説明

基板分離装置

【目的】 積層された最上段の基板を一定の高さで水平に補正して、安定した基板の吸着,分離を可能にし、次工程の実装ラインに供給できるようにする。
【構成】 装置本体11の両起立部11b,11b′に各駆動軸13及びモータ15等を介して4つの受台12を上下方向に移動自在に配設してある。これら各受台12上には積層された基板110を載置する基板載置台18を各自在継手17を介して支持してある。この基板載置台18の上方には最上段の基板110を吸着して1枚ずつ吸着分離させる3つの吸着パッド23を昇降動自在に設けてある。4つの受台12は各駆動軸13等を介してそれぞれ昇降動する。これにより、各受台12の高さは別々に可変され、最上段の基板110は常に一定の高さで水平になる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、積み重ねられたプリント基板(以下基板と略称する)を最上段側から1枚ずつ吸着分離して実装ラインに供給する際に用いる基板分離装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、基板を吸着(真空)パッドで吸着し,積層された基板から最上段の基板を1枚だけ分離して実装ラインへ供給する際に用いる基板分離装置が知られている。これを、図7によって具体的に説明すると、図中100は基板分離装置であり、その側面凵字状の装置本体101の上部には3〜4本の吸着パッド102を昇降動自在に設けてある。そして、上記装置本体101の下部中央に積層載置された最上段の基板110を各吸着パッド102で吸着して1枚ずつ分離し、装置本体101の上部側に配設された図示しないコンベヤ上まで搬送し、このコンベヤにより基板110を実装ラインへ供給するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の基板分離装置100を用いて積層された基板110を1枚ずつ分離する場合に、図6に示すように、基板110に既に実装されているIC等の電子部品111,112の大きさが違うために積層された基板110が斜めに傾いて来るが、この場合、積み重ねられて積層された最上段の基板110の傾斜角が特に大きくなるため、3〜4本の吸着パッド102が均一に最上段の基板110に当たらず、基板110の積層高さが高くなればなる程吸着パッド102による吸着ミスが起こり易い欠点があった。さらに、上記積層された基板110は、図7(b)に示すように、上記各吸着パッド102で吸い上げられる度に残りの枚数が少なくなり、枚数が減る毎に最上段の基板110の傾きも微妙に変化して来るため、基板110の傾きと吸着パッド102の当たる位置が変わって来る。このため、吸着パッド102の位置を積層された総ての基板110に合わせにくく、また、積層された基板110が少なくなると、吸着パッド102の移動ストロークが変化するため、吸着パッド102の吸着エラーとなり易かった。
【0004】そこで、この発明は、積層された基板を1枚ずつ吸着分離する際に、最上段の基板が一定の高さで水平になるようにして吸着手段での吸着を確実に行えるようにした基板分離装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】装置本体に、積層された基板を支持する受台を設け、この受台の上方に上記最上段の基板を吸着して1枚ずつ吸着分離させる吸着手段を設け、この吸着手段で分離された基板をローダに供給するようにした基板分離装置において、上記受台を上下方向に移動自在に複数配設し、これら各受台上に基板載置台を自在継手を介して支持し、この基板載置台上に積層載置された最上段の基板が水平になるように上記各受台の高さをそれぞれ可変自在に構成してある。
【0006】
【作用】基板載置台に積層載置された最上段の基板が一定の高さで水平になるように、該基板載置台を支持している各受台を移動させて該各受台の高さをそれぞれ可変させる。これにより、積層載置された最上段の基板の上面(吸着面)は常に一定の高さで水平になり、吸着手段により確実に吸着される。その結果、吸着手段による基板の吸着ミスがなくなり、基板は1枚ずつ確実に分離されて次工程へ供給される。
【0007】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面と共に詳述する。
【0008】図1,2において、10は基板分離装置である。この基板分離装置10は、図5に示すように、積層された基板110の最上段の基板110を吸い上げてコンベヤ27上に載せ、他のコンベヤ2を介して実装機1へ基板110を送り、この実装機1で他の電子部品を挿入する際に用いられるものである。
【0009】この基板分離装置10の筐型の装置本体11は底部11aと長,短の両起立部11b,11b′とで側面凵字状に形成してある。この装置本体11の両起立部11b,11b′の対向する各内面側の左右には各一対の開口部11c,11cを上下方向に長尺形成してあり、この各開口部11cより矩形板状の受台12の先端側を水平に突出させている。この4つの受台12の基部にはスクリューネジ状の駆動軸13をそれぞれ螺合してある。この4本の各駆動軸13の下側には傘歯車(ベベルギヤ)14を固定してある。この各傘歯車14は駆動手段としての各モータ15の回動軸15aの先端に固定された傘歯車16にそれぞれ噛合している。この各モータ15の駆動により各受台12は駆動軸13を介して各開口部11cに沿って昇降動自在になっている。これら4つの受台12上には各自在継手(ユニバーサルジョイント)17を介して基板110と略同形で矩形板状の基板載置台18を支持してある。上記各自在継手17は各受台12の先端中央に突設した球状部17aと、基板載置板18下面の四隅に固定されて上記球状部17aを遊嵌する略皿状の各軸受部17bとを備えている。これにより、図1に示すように、上記基板載置台18は4つの受台12を介して3次元的に持ち上げ可能になっている。尚、図3に示すように、この基板載置台18には基板110の有無を検出する反射型の光学センサ19を取付けてある。
【0010】また、上記装置本体11の高い方の起立部11bの上端にはパット支持板20を底部11aに平行に対向するように突設してある。このパット支持板20の片側には長,中,短の突出片部20a,20b,20cを有しており、この各突出片部20a,20b,20cの先端側には小型のエアシリンダ21をそれぞれ取付けてある。この各エアシリンダ21のロッド22の下端にはゴム製で逆円錐状の吸着パッド(吸着手段)23をそれぞれ設けてある。各吸着パッド23には、該各吸着パッド23内を真空にする圧縮ポンプ(図示しない)に接続されたエアホース24をそれぞれ接続してある。この各吸着パッド23内を略真空状態にすることで4つの各受台12上に支持された基板載置台18上の最上段の基板110が真空吸着されて1枚ずつ分離されるようになっている。
【0011】また、図1に示すように、上記装置本体11の両起立部11b,11b′の各一対の開口部11c,11cの上部位置には検出手段としての反射型の光学センサ25をそれぞれ取付けてあると共に、各一対の開口部11c,11cの下部位置には検出手段としての反射型の光学センサ26をそれぞれ取付けてある。上記4つの光学センサ25により基板載置台18に積層載置された最上段の基板110の一定の高さでの水平状態を検出するようになっている。この各光学センサ25で最上段の基板110を検出して各光学センサ25に対応する前記各モータ15を正,逆回転させて各駆動軸13の回動を制御するようになっている。また、上記4つの光学センサ26により基板載置台18の最降下位置の初期位置を検出するようになっている。さらに、上記両起立部11b,11b′の各一対の光学センサ25,25の上方には、コンベヤの一対のレール(ローダ)27,27を水平方向に進退動自在に配設してある。この一対のレール27,27が吸着パッド23側に進出した時に、各吸着パッド23により吸着された基板110を上記一対のレール27,27上に落下載置させて前記実装機1側のコンベヤ2に供給するようになっている。
【0012】以上実施例の基板分離装置10による基板分離動作を、図4に示すフロチャートに沿って説明する。初期位置(最降下位置)にある基板載置台18は各光学センサ26の位置で水平になっている。この基板載置台18上に多数の基板110を供給して積層載置する(ステップ1)。次に、装置本体11に設けられたスタートスイッチ(図示しない)をオンする(ステップ2)。これにより、各モータ15がオンされて各駆動軸13が回転し、各光学センサ25がオンするまで、該各駆動軸13により上昇する4つの受台12を介して該各受台12に各自在継手17を介して支持されている上記基板載置台18が上昇する(ステップ3)。この時、図1に示すように、図中左側にあるモータ15は図中右側にあるモータ15より早くオフになることにより、上記基板110に既に実装されている各電子部品111,112の大きさが違っても、基板載置台18に積層された最上段の基板110は常に一定の高さ(各光学センサ25の高さ)で水平状態になる。そして、最上段の基板110が上記各光学センサ25の位置まで来ると、各エアシリンダ21を介して3つの吸着パッド23が下降して(ステップ4)、上記最上段の基板110を吸着する(ステップ5)。次に、上記各エアシリンダ21を介して各吸着パッド23が一対のレール27,27の上方まで基板110を吸着した状態で上昇する。この時、一対のレール27,27が吸着パッド23側に突出し、この一対のレール27,27上に基板110を落として供給する(ステップ6)。この場合に、基板110が基板載置台18上に有る(ステップ7)と、最上段の次に積層されていた基板110が各光学センサ25の位置に来るように、基板載置台18が順次上昇して、上記ステップ3〜ステップ6を繰り返す。尚、基板載置台18上の基板110の有無は光学センサ19で検出される。
【0013】次に、基板110が基板載置台18上に無くなる(ステップ8)と、4つの受台12が下降して基板載置台18が光学センサ26,26のある初期位置まで下降する(ステップ9)。この初期位置にある基板載置台18上に基板110を供給して(ステップ10)、上記ステップ2〜ステップ6を繰り返す。
【0014】このように、積み重ねられて最上段が斜めになり易い基板110を下から4つの受台12に各自在継手17を介して支持された基板載置台18を3次元的に持ち上げて、常に一定の高さで最上段の基板110が水平になるように補正している。これにより、3つの吸着(真空)パッド23が常に一定の高さの最上段の基板110に当たり、3つの吸着パッド23が同一の高さで基板110を確実に吸着して1枚だけを分離する。その結果、吸着パッド23による最上段の基板110の吸着ミスがなくなり、最上段の基板110を一対のレール27,27上に落下させて確実に載せることができる。
【0015】そして、最上段の基板110は、図5に示すように、一対のレール27,27から実装ラインのコンベヤ2を通って実装機1に確実に供給され、実装機1で上記基板110に他の電子部品を挿入する。従って、従来のように実装ラインを停止させるようなことがなくなり、実装効率を向上させることができる。また、吸着パッド23による吸い上げミスを確実に防止することができるので、従来のように、吸い上げミスで基板110が落下した際の基板110の破損を確実に防止することができると共に、上記実装ラインの停止の際の作業者のリカバリーが不要となり、実装ラインの自動化の妨げになるようなことはない。
【0016】尚、前記実施例によれば、プリント基板の基板分離について説明したが、基板はプリント基板に限られず、合板等の基板の基板分離に前記実施例を適用しても良い。
【0017】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、装置本体に、積層された基板を支持する受台を設け、この受台の上方に上記最上段の基板を吸着して1枚ずつ吸着分離させる吸着手段を設け、この吸着手段で分離された基板をローダに供給するようにした基板分離装置において、上記受台を上下方向に移動自在に複数配設し、これら各受台上に基板載置台を自在継手を介して支持し、この基板載置台上に積層載置された最上段の基板が水平になるように上記各受台の高さをそれぞれ可変自在に構成したので、積層載置された最上段の基板を常に一定の高さで水平状態にして各吸着手段により確実に吸着することができ、基板の吸着ミスをなくすことができる。これにより、基板を1枚ずつ確実に分離して次工程へ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す基板分離装置の側面図。
【図2】上記基板分離装置の平面図。
【図3】上記基板分離装置が用いられる基板載置台の部分拡大説明図。
【図4】上記基板分離装置の動作順序を示す流れ図。
【図5】上記基板分離装置が用いられる実装ラインの全体のシステム図。
【図6】積み重ねられた基板の説明図。
【図7】(a),(b)は従来の基板分離装置による基板分離状態の説明図。
【符号の説明】
10…基板分離装置
11…装置本体
12…受台
17…自在継手
18…基板載置台
23…吸着パッド(吸着手段)
26…光学センサ(検出手段)
27…レール(ローダ)
110…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 装置本体に、積層された基板を支持する受台を設け、この受台の上方に上記最上段の基板を吸着して1枚ずつ吸着分離させる吸着手段を設け、この吸着手段で分離された基板をローダに供給するようにした基板分離装置において、上記受台を上下方向に移動自在に複数配設し、これら各受台上に基板載置台を自在継手を介して支持し、この基板載置台上に積層載置された最上段の基板が水平になるように上記各受台の高さをそれぞれ可変自在に構成したことを特徴とする基板分離装置。
【請求項2】 上記吸着手段を上記基板載置台上に積層載置された基板に対して昇降動自在に複数配設したことを特徴とする請求項1記載の基板分離装置。
【請求項3】 上記装置本体に、上記基板載置台の初期位置である最降下位置を検出する検出手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の基板分離装置。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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