説明

墓用香炉

【目的】 香炉に収納するローソクの立ち消えを防止する。
【構成】 自然石から成る香炉1にローソクを収納する空洞部8を形成する。香炉1の上面から両側面にかけて切込み溝12を形成する。切込み溝12に透明な風防カバー13を香炉1の上方側から嵌め入れる。風防カバー13は、風防カバー13の上端部のストッパー部13によって香炉に1吊り下げ保持される。そして、香炉1の上面両側部に突設する隆起部14でストッパー部13の左右方向の位置ずれを規制する。
【効果】 風防カバー13で空洞部8内の風の吹き込み抑え、ローソクの立ち消えを防止できる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、内部にローソクが収納可能な墓用香炉に関し、特にローソクの火が風によって立ち消えないようにした墓用香炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、墓碑に備えられた香炉に空洞部を設け、この空洞部にローソクを収納することよりローソクの火が風の影響によって消えにくくした香炉が知られている。しかし、ローソクの火を外部側から見えようにするためには、必然的に空洞部の前面側を開口しなければならず、強風の際などでは、開口部から空洞部内に風が吹き込んでローソクの火が消えてしまうことがある。
【0003】
このような問題を解決するため、従来、強風時においても、ローソクの火が消えにくように改良したものが種々の提案され、例えば、実開昭59−137183号公報には空洞部に形成する開口窓にローソクの灯が見える程度の透かし模様を施すことで、開口窓の開口面積を狭めた香炉用ローソク立てが提案され、また、実開昭57−155612号公報には、上面部を不燃性天井板を配した枠体により、内部にローソクを収納するローソク立台を構成し、このローソク立台の前面開口窓に透明開閉扉を配した墓用ローソク立台が提案されている。なお、この墓用ローソク立台は、収納空間からローソクを出し入れする都合上、2枚の透明開閉扉を引き違い可能とし、透明開閉扉を組み付ける開口窓の内周部分に透明開閉扉をスライド自在に案内する一対の凹溝を形成するように構成している。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、墓碑に備えられる香炉は、墓石と違和感なく統一的な印象を与えるため、墓石と同じ石材で形成されることが多いが、このように香炉を石材で作る場合、香炉をくりぬくようにローソクの空洞部を形成することは、比較的容易に加工できるが、前記実開昭59−137183号公報のように開口窓に施した透かし模様の製作は技術的に手間と時間がかかり、コスト的に不利であるばかりでなく、透かし模様の空隙から風が吹き込むことから、実開昭57−155612号公報のように、透明開閉扉でローソクの収納空間を透明開閉扉で遮るものに比べ、風防効果の低いことが懸念される。一方、透明開閉扉でローソクの収納空間を遮る実開昭57−155612号公報では、透明開閉扉を案内する凹溝を開口窓の内周部分に形成することは、前述したように香炉を石材で作る場合、製作加工的に難しい面があるとともに、開口窓の内周部分に透明開閉扉を引き違い可能にスライド案内するためには、透明開閉扉の上端縁と下端縁は互いに平行する必要がある。すなわち、透明開閉扉とこの透明開閉扉を嵌め入れる開口窓は、その上端縁と下端縁は互いに平行する矩形状に形成しなければならず、ローソクを収納する空洞部の形状が制約されてしましう。しかし、墓石と違和感なく統一的なデザインとするうえで、空洞部のデザインは重要な要素である。
【0005】
本考案は、このような問題点を解決しようとするもので、風の影響によってローソクの火が消えないとともに、石材から成る香炉において、製作加工性に優れた風防カバーの案内構造を可能とする墓用香炉を提供することを第1の目的とするものである。
【0006】
また、本考案は、風防カバーの装着時において、空洞部内の酸欠によるローソクの立ち消えを防止するとともに、風防カバーの破損を防止できる墓用香炉を提供することを第2の目的とする。
【0007】
また、本考案は、風防カバーを香炉に確実に位置決めできる墓用香炉を提供することを第3の目的とする。
【0008】
また、本考案は、墓石と違和感がなく意匠性に優れた墓用香炉を提供することを第4の目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本考案は、前記目的を達成するために、請求項1の考案は、石材から成る香炉を設け、この香炉に前面を開放して内部にローソクなどが収納可能な空洞部を形成し、この空洞部の前面開口窓を遮る透明な風防カバーを設け、前記香炉の上面から両側面にかけて前記風防カバーを挿脱自在に嵌め入れる切込溝を設けたものである。
【0010】
また、請求項2の考案は、石材から成る香炉を設け、この香炉に前面を開放して内部にローソクなどが収納可能な空洞部を形成し、この空洞部の前面開口窓を遮る透明な風防カバーを設け、前記香炉の上面から両側面にかけて前記風防カバーを挿脱自在に嵌め入れる切込溝を設け、前記風防カバーの上端部に前記風防カバーを吊り下げ保持して風防カバーの下端部と前記空洞部の底部との間に空気取り入れ用の隙間を形成するストッパー部を設けたものである。
【0011】
また、請求項3の考案は、石材から成る香炉を設け、この香炉に前面を開放して内部にローソクなどが収納可能な空洞部を形成し、この空洞部の前面開口窓を遮る透明な風防カバーを設け、前記香炉の上面から両側面にかけて前記風防カバーを挿脱自在に嵌め入れる切込溝を設け、前記風防カバーの上端部に前記風防カバーを吊り下げ保持して風防カバーの下端部と前記空洞部の底部との間に空気取り入れ用の隙間を形成するストッパー部を設け、前記香炉の上面両端寄りには前記ストッパー部の左右方向の位置ずれを規制する隆起部を形成したものである。
【0012】
また、請求項4の考案は、請求項1乃至請求項3記載の墓用香炉において、空洞部の背面部に家紋などを刻設した装飾部を設けたものである。
【0013】
また、請求項5の考案は、請求項1乃至請求項4記載の墓用香炉において、風防カバーに家紋などを刻設した装飾部を設けたものである。
【0014】
【作用】
請求項1記載の考案は、風防カバーを切込溝に香炉の上方側から嵌め入れると、空洞部の前面開口窓が風防カバーによって遮られ、空洞部内への風の吹き込みを抑え、空洞部内に収納したローソクの立ち消えを防止できる。
【0015】
また請求項2記載の考案は、風防カバーを切込溝に差し込んだ際、風防カバーに設けたストッパー部が上面に載置され、風防カバーが香炉に吊り下げ保持される。この時、風防カバーの下端部と空洞部の底部との間に隙間が生じる。このため、隙間により空洞部内外が連通し、空洞部内の酸欠によるローソクの立ち消えを防止できるとともに、風防カバーの装着時に風防カバーの下端部が空洞部に突き当たらないため、風防カバーの破損を防止できる。
【0016】
また請求項3記載の考案は、風防カバーを香炉に吊り下げた際、風防カバーのストッパー部が隆起部によって位置決めでき、これにより、風防カバーで空洞部の前面開口窓を遮った状態で左右方向の位置決めが成される。
【0017】
また請求項4記載の考案は、風防カバーを通してローソクとこのローソクの背面側に施された装飾部を確認でき、装飾部がローソクの火に照らされて明瞭に視認される。
【0018】
また請求項5記載の考案は、風防カバーに施された装飾部がローソクの火に照らされて明瞭に視認される。
【0019】
【実施例】
以下、本考案の墓用香炉を添付図面を参照して説明する。図1乃至図3は本考案の第1実施例を示し、同図において、1は墓石2上に載置して墓石2の納骨口3を覆う香炉であり、この香炉1は、御影石などの自然石から成り、台部4と胴部5及び天板部6とを有し、前記胴部5の前面ほぼ中央部分をくりぬいてローソク7あるいは線香などを収納する空洞部8を形成する。この空洞部8は、正面側から見て3つの円を横方向に重ね合わせて繋げた形状で、空洞部8の下部及び上部は波状の凹凸部9となる。また、空洞部8の背面部8Aには、図2に示すように家紋を刻設した装飾部10が形成される。11は空洞部8の前面開口窓12を遮る透明なガラスあるいはアクリル板などから成る風防カバー13であり、前記香炉1の上面から両側面にかけて前記風防カバー11を嵌め入れる切込溝12が形成されている。風防カバー11は台形状に形成され、その上端縁に前記切込溝12より巾広なストッパー部13が固着されている。そして、風防カバー11を香炉1の上方側から切込溝12内に嵌め入れた際、ストッパー部13が香炉1の天板部6に支持され、風防カバー11の下端部と空洞部8の下端に形成する前記凹凸部9との間に空洞部8内に空気を取り入れための隙間Aが形成される。なお、風防カバー11に固着するストッパー部13は緩衝効果を得るために弾性ゴムが望ましい。また、ストッパー部13を支持する香炉1の天板部6は、供物できるように平坦に形成されているが、両端寄りに前記ストッパー部13の長さにほぼ対応した間隔をおいてストッパー部13の左右方向の位置ずれを規制する左右一対の隆起部14が突設されている。この両隆起部14の外側はそれぞれ垂直に立ち上がり、その上端部から内側に傾斜する第1湾曲面15とこの第1湾曲面15より一段低く形成され前記天板部6に至る第2湾曲面16を有する。なお、図中17はローソク立てである。
【0020】
以上のように構成される本考案の作用について説明する。
【0021】
まず、ローソク立て17にローソク7を装着し、このローソク7を香炉1の空洞部8に収納する。この後、風防カバー11を香炉1の上方側から切込溝12内に嵌め入れて風防カバー11を降下させると、風防カバー11の上端に固着したストッパー部13が隆起部14の第2湾曲面16に沿って両隆起部14間に誘い込まれてストッパー部13が香炉1の天板部6上に載り、風防カバー11がストッパー部13によって吊り下げ状態で支持される。そして、風防カバー11を香炉1に差し入れると、風防カバー11の下端部と空洞部8の下端に形成する前記凹凸部9との間に空気取り入用の隙間Aが形成される。このようにして風防カバー11を香炉1に装着すると、ローソク7の上部側が風防カバー11で覆われるため、風防カバー11によって、空洞部8内への風の吹き込みを抑え、ローソク7の立ち消えを防止できる。また、風防カバー11の下端部と前記凹凸部9との間に隙間Aを形成することで、空洞部8内外が連通し、酸欠によりローソク7の火が消えることもないうえ、風防カバー11の下端部が凹凸部9と突き当たらず、特に、風防カバー11として割れやすいガラス板を用いた場合であっても、風防カバー11の破損を防止することができる。
さらに、弾性ゴムから成るストッパー部13によって、ストッパー部13を香炉1に載せる際のショックを吸収して緩衝効果を発揮できる。さらに、天板部6に突設した両隆起部14によって、ストッパー部13が挟まれて風防カバー11の左右方向の位置決めが成され、風防カバー11が香炉1の外側に張り出すこともないため、風防カバー11によって確実に空洞部8の前面開口窓12を遮ることができる。しかも、ストッパー部13は両隆起部14の第2湾曲面16に沿って両隆起部14間に誘い込まれるため、安定的に案内されるものである。
【0022】
このようにして、本実施例においては、石材から成る香炉1をカッター装置によって香炉1の外側から前記香炉1の上面から両側面にかけて切り込みを入れるだけで風防カバー11を案内する切込溝12を極めて簡単に形成することができるとともに、空洞部8の形状より大きな外形形状の風防カバー11を用いるだけで、空洞部8自体の形状は、前記従来例のように、制約を受けることなく、自由に形成できるとともに、風防カバー11の形状も空洞部8の形状に合わせて形成する必要もないことから、製作加工が容易である。また、ローソク7の上部側を風防カバー11で覆うことで風の影響によるローソク7の立ち消を防止でき、このように、ローソク7の上部側を風防カバー11で覆ったとしても透明な風防カバー11を通してローソク7や家紋を刻設した装飾部10を確認でき、特に、空洞部8の背面部8Aに施した装飾部10がローソク7に照らされて明瞭に視認され、空洞部8の形状と相俟って意匠性に優れた香炉1を提供できる。さらに、風防カバー11の上端部に設けたストッパー部13によって、酸欠によるローソク7の立ち消を防止できるうえ、挿入時における風防カバー11の破損も防止でき、加えて、天板部6の突設した両隆起部14によって風防カバー11の左右方向の位置決めができる。
【0023】
図4は本考案の第2実施例を示し、前記第1実施例と同一部分には、同一符号
を用い、その詳細を省略して説明する。本実施例においては、風防カバー11に家紋を刻設した装飾部10Aを形成している。すなわち、本実施例では、ローソク7の上部側を覆う透明な風防カバー11に家紋などの装飾部10Aを形成したので、風防カバー11を通してローソク7と、空洞部8に施した装飾部10を確認できるうえ、風防カバー11の装飾部10Aがローソク7に照らされて明瞭に視認され、前記第1実施例よりさらに意匠性に優れた香炉1を提供できる。
【0024】
以上、本考案の各実施例を詳述したが、本考案は、前記各実施例に限定されることなく、要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、香炉自体の形状や隆起部の形状などは適宜設定すればよいものであり、また、装飾部は家紋以外にも故人に因んだ文字や似顔絵などでもよい。
【0025】
【考案の効果】
請求項1の考案は、石材から成る香炉を設け、この香炉に前面を開放して内部にローソクなどが収納可能な空洞部を形成し、この空洞部の前面開口窓を遮る透明な風防カバーを設け、前記香炉の上面から両側面にかけて前記透明な風防カバーを挿脱自在に嵌め入れる切込溝を設けたので、香炉の外側から風防カバーを案内する切込溝みを入れるだけで簡単に形成できるとともに、空洞部の形状を自由に設定できる。
【0026】
また、請求項2の考案は、石材から成る香炉を設け、この香炉に前面を開放して内部にローソクなどが収納可能な空洞部を形成し、この空洞部の前面開口窓を遮る透明な風防カバーを設け、前記香炉の上面から両側面にかけて前記風防カバーを挿脱自在に嵌め入れる切込溝を設け、前記風防カバーの上端部に前記風防カバーを吊り下げ保持して風防カバーの下端部と前記空洞部の底部との間に空気取り入れ用の隙間を形成するストッパー部を設けたことにより、酸欠によるローソクの立ち消えを防止できるとともに、挿入時における風防カバーの破損を防止できる。
【0027】
また、請求項3の考案は、石材から成る香炉を設け、この香炉に前面を開放して内部にローソクなどが収納可能な空洞部を形成し、この空洞部の前面開口窓を遮る透明な風防カバーを設け、前記香炉の上面から両側面にかけて前記風防カバーを挿脱自在に嵌め入れる切込溝を設け、前記風防カバーの上端部に前記風防カバーを吊り下げ保持して風防カバーの下端部と前記空洞部の底部との間に空気取り入れ用の隙間を形成するストッパー部を設け、前記香炉の上面両端寄りには前記ストッパー部の左右方向の位置ずれを規制する隆起部を形成したことにより、風防カバーを挿入後、風防カバーを確実に位置決めできる。
【0028】
また、請求項4の考案は、請求項1乃至請求項3記載の墓用香炉において、空洞部の背面部に家紋などを刻設した装飾部を設けたことにより、装飾部が空洞部内に収納したローソクに照らされて明瞭に確認でき、意匠性に優れた香炉を提供することができる。
【0029】
また、請求項5の考案は、請求項1乃至請求項4記載の墓用香炉において、風防カバーに家紋などを刻設した装飾部を設けたことにより、装飾部が空洞部内に収納したローソクに照らされて明瞭に確認でき、意匠性に優れた香炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の第1実施例を示す香炉の分解斜視図である。
【図2】同上一部省略した香炉を載せた墓石の正面図である。
【図3】同上香炉の断面図である。
【図4】本考案の第2実施例を示す香炉の分解斜視図である。
【符号の説明】
1 香炉
7 ローソク
8 空洞部
8A 背面部
10、10A 装飾部
11 風防カバー
12 前面開口窓
13 ストッパー部
14 隆起部
A 隙間

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 石材から成る香炉を設け、この香炉に前面を開放して内部にローソクなどが収納可能な空洞部を形成し、この空洞部の前面開口窓を遮る透明な風防カバーを設け、前記香炉の上面から両側面にかけて前記透明な風防カバーを挿脱自在に嵌め入れる切込溝を設けたことを特徴とする墓用香炉。
【請求項2】 石材から成る香炉を設け、この香炉に前面を開放して内部にローソクなどが収納可能な空洞部を形成し、この空洞部の前面開口窓を遮る透明な風防カバーを設け、前記香炉の上面から両側面にかけて前記風防カバーを挿脱自在に嵌め入れる切込溝を設け、前記風防カバーの上端部に前記風防カバーを吊り下げ保持して風防カバーの下端部と前記空洞部の底部との間に空気取り入れ用の隙間を形成するストッパー部を設けたことを特徴とする墓用香炉。
【請求項3】 石材から成る香炉を設け、この香炉に前面を開放して内部にローソクなどが収納可能な空洞部を形成し、この空洞部の前面開口窓を遮る透明な風防カバーを設け、前記香炉の上面から両側面にかけて前記風防カバーを挿脱自在に嵌め入れる切込溝を設け、前記風防カバーの上端部に前記風防カバーを吊り下げ保持して風防カバーの下端部と前記空洞部の底部との間に空気取り入れ用の隙間を形成するストッパー部を設け、前記香炉の上面両端寄りには前記ストッパー部の左右方向の位置ずれを規制する隆起部を形成したことを特徴とする墓用香炉。
【請求項4】 前記空洞部の背面部に家紋などを刻設した装飾部を設けたことを特徴とする前記請求項1乃至3記載の墓用香炉。
【請求項5】 前記風防カバーに家紋などを刻設した装飾部を設けたことを特徴とする前記請求項1乃至4記載の墓用香炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【登録番号】第3004566号
【登録日】平成6年(1994)9月14日
【発行日】平成6年(1994)11月22日
【考案の名称】墓用香炉
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−2546
【出願日】平成6年(1994)3月23日
【出願人】(594049755)株式会社吉運堂 (1)
【代理人】
【氏名又は名称】牛木 護