説明

培養観察装置

【課題】培養環境内に搬入する際の結露の発生を抑制して効率よく作業を行う。
【解決手段】インキュベータ部12は、細胞の培養に適した培養環境に維持され、細胞を収容した培養容器14を収納可能であり、撮像部20および22は、インキュベータ部12内の培養環境下で、培養容器14に収容された細胞を撮像することができる。そして、インキュベータ部12に培養容器14を搬入する際に、台部35に培養容器14が載置され、搬送ロボット15のアーム31が台部35に載置された培養容器14を搬入するまでの間に、ヒータ36が培養容器を加温する。本発明は、例えば、細胞の培養および観察を自動的に行う培養観察装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養観察装置に関し、特に、培養環境内に搬入する際の結露の発生を抑制して効率よく作業を行うことができるようにした培養観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞培養では、シャーレや、フラスコ、ウェルプレートなどの培養容器が用いられ、細胞が培養可能な環境に整地された培養容器に、組織などから単離された細胞が播かれ、その細胞が培養容器内の表面に接着し、伸展して単層を形成していく。
【0003】
ユーザは、温度、湿度、および二酸化炭素などが細胞の培養に適した培養環境で維持されているインキュベータに、細胞を撒いた培養容器を入れ、その培養環境で細胞を培養させる。インキュベータ内は、例えば、温度が37度、湿度が90%以上、二酸化炭素濃度が5%程度となる培養環境で維持されている。
【0004】
そして、一定期間が経過した後に、ユーザは、インキュベータから培養容器を取り出して、細胞の培養状態を顕微鏡で観察し、その後、再度、培養容器をインキュベータに入れるという作業を繰り返す。
【0005】
近年、位置再現性を保持しながら複数のサンプルのタイムラプス観察を行うことができる培養観察装置を使用して、複数の培養容器で細胞を培養するとともに、培養している細胞を培養環境内で自動的に観察したり、撮影することが可能となっている。
【0006】
このような培養観察装置を使用することで、培養環境下での観察が可能となり、顕微鏡観察時の環境暴露によって細胞に与えられるダメージを少なくすることができるメリットや、培養中の細胞の観察、記録、および管理が自動的に行われるため、ユーザの負担を減らすことができるというメリットがある。
【0007】
ところで、細胞を培養容器に撒く作業の直後、または、培地交換や継代操作などの作業を行う際、培養容器は、それらの作業を行うためにクリーンベンチなどに長時間載置される。このとき、培養容器は、外気の温度の影響を受けたり、新しい培地などの温度の影響を受け、一般的に、20〜30度程度の温度となる。即ち、インキュベータから取り出された培養容器の温度は、インキュベータ内の37度から20〜30度程度にまで低下する。
【0008】
このように、インキュベータ内の温度よりも低い温度となった培養容器を細胞培養観察装置に収容すると、培養環境(温度37度、湿度90%以上)の影響を受け、培養容器に結露が発生することがある。そして、照明光路または観察光路に結露が発生すると、光の通過が結露により阻害されてしまい、良好な観察像を取得することが困難になる。
【0009】
例えば、培養容器の底面に結露が発生した場合、この結露により観察光学系が阻害され、位相差光学系において観察像が劣化したり、オートフォーカス時に結露面にフォーカスが合って水滴が撮像されることがある。また、培養容器の蓋に結露が発生した場合、この結露により照明光学系が阻害され、観察像の輝度が低下することがある。
【0010】
ここで、特許文献1には、培養環境とは別に設けられた加温室で、培養環境に馴染むように培養容器を加温した後に、培養環境内に搬入することで、結露の発生を防止することができる自動培養装置が開示されている。しかしながら、この自動培養装置では、培養環境とは別に加温室が設けられるために装置が大掛かりなものとなり、また、必要な温度に到達するまでに時間が掛かるという問題があった。
【0011】
また、特許文献2には、ウェルプレートの温度を計測して、必要な温度のみを培養容器に与えることができるように構成された環境制御装置が開示されている。しかしながら、この環境制御装置では、1つの培養容器にしか対応しておらず、また、装置に搬入するような短時間での加温には対応できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−344128号公報
【特許文献2】特開2006−39171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、培養容器を培養観察装置に収容する際に結露が発生すると、良好な観察を行うことができないため、結露が解消されるまで、例えば30分から1時間程度、ユーザが作業を待機する必要があり、効率よく作業を行うことが困難なことがある。
【0014】
例えば、反応が早い試薬を用いたときに添加直後の状態変化を観察したくても、培養容器の結露が解消されるまで観察することができないという問題があった。また、結露が解消されるまで、培養容器内の観察点を設定する作業を行うことができないという問題があった。
【0015】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、培養環境内に搬入する際の結露の発生を抑制して効率よく作業を行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の培養観察装置は、細胞を培養して観察する培養観察装置であって、前記細胞の培養に適した培養環境に維持され、前記細胞を収容した培養容器を収納可能な培養室と、前記培養室内の培養環境下で、前記培養容器に収容された前記細胞を観察する観察手段と、前記培養室に前記培養容器を搬入する際に、前記培養容器を載置する載置台と、前記載置台に載置された前記培養容器を、前記培養室に搬入する搬入手段と、前記培養容器が前記載置台に載置されてから前記搬入手段により搬入されるまでの間に、前記培養容器を加温する加温手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の培養観察装置においては、細胞の培養に適した培養環境に維持され、細胞を収容した培養容器を収納可能な培養室内で、培養容器に収容された細胞が観察される。そして、培養室に培養容器を搬入する際に、培養容器が載置台に載置されてから、その培養容器が培養室に搬入されるまでの間に、培養容器が加温される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の培養観察装置によれば、培養環境内に搬入する際の結露の発生を抑制して効率よく作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した培養観察装置の一実施の形態の構成例を示す断面図である。
【図2】培養容器14の加温および搬入について説明する図である。
【図3】培養容器14の上面を加温することができる仮置き台34’を示す図である。
【図4】培養容器14の上面および底面を加温することができる仮置き台34’’を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明を適用した培養観察装置の一実施の形態の構成例を示す断面図である。
【0022】
図1において、培養観察装置11は、細胞の培養に適した培養環境に維持されているインキュベータ部12と、各種機材を格納可能な架台部13とで上下に分離されている。
【0023】
インキュベータ部12は、細胞の培養を行う培養室であり、細胞の培養に適した条件、例えば、温度37度、湿度90%以上、二酸化炭素濃度5%程度で維持されており、その培養環境(内部環境)で、培養容器14に収納されている細胞が培養される。
【0024】
インキュベータ部12には、培養容器14を搬送する搬送ロボット15、複数の培養容器14をストックすることができる容器棚16、観察の対象となる細胞が収納されている培養容器14が載置される観察ステージ17、および、観察ステージ17に載置される培養容器14の上方から観察および照明をするための観察照明部18が収納されている。また、観察照明部18は、観察ステージ17に載置される培養容器14の上方から照明光を照射する照明部19と、その培養容器14を上方から撮像する撮像部20とを備えている。
【0025】
架台部13には、透明板21を介して、観察ステージ17に載置される培養容器14の下方から照明光を照射する照明部22、その培養容器14を下方から撮像する撮像部23が収納されている。また、架台部13には、培養観察装置11の各部を制御する制御部24が収納されている。
【0026】
また、インキュベータ部12の正面側(図1の左側)の壁部には、ユーザによる操作を受け付ける操作パネル25、および、培養観察装置11の外部環境の温度を測定する温度センサ26が設けられている。操作パネル25は、ユーザの操作に応じたコマンドやデータなどを制御部24に供給し、温度センサ26は、外部環境の温度データを制御部24に供給する。
【0027】
搬送ロボット15は、図1の上下方向に移動可能なアーム31を有しており、アーム31は、図1の左右方向に伸縮可能とされている。そして、搬送ロボット15は、アーム31を利用して培養容器14を搬送することができ、例えば、インキュベータ部12に搬入される培養容器14を容器棚16に収納したり、容器棚16にストックされている培養容器14を観察ステージ17に載置する。
【0028】
また、インキュベータ部12の正面側の壁部には、インキュベータ部12に培養容器14を搬入するための搬入口32が形成されている。搬入口32は、ドア部33により開閉可能とされており、搬入口32の正面側には、培養容器14の搬入時に一時的に培養容器14を載置するための仮置き台34が配置されている。
【0029】
搬入口32は、通常、ドア部33により閉鎖されており、ユーザが、仮置き台34に培養容器14を載置すると、図示しない駆動機構によりドア部33が駆動されて搬入口32が開放される。そして、搬送ロボット15は、仮置き台34に載置されている培養容器14の下方にアーム31を差し込み、アーム31を上昇させて培養容器14を持ち上げ、アーム31に載せられた培養容器14をインキュベータ部12の内部に搬入する。
【0030】
仮置き台34は、培養容器14が載置される台部35、制御部24からの電力の供給に応じた温度で発熱するヒータ36、およびヒータ36を上下方向に駆動させるためのリニアステップモータ37を備えて構成されている。そして、仮置き台34では、培養容器14が載置されてからインキュベータ部12に搬入されるまでの間に、培養容器14を加温することができる。
【0031】
次に、図2を参照して、培養容器14の加温および搬入について説明する。
【0032】
図2は、培養観察装置11の仮置き台34の近傍を拡大して示す図である。図2Aには、仮置き台34に培養容器14が載置された状態が示されており、図2Bには、培養容器14が加温されている状態が示されており、図2Cには、アーム31により培養容器14が持ち上げられた状態が示されている。
【0033】
図2に示すように、リニアステップモータ37は、台部35の中央付近に設けられた穴をシャフトが貫通するように台部35の底面に取り付けられており、リニアステップモータ37のシャフトの上端にヒータ36が取り付けられている。
【0034】
例えば、ユーザが、図2Aに示すように台部35に培養容器14を載置して、インキュベータ部12に培養容器14を搬入するように操作パネル25(図1)を操作すると、その操作に応じたコマンドが操作パネル25から制御部24に供給される。
【0035】
制御部24は、ユーザの操作に応じたコマンドに従って、搬送ロボット15が培養容器14の搬入作業を開始するように、搬送ロボット15の制御を行うとともに、培養容器14を加温するようにヒータ36およびリニアステップモータ37を制御する。
【0036】
リニアステップモータ37は、制御部24の制御に従ってヒータ36を駆動し、図2Bに示すように、ヒータ36が培養容器14の底面に当接し、さらに、ヒータ36により培養容器14が若干持ち上げられるまで、ヒータ36を上方に移動させる。また、ヒータ36は、制御部24から供給される電力に応じて発熱し、培養容器14を加温する。
【0037】
そして、所定の加温時間が経過すると、制御部24は、ヒータ36への電力の供給を停止するとともに、リニアステップモータ37を制御してヒータ36を下方に移動させて退避させ、これにより、台部35に培養容器14が載置される。その後、搬送ロボット15が、培養容器14の下方にアーム31を差し込み、図2Cに示すように、アーム31を上昇させて培養容器14を持ち上げ、インキュベータ部12に搬入する。
【0038】
このように、培養観察装置11の仮置き台34では、台部35に培養容器14が載置されてから、アーム31により培養容器14が搬入されるまで、ヒータ36により培養容器14が加温される。
【0039】
ここで、仮置き台34に載置された培養容器14は、培養観察装置11の外部環境の温度による影響を受けた温度となっている。例えば、培養観察装置11が設置される室内は、通常、温度が20〜30度となるように空気調整機などによりコントロールされており、この温度と同化して、培養容器14の温度は20〜30度で変動する。
【0040】
一方、インキュベータ部12の内部環境は、温度が37度となり、湿度が90%以上となるように維持されている。従って、培養容器14をインキュベータ部12に搬入した際に、培養容器14の結露の発生を防止するためには、培養容器14の温度をインキュベータ部12の内部環境での露点温度以上とする必要がある。
【0041】
また、培養容器14の温度が37度を超えると、培養容器14内の細胞がダメージを受ける恐れがあるため、ヒータ36の温度を37度以下にする必要がある。
【0042】
ここで、温度tでの飽和水蒸気圧E(t)[hPa]は、次の式(1)で表されるTetensの実験式で求められる。
【0043】
【数1】

・・・(1)
【0044】
また、相対湿度をrhとすると、インキュベータ部12の内部環境における飽和水蒸気圧E[hPa]は、次の式(2)で表される。
【0045】
【数2】

・・・(2)
【0046】
そして、インキュベータ部12の内部環境における温度を37度とし、相対湿度を90%とすると、露点温度tdは、次の式(3)に示すように、35.079度となる。
【0047】
【数3】

・・・(3)
【0048】
従って、ヒータ36は、台部35に培養容器14が載置されてから、アーム31が培養容器14を持ち上げるまでに、培養容器14が35.079度から37度までの温度となるように、培養容器14を加温すればよい。
【0049】
また、台部35に培養容器14が載置されてから、アーム31が培養容器14を持ち上げるまでの時間は、搬送ロボット15の動作速度に応じ、例えば、最短で1分程度であり、ヒータ36は、その1分程度で培養容器14を加温する。
【0050】
次に、ヒータ36が、上述の温度範囲となるように、培養容器14を加温するために必要な電力を求める。
【0051】
培養容器14の材質には、一般的に、ポリスチレンが使用されており、ポリスチレンの比熱Cは、0.32[Kcal/kg・℃]であり、ポリスチレンの密度dは、920[kg/m]である。また、培養容器14の加温に必要な体積は、培養容器14の観察面と同じであり、例えば、体積Vは、126mm×86mm×2mm=2.1672×10-5[m]とする。
【0052】
ここで、温度センサ26により測定された外部環境の温度が20度であり、培養容器14の温度を37度まで上昇させるとすると、台部35に載置された培養容器14の温度は外部環境の温度と同化しているため、ヒータ36による必要温度上昇分Δtは、37-20=17[℃]となる。また、ヒータ36が培養容器14を加温する加温時間Mは、搬送ロボット15の動作速度に応じた1分とする。
【0053】
以上より、電力W[W]は、W=0.278×60×C×d×V×Δt/M=0.278×60×0.32×920×2.1672×10-5×17/1=1.8と求められる。
【0054】
このように、制御部24は、ヒータ36に供給する電力を算出することができる。制御部24は、例えば、ヒータ36に1.8[W]の電力を供給して、培養容器14にヒータ36を1分間当接させることで、培養容器14の底面を、35.079度から37度までの温度とすることができる。これにより、インキュベータ部12に培養容器14を搬入しても、培養容器14に結露が発生することを防止することができる。
【0055】
また、制御部24は、温度センサ26により測定された外部環境の温度に基づいて、常に、ヒータ36への供給が必要な電力を算出することができる。また、制御部24は、搬送ロボット15の動作速度に応じて加温時間Mを調整したり、培養容器14の大きさに応じて体積Vを調整したりして、適宜、ヒータ36への供給が必要な電力を算出する。
【0056】
例えば、ユーザが操作パネル25を操作して、培養容器14に関する情報、例えば、培養容器14の材質や厚さなどを示す情報や、培養容器14の加温すべき位置または面積を示す情報などを入力すると、制御部24は、それらの情報に基づいて、適切な電力を算出することができる。また、ユーザが操作パネル25を操作して加温時間Mを入力することで、制御部24は、その加温時間Mが経過した後に搬送ロボット15が培養容器14を持ち上げるような制御を行うことができる。なお、培養容器14内の細胞の種類や培地の量などを示す情報を入力し、それらの情報から適切な加温時間Mを求めてもよい。例えば、熱に強い細胞であれば、適宜、ヒータ36の温度を37度以上とすることができる。
【0057】
以上のように、培養観察装置11では、培養容器14が仮置き台34に載置されてからインキュベータ部12に搬入されるまでに、ヒータ36により適切な範囲で加温されるので、インキュベータ部12内で培養容器14に結露が発生することを防止することができる。これにより、インキュベータ部12に搬入直後の状態でも培養容器14内の細胞を観察することができ、効率的に作業を行うことができる。
【0058】
例えば、培養観察装置11では、反応が早い試薬を用いたときの細胞の状態変化を観察することができる。また、培養容器14内の観察点を設定する作業を、培養容器14をインキュベータ部12に搬入してすぐに行うことができ、例えば、従来のように結露が解消されるまでの待機時間が発生することを回避することができる。これにより、ユーザが待機時間によるストレスを感じることがなくなる。
【0059】
なお、図2に示すように、仮置き台34は、ヒータ36により培養容器14の底面を加温するように構成されているが、培養容器14の上面を加温するように構成したり、培養容器14の上面および底面の両方を加温するように構成してもよい。即ち、培養容器14の上面および底面のいずれか一方を加温すれば、結露の発生を防止することができる。
【0060】
次に、図3および図4を参照して、本発明を適用した培養観察装置の他の実施の形態について説明する。
【0061】
図3は、培養容器14の上面を加温することができる仮置き台34’を示す図である。図3Aには、仮置き台34’に培養容器14が載置された状態が示されており、図3Bには、培養容器14の上面が加温されている状態が示されており、図3Cには、アーム31により培養容器14が持ち上げられた状態が示されている。
【0062】
図3に示すように、仮置き台34’では、台部35’の上側にヒータ36’およびリニアステップモータ37’が配設されており、ヒータ36’の加熱面が下方に向けられている。
【0063】
仮置き台34’では、ユーザが、台部35’に培養容器14を載置して、インキュベータ部12に培養容器14を搬入するように操作パネル25(図1)を操作すると、リニアステップモータ37’が、制御部24の制御に従って、ヒータ36’を下方に移動させて培養容器14の上面に当接させ、ヒータ36’により培養容器14が加温される。その後、加温時間Mが経過すると、リニアステップモータ37’が、ヒータ36’を上方に移動させるとともに、アーム31が培養容器14を持ち上げてインキュベータ部12に搬入する。
【0064】
このように、培養容器14の上面を加温することで、培養容器14の上面に結露が発生することを確実に防止することができ、例えば、図1の撮像部20による培養容器14の上方から撮影を良好に行うことができる。
【0065】
また、培養容器14内では、その底面に細胞が接触しているのに対し、その上面には細胞が接触していないので、培養容器14の上面を加温する場合には、ヒータ36’の温度を、上述したような37度以下に限定する必要がなくなる。ヒータ36’を37度以上とすることで、例えば、培養容器14の加温時間を短縮することができ、作業を効率化することができる。
【0066】
図4は、培養容器14の上面および底面を加温することができる仮置き台34’’を示す図である。図4Aには、仮置き台34’’に培養容器14が載置された状態が示されており、図4Bには、培養容器14の上面および底面が加温されている状態が示されている。
【0067】
仮置き台34’’は、図2の仮置き台34と同様に、台部35、ヒータ36、リニアステップモータ37を備えて構成され、さらに、ヒータ36と向かい合うように台部35の上方に固定されるヒータ38を備えている。
【0068】
仮置き台34’’では、ユーザが、台部35に培養容器14を載置して、インキュベータ部12に培養容器14を搬入するように操作パネル25(図1)を操作すると、リニアステップモータ37が、制御部24の制御に従って、培養容器14の上面がヒータ38に当接するまでヒータ36を上方に移動させる。これにより、ヒータ36および38が、培養容器14の底面および上面をそれぞれ加温することができる。
【0069】
このように、培養容器14の底面および上面をそれぞれ加温することで、培養容器14の加温時間を短縮することができるとともに、結露の発生を確実に防止することができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、温度センサ26により測定される外部環境の温度に従って、ヒータ36に供給する電力を算出しているが、例えば、仮置き台34に、培養容器14の温度を測定する温度センサを設け、その温度センサにより測定された温度に従って、ヒータ36に供給する電力を算出してもよい。これにより、例えば、培養容器14内の新しい培地の温度の影響などを考慮した電力で、培養容器14を加温することができる。
【0071】
また、仮置き台34に、培養容器14が載置されたことを検出するセンサを設け、そのセンサの出力に応じて、制御部24が、搬送ロボット15による培養容器14の搬入作業を開始させるとともに、ヒータ36による加温を開始するように制御することができる。これにより、ユーザの手間を省くことができる。
【0072】
また、培養容器14を加温する手段としては、例えば、電熱線などを利用したヒータの他、培養容器14に温風を吹き付ける送風機や、ハロゲンランプなどを用いることができる。また、これらの加温する手段に加え、搬送ロボット15にワイパーを設け、そのワイパーにより、培養容器14の上面または底面を拭き取るようにしてもよい。
【0073】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
11 培養観察装置, 12 インキュベータ部, 13 架台部, 14 培養容器, 15 搬送ロボット, 16 容器棚, 17 観察ステージ, 18 観察照明部, 19 照明部, 20 撮像部, 21 透明板, 22 照明部, 23 撮像部, 24 制御部, 25 操作パネル, 26 温度センサ, 31 アーム, 32 搬入口, 33 ドア部, 34 仮置き台, 35 台部, 36 ヒータ, 37 リニアステップモータ, 38 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を培養して観察する培養観察装置において、
前記細胞の培養に適した培養環境に維持され、前記細胞を収容した培養容器を収納可能な培養室と、
前記培養室内の培養環境下で、前記培養容器に収容された前記細胞を観察する観察手段と、
前記培養室に前記培養容器を搬入する際に、前記培養容器を載置する載置台と、
前記載置台に載置された前記培養容器を、前記培養室に搬入する搬入手段と、
前記培養容器が前記載置台に載置されてから前記搬入手段により搬入されるまでの間に、前記培養容器を加温する加温手段と
を備えることを特徴とする培養観察装置。
【請求項2】
前記培養室に搬入される前の前記培養容器の温度、または、前記培養室に搬入される前に前記培養容器が置かれる環境の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段により測定された温度と、前記培養室内の温度および湿度とに基づいて、前記加温手段による加温に必要な電力を算出して前記加温手段に供給する制御手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の培養観察装置。
【請求項3】
前記加温手段は、供給される電力に応じて発熱する板状のヒータであり、前記載置台に載置された前記培養容器の底面および上面の少なくとも一方に当接して前記培養容器を加温する
ことを特徴とする請求項1に記載の培養観察装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate