説明

基板生産ラインにおける目視確認処理の管理方法、およびこの方法を用いた基板生産ラインの管理用サーバ装置

【課題】目視確認のためにラインが停滞するのを解消する。
【解決手段】情報収集処理部305は、各工程の製造装置1および検査装置2から、所定の時間毎に、管轄する基板の基板状況データおよび検査結果を取り込んで、データベース302,303を書き換える。処理開始時刻予測部306は、各工程で搬送中および待機中の基板について、データベース301,302を用いて次の工程の処理が開始される時刻を算出する。確認待ち行列生成部307は、データベース303を用いて、各工程で不良と判定された基板の不良判定部位毎に確認要求コマンドを設定し、各確認要求コマンドを、処理開始予定時刻が早い基板に対応するものから順に並べたデータ列を作成する。割当処理部309は、端末装置4との通信により、処理が可能な端末装置4を認識し、その装置にデータ列の先頭のコマンドを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の工程毎に自動外観検査装置を含む製造処理部が設けられた基板生産ラインを少なくとも1ライン含む基板生産システムにおいて、各自動外観検査装置(以下、単に「検査装置」という場合もある。)による検査結果を確認する技術に関する。特にこの発明は、検査装置で不良と判定された被検査部位の画像を、本当に不良であるかどうか目視により判断するために、複数人の係員に行わせる目視確認処理を管理する方法、およびこの方法を実施するサーバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装基板の生産ラインには、一般に、クリームはんだの印刷工程、部品の実装工程、およびリフロー工程の3種類の工程が含まれる。また工程毎に自動外観検査装置を設け、処理後の基板を検査してから後続の工程に流すようにしたラインについて、検査に使用された画像を検査結果とともにモニタに表示して、係員による確認作業を行えるようにした基板検査システムも提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
ただし自動検査を行う場合には、判定基準値の設定によって、実際は不良でないのに不良と判定されることがある(以下、この誤判定を「見過ぎ」と呼ぶ。)。このため、従来の基板生産ラインには、各自動検査装置に専用の端末装置を接続し、この端末装置に不良と判定された被検査部位の画像を送信して、係員による目視確認を行うものがある(特許文献2の段落0003,図7参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−303269号公報
【特許文献2】特許第3724851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不良判定部位の目視確認を行う場合には、最終工程以外の工程で不良判定がなされても、「見過ぎ」と判断されれば、不良と判定された基板を取り除かずに次の工程に搬送するので、そのまま次の工程の処理を進めることができる。しかし、この方法では、目視確認が終了するまで次の工程を実行せずに待機する必要があるため、不良判定部位が増えたり、確認作業の時間が長くなったりすると、処理待ちの基板が増えてラインが停滞するおそれがある。
【0006】
また、従来の確認作業では、ラインや工程毎に目視確認の担当者が割り振られているので、あるラインで多数の不良判定部位が発生した場合、他のラインの担当者が手すきの状態であっても、不良判定部位が発生したラインの担当者のみで対応しなければならず、その結果、その担当のラインのみが停滞することがあった。
【0007】
この発明は上記の問題に着目してなされたもので、不良判定部位の目視確認のためにラインが停滞したり、目視確認の担当者の負荷にばらつきが生じるのを解消し、基板生産ラインを効率良く稼動させることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための基板生産ラインにおける目視確認処理の管理方法では、各工程の製造処理部、およびライン外に配備される複数の端末装置を、それぞれ共通のサーバ装置に接続し、各製造処理部は、管轄する基板の処理状況データおよび検査結果データをサーバ装置に送信する処理を、各端末装置は、自装置が目視確認の要求を受け付け可能な状態にあるか否かを示す稼動状況データをサーバ装置に送信する処理を、それぞれ繰り返し実行し、サーバ装置において、下記のステップA、B,C,Dを実行するようにしている。
【0009】
ステップAでは、各製造処理部から送信された検査結果データを用いて、不良と判定された基板およびその不良判定部位を認識する。ステップBでは、各工程における処理時間および工程間における基板の搬送時間、ならびに各製造処理部から送信された各基板の処理状況データに基づき、ステップAで認識された基板毎に、次の工程の処理が開始されるタイミングを予測する。なお、この予測処理は、たとえば「次の工程が開始される時刻」または「次の処理が開始されるまでの待ち時間」を算出する処理として、実行される。
【0010】
ステップCでは、不良判定された基板の不良判定部位毎に確認要求コマンドを設定し、各確認要求コマンドをステップBで予測されたタイミングが早い基板に対応するコマンドから順に配列したデータ列を生成する。
【0011】
ステップDでは、各端末装置から送信された稼動状況データに基づき、目視確認の要求を受け付け可能な端末装置を特定し、その装置に、ステップCで生成したデータ列の先頭部分の確認要求コマンドを送信する。なお、「先頭部分の確認要求コマンド」は1つに限らず、複数のコマンドをまとめて送信してもよい。
【0012】
上記の方法において、製造処理部や端末装置からサーバ装置へのデータ送信は、たとえば、一定の時間が経過する毎に実行しても良い(すなわち、定期的なデータ送信)が、これに限らず、新たなデータが発生する都度、行ってもよい(すなわち、不定期のデータ送信)。また、サーバ装置からのデータ送信要求に応じて、その時点で保持するデータを送信するようにしてもよい。
【0013】
サーバ装置は、1台のコンピュータにより構成することができるが、これに限らず、複数台のコンピュータによるネットワークシステムとして構成してもよい。
【0014】
上記のステップAでは、最終工程以外の工程の製造処理部で不良と判定された基板を認識すれば良いが、これに限らず、全工程での不良判定基板を認識してもよい。ただし、この場合、最終工程で不良判定された基板については、ステップB,Cの対象とせず、その他の工程で不良と判定された基板に対する確認要求コマンドの送信が終了してから、確認要求コマンドの設定や送信を行うようにしてもよい。
【0015】
各製造処理部からの処理状況データは、管轄する基板およびその基板に対する処理状況を表すものである。たとえば、管轄に入った基板の識別データと、その基板の現在の処理状況を示すデータ(待機中、処理中、処理済みなど)とを組み合わせたものとなる。
【0016】
検査結果データは、検査が行われた基板およびその検査結果を表すものである。たとえば、検査が行われた基板の識別データと良否を示すデータ(OK/NG)とを組み合わせたものとなる。さらに個々の被検査部位のうち、少なくとも不良と判定された部位について、その部位の識別データや不良の内容を示すデータが検査結果データに含まれるのが望ましい。
【0017】
確認要求コマンドは、どの基板のどの部位の画像を目視確認の対象とするかを示すものであるのが望ましい。たとえば、確認対象の不良判定部位を特定するデータ(たとえば、基板および不良判定部位の識別データの組み合わせ)、もしくはこの部位の画像を呼び出すためのデータ(たとえば、画像格納場所のアドレスや画像ファイル名など)を含むデータを、確認要求コマンドとする。
【0018】
上記の方法によれば、不良と判定された基板を、次の工程の処理が開始されるタイミングが早い順に、目視確認処理を割り当てることができる。すなわち、確認処理を急ぐ必要がある基板から順番に、処理が可能な端末装置による確認作業を行うことが可能になるから、係員の負荷がばらつくのを防止して、効率良く、目視確認作業を進めることができる。
【0019】
上記方法の好ましい態様では、ステップBにおいて、最終の工程を除くいずれかの工程の検査装置で不良と判定されて次の工程に搬送される基板があるとき、次の工程の製造処理部から送信された処理状況データに基づき、当該次の工程が管轄する先行の基板の処理に要する時間を求め、次の工程に搬送される基板について、その搬送に要する時間から当該基板が次の工程の管轄に入る時刻を割り出し、その時刻から先行の基板の処理に要する時間が経過した時点の時刻を、次の工程の処理が開始される時刻として設定する。よって、複数のラインまたは工程において、同じ時期に不良判定が行われた場合でも、次の工程での処理待ち時間が少ないものから優先的に目視確認が行われるので、目視確認作業のために次工程の処理開始が遅くなるのを防止することができる。
【0020】
さらに好ましい態様では、サーバ装置は、確認要求コマンドを送信した端末装置から、そのコマンドに対する目視確認結果を受け付けるステップEと、このステップEで受け付けた目視確認結果が不良である旨を示すとき、前記データ列から同一の基板に対応する確認要求データを削除するステップFとを、さらに実行する。
【0021】
上記の態様は、目視確認処理で「不良」と判断された基板がラインから取り除かれる場合に有用である。1枚の基板に複数の不良判定部位がある場合には、これらの部位毎に確認要求コマンドが設定されるが、これら不良判定部位のうちの1つが目視により「不良」と判断されると、残りの不良判定部位に対応する確認要求コマンドはすべてデータ列から削除される。よって、他の不良判定部位の確認要求データが繰り上げられ、目視確認作業の開始タイミングを早めることが可能になる。
【0022】
上記の方法を実行する管理用のサーバ装置は、各ラインの各工程の製造処理部から、それぞれその処理部が管轄する基板の処理状況データおよび検査結果データを収集する処理を、繰り返し実行する第1の情報収集手段;各端末装置から、それぞれその端末装置が目視確認の要求を受け付け可能な状態にあるか否かを示す稼動状況データを収集する処理を、繰り返し実行する第2の情報収集手段;第1の情報収集手段が各製造処理部から収集した検査結果データを用いて、不良と判定された基板およびその不良判定部位を認識する不良基板認識手段;各工程における処理時間および工程間における基板の搬送時間、ならびに第1の情報収集手段が収集した各基板の処理状況データに基づき、前記不良基板認識手段により認識された基板毎に、次の工程の処理が開始されるタイミングを予測する予測手段;不良判定された基板の不良判定部位毎に確認要求コマンドを設定し、各確認要求コマンドを前記予測手段により予測されたタイミングが早い基板に対応するコマンドから順に配列したデータ列を生成するデータ列生成手段;第2の情報収集手段が各端末装置から収集した稼動状況データに基づき、目視確認の要求を受け付け可能な端末装置を特定し、その装置に、データ列の先頭部分の確認要求コマンドを送信するデータ送信手段;の各手段を具備する。
【0023】
上記の構成によれば、第1、第2の各情報収集手段により、各製造処理部および端末装置から情報を収集するとともに、不良基板認識手段によりステップAが、予測手段によりステップBが、データ列生成手段によりステップCが、データ送信手段によりステップDが、それぞれ実行されることになる。なお、このサーバ装置は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータによるネットワークシステムとして構成してもよい。
【発明の効果】
【0024】
上記の目視確認処理の管理方法およびサーバ装置によれば、不良と判定された基板は、次の工程の処理が開始されると予測されるタイミングが早いものから順に目視確認の対象とされるので、目視確認による次の工程の処理の遅延を防止することが可能になる。また、目視確認の割り当ては、目視確認処理を実行可能な端末装置に対して行われるので、特定の係員に処理が集中することがなく、係員間の負荷のばらつきを小さくすることができる。よって、目視確認作業を効率良く進行させて、ラインが停滞するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、この発明が適用された基板生産システムの構成例を示す。
この基板生産システム10は、複数本(図示例ではライン1,2の2本)の基板生産ラインにより、多数枚の基板の生産および検査を一連に実行するものである。各ラインには、クリームはんだの印刷工程(略号をPとする。)、部品の実装工程(略号をZとする。)、およびリフロー工程(略号をSとする。)の3つの工程が含まれる。
【0026】
いずれの工程にも、その工程の処理を自動で実行するための「製造処理部」が設けられる。印刷工程の製造処理部である印刷処理部11は、はんだ印刷機1Aと印刷後検査装置2Aにより構成される。実装工程の製造処理部である実装処理部12は、部品実装機1B(マウンタ)と実装後検査装置2Bとにより構成される。リフロー工程の製造処理部であるリフロー処理部13は、リフロー炉1Cとリフロー後検査装置2Cとにより構成される。
【0027】
以下、それぞれの工程の実質的な処理を担当するはんだ印刷機1A、部品実装機1B、リフロー炉1Cを、「製造装置1」と総称し、印刷後検査装置2A、実装後検査装置2B、リフロー後検査装置2Cを、「検査装置2」と総称する。各検査装置2は、カメラやコンピュータを有する自動外観検査装置であって、設置されている工程に応じた内容の検査を実行する。
【0028】
各製造装置1および検査装置2は、それぞれライン外に設けられたサーバ装置3に通信回線を介して接続されている。さらに、サーバ装置3は、第2の通信回線を介して複数台の端末装置4に接続されている。各端末装置4は、パーソナルコンピュータにキーボード、マウス、モニタなどの周辺機器を接続した構成のものである。
【0029】
上記の基板生産システム10では、各ラインでP、Z、Sの各工程を順に実行することにより、部品実装基板を完成させる。また、工程毎に検査装置2による自動検査を実行し、すべての工程の検査で「良品」と判定された基板のみを出荷する。ただし、自動検査では「見過ぎ」が生じる場合があるので、この実施例では、各工程で不良判定がなされても、その対象の基板をすぐには取り除かずに次の工程(最終のリフロー工程の場合には、ラインの終端位置をいう。以下も同じ。)に搬送し、不良と判定された被検査部位(不良判定部位)の画像を端末装置4に表示して、担当の係員による目視確認処理を行うようにしている。
【0030】
サーバ装置3は、各検査装置2から検査に用いた画像の配信を受け付けて、内部のメモリに蓄積する。また、サーバ装置3は、各工程の製造処理部の稼動状態や検査結果を認識して、各端末装置4に目視確認の対象の被検査部位を割り当てるとともに、端末装置4からの確認結果を受け付けて、モニタに表示するなどの報知を行う。この報知された目視確認結果が「不良」である場合には、その不良判定がされた基板を取り除く作業が行われる。一方、目視確認結果が「見過ぎ」である場合には、基板は良品であると判断されて、つぎの工程の処理が実行される。
【0031】
図2は、サーバ装置3の機能ブロック図である(ただし、製造装置1、検査装置2、端末装置4との関係を示すために、これらの装置を1個ずつ示す。)。この図に示すように、サーバ装置3には、工程マスタテーブル、基板状況テーブル、検査結果テーブルの3種類のテーブル(図2ではTBと略す。)を保存するためのデータベース301,302,303が設けられる。工程マスタテーブルは、製造処理部毎に設定されるもので、対応する製造処理部が1枚の基板を処理するのにかかる時間(製造装置1、検査装置2の各処理時間に装置1,2間における基板の搬送時間を合算した時間である。以下、この時間を「処理時間」という。)や、次の工程に1枚の基板を搬送するのにかかる時間(以下、「搬送時間」という。)が格納される。
【0032】
基板状況テーブルおよび検査結果テーブルは、ラインに送り込まれた基板毎に設定される。図3は、これらのテーブルのデータ構成例を示す。なお、この図3では、複数のデータのいずれかを選択して格納される領域については、選択され得るデータを列挙し、そのうち、この例で選択されているデータを丸印で囲んで示す。
【0033】
図3(1)に示す基板状況テーブルは、対応する基板が、現在、どの工程にどのような状態でいるかを示すものである。このテーブルには、基板を特定するための情報として、基板IDおよびライン投入番号が格納されるほか、ライン番号、現処理工程、処理状況、処理開始時刻、処理終了時刻、処理開始予定時刻などの情報が格納される。
【0034】
『基板ID』は、各基板に固有の識別コードである。『ライン投入番号』は、ラインへの基板の投入順に設定されるシリアル番号であって、基板IDと同様に、基板毎に固有の情報である。ただし、目視確認により不良が確認されて、基板がラインから除去され、修正作業後にラインに再投入される場合には、『基板ID』は書き換えられないが、『ライン投入番号』は新たな番号に書き換えられる。『ライン投入番号』は、ラインの先頭の印刷処理部11、または図示しないライン統括用の制御部により付与される。
【0035】
『ライン番号』は、基板が投入されるラインの識別コードである。『現処理工程』とは、現在、基板を管轄している工程であって、各工程の略号であるP,Z,S、および全ての工程を終了したことを示すデータ「End」のうちのいずれかが格納される。なお、各工程とも、自工程の入口(図示しない受付装置が配備されている地点)から次の工程の入口の手前までを管轄範囲とする。基板状況テーブルの『処理状況』は、この管轄範囲における基板への具体的な処理の内容を示すもので、基板受付部に待機している場合には「待ち」が、製造または検査が行われている場合には「処理中」が、次工程への搬送が行われている場合には「搬送中」が、それぞれ選択される。
【0036】
『処理開始時刻』は、管轄の工程の製造装置1による処理が開始された時刻であり、『処理終了時刻』は、管轄の工程の検査装置2による検査が終了した時刻である。これらはいずれも現実の時刻なので、実際に処理が開始または終了するまで書き込まれない。
【0037】
『処理開始予定時刻』は、サーバ装置3の予測処理により、製造処理部による処理が開始される時刻として割り出された時刻である。この予測処理は、処理が開始される前の待機状態の基板、および処理が終了して次の工程への搬送が開始された基板に対して行われる。すなわち、ある工程の検査を終了した基板について、次の工程が開始される時刻を予測することになる。
【0038】
(2)−1の検査結果テーブルは、基板全体の総合的な検査結果を示すもので、ラインを流れる基板毎に作成され、検査の都度、書き換えられる(または検査毎に異なるテーブルが作成される場合もある。)。このテーブルには、基板ID、処理工程、検査結果(OKまたはNG)、目視結果(OK、NG、Nullのいずれか)などが格納される。なお、目視結果の「Null」は、目視確認作業がまだ行われていないことを示すものである。
【0039】
(2)−2のNGデータテーブルは、不良判定された基板について、不良判定部位毎に作成されるもので、不良判定部位を特定するためのデータとして、基板IDおよび被検査IDが格納される。さらに、この部位の目視検査を担当した端末装置4のID、自動検査の結果(NGのみ)、および目視結果(OK、NG、Nullのいずれか)が格納される。なお、このNGデータテーブルも、検査結果テーブルとともに、検査結果テーブルデータベース303に格納される。
【0040】
図2に戻って、上記した3種類のデータベース301,302,303に対するデータの格納処理は、情報収集処理部305により行われる。情報収集処理部305は、基板状況テーブルデータベース302や検査結果テーブルデータベース303に対しては、所定の時間毎に新しい情報の配信を受け付けてテーブルの内容を書き換える。一方、工程マスタテーブルデータベース301については、原則として、システムの立ち上げ時などに、各工程から情報を取り込んでテーブルに書き込むのみであり、その後は更新しない。
【0041】
さらにサーバ装置3には、画像データベース304や、この画像データベース304に格納する画像を各検査装置2から受け付けるための画像入力部313が設けられる。画像データベース304には、各検査装置2の検査に使用された画像が部品単位のファイルとして格納されている。各画像には、基板および部品の識別コード(以下、それぞれを「基板ID」、「部品ID」という。)ならびに検査を実行した工程の略号(P,Z,S)を含むファイル名が付されているので、これらの情報を特定することによって、検査に使用された画像を読み出すことができる。
【0042】
上記のほか、サーバ装置3には、処理開始時刻予測部306、確認待ち行列生成部307、確認待ち行列記憶部308、割当処理部309、目視結果入力部310、行列更新部311、目視結果書込部312、アクセス受付部314、画像読出部315などが設けられる。これらは、いずれも、サーバ装置3の図示しないCPUを含むハードウェアとプログラムとが協同することにより設定される機能である。
【0043】
処理開始時刻予測部306は、工程マスタテーブルや基板状況テーブルを参照して、各工程の待機状態または搬送中の基板について、前記した処理開始予定時刻を求める処理を実行する。具体的な時刻算出方法については後記する。
【0044】
確認待ち行列生成部307は、各基板の検査結果テーブルや、不良判定された基板のNGデータテーブルを用いて、各工程で不良と判定された基板や具体的な不良判定部位を認識し、その部位毎に、端末装置4に目視確認を要求するコマンド(以下、「確認要求コマンド」という。)を設定する。この確認要求コマンドには、目視確認の対象部位に対応する画像ファイルのファイル名が含まれている。
【0045】
さらに確認待ち行列生成部307は、不良と判定された基板について、処理開始時刻予測部306から処理開始予定時刻を取り込み、その時刻が早い基板に対応するものから順に、確認要求コマンドを配列する。この配列により生成されたデータ列を、「確認待ち行列」という。生成された確認待ち行列は、確認待ち行列記憶部308に保存される。
【0046】
割当処理部309は、各端末装置4との通信により、係員がおり、かつ目視確認処理が行われていない端末装置4を「目視確認の要求を受付可能な端末」と認識し、認識した端末装置4に、確認待ち行列の先頭の確認要求コマンドを割り当てる。そして、割り当てた確認要求コマンドを、そのコマンドを割り当てた端末装置4に送信することにより、対象の被検査部位を特定した目視確認処理を要求する。
【0047】
端末装置4では、上記の確認要求コマンドを受け付けると、そのコマンド中の画像ファイル名を、リンク付きデータとしてモニタに表示する。係員がこのリンク付きデータをクリックすると、そのデータは、サーバ装置3のアクセス受付部314を介して画像読出部315に送られる。画像読出部315は、データの内容に基づき画像データベース304を検索して、対応する画像を読み出す。読み出された画像は、アクセス受付部314を介して、アクセスを行った端末装置4に返送される。
【0048】
端末装置4では、送信された画像をモニタに表示する。係員は、この表示画面により不良判定部位の状態を目視確認し、判断の結果を示すデータ(OKまたはNG)を入力する。入力されたデータは、サーバ装置3の目視結果入力部310に送信された後、行列更新部311や目視結果書込部312に渡される。
【0049】
目視結果書込部312は、供給された目視結果データを、該当する基板の検査結果テーブルやNGデータテーブルを書き換える。すなわち、各テーブル中の目視結果データを、NullからOKまたはNGに書き換えることになる。行列更新部311は、割当処理部309による確認要求コマンドの割り当てに応じて、確認待ち行列の先頭のコマンドを消去する。また、目視結果入力部310から供給された目視結果データが「NG」であったときは、行列更新部311は、その目視結果に対応する基板について、確認待ち行列に確認要求コマンドが残っていないかどうかを確認し、残っていれば、消去する。
【0050】
図4は、確認要求コマンドの構成およびコマンドの割り当て処理の方法を、模式的に示す。この例では、個々の不良判定部位に対応する確認要求コマンドを丸印に置き換えて、確認待ち行列の構成を表している。各コマンド内の数字は、各基板の処理開始予定時刻を早いものから順に並べたときの順序を表す。また、この図では、4台の端末装置4を、それぞれ「端末A」「端末B」「端末C」「端末D」として示す。
【0051】
図4の確認待ち行列には、4枚の基板につき生成された確認要求コマンドが含まれている。4枚のうち処理開始予定時刻が最も早い基板(「1」が付されたコマンドに対応するもの)には、7個の不良判定部位があり、そのうちの2個が、端末B,Cで目視確認されている。この例では、残り2台の端末装置4のうち、端末Aが処理が可能な状態にあるので、この端末Aに確認待ち行列の先頭の確認要求コマンドが送信される。さらに、処理中の端末B,Cの処理が終了したり、端末Dに係員が戻ってきた場合には、これらの端末装置4に、確認待ち行列のつぎの確認要求コマンドが送信されることになる。
【0052】
図5は、目視確認処理で不良判定が行われた場合の確認待ち行列の更新例を示す。この図の上段は、図4に示した割り付け処理が行われて、端末Aに送信した先頭の確認要求コマンドが消去された状態を示す。この状態下で端末Aから「NG」の目視結果データが送信されたものとすると、図5の下段に示すように、行列更新部311によって、確認待ち行列に残っていた1枚目の基板の確認要求コマンドがすべて消去され、2番目の基板の確認要求コマンドが繰り上げられる。これにより、明らかな不良によりラインから回収される基板を目視の対象から外し、目視確認に待機している基板を優先的に処理することができるので、目視確認の効率を向上させることができる。
【0053】
なお、端末装置4側の処理に余裕がある場合には、先頭から削除したコマンドを確認待ち行列の最後尾に配置して、目視確認を行うようにしてもよい。
【0054】
図6は、ライン1,2で不良判定された基板に対し、従来の方法による目視確認処理を行う場合の検査結果と処理の流れとの関係を示す。この例では、ライン1,2とも、実装工程(Z)からリフロー工程(S)に向けて、4枚の基板が流されるものとして、Z,Sの工程および基板毎に、自動検査により不良と判定された部位の数(不良判定数)と、目視により不良と判定された部位の数(実不良数)とを対比させたテーブルと、基板毎のタイムチャートとを、左右に対応づけて示している。各テーブルの『ID』は、前出の基板IDである。いずれのラインでも、この基板IDが若い基板から順に搬送して、この図に示していない印刷工程(P)、およびZ,Sの各工程を順次実行する。
【0055】
なお、図6および次の図7では、同一基板に対する各工程間の処理の切り替わりを、矢印により示している。またタイムチャート中の「処理」には、製造装置1における処理と検査の双方が含まれる。また太枠部分は、処理の終了した基板を次工程またはラインの終端に搬送している期間にあたり、目の細かい網点パターンで示す期間は、目視確認処理の期間を示す。
【0056】
図6の従来例では、各ラインの各工程毎に、それぞれ1台の専用の端末装置4が設置され、各工程で不良判定された基板の目視確認処理を、それぞれその工程を担当する端末装置4でのみ確認する。このような処理を行う場合、1枚の基板に多数の不良判定部位があると、その基板に対する確認作業が長引き、その結果、処理待ちの時間が長くなって、後続の基板の処理に影響を及ぼす場合がある。
【0057】
たとえば、図6の例では、ライン1の実装工程(Z)において、最初の基板(ID:1001)に10個の不良判定部位があり、次のリフロー工程(S)への搬送が終了しても目視確認が終了しなかったため、この基板に対するリフロー工程の開始が遅れている。また、1番目の基板の目視確認処理が長引いたことにより、つぎの基板(ID:1002)に対する目視確認の開始が遅れ、その結果、この基板に対するリフロー工程の開始も遅れている。さらに、この2枚目の基板の処理の遅れによって、3、4枚目の基板(ID:1003,1004)に対するリフロー工程に大幅な遅れが生じている。
【0058】
またライン2では、実装工程(Z)において、2番目の基板(ID:2002)に多数の不良判定部位があって目視確認が長引いた上に、実際に不良の部位があることが確認されて、この基板を取り除く作業が行われている。この間に、後続の3枚目、4枚目の基板(ID:2003、2004)がリフロー工程に到着しているが、3枚目の基板に対する目視確認処理の開始が遅れた上に、この3枚目の基板にも多数の不良判定部位があったため、目視確認処理の時間が長くなっている。この結果、3,4枚目の基板に対するリフロー工程は、大幅に遅れて開始されている。
【0059】
図7は、図6の例と同様の検査結果に対し、図3に示した割り当て処理を実行する場合の処理の流れを示す。この例では、すべてのライン、全ての工程で生じた不良判定部位をとりまとめ、目視確認を急ぐものから順に、処理が可能な端末装置4に割り当てる。この割り当ては、個々の不良判定部位毎に行われるので、ライン1の1番目の基板のように、不良判定部位が多い基板があっても、複数の端末装置4で分担して確認作業を行うことができる。この結果、いずれの基板でも、従来例に比べて目視確認期間が大幅に短縮されるので、図7の例のように、搬送時間内に目視確認を終了することが可能になる。
【0060】
また、ライン2では、2番目の基板に実際に不良箇所があって、ラインから基板を取り除く必要があるが、この例では複数の端末装置4で目視確認作業を分担でき、しかも不良が確認された段階で処理を打ち切るので、図6の例より格段に早く目視確認処理を終了することができる。この結果、後続の基板についても、搬送時間内に目視確認を終了することができるので、リフロー工程に到着後すぐに処理を開始できる状態となっている。
【0061】
以下、図8〜11を用いて、サーバ装置3の具体的なアルゴリズムを説明する。
まず、図8および図9は、確認待ち行列の生成処理(処理開始予定時刻の算出を含む。)の流れを示す。この処理では、各ラインの各工程について、ライン数の若い順、および上流から下流に向かう順に、ST101〜118のループを実行する。
【0062】
このループでは、まず、ST102において、着目中の工程について、工程マスタテーブルから、処理時間Vおよび搬送時間Wを読み出す。つぎにST103において、ライン番号および工程の略号に基づき、基板状況テーブルデータベース302から着目中の工程の管轄下にある基板の基板状況テーブルを読み出し、図示しない作業用メモリに保存する。
【0063】
つぎに読み出した各テーブルの処理状況データをチェックする。ここで、処理状況データが「搬送中」のテーブルがあれば、ST104が「YES」となり、その「搬送中」の基板について、以下のST105およびST106を実行する。
【0064】
「搬送中」の基板は、製造装置1における処理および検査が終了した基板であるから、その基板状況テーブルには、処理終了時刻が書き込まれているはずである。ST105では、この処理終了時刻を読み出し、その時刻に搬送時間Wを加えた時刻Tを算出する。つぎのST106では、Tの値を、「搬送中」の基板の処理開始予定時刻として、基板状況テーブルに保存する。
【0065】
つぎに、ST103で読み出された基板状況テーブルの中に、処理状況データが「待機中」のものがある場合には、ST107が「YES」となり、ST108〜117の処理を実行する。
【0066】
ST108では、ST103で読み出された基板状況テーブルの中に、処理状況データが「処理中」のテーブルがあるかどうかをチェックする。このテーブルが存在する場合、すなわち着目中の工程で所定の基板を処理している場合には、ST108が「YES」となってST109に進み、その処理中の基板の処理開始時刻に、ST102で読み出した処理時間Vを加えた時刻Tを求める。一方、処理中の基板がない場合には、ST108が「NO」となってST110に進み、現在時刻をTとする。
【0067】
上記の時刻Tは、待機中の先頭の基板に対する処理が開始される時刻に相当すると考えられる。以下では、待機中の基板毎に、ST111〜115のループが実行される。
【0068】
このループのST112では、まず他の待機中の基板の基板状況テーブルを用いて、ライン投入番号が着目中の基板より若い基板(すなわち、着目中の基板より先に処理される基板である。)の数Nを求める。ST113では、先の時刻Tに(N×V)時間を加えた時刻を求め、これを時刻Tとする。ST114では、このTを着目中の基板の処理開始予定時刻として、その基板の基板状況テーブルに保存する。
【0069】
このようにして、待機中の基板毎に処理開始予定時刻を求めると、ST116では、これらのうち最も遅い時刻と現在時刻との差を求め、これを待機中基板の最大待ち時間とする。ST117では、着目中の工程の1つ上流の工程の管轄にある搬送中基板の処理開始予定時刻を、その時刻にST116で求めた最大待ち時間を加えた時刻と比較し、より遅い方の時刻を処理開始予定時刻とする。ただし、最初の工程である印刷工程については、ST116,117はスキップされる。
【0070】
このように、待機状態にある基板については、その基板を管轄する工程の処理時間と先行の基板の数とに応じて、待機中の処理の処理開始予定時刻が算出される。また、処理を終了してつぎの工程に搬送されている基板については、その基板がつぎの工程に到着する時刻と先行の基板の数とに基づき、つぎの工程の処理の処理開始予定時刻が算出される。
【0071】
すべてのライン、工程の組み合わせについて、ST101〜118のループが実行されると、ST119では、処理状況データが「搬送中」または「待機中」の基板の検査結果テーブルを参照して、不良と判定された基板の基板IDを抽出する。ST120では、ST119で抽出された基板ID毎に、そのIDが格納された基板状況テーブルから処理開始予定時刻を読み出す。さらにST121では、各基板IDを、処理開始予定時刻の早いものから順にソートする。このソート処理により、不良と判定された基板は、その判定がされてから次の工程の処理が開始されるまでの時間が短いものから順に、並べられることになる。
【0072】
ST122では、ソートされた各基板IDにリンクするNGデータテーブルから、それぞれ基板IDおよび被検査部位IDを読み出し、この2種類のIDを用いて確認要求コマンドを作成する。すなわち、不良判定部位毎に、確認要求コマンドが作成されることになる。ST123では、作成されたコマンドデータを、基板IDのソート後の順序に沿って配列する。さらに、ST124では、ST123の処理により生成されたデータ列を、確認待ち行列として、確認待ち行列記憶部308に保存する。
【0073】
上記の確認待ち行列の生成処理は、データベース302,303が更新される毎に実行される。この場合に、確認待ち行列記憶部308に一段階前の確認待ち行列が残っていても、ST124では、これを消去し、新たな確認待ち行列を保存する。しかし、処理開始予定時刻については、一段階前の算出値を保持しておき、各工程の管轄に新たに入った基板のみを対象に、処理開始予定時刻を算出してもよい。ただし、端末装置4の目視確認処理で「不良」と判定されてラインから取り除かれた基板の後続基板について、確認要求コマンドが確認待ち行列に残っている場合には、データベース303内の先行基板の検査結果テーブルに「NG」が書き込まれたときに、後続基板の処理開始予定時刻を更新しておくのが望ましい。
【0074】
図10は、確認待ち行列の各確認要求コマンドを端末装置4に割り当てる処理の流れを示す。
この実施例の端末装置4は、自装置の稼働状態や入力データに基づき、「処理OK」「処理中」「離席中」のいずれかを示す状況データを定期的にサーバ装置3に送信している。図10の最初のステップであるST201では、この状況データの送信を受け付け、現在、処理が可能な端末装置4があるかどうかを確認する。
【0075】
ここで処理が可能な端末装置4があり、また確認待ち行列が保存されている場合には、ST202,203が「YES」となってST204に進む。ST204では、確認待ち行列の先頭のコマンドを処理が可能な端末装置4に送信する。ST205では、この送信したコマンドを、確認待ち行列から削除する。
【0076】
ST201〜205の処理は、サーバ装置3に処理終了指令が入力されるまで繰り返し実行される。処理が可能な端末装置4がない場合または確認待ち行列が保存されていない場合も、処理終了指令が入力されない限り、ST201に戻って、同様の処理を繰り返す。処理終了指令が入力されると、ST206が「YES」となり、一連の処理を終了する。
【0077】
図11は、端末装置4からの目視確認結果の送信を受け付けて、確認待ち行列や検査結果テーブルを更新する処理の流れを示す。なお、この処理でも、処理終了指令が入力されるまで、繰り返し実行される。
【0078】
端末装置4から送信される目視確認結果には、判断結果を示すOKまたはNGのデータのほか、対応する確認要求コマンドに含まれていた基板ID、被検査部位IDが含まれている。サーバ装置3では、いずれかの端末装置4からのデータ送信を受け付けると、ST301からST302に進み、送信された各種データを入力する。さらに、ST303では、受け付けたデータに含まれている基板IDおよび被検査部位IDに基づき、受信データに対応するNGデータテーブルを特定し、そのテーブルに受信した目視結果データを書き込む。
【0079】
さらに書き込んだ目視結果データが「NG」であれば、ST304が「YES」となってST305に進み、確認待ち行列から同じ基板IDに対応する確認要求コマンドを削除する。さらに、ST306では、上記の基板IDに対応する検査結果テーブルを特定し、その目視結果に「NG」を書き込む。
【0080】
一方、ST303で書き込まれた目視結果データが「OK」であれば、ST304からST307に進み、同じ基板IDに対応するコマンドが確認待ち行列中に残っているかどうかを、さらにつぎのST308で当該コマンドを処理中の端末装置4があるかどうかを、それぞれチェックする。ここで該当するコマンドが行列中に残っておらず、他の端末装置4で処理されていることもなければ、今回取得した目視結果データが、対応する基板にかかる最終の目視確認処理に対応することになる。よって、この場合には、ST307,308の判定が共に「NO」となってST309に進み、該当する基板の検査結果テーブルの目視結果に「OK」を書き込む。一方、ST307およびST308のいずれかが「YES」となった場合には、ST309の処理はスキップされる。なお、図示していないが、ST306やST309では、目視結果データに対応するNGデータテーブルについても、検査結果テーブルと同様のデータ更新を行う。
【0081】
上記のように、この実施例では、各検査装置2で不良と判定された基板について、その検査後の工程の処理が開始される時刻が早いものから順に目視確認処理を行うとともに、1枚の基板に複数の不良判定部位がある場合には、これらの部位に対する目視確認処理を複数の端末装置4で分担できるようにしたから、目視確認処理に要する時間を従来より大幅に短縮でき、また、係員の負荷がばらつくのを防止することができる。よって、ラインにおける基板の停滞を防止することができ、基板の生産効率を向上することが可能になる。
【0082】
ただし、各工程の製造処理部では、従前と同様に、前工程の検査で不良と判定された基板については、目視確認処理が終了し、不良判定部位がすべて「OK」でなければ処理を開始しない。したがって、仮に、端末装置4側の処理が混雑するなどして、不良判定された基板が次工程に到着するまでに目視確認を終了できなかった場合でも、目視確認の終了前に処理が開始されることはなく、基板の品質を確保することができる。
【0083】
なお、上記実施例では、最終工程のリフロー工程についても、ライン終端を「次の工程」とみなして処理開始予定時刻を算出しているが、リフロー工程後の基板の確認は、ライン終端から基板を回収した後で行っても支障はない。したがって、印刷工程および実装工程で不良判定された基板のみを対象に、処理開始予定時刻を算出して確認待ち行列を作成した後に、リフロー工程で不良判定された基板に対応する確認要求コマンドを、確認待ち行列の後尾に付加してもよい。ただし、リフロー炉の後段に、プローブを用いた導通検査の工程が設けられている場合には、導通検査に要する時間や、リフロー工程から導通検査の工程への搬送時間などに応じて、リフロー工程における「次の工程の処理開始予定時刻」を求め、その時刻を反映した確認待ち行列を生成するようにしてもよい。
【0084】
さらに上記したコマンド割り付け処理には、以下のような処理を加えることができる。
(1)所定の条件に応じて、複数の確認要求コマンドを1台の端末装置4に送信できるようにする。たとえば、同じ基板に対応する不良判定部位の数をn、一人の係員が1つの部位の目視確認に要する平均時間をtとした場合、n×tの値が上記基板の処理開始予定時刻までの待ち時間より小さければ、そのn個の不良判定部位に対応する確認要求コマンドを1台の端末装置4に送信する。
【0085】
(2)確認待ち行列から削除したコマンドについても、別途、処理対象とする。すなわち、目視確認処理で実際に不良があると判断された基板について、確認待ち行列から削除した確認要求コマンドを、別の確認待ち行列として配列し、この行列のコマンドを端末装置4側の処理に余裕があるときに処理させる。実際に不良があると判断された基板はラインから回収された後、不良部位が修正されてラインに再投入されるが、この場合、前の検査で不良と判定された「見過ぎ」の部位について、再度、不良判定がなされる可能性がある。しかし、上記の方法により、修正後の再投入の前に未確認の不良判定部位の目視確認を完了し、その結果をNGデータテーブルに書き込んでおけば、同じ部位が再び不良と判定されても、そのNGデータテーブルを参照することにより、「見過ぎ」判定であると判断して、目視確認の対象から外すことができる。
【0086】
なお、上記の処理は、必ずしも、確認待ち行列から削除したすべてのコマンドについて行う必要はない。たとえば、目視確認処理により多数の部位が「不良」と判断されたり、修正が困難な部位が「不良」と判断された場合には、修正を行わずに基板を廃棄することがある。このように、修正対象の基板が選択される場合には、「不良」と判断された部位の数や、不良と判断された部位の被検査部位IDなどに基づき、修正作業が選択される基板に対応する確認要求コマンドのみを抽出して、上記(1)の処理の対象とするのが望ましい。
【0087】
(3)不良の発生率に基づいて確認要求コマンドの配列順序を決定する。たとえば、あらかじめ、過去の同一種類の基板につき作成されたNGデータテーブルを用いて、被検査部位毎に、自動検査および目視確認結果がともに「NG」となった回数を計数し、その回数の全検査数に対する比率(実際の不良の発生率に相当する。)を算出する。確認待ち行列の生成処理では、同一基板または処理開始予定時刻が同じ基板に対応する不良判定部位の確認要求コマンドを、上記の不良の発生率が高い順に配列する。このようにすれば、実際に不良である可能性の高いものから目視確認を行うことができるから、不良が早期に発見される可能性が高められる。また、確認要求コマンドの数が少なかったり、処理開始予定時刻までに余裕があるような場合には、処理開始予定時刻を考慮せずに、不良の発生率のみに基づき各コマンドを配列してもよい。
【0088】
(4)各係員が担当する対象部位を決めておき、目視確認の対象部位を担当者に優先的に割り当てる。不良判定部位の目視確認処理では、処理の都度、確認対象部位が異なるよりも、同種の部位を続けて確認した方が、効率が良く、判断の精度も高くなるとと思われる。そこで、あらかじめ、各係員の担当する部位を定めておき、同一基板または処理開始予定時刻の差が所定値以内の基板に対応する複数の不良判定部位を、それぞれの担当者の端末に割り付ける。ただし、特定の係員に負荷が偏るのを防止するために、一人の係員に割り当てる数に制限を設けたり、担当の係員への割当数が制限値を超える場合には、他の係員の端末装置4にも割り当てるなど、柔軟性をもたせた処理にする必要がある。
【0089】
(5)目視担当の係員の習熟度や不良発生部位の種類を考慮して割当処理を行う。不良発生部位によっては、十分な経験を積んだ係員でなければ、正確な目視確認を行えない場合があるからである。
【0090】
たとえば、あらかじめ、目視の難しい部位の被検査部位IDを集めたリストをサーバ装置3に登録しておき、不良発生部位のIDがこのリストに入っている場合には、対応する確認要求コマンドの送信先を、習熟度の高い係員の端末装置4に限定する。この場合に、この係員が離席または処理中でコマンドを送信できず、他の端末装置4が処理可能な状態であれば、その空き端末には後のコマンドを送信して処理を進めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】基板生産ラインの構成例を示すブロック図である。
【図2】サーバ装置の機能ブロック図である。
【図3】基板状況テーブル、検査結果テーブル、NGデータテーブルの構成例を示す説明図である。
【図4】確認待ち行列の構成および端末装置に対する割当処理の方法を示す説明図である。
【図5】目視確認処理でNG判定がされた場合の処理例を示す説明図である。
【図6】従来の方法で目視確認処理を行う場合の検査結果と処理の流れとの関係を示す説明図である。
【図7】図4の方法により目視確認処理の割当を行った場合の検査結果と処理の流れとの関係を示す説明図である。
【図8】確認待ち行列の生成処理に関する処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】図8の続きのフローチャートである。
【図10】割当処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】目視確認結果の受信に伴うデータ更新処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0092】
1 製造装置
2 検査装置
3 サーバ装置
4 端末装置
10 基板生産システム
11 印刷処理部
12 実装処理部
13 リフロー処理部
305 情報収集処理部
306 処理開始時刻予測部
307 確認待ち行列生成部
309 割当処理部
310 目視結果入力部
311 行列更新部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程毎に自動外観検査装置を含む製造処理部が設けられた基板生産ラインを少なくとも1ライン含む基板生産システムにおいて、各検査装置で不良と判定された被検査部位の画像をライン外の複数の端末装置に表示して、目視確認のための処理を実行させるために、各端末装置の処理対象を管理する方法であって、
各製造処理部および端末装置は、それぞれ共通のサーバ装置に接続されており、各製造処理部は、管轄する基板の処理状況データおよび検査結果データをサーバ装置に送信する処理を、各端末装置は、自装置が目視確認の要求を受け付け可能な状態にあるか否かを示す稼動状況データをサーバ装置に送信する処理を、それぞれ繰り返し実行し、
前記サーバ装置は、
各製造処理部から送信された検査結果データを用いて、不良と判定された基板およびその不良判定部位を認識するステップA、
各工程における処理時間および工程間における基板の搬送時間、ならびに各製造処理部から送信された各基板の処理状況データに基づき、前記ステップAで認識された基板毎に、次の工程の処理が開始されるタイミングを予測するステップB、
前記不良判定された基板の不良判定部位毎に確認要求コマンドを設定し、各確認要求コマンドをステップBで予測されたタイミングが早い基板に対応するコマンドから順に配列したデータ列を生成するステップC、
各端末装置から送信された稼動状況データに基づき、目視確認の要求を受け付け可能な端末装置を特定し、その装置に、前記データ列の先頭部分の確認要求コマンドを送信するステップD、
の各ステップを実行することを、特徴とする基板生産ラインにおける目視確認処理の管理方法。
【請求項2】
前記ステップBでは、最終の工程を除くいずれかの工程の検査装置で不良と判定されて次の工程に搬送される基板があるとき、前記次の工程の製造処理部から送信された処理状況データに基づき、当該次の工程が管轄する先行の基板の処理に要する時間を求め、前記次の工程に搬送される基板について、その搬送に要する時間から当該基板が次の工程の管轄に入る時刻を割り出し、その時刻から前記先行の基板の処理に要する時間が経過した時点の時刻を、前記次の工程の処理が開始される時刻として設定する、請求項1に記載された基板生産ラインにおける目視確認処理の管理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された方法において、
前記確認要求コマンドを送信した端末装置から、そのコマンドに対応する目視確認結果を受け付けるステップEと、このステップEで受け付けた目視確認結果が不良である旨を示すとき、前記データ列から同一の基板に対応する確認要求コマンドを削除するステップFとを、さらに実行する、基板生産ラインにおける目視確認処理の管理方法。
【請求項4】
複数の工程毎に自動外観検査装置を含む製造処理部が設けられた基板生産ラインを少なくとも1ライン含む基板生産システムにおいて、各検査装置で不良と判定された被検査部位の画像を表示して、目視確認のための処理を実行する複数の目視確認用の端末装置に対し、それぞれの処理対象を管理するための装置であって、
各製造処理部から、それぞれその処理部が管轄する基板の処理状況データおよび検査結果データを収集する処理を、繰り返し実行する第1の情報収集手段と、
各端末装置から、それぞれその端末装置が目視確認の要求を受け付け可能な状態にあるか否かを示す稼動状況データを収集する処理を、繰り返し実行する第2の情報収集手段と、
前記第1の情報収集手段が各製造処理部から収集した検査結果データを用いて、不良と判定された基板およびその不良判定部位を認識する不良基板認識手段と、
各工程における処理時間および工程間における基板の搬送時間、ならびに第1の情報収集手段が収集した各基板の処理状況データに基づき、前記不良基板認識手段により認識された基板毎に、次の工程の処理が開始されるタイミングを予測する予測手段と、
不良判定された基板の不良判定部位毎に確認要求コマンドを設定し、各確認要求コマンドを前記予測手段により予測されたタイミングが早い基板に対応するコマンドから順に配列したデータ列を生成するデータ列生成手段と、
前記第2の情報収集手段が各端末装置から収集した稼動状況データに基づき、目視確認の要求を受け付け可能な端末装置を特定し、その装置に、前記データ列の先頭部分の確認要求コマンドを送信するコマンド送信手段とを、具備する基板生産ラインの管理用サーバ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−135581(P2008−135581A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321001(P2006−321001)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)