説明

壁排水型ターントラップ式水洗便器

【課題】排水時の洗浄力を強くすることができる壁排水型のターントラップ式水洗便器を提供する。
【解決手段】ターントラップ装置12に、溜水状態から排水状態への回動中におけるトラップ筒5の下流側開口5bからの溜水溢れを抑制しつつ、排水状態におけるトラップ筒5の下流側開口5bからの溜水流れを阻害しないようにする洗浄力確保機構8を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁排水型ターントラップ式水洗便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターントラップ式水洗便器には図3のように床22に開設した床排水口23に排水を流す床排水タイプのもの1´と、建物壁20に開設した壁排水口21に排水を流す壁排水タイプのものがある(図1(b)参照)。
【0003】
ここで、ターントラップ式の水洗便器は、便器ボウル3に連設したターントラップ装置12のトラップ筒5を上下に回動させることで排水動作が行われる。詳しくは、トラップ筒5はその回動先端となる下流側開口5bが待機状態では上を向いており、洗浄動作時には排水口に向けるように下方に回動される。そして、この洗浄方式がターントラップ式のものは、従来一般の洗い落とし式やサイホン式と違って便器の構造自体で洗浄力を確保するものではなく、トラップ筒5を回転させて便器ボウル3の溜水を落下させることで洗浄力を確保している。つまり、溜水の位置エネルギーを利用して洗浄力が確保されることになる。
【0004】
ところで、前者の床排水型ターントラップ式水洗便器1´では床排水口23は下方にあるのでトラップ筒5はその下流側開口5bが下向きになるまで回転する。一方、後者の壁排水型ターントラップ式水洗便器1では壁排水口21は横方向にあるのでトラップ筒5はその下流側開口5bが横方向に向くまでしか回転しない。つまり、壁排水型ターントラップ式水洗便器1では、トラップ筒5の回動範囲が床排水型ターントラップ式水洗便器に比べて小さいものであり、溜水が排水口21へ流れる際の水の位置エネルギーを多く得ることができないものであり、したがって、洗浄力が不足しがちになるという問題を有している。
【0005】
しかも、従来の壁排水型ターントラップ式水洗便器1では、図4のようにトラップ筒5が回動して洗浄動作が行われるのであるが、この洗浄動作においてトラップ筒5の回動中には便器ボウル3の溜水はトラップ筒5の下流側開口5bから溢れ出してダラダラと流れ落ちてしまうのであって、トラップ筒5の回動下端である排水時に大量の溜水を勢い良く流すことはできず、排水時の強い洗浄力を得ることができないのであった。
【特許文献1】特開2005−155146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、壁排水型のターントラップ式水洗便器において不足しがちな排水時の洗浄力を強くすることができる壁排水型ターントラップ式水洗便器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る壁排水型ターントラップ式水洗便器にあっては、便器本体2に便器ボウル3から建物壁20に設けた壁排水口21に至る排水経路11を備え、この排水経路11に、上流側開口5aを便器ボウル3の排水口に接続して下流側開口5bを上下に回動させるトラップ筒5を備えたターントラップ装置12を配設し、トラップ筒5を上方に立ち上がる溜水状態から横向きになる排水状態に上下に回動させるように設定した壁排水型ターントラップ式水洗便器1において、ターントラップ装置12に、溜水状態から排水状態への回動中におけるトラップ筒5の下流側開口5bからの溜水溢れを抑制しつつ、排水状態におけるトラップ筒5の下流側開口5bからの溜水流れを阻害しないようにする洗浄力確保機構8を設けたことを特徴とする。洗浄力確保機構8によると、トラップ筒5の回動中において溜水の下流側開口5bからの溢れを抑制して極力トラップ筒5内に留まらせるようにでき、排水状態となるトラップ筒5の回動下端において上記トラップ筒5内に留まらせた溜水を滞りなく一気に勢い良くトラップ筒5の下流側開口5bから流出させるようにできるのであり、このように排水状態での溜水の瞬間排出量を向上できたから、壁排水型のターントラップ式水洗便器1において不足しがちな排水時の洗浄力を強くすることができたのである。
【0008】
また、請求項2に係る壁排水型ターントラップ式水洗便器にあっては、請求項1において、トラップ筒5の下流側開口5bの下縁部に上方に立ち上がる堰9を設け、この堰9に上流側から立ち上がる傾斜面10を備え、トラップ筒5が排水状態にあるときに堰9の上端をトラップ筒5の下流側開口5bの最低位置に位置させるようにしたことで、上記洗浄力確保機構8を構成したことを特徴とする。これによると、洗浄力確保機構8を簡単に得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあっては、壁排水型のターントラップ式水洗便器において不足しがちな排水時の洗浄力を強くすることができる、という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0011】
本例の壁排水型ターントラップ式水洗便器1は、図1(b)のように、便器本体2の前部に設けた便器ボウル3の下部に後方に開口するボウル排水口4が設けられ、このボウル排水口4に上流側開口5aを接続させたトラップ筒5が設けられ、このトラップ筒5が、回動先端となる下流側開口5bを上方に向く状態から略水平な後方に向く状態に上下に回動自在にさせて、便器本体2の後部に配設したトラップ筒収納室6に収納配置されており、トラップ筒5の下流側開口5bからの便器排水を建物壁20に設けた壁排水口21に流す室排水口7がトラップ筒収納室6の後壁6aに設けられている。すなわち、便器本体2には、便器ボウル3からトラップ筒5、トラップ筒収納室6、室排水口7を経て壁排水口21に至る便器排水が流れる排水経路11が形成されている。
【0012】
詳しくは、便器本体2の後部には脚部14によってトイレルームの床面に載設されるユニット状のターントラップ装置12が設けられており、このターントラップ装置12に上記トラップ筒5及びトラップ筒収納室6、またトラップ筒5を回動駆動させる駆動装置13が設けられている。詳しくは、駆動装置13は、ターントラップ装置12に設置したモータ(図示せず)と、このモータの出力軸に一端が接続されて回動中心にすると共に回動先端となる他端がトラップ筒5の下流側開口縁を支持した回動アーム13aとを備えて構成されている。また、トラップ筒5は可撓性を有する円筒部材であり、その下流側開口5bが上方に向いた状態では便器ボウル3に溜水が溜められる溜水状態(待機状態)であり、洗浄動作時には下流側開口5bを室排水口7に向けるように下方に回動されるのであり、回動下端である下流側開口5bが後方横向きに向いた状態では、下流側開口5bが室排水口7に略対向するように位置して、下流側開口5bから上記溜水が便器排水として排水される排水状態となる。
【0013】
ここで、本例のターントラップ装置12には、溜水状態から排水状態への回動中におけるトラップ筒5の下流側開口5bからの溜水溢れを抑制しつつ、排水状態におけるトラップ筒5の下流側開口5bからの溜水流れを阻害しないようにする洗浄力確保機構8が設けられている。具体的に、本例の洗浄力確保機構8は、図1(a)のように、トラップ筒5の下流側開口5bの下縁部に上方に立ち上がる三角推状の堰9を設けると共に、この堰9に上流側から立ち上がる傾斜面10を備え、図2のように、トラップ筒5が排水状態にあるときに堰9の上端をトラップ筒5の下流側開口5bの最低位置に位置させるように駆動装置13にてトラップ筒5の回動を行わせるようにしたことで、構成されている
すなわち、上記洗浄力確保機構8によると、待機状態の図2(a)の状態からトラップ筒5を下方に回動させる洗浄動作が始まると、図2(b)のようにトラップ筒5の回動中においては、トラップ筒5の下流側開口5bの下縁から立ち上がる堰9が溜水を堰き止めることによって溜水の下流側開口5bからの溢れを抑制して極力トラップ筒5内に留まらせるようにできるのであり、そして、図2(c)のように排水状態となるトラップ筒5が回動下端位置に位置したときには、上記堰9の傾斜面10が略水平かまたは下流側ほど下位置となるような状態になって、つまり堰9の上端(傾斜面10の上端部分)がトラップ筒5の下流側開口5bの最低位置に位置するようになり、上記トラップ筒5内に留まらせた大量の溜水が堰9で堰き止められることなく、下流側開口5bから滞りなく一気に勢い良く排出されるようになっている。このように、本例の壁排水型のターントラップ式水洗便器1にあっては、洗浄力確保機構8によって排水状態での溜水の瞬間排出量を向上することができたから、壁排水型のターントラップ式水洗便器1において不足しがちな排水時の洗浄力を強くすることができたのである。
【0014】
しかも、本例の洗浄力確保機構8は、トラップ筒5の下流側開口5bの下縁部に上流側から徐々に立ち上がる傾斜面10を有した堰9を形成し、排水状態にあるときに堰9の上端をトラップ筒5の下流側開口5bの最低位置に位置させることで構成されており、つまり、通常のトラップ筒5の下流側開口5bの下縁部に堰9を付設して駆動装置13の回動下端設定をトラップ筒5の下流側開口5bがやや下向きに開口する位置にまで設定するということで洗浄力確保機構8を得られるのである。すなわち、既存のターントラップ装置12の一部に手を加えるのみで簡単に洗浄力確保機構8を得ることができたものである。このように、本例の壁排水型のターントラップ式水洗便器1は、既存のターントラップ装置12の一部に手を加えて洗浄力確保機構8を形成するだけで、簡単に排水時の洗浄力を強くすることができたのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態の例であり、(a)は要部(トラップ筒)の側面図であり、(b)は壁排水型ターントラップ式水洗便器の全体の概略側断面図である。
【図2】(a)〜(c)は同上のトラップ筒の洗浄動作を順に説明する説明図である。
【図3】従来技術を説明する床排水型ターントラップ式水洗便器の側面図である。
【図4】従来技術の例の壁排水型ターントラップ式水洗便器におけるトラップ筒の洗浄動作を順に説明する説明図である。
【符号の説明】
【0016】
1 壁排水型ターントラップ式水洗便器
2 便器本体
3 便器ボウル
4 ボウル排水口
5 トラップ筒
5a 上流側開口
5b 下流側開口
6 トラップ筒収納室
7 室排水口
8 洗浄力確保機構
9 堰
10 傾斜面
11 排水経路
12 ターントラップ装置
13 駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体に便器ボウルから建物壁に設けた壁排水口に至る排水経路を備え、この排水経路に、上流側開口を便器ボウルの排水口に接続して下流側開口を上下に回動させるトラップ筒を備えたターントラップ装置を配設し、トラップ筒を上方に立ち上がる溜水状態から横向きになる排水状態に上下に回動させるように設定した壁排水型ターントラップ式水洗便器において、ターントラップ装置に、溜水状態から排水状態への回動中におけるトラップ筒の下流側開口からの溜水溢れを抑制しつつ、排水状態におけるトラップ筒の下流側開口からの溜水流れを阻害しないようにする洗浄力確保機構を設けたことを特徴とする壁排水型ターントラップ式水洗便器。
【請求項2】
トラップ筒の下流側開口の下縁部に上方に立ち上がる堰を設け、この堰に上流側から立ち上がる傾斜面を備え、トラップ筒が排水状態にあるときに堰の上端をトラップ筒の下流側開口の最低位置に位置させるようにしたことで、上記洗浄力確保機構を構成したことを特徴とする請求項1記載の壁排水型ターントラップ式水洗便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−291611(P2008−291611A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141092(P2007−141092)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】