説明

壁構造およびその構築方法ならびに突起用形成型枠

【課題】 型枠工の作業の間隔を空けずに各施工が円滑かつ効率的に行われるとともに、立ち上がり部が精度良く形成できる壁構造およびその構築方法ならびに突起用形成型枠を提供することである。
【解決手段】 壁構造1は、対向状に立設した支持脚12と、これらの支持脚12を連結する連結板13とからなるラス板用支持材10が適宜間隔ごとに配置され、該ラス板用支持材10の両支持脚12におけるスラブ上面5から突出した箇所にラス板11が対向設置されて突起用形成型枠7が形成され、該突起用形成型枠7内にコンクリート8が打設されて形成された防水用突起部6がバルコニー2との境界部における立ち上がり部4内に埋設されたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は壁構造およびその構築方法ならびに突起用形成型枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルコニーと居住空間との境界部における壁構造は防水上、スラブと立ち上がり部とのコンクリートを同時打ちして構築していた。この構築方法として、図7に示すように、型枠大工がスラブ型枠24を組立形成した後、鉄筋工がスラブ筋25および段取り筋26を配筋し、該段取り筋26に差し筋27を配筋した後、型枠工が端太受金物28で支持された立ち上がり部用形成型枠29を組立形成した後、土工がスラブ型枠24と立ち上がり部用形成型枠とにコンクリート30を打設し、該コンクリート30が硬化した後に立ち上がり部用形成型枠29を解体して構築していた。また、その他のバルコニーと居住空間との境界部における壁構造としては、例えば特開2002−21348号の発明が知られている。
【特許文献1】特開2002−21348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の壁構造の構築方法では、型枠工の作業の間隔が空いてしまうという問題があった。また差し筋の転倒防止のための段取り筋の配筋が必要となる他、立ち上がり部用型枠が端太受金物で支持された浮き型枠になっているため、精度の確保が困難であるという問題があった。
【0004】
本願発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、型枠工の作業の間隔を空けずに各施工が円滑かつ効率的に行われるとともに、立ち上がり部が精度良く形成できる壁構造およびその構築方法ならびに突起用形成型枠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための壁構造は、対向状に立設した支持脚と、これらの支持脚を連結する連結板とからなるラス板用支持材が適宜間隔ごとに配置され、該ラス板用支持材の両支持脚におけるスラブ上面から突出した箇所にラス板が対向設置されて突起用形成型枠が形成され、該突起用形成型枠内にコンクリートが打設されて形成された防水用突起部がバルコニーとの境界部における立ち上がり部内に埋設されたことを特徴とする。
【0006】
また壁構造の構築方法は、スラブ型枠におけるバルコニーとの境界部に、対向状に立設した支持脚と、これらの支持脚を連結する連結板とからなるラス板用支持材を適宜間隔ごとに配置した後、スラブ筋を配筋し、ラス板用支持材の両支持脚におけるスラブ上面から突出した箇所にラス板を対向設置して突起用形成型枠を形成し、該突起用形成型枠の内側に差し筋をラス板に沿わせて配筋した後、スラブ型枠および突起用形成型枠内にコンクリートを打設して防水用突起部を形成し、該防水用突起部を立ち上がり部内に埋設して形成することを特徴とする。
【0007】
また突起用形成型枠は、対向状に立設した支持脚と、これらの支持脚を連結する連結板とからなるラス板用支持材が適宜間隔ごとに配置され、該ラス板用支持材における両支持脚のスラブ上面から突出した箇所にラス板が対向設置されて形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
防水用突起部がバルコニーとの境界部における立ち上がり部内に埋設されたことにより、完璧な防水構造となる。また各施工手順の中で、型枠工の作業間隔が空かずに効率的な作業をすることができる。また突起用形成型枠内にコンクリートが打設されて防水用突起部が形成されるので、防水用突起部の精度の向上を図ることができるるとともに、精度の確保が容易になる。また防水用突起部が立ち上がり部内に埋設された壁構造の施工が簡単に行える。また差し筋の転倒防止のためにラス板を利用することができるので、段取り筋が不要になる。また従来の立ち上がり部用型枠の組立または解体が不要になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本願発明の壁構造およびその構築方法ならびに突起用形成型枠の実施の形態を図面に基づいて説明する。はじめに壁構造について説明し、その後に、この壁構造に使用する突起用形成型枠について説明する。そして最後に、この突起用形成型枠を使用した壁構造の構築方法について説明するが、各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明する。
【0010】
図1は壁構造1の断面を示したものである。この壁構造1はバルコニー2と居住空間3との境界部に構築されたものであり、この境界部における立ち上がり部4、すなわち桁行き方向に沿って連続的に形成された立ち上がり部4内に、スラブ上面5よりも上側に突出した防水用突起部6が埋設されて構成されている。この防水用突起部6は突起用形成型枠7内にコンクリート8が打設されて、上記立ち上がり部4のように桁行き方向に沿って連続的に形成されている。
【0011】
この突起用形成型枠7は、図2および図3に示すように、スラブ型枠9に適宜間隔ごとに設置されたラス板用支持材10と、この両側に対向設置されたラス板11とから構成されている。このラス板11は型板としてスラブ上面5から突出した箇所に設置され、これらのラス板11間にコンクリート8が打設されて防水用突起部6が形成されている。
【0012】
このラス板用支持材10は適宜間隔をもって対向した支持脚12が上部の連結板13で連結されて形成され、これら支持脚12の下部には釘孔14を備えた固定片15が設けられている。また支持脚12上部の外側には上下の掛止片16が二組設けられ、これらにラス板の上下補強材17、18が掛止されてラス板11が長さ方向に接続されている。また端部が支持脚12と重なるようにラス板11が長さ方向に接続されているため、両支持脚12の上部にラス板11からなる型板が形成されたようになっている。このようにラス板11は上下補強材17、18を掛止片16に掛け止めするだけでラス板用支持材10の両側に簡単に設置することができる。
【0013】
次に、上記の突起用形成型枠7を使用した壁構造の構築方法を図4〜図6に基づいて説明する。はじめに、図4および図5に示すように、型枠工によってスラブ型枠9を組立形成する。次に、このスラブ型枠9におけるバルコニー2との境界部に、支持脚12とこれらの支持脚12を連結する連結板13とからなるラス板用支持材10を適宜間隔ごとに配置して釘19で固定する。次に、鉄筋工によってスラブ筋20を配筋するとともに、支持脚12の掛止片16に上下補強材17、18を掛け止めしてラス板11をラス板用支持材10の両側に連続的に設置して、スラブ上面5から突出した箇所に突起用形成型枠7を形成する。そして、この突起用形成型板7の内側に差し筋21をラス板11に沿わせて配筋する。このラス板11が従来の段取り筋の代わりになって差し筋21を支持するため、段取り筋が不要になる。
【0014】
次に、図6に示すように、土工によりスラブ型枠9および突起用形成型枠7内にコンクリート8を打設し、このコンクリート8が硬化すると、上面から差し筋21が突出した防水用突起部6が形成される。そして、この防水用突起部6の両側に立ち上がり部用形成型枠22を組立形成し、この立ち上がり部用形成型枠22内にコンクリート(図示せず)を打設すると、図1に示すような、防水用突起部6が立ち上がり部4内に埋設された壁構造1が構築される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】壁構造の断面図である。
【図2】突起用形成型枠の斜視図である。
【図3】(1)は突起用形成型枠の一部省略正面図、(2)は(1)のA−A線断面である。
【図4】スラブ型枠に突起用形成型枠、スラブ筋及び差し筋を配筋した断面図である。
【図5】スラブ型枠に突起用形成型枠、スラブ筋及び差し筋を配筋した平面図である。
【図6】スラブ型枠および突起用形成型枠にコンクリートを打設した断面図である。
【図7】従来の壁構造の構築方法の断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 壁構造
2 バルコニー
3 居住空間
4 立ち上がり部
5 スラブ上面
6 防水用突起部
7 突起用形成型枠
8、30 コンクリート
9、24 スラブ型枠
10 ラス板用支持材
11 ラス板
12 支持脚
13 連結板
14 釘孔
15 固定片
16 掛止片
17 上部補強材
18 下部補強材
19 釘
20、25 スラブ筋
21、27 差し筋
22、29 立ち上がり部用形成型枠
26 段取り筋
28 端太受金物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向状に立設した支持脚と、これらの支持脚を連結する連結板とからなるラス板用支持材が適宜間隔ごとに配置され、該ラス板用支持材の両支持脚におけるスラブ上面から突出した箇所にラス板が対向設置されて突起用形成型枠が形成され、該突起用形成型枠内にコンクリートが打設されて形成された防水用突起部がバルコニーとの境界部における立ち上がり部内に埋設されたことを特徴とする壁構造。
【請求項2】
スラブ型枠におけるバルコニーとの境界部に、対向状に立設した支持脚と、これらの支持脚を連結する連結板とからなるラス板用支持材を適宜間隔ごとに配置した後、スラブ筋を配筋し、ラス板用支持材の両支持脚におけるスラブ上面から突出した箇所にラス板を対向設置して突起用形成型枠を形成し、該突起用形成型枠の内側に差し筋をラス板に沿わせて配筋した後、スラブ型枠および突起用形成型枠内にコンクリートを打設して防水用突起部を形成し、該防水用突起部を立ち上がり部内に埋設して形成することを特徴とする壁構造の構築方法。
【請求項3】
対向状に立設した支持脚と、これらの支持脚を連結する連結板とからなるラス板用支持材が適宜間隔ごとに配置され、該ラス板用支持材における両支持脚のスラブ上面から突出した箇所にラス板が対向設置されて形成されたことを特徴とする突起用形成型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−249818(P2006−249818A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69113(P2005−69113)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)