説明

塗料吹付器用塗料槽システム

本発明に係る塗料吹付器用重力沈降流体槽は、容器(1)と、塗料吹付器又はアダプタ上に本重力沈降流体槽を置くための連結部(3)を有し容器(1)上に置くことができる蓋体(2)と、を備える。従来型の槽では通気口形成用に別体の鋭利具が必要であったがそうした鋭利具はしばしば使用できないことがありまた誤操作を招くことがあった。本発明の目的は、重力沈降流体槽の容器壁内に単純、迅速且つ簡便に挿通して通気口を形成することができ、しかもプラスチック部品や削りくずが重力沈降流体槽内に落入することを防止できる塗料槽システムを実現することにある。この目的を達成するため、通気開口形成用の鋭利具(6)によって穿孔し通気口を作成することができる領域(5)を、容器(1)の壁(4)上に場所を限定して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提要件部分に記載の通り塗料吹付器用流体槽に関し、請求項6の前提要件部分に記載の通り塗料吹付器用塗料槽の壁部に通気開口を開けるための鋭利具例えば釘に関し、更には流体槽及び鋭利具からなる塗料槽システムに関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1の前提要件部分に記載の流体槽は、例えば特許文献1や特許文献2等の先行技術文献によって知られる通り、プラスチック製の容器と、この容器上に置かれる容器閉蓋用の蓋体と、蓋体上にあり本流体槽を塗料吹付器上にセット及び締結する装着手段と、を備えるものである。本流体槽(塗料槽/塗料容器)は蓋体を下に向け上下逆さまになるよう塗料吹付器上にセットされるので、本流体槽内に入れた塗料は重力の作用によって下向きに、塗料注入路を通って塗料吹付器内に流れ込むこととなる。但し、重力により塗料流を送り出すには塗料槽内の圧力を外と等化しなければならない。そのためには、上記各文献に記載の通り、容器床が上を向くよう塗料容器を塗料吹付器上に上下逆さまにセットした後に、容器床、又は容器側壁のうち容器床に近い部分に、針によって通気開口を開ければよい。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6356687号明細書(B1)
【特許文献2】仏国特許出願公開第2774928号明細書(A)
【特許文献3】独国特許出願公開第3526819号明細書(A1)
【特許文献4】スイス国特許第203668号明細書(A)
【特許文献5】仏国特許出願公開第2570140号明細書(A)
【特許文献6】独国特許出願公開第8024829.9号明細書(A1)
【特許文献7】国際公開第01/12337号パンフレット(A)
【特許文献8】米国特許第4946075号明細書(A)
【特許文献9】西独国実用新案第8905681.7号明細書(U)
【特許文献10】米国特許第4210263号明細書(A)
【特許文献11】国際公開第03/045575号パンフレット(A)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
まず、容器壁に通気開口を形成するには別体の鋭利具例えば針や釘が必要になるが、こうした道具がいつでも手近にあるとは限らない。次に、容器壁は一般に硬質プラスチック製であるから、それなりの道具を用いたとしても、容器壁に孔を開けるのはなかなか容易でない。加えて、容器壁の打抜によって塗料槽内塗料中にプラスチック片乃至部品が落入してしまう可能性もある。
【0005】
これら、既知流体槽に係る不具合に鑑み、本発明は、流体槽の容器壁に単純、迅速且つ簡便に通気開口を形成でき、しかも流体槽内にプラスチック片乃至部品が入り込みようがない塗料吹付器用塗料槽システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する流体槽、請求項6に記載の特徴を有する鋭利具例えば釘、並びに請求項1に係る流体槽及び請求項6に係る鋭利具を有する塗料槽システムによって、達成される。従属形式の請求項2〜5及び請求項7〜10に記載されているのは、流体槽乃至鋭利具の実施形態であって特に有益なものである。従属形式の請求項11及び12は、流体槽及び鋭利具を備える塗料槽システムに関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について、その実施形態を示す別紙図面を参照しつつより詳細に説明する。
【0008】
図1に塗料吹付器用流体槽を示す。この流体槽は、容器1と、この容器1に捩って取り付けられるようネジ山18を有する蓋体2とを備えており、塗料吹付器上にセットするときにはこの図に示した姿勢、即ち蓋体2の上面を下に向けた姿勢とする。蓋体2の上面には吐出開口20付の吐出ポート19があり、この吐出ポート19の外面上には、本流体槽を塗料吹付器上にセット及び締結するのに使用する装着部3が形成されている。塗料吹付器と流体槽の間にアダプタがある場合は、装着部3によって本流体槽をそのアダプタ上にセット及び締結する。図示例における装着部3は塗料吹付器側の装着部と相応するようネジ山21及び楔状溝22を有しており、そのうちネジ山21は塗料吹付器側の内面ネジ山と噛み合うよう、また楔状溝22は塗料吹付器側の脚がこれに嵌り込むこととなるよう、設けられている。
【0009】
容器1は椀状であり、円形の容器床と、容器の糸底から上向きにやや錐をなして延びる側壁とを有している。図中、参照符号4で表されているのは容器床又は側壁を形成している容器壁であり、この容器壁4は注型プロセスにより一体プラスチック片として製造されている。容器1の糸底内方にあり後に通気開口形成部となる所定の領域5は、この容器壁4の一部分4aによって取り囲まれている。領域5は、片側から見るとその周りの部分4aより薄い膜7として形成されており、逆側から見ると、後の通気開口形成時に鋭利具を案内する案内面9aによって他から仕切られている。この模式的図示例における案内面9aは、容器壁4からほぼ直交方向に屹立している中空円筒部8の壁9の内面によって実現されている。これら、中空円筒部8及びその管状の壁9と、中空円筒部8においてほぼその底面の一角を占める膜7は、図1中の細部構成図Uから看取することができる。
【0010】
更に、流体槽の糸底には、容器壁4から外向きに出っ張るように2個の中空円筒部29及び30が形成されている。
【0011】
蓋体2には釘6及び封止キャップ24が取り付けられている。この取付に用いられているもぎ取り式張出部17及び23は、道具の助け無く手だけで蓋体2から釘6及び封止キャップ24をもぎ取れる故意破断可能ポイントとして形成されている。封止キャップ24は蓋体2の開口20を閉止するのに使用され、釘6は容器壁4の通気開口形成部5に通気開口を形成するのに使用される。
【0012】
釘6は、その側面図(図1中の細部構成図Y)及び断面図(図2)にある通り、円柱状のシャフト10と、その一端に設けられた頭部11とを有している。シャフト10の開始部14即ち頭部11につながる端は頭部11に向かって錐状に延び拡がっており、他端即ち自由端25には傾斜が付けられそれによって鋭利端12が形成されている。自由端25寄りの部分におけるシャフト直径は、流体槽の床上に位置する中空円筒部8の内径に相応している。シャフト10の中寄り部分の周縁には、直径方向に沿って互いに差し向かいになるよう2個の凹部13が設けられている。シャフト10には更に、シャフト10の他の部分よりも僅かに小径の環状溝26がシャフト10を取り巻くように設けられており(図3c参照)、この環状溝26によって、シャフト10の端部寄りに従って互いに間隔をおいて、放射状の2個の受け辺15及び16が形成されている。図1中の細部構成図Yに示されているように、凹部13は、シャフト長手方向に沿っておよそシャフト長の半分程に亘り、且つ受け辺15及び16双方を通り抜けるように、延びている。
【0013】
本流体槽及びその釘6からなる塗料槽システムは、次のようにして使用される。
【0014】
まず、その糸底が下になるよう容器1をセットし、蓋体2を捩って取り外した上で、容器1を塗料で満たす。それを終えたら、その上に蓋体2を捩って取り付けることで容器1に封をし、更にその容器1を裏返して塗料吹付器上に載せる。次いで、蓋体2からもぎ取った釘6の助けを借りて、容器壁4上の所定領域5内に通気開口を開ける。このとき、釘6の鋭利端12が膜7を押し貫いてこれを引き裂き、容器内方へとせり出している中空円筒部8の壁9がシャフト10を案内する。釘6はこうして容器内に入っていく。
【0015】
この後、容器内方に向けて更に釘6を押し込む。釘6は、図3cに示すように、容器内における下側の受け辺16の高さが中空円筒部8の下側の辺27のそれに合い、また上側の受け辺15が中空円筒部8の上側の辺28に接触するまで進む。その結果、容器壁4のうち開通済通気開口の壁となっている部分4aと同じ高さに凹部13が位置することとなり、従って図3bに示すように凹部13により通気路が形成されるため、容器内部の圧力と容器周囲の圧力とを等化することができる。
【0016】
上側の受け辺15の役割は、釘6が容器内に更に滑入するのを防ぐことにある。無論、重力以外の外力が加わると釘が更に容器内へと滑入し通気路が釘により閉止されるであろうが、そうでない自然な状態で釘6が容器内に滑入できるのは、高々、図3cに示すように上側の受け辺15が中空円筒部8の上側の辺28に接するまでである。また、容器1を裏返した状態では、釘6が容器内から滑落できるのは高々下側の受け辺16が中空円筒部8の下側の辺27に接するまでであるので、釘6が通気開口から滑落することが下側の受け辺16により同様の仕組みで防止される。
【0017】
塗装工程を終えた後は、釘6を容器開口内へと更に押し込み、図3aに示すように頭部11の下面を中空円筒部8の上側の辺28と接触させることによって、通気開口を閉止することができる。この状態では、中空円筒部8の上寄り部分の中に円錐状のシャフト開始部14が嵌り込んでこれを詰まらせているので、図3aに示すように通気開口が閉ざされることとなる。
【0018】
既知塗料槽システムとの対比で述べると、本実施形態の特徴は、釘6なる形態を採る鋭利具によって簡単に、流体槽に通気開口を開けることができることである。その際、容器内方に案内面がせり出していることや、膜7が薄くて鋭利具により容易に開口させ得ること等から、流体槽の容器壁のうち通気開口を形成する部分として画定、形成されている部分に、従来より簡単に開口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】容器及びこの容器上に置かれる蓋体を備える流体槽の側面をその細部構成(X,U,Y,Z)と共に示す図である。
【図2】図1中の細部構成図Yに示した釘の断面図であり、特に図2aはその紙面沿い断面を、図2bはその紙面直交方向断面を、それぞれ示す図である。
【図3】図1中の細部構成図Uにおける釘及び容器壁、特に釘により開口が形成された部分を状態別に示す図であり、図3a及び図3bは断面図、図3cは部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(1)と、本流体槽を塗料吹付器又はアダプタ上にセットするための装着部(3)を有し容器(1)上にセットできる蓋体(2)と、を備え、塗料吹付器用に使用される流体槽であって、通気開口形成用の鋭利具(6)によって開口させ得る所定の領域(5)が、容器(1)の壁(4)上に形成されたことを特徴とする流体槽。
【請求項2】
請求項1記載の流体槽であって、容器壁(4)の他の部分より容易に開口させ得るよう上記領域(5)が形成されたことを特徴とする流体槽。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流体槽であって、上記領域(5)が、容器壁(4)の素材より強度が低い素材からなり、容器壁(4)のうち当該領域(5)を取り囲む部分(4a)より薄く、又はその双方に該当する膜(7)によって、形成されたことを特徴とする流体槽。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか一項記載の流体槽であって、上記領域(5)が、通気開口形成中に鋭利具(6)を案内する案内面(9a)によって、他と仕切られたことを特徴とする流体槽。
【請求項5】
請求項4記載の流体槽であって、案内面(9a)が、容器壁(4)からほぼ直交方向に屹立する中空円筒部(8)の壁(9)の内面として形成されたことを特徴とする流体槽。
【請求項6】
請求項5記載の流体槽であって、中空円筒部(8)の壁(9)が容器(1)の内方へとせり出たことを特徴とする流体槽。
【請求項7】
その周縁に少なくとも1個の凹部(13)が設けられたシャフト(10)と、シャフト上にある頭部(11)と、シャフト端部にある鋭利端(12)と、を備え、塗料吹付器用の塗料槽の壁(4)に通気開口を開けるのに使用され、凹部(13)が容器壁(4)のうち通気開口を他と仕切る部分(4a)と同じ高さ位置になる深さまで本鋭利具(6)を押し込み通気開口を形成したときに、凹部(13)によって通気路が形成される鋭利具。
【請求項8】
請求項7記載の鋭利具であって、シャフト(10)が円柱状であり、シャフト(10)の全体、又は少なくとも頭部(11)に連なる開始端(14)が、頭部(11)に向かって錐状に延びたことを特徴とする鋭利具。
【請求項9】
請求項7又は8記載の鋭利具であって、凹部(13)が、シャフト(10)の長手方向沿いに、シャフト長の約半分に相当する長さ(H)に亘り、延びたことを特徴とする鋭利具。
【請求項10】
請求項7乃至9のうち何れか一項記載の鋭利具であって、円環状の2個の受け辺(15,16)が、互いに間隔を置いてシャフト端部寄りに設けられたことを特徴とする鋭利具。
【請求項11】
請求項10記載の鋭利具であって、凹部(13)のうち少なくとも1個が、シャフト長手方向沿いに少なくとも2個の受け辺(15,16)間に亘るよう、好ましくはそれら受け辺(15,16)より外寄りに至るよう、延びたことを特徴とする鋭利具。
【請求項12】
請求項1乃至6のうち何れか一項記載の流体槽と、請求項7乃至11のうち何れか一項記載の鋭利具(6)と、を有する塗料吹付器用の塗料槽システム。
【請求項13】
請求項12記載の塗料槽システムであって、鋭利具(6)が、もぎ取り式張出部(17)により蓋体(2)に取り付けられたことを特徴とする塗料槽システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−518554(P2007−518554A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550011(P2006−550011)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000435
【国際公開番号】WO2005/070557
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(303033406)サタ ファルプシュプリッツテクニック ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (8)
【Fターム(参考)】