説明

塗布ベラ

【課題】基端側を把持部とし先端側に塗布部を形成した接着剤などの粘稠物用の塗布ベラにおいて、塗布作業中に塗布部に残留する粘稠物が手や机に付着しないようにすると共に、ヘラを仮置きできるようにすること
【解決手段】把持部と塗布部との間に貫通孔を設けてその内側に可動板を配置し、可動板を貫通孔の周縁部に枢支させて外方への屈曲を可能となし、枢支部の近傍に屈曲した可動板の復帰を規制する係止部を設け、把持部を塗布部より重く形成した

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基端側を把持部とし先端側に塗布部を形成した接着剤などの粘稠物用の塗布ベラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の塗布ベラとしては、特許文献1に開示された接着剤用の塗布ベラが公知となっている。
この塗布ベラは、長尺の平板体の中央部から長手方向の両端に向って徐々に薄肉に形成され、両先端縁に鋸歯状の凹凸を形成して塗布部とする構成を採用したものである。
【0003】
ところで、近時は、健康上の理由から非溶剤系の接着剤が盛用されるようになり、一液性の湿気硬化型の接着剤が注目されるようになって来た。
この接着剤は、湿気に触れると硬化が始まることになる。断続的に使用されることが多い家庭用の接着剤の場合は、一旦開封したチューブを長期間放置すると、接着剤の再使用が困難になり、あるいは、使用前に硬化した部分を除去する作業を余儀なくされるなどの不都合が生じることになる。
そのため、一旦開封した接着剤の使用期間が長期にわたらないように容量を小さくし、それを充填するチューブが小型化され、それに合わせて包装される塗布ベラも小型化してきた。
【0004】
上述の公知のヘラは、長尺である場合はともかくとして、家庭用の小さい接着剤チューブに合わせて短くすると、これを手で把持した場合に鋸歯状の凹凸が掌側に向いてしまうから、塗布作業中に掌を傷めてしまうおそれがある。
また、接着剤を塗布した側を把持部に持ち替えると接着剤が手に付着するし、机の上に仮置きすると接着剤が机に付着してしまう不都合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−80675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基端側を把持部とし先端側に塗布部を形成した接着剤などの粘稠物用の塗布ベラにおいて、塗布作業中に塗布部に残留する粘稠物が手や机に付着しないようにすると共に、ヘラを仮置きできるようにすることを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を解決するための第一の技術的手段は、イ)把持部と塗布部との間に貫通孔を設け、ロ)貫通孔の内側に可動板を配置し、ハ)可動板を貫通孔の周縁部に枢支させて外方への屈曲を可能となし、ニ)枢支部の近傍に屈曲した可動板の復帰を規制する係止部を設け、ホ)把持部を塗布部より重く形成したこと、である。
第二の技術的手段は、可動板を貫通孔の塗布部側又は把持部側に枢支させたことである。
第三の技術的手段は、把持部の中央部側の肉厚を他の部分より大きくしたことであり、第四の技術的手段は、把持部の左右の側縁部の肉厚を他の部分より大きくしたことである。
また、第五の技術的手段は、塗布部に塗布幅の異なる複数の塗布面を形成したことである。
【0008】
第一の技術的手段では、把持部と塗布部との間に貫通孔が設けられていて、その内側に可動板が配置されている。可動板は、外方、すなわちヘラ面の外側への屈曲を可能として枢支されているから、これを押圧すると可動板の自由端側がヘラの外側へ突出することになる。
可動板を枢支させた部位の近傍には、屈曲した可動板の復帰を規制する係止部が設けられているから、可動板はヘラから突出させ、係止部に係止させることによってその位置を維持することが可能となる。
把持部は塗布部より重く形成されているから、突出させた可動板を下側にして机などの上にヘラをおくと、可動板の自由端を支点としてヘラの塗布部を斜め上向きにした状態を形成することになる(図4参照)。
したがって、ヘラ使用時や仮置きをする場合に、塗布している粘稠物が手や机に付着することはない。
【0009】
可動板の形状は、枢支される可動板を円滑に屈曲できて、ヘラをおいた時にこれを支えられるものであればよく、その形状は問わない。
なお、可動板は、ヘラの一方の面側へのみ突出させてもよいし、双方の面へ突出させられるようにしておいてもよい。
屈曲して係止部に係止させた可動板は、反対側から押すことに容易に係止状態を解除することができる。
【0010】
第二の技術的手段は、可動板を貫通孔の塗布部側又は把持部側で枢支させられているから、前者では可動板の自由端側は把持部に向かい、後者では自由端側は塗布部側に向かうことになる。指先の使い方が若干相違するが、双方ともヘラの支持を安定させることができる利点がある。
【0011】
第三の技術的手段では、上記把持部の中央部側の肉厚が他の部分より大きく構成されているから、可動板を突出させない状態でヘラを机の上に仮置きした場合であっても、中央部側の肉厚の高さ分だけ塗布部と机との間の隙間を大きくすることができる。したがって、塗布部に付着残留している粘稠物を机から離すことができる。
しかも、その高さでヘラを浮かせた状態となるため、仮置きしたヘラを指先で摘むことが容易となる。
【0012】
第四の技術的手段では、把持部の左右の側縁部(図1では下縁部と上縁部がこれに相当する位置関係となる)の肉厚が他の部分より大きく構成されているから、この場合もヘラを机の上に仮置きした場合に、中央部側の肉厚の高さ分だけ塗布部と机との間の隙間を大きくすることができる(図3参照)。
しかも、把持部の外縁の肉厚が大きくなって外側面が幅広の平面となるから、仮置きヘラを指先で摘み易くなるし、把持部の側縁部の平面を机に当接させるとヘラを直立させた状態で仮置きすることも可能となる(図1参照)。ヘラを直立させた状態で仮置きしておくと、次の塗布作業を円滑に行なえる利点がある。
【0013】
第五の技術的手段では、塗布部に塗布幅の異なる複数の塗布面を形成しているから、塗布幅に対応した塗布作業を行なえる利点がある。
塗布面は、ヘラの先端側を三角状に形成し、二つの傾斜縁を塗布面として利用することができるし、さらに尖端をわずかに切除して小さな塗布面を追加形成することもできる。
【発明の効果】
【0014】
接着剤などの粘稠物の塗布作業中に塗布部に残留する粘稠物が手や机に付着しないようにしてヘラを仮置きできる結果、塗布作業を円滑に行なえると共に塗布環境をきれいに保てる利点がある。
可動板は塗布作業時のみ突出させることができるから、粘稠物を包装する際には一枚のヘラ片として包装でき、従来通りの包装形態を維持できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】机上に直立させた塗布ベラの正面図
【図2】可動板の屈曲を示す要部拡大断面図
【図3】ヘラの一方の面を机上に置いた状態の中央断面図
【図4】可動板を突出させた状態の説明図
【図5】他の実施例における可動板を突出させた状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
塗布ベラ1は、プラスチックで形成してあり、長さ約75mm、幅約17mm、厚さ約2mmの大きさとなっている。把持部2の左右の側縁部3、3は約5mmの肉厚に形成している。塗布部5は、先端部の左側面側(図1の下側面側)を長い傾斜縁で形成して広幅の塗布面6とし、右側面側(図1の上側面側)を短い傾斜縁で構成して細幅の塗布面7とし、三角状の尖端を垂直状に切断して点付け面8を形成している。
【0017】
本実施例では、把持部2と塗布部5の間には六角形の貫通孔10が形成してあって、その中に可動板としての略台形状の板体11を位置させている。
図2(a)(b)に示したように、この実施例では、板体11は、左右に配置した薄肉の連結片12、12を介して貫通孔10の先端側(塗布部側)に一体的に形成してあり、その間に舌片13を突出させ、板体11の他端側は自由端となっている(a参照)。したがって、板体11を指で押すことによってその自由端はヘラ1の外側へ突出させられる(b参照)。
【0018】
連結片12、12の取付部の内側には、貫通孔10の周壁から係止部14、14が上下ほうこうに突設してあり、連結片12を屈曲させると舌片13が係止部14に係合し、板体11の屈曲状態が維持されるようにしている。
なお、この実施例では貫通孔10、連結片12、12及び板体11を一体に成形しているが、適宜分断させて別体に形成し、組み付けるようにしてもよい。
【0019】
図3は、ヘラ面をそのまま机15の上に置いたヘラ1の状態を示したものである。この状態では、端部の厚さが机15とヘラの塗布面2との間に隙間が形成される。
また、板体11を突出させた状態で机15上にヘラ1を置くと、把持部2は側縁部を厚肉に形成したことによって塗布部5より重くなっているから、図4に示したように、ヘラ1は把持部2の基端縁を机15に接触させ、塗布部5を斜め上に向けた状態で仮置きされることになる。
【0020】
なお、図5は、把持部側に枢支させた板体11を屈曲させた場合を示したものである。机15の上にヘラ1を置くと、板体11は把持部2側に位置してヘラ1を支えるから、板体11の突出長さを短くなっても塗布部5と机15との間の隙間を大きく形成することができる。
【符号の説明】
【0021】
1ヘラ、 2ヘラの把持部、 3把持部の厚肉周部、 5塗布部、 6広幅塗布面、 7細幅塗布面、 8点付け(塗布)面、 10貫通孔、 11可動板としての板体、 12連結片、 13舌片、 14屈曲時における舌片の係止部、 15机

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側を把持部とし先端側に塗布部を形成した接着剤などの粘稠物用の塗布ベラにおいて、把持部と塗布部との間に貫通孔を設けてその内側に可動板を配置し、可動板を貫通孔の周縁部に枢支させて外方への屈曲を可能となし、枢支部の近傍に屈曲した可動板の復帰を規制する係止部を設け、把持部を塗布部より重く形成した塗布ベラ。
【請求項2】
可動板を塗布部側又は把持部側で枢支させた請求項1に記載の塗布ベラ。
【請求項3】
把持部の中央部側の肉厚を他の部分より大きくした請求項1又は2に記載の塗布ベラ。
【請求項4】
把持部の左右の側縁部の肉厚を他の部分より大きくした請求項1又は2に記載の塗布ベラ。
【請求項5】
塗布部に塗布幅の異なる複数の塗布面を形成した請求項1、2、3又は4に記載の塗布ベラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−37983(P2011−37983A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186398(P2009−186398)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】