説明

塗布具

【課題】塗布体からの空気の混入を防ぎ、又後端からの押圧でも安定した量を供給することができる塗布具を提供する。
【解決手段】塗布具は、使用者のノック操作によって、軸本体10内で収容体20が先方に一定以上移動し、前弁体28が収容体の先部内に第2のスプリング32の付勢力に抗して押し込まれたときに前弁体28及び後弁体30間の空間の容積が縮小し、塗布液の加圧で前弁体28が開弁して塗布液誘導管26内を介して塗布体に流入する圧縮行程を行い、塗布液を塗布体に送り込み、ノック解除操作によって、軸本体10内で前記収容体20によって後方に移動し、前弁体28が収容体20の先部内で先方に向けて第2のスプリング32の付勢力で戻り前記空間の容積が拡大で、塗布液の減圧により後弁体30が開弁して塗布液が前記空間内に流入する拡張行程が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布体が筆、ブラシ形状等で、安定して塗布体に塗布液を供給できる塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗布具には筆、ブラシ形状の塗布体に塗布液を供給するものが開発されている。
塗布具として、例えば、実公平6−79698号公報(特許文献1)記載のように、ノックと同時に導出部材が塗布先前方に移動し更にノックすると塗布液が吐出されるものがある。
又、特開2005−87433号公報(特許文献2)記載のように、第1の弁室と第2の弁室を設け、一定量ずつ化粧する化粧料を供給できる定量押し出し機構がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−79698号公報
【特許文献2】特開2005−87433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2共に塗布体側からの空気を防ぐ構造では、空気が塗布液内部に混入し吐出不良を起こす恐れがある。
又、後端からの押圧時にスプリングで液吐出量のコントロールをしているが、塗布体側のスプリングが圧縮されてしまい、塗布液の出始めが目的よりも早く吐出されることを防ぐためにスプリングを荷重設定することが困難であった。
【0005】
本発明は、前述の実情に鑑み、塗布体からの空気の混入を防ぎ、又後端からの押圧でも安定した量を供給することができる塗布具の提供を目的とする。
又、液誘導管の先端に軸方向の溝を形成することで塗布体への液供給を速やかにすることができる塗布具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、軸本体の軸方向先部に塗布体を設け、塗布液を塗布体に供給するポンプ機構を設けた塗布具において、
前記軸本体には、塗布液を収容する収容体であって第1のスプリングの弾発力によって後方に付勢された状態で進退動可能に配置された収容体が設けられ、
前記収容体には、使用者のノック操作によって前記第1のスプリングの付勢力に抗して収容体を先方に移動させるためのノック体と、塗布液を圧縮・減圧するポンプ機構と、塗布液を塗布体内に誘導する塗布液誘導管とが設けられ、
前記ポンプ機構は、該塗布液誘導管の後方に位置して先方向きの吐出を許容する前弁体及び後弁体と、前弁体及び後弁体同士の間に介装された第2のスプリングとを有し、
使用者のノック操作によって、前記軸本体内で第1のスプリングの付勢力に抗して前記収容体が先方に一定以上移動し、前弁体が収容体の先部内に第2のスプリングの付勢力に抗して押し込まれたときに、前記前弁体及び前記後弁体間の容積が縮小されて、塗布液が加圧されて前弁体が開弁して該塗布液が塗布液誘導管内を介して塗布体に流入する圧縮行程が行われ、
圧縮行程後のノック解除操作によって、前記軸本体内で前記収容体が第1のスプリングの付勢力によって後方に移動した際に、前弁体が収容体の先部内で先方に向けて第2のスプリングの付勢力で戻り、前記前弁体及び前記後弁体間の容積が拡大されて、塗布液が減圧されて後弁体が開弁して収容体内の塗布液が前記前弁体及び前記後弁体間の空間に流入する拡張行程が行われようにしたことを特徴とする塗布具である。
【0007】
本発明においては、前記収容体の先部内には、塗布体内部に後方から挿脱可能な塗布液誘導管と、該塗布液誘導管を保持しかつ後端で前弁体に当接する継手とが設けられ、
前記軸本体には、その先部内側に前記継手の先端が当接する当接部が設けられ、
使用者のノック操作によって、前記軸本体内で第1のスプリングの付勢力に抗して前記収容体が先方に移動した際に、前記継手が収容体と共に移動して塗布液誘導管が塗布体内に挿入されて行き、かつ、前記継手が前記当接部に当接して、前記継手を介して前弁体が収容体の先部内に押し込まれて前記圧縮行程が行われ、
圧縮行程後のノック解除操作によって、前記軸本体内で前記収容体が第1のスプリングの付勢力によって後方に移動した際に、塗布液誘導管が塗布体から抜けて行き、かつ前記継手が前記当接部から離れて前記拡張行程が行われるようになっていることが好適である。
【0008】
本発明において、塗布体が、軸本体の先部に先軸に囲まれて取り付けられており、非ノック操作時に塗布液誘導管の先端部が前記先軸の先端面と同じかそれよりも後方に位置していることが好適である。
【0009】
本発明において、前記前弁体又は後弁体は、先方に向けて膨出した概略キャップ形状を呈した弾性変形可能なエラストマー又はゴム等のゴム弾性材料からなり、先端部にスリットが形成されて、前記前弁体又は後弁体の先方側が後方側よりも低圧になったときにスリットが開弁し、逆に、前記先方側が後方側よりも高圧になったときに閉鎖する機能を奏するものであることが好適である。
なお、前弁体と後弁体は同形状の部材であってもよい。
【0010】
又、本発明において、塗布液誘導管の先端から軸方向後方に向けた切り欠きを形成したことが好適である。
【0011】
本発明において、塗布液の収容体が軸本体から着脱可能な収容体ユニットであることが好適である。
【0012】
本発明において、収容体内には、塗布液の後方にフォロワーを充填したことが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記ポンプ機構は、該塗布液誘導管の後方に位置して先方向きの吐出を許容する前弁体及び後弁体と、前弁体及び後弁体同士の間に介装された第2のスプリングとを有し、使用者のノック操作によって、前記軸本体内で第1のスプリングの付勢力に抗して前記収容体が先方に一定以上移動し、前弁体が収容体の先部内に第2のスプリングの付勢力に抗して押し込まれたときに、前記前弁体及び前記後弁体間の容積が縮小されて、塗布液が加圧されて前弁体が開弁して該塗布液が塗布液誘導管内を介して塗布体に流入する圧縮行程が行われる。又、圧縮行程後のノック解除操作によって、前記軸本体内で前記収容体が第1のスプリングの付勢力によって後方に移動した際に、前弁体が収容体の先部内で先方に向けて第2のスプリングの付勢力で戻り、前記前弁体及び前記後弁体間の容積が拡大されて、塗布液が減圧されて後弁体が開弁して収容体内の塗布液が前記前弁体及び前記後弁体間の空間に流入する拡張行程が行われるようにした。
したがって、圧縮行程で塗布液を収容体から吐出後に、拡張行程で収容体内の塗布液が前記前弁体及び前記後弁体間の空間に流入するときに当該空間内が減圧するが、前弁体が開くことが無いので当該空間内に空気が入らない。よって、空気が塗布液に混入することが無い。
【0014】
又、圧縮行程のみで塗布液を塗布液誘導管から塗布体に流入させるので、圧縮行程の設定(収容体の先部の断面積やストロークの設定等)で塗布液の吐出量を正確に設定でき、安定した量を塗布体に向けて供給できる。
【0015】
なお、塗布液誘導管がノック時に塗布体内で先方に位置するようにして、塗布体の先方に塗布液を確実に供給することができる。塗布体先端で細かな描線をするときに先方に重点的に塗布液を供給できるため好ましい。
【0016】
前記前弁体及び後弁体にスリットを形成することで、開弁作動・閉弁作動の繰り返しで、塗布液に剪断力を加えるので、収容体内で高粘度のゲル溶液であってもその剪断力によって低粘度にして塗布体に供給して使用できる。塗布液としてゲル溶液は収容体内で高粘度でも塗布体に供給する使用時に低粘度液の化粧料となり塗布液は肌等で伸びがよくムラ無く塗ることができ、使い勝手がよく好適である。特許文献1や特許文献2などの従来のポンプ機構では、スリット以外の機構なので塗布液に剪断力を加えるものではなく塗布液が高粘度のまま送り出すが塗る際に塗り伸ばしにくいが、本発明では、弁体をスリットとすることにより、塗布液に剪断力を加えるため、低粘度の塗布液にでき、細い描線ができるなど使い勝手がよい。また、
【0017】
本発明において、塗布体を、軸本体の先部に先軸に囲まれて取り付け、非ノック操作時に塗布液誘導管の先端部が前記先軸の先端面と同じかそれよりも後方に位置しているものにすれば、塗布体の先軸より突出している箇所に、すなわち、塗布する箇所に確実に塗布液を供給できる。塗布液を穂先先端に吐出することにより細い描線が可能になり、化粧料として用いるのに好ましい。
【0018】
又、本発明において、塗布液誘導管の先端から軸方向後方に向けた切り欠きを形成したものにすれば、塗布液誘導管からの吐出箇所が広くかつ塗布体に対して長くなるので、塗布体への液供給を速やかにすることができる。
【0019】
又、塗布液の収容体が軸本体から着脱可能な収容体ユニットとすれば、塗布液を使用し終わった後に塗布液を補給すること無く収容体ユニットの取り替えで塗布を再開できるので、塗布液の補給作業を省略でき、使い勝手がよい。
【0020】
なお、収容体内に、塗布液の後方にフォロワーを充填したことによって、塗布液の蒸発による減少を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る塗布具についてキャップ嵌着状態の全体説明図であり、(a)外観側面図、(b)が縦断図である。
【図2】同塗布具のキャップを外した状態で非操作時(非ノック時)の説明図であり、(a)が塗布体側から見た斜視図、(b)が外観側面図、(c)が縦断面図である。
【図3】同塗布具の操作時(ノック時)で開始時(圧縮行程以前)の説明図であり、(a)が外観側面図、(b)が縦断面図である。
【図4】同塗布具の操作時で圧縮行程の説明図であり、(a)が外観側面図、(b)が縦断面図である。
【図5】同塗布具の収容体に塗布液誘導管、継手、前弁体、後弁体、第2のスプリング体を装着し、内部に塗布液及びフォロワーを収容した収容体ユニットの説明で、(a)が先方から見た斜視図、(b)が外観側面図、(c)が縦断面図である。
【図6】同塗布具の塗布液誘導管の説明図であり、(a)は切り欠き溝が斜めに見える側面図、(b)は先方からの視図、(c)は切り欠き溝から90度回転させた側面図、(d)は更に回転させて切り欠き溝が見える側面図である。
【図7】同塗布具の前弁体及び後弁体の説明図であり、(a)が先方側からの視図、(b)が先方側からの斜視図、(c)が側面図、(d)が縦断面図、(e)が後方からの視図、(f)が(d)から90度回転させた状態の縦断面図である。
【図8】同塗布具の継手の説明図であり、(a)が先方側からの斜視図、(b)が先方側からの視図、(c)が側面図、(d)が縦断面図、(e)が(c)から回転させた側面図、(f)が(e)の状態の縦断面図、(g)が後方からの斜視図、(h)が後方からの視図である。
【図9】同塗布具の塗布液収容体の説明図であり、(a)が先方からの斜視図、(b)が側面図、(c)が縦断面図、(d)が後方からの斜視図である。
【図10】同塗布具のノック棒の説明図であり、(a)が先方側からの斜視図、(b)が先方側からの視図、(c)が側面図、(d)が縦断面図、(e)が後方からの斜視図、(f)が後方からの視図である。
【図11】同塗布具の軸本体の説明図であり、(a)が先方からの視図、(b)が先方からの斜視図、(c)が側面図、(d)が縦面図、(e)が後方からの視図である。
【図12】同塗布具のノック棒保持体の説明図であり、(a)が先方側からの視図、(b)が先方側からの斜視図、(c)が側面図、(d)が縦断面図、(e)が後方からの視図、(f)が後方からの斜視図である。
【図13】同塗布具の弁座の説明図であり、(a)が先方側からの視図、(b)が先方側からの斜視図、(c)が側面図、(d)が縦断面図、(e)が後方からの視図、(f)が後方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1〜図13は本発明の実施形態に係る塗布具の説明図である。
実施形態に係る塗布具は、塗布液として塗り伸びのよい低粘度のアイライナー用化粧液(ゲル溶液)を収容体20内に収容し、塗布液に剪断力を加えるポンプ機構を採用し、塗布体12の穂首先端に確実に吐出し細い線が描けるようにした化粧製品に関するものである。
なお、以下の記述や図において塗布具の先方・後方は例えば図1等に示すように、軸本体に対して塗布体が設けられている方向が先方で、ノック体24の設けられている方向が後方である。
【0023】
図1に示すように、実施形態に係る塗布具は、軸本体10の軸方向先部に塗布体12を設け、塗布液を塗布体に供給するポンプ機構を設けた塗布具である。軸本体10の先端にキャップ14が着脱自在に設けられる。図2〜図4には、キャップ14を外した状態の塗布具を示している。
【0024】
前記軸本体10には、その先部内側で継手16が当接する当接部18と、塗布液を収容する収容体20であって第1のスプリング22の弾発力によって後方に付勢された状態で進退動可能に配置された収容体20とが設けられる。
【0025】
前記収容体20には、使用者のノック操作によって前記第1のスプリングの付勢力に抗して収容体20を先方に移動させるためのノック体(ノック棒ともいう)24が後端部に設けられる。
【0026】
前記収容体20の先部20a内には、塗布体12内部に後方から挿脱可能な塗布液誘導管26が設けられると共に、ポンプ機構として、該塗布液誘導管26の後方位置に先方向きの吐出を許容する前弁体28及び後弁体30と、前弁体28及び後弁体30同士の間に介装された第2のスプリング(バルブスプリング)32と、塗布液誘導管26を保持しかつ後端で前弁体28に当接する前記継手16とが設けられる。
【0027】
ここで、各部の構成を説明する。
前記キャップ14は、軸本体10の先部10aに嵌着する塗布体12を覆う。キャップ14は、先端の閉鎖した筒状の外キャップ部14aと、先軸34(:軸本体10の先部10aに嵌着して塗布体12を保持する)外周面に密接する内キャップ部14bと、該内キャップ部14bを先軸に密接させるように後方に付勢するキャップスプリング14cとを備えている。外キャップ部14aが、先軸34のほぼ全体を覆って先軸34後端の外周のフランジに当接して、キャップ14が嵌着する。
【0028】
前記塗布体12は、軸本体10の先部10aに先軸34に囲まれて取り付けられている。塗布体12は、先細い筆先形状を停止、繊維を束ねたもの、繊維を成形体、多孔質樹脂体等の人工物、天然物等各種の材質とすることができる。
【0029】
塗布体12内に塗布液誘導管26が挿入されているが、図1、図2に示す状態の、非ノック操作時に塗布液誘導管26の先端部が前記先軸34の先端面と同じかそれよりも後方に位置している。これにより、塗布体12の先軸34より突出している箇所に、すなわち、塗布する箇所に確実に塗布液を供給できる。
前記先軸34は、先細の中空状の概略砲弾形状を呈しており、その先端部内に塗布体12が挿入されている。
【0030】
前記塗布液の収容体20がノック体24と共に軸本体10から着脱可能な収容体ユニットとしている。収容体20の先部20aにポンプ機構を設けている。
図5に示すように、塗布液の収容体20が軸本体から着脱可能な収容体ユニットとしているので、塗布液を使用し終わった後に塗布液を補給すること無く収容体ユニットの取り替えで塗布を再開できるので、塗布液の補給作業を省略でき、使い勝手がよい。
【0031】
又、収容体ユニットは、図5に示すように、収容体20の後部よりも細径になった先部20a内に先方から継手16が挿入されて先方から先部20aに嵌着された弁座36によって抜け出しが規制されている。
収容体20では、この先部20aと後部との間の内壁が塗布液流通用の中空孔が形成されていて、上記ポンプ機構の前記継手16とこの内壁との間に前弁体28、第2のスプリング32及び後弁体30が装着されている。
【0032】
前記収容体20の後部内には、塗布液38が充填され、この塗布液38の後方に流動体や樹脂体からなる塗布液の蒸発防止用のフォロワー40が充填されている。塗布液の後方にフォロワー40を充填したことによって、塗布液の蒸発による減少を確実に防止できる。
【0033】
前記塗布液誘導管26は、図6に示すように、概略中空パイプ状であって、該塗布液誘導管26の先端から軸方向後方に向けた切り欠き26aを形成したものである。この切り欠き26aによって、塗布液誘導管26からの吐出箇所が広くかつ塗布体12に対して長くなるので、塗布体12への液供給を速やかにすることができる。
【0034】
なお、実施形態では、切り欠き26aによって先端は二股状になっているが、切り欠き26aを更に多く形成して三股、多数股状とすることができる。また、粘度の低い塗布液によっては、切り欠き26aは無くても良い。
【0035】
前記ポンプ機構を構成する前記前弁体28及び後弁体30は、図7に示すように、先方に向けて膨出した概略帽子又はキャップ形状を呈し、先端部に幅狭く一文字状に切り込まれてスリット42が形成された弁体である。
【0036】
つまり、前記前弁体28及び後弁体30は、その弾性で前記先方側が後方側よりも低圧になったときにスリットが開弁し、逆に、前記先方側が後方側よりも高圧になったときに閉鎖する機能を奏するものである。前記前弁体28及び後弁体30は先方に膨出してスリット42が形成されてそのスリット42が開閉し、あたかもアヒルのくちばしのようであるとして、ダックビル型と称することができる。
【0037】
前記前弁体28及び後弁体30が開弁作動・閉弁作動の繰り返しで、塗布液に剪断力を加えるが、収容体20内で粘性が高くても、開弁作動・閉弁作動による剪断力で、低粘度液化して塗布体に供給できる。又、塗布体には低粘度化した化粧料を供給できるため、その種の塗布液は肌等で伸びがよくムラ無く塗ることができ、使い勝手がよい。特許文献1等の従来のポンプ機構では、塗布液が高粘度の場合、剪断力を加えないため低粘度化せず塗りにくいが、実施形態では塗布液に剪断力を加えるため、高粘度の塗布液でも低粘度化して使用できる。
【0038】
前弁体28及び後弁体30は、上記開弁作動・閉弁作動を確実にするような弾性変形可能なエラストマー又はシリコーンゴム等のゴム弾性材料からなることが好ましい。
前弁体28及び後弁体30は、後部に二重のフランジ部44が外周に形成されており、このフランジ部44が収容体20の先部20a内の内壁に密着し摺動することによって塗布液が漏れることが無い。
【0039】
前記継手16は、図8に示すように、先端部が細くなった概略筒状であって、先端側に塗布液誘導管26が装着される円筒状部16aが形成され、後方側に前弁体28が挿入される腕状に形成されて、フランジ16bが拡径されている。先端側の円筒状部の外周部には、リブ16cが立設されて収容体20の先部20aでの軸がずれない動きを確保する構成になっている。
【0040】
前記収容体20は、図9に示すように、先部20aでは先端内側が拡径しており、拡径部分に弁座を嵌着し、拡径していない中央部から以降では前弁体28及び後弁体30が内壁に摺接する平滑面になっている。先部20a後方の収容室との境には、孔の開いた壁が形成されそこに後弁体30が収まるようになっている。
【0041】
前記ノック体24は、図10に示すように、前記収容体20の後端部に嵌着するための先端の嵌入部24aに周囲に溝24bが複数軸方向に沿って形成されており、この溝24bが収容体20内の塗布液が減少したときに空気を導入する機能を奏する。
【0042】
又、嵌入部24aの周囲にはフランジ24cが形成され、フランジ24c後部にも溝が形成されて、図2に示すように、組み付け状態で、外気が軸本体10の後方側から溝を通ってフランジ24cの外周から軸本体10内に入り、されに、嵌入部24aの溝24bを通って、空気がフォロワー40の後ろ側に流通するようにしている。
【0043】
軸本体10は、図11に示すように、先部10a外周に先軸34嵌着する丘状部分が周囲に複数間隔を置いて形成され、丘状部分に抜け止めの凹凸が形成されている。又、先部10a内に当接部18が筒状に突出し、その筒状の当接部18の後端に向けて誘導するリブが形成されている。又、軸本体10の後部内周は、中央部内周よりも拡径しており、ノック体保持体46を嵌着するようになっている。また、当接部18の塗布液誘導管26と摺動する内面は密閉されており、塗布液の漏洩を防止するシール構造となっている。
【0044】
前記ノック体保持体46は、図12に示すように、外径について先方部が小径で後方部が大径に段状に形成されており、内径は一様に形成された概略中空筒状体である。ノック体保持体46の内径は前記ノック体24よりやや大径でノック体24が移動可能になっている。又、先方部の径はノック体24のフランジ部44で当接する径になっている。
【0045】
前記弁座36は、図13に示すように、先方部の外径にフランジが拡径している。又後方部の外径に面取りが形成され、嵌入しやすくしている。
【0046】
実施形態の塗布具においては、当初、不使用状態又は未使用状態では、図1に示すように、キャップ14を取り付けている。使用をする場合、図2に示すようにキャップ14を軸本体10の先部10aから外す。
【0047】
そして、塗布具を使用するため、塗布体12に塗布液を送り込む場合、使用者がノック体24を押すノック操作をする。
そのノック操作によって、図3に示すように、前記軸本体10内で第1のスプリング22の付勢力に抗して前記収容体20が先方に移動する。
前記収容体20の移動が一定距離になると、継手16の先端が当接部18に当たる。
【0048】
使用者が更にノックして収容体20を軸本体10内に押し込み移動させると、図4に示すように、継手16がそれ以上先方に移動しなくなる、収容体20の先部20aだけが先方に移動し、これによって、前弁体28が収容体20の先部20a内方に第2のスプリング32の付勢力に抗して押し込まれる。
【0049】
その前弁体28が押し込まれる作動によって、前記前弁体28及び前記後弁体30間の容積が縮小されて、前記前弁体28及び前記後弁体30間の空間内の塗布液が加圧される状態になり、その加圧された塗布液の圧力によって前弁体28が開弁して該塗布液が塗布液誘導管26内に圧送される。塗布液誘導管26先端から、塗布液が塗布体12に流入する圧縮行程が行われる。
【0050】
上記の圧縮行程において、図3〜図4に示すように、前弁体28が押し込まれる距離σに応じて塗布液の吐出量が決まる。具体的には、吐出量は、前弁体28を押し込む継手16と当接部18の寸法設定で自由に調整できる。その場合、図4に示すように距離σ=0になるまで、収容体20の先部20aがシリンダー機能を有し、塗布液の吐出量はこの先部20aと前弁体28の径寸法の設定によっても、塗布液の吐出量を決めることができる。
【0051】
又、ノック体24のノック操作によって、図3〜図4に示すように、塗布液誘導管26は塗布体12の先部内まで挿入されており、したがって、塗布液誘導管26を経由して塗布体12には、先部内まで十分に塗布液が行き渡る。塗布液誘導管26には、先端に切り欠き26aが形成されているので、切り欠きの無い場合に比較し切り欠き26aの長さに応じて塗布体12の先部内にまんべんなく塗布液が浸透し、速やかな塗布液供給が可能になる。
【0052】
圧縮行程後のノック解除操作によって、図4、図3、図2示す順に、前記軸本体10内で前記収容体20が第1のスプリング22の付勢力によって後方に移動した際に、図4から図3の状態に拡張行程を行う。この拡張行程では、塗布液誘導管26が塗布体12から抜けて行き、かつ前記継手16が前記当接部18から離れようとして継手16が当接部18に当接して押された力が抜けるので、前弁体28が収容体20の先部20a内で先方に向けて第2のスプリング32の付勢力で戻る。
これによって、前記前弁体28及び前記後弁体30間の容積が拡大されて、塗布液の圧力が減圧されて後弁体30が開弁し、この減圧によって収容体20内の塗布液が前記前弁体28及び前記後弁体30間の空間に流入する拡張行程が行われる。
【0053】
以上のように構成したので、実施形態の塗布具では、圧縮行程で塗布液を収容体20から吐出後に、拡張行程で収容体内の塗布液が前記前弁体28及び前記後弁体30間の空間に流入するときに当該空間内が減圧するが、前弁体28が開くことが無いので当該空間内に空気が入らない。よって、空気が塗布液に混入することが無い。
【0054】
又、圧縮行程のみで塗布液を塗布液誘導管26から塗布体に流入させるので、圧縮行程の設定(収容体20の先部20aの断面積やストロークの設定等)で塗布液の吐出量を正確に設定でき、安定した量を塗布体12に向けて供給できる。
【0055】
又、実施形態において、図2に示すように、塗布体12を、軸本体10の先部10aに先軸34に囲まれて取り付け、非ノック操作時に塗布液誘導管26の先端部が前記先軸34の先端面と同じかそれよりも後方に位置しているものにすれば、塗布体12の先軸34より突出している箇所に、すなわち、塗布する箇所に確実に塗布液を供給できる。
【0056】
本発明においては、実施形態に限定されず、種々に変形実施できる。例えば、塗布体を筆状ではなく、連続気泡体や誘導溝が内部に形成されて塗布体とすることできる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の塗布具は、塗布体が筆、ブラシ形状等で、安定して塗布体に塗布液を供給できる化粧料、筆記具等や各種の塗布具で利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
10 軸本体
10a 軸本体の先部
12 塗布体
14 キャップ
16 継手
16a 円筒状部
16b フランジ
16c リブ
18 当接部
20 収容体
20a 収容体の先部
22 第1のスプリング
24 ノック体
24a ノック体の嵌入部
24b ノック体の溝
24c ノック体のフランジ
26 塗布液誘導管
28 前弁体
30 後弁体
32 第2のスプリング
34 先軸
36 弁座
38 塗布液
40 フォロワー
42 スリット
44 フランジ部
46 ノック体保持体
σ ポンプ作動の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸本体の軸方向先部に塗布体を設け、塗布液を塗布体に供給するポンプ機構を設けた塗布具において、
前記軸本体には、塗布液収容用の収容体であって第1のスプリングの弾発力によって後方に付勢された状態で進退動可能に配置された収容体が設けられ、
前記収容体には、使用者のノック操作によって前記第1のスプリングの付勢力に抗して収容体を先方に移動させるためのノック体と、塗布液を圧縮・減圧するポンプ機構と、塗布液を塗布体内に誘導する塗布液誘導管とが設けられ、
前記ポンプ機構は、該塗布液誘導管の後方に位置して先方向きの吐出を許容する前弁体及び後弁体と、前弁体及び後弁体同士の間に介装された第2のスプリングとを有し、
使用者のノック操作によって、前記軸本体内で第1のスプリングの付勢力に抗して前記収容体が先方に一定以上移動し、前弁体が収容体の先部内に第2のスプリングの付勢力に抗して押し込まれたときに、前記前弁体及び前記後弁体間の容積が縮小されて、塗布液が加圧されて前弁体が開弁して該塗布液が塗布液誘導管内を介して塗布体に流入する圧縮行程が行われ、
圧縮行程後のノック解除操作によって、前記軸本体内で前記収容体が第1のスプリングの付勢力によって後方に移動した際に、前弁体が収容体の先部内で先方に向けて第2のスプリングの付勢力で戻り、前記前弁体及び前記後弁体間の容積が拡大されて、塗布液が減圧されて後弁体が開弁して収容体内の塗布液が前記前弁体及び前記後弁体間の空間に流入する拡張行程が行われるようにしたことを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記収容体の先部内には、塗布体内部に後方から挿脱可能な塗布液誘導管と、該塗布液誘導管を保持しかつ後端で前弁体に当接する継手とが設けられ、
前記軸本体には、その先部内側に前記継手の先端が当接する当接部が設けられ、
使用者のノック操作によって、前記軸本体内で第1のスプリングの付勢力に抗して前記収容体が先方に移動した際に、前記継手が収容体と共に移動して塗布液誘導管が塗布体内に挿入されて行き、かつ、前記継手が前記当接部に当接して、前記継手を介して前弁体が収容体の先部内に押し込まれて前記圧縮行程が行われ、
圧縮行程後のノック解除操作によって、前記軸本体内で前記収容体が第1のスプリングの付勢力によって後方に移動した際に、塗布液誘導管が塗布体から抜けて行き、かつ前記継手が前記当接部から離れて前記拡張行程が行われるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
塗布体が、軸本体の先部に先軸に囲まれて取り付けられており、非ノック操作時に塗布液誘導管の先端部が前記先軸の先端面と同じかそれよりも後方に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記前弁体又は後弁体は、先方に向けて膨出した概略キャップ形状を呈した弾性変形可能なエラストマー又はゴム等のゴム弾性材料からなり、先端部にスリットが形成されて、前記前弁体又は後弁体の先方側が後方側よりも低圧になったときにスリットが開弁し、逆に、前記先方側が後方側よりも高圧になったときに閉鎖する機能を奏するものであることを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の塗布具。
【請求項5】
塗布液誘導管の先端から軸方向後方に向けた切り欠きを形成したことを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の塗布具。
【請求項6】
塗布液の収容体が軸本体から着脱可能な収容体ユニットであることを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の塗布具。
【請求項7】
収容体内には、塗布液の後方にフォロワーを充填したことを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−85820(P2013−85820A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230794(P2011−230794)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)