塗装ブース
【課題】塗装作業の途中であっても容易に移動させることができる塗装ブースを提供する。
【解決手段】塗装ブース本体2の一側面を作業用の開口2aとし、その開口以外の面に排気口2bを設けた塗装ブース1を、その開口を閉じる扉3を備えて構成し、この扉が全開時において塗装ブース本体の底面延伸方向に支持されるようにして、塗装ブースを持ち上げても扉を底面延伸方向に支持させる。また、扉を溝3cとこの溝にスライド可能に嵌合する軸2cとによって開閉可能に支持させ、扉が全開時において塗装ブース本体と重なるようにして、扉と塗装ブース本体とのすき間をなくす。
【解決手段】塗装ブース本体2の一側面を作業用の開口2aとし、その開口以外の面に排気口2bを設けた塗装ブース1を、その開口を閉じる扉3を備えて構成し、この扉が全開時において塗装ブース本体の底面延伸方向に支持されるようにして、塗装ブースを持ち上げても扉を底面延伸方向に支持させる。また、扉を溝3cとこの溝にスライド可能に嵌合する軸2cとによって開閉可能に支持させ、扉が全開時において塗装ブース本体と重なるようにして、扉と塗装ブース本体とのすき間をなくす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗装ブースに関し、特に家庭においてプラスチックモデルなどを塗装する場合に用いる塗装ブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、家庭においてプラスチックモデルなどを塗装する場合には、エアブラシやスプレー缶よって噴出された塗料粒子が飛散して室内が汚れることや、塗料に含まれる有機溶剤などが室内に充満して人体に悪影響を及ぼすことを防ぐために、換気機能を備えた塗装ブースが用いられている。
【0003】
市販されている塗装ブースとしては、排気口に枠体を取り付けたものがある。この市販塗装ブースでは、塗装ブースを載せた机やテーブルに塗料が付着しないように、枠体の底側に板状の下敷き部材を取り付けるか、枠体の底側から板状の下敷き部材が延伸するように構成されている。
【0004】
また、筐体の一側面を塗装作業用の開口とし、その開口以外の面に排気口を備えた携帯式塗装ブースが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−252601号公報(特許請求の範囲 請求項1、図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記市販塗装ブースでは、収納する際に枠体から下敷き部材を取り外さなければならないために、塗装作業のたびに行う下敷き部材の取付けや取り外しが煩雑である。また、収納の際には、枠体と、枠体から取り外した下敷き部材と換気装置などの各部品を収納するために、段ボール箱などの収納容器が必要となる。
【0006】
さらに、前記市販塗装ブースでは、下敷き部材が薄くて弱い、ぺらぺらした部材であるために、下敷き部材の上に物を置いた状態では塗装ブースを移動させることができない。そのために、塗装ブースが置かれた机やテーブルを塗装以外に、例えば食事に使いたい場合には、塗装作業の途中であってもいったん下敷き部材の上を片付けなければ塗装ブースを別の場所に移すことができず、塗装作業の途中での塗装ブースの移動が面倒である。
【0007】
さらにまた、前記市販塗装ブースでは、枠体の幅が狭いために、特に枠体が開放側に向かって放射状に開いた形状のものでは、エアブラシなどよって噴出された塗料粒子のうち排気口周辺に当たり跳ね返った塗料粒子が枠体に沿って塗装ブースから室内に飛散しやすい。
【0008】
一方、前記特許文献1に係る携帯式塗装ブースでは、塗装ブース内を見えやすくするとともに、エアブラシなどの塗装道具が操作しやすいように、開口部を底面から天面に向かって排気口側に傾斜させるように切り欠いている。しかし、特許文献1に係る携帯式塗装ブースでは、市販塗装ブースの下敷き部材に相当する、塗装作業を行う部分が、両側板と天板とによって覆われているために、両側板と天板が邪魔になって塗装作業がしにくい。
【0009】
さらに、プラスチックモデルなどを塗装する場合以外にも、例えば切削加工する場合には粉塵が発生するために、粉塵を室内に飛散させないような装置が望まれている。
【0010】
そこで、この発明では、前記した課題を解決し、家庭においてプラスチックモデルなどを塗装する場合に用いる塗装ブースであって、塗装作業の途中であっても容易に移動させることができる塗装ブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明では、筐体の一側面を作業用の開口とし、その開口以外の面に排気口を設けた塗装ブースを、その開口を閉じる扉を備えて構成し、この扉が全開時において筐体の底面延伸方向に支持されるようにした。
【0012】
請求項2に係る発明では、扉を溝とこの溝にスライド可能に嵌合する軸とによって開閉可能に支持させ、扉が全開時において筐体と重なるようにした。
【0013】
請求項3に係る発明では、扉の内面に溝を設けるようにした。
【0014】
請求項4に係る発明では、筐体の内部に棚を備えるようにした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、塗装ブースに前記市販塗装ブースの下敷き部材の機能も有する扉を備えるようにしたので、市販塗装ブースのような塗装作業のたびに行う下敷き部材の取付けや取り外しといった組立ての手間を省くことができる。また、塗装ブースの内部に塗装ブースから取り外した換気装置や塗装道具などを収納することもできる。さらに、扉が全開時において筐体の底面延伸方向に支持されるようにしたので、扉が盆のような機能を有して、例えば塗装作業の途中であっても、扉の上(以下、扉の内面という)を片付けることなく、塗装ブースを移動させることもできる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、扉を溝とこの溝にスライド可能に嵌合する軸とによって開閉可能に支持させ、扉が全開時において筐体と重なるようにしたので、扉の全開時に扉と筐体のすき間をなくすことができる。そのために、扉と筐体とが接する部分から塗料粒子や塗料が漏れることを防げるとともに、接する部分に粉塵がたまることや、プラスチックモデルのパーツが落ちるといった不都合をなくすこともできる。また、扉が筐体と重なる割合を変えることで、塗装作業をする部分である扉と排気口までの距離を調整することもできる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、扉の内面に溝を設けるようにしたので、例えば切削加工の際に発生した粉塵をはけなどで溝に集めることによって、扉の内面を簡単に掃除することができる。そのために、粉塵を嫌う塗装ブースであっても、切削加工などの粉塵が発生する作業をすることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、筐体の内部に棚を備えるようにしたので、道具を整理して収納することができるとともに、作業の際には必要な道具を簡単に取り出すこともできる。また、塗装したパーツを棚の上に置いて乾燥させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、この発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、この発明に係る塗装ブースの斜視図のうち、扉を開いた状態を示す図である。一方、図2は、この発明に係る塗装ブースの斜視図のうち、扉を閉じた状態を示す図である。図1に示すように、この発明に係る塗装ブース1は、筐体(以下、塗装ブース本体2という)の開口2aを閉じる扉3が取り付けられている。
【0020】
塗装ブース本体2は、一側面を塗装作業用の開口2aとした長方形の箱である。この塗装ブース本体2は、開口2a以外の面に、ここでは開口2aと対向する面の中央に塗装ブース本体2内の空気を排出するための排気口2bを有している。この排気口2bには、塗装ブース本体2の外側から送風機4が取り付けられ、この送風機4には室外にまで延ばすことができる排気管5が取り付けられている。また、排気口2bには、塗装ブース本体2の内側から粉塵フィルター6が取り付けられている。そして、塗装ブース本体2内の空気を送風機4によって排気管5を通じて室外に排出することによって、塗料に含まれる有機溶剤を室外に排出している。なお、塗料粒子や粉塵は、粉塵フィルター6に吸着して室外に排出されないようになっている。
【0021】
塗装ブース本体2は、その両側面に外側に向けて突出した軸2cを備えている。この軸2cは、後記する扉3に設けられた溝3cにスライド可能に嵌り、扉3を開閉可能に支持している。この軸2cは、ここでは塗装ブース本体2にねじ嵌めされており、ねじを締めれば扉3が誤って開閉しないように扉3を塗装ブース本体2に固定できるようになっている。
【0022】
また、塗装ブース本体2は、その内部に棚7を備えている。この棚7は、ここでは平らな板であって、塗装ブース本体2の両側面に架け渡されている。この棚7には、筆などの棒状の道具を挿し入れて収納するための筆立て7aと、筆を洗うためのコップを嵌め入れて固定するためのコップホルダー7bが設けられている。なお、この棚7は、取り外し可能に塗装ブース本体2の両側面に架け渡されており、棚7を取り外せば塗装ブース1の内部に塗装ブース本体2から取り外した送風機4や排気管5といった大きなものを収納しやすいようになっている。
【0023】
さらに、塗装ブース本体2は、エアブラシなどよって噴出された塗料粒子のうち排気口2bの周辺に当たり跳ね返った塗料粒子が天面に沿って塗装ブース本体2から室内に飛散すること、特に塗料粒子が塗装をしている人の顔近くに吹き返すことを防ぐための吹き返し防止板8を備えている。この吹き返し防止板8は、ここでは平らな板であって、天面の縁部を天面から底面の方向に向けて、開口2aの一部を遮るように両側面に架け渡されている。
【0024】
さらにまた、塗装ブース本体2は、天面の外側中央に取っ手9と、天面の内側に照明10と、側面の外側にコンセント11とプラグ12を備えている。
【0025】
扉3は、断面がコの字形の板部材であり、開口2aを覆う作業台兼用部3aと、この作業台兼用部3aの両端から直立する側面部3bとを有して構成されている。
【0026】
作業台兼用部3aは、四角形の板からなり、扉3の全開時に塗装ブース本体2と重なる部分と、重ならない部分とを有し、ここでは扉3が塗装ブース本体2の下に敷かれるように重なっている。ここで、作業台兼用部3aのうち、塗装ブース本体2と重なる部分の厚みを、塗装ブース本体2の底面の厚さほど薄くすることで、作業台兼用部3aの表面と塗装ブース本体2の底面とが同じ高さ、いわゆる面一となっている。また、作業台兼用部3aには、その扉3の全開時に塗装ブース本体2と重ならない部分に、ここでは側面部3bとの境目部分に、粉塵をはけなどで掃き入れるためのダクト溝3dが設けられている。
【0027】
側面部3bは、一つの内角が直角の台形の板からなり、その幅広部分に塗装ブース本体2の両側面に設けられた軸2cがスライド可能に嵌る、棒状の貫通した溝3cが設けられている。
【0028】
以上のように構成された塗装ブース1では、扉3が溝3cとこの溝3cにスライド可能に嵌合する軸2cとによって開閉可能に支持されている。図3は、この発明に係る塗装ブース1の扉3の開閉状態を示す側面図であり、(a)が閉口時の状態を示し、(e)が全開時の状態を示し、(b)から(d)については開閉途中の状態を示す。ここでは説明の都合上、溝3cの端部をA、Bとする。
【0029】
まず、扉3が開く過程について、図3を参照しながら説明する。始めに、扉3が誤って開閉しないように扉3を塗装ブース本体2に固定している軸2cを緩める。そして、(a)に示す閉口時の状態にある扉3を、溝3cと平行な矢印で示す斜め上方に、(b)に示す軸2cが溝3cのBの位置まで引き上げる。次に、扉3を、(d)に示すように扉3と塗装ブース本体2とが直交するまで倒す。そして、(d)に示す状態で塗装ブース本体2を、溝3cと平行な矢印で示す斜め下方に、(e)に示す塗装ブース本体2が扉3と重なる状態まで下ろし、軸2cを締める。ここでは、Bの位置は、(c)に示す状態で扉3が塗装ブース本体2に当たらないよう定められている。一方、Aの位置は、(a)に示す閉口時の状態で塗装ブース本体2と扉3とが密着するように、(e)に示す全開時の状態で塗装ブース本体2と扉3とが密着するように定められている。
【0030】
図3の(e)に示すように、扉3が全開時において塗装ブース本体2と扉3とが重なることで、塗装ブース本体2と扉3とのすき間をなくすことができる。また、扉3が全開時において塗装ブース本体2と扉3とが重なることで、この重なった部分は扉3がそれ以上開くことを防ぐストッパーとなることから、塗装ブース1を持ち上げても扉3が塗装ブース本体2の底面の延伸上に支持できる。さらに、ここでは作業台兼用部3aのうち、塗装ブース本体2と重なる部分の厚みが、塗装ブース本体2の底面の厚さほど薄いことで、作業台兼用部3aの表面と塗装ブース本体2の底面とが同じ高さ、いわゆる面一となっている。
【0031】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は前記実施形態には限定されない。例えば、この発明に係る塗装ブース1としては、プラスチックモデル用に限られるものではなく、イラストや工芸などにも用いられる。また、この発明に係る塗装ブース1としては、塗装以外にも、換気の必要がある切削加工などにも用いられる。
【0032】
この発明において、底面延伸方向に支持とは、底面と平行であることを意味するものではなく、扉3が盆のような機能を有して、例えば塗装作業の途中であっても、作業台兼用部3aを片付けることなく、塗装ブース1を移動させることもできるといった効果を生じるものであれば足りる。したがって、扉3が作業台兼用部3aの上に置かれた物が落ちない程度に、底面に対して上方または下方に傾いていてもよい。
【0033】
扉3を開閉可能に支持するものとしては、溝3cとこの溝3cにスライド可能に嵌合する軸2cに限られるものではなく、市販塗装ブースのような塗装作業のたびに組立ての手間がいらないように開閉可能に取り付けてあればよく、例えば蝶番や塗装ブース本体2と扉3とを可撓部材によって接合したものでもよい。
【0034】
扉3が塗装ブース本体2と重なるとは、扉3と塗装ブース本体2とが一部でも重なっていれば足り、作業台兼用部3aと排気口2bまでが最適な距離となるように重なる割合が調整されるものである。
【0035】
この実施例では、溝3cが扉3に設けられるとともに、軸2cが塗装ブース本体2に備えられると説明したが、この逆でも構わない。また、その位置も塗装ブース本体2や扉3の形状によって適宜変更されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明に係る塗装ブースの斜視図のうち、扉を開いた状態を示す図である。
【図2】この発明に係る塗装ブースの斜視図のうち、扉を閉じた状態を示す図である。
【図3】この発明に係る塗装ブースの扉の開閉状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 塗装ブース
2 塗装ブース本体(筐体)
2a 開口
2b 排気口
2c 軸
3 扉
3a 作業台兼用部
3b 側面部
3c 溝
3d ダクト溝
4 送風機
5 排気管
6 粉塵フィルター
7 棚
7a 筆立て
7b コップホルダー
8 吹き返し防止板
9 取っ手
10 照明
11 コンセント
12 プラグ
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗装ブースに関し、特に家庭においてプラスチックモデルなどを塗装する場合に用いる塗装ブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、家庭においてプラスチックモデルなどを塗装する場合には、エアブラシやスプレー缶よって噴出された塗料粒子が飛散して室内が汚れることや、塗料に含まれる有機溶剤などが室内に充満して人体に悪影響を及ぼすことを防ぐために、換気機能を備えた塗装ブースが用いられている。
【0003】
市販されている塗装ブースとしては、排気口に枠体を取り付けたものがある。この市販塗装ブースでは、塗装ブースを載せた机やテーブルに塗料が付着しないように、枠体の底側に板状の下敷き部材を取り付けるか、枠体の底側から板状の下敷き部材が延伸するように構成されている。
【0004】
また、筐体の一側面を塗装作業用の開口とし、その開口以外の面に排気口を備えた携帯式塗装ブースが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−252601号公報(特許請求の範囲 請求項1、図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記市販塗装ブースでは、収納する際に枠体から下敷き部材を取り外さなければならないために、塗装作業のたびに行う下敷き部材の取付けや取り外しが煩雑である。また、収納の際には、枠体と、枠体から取り外した下敷き部材と換気装置などの各部品を収納するために、段ボール箱などの収納容器が必要となる。
【0006】
さらに、前記市販塗装ブースでは、下敷き部材が薄くて弱い、ぺらぺらした部材であるために、下敷き部材の上に物を置いた状態では塗装ブースを移動させることができない。そのために、塗装ブースが置かれた机やテーブルを塗装以外に、例えば食事に使いたい場合には、塗装作業の途中であってもいったん下敷き部材の上を片付けなければ塗装ブースを別の場所に移すことができず、塗装作業の途中での塗装ブースの移動が面倒である。
【0007】
さらにまた、前記市販塗装ブースでは、枠体の幅が狭いために、特に枠体が開放側に向かって放射状に開いた形状のものでは、エアブラシなどよって噴出された塗料粒子のうち排気口周辺に当たり跳ね返った塗料粒子が枠体に沿って塗装ブースから室内に飛散しやすい。
【0008】
一方、前記特許文献1に係る携帯式塗装ブースでは、塗装ブース内を見えやすくするとともに、エアブラシなどの塗装道具が操作しやすいように、開口部を底面から天面に向かって排気口側に傾斜させるように切り欠いている。しかし、特許文献1に係る携帯式塗装ブースでは、市販塗装ブースの下敷き部材に相当する、塗装作業を行う部分が、両側板と天板とによって覆われているために、両側板と天板が邪魔になって塗装作業がしにくい。
【0009】
さらに、プラスチックモデルなどを塗装する場合以外にも、例えば切削加工する場合には粉塵が発生するために、粉塵を室内に飛散させないような装置が望まれている。
【0010】
そこで、この発明では、前記した課題を解決し、家庭においてプラスチックモデルなどを塗装する場合に用いる塗装ブースであって、塗装作業の途中であっても容易に移動させることができる塗装ブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明では、筐体の一側面を作業用の開口とし、その開口以外の面に排気口を設けた塗装ブースを、その開口を閉じる扉を備えて構成し、この扉が全開時において筐体の底面延伸方向に支持されるようにした。
【0012】
請求項2に係る発明では、扉を溝とこの溝にスライド可能に嵌合する軸とによって開閉可能に支持させ、扉が全開時において筐体と重なるようにした。
【0013】
請求項3に係る発明では、扉の内面に溝を設けるようにした。
【0014】
請求項4に係る発明では、筐体の内部に棚を備えるようにした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、塗装ブースに前記市販塗装ブースの下敷き部材の機能も有する扉を備えるようにしたので、市販塗装ブースのような塗装作業のたびに行う下敷き部材の取付けや取り外しといった組立ての手間を省くことができる。また、塗装ブースの内部に塗装ブースから取り外した換気装置や塗装道具などを収納することもできる。さらに、扉が全開時において筐体の底面延伸方向に支持されるようにしたので、扉が盆のような機能を有して、例えば塗装作業の途中であっても、扉の上(以下、扉の内面という)を片付けることなく、塗装ブースを移動させることもできる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、扉を溝とこの溝にスライド可能に嵌合する軸とによって開閉可能に支持させ、扉が全開時において筐体と重なるようにしたので、扉の全開時に扉と筐体のすき間をなくすことができる。そのために、扉と筐体とが接する部分から塗料粒子や塗料が漏れることを防げるとともに、接する部分に粉塵がたまることや、プラスチックモデルのパーツが落ちるといった不都合をなくすこともできる。また、扉が筐体と重なる割合を変えることで、塗装作業をする部分である扉と排気口までの距離を調整することもできる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、扉の内面に溝を設けるようにしたので、例えば切削加工の際に発生した粉塵をはけなどで溝に集めることによって、扉の内面を簡単に掃除することができる。そのために、粉塵を嫌う塗装ブースであっても、切削加工などの粉塵が発生する作業をすることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、筐体の内部に棚を備えるようにしたので、道具を整理して収納することができるとともに、作業の際には必要な道具を簡単に取り出すこともできる。また、塗装したパーツを棚の上に置いて乾燥させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、この発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、この発明に係る塗装ブースの斜視図のうち、扉を開いた状態を示す図である。一方、図2は、この発明に係る塗装ブースの斜視図のうち、扉を閉じた状態を示す図である。図1に示すように、この発明に係る塗装ブース1は、筐体(以下、塗装ブース本体2という)の開口2aを閉じる扉3が取り付けられている。
【0020】
塗装ブース本体2は、一側面を塗装作業用の開口2aとした長方形の箱である。この塗装ブース本体2は、開口2a以外の面に、ここでは開口2aと対向する面の中央に塗装ブース本体2内の空気を排出するための排気口2bを有している。この排気口2bには、塗装ブース本体2の外側から送風機4が取り付けられ、この送風機4には室外にまで延ばすことができる排気管5が取り付けられている。また、排気口2bには、塗装ブース本体2の内側から粉塵フィルター6が取り付けられている。そして、塗装ブース本体2内の空気を送風機4によって排気管5を通じて室外に排出することによって、塗料に含まれる有機溶剤を室外に排出している。なお、塗料粒子や粉塵は、粉塵フィルター6に吸着して室外に排出されないようになっている。
【0021】
塗装ブース本体2は、その両側面に外側に向けて突出した軸2cを備えている。この軸2cは、後記する扉3に設けられた溝3cにスライド可能に嵌り、扉3を開閉可能に支持している。この軸2cは、ここでは塗装ブース本体2にねじ嵌めされており、ねじを締めれば扉3が誤って開閉しないように扉3を塗装ブース本体2に固定できるようになっている。
【0022】
また、塗装ブース本体2は、その内部に棚7を備えている。この棚7は、ここでは平らな板であって、塗装ブース本体2の両側面に架け渡されている。この棚7には、筆などの棒状の道具を挿し入れて収納するための筆立て7aと、筆を洗うためのコップを嵌め入れて固定するためのコップホルダー7bが設けられている。なお、この棚7は、取り外し可能に塗装ブース本体2の両側面に架け渡されており、棚7を取り外せば塗装ブース1の内部に塗装ブース本体2から取り外した送風機4や排気管5といった大きなものを収納しやすいようになっている。
【0023】
さらに、塗装ブース本体2は、エアブラシなどよって噴出された塗料粒子のうち排気口2bの周辺に当たり跳ね返った塗料粒子が天面に沿って塗装ブース本体2から室内に飛散すること、特に塗料粒子が塗装をしている人の顔近くに吹き返すことを防ぐための吹き返し防止板8を備えている。この吹き返し防止板8は、ここでは平らな板であって、天面の縁部を天面から底面の方向に向けて、開口2aの一部を遮るように両側面に架け渡されている。
【0024】
さらにまた、塗装ブース本体2は、天面の外側中央に取っ手9と、天面の内側に照明10と、側面の外側にコンセント11とプラグ12を備えている。
【0025】
扉3は、断面がコの字形の板部材であり、開口2aを覆う作業台兼用部3aと、この作業台兼用部3aの両端から直立する側面部3bとを有して構成されている。
【0026】
作業台兼用部3aは、四角形の板からなり、扉3の全開時に塗装ブース本体2と重なる部分と、重ならない部分とを有し、ここでは扉3が塗装ブース本体2の下に敷かれるように重なっている。ここで、作業台兼用部3aのうち、塗装ブース本体2と重なる部分の厚みを、塗装ブース本体2の底面の厚さほど薄くすることで、作業台兼用部3aの表面と塗装ブース本体2の底面とが同じ高さ、いわゆる面一となっている。また、作業台兼用部3aには、その扉3の全開時に塗装ブース本体2と重ならない部分に、ここでは側面部3bとの境目部分に、粉塵をはけなどで掃き入れるためのダクト溝3dが設けられている。
【0027】
側面部3bは、一つの内角が直角の台形の板からなり、その幅広部分に塗装ブース本体2の両側面に設けられた軸2cがスライド可能に嵌る、棒状の貫通した溝3cが設けられている。
【0028】
以上のように構成された塗装ブース1では、扉3が溝3cとこの溝3cにスライド可能に嵌合する軸2cとによって開閉可能に支持されている。図3は、この発明に係る塗装ブース1の扉3の開閉状態を示す側面図であり、(a)が閉口時の状態を示し、(e)が全開時の状態を示し、(b)から(d)については開閉途中の状態を示す。ここでは説明の都合上、溝3cの端部をA、Bとする。
【0029】
まず、扉3が開く過程について、図3を参照しながら説明する。始めに、扉3が誤って開閉しないように扉3を塗装ブース本体2に固定している軸2cを緩める。そして、(a)に示す閉口時の状態にある扉3を、溝3cと平行な矢印で示す斜め上方に、(b)に示す軸2cが溝3cのBの位置まで引き上げる。次に、扉3を、(d)に示すように扉3と塗装ブース本体2とが直交するまで倒す。そして、(d)に示す状態で塗装ブース本体2を、溝3cと平行な矢印で示す斜め下方に、(e)に示す塗装ブース本体2が扉3と重なる状態まで下ろし、軸2cを締める。ここでは、Bの位置は、(c)に示す状態で扉3が塗装ブース本体2に当たらないよう定められている。一方、Aの位置は、(a)に示す閉口時の状態で塗装ブース本体2と扉3とが密着するように、(e)に示す全開時の状態で塗装ブース本体2と扉3とが密着するように定められている。
【0030】
図3の(e)に示すように、扉3が全開時において塗装ブース本体2と扉3とが重なることで、塗装ブース本体2と扉3とのすき間をなくすことができる。また、扉3が全開時において塗装ブース本体2と扉3とが重なることで、この重なった部分は扉3がそれ以上開くことを防ぐストッパーとなることから、塗装ブース1を持ち上げても扉3が塗装ブース本体2の底面の延伸上に支持できる。さらに、ここでは作業台兼用部3aのうち、塗装ブース本体2と重なる部分の厚みが、塗装ブース本体2の底面の厚さほど薄いことで、作業台兼用部3aの表面と塗装ブース本体2の底面とが同じ高さ、いわゆる面一となっている。
【0031】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は前記実施形態には限定されない。例えば、この発明に係る塗装ブース1としては、プラスチックモデル用に限られるものではなく、イラストや工芸などにも用いられる。また、この発明に係る塗装ブース1としては、塗装以外にも、換気の必要がある切削加工などにも用いられる。
【0032】
この発明において、底面延伸方向に支持とは、底面と平行であることを意味するものではなく、扉3が盆のような機能を有して、例えば塗装作業の途中であっても、作業台兼用部3aを片付けることなく、塗装ブース1を移動させることもできるといった効果を生じるものであれば足りる。したがって、扉3が作業台兼用部3aの上に置かれた物が落ちない程度に、底面に対して上方または下方に傾いていてもよい。
【0033】
扉3を開閉可能に支持するものとしては、溝3cとこの溝3cにスライド可能に嵌合する軸2cに限られるものではなく、市販塗装ブースのような塗装作業のたびに組立ての手間がいらないように開閉可能に取り付けてあればよく、例えば蝶番や塗装ブース本体2と扉3とを可撓部材によって接合したものでもよい。
【0034】
扉3が塗装ブース本体2と重なるとは、扉3と塗装ブース本体2とが一部でも重なっていれば足り、作業台兼用部3aと排気口2bまでが最適な距離となるように重なる割合が調整されるものである。
【0035】
この実施例では、溝3cが扉3に設けられるとともに、軸2cが塗装ブース本体2に備えられると説明したが、この逆でも構わない。また、その位置も塗装ブース本体2や扉3の形状によって適宜変更されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明に係る塗装ブースの斜視図のうち、扉を開いた状態を示す図である。
【図2】この発明に係る塗装ブースの斜視図のうち、扉を閉じた状態を示す図である。
【図3】この発明に係る塗装ブースの扉の開閉状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 塗装ブース
2 塗装ブース本体(筐体)
2a 開口
2b 排気口
2c 軸
3 扉
3a 作業台兼用部
3b 側面部
3c 溝
3d ダクト溝
4 送風機
5 排気管
6 粉塵フィルター
7 棚
7a 筆立て
7b コップホルダー
8 吹き返し防止板
9 取っ手
10 照明
11 コンセント
12 プラグ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の一側面を作業用の開口とし、その開口以外の面に排気口を設けた塗装ブースであって、
前記塗装ブースが前記開口を閉じる扉を備え、
前記扉が全開時において前記筐体の底面延伸方向に支持されることを特徴とする塗装ブース。
【請求項2】
前記扉が溝と前記溝にスライド可能に嵌合する軸とによって開閉可能に支持され、
前記扉が全開時において前記筐体と重なることを特徴とする請求項1に記載の塗装ブース。
【請求項3】
前記扉がその内面に溝を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗装ブース。
【請求項4】
前記筐体がその内部に棚を備えることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の塗装ブース。
【請求項1】
筐体の一側面を作業用の開口とし、その開口以外の面に排気口を設けた塗装ブースであって、
前記塗装ブースが前記開口を閉じる扉を備え、
前記扉が全開時において前記筐体の底面延伸方向に支持されることを特徴とする塗装ブース。
【請求項2】
前記扉が溝と前記溝にスライド可能に嵌合する軸とによって開閉可能に支持され、
前記扉が全開時において前記筐体と重なることを特徴とする請求項1に記載の塗装ブース。
【請求項3】
前記扉がその内面に溝を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗装ブース。
【請求項4】
前記筐体がその内部に棚を備えることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の塗装ブース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2009−285637(P2009−285637A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143976(P2008−143976)
【出願日】平成20年5月31日(2008.5.31)
【出願人】(308001628)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月31日(2008.5.31)
【出願人】(308001628)
【Fターム(参考)】
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