説明

塗布容器のキャップ

【課題】塗布部の乾燥を促し、防腐力を有さない収容物であっても、塗布部上における菌の繁殖や腐敗を抑制でき、中部に通気孔から異物が入り込んだりして塗布部が損傷したり、汚れたりすることがない塗布容器のキャップを提供する。
【解決手段】キャップ1は、塗布容器の先端部分に対して着脱自在に構成され、塗布容器先端に配設される塗布部を囲繞し得、キャップ1の内外にわたって非直線的に連通する通気孔を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
流動性の化粧料を収容するための収容部を有する容器本体と、前記収容部に連通した基端部を有する塗布部とを備える塗布容器の該塗布部を囲繞するキャップに関し、特に、塗布部上における細菌等の繁殖を抑制するキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動性の化粧料を収容するための収容部を有する容器本体と、前記収容部に連通した基端部を有する塗布部とを備える所謂筆ペン等と称すタイプの塗布容器においては、特許文献1に示すように、塗布部の保護や乾燥防止の観点から気密性を有するキャップが用いられている。従って、塗布部に菌が付着した場合、唾液や肌等から付着した水分が揮散しないために該菌が繁殖し、異臭、変臭等が発生する畏れがあった。一般的には、塗布容器内に収容される収容物の防腐力によって菌の繁殖や腐敗を抑制しようとされるが、収容物によっては防腐力を持たせることが出来ないこともある。
【特許文献1】特表2007−511272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、塗布部を囲繞するキャップに通気孔を設けることによって、塗布部の乾燥を促し、防腐力を有さない収容物であっても、塗布部上における菌の繁殖や腐敗を抑制することができ、またキャップの中に通気孔から異物が入り込んだりして塗布部が損傷したり、汚れたりすることがない塗布容器のキャップを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、流動性を有する化粧料が収容される収容部を有する容器本体と、この容器本体の一端に配設される塗布部とを備え、前記収容部と前記塗布部の基端部とが連通し、前記収容部に収容された化粧料が塗布部に送出可能に構成される塗布容器のキャップの構造であって、上記キャップは、内外に連通した通気孔が設けられ、前記塗布部の乾燥を促すように構成されることを特徴とする。
【0005】
前記通気孔は、前記キャップの内外を非直線的に連通するものであることを特徴とする。
【0006】
前記キャップは、それぞれ内外に連通した貫通孔を有する内側キャップ体と外側キャップ体とからなり、これら内側キャップ体と外側キャップ体とがそれぞれの貫通孔どうしの位置が重ならないように一体化されることによって通気孔が構成されるものであることを特徴とする。
【0007】
前記通気孔が、複数設けられることを特徴とする。
【0008】
前記通気孔は、メッシュ状に構成されていることを特徴とする。
【0009】
前記通気孔は、キャップ外表面上の総面積が10平方ミリメートル以上に設定されることを特徴とする。
【0010】
前記化粧料は、揮散成分を含まずに構成される非揮発性の化粧料であることを特徴とする。
【0011】
前記収容物は、リップグロスであることを特徴とする。
【0012】
前記塗布容器は、ピストン部を備える繰り出し機構を有するものであることを特徴とする。
【0013】
前記塗布部は、筆、刷毛、フロッキーチップ、スポンジ、スパチュラのいずれか一つから選ばれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中に異物が入らないように構成した通気孔をキャップの端面や外周面に設けたことにより、塗布容器の塗布部を囲繞するように該キャップを装着して長期間にわたって保持したり、繰り返し使用して保管したりしても、塗布部が収納された該キャップ内外が通気孔によって連通して空気が入れ替わるので塗布部が速やかに乾燥し、雑菌の繁殖や腐敗が抑制され、異臭、変臭等が発生せずに最後まで快適に使用することが出来る。
【0015】
従って、塗布容器に収容される化粧料が、口唇に塗布され、臭いが気になるリップグロスのような場合でも、雑菌の繁殖が抑制されて異臭、変臭等がないので、不快感を感じることなく最後まで安心して使用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、以下に添付図面を参照しながら詳細に説明する。図5、図6に示すように、本実施態様の塗布容器(C)のキャップ(1)は、塗布容器(C)、即ち流動性の化粧料(図示省略)を収容する収容部(図示省略)を有する容器本体(B)と、この容器本体(B)の一端に配設され収容部と連通した基端部(E)を有する塗布部(P)と、を備えて構成され、化粧料を塗布部(P)に分配しながら塗布することができる塗布部(P)付きの容器において、塗布容器(C)先端に装着して塗布部(P)を囲繞したり、取り外して塗布部(P)を露出したりするように使用されるものである。尚、本実施態様における塗布容器(C)は、収容部内には揮散成分を含まない流動性の化粧料であるリップグロスを収容することが好ましく、例えば、収容部内に収容されたリップグロスの後端に密接して収容部内周面に摺動させながら徐々に送り出すことが出来るように構成されたピストン部(図示省略)を有する繰り出し機構を採用することが出来る。
【0017】
そして、キャップ(1)は、図1に示すように、略円筒状をなす外側キャップ体(20)と、この外側キャップ体(20)に内装される比較的小径の略円筒状をなす内側キャップ体(30)とから構成される。
【0018】
より具体的には、図1、図2に示すように、外側キャップ体(20)の一端には塗布容器(C)の塗布部(P)が設けられている側の先端部分を挿入したり抜き出したりすることが出来る開口部(21)を有し、この開口部(21)に連通し塗布部(P)を収納することが出来る内側キャップ体(30)の収納部(31)と、開口部(21)部分を除いて収納部(31)の周囲を囲繞して収納部(31)と外部とを隔てる壁部(32)とを有し、塗布容器(C)に対して塗布部(P)を囲繞するように装着したり、取り外したりすることが可能に構成される。内側キャップ体(30)の収納部(31)を囲繞する壁部(32)には、長方形孔(37)を形成し、前記外側キャップ体(20)の長方形孔(24)と非直線的に連通し、後述するような通気孔(2)が形成される。
【0019】
外側キャップ体(20)は、図1、図2及び図3(a)に示すように、全体的には略円筒状をなし、一端には中央に貫穿された円孔(22)を有する端面部(23)が形成され、外周面には端面部側の端部から筒方向のほぼ中央まで達する筒方向に長い略長方形状の長方形孔(24)が略90°間隔で四つ内外に貫通して穿設される。また、端面部(23)の内側には、断面略半円状に立ち上がったダボ状の位置安定部(25)を形成し、内側キャップ体(30)の先端の位置を安定させるようにする。更に、端面部(23)の内側には、長方形孔(24)が穿設された位置から略45°ずれた位置に仕切板(26)が形成され、外側キャップ体(20)に内装される内側キャップ体(30)の位置が規定されるようにする。端面部(23)の反対側の端部は、円形に開口し、その径が塗布容器(C)の塗布部(P)の基端部(E)付近の外径とほぼ同等に設定され、塗布容器(C)に対して着脱自在に構成される。
【0020】
内側キャップ体(30)は、図1、図2及び図3(b)に示すように、小径の円筒状に形成される小径部(33)と、この小径部(33)に連設されるより大径の円筒状に形成される大径部(34)とからなり、全体的には外側キャップ体(20)に比して小径で筒長が二分の一程度の略円筒状をなす。小径部(33)側の先端部分には、先端より若干内側に入り込んだ部位に、四箇所の切欠部(35)を有する端面部(36)が形成される。小径部(33)の外周面には、先端部から大径部(34)との境界部分まで達する筒方向に長い略長方形状の長方形孔(37)が、略90°間隔で四つ内外に貫通して穿設される。尚、この長方形孔(37)は、端面部(36)の周縁部に設けられる切欠部(35)と連通して設けられるものであり、長さは、外側キャップ体(20)に穿設される長方形孔(24)の長さと同程度に設定される。長方形孔(37)が形成されていない部分、即ち各非長方形孔部分(38)の弧の長さは、外側キャップ体(20)の長方形孔(24)の幅より大きくなるように設定される。大径部(34)は、小径部(33)側の外径よりも大径で且つ外側キャップ体(20)の内径とほぼ同等の外径に設定され、奥に向かって若干小径となるテーパー状に開口した内周面を有する。
【0021】
外側キャップ体(20)の端面部(23)側の内部先端には、図4(a)に示すように、内側キャップ体(30)がその端面部(36)を先頭にして内装される。このとき、外側キャップ体(20)の長方形孔(24)の位置と、内側キャップ体(30)の長方形孔(37)の位置とが、図4(b)に示すように、概ね45°ずれた孔位置となるように設定される。この図4(b)からも判るとおり、外側キャップ体(20)の先端付近の内周面と、内側キャップ体(30)の先端付近の外周面とは、内側キャップ体(30)の小径部(33)の外径が内側キャップ体(30)の内径よりも幾分小さめに設定されているために、若干の間隙が作出され、内側キャップ体(30)の内部空間、即ち塗布部(P)を収納する収納部(31)と外部とが、内側キャップ体(30)に貫穿される長方形孔(37)と、この長方形孔(37)に連通した間隙(3)と、この間隙(3)に連通した外側キャップ体(20)に貫穿される長方形孔(24)とによって連通して、キャップ(1)内外が通気する通気孔(2)が作出される。
【0022】
上記構造を有する本実施態様の塗布容器(C)のキャップ(1)は、図5及び図6に示すように、塗布容器(C)の塗布部(P)が配設されている側の先端に、塗布部(P)を囲繞するように装着することが出来、装着した際には、内側キャップ体(30)の内部、即ち、収納部(31)内に塗布部(P)が納められる。収納部(31)に納められた塗布部(P)は、キャップ(1)先端やキャップ(1)の外周面に形成された内外に非直線的に連通する通気孔(2)によって、収納部(31)が通気出来るように構成されていることから、塗布容器(C)の使用後であっても塗布部(P)を速やかに乾燥させ、雑菌の繁殖や腐敗を抑制し、異臭、変臭等の発生等を防止することが出来る。また、通気孔からキャップ内部に異物が入り込んだりして塗布部を破損したり、汚したりすることが防止されるようになっている。
【0023】
以上説明したように、本発明の塗布容器(C)のキャップ(1)は、塗布容器(C)の先端部分に対して着脱自在に構成され、装着時には塗布容器(C)先端に配設される塗布部(P)を囲繞して、塗布部(P)をゴミや汚れなどの付着から保護しつつ、キャップ(1)の内外にわたって非直線的に連通する通気孔(2)を設けたことによって速やかに塗布部(P)を乾燥させて、塗布部(P)を雑菌の繁殖や腐敗から守り、異臭、変臭等の発生を防止することが出来るように構成されたものであって、その主旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。ここで、本実施態様においては、外側キャップ体(20)は、外周面の略90°の位置にそれぞれ一つずつ合計四つの長方形孔(24)が内外にわたって貫穿されて構成されているが、この孔は、必ずしも略90°に合計四つの長方形状にしなければならないというものではなく、例えば、図7(a)に示す外側キャップ体(120)のように、長方形孔(124)を狭い位置間隔で三つ併設したものをより広い位置間隔で二つ合計六つ設定したり、或いは、図7(b)に示す外側キャップ体(220)ように、円形孔(224)を多数穿設したり、或いは、図7(c)又は図7(d)に示す外側キャップ体(320)、(420)ように、円弧形孔(324)、(424)を幾つか併設したりして、外周面の適宜部位に適宜形状の孔を適宜数量設けたものであってもよい。ただし、外側キャップ体(20)の孔範囲と内側キャップ体(30)の孔範囲とが互いに重ならないように設定して、キャップ(1)内外にわたって連通する通気孔(2)が非直線的に連通するものとなるように構成することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施態様のキャップの分解斜視図
【図2】同キャップの分解状態の断面図
【図3】(a)A−A’断面の断面図、(b)B−B’断面の断面図
【図4】(a)同キャップの組立状態の断面図、(b)C−C’断面の断面図
【図5】(a)同キャップの塗布容器に装着した状態の断面図、(b)D視図
【図6】(a)同キャップの塗布容器に装着した状態の別の角度から見た断面図、(b)E視図
【図7】(a)同キャップの一変形例の斜視図、(b)同キャップの別の変形例の斜視図、(c)同キャップの別の変形例の斜視図、(d)同キャップの別の変形例の斜視図
【符号の説明】
【0025】
1 キャップ
2 通気孔
3 間隙
20 外側キャップ体
21 開口部
22 円孔
23 端面部
24 長方形孔
25 位置安定部
26 位置決め仕切板
30 内側キャップ体
31 収納部
32 壁部
33 小径部
34 大径部
35 切欠部
36 端面部
37 長方形孔
38 非長方形孔部分
120 外側キャップ体
124 長方形孔
220 外側キャップ体
224 円形孔
320 外側キャップ体
324 円弧形孔
420 外側キャップ体
424 円弧形孔
C 塗布容器
B 容器本体
E 基端部
P 塗布部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する化粧料が収容される収容部を有する容器本体と、この容器本体の一端に配設される塗布部とを備え、前記収容部と前記塗布部の基端部とが連通し、前記収容部に収容された化粧料が塗布部に送出可能に構成される塗布容器のキャップであって、該キャップは、内外に連通した通気孔が設けられ、前記塗布部の乾燥を促すように構成されることを特徴とする塗布容器のキャップ。
【請求項2】
前記通気孔は、前記キャップの内外を非直線的に連通するものであることを特徴とする請求項1記載の塗布容器のキャップ。
【請求項3】
前記キャップは、それぞれ内外に連通した貫通孔を有する内側キャップ体と外側キャップ体とからなり、これら内側キャップ体と外側キャップ体とがそれぞれの貫通孔どうしの位置が重ならないように一体化されることによって通気孔が構成されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布容器のキャップ。
【請求項4】
前記通気孔が、複数設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布容器のキャップ。
【請求項5】
前記通気孔は、メッシュ状に構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の塗布容器のキャップ。
【請求項6】
前記通気孔は、キャップ外表面上の総面積が10平方ミリメートル以上に設定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗布容器のキャップ。
【請求項7】
前記化粧料は、揮散成分を含まずに構成される非揮発性の化粧料であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の塗布容器のキャップ。
【請求項8】
前記化粧料は、リップグロスであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の塗布容器のキャップ。
【請求項9】
前記塗布容器は、ピストン部を備える繰り出し機構を有するものであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の塗布容器のキャップ。
【請求項10】
前記塗布部は、筆、刷毛、フロッキーチップ、スポンジ、スパチュラのいずれか一つから選ばれることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の塗布容器のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−51593(P2010−51593A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220479(P2008−220479)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)