説明

基板検査方法

【課題】両面実装基板における部品の挟み込み不良を目視により検査する場合の労力を削減し、検査の精度を高める。
【解決手段】自動外観検査装置1でチップ部品の欠落が検出されると、その検査対象の基板はX線透過撮影装置に送られて、撮影がなされる。この撮影により生成されたX線透視画像は、サーバを介して目視検査用端末装置(目視端末)3に供給される。目視端末3では、目視を行うべき場所を特定する作業を支援するための参照用画像として、CADデータに基づき基板の正常パターンを示す画像を生成する。さらにこの正常パターンをX線透視画像に重ね合わせた画像を含む検査用画面をモニタ装置に表示し、検査員の判定入力を受け付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品実装工程を完了した後の基板(はんだ付け処理が実施されたものも含む。)を対象に、いずれかの部品が正しい位置に実装されずに他の部品と基板との間に挟み込まれている不良(この明細書では「挟み込み不良」という。)が生じていないかどうかを検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装基板の製造ラインでは、「マウンタ」と呼ばれる部品実装機を用いて、種々の部品を基板上の定められた位置に配置する。また一般に、小型で形状が統一されているチップ部品を高速で配置するための高速マウンタと、大型で形状にばらつきのある部品(BGA,ICなど)を配置する異形マウンタとが導入されている。この場合の部品実装工程では、高速マウンタにより多数のチップ部品を配置した後に、異形マウンタを用いて大型部品を配置するようにしている。
【0003】
しかし、高速マウンタを用いた部品実装処理では、吸着ノズルに不良が生じたり、クリームはんだの粘着性が弱まる等の要因によって、チップ部品が本来の実装位置から離れた場所に飛ばされることがある(特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−260034号公報
【0005】
上記のチップ部品が、異形マウンタにより実装される大型部品の実装位置に飛ばされた場合には、このチップ部品を検出できないまま大型部品が実装され、その結果、チップ部品が大型部品と基板との間に挟み込まれるおそれがある。特に、近年、部品の微細化がすすみ、この挟み込み不良が生じる頻度が高まったことに伴い、この不良を検出するのに有効な検査方法を早期に開発することが求められている。
【0006】
上記した特許文献1の記載の発明も、この要望に応じてなされたもので、高速マウンタによるチップ部品の実装処理後に、異形マウンタによる実装位置にチップ部品が飛んでいないかどうかを、外観検査装置を用いて検査するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の発明者は、チップ部品の挟み込み不良を検出する方法として、特許文献1に記載された方法とは別に、部品実装後の基板にX線透過撮影を実施し、生成されたX線透視画像を用いた目視検査を行うことを検討した。この方法であれば、自動外観検査装置を導入するほどのコストはかからない。また撮影に要する時間もさほど長くはならず、部品実装工程または次のリフロー工程の終了後に撮影を行えば良いので、検査のために基板製造ラインの流れが悪くなるおそれが少ない。
【0008】
さらに、特許文献1にも記載されているが、本来の実装位置から離れた場所に飛ばされるチップ部品の殆どは、実装位置に搬送中の部品、または実装後にクリームはんだから離れた部品であるため、部品実装検査によって部品の欠落が検出された基板を挟み込み不良検査の対象に限定してもよい。このように、挟み込み不良の検出対象を絞り込めば、基板製造ラインの流れに殆ど影響を及ぼさずに、挟み込み不良検査を行うことができる。
【0009】
ただし、X線透視画像を用いた目視検査では、画像中で大型部品とチップ部品とが重なり合った箇所があるか否かによって、挟み込み不良の有無を判別することになるため、検査対象の基板が両面実装基板である場合には、検査が困難になる。両面実装基板のX線透視画像では、基板の表裏の区別がつかなくなり、画像中に大型部品とチップ部品とが重なりあった箇所があっても、そのチップ部品が挟み込み不良の部品であるのか、裏面に正しく実装された部品であるのかを、容易に判別できなくなるからである。
【0010】
この発明は上記の問題点に着目し、両面実装基板における部品の挟み込み不良を目視により検査する場合の労力を削減し、検査の精度を高めることを、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による基板検査方法は、両面実装基板を対象とするもので、外観検査装置を用いて両面実装基板に部品の欠落箇所がないかどうかを検査する第1ステップ、第1ステップで部品の欠落箇所があると判断された基板を対象にX線透過撮影を行って、X線透視画像を生成する第2ステップ、第2ステップで生成されたX線透視画像について、その画像に対応する範囲における正しい実装状態を表す画像、または当該正しい実装状態に該当しない箇所を示す画像を、目視の対象を特定する作業を支援するための参照用画像として生成する第3ステップ、第3ステップで生成した参照用画像をX線透視画像とともに表示し、この表示状態下で、欠落部品が他の部品と基板との間に挟み込まれているか否かについて、検査員の判定入力を受け付ける第4ステップ、の各ステップを実行するものである。
【0012】
上記の方法によれば、正しい実装状態を表す参照用画像が生成された場合には、X線透視画像の中で参照用画像との整合性がとれていない箇所を重点的にチェックすることにより、また正しい実装状態に該当しない箇所を示す参照用画像が生成された場合には、その画像に示される箇所を重点的にチェックすることにより、挟み込み不良の有無を判別することができる。よって両面実装基板を検査する場合でも、大型部品と重なり合う小型部品と参照用画像との関係に基づき、その小型部品が挟み込み不良に該当するものかどうかを正しく判別することができる。
【0013】
好ましい一態様では、第3ステップにおいて、両面実装基板の設計データ(たとえばCADデータ)を用いて部品の正しい実装状態を表す画像(部品のほか電極のパターン等を含めてもよい。)を、参照用画像として生成する。
【0014】
他の好ましい態様では、第3ステップにおいて、あらかじめ部品種毎に登録されたX線透視画像のサンプル画像の中から欠落部品に対応するものを選択し、選択したサンプル画像を用いたマッチング処理によりX線透視画像中でサンプル画像に対応する領域を特定する。さらに、特定された領域を両面実装基板の設計データと照合し、設計データに適合しない領域を示す画像を参照用画像として生成する。
【0015】
上記の参照用画像は、正しい実装状態に該当しない箇所を示すものである。ある程度の経験を積んだ検査員であれば、部品の姿勢や周囲の電極パターンとの位置関係などから、挟み込み不良に該当するかどうかを判別することができる。上記の態様によれば、挟み込み不良の疑いがある部品を、参照用画像に基づき漏れなく特定することができるから、特定された部品毎に上記の判別処理を行うことによって、欠落部品による挟み込み不良の有無を判別することが可能になる。
【0016】
他の好ましい態様では、第3ステップにおいて、あらかじめ各部品が正常に実装された両面実装基板を用いて生成されたX線透視画像のモデル画像と第2ステップで生成されたX線透視画像との差分演算処理を実行し、この処理結果を示す差画像を参照用画像として生成する。
【0017】
この態様にかかる参照用画像も、正しい実装状態に該当しない箇所を示すものである。この態様によれば、差画像上に現れた特徴の形状やその特徴に対応する位置の原画像をチェックすることによって、欠落部品による挟み込み不良の有無を判別することができる。
【発明の効果】
【0018】
上記したように、この発明によれば、両面実装基板に生じた挟み込み不良を、簡易な構成で、効率良くかつ精度良く検出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、部品実装基板の製造ラインに導入される検査システムの一例を示す。
この検査システムは、はんだ印刷工程、部品実装工程、リフロー工程の各工程を経た基板を対象に、最終検査を実行するためのもので、自動外観検査装置1(近年、AOI(Automoted Optical Inspection Systemの略である。)と呼ばれる。)、X線透過撮影装置2、目視検査用の端末装置3の各装置が、通信回線5を介して統括制御用のサーバ4に接続された構成をとる。
【0020】
自動外観検査装置1は、検査対象の基板を図示しないカメラにより撮影し、生成された画像を処理することによって、基板上の各部品の実装状態を総合的に検査する。たとえば、部品の有無検査、実装間違いの検出検査、部品の実装位置や傾きの適否を判別するための検査、はんだ付け状態の適否を判別するための検査などが実行される。
【0021】
X線透過撮影装置2は、X線照射部、CCDなどの撮像素子、およびコンピュータを含む制御部などにより構成され、処理対象の基板をX線の照射下で撮影し、X線透視画像を生成する。目視検査用端末装置3(以下、「目視端末3」と略す。)は、検査用のプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータや、画像表示用のモニタ装置(いずれも図示せず。)などにより構成される。この目視端末3は、X線透過撮影装置2により生成されたX線透視画像を用いて、BGAなどの大型部品と基板との間にチップ部品が挟み込まれていないかどうかを、検査員が目視で確認する目的で使用される。
【0022】
サーバ4には、各装置の動作を制御するためのプログラムのほか、検査結果データベース41、透視画像データベース42、CADデータベース43などのデータベース(図では「DB」と略す。)が組み込まれている。検査結果データベース41には、個々の基板毎に、自動外観検査装置1および目視端末3から送信された検査結果が保存される。透視画像データベース42には、後記するX線透視画像のサンプル画像が部品種毎に格納される。CADデータベース43には、検査対象の基板のCADデータが格納される。
【0023】
自動外観検査装置1は、1枚の基板の検査が終了する都度、その基板の識別コード(以下、「基板ID」という。)に検査結果データを対応づけて、サーバ4に送信する。部品の有無検査において部品の欠落が検出された場合には、欠落したチップ部品(以下、「欠落チップ」という。)の部品名や実装位置など、欠落チップの特定に必要な情報(以下、「欠落チップ情報」と総称する。)を含む検査結果データが生成され、サーバ4に送信される。
【0024】
サーバ4は、自動外観検査装置1から欠落チップ情報を含む検査結果データを受けると、このデータ中に含まれる欠落チップ情報および基板IDを、X線透過撮影装置2および目視端末3に送信する。
【0025】
X線透過撮影装置2は、自動外観検査装置1からの基板の搬送に応じて、この基板を撮影する。この撮影では、基板の全体画像を生成しても良いが、この実施例では、サーバ4から送信された欠落部品の実装位置を基準に、マウンタのヘッドの可動範囲などに基づいて、チップ部品が飛ぶ可能性のある範囲を特定し、この範囲を対象とした撮影を行っている。
【0026】
上記の撮影により生成されたX線透視画像は、サーバ4を介して目視端末3に供給される。目視端末3は、送信されたX線透視画像を用いて目視検査用の画面を作成して、これをモニタ装置に表示し、検査員による判定入力(後記する「OK」「NG」のボタン22,23の操作により行われる。)を受け付ける。入力が行われると、その入力データを目視検査の結果としてサーバ4に送信する。
【0027】
なお、欠落チップが検出されなかった基板は、X線透過撮影装置2には搬送されず、「良品」として、基板出荷用の作業場(図示せず。)に搬送される。ただし、X線透過撮影装置2への基板の振り分けは、自動的な処理に限らず、人手により行ってもよい。また、X線透過撮影装置2と目視端末3とを1つの目視検査用の装置として構成してもよい。
【0028】
この実施例の目視端末3では、単にX線透視画像を表示するのではなく、目視検査の必要な場所を確認する作業を支援する参照用画像を、X線透視画像とともに表示することにより、目視検査の効率や精度を向上するようにしている。以下、両面実装基板を検査の対象とする場合を例に、目視検査の内容について、詳細に説明する。
【0029】
図2は、自動外観検査装置1が検査の際に生成した画像(カラー画像である。)の一例を示す。この画像は、検査対象の基板の一部の領域にカメラの視野を合わせて撮影することにより得られたもので、画像中にはBGAのパッケージ10の一部分が現れている(以下も、説明の便宜上、実際の基板の構成を画像中の符号に基づいて説明する。)。このパッケージ10の底面には、複数のバンプ(はんだボール)11が形成されている。またBGAの下方には、3個のチップ部品12,13,14が存在する。これらのバンプ11やチップ部品12〜14は、通常の画像では視認することはできないため、図2では、点線により示している。
【0030】
3個のチップ部品12〜14のうち、13と14とは、BGAの実装面とは反対の面に正しく実装された部品である。残りのチップ部品12は、本来は、BGAの左側の領域に実装されるべきものである(図中、正しい位置に実装されたときの部品を一点鎖線で示す。)が、実装処理の際にBGAの実装領域に飛び、その上からBGAが実装されたために、基板とBGAのパッケージ10との間に挟み込まれたものである。なお、正しく実装されている2個のチップ部品13,14のうち、13は、挟み込み不良の部品12と同じ種類の部品である。
【0031】
図3は、上記の挟み込み不良が生じた基板について、図2と同じ範囲のX線透視画像を示したものである。この画像では、BGAのパッケージ10はごく薄い状態になり(便宜上、図示していない。)、バンプ11やチップ部品12〜14が明瞭に表示される。
【0032】
このように、X線透視画像にすれば、BGAの下方のチップ部品12〜14の存在を確認することができるが、表側のチップ部品12と裏側のチップ部品13,14とを見分けるのは困難である。また、図2,3では、便宜上、チップ部品の数を少なくしているが、実際の基板には、多数のチップ部品が実装されるため、BGAと重なり合うチップ部品も多くなる可能性がある。これらの中から欠落チップと同一種の部品を特定し、それが挟み込み不良に相当する部品であるかどうかを判別するのは、かなりの経験をつんだ検査員であっても、骨の折れる作業になる、
【0033】
このような点に鑑み、この実施例では、基板のCADデータを用いて、基板上の正しい実装状態を示す正常パターンを生成し、この正常パターンをX線透視画像に重ね合わせて表示するようにしている。
【0034】
図4は、表示画面の一例を示す。
図中、20は、目視用画像の表示用のウィンドウである。この例のウィンドウ20では、CADデータを用いて基板上の部品やバンプの輪郭線を表す画像を正常パターンとして生成し、X線透視画像に重ね合わせて表示している。なお、図4では、部品の輪郭線を二重線で表し、バンプの輪郭線を太線で表しているが、実際の画面では、これらの輪郭線を所定の色彩で表すことができる。
【0035】
さらに、ウィンドウ20の下方には、欠落チップのX線透視画像のサンプル画像、および「OK」「NG」の判定入力ボタン22,23が表示される。また、ウィンドウ20の右横には、検査対象の基板IDや欠落チップ情報などを表示する第2のウィンドウ24が設けられる。
【0036】
上記の画面において、サンプル画像21は、サーバ4が透視画像データベース42から読み出して、目視端末3に送信したものである。基板IDや欠落チップ情報もサーバ4から送信されたものである。なお、サンプル画像21は、X線透視画像のサンプルに限らず、通常の濃淡画像のサンプルであってもよい。または、CADデータから生成したイメージデータでもよい。
【0037】
上記の表示画面によれば、検査員は、正常パターンの各輪郭線と実際の画像における部品との関係を照合することにより、輪郭線が示されていない部品を実装位置とは異なる場所にある部品であると判別することができる。また、サンプル画像により、この部品が欠落チップであるを確認でき、さらにこの部品がBGAのバンプの形成領域内に存在することから、この部品は挟み込み不良に相当する部品であると判別することができる。
【0038】
なお、図3および図4の例では、便宜上、図2の通常の画像と同じ領域内のX線透視画像を示したが、前述したとおり、X線透過撮影の対象領域は、欠落部品の実装位置や、チップ部品の飛び得る範囲に応じて、適宜定めることができる。
【0039】
図5は、目視端末3における処理の手順を示す。なお、この処理手順は1枚の基板に対して行われるものであるが、通常は、同一種の基板の検査を連続して行うと考えられるため、目視端末3では、あらかじめサーバ4に、検査対象となる基板の種類に対応するCADデータの送信を要求し、送信されたCADデータを内部のメモリに保存するようにしている(つぎの図6の手順でも同様である。)。
【0040】
図5において、最初のステップ1では、チップ部品の欠落が検出された基板について、サーバ4から基板IDおよび欠落チップ情報を受信する。さらにステップ2では、同様の情報を受信して撮影を行ったX線透過撮影装置2から、検査対象の基板のX線透視画像を受信する。
【0041】
ステップ3では、メモリに保存しておいたCADデータから、X線透視画像に対応する領域内のデータを読み出す。さらにステップ4では、このCADデータを用いて図4に示した正常パターンの画像を生成する。なお、X線透視画像に対応する領域は、欠落チップ情報中の欠落チップの実装位置やチップが飛び得る範囲に基づき、X線透過撮影装置2と同様の処理により求めることができる。または、X線透過撮影装置2から目視端末3に、撮影対象範囲を示す情報を送信するようにしてもよい。
【0042】
ステップ5では、ステップ2で入力したX線透視画像に上記の正常パターンを重ね合わせた画像を生成し、モニタ装置に、その画像を含む目視検査用画面(図4に示したもの)を立ち上げる。ここで、検査員により「OK」ボタン22または「NG」ボタン23が操作されると、そのボタンに対応する内容の判定入力がなされたものと判断して、ステップ6からステップ7に進み、入力された判定結果をサーバ4に出力する。
【0043】
上記の図4〜5の例では、基板の正常パターンの画像を、目視の対象を特定する作業を支援するための参照用画像として、X線透視画像とともに表示したが、参照用画像の表示はこれに限定されるものではない。
【0044】
図6および図7は、それぞれ上記とは異なる参照用画像による目視検査画面を設定して検査を行う場合の手順を示す。なお、これらの図では、図5と同様の処理を行うステップに同じステップ番号を付し、処理内容が変更されたステップを、図6ではステップ3A,4A,5Aとし、図7ではステップ3B,4B,5Bとしている。以下では、これら内容の異なるステップにおける処理に限定して説明する。
【0045】
図6の例では、ステップ1〜3を実行した後に、ステップ3Aで、サーバ4から欠落チップのサンプル画像の送信を受け付ける。つぎのステップ4Aでは、受信したサンプル画像を用いてX線透視画像に対する正規化相関マッチング処理を実行し、サンプル画像に対する相関値が所定の基準値を上回った領域を、サンプル画像に対応する領域として検出する。
【0046】
ステップ5Aでは、領域の検出結果をステップ3で読み出されたCADデータと照合して、CADデータが示す部品の位置や傾きに適合しなかった領域をマーキングしたX線透視画像を生成し、この画像を含む画面を立ち上げる。なお、マーキング表示は、領域全体を所定の色彩で表示したり、領域の輪郭線を表示するもののほか、領域を矢印で指し示すようにしてもよい。
【0047】
上記の実施例では、欠落チップと同一種の部品であって、CADデータが示す正常な実装状態に適合していない部品が存在する場所を示すマーキングの画像を、参照用画像として機能させる。このような参照用画像によれば、欠落チップである可能性のある部品が存在する場所を漏れなく把握することができるので、目視確認が必要な部品を見落とすおそれがなくなる。
【0048】
基板の適正位置に実装されるチップ部品は、殆どの場合、電極の並び方向(横幅方向)が基板の縦または横方向に合わせて実装される。また両端の電極は、必ず基板のランドに重ね合わせられる。また、BGAと基板との間にチップ部品が挟み込まれた場合は、BGAのバンプがつぶれてしまうことがある。
したがって、ある程度の経験を積んだ検査員であれば、部品の横幅方向が基板の縦横方向に対して斜めになっていたり、電極がランドに重なっていなかったり、バンプがつぶれているなどの状態から、挟み込み不良の部品を特定することができる。図6に示した処理によって確認すべき部品を見落とすことがなくなれば、目視検査による判別の精度を大幅に向上することができる。
【0049】
さらに、この実施例の場合、上記のマーキング表示に加え、マッチング処理時に得た相関値を参考情報として表示するようにしてもよい。このようにすれば、検査員は、相関値が高い領域(すなわち欠落チップに該当する可能性が高い領域)について、特に念を入れた目視確認を行うことができ、検査の精度を向上することができる。
また、CADデータと適合すると判別された領域についても、上記のものとは異なる態様によるマーキング表示を行ったり、相関値を表示してもよい。
【0050】
図7の例は、あらかじめ全ての部品が良好に実装された基板全体のX線透視画像を、良品モデル画像としてサーバ4に登録しておき、検査の前に目視端末3に送信することを前提とする。この例では、ステップ1,2を実行した後に、ステップ3Bにおいて、この送信された良品モデル画像の中からX線透視画像に対応する領域内の画像を切り出す。なお、切り出し対象の領域は、X線透過撮影装置2撮影対象範囲を示す情報の送信を受けるなどの方法で特定することができる。
【0051】
ステップ4Bでは、X線透視画像とステップ3Bで切り出された画像との差分演算処理を行って、両者の差画像を生成する。ステップ5Bでは、この差画像と元のX線透視画像とを並列表示した画面を立ち上げる。
なお、上記2種類の画像の表示は並列表示に限らず、差画像を2値化して得られる特徴抽出画像をX線透視画像に重ね合わせて表示してもよい。
【0052】
上記の差画像は、欠落チップの本来の実装位置のほか、この欠落チップが飛んだ場所を表すものになると考えられる。よって、検査員は、この差画像とX線透視画像とを見比べることにより、チップ部品が他の部品の実装位置に飛んだのかどうかを、簡単に判別することができる。
【0053】
なお、ここまでの記載では、両面実装基板を対象にした目視検査を行う場合を説明したが、片面実装の基板についても、同様に参照用画像を表示すれば、欠落部品とその他の正常に実装されている部品とを容易に見分けることが可能になるので、検査の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】基板検査システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】自動外観検査装置で生成された検査対象基板の画像を示す説明図である。
【図3】図2の画像と同じ範囲のX線透視画像を示す説明図である。
【図4】目視検査用の画面の一例を示す説明図である。
【図5】目視端末における処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】目視端末における処理の手順の他の例を示すフローチャートである。
【図7】目視端末における処理の手順の他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 自動外観検査装置
2 X線透過撮影装置
3 目視検査用端末装置
10 BGAのパッケージ
12,13,14 チップ部品
20 表示用のウィンドウ
22,23 操作ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面実装基板を対象に、ある部品が正しい位置に実装されずに他の部品と基板との間に挟み込まれている不良が生じていないかどうかを検査する方法であって、
外観検査装置を用いて前記両面実装基板に部品の欠落箇所がないかどうかを検査する第1ステップ、
第1ステップで部品の欠落箇所があると判断された基板を対象にX線透過撮影を行って、X線透視画像を生成する第2ステップ、
前記第2ステップで生成されたX線透視画像について、その画像に対応する範囲における正しい実装状態を表す画像、または当該正しい実装状態に該当しない箇所を示す画像を、目視の対象を特定する作業を支援するための参照用画像として生成する第3ステップ、
第3ステップで生成した参照用画像を前記X線透視画像とともに表示し、この表示状態下で、前記欠落部品の挟み込み不良が生じていないか否かについて、検査員の判定入力を受け付ける第4ステップ、
の各ステップを実行することを特徴とする基板検査方法。
【請求項2】
前記第3ステップでは、前記両面実装基板の設計データを用いて部品の正しい実装状態を表す画像を、前記参照用画像として生成する、請求項1に記載された基板検査方法。
【請求項3】
前記第3ステップでは、あらかじめ部品種毎に登録されたX線透視画像のサンプル画像の中から欠落部品に対応するものを選択し、選択したサンプル画像を用いたマッチング処理によりX線透視画像中でサンプル画像に対応する領域を特定した後、特定された領域を前記両面実装基板の設計データと照合し、設計データに適合しない領域を示す画像を前記参照用画像として生成する、請求項1に記載された基板検査方法。
【請求項4】
前記第3ステップでは、あらかじめ各部品が正常に実装された両面実装基板を用いて生成されたX線透視画像のモデル画像と第2ステップで生成されたX線透視画像との差分演算処理を実行し、この処理結果を示す差画像を前記参照用画像として生成する、請求項1に記載された基板検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−186879(P2008−186879A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17369(P2007−17369)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)