説明

増毛装置および増毛方法

【課題】 低侵襲で患者に与える負担を軽減し、効率的に、自然な、かつ、健全な自家毛髪の増毛を図る。
【解決手段】 所定の間隔をあけて配列された複数の中空針6と、該中空針6をその長手方向に個別に移動可能に支持する支持部材7と、各中空針6に、毛嚢幹細胞を含む液体Aを供給する供給部とを備える増毛装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、増毛装置および増毛方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、毛髪の薄い部分の頭皮に多数の毛髪を粘着して増毛を行う増毛装置は知られている(例えば、特許文献1参照。)。この増毛装置は、基板に複数本の毛髪が取り付けられた増毛用ピースを頭皮に粘着させる際に用いる筒状の増毛用ユニットを複数収容したもので、増毛用ピースの頭皮への粘着を連続して行うことを可能としている。
【0003】
また、幹細胞、毛包細胞あるいは毛乳頭の細胞を再生あるいは再構築することにより、発毛を促進する薬剤も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
この薬剤は、薬剤に含まれるツボクサエキスによって幹細胞、毛包細胞あるいは毛乳頭の細胞を再生あるいは再構築するものである。
【0004】
また、後頭部から毛髪を含む頭皮を帯状に切り取り、それを小さく株分けした皮膚小片をメスか類似の尖刀で形成したスリットに1株ずつ挿入していく植毛による増毛方法も知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−371420号公報
【特許文献2】特開2004−59482号公報
【非特許文献1】漆畑他、「美容皮膚科プラクティス」、南山堂、1999年、第1版、p.318,319
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される増毛装置は、一度に多数の毛髪を頭皮に貼り付けることができるため効率的であるが、単に貼り付けるだけであるために、その後の成長がなく、自然な増毛を図ることができないという問題がある。
また、特許文献2に示される増毛方法は、頭皮に残る幹細胞、毛包細胞あるいは毛乳頭を活性化するものであるが、頭皮に十分な幹細胞、毛包細胞あるいは毛乳頭が残っていない場合に、増毛を達成することができないという問題がある。
【0006】
さらに、非特許文献1に示される増毛方法は、患者自身の後頭部の毛髪を毛根ごと移植する方法であるため、自然な増毛が可能であるが、移植細胞の確実な生存や機能保全を図ることが困難であり、その結果、毛嚢が誘発されずに毛髪の健全な成長が困難であるという問題がある。
【0007】
また、このような増毛方法では、株分けした毛髪を1本ずつ移植する必要があるため、植毛作業に熟練を要し、また、植毛の効率が悪いという問題がある。
さらに、このような増毛方法は、後頭部の毛髪を毛根ごと剥離する必要があり、侵襲が高く、患者に与える負担が大きいという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、低侵襲で患者に与える負担を軽減し、効率的に、自然な、かつ、健全な自家毛髪の増毛を図ることができる増毛装置および増毛方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、所定の間隔をあけて配列された複数の中空針と、該中空針をその長手方向に個別に移動可能に支持する支持部材と、前記各中空針に、毛嚢幹細胞を含む液体を供給する供給部とを備える増毛装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、供給部の作動により、毛嚢幹細胞を含む液体が中空針を介して中空針の先端から出射される。中空針は、間隔をあけて複数備えられているので、これらの中空針を頭皮等増毛したい箇所に刺して、供給部を作動させることにより、頭皮内に毛嚢幹細胞を含む液体が注入され、毛嚢幹細胞の成長により、毛髪が再生され増毛されることになる。
【0011】
この場合において、各中空針は、支持部材によりその長手方向に個別に移動可能に支持されているので、頭皮等の増毛位置の表面形状に合わせて、中空針の先端を長手方向に移動させることができる。その結果、増毛位置の表面形状に凹凸があっても全ての中空針の先端をほぼ同時に表面に刺して、均一な深さ位置まで刺し入れ、毛嚢幹細胞を含む液体を注入することができる。
【0012】
上記発明においては、前記支持部材が、弾性材料により構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、支持部材を弾性変形させるだけで、増毛位置の表面形状に倣って中空針の先端位置を配置することが可能となる。
【0013】
また、上記発明においては、前記支持部材が、前記中空針を貫通状態に支持する膜状に形成され、前記中空針が、支持部材による支持点を支点として角度変更可能に設けられていることとしてもよい。
このようにすることで、中空針の先端に、該中空針の長手方向に交差する方向に力を付与して、支持部材による支持点を支点として回転力を付与することにより、膜状に形成された支持部材が弾性変形させられて、中空針の角度が変更されることになる。頭皮において毛髪の生える角度は各領域毎に異なるため、その領域毎に中空針の角度を調節して、毛根への中空針の刺し入れを容易にし、あるいは、生えてくる毛髪の角度を設定することができる。
【0014】
この場合に、本発明においては、支持部材が弾性材料からなる膜状に形成されているので、支持部材を弾性変形させることで、複数の中空針の先端位置を頭皮等の表面形状に倣って配置しつつ、各中空針の角度を変更して設定することができる。したがって、複数の中空針を角度に傾斜させた状態で、ほぼ同時に同等の深さまで刺し入れることが可能となる。
【0015】
また、上記発明においては、前記各中空針に固定され、前記中空針の間隔を維持するように支持する間隔維持部材を備えることとしてもよい。
このようにすることで、間隔維持部材の作動により、各中空針の間隔が維持される。その結果、各中空針がほぼ同一の傾斜角度で傾斜させられる。したがって、1回の注入作業においては、全ての中空針を同位置の傾斜角度で頭皮等の増毛位置に毛嚢幹細胞を含む液体を注入することが可能となる。
【0016】
また、上記発明においては、前記間隔維持部材が前記各中空針に固定された略球体部材により構成され、前記略球体部材が、隣接する中空針に固定された他の略球体部材と接触する半径寸法を有することが好ましい。
このようにすることで、隣接する略球体状の間隔維持部材を相互に接触させることとして、全ての中空針の傾斜角度の変更を簡易に連動させることができる。その結果、全ての中空針をほぼ同一角度で傾斜させ、頭皮等の増毛位置に、等しい角度で、等しい深さだけ、同時に複数の中空針を刺し入れて、毛嚢幹細胞を含む液体を注入することができる。
【0017】
また、前記中空針は、任意の隣接する3本が略正三角形の頂点位置に配されるように2次元的に配列されていることが好ましい。
ヒトの頭皮の毛髪は、隣接する任意の3本の毛髪が、略正三角形の頂点位置に配されるように配列されている。したがって、本発明によれば、頭皮に残る毛根に一致するように全ての中空針を刺し入れることができる。あるいは、毛根が存在しない領域においては、略正三角形を連続させた配列で、より自然に近い増毛を図ることができる。
【0018】
また、本発明は、頭皮に毛嚢幹細胞を含む液体を注射する増毛方法を提供する。
本発明によれば、頭皮に毛脳幹細胞を含む液体を注入することにより、注入された毛脳幹細胞を頭皮内部において成長させ、毛髪を再生することができる。したがって、低侵襲で患者にかかる負担を軽減し、自家毛髪を再生して、継続的な増毛を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低侵襲で患者に与える負担を軽減し、効率的に、自然な、かつ、健全な自家毛髪の増毛を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る増毛装置1および増毛方法について、図1〜図5を参照して、以下に説明する。
本実施形態に係る増毛装置1は、図1に示されるように、作業者により把持される把持部2の先端に注射針部3を備えている。把持部2は中空に形成され、後端には、毛嚢幹細胞を含む液体Aが供給されるチューブ4が接続されている。また、把持部2の先端には、供給されてきた液体Aを分配する分配部5が設けられている。チューブ4の基端側には、ポンプ等の液体供給手段(供給部:図示略)と、毛嚢幹細胞を含む液体Aを貯留する容器(図示略)とが接続されている。
【0021】
前記注射針部3は、等間隔をあけて配列された複数(例えば、100本)の中空針6と、これらの中空針6を支持する支持部材7と、これら中空針6の間隔を維持する接触球部(間隔維持部材)8と、前記分配部5と各中空針6とを接続する分配チューブ9とを備えている。図1、図2、図4、図5は、そのうちの10本のみを示している。
【0022】
支持部材7は、注射針部3の前面に張られたシリコーンゴム等の弾性材料からなる膜状部材により構成されている。中空針6には、その長手方向の途中位置に球状の突起6aが一体的に設けられ、該球状の突起6aを支持部材7に係合させることで、中空針6が支持部材7に固定された状態に支持されている。
【0023】
すなわち、膜状部材からなる支持部材7は、中空針6を貫通させた状態でそれら中空針6の長手方向の途中位置に交差する方向に張られている。そして、各中空針6に長手方向に沿う押圧力が作用した場合には、支持部材7が弾性変形して各中空針6の長手方向に沿う個別的な変位を許容するようになっている。
また、支持部材7は、中空針6に設けた突起6aを係合させることにより、該突起6aの周辺を弾性変形させて、突起6aを支点とした中空針6の回転を許容している。
【0024】
各中空針6は、皮膚への刺し入れを容易にするように、先端が斜めに切断されることにより形成された尖端6bを備えている。また、各中空針6は、図1および図2に示されるように、支持部材7が平坦に張られた状態で、それら尖端6b位置が同一平面内に揃うように支持部材7に取り付けられている。
【0025】
また、中空針6は、図3に示されるように、隣接する任意の3本の中空針6が、略正三角形の3つの頂点上に配置されるように配列されている。したがって、図3に示されるように、任意の1本の中空針6の周囲を取り囲む6本の中空針6の尖端6bは、略正六角形の頂点上に配置されるように配列されている。正三角形の一辺の長さは、ヒトの毛根の平均的な間隔寸法に等しく設定されている。なお中空針6の間隔寸法は個人差による相違に応じて適宜設定するようにしてもよい。
【0026】
前記接触球部8は、中心を貫通する貫通孔8aを有する略球形に形成され、各中空針6の支持部材7よりも後端側において中空針6を貫通孔8aに挿入させた状態で固定されている。各接触球部8は、同一の半径寸法を有している。接触球部8の半径寸法は、図1および図2に示されるように、中空針6が略平行に配された状態で相互に接触することとなる寸法、すなわち、隣接する任意の2本の中空針6の中心間距離の2分の1の半径寸法に設定されている。
【0027】
前記分配部5は、前記中空の把持部2の先端に固定されたブッシュであって、各中空針6に接続される分配チューブ9の一端を固定し、中空の把持部2内に供給されてきた液体Aを、各分配チューブ9に分配するようになっている。
【0028】
前記毛嚢幹細胞を含む液体Aは、所定の細胞ソースから分離・収集し、培養した毛嚢幹細胞と、男性ホルモンの抑制因子と、TGF−βの活性の抑制因子と、皮脂分泌の抑制因子と、骨再生促進剤(BMP)と、血管新生遺伝子(Ephrin)と、血管上皮因子や拡張、血流促進効果を有するビタミンE等の薬剤と、サイトカインとを含んでいる。
【0029】
毛嚢幹細胞の細胞ソースは、皮膚、脂肪等由来細胞、各システムの前駆細胞、幹細胞、骨髄間葉系幹細胞、毛嚢幹細胞、毛母細胞活性型毛細血管細胞、毛母細胞、毛母幹細胞、毛乳頭細胞、毛乳頭幹細胞、毛根部細胞の活性型、不死化毛根鞘細胞、毛髪形成前駆細胞、骨格筋細胞、真皮乳頭細胞、真皮鞘細胞または毛嚢組織内細胞である。また、ヒト由来皮膚、骨髄、血液、胎盤、ES細胞等の組織、表皮幹細胞、表皮角化細胞、メラニン細胞、メルゲル細胞(末梢神経細胞)、繊維芽細胞、血管系の内皮細胞等も含まれる。
【0030】
また、前記サイトカインには、FGF−2およびFDGF(毛乳頭の増殖促進)、FGF−7およびIGF(毛嚢成長期の促進)、HGF(肝細胞増殖因子)、IGF−I(インスリン様成長因子:毛嚢成長期の促進)、IGF,FGF(繊維芽細胞増殖因子)、ランブータンエキス、コリアンダー、タイソウエキス、毛嚢誘導因子、VEGF(血管新生増殖因子)のいずれか1以上が含まれる。女性ホルモン、センブリエキス、トウガラシチンキ等のチンキ類、ニコチン酸ベンジルエステルを含んでいてもよい。
【0031】
また、メラニン色素は表皮の内側(基底層)や毛髪の付け根(毛球)に存在するメラノサイトと呼ばれる細胞の中で合成され、メラノソームに貯蔵される。このメラノソームが細胞内を移動し、髪の毛を作る細胞に受け渡され、毛髪が着色される。メラニン色素を組み合わせることにより、再生される毛髪の色を黒、茶、黄等の色にすることができる。頭皮に生え残った毛髪の色と合わせることで、美容上自然な色の毛髪を再生することが可能となる。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る増毛装置1を用いた増毛方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る増毛装置1を用いて頭皮Bに増毛するには、図2に示されるように、作業者は把持部2を操作して、把持部2先端に設けられた注射針部3を移動させ、注射針部3に設けられた複数の中空針6の尖端6bを頭皮Bに接触させる。頭皮Bの表面が略平面状である部分においては、図2に示されるように、支持部材7を弾性変形させることなく平坦な状態に保ったまま、全ての中空針6の尖端6bを頭皮B表面に接触させることができる。
【0033】
そして、この状態で、把持部2に、中空針6の長手方向に沿う押圧力を加えることにより、中空針6の尖端6bを頭皮Bに刺し入れる。
このとき、中空針6は、その尖端6bが表皮と真皮との間の流体で満たされた空間まで刺し入れられる。
【0034】
この状態で、液体供給手段を作動させることにより、把持部2の後端側に接続されたチューブ4を介して、毛嚢幹細胞を含む液体Aを中空の把持部2内に加圧供給する。把持部2の先端側には各中空針6に接続される分配チューブ9が接続された分配部5が設けられているので、加圧供給された毛嚢幹細胞を含む液体Aが、分配部5において各分配チューブ9に分配され、各分配チューブ9に接続された中空針6の先端開口から、表皮と真皮との間の空間に注入されることになる。
【0035】
本実施形態に係る増毛装置1によれば、複数の中空針6が頭皮Bのほぼ同一深さ位置まで刺し入れられているので、加圧供給された毛嚢幹細胞を含む液体Aをほぼ同時に、複数の中空針6の先端位置に注入することができる。この後に、作業者が把持部2を操作して中空針6を頭皮Bから引き抜くことにより、1回の作業が終了する。この作業を、領域をずらしながら繰り返し行うことにより、比較的広い領域にわたり、増毛処理を行うことができる。
【0036】
注入された毛嚢幹細胞は、液体A内に含まれる成長因子やその他の補助剤あるいは活性剤の作用により活性化等が図られ、注入された部分から中空針6の刺し入れ痕に沿って、毛髪が再生され、増毛が図られることになる。したがって、後頭部の皮膚を毛根ごと切除して株分けし1本ずつ植毛する従来の増毛方法と比較すると、中空針6を刺すだけの極めて低侵襲の方法であり、患者にかかる負担を大幅に低減することができるという利点がある。
【0037】
また、本実施形態に係る増毛方法によれば、メスで形成したスリットに1本ずつ植毛していく従来の場合と比較して、表皮あるいは真皮における侵襲が少なく、スリット周辺の細胞の死滅や機能低下を防止することができる。したがって、術後の毛嚢の誘発と、健全な毛髪の成長を促進することができるという利点がある。
【0038】
さらに、本実施形態に係る増毛装置1によれば、把持部2を操作して1回押圧力を加えるだけで、複数本の中空針6を同時に同一深さまで刺し入れて、複数箇所に毛嚢幹細胞を含む液体Aを注入できる。したがって、1本ずつ植毛する従来の方法と比較して、極めて効率的に作業を行うことができるという利点がある。これにより、広範囲におよぶ増毛作業であっても、短時間で終了することができ、患者を拘束する時間を短縮して、患者にかかる負担をさらに軽減することができる。
また、中空針6を皮膚に刺して液体Aを注入するだけの簡単な作業であり、増毛作業に熟練を必要としないという利点がある。
【0039】
さらに、本実施形態に係る増毛装置1によれば、複数の中空針6が弾性材料からなる支持部材7によって支持されているので、例えば、図4に示されるように、頭皮Bが湾曲している場合に、頭皮Bの表面形状に合わせて膜状の支持部材7を湾曲させることができる。したがって、このように頭皮Bの表面が湾曲している場合においても、全ての中空針6の尖端6bを同時に頭皮Bの表面に接触させることができ、この状態で、把持部2に、中空針6の長手方向に沿う押圧力を加えることにより、全ての中空針6の尖端6bを略同一の深さまで刺し入れることができる。
【0040】
その結果、頭皮Bの表面が湾曲している場合においても、複数の中空針6を頭皮に刺して毛嚢幹細胞を含む液体Aを同時に注入することができ、広範囲におよぶ増毛作業であっても、患者を拘束する時間を短縮して、患者にかかる負担を軽減することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る増毛装置1によれば、各中空針6が支持部材7によって角度変更可能に支持されているとともに、各中空針6に相互に接触する接触球部8が設けられている。したがって、図2に示されるように、支持部材7を平坦にした状態においても、また、図4に示されるように、支持部材7を湾曲させた状態においても、各中空針6をほぼ等間隔に、かつ、略平行になるように維持することができる。
【0042】
さらに、図5に示されるように、中空針6の尖端6bを頭皮B等に接触させた状態で、把持部2に、その長手方向に交差する方向に押圧力を加えることにより、支持部材7を弾性変形させて、中空針6を頭皮Bの表面に対して傾斜させることができる。この場合において、中空針6には接触球部8が設けられているので、各接触球部8を接触状態に維持することで、全ての中空針6をほぼ同一の傾斜角度に傾斜させることができる。
【0043】
頭皮Bにおける毛髪の生える角度は、その部位毎に異なっている。すなわち、例えば、前頭部、側頭部および後頭部の各領域においては、頭皮Bに対して前方に略35°の角度で毛髪が生えるのに対し、天頂部付近においては50°程度となる。したがって、その増毛を行う領域毎に中空針6を刺し入れる角度を変更することが好ましい。
【0044】
本実施形態によれば、全ての中空針6の尖端6bを頭皮Bに接触させた状態で、中空針6の傾斜角度を調節し、把持部2に、中空針6の長手方向に沿う押圧力を付与することによって、所望の角度で中空針6を刺し入れることが可能である。したがって、生えてくる毛髪を本来の毛髪と同様の角度で成長させることができ、より自然に近い形で増毛することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る増毛装置を示す縦断面図である。
【図2】図1の増毛装置の注射針部を示す縦断面図である。
【図3】図2の注射針部の各中空針の配列例を示す部分的な拡大図である。
【図4】図1の増毛装置の注射針部であって、湾曲した頭皮に適応して支持部材が湾曲した状態を示す縦断面図である。
【図5】図1の増毛装置の注射針部であって、各中空針を頭皮に対して傾斜させた状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0046】
A 毛嚢幹細胞を含む液体
1 増毛装置
6 中空針
7 支持部材
8 接触球部(間隔維持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔をあけて配列された複数の中空針と、
該中空針をその長手方向に個別に移動可能に支持する支持部材と、
前記各中空針に、毛嚢幹細胞を含む液体を供給する供給部とを備える増毛装置。
【請求項2】
前記支持部材が、弾性材料により構成されている請求項1に記載の増毛装置。
【請求項3】
前記支持部材が、前記中空針を貫通状態に支持する膜状に形成され、
前記中空針が、支持部材による支持点を支点として角度変更可能に設けられている請求項2に記載の増毛装置。
【請求項4】
前記各中空針に固定され、前記中空針の間隔を維持するように支持する間隔維持部材を備える請求項3に記載の増毛装置。
【請求項5】
前記間隔維持部材が前記各中空針に固定された略球体部材により構成され、
前記略球体部材が、隣接する中空針に固定された他の略球体部材と接触する半径寸法を有する請求項4に記載の増毛装置。
【請求項6】
前記中空針は、任意の隣接する3本が略正三角形の頂点位置に配されるように2次元的に配列されている請求項1から請求項5のいずれかに記載の増毛装置。
【請求項7】
頭皮に毛嚢幹細胞を含む液体を注射する増毛方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−99622(P2007−99622A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287292(P2005−287292)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】