基金脱退年金管理システム
【課題】企業年金受給者が基金を脱退した際の脱退一時金の運用を援助することができる基金脱退年金管理システムの提供する。
【解決手段】企業年金基金の脱退申請者名に関連付けて脱退一時金金額、および証券会社に開設された取引口座5に関する取引口座情報を格納した脱退申請者記録手段を備える脱退申請者管理サーバ8と、前記脱退申請者の取引口座5の内容を示す口座照会情報が格納される脱退申請者記録手段を備える転換社債管理サーバ12とを有し、前記転換社債管理サーバ12は、口座照会情報による取引口座5への脱退一時金の振込確認を条件に基金の母体企業発行の転換社債の該振込金額相当額の購入注文を出力する転換社債注文手段と、前記転換社債の購入完了を条件に前記取引口座5での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段と、を備えて構成する。
【解決手段】企業年金基金の脱退申請者名に関連付けて脱退一時金金額、および証券会社に開設された取引口座5に関する取引口座情報を格納した脱退申請者記録手段を備える脱退申請者管理サーバ8と、前記脱退申請者の取引口座5の内容を示す口座照会情報が格納される脱退申請者記録手段を備える転換社債管理サーバ12とを有し、前記転換社債管理サーバ12は、口座照会情報による取引口座5への脱退一時金の振込確認を条件に基金の母体企業発行の転換社債の該振込金額相当額の購入注文を出力する転換社債注文手段と、前記転換社債の購入完了を条件に前記取引口座5での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段と、を備えて構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基金脱退年金管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
企業年金を管理するための管理システムとしては、例えば、特許文献1に記載されるように、平時における年金管理を目的とするものが知られている。一方、近時の年金資金の運用難、あるいは基金母体企業の経営環境の悪化等を背景に、年金資産の母体企業による不足分の補填が企業経営の圧迫要因となることがあり、年金受給者への基金脱退を慫慂せざるを得ない場合もある。
【0003】
とりわけ、母体企業を取り巻く経営環境が急速に悪化し、年金補填額が資金調達の問題となるような場合には、企業年金受給者に有利な基金脱退のための方策が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-163685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであって、企業年金受給者が基金を脱退した際の脱退一時金の運用を援助することができる基金脱退年金管理システムの提供を目的とする。
【0006】
また、本発明の他の目的は、上記システムに利用可能な転換社債管理サーバ、および転換社債管理サーバ用プログラム、さらには、基金脱退年金管理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の発明者は、年金受給者に有利な年金基金からの脱退スキームを考案した。脱退スキームを示す図1において、1は企業年金基金、14は基金の母体企業を示し、基金1の年金資産が年金給付債務に対して不足する場合、母体企業14の貸借対照表に資産、債務が直接計上されないオフバランス上の債務ではあるものの、終局的には母体企業14が負担しなければならいないという意味において、企業リスクを構成する。
【0008】
とりわけ、年次の年金資金への補填が企業経営の悪化要因の一つとなっている場合には、例えば、金融機関22からの融資を受ける場合、過大な年金支払額の存在は、融資資本の効率的な企業経営への振り当ての阻害要因とみなされやすくなり、融資の障害となる場合がある。
【0009】
年次の年金支払額を減少させるためには、一般論としては、一時金を支払って年金受給者の減少を図ることが有効であると考えられるが、オンバランス上から多額の一時金を支出することは、経営状態のさらなる悪化を惹起するために好ましくない。
【0010】
本スキームは、このような条件下で、年金受給者の基金脱退に伴う母体企業14の財務上の影響を可及的に少なくし、かつ、脱退申請者9にも経済的利益を提供することができるように考案されたもので、スキーム実行に際し、まず、オフバランス上の債務(年金不足分)を例えば、金融機関22からの融資等(ステップS1)により充当し(ステップS2)、基金1から年金受給者(脱退申請者9)に脱退一時金を支払う。
【0011】
各脱退申請者9には予め所定の証券会社4等に取引口座5が開設されており、上記脱退一時金は上記取引口座5宛に振り込まれる(ステップS3)。取引口座5への入金を確認した証券会社4は、取引口座5から脱退申請者9が所属していた基金1の母体企業14に上記脱退一時金を振り込んで(ステップS4)、当該母体企業14の転換社債型新株予約権付社債(本明細書においては、単に「転換社債」という。)を購入する(ステップS5)。
【0012】
このとき、母体企業14は、脱退申請者9に対して例えば、時価の半額で購入可能なように、転換社債の有利発行を行い、基金脱会に対するインセンティブを与えることもできる。
【0013】
転換社債購入に際して振り込まれた現金は、金融機関22からの借り入れを原資とする場合には、金融機関22への返済資金に充当される(ステップS6)。脱退一時金の支出には基金1の年金原資を利用することができるために、一般にステップS4における母体企業14への入金金額はステップS2における支出金額に比して大きくなり、結果、母体企業14は基金1への充当額を上回る現金取得が見込まれ、資本の流動性が向上する。
【0014】
以上のようにして脱退一時金による転換社債の購入が行われると、以後、脱退申請者9は、当該転換社債を母体企業14の株価の状況を見て適宜タイミングで証券市場23で株式転換し、あるいはこの株式売却して現金化することができる(ステップS7)。
【0015】
母体企業14が脱退申請者9に対して有利発行を行う場合、市場の調達価格より低額で転換社債を購入した脱退申請者9は、直ちに株式転換、売却しても確実に売却益を得ることが可能になり、母体企業14も、有利発行による約束された売却益を考慮して脱退一時金を減額することも可能になる。
【0016】
本発明のシステムは、以上のスキームの実効性を組織的に担保するためのもので、
企業年金基金1の脱退申請者名2に関連付けて脱退一時金金額3、および証券会社4に開設された取引口座5に関する取引口座情報6を格納した脱退申請者記録手段7を備える脱退申請者管理サーバ8と、
前記脱退申請者9の取引口座5の内容を示す口座照会情報10が格納される脱退申請者記録手段11を備える転換社債管理サーバ12とを有し、
前記取引口座5は、初期状態において、売買指示が前記転換社債管理サーバ12経由においてのみ可能に設定されるとともに、
前記脱退申請者管理サーバ8は、前記基金脱退申請者9の脱退一時金を前記取引口座情報6に基づいて前記取引口座5に振り込む振込手段13を備え、
かつ、前記転換社債管理サーバ12は、口座照会情報10による取引口座5への脱退一時金の振込確認を条件に基金1の母体企業14発行の転換社債の該振込金額相当額の購入注文を出力する転換社債注文手段15と、
前記転換社債の購入完了を条件に前記取引口座5での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段16とを備えて構成される。
【0017】
通常、年金基金1側に設けられる脱退申請者管理サーバ8は、図1におけるステップS2、S3の実行を援助し、証券会社4側に設けることのできる転換社債管理サーバ12は、ステップS3の管理、およびステップS4、S5、S7の実行を援助する。
【0018】
取引口座5を、初期状態において、売買指示が前記転換社債管理サーバ12経由においてのみ可能に設定し、さらに、転換社債管理サーバ12に処分権限付与手段16を設けてステップS7の実行を制御することにより、例えば、転換社債購入前の脱退申請者9による現金引き出し操作等を規制することが可能になるために、スキームの実行を確実にすることができる。
【0019】
処分権限付与手段16による処分権限付与手段16は、取引口座5における売買制限の方法に対応して設定され、例えば、取引口座5における売買制限を物理的、あるいはパスワード変更等のソフト的手段によるアクセス制限により実現している場合には、取引口座5に対するアクセス制限の解除により実現できる。
【0020】
また、前記転換社債管理サーバ12は、母体企業14により予め定められた有利発行条件による価格を格納する有利発行価格格納部17を備えるとともに、
前記転換社債注文手段15は、前記有利発行価格格納部17内の価格を基準にして購入注文を出力するように構成すると、有利発行のオプションにも対応することが可能になる。
【0021】
さらに、前記転換社債管理サーバ12に、
前記処分権限付与手段16による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部18と、
売却要求受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部19と、
評価演算部19における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段20とを付加すると、予め脱退申請者9の意思が速やかな現金化にある際には、売却要求を自動生成して現金化までの手続を自動的に実行することが可能になる。
【0022】
とりわけ、転換社債購入時に売買益が見込める転換社債の有利発行を採用した場合、転換社債購入と同時の現金化を求めることが多くなると想定されるが、上記売却要求受理部18を転換社債購入完了時に起動するようにセットしておくことにより、自動的な現金化操作が可能になる。
【0023】
転換社債の処分は、電話による指図、あるいは取引口座5に電子的に接続したネット取引等、証券会社4が用意する種々の方法によることができるが、
脱退申請者9が操作し、前記処分権限付与手段16による処分権限付与を条件に前記転換社債管理サーバ12の売却要求受理部18を操作可能なクライアント端末21を含むように構成し、転換社債管理サーバ12経由の売却を可能にすると、ネット取引に不慣れな脱退申請者9の現金化を容易にすることができる。
【0024】
以上のシステムに使用する転換社債管理サーバ12は、
所定の企業年金基金1の脱退申請者9が証券会社4に開設した取引口座5の内容を示す口座照会情報10が格納される脱退申請者記録手段11と、
前記基金1からの脱退申請者9に対する脱退一時金の前記取引口座5への入金確認を条件に前記基金1の母体企業14発行の転換社債を注文する転換社債注文手段15と、
初期状態において、前記転換社債注文手段15を経由した売買指示のみが可能な前記取引口座5を、転換社債購入完了を条件に前記取引口座5での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段16とを有して構成することが可能であり、
さらに、
前記処分権限付与手段16による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部18と、
売却要求受理部18における売却要求受理を条件に受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部19と、
評価演算部19における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段20を付加することができる。
【0025】
また、上述したシステムに加え、
所定の企業年金基金1の脱退申請者9が証券会社4に開設した取引口座5の内容を示す口座照会情報10を格納するとともに、該取引口座5での取引操作が可能な転換社債管理サーバ12を設けるとともに、
前記取引口座5を、初期状態において、前記転換社債注文手段15を経由した売買指示のみが可能な状態に設定し、
前記転換社債管理サーバ12は、脱退申請者9宛脱退一時金の前記取引口座5への入金が口座照会情報10により検出された際に、前記基金1の母体企業14に取引口座5から送金して該企業発行の転換社債を購入し、
前記口座照会情報10による転換社債購入完了検出を条件に前記取引口座5での直接売買指示を可能にする基金1脱退年金管理方法を構成することによって基金1脱退年金の管理を行うことができる。
【0026】
さらに、上述した転換社債管理サーバ12は、例えば、汎用コンピュータシステム上に、
所定の企業年金基金1の脱退申請者9が証券会社4に開設した取引口座5の内容を示す口座照会情報10が格納される脱退申請者記録手段11と、
前記脱退基金1からの脱退申請者9に対する脱退一時金の前記取引口座5への入金確認を条件に前記基金1の母体企業14発行の転換社債を注文する転換社債注文手段15と、
初期状態において、前記転換社債注文手段15を経由した売買指示のみが可能な前記取引口座5を、転換社債購入完了を条件に前記取引口座5での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段16、
として機能させるための転換社債管理サーバ用プログラムを走行させて実現することが可能であり、この場合、
プログラムには、
前記処分権限付与手段16による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部18、
売却要求受理部18における売却要求受理を条件に受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部19、
評価演算部19における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段20、
としての機能を付加させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、企業年金受給者が基金を脱退した際の脱退一時金の運用を効率的に援助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明により支援される基金脱退年金管理スキームを示す説明図である。
【図2】本発明のシステム構成図である。
【図3】転換社債管理サーバの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明のシステムの動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図2に示すように、本発明の基金脱退年金管理システムは、年金基金1側に設置される脱退申請者管理サーバ8と、証券会社4側に設置される転換社債管理サーバ12、および基金1からの脱退申請者9により操作されるクライアント端末21とを有して構成される。
【0030】
脱退申請者管理サーバ8は、制御部8aにバスライン8bを介して接続され、該制御部8aにより動作制御される脱退申請者記録手段7、有利発行価格格納部8c、準備確認フラグ8d、振込手段13、入出力部8e、および通信部8fとを有し、脱退申請者記録手段7には、脱退申請者名2と脱退申請者名2に関連付けられた脱退一時金金額3、後述する取引口座5の口座番号等の取引口座情報6が格納される。
【0031】
有利発行価格格納部8cは、母体企業14が基金1脱退へのインセンティブとして市場価格より低価で脱退申請者9に転換社債を販売する有利発行を決定している場合には、その価格が格納され、システム実行時に転換社債管理サーバ12に通知される。
【0032】
準備確認フラグ8dは、システム実行条件の充足を確認するためのもので、脱退申請者9による脱退申請書の受領、証券会社4での取引口座5の開設完了、さらに、脱退一時金を脱退申請者9個人の預金口座等ではなく、取引口座5に直接振り込むことを同意する払込指図書の受領、加えて基金1での脱退一時金の準備完了等、システム実行のための法的契約関係を含む準備が完了すると、脱退申請者管理サーバ8の運用者によりフラグが立てられる。
【0033】
振込手段13は、システムの運用が開始され、上記準備確認フラグ8dが準備完了を示していることを条件に制御部8aから出力される振込命令を受けて、脱退申請者記録手段7を検索し、各脱退申請者9の取引口座5に脱退一時金を振り込む。
【0034】
入出力部8eは、準備確認フラグの操作等の脱退申請者管理サーバ8への入力、およびシステムの運用状態、各脱退申請者9に関する情報の出力等を行う。
【0035】
通信部8fは、振込操作時の取引口座5との交信、あるいは送金完了後の転換社債管理サーバ12への送金完了通知等の交信、さらに、必要に応じてサーバ8の遠隔操作のための機器との交信を行う。
【0036】
一方、転換社債管理サーバ12は、制御部12aにより制御されて動作する脱退者記録手段11、有利発行価格格納部17、振込確認フラグ12b、転換社債注文手段15、購入完了確認フラグ12c、処分権限付与手段16、売却要求受理部18、評価演算部19、売却指示手段20、入出力部12d、および通信部12eを有して構成される。入出力部12dは運用開始信号等の転換社債管理サーバ12への制御信号の入力、あるいは処理内容のプリントアウト等のために配置され、通信部12eは、取引口座5、あるいはインターネット等の通信網24を経由した後述するクライアント端末21の通信部21aとの交信のために設けられる。
【0037】
なお、この転換社債管理サーバ12の上記各構成は、適宜のOSで動作する汎用コンピュータのプログラム格納部(図示せず)に格納されるプログラムにより実現することができ、このようなプログラムは、汎用コンピュータに組み込まれた外部記憶装置、入出力装置、通信装置、およびメモリ空間を使用して上記各構成部を構築する。
【0038】
上記脱退者記録手段11には、脱退申請者名2、および脱退申請者9用に開設された取引口座5の口座番号、あるいは取引口座5を介した取引に要するパスワード等が格納される取引口座情報11aが格納される。また、脱退者記録手段11には、取引口座5を介した取引状況、および取引結果を示す口座照会情報10が格納され、取引口座残高の現況、あるいは取引注文内容等が反映される。
【0039】
有利発行価格格納部17は、上記脱退申請者管理サーバ8からの出力された有利発行価格を格納し、後述する転換社債注文時の基礎単価として使用される。
【0040】
振込確認フラグ12bは、初期においては、振込未確認状態にセットされており、制御部12aが上記脱退申請者管理サーバ8からの送金完了通知の受領を確認した後、口座照会情報10によって振込を確認すると振込確認状態に状態反転する。
【0041】
転換社債注文手段15は、上記振込確認フラグ12bが振込確認状態に反転していることを条件に起動され、基金1の母体企業14の発行する転換社債の購入申し込みを行い、取引口座5から予め定められた転換社債購入用支払い口座に購入代金を振り込む。購入申し込みに際して申込者名、取引口座5等の申込者特定のための情報は脱退者記録手段11から抽出し、さらに、有利発行価格格納部17に有利発行価格が格納されている場合には、購入単価に当該有利発行価格が使用される。
【0042】
転換社債注文手段15からの注文発行は、振込確認フラグ12bの振込確認状態への反転をトリガとして実行することも、あるいは振込確認状態下での別途サーバ運用者による注文命令を契機とするもできる。
【0043】
転換社債注文手段15からの注文発行が実行されると、制御部12aは口座照会情報10、あるいは取引口座5からの転換社債入手情報を監視して転換社債の購入完了を確認すると、購入完了確認フラグ12cを購入完了状態に状態反転する。
【0044】
この実施の形態において、処分権限付与手段16は、取引口座5開設時に与えられるパスワード以外の暫定パスワードを使用した取引口座5のアクセス制限を行うことにより売買取引の命令ルートを制御し、制御部12aは、上記振込確認フラグ12bの振込確認状態への相反転を検出すると、適宜の暫定パスワードを設定して処分権限付与手段16に通知する。
【0045】
暫定パスワードを受領した処分権限付与手段16は、通信部12eを経由して取引口座5にアクセスして取引口座5のパスワードを変更する。以後、転換社債管理サーバ12から取引口座5へのアクセスに使用するパスワードも、取引口座情報6に格納されたものから暫定パスワードに変更されて取引口座5へのアクセス権は転換社債管理サーバ12からのものに制限され、上述した転換社債注文手段15からの注文発行は、暫定パスワードを使用して実行される。
【0046】
この後、制御部12aが購入完了確認フラグ12cの相反転を検出すると、処分権限付与手段16は、取引口座5のパスワードを再び口座開設時のものに変更し、転換社債管理サーバ12から取引口座5へのアクセスに使用するパスワードも、取引口座情報6に格納されたものに変更される。
【0047】
処分権限付与手段16による取引口座5の開放により、以後、脱退申請者9が通信網24を経由して取引口座5に接続している場合には、自由に取引口座5内の転換社債の転換、売買取引を行うことができる。
【0048】
売却要求受理部18、評価演算部19、および売却指示手段20は、脱退申請者9に対して上述した取引口座5に対する直接操作以外の操作オプションを提供することが可能であり、転換社債管理サーバ12に通信網24を経由して接続されたクライアント端末21からの脱退申請者9による転換社債の株式転換、および株式売却を一括で行うために設けられる。
【0049】
クライアント端末21からのアクセスは、取引口座5に対するパスワードを使用して行われ、転換社債管理サーバ12側でのパスワードの認証が成立し、クライアント端末21との接続が確立すると、まず、評価演算部19は現在の母体企業14の株価を入手して取引口座5内の転換社債の転換価格を算出した後、売却した場合の総額を演算し、売却要求受理部18は、クライアント端末21のディスプレイ部21bに適宜のインストラクションメッセージ、清算指示アイコンとともに表示して脱退申請者9による清算指示を待ち受ける。
【0050】
売却要求受理部18が上記クライアント端末21からの清算指示を受領すると、売却指示手段20が起動されて取引口座5に株式転換、株式売却手配を行い、結果をクライアント端末21のディスプレイ部21bに表示し、これをもって脱退一時金の処理が終了する。
【0051】
なお、以上においては、清算をクライアント端末21からの指示により行う場合を説明したが、このほかに、脱退申請者9が予め転換社債を直ちに売却することの意思を表示している場合には、当該脱退申請者9に対しては、売却要求受理部18に清算指示信号をセットしておき、クライアント端末21との接続をすることなく、清算取引までを連続的に実行して現金化することもできる。
【0052】
図4に以上のシステムの動作フローを示す。まず、脱退申請者管理サーバ8が振込手段13を使用して脱退一時金を取引口座5に送金し(ステップS10)、取引口座5に入金されると(ステップS11)、転換社債管理サーバ12の口座照会情報10の口座残高が変化することから、入金が確認される(ステップS12)。
【0053】
入金の確認により振込確認フラグ12bのビットが反転して(ステップS13)転換社債注文手段15による注文発注が可能になり、この実施例においては、ビット反転を契機に取引口座5に転換社債の購入注文が出力される(ステップS14)。購入注文は取引口座5からの購入代金の出金を伴い(ステップS15)、転換社債を取得して(ステップS16)購入完了確認フラグ12cが反転すると(ステップS17)、処分権限付与手段16が作動して取引口座5がクライアント端末21に対して開放される(ステップS18)。
【0054】
ステップS18の実行後、クライアント端末21から取引口座5へのアクセスが可能になり、好みのタイミングで、好みの数量の転換操作、転換株の売却操作(ステップS19)が可能になる。
【0055】
また、脱退申請者9はクライアント端末21により転換社債管理サーバ12にアクセスして転換社債の一括清算を行うこともできる(ステップS20)。一括清算の指示、すなわち、売却要求受理部18に清算指示がセットされた転換社債管理サーバ12は、売却指示手段20から全量転換、売却注文が取引口座5に出力され(ステップS21)、取引口座5への売却代金の入金により制御が終了する(ステップS22)。
【符号の説明】
【0056】
1 企業年金基金
2 脱退申請者名
3 脱退一時金金額
4 証券会社
5 取引口座
6 取引口座情報
7 脱退申請者記録手段
8 脱退申請者管理サーバ
9 脱退申請者
10 口座照会情報
11 脱退申請者記録手段(社債管理サーバ側)
12 転換社債管理サーバ
13 振込手段
14 母体企業
15 転換社債注文手段
16 処分権限付与手段
17 有利発行価格格納部
18 売却要求受理部
19 評価演算部
20 売却指示手段
21 クライアント端末
【技術分野】
【0001】
本発明は、基金脱退年金管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
企業年金を管理するための管理システムとしては、例えば、特許文献1に記載されるように、平時における年金管理を目的とするものが知られている。一方、近時の年金資金の運用難、あるいは基金母体企業の経営環境の悪化等を背景に、年金資産の母体企業による不足分の補填が企業経営の圧迫要因となることがあり、年金受給者への基金脱退を慫慂せざるを得ない場合もある。
【0003】
とりわけ、母体企業を取り巻く経営環境が急速に悪化し、年金補填額が資金調達の問題となるような場合には、企業年金受給者に有利な基金脱退のための方策が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-163685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであって、企業年金受給者が基金を脱退した際の脱退一時金の運用を援助することができる基金脱退年金管理システムの提供を目的とする。
【0006】
また、本発明の他の目的は、上記システムに利用可能な転換社債管理サーバ、および転換社債管理サーバ用プログラム、さらには、基金脱退年金管理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の発明者は、年金受給者に有利な年金基金からの脱退スキームを考案した。脱退スキームを示す図1において、1は企業年金基金、14は基金の母体企業を示し、基金1の年金資産が年金給付債務に対して不足する場合、母体企業14の貸借対照表に資産、債務が直接計上されないオフバランス上の債務ではあるものの、終局的には母体企業14が負担しなければならいないという意味において、企業リスクを構成する。
【0008】
とりわけ、年次の年金資金への補填が企業経営の悪化要因の一つとなっている場合には、例えば、金融機関22からの融資を受ける場合、過大な年金支払額の存在は、融資資本の効率的な企業経営への振り当ての阻害要因とみなされやすくなり、融資の障害となる場合がある。
【0009】
年次の年金支払額を減少させるためには、一般論としては、一時金を支払って年金受給者の減少を図ることが有効であると考えられるが、オンバランス上から多額の一時金を支出することは、経営状態のさらなる悪化を惹起するために好ましくない。
【0010】
本スキームは、このような条件下で、年金受給者の基金脱退に伴う母体企業14の財務上の影響を可及的に少なくし、かつ、脱退申請者9にも経済的利益を提供することができるように考案されたもので、スキーム実行に際し、まず、オフバランス上の債務(年金不足分)を例えば、金融機関22からの融資等(ステップS1)により充当し(ステップS2)、基金1から年金受給者(脱退申請者9)に脱退一時金を支払う。
【0011】
各脱退申請者9には予め所定の証券会社4等に取引口座5が開設されており、上記脱退一時金は上記取引口座5宛に振り込まれる(ステップS3)。取引口座5への入金を確認した証券会社4は、取引口座5から脱退申請者9が所属していた基金1の母体企業14に上記脱退一時金を振り込んで(ステップS4)、当該母体企業14の転換社債型新株予約権付社債(本明細書においては、単に「転換社債」という。)を購入する(ステップS5)。
【0012】
このとき、母体企業14は、脱退申請者9に対して例えば、時価の半額で購入可能なように、転換社債の有利発行を行い、基金脱会に対するインセンティブを与えることもできる。
【0013】
転換社債購入に際して振り込まれた現金は、金融機関22からの借り入れを原資とする場合には、金融機関22への返済資金に充当される(ステップS6)。脱退一時金の支出には基金1の年金原資を利用することができるために、一般にステップS4における母体企業14への入金金額はステップS2における支出金額に比して大きくなり、結果、母体企業14は基金1への充当額を上回る現金取得が見込まれ、資本の流動性が向上する。
【0014】
以上のようにして脱退一時金による転換社債の購入が行われると、以後、脱退申請者9は、当該転換社債を母体企業14の株価の状況を見て適宜タイミングで証券市場23で株式転換し、あるいはこの株式売却して現金化することができる(ステップS7)。
【0015】
母体企業14が脱退申請者9に対して有利発行を行う場合、市場の調達価格より低額で転換社債を購入した脱退申請者9は、直ちに株式転換、売却しても確実に売却益を得ることが可能になり、母体企業14も、有利発行による約束された売却益を考慮して脱退一時金を減額することも可能になる。
【0016】
本発明のシステムは、以上のスキームの実効性を組織的に担保するためのもので、
企業年金基金1の脱退申請者名2に関連付けて脱退一時金金額3、および証券会社4に開設された取引口座5に関する取引口座情報6を格納した脱退申請者記録手段7を備える脱退申請者管理サーバ8と、
前記脱退申請者9の取引口座5の内容を示す口座照会情報10が格納される脱退申請者記録手段11を備える転換社債管理サーバ12とを有し、
前記取引口座5は、初期状態において、売買指示が前記転換社債管理サーバ12経由においてのみ可能に設定されるとともに、
前記脱退申請者管理サーバ8は、前記基金脱退申請者9の脱退一時金を前記取引口座情報6に基づいて前記取引口座5に振り込む振込手段13を備え、
かつ、前記転換社債管理サーバ12は、口座照会情報10による取引口座5への脱退一時金の振込確認を条件に基金1の母体企業14発行の転換社債の該振込金額相当額の購入注文を出力する転換社債注文手段15と、
前記転換社債の購入完了を条件に前記取引口座5での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段16とを備えて構成される。
【0017】
通常、年金基金1側に設けられる脱退申請者管理サーバ8は、図1におけるステップS2、S3の実行を援助し、証券会社4側に設けることのできる転換社債管理サーバ12は、ステップS3の管理、およびステップS4、S5、S7の実行を援助する。
【0018】
取引口座5を、初期状態において、売買指示が前記転換社債管理サーバ12経由においてのみ可能に設定し、さらに、転換社債管理サーバ12に処分権限付与手段16を設けてステップS7の実行を制御することにより、例えば、転換社債購入前の脱退申請者9による現金引き出し操作等を規制することが可能になるために、スキームの実行を確実にすることができる。
【0019】
処分権限付与手段16による処分権限付与手段16は、取引口座5における売買制限の方法に対応して設定され、例えば、取引口座5における売買制限を物理的、あるいはパスワード変更等のソフト的手段によるアクセス制限により実現している場合には、取引口座5に対するアクセス制限の解除により実現できる。
【0020】
また、前記転換社債管理サーバ12は、母体企業14により予め定められた有利発行条件による価格を格納する有利発行価格格納部17を備えるとともに、
前記転換社債注文手段15は、前記有利発行価格格納部17内の価格を基準にして購入注文を出力するように構成すると、有利発行のオプションにも対応することが可能になる。
【0021】
さらに、前記転換社債管理サーバ12に、
前記処分権限付与手段16による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部18と、
売却要求受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部19と、
評価演算部19における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段20とを付加すると、予め脱退申請者9の意思が速やかな現金化にある際には、売却要求を自動生成して現金化までの手続を自動的に実行することが可能になる。
【0022】
とりわけ、転換社債購入時に売買益が見込める転換社債の有利発行を採用した場合、転換社債購入と同時の現金化を求めることが多くなると想定されるが、上記売却要求受理部18を転換社債購入完了時に起動するようにセットしておくことにより、自動的な現金化操作が可能になる。
【0023】
転換社債の処分は、電話による指図、あるいは取引口座5に電子的に接続したネット取引等、証券会社4が用意する種々の方法によることができるが、
脱退申請者9が操作し、前記処分権限付与手段16による処分権限付与を条件に前記転換社債管理サーバ12の売却要求受理部18を操作可能なクライアント端末21を含むように構成し、転換社債管理サーバ12経由の売却を可能にすると、ネット取引に不慣れな脱退申請者9の現金化を容易にすることができる。
【0024】
以上のシステムに使用する転換社債管理サーバ12は、
所定の企業年金基金1の脱退申請者9が証券会社4に開設した取引口座5の内容を示す口座照会情報10が格納される脱退申請者記録手段11と、
前記基金1からの脱退申請者9に対する脱退一時金の前記取引口座5への入金確認を条件に前記基金1の母体企業14発行の転換社債を注文する転換社債注文手段15と、
初期状態において、前記転換社債注文手段15を経由した売買指示のみが可能な前記取引口座5を、転換社債購入完了を条件に前記取引口座5での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段16とを有して構成することが可能であり、
さらに、
前記処分権限付与手段16による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部18と、
売却要求受理部18における売却要求受理を条件に受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部19と、
評価演算部19における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段20を付加することができる。
【0025】
また、上述したシステムに加え、
所定の企業年金基金1の脱退申請者9が証券会社4に開設した取引口座5の内容を示す口座照会情報10を格納するとともに、該取引口座5での取引操作が可能な転換社債管理サーバ12を設けるとともに、
前記取引口座5を、初期状態において、前記転換社債注文手段15を経由した売買指示のみが可能な状態に設定し、
前記転換社債管理サーバ12は、脱退申請者9宛脱退一時金の前記取引口座5への入金が口座照会情報10により検出された際に、前記基金1の母体企業14に取引口座5から送金して該企業発行の転換社債を購入し、
前記口座照会情報10による転換社債購入完了検出を条件に前記取引口座5での直接売買指示を可能にする基金1脱退年金管理方法を構成することによって基金1脱退年金の管理を行うことができる。
【0026】
さらに、上述した転換社債管理サーバ12は、例えば、汎用コンピュータシステム上に、
所定の企業年金基金1の脱退申請者9が証券会社4に開設した取引口座5の内容を示す口座照会情報10が格納される脱退申請者記録手段11と、
前記脱退基金1からの脱退申請者9に対する脱退一時金の前記取引口座5への入金確認を条件に前記基金1の母体企業14発行の転換社債を注文する転換社債注文手段15と、
初期状態において、前記転換社債注文手段15を経由した売買指示のみが可能な前記取引口座5を、転換社債購入完了を条件に前記取引口座5での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段16、
として機能させるための転換社債管理サーバ用プログラムを走行させて実現することが可能であり、この場合、
プログラムには、
前記処分権限付与手段16による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部18、
売却要求受理部18における売却要求受理を条件に受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部19、
評価演算部19における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段20、
としての機能を付加させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、企業年金受給者が基金を脱退した際の脱退一時金の運用を効率的に援助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明により支援される基金脱退年金管理スキームを示す説明図である。
【図2】本発明のシステム構成図である。
【図3】転換社債管理サーバの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明のシステムの動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図2に示すように、本発明の基金脱退年金管理システムは、年金基金1側に設置される脱退申請者管理サーバ8と、証券会社4側に設置される転換社債管理サーバ12、および基金1からの脱退申請者9により操作されるクライアント端末21とを有して構成される。
【0030】
脱退申請者管理サーバ8は、制御部8aにバスライン8bを介して接続され、該制御部8aにより動作制御される脱退申請者記録手段7、有利発行価格格納部8c、準備確認フラグ8d、振込手段13、入出力部8e、および通信部8fとを有し、脱退申請者記録手段7には、脱退申請者名2と脱退申請者名2に関連付けられた脱退一時金金額3、後述する取引口座5の口座番号等の取引口座情報6が格納される。
【0031】
有利発行価格格納部8cは、母体企業14が基金1脱退へのインセンティブとして市場価格より低価で脱退申請者9に転換社債を販売する有利発行を決定している場合には、その価格が格納され、システム実行時に転換社債管理サーバ12に通知される。
【0032】
準備確認フラグ8dは、システム実行条件の充足を確認するためのもので、脱退申請者9による脱退申請書の受領、証券会社4での取引口座5の開設完了、さらに、脱退一時金を脱退申請者9個人の預金口座等ではなく、取引口座5に直接振り込むことを同意する払込指図書の受領、加えて基金1での脱退一時金の準備完了等、システム実行のための法的契約関係を含む準備が完了すると、脱退申請者管理サーバ8の運用者によりフラグが立てられる。
【0033】
振込手段13は、システムの運用が開始され、上記準備確認フラグ8dが準備完了を示していることを条件に制御部8aから出力される振込命令を受けて、脱退申請者記録手段7を検索し、各脱退申請者9の取引口座5に脱退一時金を振り込む。
【0034】
入出力部8eは、準備確認フラグの操作等の脱退申請者管理サーバ8への入力、およびシステムの運用状態、各脱退申請者9に関する情報の出力等を行う。
【0035】
通信部8fは、振込操作時の取引口座5との交信、あるいは送金完了後の転換社債管理サーバ12への送金完了通知等の交信、さらに、必要に応じてサーバ8の遠隔操作のための機器との交信を行う。
【0036】
一方、転換社債管理サーバ12は、制御部12aにより制御されて動作する脱退者記録手段11、有利発行価格格納部17、振込確認フラグ12b、転換社債注文手段15、購入完了確認フラグ12c、処分権限付与手段16、売却要求受理部18、評価演算部19、売却指示手段20、入出力部12d、および通信部12eを有して構成される。入出力部12dは運用開始信号等の転換社債管理サーバ12への制御信号の入力、あるいは処理内容のプリントアウト等のために配置され、通信部12eは、取引口座5、あるいはインターネット等の通信網24を経由した後述するクライアント端末21の通信部21aとの交信のために設けられる。
【0037】
なお、この転換社債管理サーバ12の上記各構成は、適宜のOSで動作する汎用コンピュータのプログラム格納部(図示せず)に格納されるプログラムにより実現することができ、このようなプログラムは、汎用コンピュータに組み込まれた外部記憶装置、入出力装置、通信装置、およびメモリ空間を使用して上記各構成部を構築する。
【0038】
上記脱退者記録手段11には、脱退申請者名2、および脱退申請者9用に開設された取引口座5の口座番号、あるいは取引口座5を介した取引に要するパスワード等が格納される取引口座情報11aが格納される。また、脱退者記録手段11には、取引口座5を介した取引状況、および取引結果を示す口座照会情報10が格納され、取引口座残高の現況、あるいは取引注文内容等が反映される。
【0039】
有利発行価格格納部17は、上記脱退申請者管理サーバ8からの出力された有利発行価格を格納し、後述する転換社債注文時の基礎単価として使用される。
【0040】
振込確認フラグ12bは、初期においては、振込未確認状態にセットされており、制御部12aが上記脱退申請者管理サーバ8からの送金完了通知の受領を確認した後、口座照会情報10によって振込を確認すると振込確認状態に状態反転する。
【0041】
転換社債注文手段15は、上記振込確認フラグ12bが振込確認状態に反転していることを条件に起動され、基金1の母体企業14の発行する転換社債の購入申し込みを行い、取引口座5から予め定められた転換社債購入用支払い口座に購入代金を振り込む。購入申し込みに際して申込者名、取引口座5等の申込者特定のための情報は脱退者記録手段11から抽出し、さらに、有利発行価格格納部17に有利発行価格が格納されている場合には、購入単価に当該有利発行価格が使用される。
【0042】
転換社債注文手段15からの注文発行は、振込確認フラグ12bの振込確認状態への反転をトリガとして実行することも、あるいは振込確認状態下での別途サーバ運用者による注文命令を契機とするもできる。
【0043】
転換社債注文手段15からの注文発行が実行されると、制御部12aは口座照会情報10、あるいは取引口座5からの転換社債入手情報を監視して転換社債の購入完了を確認すると、購入完了確認フラグ12cを購入完了状態に状態反転する。
【0044】
この実施の形態において、処分権限付与手段16は、取引口座5開設時に与えられるパスワード以外の暫定パスワードを使用した取引口座5のアクセス制限を行うことにより売買取引の命令ルートを制御し、制御部12aは、上記振込確認フラグ12bの振込確認状態への相反転を検出すると、適宜の暫定パスワードを設定して処分権限付与手段16に通知する。
【0045】
暫定パスワードを受領した処分権限付与手段16は、通信部12eを経由して取引口座5にアクセスして取引口座5のパスワードを変更する。以後、転換社債管理サーバ12から取引口座5へのアクセスに使用するパスワードも、取引口座情報6に格納されたものから暫定パスワードに変更されて取引口座5へのアクセス権は転換社債管理サーバ12からのものに制限され、上述した転換社債注文手段15からの注文発行は、暫定パスワードを使用して実行される。
【0046】
この後、制御部12aが購入完了確認フラグ12cの相反転を検出すると、処分権限付与手段16は、取引口座5のパスワードを再び口座開設時のものに変更し、転換社債管理サーバ12から取引口座5へのアクセスに使用するパスワードも、取引口座情報6に格納されたものに変更される。
【0047】
処分権限付与手段16による取引口座5の開放により、以後、脱退申請者9が通信網24を経由して取引口座5に接続している場合には、自由に取引口座5内の転換社債の転換、売買取引を行うことができる。
【0048】
売却要求受理部18、評価演算部19、および売却指示手段20は、脱退申請者9に対して上述した取引口座5に対する直接操作以外の操作オプションを提供することが可能であり、転換社債管理サーバ12に通信網24を経由して接続されたクライアント端末21からの脱退申請者9による転換社債の株式転換、および株式売却を一括で行うために設けられる。
【0049】
クライアント端末21からのアクセスは、取引口座5に対するパスワードを使用して行われ、転換社債管理サーバ12側でのパスワードの認証が成立し、クライアント端末21との接続が確立すると、まず、評価演算部19は現在の母体企業14の株価を入手して取引口座5内の転換社債の転換価格を算出した後、売却した場合の総額を演算し、売却要求受理部18は、クライアント端末21のディスプレイ部21bに適宜のインストラクションメッセージ、清算指示アイコンとともに表示して脱退申請者9による清算指示を待ち受ける。
【0050】
売却要求受理部18が上記クライアント端末21からの清算指示を受領すると、売却指示手段20が起動されて取引口座5に株式転換、株式売却手配を行い、結果をクライアント端末21のディスプレイ部21bに表示し、これをもって脱退一時金の処理が終了する。
【0051】
なお、以上においては、清算をクライアント端末21からの指示により行う場合を説明したが、このほかに、脱退申請者9が予め転換社債を直ちに売却することの意思を表示している場合には、当該脱退申請者9に対しては、売却要求受理部18に清算指示信号をセットしておき、クライアント端末21との接続をすることなく、清算取引までを連続的に実行して現金化することもできる。
【0052】
図4に以上のシステムの動作フローを示す。まず、脱退申請者管理サーバ8が振込手段13を使用して脱退一時金を取引口座5に送金し(ステップS10)、取引口座5に入金されると(ステップS11)、転換社債管理サーバ12の口座照会情報10の口座残高が変化することから、入金が確認される(ステップS12)。
【0053】
入金の確認により振込確認フラグ12bのビットが反転して(ステップS13)転換社債注文手段15による注文発注が可能になり、この実施例においては、ビット反転を契機に取引口座5に転換社債の購入注文が出力される(ステップS14)。購入注文は取引口座5からの購入代金の出金を伴い(ステップS15)、転換社債を取得して(ステップS16)購入完了確認フラグ12cが反転すると(ステップS17)、処分権限付与手段16が作動して取引口座5がクライアント端末21に対して開放される(ステップS18)。
【0054】
ステップS18の実行後、クライアント端末21から取引口座5へのアクセスが可能になり、好みのタイミングで、好みの数量の転換操作、転換株の売却操作(ステップS19)が可能になる。
【0055】
また、脱退申請者9はクライアント端末21により転換社債管理サーバ12にアクセスして転換社債の一括清算を行うこともできる(ステップS20)。一括清算の指示、すなわち、売却要求受理部18に清算指示がセットされた転換社債管理サーバ12は、売却指示手段20から全量転換、売却注文が取引口座5に出力され(ステップS21)、取引口座5への売却代金の入金により制御が終了する(ステップS22)。
【符号の説明】
【0056】
1 企業年金基金
2 脱退申請者名
3 脱退一時金金額
4 証券会社
5 取引口座
6 取引口座情報
7 脱退申請者記録手段
8 脱退申請者管理サーバ
9 脱退申請者
10 口座照会情報
11 脱退申請者記録手段(社債管理サーバ側)
12 転換社債管理サーバ
13 振込手段
14 母体企業
15 転換社債注文手段
16 処分権限付与手段
17 有利発行価格格納部
18 売却要求受理部
19 評価演算部
20 売却指示手段
21 クライアント端末
【特許請求の範囲】
【請求項1】
企業年金基金の脱退申請者名に関連付けて脱退一時金金額、および証券会社に開設された取引口座に関する取引口座情報を格納した脱退申請者記録手段を備える脱退申請者管理サーバと、
前記脱退申請者の取引口座の内容を示す口座照会情報が格納される脱退申請者記録手段を備える転換社債管理サーバとを有し、
前記取引口座は、初期状態において、売買指示が前記転換社債管理サーバ経由においてのみ可能に設定されるとともに、
前記脱退申請者管理サーバは、前記基金脱退申請者の脱退一時金を前記取引口座情報に基づいて前記取引口座に振り込む振込手段を備え、
かつ、前記転換社債管理サーバは、口座照会情報による取引口座への脱退一時金の振込確認を条件に基金の母体企業発行の転換社債の該振込金額相当額の購入注文を出力する転換社債注文手段と、
前記転換社債の購入完了を条件に前記取引口座での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段と、
を備える基金脱退年金管理システム。
【請求項2】
前記転換社債管理サーバは、母体企業により予め定められた有利発行条件による価格を格納する有利発行価格格納部を備えるとともに、
前記転換社債注文手段は、前記有利発行価格格納部内の価格を基準にして購入注文を出力する請求項1記載の基金脱退年金管理システム。
【請求項3】
前記転換社債管理サーバは、
前記処分権限付与手段による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部と、
売却要求受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部と、
評価演算部における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段とを有する請求項1または2記載の基金脱退年金管理システム。
【請求項4】
脱退申請者が操作し、前記処分権限付与手段による処分権限付与を条件に前記転換社債管理サーバの売却要求受理部を操作可能なクライアント端末を含む請求項3記載の基金脱退年金管理システム。
【請求項5】
所定の企業年金基金の脱退申請者が証券会社に開設した取引口座の内容を示す口座照会情報が格納される脱退申請者記録手段と、
前記基金からの脱退申請者に対する脱退一時金の前記取引口座への入金確認を条件に前記基金の母体企業発行の転換社債を注文する転換社債注文手段と、
初期状態において、前記転換社債注文手段を経由した売買指示のみが可能な前記取引口座を、転換社債購入完了を条件に前記取引口座での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段と、
を有する転換社債管理サーバ。
【請求項6】
前記処分権限付与手段による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部と、
売却要求受理部における売却要求受理を条件に受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部と、
評価演算部における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段とを有する請求項5記載の転換社債管理サーバ。
【請求項7】
所定の企業年金基金の脱退申請者が証券会社に開設した取引口座の内容を示す口座照会情報を格納するとともに、該取引口座での取引操作が可能な転換社債管理サーバを設けるとともに、
前記取引口座を、初期状態において、前記転換社債注文手段を経由した売買指示のみが可能な状態に設定し、
前記転換社債管理サーバは、脱退申請者宛脱退一時金の前記取引口座への入金が口座照会情報により検出された際に、前記基金の母体企業に取引口座から送金して該企業発行の転換社債を購入し、
前記口座照会情報による転換社債購入完了検出を条件に前記取引口座での直接売買指示を可能にする基金脱退年金管理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
所定の企業年金基金の脱退申請者が証券会社に開設した取引口座の内容を示す口座照会情報が格納される脱退申請者記録手段と、
前記基金からの脱退申請者に対する脱退一時金の前記取引口座への入金確認を条件に前記基金の母体企業発行の転換社債を注文する転換社債注文手段と、
初期状態において、前記転換社債注文手段を経由した売買指示のみが可能な前記取引口座を、転換社債購入完了を条件に前記取引口座での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段、
として機能させるための転換社債管理サーバ用プログラム。
【請求項9】
前記コンピュータに、
前記処分権限付与手段による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部、
売却要求受理部における売却要求受理を条件に受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部、
評価演算部における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段、
としての機能を付加する請求項8記載の転換社債管理サーバ用プログラム。
【請求項1】
企業年金基金の脱退申請者名に関連付けて脱退一時金金額、および証券会社に開設された取引口座に関する取引口座情報を格納した脱退申請者記録手段を備える脱退申請者管理サーバと、
前記脱退申請者の取引口座の内容を示す口座照会情報が格納される脱退申請者記録手段を備える転換社債管理サーバとを有し、
前記取引口座は、初期状態において、売買指示が前記転換社債管理サーバ経由においてのみ可能に設定されるとともに、
前記脱退申請者管理サーバは、前記基金脱退申請者の脱退一時金を前記取引口座情報に基づいて前記取引口座に振り込む振込手段を備え、
かつ、前記転換社債管理サーバは、口座照会情報による取引口座への脱退一時金の振込確認を条件に基金の母体企業発行の転換社債の該振込金額相当額の購入注文を出力する転換社債注文手段と、
前記転換社債の購入完了を条件に前記取引口座での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段と、
を備える基金脱退年金管理システム。
【請求項2】
前記転換社債管理サーバは、母体企業により予め定められた有利発行条件による価格を格納する有利発行価格格納部を備えるとともに、
前記転換社債注文手段は、前記有利発行価格格納部内の価格を基準にして購入注文を出力する請求項1記載の基金脱退年金管理システム。
【請求項3】
前記転換社債管理サーバは、
前記処分権限付与手段による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部と、
売却要求受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部と、
評価演算部における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段とを有する請求項1または2記載の基金脱退年金管理システム。
【請求項4】
脱退申請者が操作し、前記処分権限付与手段による処分権限付与を条件に前記転換社債管理サーバの売却要求受理部を操作可能なクライアント端末を含む請求項3記載の基金脱退年金管理システム。
【請求項5】
所定の企業年金基金の脱退申請者が証券会社に開設した取引口座の内容を示す口座照会情報が格納される脱退申請者記録手段と、
前記基金からの脱退申請者に対する脱退一時金の前記取引口座への入金確認を条件に前記基金の母体企業発行の転換社債を注文する転換社債注文手段と、
初期状態において、前記転換社債注文手段を経由した売買指示のみが可能な前記取引口座を、転換社債購入完了を条件に前記取引口座での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段と、
を有する転換社債管理サーバ。
【請求項6】
前記処分権限付与手段による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部と、
売却要求受理部における売却要求受理を条件に受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部と、
評価演算部における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段とを有する請求項5記載の転換社債管理サーバ。
【請求項7】
所定の企業年金基金の脱退申請者が証券会社に開設した取引口座の内容を示す口座照会情報を格納するとともに、該取引口座での取引操作が可能な転換社債管理サーバを設けるとともに、
前記取引口座を、初期状態において、前記転換社債注文手段を経由した売買指示のみが可能な状態に設定し、
前記転換社債管理サーバは、脱退申請者宛脱退一時金の前記取引口座への入金が口座照会情報により検出された際に、前記基金の母体企業に取引口座から送金して該企業発行の転換社債を購入し、
前記口座照会情報による転換社債購入完了検出を条件に前記取引口座での直接売買指示を可能にする基金脱退年金管理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
所定の企業年金基金の脱退申請者が証券会社に開設した取引口座の内容を示す口座照会情報が格納される脱退申請者記録手段と、
前記基金からの脱退申請者に対する脱退一時金の前記取引口座への入金確認を条件に前記基金の母体企業発行の転換社債を注文する転換社債注文手段と、
初期状態において、前記転換社債注文手段を経由した売買指示のみが可能な前記取引口座を、転換社債購入完了を条件に前記取引口座での直接売買指示を可能にする処分権限付与手段、
として機能させるための転換社債管理サーバ用プログラム。
【請求項9】
前記コンピュータに、
前記処分権限付与手段による処分権付与を条件にアクセス可能な売却要求受理部、
売却要求受理部における売却要求受理を条件に受理時における株価に基づいて所有転換社債の評価金額を演算する評価演算部、
評価演算部における評価金額により株式転換、および株式売却を行って所有転換社債を現金化する売却指示手段、
としての機能を付加する請求項8記載の転換社債管理サーバ用プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−107764(P2011−107764A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258974(P2009−258974)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(509027674)株式会社ISホールディングス (3)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(509027674)株式会社ISホールディングス (3)
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