説明

壁掛け装置

家具や電化製品等の被支持体を壁面上にて自在に移動でき、しかも壁面上の美観を損なうことのない壁掛け装置を提供するものであり、前記被支持体が固定される取付板と、前記取付板を壁面に対して移動自在に支持するスライド支持部材とを備え、更に、前記スライド支持部材は、断面略矩形状に形成されると共に両側面にボール転走面が形成される軌道レールと、多数のボールを介して前記軌道レールに組みつけられている移動ブロックから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅や事務所等の室内において、その壁面にテレビ、スピーカ、絵画、本棚といった電化製品や家具等を固定し、状況に応じ前記壁面上を移動させることが可能な壁掛け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−252140 従来、家具や電化製品等の物品(以下、「被支持体」という)を壁面に取り付け、かかる被支持体を壁面上で移動自在に保持する壁掛け構造としては、特開2001−252140号公報に開示されるものが知られている。この構造では、壁面に被支持体を収容するための凹所が形成され、被支持体は壁面から突出することなく、前記凹所内に収容されている。また、凹所内において被支持体の上面及び底面と対向する壁面には、被支持体の移動方向に沿ってレールが付設されており、被支持体の上面及び底面には前記レールを受け入れる案内溝が形成されている。これにより、被支持体が凹所内を壁面に沿って自在に移動することが可能となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来の壁掛け構造では前記壁面に対して被支持体のスライド空間を考慮した凹所を設けなくてはならず、壁面を被支持体の移動するストローク距離も考慮した上で削り取る必要があり、施工が大変面倒である。また、壁面に形成する凹所は被支持体のストローク距離に対応しており、その凹所の全長にわたって前記レールを付設しなければならないので、必然的に凹所内のレールが露見してしまい、室内装飾の観点からすれば見栄えが悪くなってしまうという問題点があった。また、被支持体には前記レールを受け入れる溝を形成しなくてはならず、被支持体の筐体の構造が自ずと制限されてしまうといった不都合もあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、室内の壁面上において電化製品や家具等の被支持体を任意の位置へ自在に移動させることが可能であり、しかも壁面上の見栄えを損なうことのない壁掛け構造を提供することにある。
【0005】
このような目的を達成する本発明は、室内の壁面に対して被支持体を支持する壁掛け構造であって、前記被支持体が固定される取付板と、前記取付板を壁面に対して移動自在に支持するスライド支持部材とから構成されており、更に、前記スライド支持部材が軌道レール及びこの軌道レールに沿って運動自在な移動ブロックを有している。
【0006】
このような壁掛け構造において、前記スライド支持部材における軌道レールの軸数や移動ブロックの個数は、壁面に設置する被取付体の重量及びその寸法に応じて適宜選定することが可能である。もっとも、壁面上における被支持体の姿勢の安定を考慮するのであれば、軌道レールの軸数は2軸以上とし、各軌道レールに組付けられる移動ブロックを2個以上とするのが良い。
【0007】
また、前記スライド支持部材は相対的に移動自在な軌道レール及び移動ブロックから構成されるが、いずれを取付板に結合しても、あるいは壁面に固定しても差し支えない。但し、壁面における被支持体の移動距離を大きく設定したいのであれば、軌道レールを壁面に固定し、取付板に固定した移動ブロックが前記軌道レールに沿って移動するように構成するのが好ましい。その反面、軌道レールを壁面に固定し、移動ブロックを取付板に固定した場合には、被支持体が取付板と共に軌道レールの端部付近に移動すると、軌道レールの他方の端部が露見してしまい、室内装飾といった観点からは見栄えが悪いものとなってしまう。従って、美観を重視するのであれば、移動ブロックを壁面に固定し、軌道レールを取付板に固定するのが好ましい。
【0008】
更に、前記スライド支持部材としては、被支持体からスライド支持部材に作用する荷重方向等を考慮して、軌道レールと移動ブロックが組み合わされた既存のリニアガイド装置の中から適宜選定することが可能である。もっとも、壁面に取り付けた被支持体が地震等の振動によって落下すると危険なので、前記スライド部材としては、移動ブロックが軌道レールの長手方向と垂直な方向に作用するあらゆる荷重を負荷するタイプのものであることが好ましい。例えば、軌道レールは断面略矩形状に形成されてその両側面にはボールの転走溝を有し、前記移動ブロックは軌道レールの一部が遊嵌する案内溝を有してサドル状に形成され、これら軌道レールと移動ブロックとが多数のボールを介して組付けられたものが考えられる。
【0009】
前記軌道レールを壁面あるいは取付板に配設する際には、その長手方向をいずれの方向へ合致させても差し支えない。但し、前記軌道レールの長手方向を水平方向に合致させないのであれば、該軌道レールが前記案内部材から抜け落ちるのを防止するため、また、被支持体を壁面上の任意の位置に係止するため、例えば、軌道レール上で移動ブロックを係止するロック機構を設ける必要がある。
【0010】
また、被支持体の壁面からの突出量を可及的に減じ、しかも見栄えを良好なものにするといった観点からすれば、前記壁面には被支持体の移動方向に沿って延びる収容溝を形成し、移動ブロック及び軌道レールから構成される前記スライド支持部材の全体をこの収容溝内に固定するのが好ましい。
【0011】
もっとも、スライド支持部材の全体を収容溝内に格納した場合、壁面に固定された移動ブロックに対して軌道レールがストロークする構成だと、軌道レールのストローク範囲の全長にわたって収容溝を形成する必要があり、かかる収容溝の全長が軌道レールの全長よりも長くならざるを得ない。このため、壁面に対する収容溝の加工を最小限に抑えるといった観点からすれば、移動ブロックの一部を収容溝に嵌合させ、かかる移動ブロックに組付けられた軌道レールが壁面に埋没することなく、該壁面の表面に沿って移動するように構成するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の壁掛け構造の第1の実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明の壁掛け構造の第1の実施形態を示す側面図である。
【図3】スライド支持部材として使用可能なリニアガイド装置の一例を示す正面断面図である。
【図4】図3に示すリニアガイド装置の斜視図である。
【図5】第1の実施形態におけるスライド支持部材と取付板との結合状態を示す拡大図である。
【図6】収容溝の開口部に化粧幕を設けた例を示す図である。
【図7】本発明の壁掛け構造の第2の実施形態を示す正面図である。
【図8】本発明の壁掛け構造の第2の実施形態を示す側面図である。
【図9】本発明の壁掛け構造の第3の実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0013】
1…被支持体、3…スライド支持部材、10…取付板、11…軌道レール、11a…噛み込み防止板、20…移動ブロック、30…壁面、31…収容溝、32…化粧幕
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の壁掛け構造を詳細に説明する。
【0015】
図1及び図2は本発明の壁掛け構造の第1の実施形態を示すものである。この壁掛け構造は、例えば被支持体1としての薄型大画面テレビを応接間などの壁面30に取り付けるためのものであり、前記被支持体1が固定される取付板10と、この取付板10を壁面30に対して移動自在に支持するスライド支持部材3とから構成されている。
【0016】
前記取付板10は平板状に形成され、その表面には前記被支持体1をその背面から支えるための固定面10aを有し、ビスやボルトなどの固定手段によって被支持体1が固定されている。例えば被支持体1が液晶大画面テレビであり、これを壁面30に固定するための専用ブラケットが付属している場合には、その専用ブラケットを取付板10の固定面10aにビス等で固定し、その後に被支持体1を専用ブラケットに装着すれば良い。
【0017】
また、前記取付板10の背面には前記スライド支持部材3と結合される接続アーム10bが突設されており、この接続アーム10bを介して前記取付板10はスライド支持部材3に保持されている。この接続アーム10bそれ自体は取付板10の縁部を折り曲げて形成しても良いし、溶接、ねじ止めなどの固定方法によって取付板10に対して強固に固定しても良い。
【0018】
一方、前記スライド支持部材3は相対的に移動自在な軌道レール11及び移動ブロック20の組み合わせからなり、図1及び図2に示す例では2組のスライド支持部材3を用いて前記取付板10を壁面30に保持している。また、この例では前記軌道レール11を取付板10の接続アーム10bに固定する一方、移動ブロック20を壁面30に固定しており、前記軌道レール11は長手方向を水平方向に合致させて配設されている。
【0019】
図3及び図4は前記スライド支持部材3として利用可能なリニアガイド装置の一例を示すものである。このリニアガイド装置は、長手方向に沿ってボールの転走溝12が形成された直線状の軌道レール11と、転動体としての多数のボール13を介してこの軌道レール11に組付けられると共に内部に該ボール13の無限循環路を備えた移動ブロック20とから構成されており、かかるボール13の循環に伴って前記移動ブロック20が軌道レール11に沿って自在に移動できるように構成されている。
【0020】
前記軌道レール11は長手方向に垂直な断面が略矩形状に形成されており、両側面には長手方向に沿ってボール転走溝12が1条ずつ形成されている。また、この軌道レール11には長手方向に適宜間隔をおいて取付孔14が貫通形成されており、この取付孔14挿通した固定ボルトを取付板10の接続アーム10bに締結することにより、軌道レール11と前記接続アーム10bが強固に固定されるようになっている。
【0021】
また、前記移動ブロック20は、軌道レール11のボール転走溝12と対向するボール転走溝24が形成された金属製のブロック本体21と、このブロック本体21の前後両端面に夫々固定される合成樹脂製のエンドプレート22とから構成されている。前記ブロック本体21は、軌道レール11の上面と対向する基部21aと、軌道レール11の両側面に対向すると共に前記基部21aから延設された一対のスカート部21bとから構成されており、これら基部21aとスカート部21bによって区画された案内溝23を有してサドル状に形成されている。
【0022】
各スカート部21bの内側面にはブロック本体21側のボール転走溝24が形成され、軌道レール11のボール転走溝12と対向することで、ボール13が荷重を負荷しながら転走する負荷通路を構成している。また、ブロック本体21の各スカート部21bにはボール転走溝24と平行にボール戻し孔25が形成されており、ボール13はこのボール戻し孔25の内部を無負荷状態で転走するようになっている。
【0023】
一方、各エンドプレート22には前記負荷通路とボール戻し孔25とを連通連結するU字形の方向転換路が形成されており、ブロック本体21の前後両端面に対して一対のエンドプレート22を固定することにより、ボール13が負荷通路→方向転換路→ボール戻し孔→方向転換路→負荷通路と循環する無限循環路が形成される。このエンドプレート22は取付ボルト26によってブロック本体21に固定される。
【0024】
前記軌道レール11はその上半体がブロック本体21の案内溝23に遊嵌するようにして、前記移動ブロック20に組付けられており、ボール13が軌道レール11のボール転走溝12と移動ブロック20のボール転走溝24との間で荷重を負荷しながら転走する。軌道レール11のボール転走溝12及び移動ブロック20のボール転走溝24はその断面がゴシックアーチ状に形成されており、ボール13は各ボール転走溝12,24に対して2点で接触している。このため、軌道レール11の長手方向に関しては、移動ブロック20が軌道レール11に沿って連続的に移動することが可能となっているが、かかる移動方向と垂直な方向に関しては、移動ブロック20と軌道レール11の分離が防止されている。
【0025】
前述のように、この例では移動ブロック20を壁面30に固定し、軌道レール11を取付板10に固定しているから、移動ブロック20に対して軌道レール11が自在に移動することになる。すなわち、前記取付板10はスライド支持部材3によって壁面30上に保持され、軌道レール11と共にその長手方向(水平方向)へ自在に移動することが可能となっている。また、軌道レール11と移動ブロック20の分離が防止されていることから、地震等の振動が作用しても、スライド支持部材3そのものが破損しない限り、取付板10が壁面30から脱落することがないようになっている。
【0026】
また、軌道レール11が移動ブロック20から抜け落ちるのを防止するため、かかる軌道レール11の両端にはストッパ15が固定されている。このストッパ15は、軌道レール11の上面に対応したプレート部15aと、このプレート部から延びる一対の脚部15b、15bとを有し、略U字状に形成されている。各脚部15bの先端は内側に屈曲しており、軌道レール11の両側面に形成されたボール転走溝12に入り込んでいる。また、前記プレート部15aにはタップ孔16が貫通形成されており、ストッパ15を固定するための止めねじ(図示せず)が螺合するようになっている。前記タップ孔16に止めねじを螺合させ、かかる止めねじの先端を軌道レール11の上面に押しつけると、ストッパ15の全体が軌道レール11に対して引き揚げられて、前記脚部15bが軌道レール11を抱え込むようにしてボール転走溝12に係止され、ストッパ15が軌道レール11に対して固定されるようになっている。これにより、軌道レール11の端部が壁面30に固定された移動ブロック20に到達すると、前記ストッパ15が移動ブロック20に突き当たることで軌道レール11の移動が係止され、その方向に関しての前記取付板10の移動がそれ以上は禁止されるようになっている。
【0027】
図1及び図2に示す例では、各軌道レール11に対して2個の移動ブロック20が組付けられているが、取付板10に装着する被支持体1の重量や壁面30の耐荷重などに応じてその個数を適宜増減することができる。もっとも、移動ブロック20に対する軌道レール11のストローク、すなわち壁面30に対する取付板10の可動範囲を大きく設定したいのであれば、各軌道レール11に対して移動ブロック20は1個であることが好ましい。
【0028】
前記移動ブロック20は壁面30に直接固定しても構わないが、壁面30と取付板10との間にスライド支持部材3が存在することになるので、かかる取付板10の壁面30からの突出量が大きくなってしまい、取付板10に固定するテレビ等の被支持体1は更に壁面30から突出してしまい、室内の美観を損ねてしまう懸念がある。このため、図2に示すように、壁面30に収容溝31を設け、スライド支持部材3をこの収容溝31内に埋没させるように固定するのが良い。
【0029】
前記収容溝31は、その内部にスライド支持部材3を固定した際に、前記軌道レール11が壁面30から突出しない深さに形成され、その水平方向の長さは移動ブロック20に対する軌道レール11のストローク範囲よりも僅かに大きく形成されている。スライド支持部材3の移動ブロック20はこの収容溝31の内部に固定され、軌道レール11は収容溝31の内部で水平方向へストロークする。また、取付板10は前記接続アーム10bによって収容溝31内の軌道レール11と結合されている。
【0030】
これにより、取付板10は壁面30に近接して設けられるので、かかる取付板10に固定される被支持体1が壁面30から突出する量を抑え、室内の美観を保つことができる。
【0031】
一方、前記収容溝31は軌道レールを収容している都合上、かかる収容溝の全長は軌道レールのストローク範囲よりも長く、図1に示すように、取付板が可動範囲の一方の端に位置している状態では、壁面に形成された収容溝が取付板によって隠されることなく露出してしまい、室内の美観上は余りこのましいものではない。また、収容溝内に埃が溜まる等の弊害もある。
【0032】
このため、美観を保つという観点からすれば、前記収容溝31を覆う化粧幕32を設け、取付板10と軌道レール11を結合する接続アーム10bが前記化粧膜32を押し退けながら移動するように構成すると良い。この化粧幕32は収容溝31の長手方向全域にわたって設けられており、図5に示すように、収容溝31の開口縁の両側から開口幅の約半分相当の領域を覆うように設けられている。接続アーム10bが2枚の化粧幕32の合わせ目を無理なく移動することができるよう、かかる化粧幕32は布やゴム等の可撓性のある材質で形成され、また、壁面30に同化させるために該壁面30と同一色であるのが好ましい。
【0033】
一方、2枚の化粧幕32を収容溝の幅方向の中央で合わせるのではなく、図6に示すように、1枚の化粧幕33を収容溝31の上端縁から垂れ下げるように設けても良い。この場合、接続アーム10bが化粧幕33を押し退けて移動し易いよう、化粧幕33にはその長手方向に所定の間隔をおいてスリット33aを設け、化粧幕33がスリット33aによって区切られた1区画毎に接続アーム10bに押し退けられて撓むように構成すると良い。また、このようなスリット33aを設けてあれば、接続アーム10bと接している化粧幕33だけが押し退けられ、それ以外の領域の化粧幕33には影響が及ばないので、取付板10によって覆い隠されない部分の化粧幕33が接続アーム11aの存在によって撓むことはなく、化粧幕33によって収容溝31を隠して美観を整えるという当初の目的を達成することができるものである。また、図5に示すように、収容溝31の幅方向の両側に化粧幕32を設けて、これらの先端を収容溝31の中央で合わせた場合、経時的な使用によって下側の化粧幕32の先端が下方へ垂れ下がってしまうことが想定されるが、1枚の化粧幕33を収容溝31の上端から垂らすように構成すれば、そのような不具合が発生することはない。
【0034】
また、接続アーム10bによって押し退けられた化粧幕32はその先端が取付板10、あるいは軌道レール11の側へ捲れることになるが、仮に軌道レール11側へ捲れてしまった場合には、軌道レール11と移動ブロック20との間に化粧幕32が噛み込まれてしまうことも有り得る。そこで、化粧幕32の先端が軌道レール11と移動ブロック20の間に噛み込まれてしまうのを防止するため、前記接続アーム10bには鍔状の噛み込み防止板11aが設けられている。図5に示すように、この噛み込み防止板11aは接続アーム10b上に設けられており、かかる接続アーム10bに対して化粧幕32が接触する部位と前記軌道レール11との結合部位の間に位置している。これにより、接続アーム10bによって押し退けられた化粧幕32の先端が軌道レール11側へ捲れたとしても、かかる化粧幕32の先端は噛み込み防止板11aによって係止さるので、化粧幕32が軌道レール11と移動ブロック20の間に噛み込まれてしまうトラブルを防止することができる。
【0035】
このように図1及び図2に示した壁掛け構造によれば、壁面30の見栄えを損なうことなく被支持体1を壁面30上にて水平方向へ移動させ、任意の位置に設定することが可能となる。
【0036】
その反面、図1及び図2に示した壁掛け構造では、壁面にスライド支持部材の全体を格納する収容溝を形成せねばならず、かかかる収容溝を軌道レールのストローク範囲に応じて形成しなければならないので、施工が大変面倒である。
【0037】
図7及び図8はその点に考慮した第2の実施形態を示すものである。
【0038】
取付体10やスライド支持装置3の構成は前述の第1の実施形態と同一であるが、スライド支持部材3の全体を壁面30の収容溝31に格納するのではなく、移動ブロック20の基部21aのみを壁面30に埋め込むようにした。移動ブロック20の基部21aを壁面に埋め込む深さとしては、この移動ブロック20に組付けられた軌道レール11と壁面30との間に隙間が形成され、かかる軌道レール11が移動ブロック20に案内されて壁面30上を自在に移動できるものであれば良い。
【0039】
このような構成によれば、軌道レール11は被支持体1の裏面からはみ出さない程度の長さに形成されており、しかも軌道レール11は移動ブロック20から抜け出ることはなく、しかも壁面30には移動ブロック20を嵌合させるサイズの収容溝のみ形成しているので、被支持体1が固定された取付板10を水平方向の任意の位置に移動させとしても、軌道レール11及び移動ブロック20から構成されるスライド支持部材3が外見上は認識されることがなく、また壁面30に何ら施工の痕跡が認識されることはない。すなわち、壁面30の美観を何ら損なうことなく、被支持体1を壁面30に対して移動自在に保持することができるものである。
【0040】
また、この第2の実施形態によれば、壁面30に対して軌道レール11のストローク長と同じ長さの収容溝31を形成する必要がなく、また、かかる収容溝31を隠蔽するための化粧幕32を設ける必要もないので、壁面30に対する施工の労力及び時間を大幅に削減することが可能である。
【0041】
図9は本発明を適用した壁掛け構造の第3の実施形態を示すものである。
【0042】
図1及び図7に示した例ではいずれもスライド支持部材3を直接壁面30に固定していたが、実際に室内の壁面30に収容溝31を後から施工するのは大変な作業であり、しかもスライド支持部材3を2基使用する場合には、2軸の軌道レール11が互いに平行となるように移動ブロック20を壁面30に固定する必要があり、かかる調整固定作業を施工現場で行うのは大変面倒である。
【0043】
従って、かかる観点からすれば、図9に示すように、スライド支持部材3の移動ブロック20が固定されるベース部材4を設け、このベース部材4を壁面30に固定するのが好ましい。ベース部材4には、図8に示した例と同様に、移動ブロック20の基部21aのみを埋め込み、この移動ブロック20に案内される軌道レール11はベース部材4の表面に沿って移動できるようにしておく。かかるベース部材4は移動ブロック20の取付精度をある程度確保できるものであれば、合成樹脂製又は金属製のプレートであって差し支えなく、移動ブロック20の基部21aを嵌合させるための収容溝を事前に加工しておく。これにより、前記収容溝に移動ブロック20の基部21aを嵌合させるだけで、2軸の軌道レール11の平行度を確保することが可能となる。また、前記ベース部材4を壁面30に固定しさえすれば、壁面30にはなんら収容溝を加工する必要がなく、実際の使用現場である室内での施工時間を最小限に抑えることが可能となる。
【0044】
尚、前述の各実施形態においては、取付板10の裏面側に軌道レール11を、壁面側に移動ブロックを固定した例を示したが、壁面側に軌道レールを固定し、取付板の裏面側に移動ブロツクを固定するようにしても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の壁面に対して被支持体を支持する壁掛け構造であって、
前記被支持体が固定される取付板と、前記取付板を壁面に対して移動自在に支持するスライド支持部材とを備え、更に、前記スライド支持部材は軌道レール及びこの軌道レールに沿って運動自在な移動ブロックから構成されていることを特徴とする壁掛け構造。
【請求項2】
前記スライド支持部材の軌道レールは、断面略矩形状に形成されると共に両側面にボール転走面が形成される一方、前記移動ブロックは、軌道レールの一部が遊嵌する案内溝を有してサドル状に形成されると共に、多数のボールを介して前記軌道レールに組付けられていることを特徴とする請求項1記載の壁掛け構造。
【請求項3】
前記壁面には被支持体の移動方向に沿って延びる収容溝が形成され、前記スライド支持部材はこの収容溝内に埋没していることを特徴とする請求項2記載の壁掛け構造。
【請求項4】
前記軌道レールが前記収容溝内に固定される一方、この軌道レールに沿って運動する移動ブロックが前記取付板に固定されていることを特徴とする請求項3記載の壁掛け構造。
【請求項5】
前記移動ブロックが前記収容溝内に固定される一方、この軌道レールに沿って運動する移動ブロックが前記取付板に固定されていることを特徴とする請求項3記載の壁掛け構造。
【請求項6】
前記取付板は接続アームによってスライド支持部材の軌道レール又は移動ブロックと結合される一方、前記収容溝の開口部には該収容溝内に配設された前記スライド支持部材を覆い隠すための化粧幕が設けられていることを特徴とする請求項3記載の壁掛け構造。
【請求項7】
前記化粧幕には収容溝の長手方向に沿った所定の間隔毎にスリットが形成されていることを特徴とする請求項6記載の壁掛け構造。
【請求項8】
前記接続アームには、前記化粧幕の接触部位と前記スライド支持部材との結合部位の間に鍔状の噛み込み防止板が設けられていることを特徴とする請求項6記載の壁掛け装構造。
【請求項9】
前記壁面には前記移動ブロックの一部が嵌合する収容溝を形成する一方、この移動部材と運動自在に組付けられた前記軌道レールは壁面に埋没することなく、その表面を移動することを特徴とする請求項3記載の壁掛け構造。
【請求項10】
前記スライド支持部材はベース部材を介して前記壁面に固定されており、かかるベース部材には前記移動ブロックの一部が嵌合する収容溝を形成する一方、この移動部材と運動自在に組付けられた前記軌道レールはベース部材に埋没することなく、その表面を移動することを特徴とする請求項2記載の壁掛け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【国際公開番号】WO2005/031082
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514204(P2005−514204)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013901
【国際出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】