては、図4に示すように、透明な材料で形成されたウェルプレートを用いている。ウェルプレートは、細胞等の試料を収納する窪み(ウェル)が形成された平板状の底部45と蓋部46とからなる。
【0019】
各ストック部39には、培養容器16を複数の位置決めピン47に向けて押圧する押圧レバー49が設けられている。なお、複数の円錐ピンのみで培養容器16の外周を位置決めするように構成してもよい。
【0020】
ストック部39には、図5に示すように、容器検出センサ51〜54が各々設けられている。容器検出センサ51〜54は、培養容器16を検出することで検出信号を制御部58に送出する。制御部58は、検出信号に基づいて移動手段38を制御する。移動手段38は、モータ56、ドライバ55及びエンコーダ57で構成されている。
【0021】
エンコーダ57は、アブソリュート型のものであり、モータ56の回転角及び回転数を検出し、パルス信号及び絶対位置信号を制御部58に送る。制御部58は、パルス信号及び絶対位置信号に基づいて、培養容器16がセットされたストック部39を搬入位置25に移動するように、ドライバ55を介してモータ56の駆動を制御する。
【0022】
制御部58は、操作部36から入力される操作信号に応答して移動手段38、搬送ユニット15、扉開閉機構60、及び観察部14等を統括的に制御する。具体的には、保持部20が開口30を通過する間は扉開閉機構60を駆動して扉32を開いておく等の制御を行う。なお、図5に示す符号61〜63はドライバである。
【0023】
制御部58は、判断手段を備え、扉32を開く条件を満足するか否かを判断する。扉32を開く条件としては、観察部14が観察中でないこと、培養室11で搬送ユニット15が稼働中又は稼働前でないこと等の条件になっている。制御部58は、前記条件を満たす場合に、搬送ユニット15に対して、搬入位置25にある培養容器16を培養室11に搬入する搬入処理を実行させる。
【0024】
また、制御部58は、監視手段64、報知手段65、及び割り込み手段66を備えている。監視手段64は、タイマ回路を有しており、各容器検出センサ51〜54から得られる検出信号の出力時間をタイマ回路で個別に計時し、いずれかのタイマ回路の計時が予め決められた時間を経過した場合に、報知信号を送る。報知手段65は、スピーカ62、及びドライバ67で構成されており、報知信号を受け取ることで外部に異常を報知する。なお、報知手段65としては、モニタに異常を表示する構成であってもよい。
【0025】
割り込み手段66は、監視手段64の監視が所定の条件を満たす場合、例えばタイマ回路での計時が予め決められた時間を超えた場合には、搬送ユニット15の稼働ジョブを保留して、前記搬入処理の実行を割り込ませる。
【0026】
上記構成の作用を説明する。培養室11には、試料を収納した培養容器16が収納部17に収納されている。操作部36から入力される観察スケジュールの情報に従って搬送ユニット15が収納部17から観察位置18に培養容器16を搬送する。観察部14は、培養容器16を通して試料を定時観察する。顕微鏡19は、カメラを備えており、カメラで撮影した観察像のデータは、不図示のメモリに記憶される。
【0027】
パスボックス31を利用して新たな培養容器16を作業室12に搬入する。作業室12では、操作用グローブ34を使用して、新たな培養容器16に試料を収納し、その後、培養容器16をストック台37にセットする。
【0028】
ストック台37は、4個のストック部39が周方向の等分割位置に設けられており、そのうちの1個のストック部39が搬入位置25に位置している。搬入位置25に位置するストック部39には、一部が切り欠き42を通してカバー35の内部に入り込んでいるため、培養容器16をセットすることができない。このようにカバー35によって搬入位置25にあるストック部39の一部を覆うようにしたから、培養容器16をセットしようとして誤って扉32に手を挟み込むような不都合を未然に防止することができる。
【0029】
また、残り3個のストック部39は、搬入位置25に対して扉32から離れ、操作用グローブ34に近い位置に配されている。このため、培養容器16のセット作業が簡便に行える。さらに、カバー35を透明な材料で作っているから、搬入位置25や扉32の状態を目視することができるため、セット作業を安全に行うことができる。
【0030】
ストック台37は、一方向、例えば時計方向に回転する。このため、培養容器16を複数セットする場合には、搬入位置25に対して反時計方向に位置するストック部39から順にセットするのが、短時間で搬入位置25に移動させることができるため好適である。このとき、培養容器16がセットされているストック部39の位置がストック台37の回転方向に対して一番遠い場合には、ストック台37を逆回転するように制御してもよい。
【0031】
制御部58は、図6に示すように、容器検出センサ51〜54を監視しており(S−1)、容器検出センサ51〜54から検出信号を得ているか否かを判断する(S−2)。検出信号を得ている場合には、制御部58は、操作部36から搬入指示が入力されたか否かを確認する(S−3)。入力されると、制御部58は、ストック台37を回転して、培養容器16がセットされたストック部39を搬入位置25にセットする(S−4)。
【0032】
培養容器16を搬入位置25にセットした後には、制御部58は、扉を開く条件、すなわち観察部14が観察中でないこと、搬送ユニット15が稼働中でないこと、及び観察スケジュールの開始前のタイミングでないこと等の条件を満足するか否かを判断する(S−5)。
【0033】
満足する場合には、制御部58は、搬送ユニット15に搬入処理を実行させる。満足しない場合には、制御部58は、満足するまで搬入処理の実行を保留する。搬送ユニット15が搬入処理を実行すると、制御部58は扉32を開く。そして、制御部58は、搬送ユニット15が搬入位置25にある培養容器16を保持して培養室11に搬送し(S−6)、その後、扉32を閉める。
【0034】
ところで、搬入処理の実行が長期間に渡って保留されていると、作業室12にある培養容器16の試料に悪影響を与えるおそれがある。そこで、容器検出センサ51〜54から得られる検出信号の出力時間が所定時間を超えて継続する場合には(S−7)、制御部58は外部に異常を表示する(S−8)。
【0035】
また、制御部58は、搬入位置にある培養容器16が所定時間を超えて待機している場合には(S−9)、観察部14の観察ジョブ、又は予定されている搬送ユニット15の稼働ジョブを一時停止して、搬入処理の実行を割り込ませる(S−10)。
【0036】
培養容器16がストック部39に複数セットされている場合には、容器検出センサ51〜54が残りの培養容器16を引き続き検出している(S−2)。この場合、制御部58は、搬入処理が完了した後、又は扉32を閉めた後に、ストック台37を回転して、次の培養容器16を搬入位置25にセットする。その後、制御部58は、前述したと同じに搬送ユニット15を制御して培養容器16を培養室11に搬入する。
【0037】
なお、上記実施形態では、培養容器16として、ウェルプレートを使用しているが、本発明ではこれに限らず、例えばディッシュ、及びフラスコ等の蓋付き容器を使用してもよい。このような容器を使用する場合には、容器の搬送及び位置決めを簡便に行うために、容器を位置決め保持するホルダやパレットを用いてストック部39にセットするのが望ましい。この場合には、ホルダやパレットに容器を位置決めする位置決め手段を設ければよい。
【0038】
また、上記各実施形態では、ストック部39の数を4個として説明しているが、本発明ではこれに限らず、複数あればよい。
【0039】
さらに、上記各実施形態では、ストック台37を回転式として説明しているが、本発明ではこれに限らず、図7に示すように、複数のストック部39を横に並べたストック台70を並設方向(横方向)に移動していずれか一つのストック部を搬入位置25に移動する構成を採用してもよい。また、図8に示すように、複数のストック部39を縦に並べたストック台71を並設方向(縦方向)に移動する構成を採用してもよい。図8に示す例では、ストック部39が棚状になっているので、保持部20が入り込むための開放部72と、作業者が培養容器16をセットするための開放部73とをストック部39の前後に設ければよい。
【0040】
さらにまた、上記各実施形態では、いずれか一つのストック部が搬入位置25に移動するように、ストック台を移動させるように構成しているが、本発明ではこれに限らず、ストック台を固定し、搬送ユニット15が各ストック部に取りに行く構成にしてもよい。
【0041】
また、上記各実施形態では、作業室12を一般環境と仕切った部屋として説明しているが、本発明ではこれに限らず、外カバー12bを省略し、作業台12aのみを配した構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 インキュベータ
11 培養室
12 作業室
15 搬送ユニット
30 開口
32 扉
37 ストック台
39 ストック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を培養する培養室と、前記培養室の開口を開閉する扉と、前記扉を通して前記培養容器を前記培養室に搬入する搬送手段と、前記培養室の外に設けられており前記搬送手段で搬送される培養容器をストックするストック部が並設されているストック台と、を備えたことを特徴とする培養装置。
【請求項2】
請求項1記載の培養装置において、
前記ストック台は、いずれか一つの前記ストック部が前記培養室の外に予め設定されている前記搬送手段の搬入位置にセットされるように、前記並設方向に移動自在に設けられていること特徴とする培養装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の培養装置において、
前記ストック部には、前記培養容器を検出して検出信号を出力する容器検出センサが設けられていることを特徴とする培養装置。
【請求項4】
請求項3記載の培養装置において、
前記検出信号に基づいて、前記ストック台の移動を制御する移動手段を備えていること特徴とする培養装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の培養装置において、
前記検出信号を監視する監視手段と、前記監視手段の監視が所定の条件を満たす場合に、外部に報知する報知手段と、を備えていることを特徴とする培養装置。
【請求項6】
請求項3又は4記載の培養装置において、
前記検出信号を監視する監視手段と、前記監視手段の監視が所定の条件を満たす場合に、前記搬送手段の稼働ジョブを保留して、前記培養容器を前記培養室に搬入する処理の実行を割り込ませる割り込み手段と、を備えていることを特徴とする培養装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1項記載の培養装置において、
前記扉を開く条件を満足するか否かを判断し、前記条件を満たすときに、前記搬送手段に対して前記培養容器を前記培養室に搬入する処理を実行させる制御手段を備えていることを特徴とする培養装置。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか1項記載の培養装置において、
前記扉を覆うカバーを備えていることを特徴とする培養装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−254744(P2011−254744A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131024(P2010−131024)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】